【実施例】
【0028】
以下、本発明の一実施例に係る光干渉断層計について図面を参照して説明する。
[一実施形態]
図1には本発明に係る一実施例の光干渉断層計1の光学系の詳細を説明した図である。そして、
図2には本発明に係る一実施例の光干渉断層計1の装置全体の構成を示した図である。尚、本実施例では被検物を人の眼(眼球)とし、取得する断層画像を眼底部としているが、本発明に係る方法はこれに限定されるものではなく、前眼部であってもいいし、生体の他の部位、例えば皮膚表面部であってもよい。さらに言えば、生体でない場合であっても、OCTを用いて断層画像を取得する装置であれば、適応可能であり、本発明による効果が得られることは言うまでもない。
【0029】
光干渉断層計1には次の2つの光学系を備えている。被検眼Eの眼底の断層画像を干渉光の技術を用いて非侵襲で取得するための干渉光学系(以下、OCT光学系)100と、赤外光源201を用いて被検眼Eの眼底を照射し観察するための眼底SLO画像を取得するスキャニングレーザーオフサルモスコープ(SLO)光学系(以下、SLO光学系)200である。
【0030】
各光学系についてその構成を以下に説明する。
(OCT光学系100)
OCT光学系100は光源101から干渉光をA/D変換するADC116までで構成される。本実施例ではフーリエドメイン型のOCTの1つである、光源101に波長掃引型光源を用いたSS−OCTを採用している。SS−OCTはその測定原理から他のOCTの方法と比較して高速に干渉信号(断層画像データ)を取得できる点で優位とされている。OCT光学系100は本実施例のSS−OCTに限定されるものではなく、他のフーリエドメイン型のOCTであるスペクトルドメインOCT(SD−OCT)であってもよい。
【0031】
光源101から出力された光はファイバーを通ってファイバーカプラ102により、コリメータレンズ103に入力する測定光とコリメータレンズ110に入力する参照光に分岐される。コリメータレンズ103に入力した測定光はフォーカスレンズ104、ガルバノミラー105、レンズ106、ダイクロイックミラー107及び対物レンズ109を通って被検眼Eの眼底部に照射される。そして、被検眼Eの眼底部から反射された測定光は、照射時とは逆に対物レンズ109、ダイクロイックミラー107、レンズ106、ガルバノミラー105、フォーカスレンズ104、コリメータレンズ103、ファイバーカプラ102を通り、ファイバーカプラ114の一方の入力部に入力する。
【0032】
ファイバーカプラ102に分岐され、コリメータレンズ110に入力した参照光はプリズム112で反射されてコリメータレンズ111を通って、ファイバーカプラ114の他の一方の入力部に入力する。
【0033】
ファイバーカプラ114に入力した測定光と参照光はファイバーカプラ114内で合波され干渉光としてバランス検出器115に入力して電気信号(干渉信号)に変換される。尚、ファイバーカプラ114から出力された2つの干渉光は互いに位相が180°異なる干渉光であり、この2つの干渉光がバランス検出器115に入力し差動増幅することにより、コモンノイズはキャンセルされ、干渉信号となる干渉光のみ増幅される。ここで、コモンノイズなどのノイズ成分の影響が低い場合は簡易な1入力の検出器などを採用してもよい。
【0034】
バランス検出器115から出力された干渉信号はADC116でデジタル信号としてサンプリングされ、CPUやメモリなどからなる演算部500に入力し、フーリエ変換されて深さ方向の断層信号であるAスキャンデータを取得し演算部500内のメモリに記憶される。
【0035】
プリズム112は制御部113により光軸上に移動し、参照光路長を変更調整可能に制御される。通常、OCT撮影の前に参照光路長と測定光路長が同じ光路長になるように制御部113により移動し、測定中は固定される。
【0036】
ガルバノミラー105は被検眼Eに対して水平(X軸方向)垂直(Y軸方向)にスキャンするものであり、制御信号は演算部500から入力される。ガルバノミラー105をX軸方向、Y軸方向にスキャンすることにより被検眼Eの眼底部の3次元の断層画像が取得できるのである。
【0037】
本実施例では、ダイクロイックミラー107は例えば900nm以上の長波長の光(OCT光源101からの光)は通過し、900nmより短い短波長の光(例えば840nm、SLOの光源からの光)は反射するように設定されている。ダイクロイックミラー107は上述の仕様に限定されるものではなく、使用する光源の波長により適宜設定すればいい。
【0038】
上述のようにダイクロイックミラー107を用いて被検眼Eに照射され反射された2つの波長の異なる光(OCT光、SLO光)が適切に分割され、各々の測定を可能にしている。
【0039】
図4は、OCT光学系100による断層像(Bスキャン像)を取得する様子を示したものである。
図4(a)は被検眼Eの眼底網膜の一例を、
