特許第6491531号(P6491531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491531
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】船舶用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20190318BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G08G3/02 A
   B63B49/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-96096(P2015-96096)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-212646(P2016-212646A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉川 達
【審査官】 柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−233743(JP,A)
【文献】 特開2013−222326(JP,A)
【文献】 特開2009−037445(JP,A)
【文献】 特開2007−004428(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0066362(US,A1)
【文献】 特開2005−31162(JP,A)
【文献】 特開2001−281331(JP,A)
【文献】 特開2013−231844(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/132999(WO,A1)
【文献】 特開2014−130122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 3/02
B63B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自船の位置に対して他物標が存在する方位の情報である方位情報を取得する情報取得部と、
前記方位情報に基づいて、前記自船を表すシンボル及び複数の前記他物標をそれぞれ表す複数のシンボルを含むプロッタ画像を生成する画像処理部と、
前記プロッタ画像において前記複数のシンボルの中から1つのシンボルを選択する操作の入力を受け付ける操作部と、
前記入力に基づいて、前記自船を表すシンボル及び前記選択された1つの前記他物標を表すシンボルを用いて、前記自船と前記1つの他物標との相対的な方位を示す1つのアイコンを生成するアイコン生成部と、
前記1つのアイコンを前記プロッタ画像とは異なる画像として表示する表示部と、
を備えることを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶用表示装置であって、
前記情報取得部は、前記自船の船首方位の情報である自船船首方位情報を取得し、
前記アイコン生成部が生成する前記アイコンは、前記自船と前記他物標との相対的な方位に加えて、前記自船の前記船首方位を少なくとも示すことを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の船舶用表示装置であって、
前記情報取得部は、前記他物標が船舶である場合の船首方位の情報である他船船首方位情報を取得し、
前記アイコン生成部が生成する前記アイコンは、前記自船と前記他物標との相対的な方位に加えて、当該他物標である船舶の前記船首方位を少なくとも示すことを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の船舶用表示装置であって、
前記アイコン生成部が生成するアイコンは、前記情報取得部が取得した情報により基づいて得られる前記自船と前記他物標との衝突危険度を少なくとも示すことを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の船舶用表示装置であって、
前記情報取得部は、自船位置に対して他物標が存在する方位及び前記他物標が船舶である場合の船首方位以外の前記他物標の状態に関する情報を取得し、
前記アイコン生成部が生成する前記アイコンは、前記他物標の状態に関する情報を少なくとも示すことを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の船舶用表示装置であって、
前記情報取得部は、前記自船の位置の情報である自船位置情報及び前記他物標の位置の情報である他物標位置情報を取得し、
前記アイコン生成部は、前記自船から前記他物標までの距離に応じて、前記自船のシンボルの大きさ、前記他物標のシンボルの大きさ、及び、前記自船のシンボルと前記他物標のシンボルとの距離のうち、少なくとも何れかを変化させて前記アイコンを生成することを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の船舶用表示装置であって、
前記表示部に、前記他物標の文字情報とともに、前記他物標のアイコンを表示することを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の船舶用表示装置であって、
前記表示部は、1又は複数の前記他物標のシンボルを表示するとともに、前記他物標のシンボルが1つ選択されると、当該他物標の情報がポップアップ表示され、
前記ポップアップ表示される内容に、当該他物標について前記アイコン生成部が生成したアイコンが含まれていることを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の船舶用表示装置であって、
前記表示部は、複数の前記他物標の情報をリスト表示することが可能であり、
前記表示部にリスト表示される項目に、前記アイコン生成部が生成した前記アイコンが含まれることを特徴とする船舶用表示装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の船舶用表示装置であって、
前記情報取得部が取得した前記自船に対する前記他物標の方位が変化する度に、前記アイコン生成部が前記アイコンを生成し、前記表示部が前記アイコンを表示することを特徴とする船舶用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用表示装置に関する。詳細には、船舶用表示装置における画像情報の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グラフィカル表示機能を備えた船舶の衝突予防装置が知られている。特許文献1は、この種の衝突予防装置を開示する。この特許文献1の衝突予防装置は、自船舶に対する、他船舶各々による危険領域が一定時間毎に予測表示される構成となっている。
【0003】
また、船舶自動識別装置(AIS)から得た他船舶の情報を、重要度の高いものに絞って視認性を高めた他船表示装置も知られている。特許文献2は、この種の他船表示装置を開示する。この特許文献2の他船表示装置は、利用者が設定した範囲で重要度の高い情報を抽出し、表示内容が煩雑にならないように、設定した上限までの他船情報を表示する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−288663号公報
【特許文献2】特許第4925525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1及び2の構成は、自船周囲の全体的な状況は容易に把握できる一方、他物標毎の状況が直感的に把握しにくいという点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、船舶表示装置において、自船の周囲に多数の他物標が存在している場合でも、物標毎の理解を容易にすることである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の船舶用表示装置が提供される。即ち、この船舶用表示装置は、情報取得部と、画像処理部と、操作部と、アイコン生成部と、表示部と、を備える。前記情報取得部は、自船の位置に対して他物標が存在する方位の情報である方位情報を取得する。前記画像処理部は、前記方位情報に基づいて、前記自船を表すシンボル及び複数の前記他物標をそれぞれ表す複数のシンボルを含むプロッタ画像を生成する。前記操作部は、前記プロッタ画像において前記複数のシンボルの中から1つのシンボルを選択する操作の入力を受け付ける。前記アイコン生成部は、前記入力に基づいて、前記自船を表すシンボル及び前記選択された1つの前記他物標を表すシンボルを用いて、前記自船と前記1つの他物標との相対的な方位を示す1つのアイコンを生成する。前記表示部は、前記1つのアイコンを前記プロッタ画像とは異なる画像として表示する
【0009】
これにより、自船と1つの物標との関係に着目したアイコン表示が可能となり、ユーザは、表示されたアイコンを見ることで、他物標の自船に対する方位を直感的に把握することができる。また、自船の周囲に他物標が多数存在しても、1つのアイコンに複数の他物標のシンボルが現れないので、整理された形でのシンプルな情報表示が実現され、物標毎の理解が容易になる。
【0010】
前記の船舶用表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記情報取得部は、前記自船の船首方位の情報である自船船首方位情報を取得する。前記アイコン生成部が生成する前記アイコンは、前記自船と前記他物標との相対的な方位に加えて、前記自船の前記船首方位を少なくとも示す。
【0011】
これにより、ユーザは、アイコンを見ることで、自船の船首方位も把握することができる。従って、利便性を向上させることができる。
【0012】
前記の船舶用表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記情報取得部は、前記他物標が船舶である場合の船首方位の情報である他船船首方位情報を取得する。前記アイコン生成部が生成する前記アイコンは、前記自船と前記他物標との相対的な方位に加えて、当該他物標である船舶の前記船首方位を少なくとも示す。
【0013】
これにより、ユーザは、アイコンを見ることで、他物標の船首方位も把握することができる。従って、利便性を向上させることができる。
【0014】
前記の船舶用表示装置においては、前記アイコン生成部が生成するアイコンは、前記情報取得部が取得した情報により基づいて得られる前記自船と前記他物標との衝突危険度を少なくとも示すことが好ましい。
【0015】
これにより、ユーザは、アイコンを見ることで、自船と他物標との衝突危険度も把握することができる。従って、衝突を回避するための対処を迅速に行うことが容易になる。
【0016】
前記の船舶用表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記情報取得部は、自船位置に対して他物標が存在する方位及び前記他物標が船舶である場合の船首方位以外の前記他物標の状態に関する情報を取得する。前記アイコン生成部が生成する前記アイコンは、前記他物標の状態に関する情報を少なくとも示す。
【0017】
これにより、アイコンから更に多様な情報を得ることができるので、利便性の一層の向上を図ることができる。
【0018】
前記の船舶用表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記情報取得部は、前記自船の位置の情報である自船位置情報及び前記他物標の位置の情報である他物標位置情報を取得する。前記アイコン生成部は、前記自船から前記他物標までの距離に応じて、前記自船のシンボルの大きさ、前記他物標のシンボルの大きさ、及び、前記自船のシンボルと前記他物標のシンボルとの距離のうち、少なくとも何れかを変化させて前記アイコンを生成する。
【0019】
これにより、ユーザは、アイコンを見ることで、他物標の自船に対する方位に加えて、自船から当該他物標までの距離を把握することができる。その結果、ユーザは、自船と当該他物標との位置関係をより的確に理解することができる。
【0020】
前記の船舶用表示装置においては、前記表示部に、前記他物標の文字情報とともに、前記他物標のアイコンを表示することが好ましい。
【0021】
これにより、直感的な理解のためのアイコンでの表示と、詳細な状況の把握に好適な文字での表示と、が同時に行われるので、ユーザが当該他物標について一層適切に理解することができる。
【0022】
前記の船舶用表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記表示部は、1又は複数の前記他物標のシンボルを表示するとともに、前記他物標のシンボルが1つ選択されると、当該他物標の情報がポップアップ表示される。前記ポップアップ表示される内容に、当該他物標について前記アイコン生成部が生成したアイコンが含まれている。
【0023】
これにより、ユーザは、見たいシンボルを選択してアイコン付きのポップアップ表示を見ることで、当該シンボルに対応する他物標の情報を直感的に理解することができる。
【0024】
前記の船舶用表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記表示部は、複数の前記他物標の情報をリスト表示することが可能である。前記表示部にリスト表示される項目に、前記アイコン生成部が生成した前記アイコンが含まれる。
【0025】
これにより、リスト表示の中で並んで表示されたアイコンを眺めることで、複数の他物標の情報を直感的に把握することができる。従って、注意すべき他物標の発見等が容易になる。
【0026】
前記の船舶用表示装置においては、前記情報取得部が取得した前記自船に対する前記他物標の方位が変化する度に、前記アイコン生成部が前記アイコンを生成し、前記表示部が前記アイコンを表示することが好ましい。
【0027】
これにより、自船の周囲の状況の変化がアイコンの表示に反映されるので、ユーザは最新の状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係るAISシステムの全体的な構成を示す機能ブロック図。
図2】表示部によるプロッタ画面の例を示す図。
図3】表示部によるターゲット詳細画面にアイコンを追加した例を示す図。
図4】表示部によるリスト表示の例を示す図。
図5】表示部によるプロッタ画面のポップアップ表示を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るAIS情報表示装置2を備えるAISシステム1の全体的な構成を示す機能ブロック図である。
【0030】
図1に示すAISシステム1は、AIS情報表示装置2と、AIS送受信機7と、を備える。
【0031】
AIS情報表示装置2は、情報取得部3と、制御部4と、表示部5と、カーソル操作部6と、を備えている。
【0032】
制御部4は、AIS送受信機7から得られた各種のデータに基づいて、自船の周囲の状況を示す所定の画像を生成し、表示部5に出力する。また、制御部4は、必要に応じてAIS送受信機7を制御できるように構成されている。なお、制御部4の詳細な構成は後述する。
【0033】
AIS送受信機7にはAISアンテナ10が接続されており、他物標から送信されてくるAIS信号を受信するように構成されている。他物標から受信したAIS信号には、例えば他物標が船舶の場合、当該他船の船名、船体長、幅、現在位置、対地針路、対地船速、船首方位、回頭角速度、航行状態、喫水、積載物、目的地等の情報が含まれている。なお、AISは船舶同士の通信を主眼とするものであるが、船舶に限らず陸上局や航空機等がAIS情報を送信することもあり、AIS信号には、その送信元である物標の種類に応じて様々な情報が含まれる。
【0034】
AIS送受信機7には、周囲にAIS情報として送信する自船の位置及び船首方位のデータを取得するためのGPS受信機8及び方位センサ9が接続される。GPS受信機8には、GPSアンテナ11が電気的に接続される。この構成で、AIS送受信機7は、GPS受信機8から得られた情報、あるいは方位センサ9から得られた情報等を、所定の周期で他物標にAIS信号として送信するように構成されている。このAIS信号は、他物標が船舶である場合に当該船舶から受信するAIS信号と同様の信号を含んでいる。
【0035】
AIS送受信機7が他物標から取得したAIS情報は、AIS情報表示装置2が備える情報取得部3を介して、制御部4に出力される。情報取得部3は、AIS送受信機7からのAIS情報をAIS情報表示装置2に取り込むとともに、AIS情報表示装置2からの指示をAIS送受信機7に送るための外部インタフェース(例えば、接続コネクタ)として構成される。
【0036】
GPS受信機8は、GPS衛星からのGPS信号を受信して、自船の位置(地球基準の絶対的な位置)に関する情報を取得するように構成されている。GPS受信機8が取得したGPS情報は、AIS送受信機7に出力される。
【0037】
方位センサ9は、自船の船首方位(地球基準の絶対的な方角)を取得するように構成されている。この方位センサ9の具体例としては、ジャイロコンパスを挙げることができる。方位センサ9が取得した自船の船首方位の情報は、AIS送受信機7に出力される。
【0038】
AIS送受信機7は、GPS受信機8が取得したGPS情報や、方位センサ9が取得した方位情報等から、AIS情報を作成するとともに、当該AIS情報をAISアンテナ10からAIS信号として周囲に向けて送信する。
【0039】
AIS情報表示装置2は、カーソル操作部6を備える。このカーソル操作部6は、例えばポインティングデバイスや矢印キー等として構成されている。ユーザは、カーソル操作部6を操作することにより、表示部5の画面に表示される後述のカーソル17(図2及び図5を参照)を移動させて、画面の任意の位置を指示することができる。
【0040】
図1に示すように、制御部4は、情報記憶部12と、テーブル作成部13と、画像処理部14と、を備える。
【0041】
具体的には、制御部4は、CPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータとして構成されており、情報記憶部12は、前記コンピュータに内蔵されたRAM、ROM、HDD等の記憶媒体として構成される。また、制御部4に備えられたROMには、表示部5にAIS情報を表示するためのAIS情報表示プログラムが記憶されている。そして、以上のハードウェアとソフトウェアが協働することにより、制御部4を、テーブル作成部、画像処理部として動作させることができる。
【0042】
情報記憶部12は、AIS送受信機7で受信した他物標のAIS信号による情報、GPS受信機8が取得した自船のGPS情報、及び方位センサ9が取得した自船の船首方位情報を、情報取得部3を介して取得し、記憶している。
【0043】
テーブル作成部13は、自船の周囲に存在する他物標(言い換えれば、AIS情報を受信した他物標)の情報の一覧である他物標情報テーブルを作成する。
【0044】
画像処理部14は、AIS送受信機7により得られた情報を基に作成した前記他物標情報テーブルの情報から、自船の周囲のプロッタ画像を生成する。このプロッタ画像には、自船及び他物標等がグラフィックで描画される。また、画像処理部14は、後述するアイコン(小さな絵)19を生成するアイコン生成部15を備えている。
【0045】
次に、制御部4がAIS情報を取得して表示部5に画像を表示させるまでの処理を具体的に説明する。
【0046】
制御部4は、他物標からAIS情報を受信すると、それぞれの物標を一意に識別可能にするために、識別番号を割り当てる。また、制御部4は、各他物標のAIS情報を解析することにより、他物標の現在位置の経度及び緯度等を取得する。そして、テーブル作成部13は、各他物標の識別番号と、現在位置の経度及び緯度と、を含んだ他物標情報テーブルを作成し、記憶する。
【0047】
画像処理部14は、前記他物標情報テーブルに基づき、プロッタ画像を生成する。本実施形態におけるプロッタ画像は、自船が中心に位置し、かつ自船の船首方位が上となるように生成することもでき(いわゆるヘディングアップ)、北が上となるように生成することもできる(ノースアップ)。また、本実施形態はコースアップで表示することもできる。コースアップでは、行き先を設定していないときは、コースアップモードを選んだ瞬間の針路が真上に表示される。針路の変化に伴い、自船マークも旋回する。行き先を設定しているときは、行き先が真上に表示される。
【0048】
図2には、表示部5に表示されるプロッタ画像の例が示されている。図2に示すように、プロッタ画像を表示したプロッタ画面16には、自船シンボルS1と、他物標シンボルS2と、が何れもグラフィカルに(具体的には、図形により)表示されている。
【0049】
自船シンボルS1は、プロッタ画面16の中心に表示され、自船の現在位置及び船首方位を表す。また、自船シンボルS1は、短い直線の中央部に長い直線の端部を垂直に接続したT字状の図形で表示され、短い直線から延びる長い直線の先端の向きが自船の船首方位を示す。なお、図2の例では、プロッタ画像は、北が画面上方向に固定されるように生成されている(ノースアップ)。他物標シンボルS2は、他物標の少なくとも現在位置を表している。例えば他物標が船舶の場合は、他物標シンボルS2は二等辺三角形で表示され、二等辺三角形の頂角の向きが当該船舶(他船)の船首方位を示す。
【0050】
表示部5は、上記のプロッタ画面16の任意の場所をユーザが指示できるようにするためのカーソル17を表示できるように構成されている。このカーソル17は、カーソル操作部6をユーザが操作することで自由に移動させることができる。
【0051】
そして、表示部5は、上記のカーソル17を用いて他物標シンボルS2を指示する操作(具体的には、カーソル17を他物標シンボルS2に重ねて図略の選択ボタンを押す操作)をユーザが行った場合に、当該他物標に関する詳細な情報を表示できるように構成されている。
【0052】
図3に示すように、1つの他物標シンボルS2を指示し、選択ボタンを押す操作を行うと、指示された他物標に関する詳細情報を文字で表示したターゲット詳細画面18に表示を切り替えることができる。詳細表示される他物標の情報は、例えば他物標が船舶の場合には、識別番号、船名、現在位置、対地針路、対地船速、船首方位、回頭角速度等であるが、これらに限定されない。これにより、ユーザは、他物標についてより詳細な情報を知ることができる。
【0053】
本実施形態では、図3に示すように、ターゲット詳細画面18に、当該他物標の文字情報とともにアイコン19が表示される。アイコン19は、図2に示すプロッタ画面16に比べて簡略された情報を表示するための(プロッタ画像より相当に小さな)画像である。このアイコン19は、自船と当該他物標との関係に特に着目した情報を示す。具体的には、アイコン生成部15が、自船と当該他物標との相対的な方位、自船の船首方位、及び当該他物標の船首方位を取得し、これらの関係を示すアイコンを生成する。
【0054】
なお、当該他物標の近くにほかの物標が存在しても、1つのアイコン19には1つの他物標シンボルS2のみが含まれる(1つのアイコン19に複数の他物標シンボルS2が描かれることはない)。この簡潔な表示により、ユーザは、物標毎に整理された形で状況を理解することができる。
【0055】
アイコン19の中心にある二等辺三角形のシンボルは、ターゲット詳細画面18で詳細情報を示している当該他物標を表す他物標シンボルS2である。また、アイコン19のアイコン外枠円20上にある小さな円形のシンボルは、自船を表すアイコン用自船シンボルS3である。アイコン19における、他物標シンボルS2に対するアイコン用自船シンボルS3の位置(アイコン外枠円20上のアイコン用自船シンボルS3の位置)は、自船と他物標との相対的な方位を表している。従って、ユーザは、図3に例示されているアイコン19を見たときに、自船は他船に対してほぼ北東の方位に位置し、他船は自船に対してほぼ南西の方位に位置する、といった、自船と他船との相対的な方位関係を把握することができる。
【0056】
アイコン19において、他物標を表すシンボルは、プロッタ画面16と同様のものが用いられる。図3では、当該他物標が船舶である場合の例が示されているので、アイコンにおいて他物標シンボルS2が二等辺三角形で表示され、その頂角の方向が当該他船舶の船首方位を表している。このように、本実施形態では他物標シンボルS2の二等辺三角形の向きが他船の船首方位を示している。この結果、ユーザはアイコン19を見ることで他船の船首方位も把握することができるので、利便性を向上させることができる。
【0057】
また、円形のアイコン用自船シンボルS3の内部には、中心から外側に延びる短い直線が描かれ、この直線の向きが自船の船首方位を表している。この結果、ユーザはアイコン19を見ることで自船の船首方位も把握することができるので、利便性を向上させることができる。
【0058】
このターゲット詳細画面18では、他物標の文字による詳細な情報を表示するのと同一の画面に、当該他物標のアイコン19が表示されている。即ち、直感的な理解のためのアイコン19での表示と、詳細な状況の把握に好適な文字での表示と、が同時に行われるので、ユーザが当該他物標について一層適切に理解することができる。
【0059】
本実施形態において、表示部5で表示される画像(ターゲット詳細画面18を含む)は、情報取得部3を介して取得したAIS情報に基づいて、制御部4内の画像処理部14で生成される。新しく受信したAIS情報から情報取得部3が情報を取得する毎に、画像処理部14で画像が処理され、当該画像が表示部5に表示される。従って、ターゲット詳細画面18において数値で表示される現在位置、船首方位等の内容は、新しいAIS情報の受信等に伴い、最新の情報に逐次更新される。
【0060】
また、本実施形態のAIS情報表示装置2では、新しいAIS情報が受信される毎に、画像処理部14のアイコン生成部15で新しくアイコン19が生成され、表示部5でのアイコン19の表示に自動的に反映される。従って、他物標の状態(自船に対する他物標の方位等)が変化するたびに、新しいアイコンが生成されて表示されることになる。これにより、ターゲット詳細画面18において、直感的に把握し易いアイコン19が最新の状態で表示されるので、ユーザは自船の周囲の状況の変化を、最新の情報で把握することが容易になる。
【0061】
本実施形態では、ターゲット詳細画面18においてアイコン19を表示できる領域に制限があるので、アイコン19の表示サイズは常に固定されている。このことから、自船と他物標とが近づいたり離れたりしても、アイコン19において、他物標シンボルS2と自船シンボルS1の表示位置が近づいたり離れたりすることはない。言い換えれば、本実施形態では、自船と他物標との距離をアイコン19の表示に反映させないこととし、これにより簡潔な表示及び処理を実現している。
【0062】
ただし、アイコン19の大きさに制限があっても、例えば簡略化された形で、自船と他物標との距離を表現することもできる。例えば、自船と他物標との距離が変化するのに応じて、アイコン19上の他物標シンボルS2の大きさ又はアイコン用自船シンボルS3の大きさを(例えば3段階で)変えることが考えられる。また、自船と他物標との距離が変化するのに応じて、他物標シンボルS2の位置(言い換えれば、他物標シンボルS2とアイコン用自船シンボルS3との距離)を、アイコン外枠円20内に収まる範囲で変えることが考えられる。この場合、自船から当該他物標までの距離もアイコン19の表示により把握できることになるので、ユーザは、自船と当該他物標との位置関係をより的確に理解することができる。
【0063】
このようにして、AIS情報に含まれる注目すべき情報に絞り込んだアイコン19を表示することによって、ターゲット詳細画面18で特定の他物標の詳細情報を表示しながら、自船と当該他物標との相対的な関係が直感的に把握し易くなる。また、アイコン19を表示することによって、整理されたシンプルな情報表示となり、物標毎の理解が容易になる。同時に、他物標シンボルS2について、プロッタ画面16とターゲット詳細画面18で同一のシンボルを使用することによって、プロッタ画面16とターゲット詳細画面18の関連度の高さをより強く見せることができ、画面遷移の操作感が良好である。
【0064】
なお、図には示されていないが、本実施形態のアイコン19では、自船と他物標との相対的な方位と、自船及び他物標の船首方位と、自船と他物標との相対距離に基づいて、自船と他物標の衝突危険度を表示することができる。具体例としては、自船と当該物標とが最も接近した際の距離、及び、自船と当該物標とが最も接近するまでの時間を計算により予測し、得られた予測距離及び予測時間が短い場合等に、アイコン19の表示の少なくとも一部を変化させるようにする(なお、上記の予測により衝突危険度を判定する方法は公知であるため、具体的な説明を省略する)。例えば、アイコン外枠円20の内側を例えばオレンジ等の目立つ色で表示させたり、アイコン外枠円20自体の色を変えたり、点滅させたりすることが考えられる。これにより、注意すべき状況にユーザが気付き易くなるので、衝突を回避するための対処を迅速に行うことが容易になる。また、緊急度に応じてアイコン19の表示を(例えば表示色を黄、オレンジ、赤とするように)より目立つように変化させることが好ましい。
【0065】
なお、アイコン19による表示に関して、本実施形態の構成を次のように変更することもできる。
【0066】
上述したように、新しいAIS情報が受信される毎にアイコン19の表示は逐次更新されるが、AIS情報の受信にある程度の時間間隔が空くことがあるので、アイコン19の表示が変化しないように見える場合がある。この点を考慮し、アイコン19に関して、自船及び他物標の現在の状況を単純に画像として表現するのではなく、あたかも動いているような表現をすることもできる。例えば、当該他物標が船舶である場合、当該船舶の急な旋回、急な加速、及び急な減速をした際に、その変化を例えば残像のように表現したアイコンを表示させることが考えられる。それによって、当該他物標における、著しい状況の変化を把握することが容易になる。
【0067】
このように、アイコン19において、自船位置に対して他物標が存在する方位と、他物標が船舶である場合の船首方位と、を示すとともに、それ以外の他物標の状態(例えば、旋回や加減速に関する状態)を示すこともできる。これにより、利便性の一層の向上を図ることができる。
【0068】
アイコン19では、アイコン19上での自船シンボルであるアイコン用自船シンボルS3と他物標シンボルS2の配置を、ユーザの操作(例えば、カーソル操作部6を用いた操作)によって、入れ替えるように構成することもできる。即ち、他物標を中心にして表現したアイコン表示と、自船を中心にして表現したアイコン表示と、を切り替えるような態様も可能である。なお、自船を中心にした表現としては、自船シンボルがアイコンの中心に大きく表示され、他物標シンボルがアイコン外枠円上に小さく表示されるような表現が考えられるが、これに限定されない。これによって、自船と他物標の相対的な関係を、自船及び当該他物標の両方の視点から見ることができるので、自船と当該他物標との相対的な関係を一層理解し易くなる。
【0069】
次に、図4を参照しながら、リスト表示について説明する。なお、この表示画像は制御部4の画像処理部14で生成され、表示部5に表示されたものである。図4に示したリスト表示画面21は、ターゲット詳細画面18より情報量を少なくすることによって、複数の他物標の詳細情報を縦に並べて同時に表示したものである。図4の例では、識別番号、船名、自船と当該他物標との相対距離、自船と当該他物標との相対的な方位が表示されている。ただし、リストの各行に表示される情報は、表示スペース等の事情に応じて適宜変更することができる。
【0070】
このリスト表示画面21においても、ターゲット詳細画面18と同様に、それぞれの他物標の文字情報に加えて、上記と同様のアイコン19を表示することができる。これにより、リスト表示画面21の中で並んで表示されたアイコン19を眺めることで、複数の他物標の情報を直感的に把握することができる。従って、注意すべき他物標の発見等が容易になる。
【0071】
次に、ポップアップ表示について説明する。本実施形態の表示部5では、上記のプロッタ画面16でカーソル17を他物標シンボルS2に合わせたときに、当該他物標シンボルS2(カーソル17)に近い位置に、当該他物標の情報がポップアップウインドウ22で表示されるように構成されている。
【0072】
図5には、ポップアップ表示の例が示されている。プロッタ画面16上で、カーソル17を合わせた1つの他物標シンボルS2に対応する他物標の情報が、ポップアップウインドウ22で表示されている。ポップアップウインドウ22で表示される情報は、前述のリスト表示画面21と同様に、表示スペース等を考慮して適宜変更することができる。
【0073】
このポップアップ表示においても、ターゲット詳細画面18及びリスト表示画面21と同様に、アイコン19を表示することができる。これにより、プロッタ画面16上で、複数の他物標の状態を並行的に監視しながら、焦点を当てたい注目すべき他物標の情報を分かり易く表示することができる。
【0074】
なお、上記で説明したリスト表示画面21及びポップアップウインドウ22の何れにおいても、表示されるアイコン19は、ターゲット詳細画面18の場合と同様に、AIS情報を新しく受信する毎に当該AIS情報を反映したものに更新される。従って、直感的に把握し易いアイコン19が最新の状態で表示されるので、ユーザは自船の周囲の状況の変化を、最新の情報で把握することが容易になる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態のAIS情報表示装置2は、情報取得部3と、アイコン生成部15と、表示部5と、を備える。情報取得部3は、自船位置に対して他物標が存在する方位の情報である方位情報を取得する。アイコン生成部15は、アイコン用自船シンボルS3及び1つの他物標シンボルS2を用いて、自船と他物標との相対的な方位(相対的な方位関係)を示すアイコン19を生成する。アイコン生成部15は、アイコン生成部15で生成したアイコン19を表示する。
【0076】
これにより、ユーザは、表示されたアイコン19を見ることで、他物標の自船に対する方位を直感的に把握することができる。また、自船の周囲に他物標が多数存在しても、1つのアイコン19に複数の他物標のシンボルが現れないので、整理された形でのシンプルな情報表示が実現され、物標毎の理解が容易になる。
【0077】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0078】
アイコン用自船シンボルS3において、自船の船首方位を、短い直線の代わりに、他の図形(例えばT字や三角形等)で表現することもできる。また、アイコン用自船シンボルS3において、自船の船首方位を示す短い直線を省略する(即ち、自船の船首方位をアイコン19で示さない)ように変更することもできる。
【0079】
アイコン19において、船舶を示す他物標シンボルS2の二等辺三角形が、当該他船の船首方位にかかわらず、常に一定の向き(例えば、真上)を向くように構成されても良い。言い換えれば、アイコン19が、他物標である他船の船首方位を示さず、自船と他物標との相対的な方位のみを示すように構成されても良い。特に、向きの情報を持たない物標(例えば、陸上局)については、アイコンを上記のように表示することが好ましい。
【0080】
アイコン19において、他物標シンボルS2の図形は任意に変更することができ、例えば船舶であっても二等辺三角形以外の図形で表示することもできる。また、アイコン外枠円20は省略することもできる。
【0081】
アイコン19は、上記した以外にも、他の様々な情報(例えば、AISのクラス等)を示すように変更することができる。
【0082】
本発明は、AIS情報を解析して情報を取得するAIS情報表示装置2に限定されない。例えば、位置情報を他船とやり取りするために船舶に搭載されるDSB送受信機において、他船(僚船)の自船に対する方位や当該他船の船首方位を当該DSB送受信機のディスプレイに表示する場合に、上記のアイコン19のような表示を行うように構成することができる。
【符号の説明】
【0083】
2 AIS情報表示装置
3 情報取得部
5 表示部
15 アイコン生成部
19 アイコン
21 リスト表示画面
22 ポップアップウインドウ
S1 自船シンボル
S2 他物標シンボル
S3 アイコン用自船シンボル
図1
図2
図3
図4
図5