図4(b)は断層像取得部100から取得して得られた眼底網膜401の複数の2次元断層像(Bスキャン像)の例を示している。そして、
図4(c)は本実施例にて生成された眼底部の3次元断層像の例を示している。尚、
図4(a)〜(c)のx軸はBスキャンのスキャン方向を、y軸はCスキャンの方向を示す。更に、
図4(b)、(c)のz軸はAスキャン信号の奥行き方向、つまり眼底部の深さ方向を示す。実際に撮影しモニタに表示されたOCT画像を
図6に示す。
【0040】
(SLO光学系200)
SLO光学系200は、光源201からA/DコンバータであるADC210までで構成される。通常、SLO光源は800〜900nmの赤外のレーザーダイオードを用いて眼底画像を非侵襲で取得する。尚、本実施例では840nmのレーザーダイオードをSLO光源として採用している。SLO光源についても、本実施例のレーザーダイオードに限定されるものではなく、他の光源、例えばLEDであってもよい。
【0041】
SLO用の光源201から出力された測定光(他の測定光を区別するため、以下、SLO測定光とする)はミラー204で反射される。ここで、眼底に照射する光と眼底から反射された反射光が同じ経路を辿る。そこで、照射光と反射光を分割するため、ミラー204は、所定の割合で反射と透過するハーフミラー又はビームスプリッタなどが採用される。光学系内の意図しない散乱や反射により生じるノイズ光が低減するため、ミラー204に偏光ビームスプリッタを採用してもよい。
【0042】
よって、SLO測定光の一部がミラー204により反射されてフォーカスレンズ203に入力し、その後スキャン装置208、レンズ202を通り、ダイクロイックミラー107に入力する。入力したSLO測定光はダイクロイックミラー107で反射し、対物レンズ109を通って被検眼の眼底に照射される。フォーカスレンズ203は眼底に照射されたSLO測定光が眼底上でフォーカスするよう光軸上で移動制御される。
【0043】
眼底で反射されたSLO測定光は逆の経路で、対物レンズ109、ダイクロイックミラー107、レンズ202、スキャン装置208、フォーカスレンズ203を通ってミラー204に入力し、その一部がミラー204を透過してレンズ205に入力して集光後ピンホール206を通って光検出器207で受光し、電気信号に変換後ADC210に入力する。
【0044】
ここで、スキャン装置208は、上述のOCT光学系100の中のガルバノミラー105と同様に、SLO測定光を被検眼の眼底に対してX軸方向、Y軸方向にスキャンするものであり、スキャン装置208により、SLO測定光の照射位置を走査して眼底の正面画像データを取得できるようになっている。スキャン装置208は、ガルバノミラーに限定されるものではなく、ポリゴンミラーを用いてもよいし、ガルバノミラーとポリゴンミラーを複合した構成としてもよい。また、光検出器207は、例えば、アバランシェフォトダイオードや光電子増倍管などが採用される。
【0045】
上述のように、眼底部をXYスキャンしてその反射光をADC210でサンプリングし、演算部500で信号処理することにより、被検眼Eの眼底の正面画像が取得できるのである。実際に撮影しモニタに表示されたSLO画像を
図7に示す。
【0046】
(操作手順)
次に、本実施例に係る光干渉断層計の操作手順について説明する。
【0047】
図3は、本実施例における操作手順を説明したフローチャートである。
まず、S10及びS12でOCT撮影とSLO撮影を同時に、かつ、並列に実施する。(現段階では、光軸調整などを実施していないので、撮影されたOCT画像やSLO画像では本来撮影すべき眼底部の断層像や眼底像は取得されない。)
【0048】
S14では、上記2つの光学系が配置されたヘッド(ヘッド部とも言う)を被検眼に合わせる(以下、アライメントという)。アライメントは本体に備えた(図示しない)ジョイスティックなどを用いて実施される。一般的には被検眼の前眼部を映し出す(図示しない)モニタを見ながらアライメントされる。光軸に垂直な方向についてのアライメント(XYアライメント)は容易であるが、光軸方向のアライメント(Zアライメント)については、モニタの被検眼画像のフォーカス具合が判断基準となり、一般的には最適の位置ではなく、その位置は測定光路長にも影響する。後述するが、測定光路長の調整過程を含むため、多くの場合、S18のゼロ点調整と間断なく実施されることとなる。
【0049】
本実施例では、S16で、(図示しない)固視光学系を用いて固視灯を被検眼に対して照射し、これにより、被検眼を固視してアライメント(ヘッドを目に合わせる)を実施している。固視光学系は、一般的な眼科装置に備わっている固視光学系が採用可能である。S16の被検眼固視のステップは、測定対象が人の眼の場合、測定中の被検眼の動きを抑えるために実施されるが、固視する必要がない場合や、対象が人の眼ではなく、皮膚表面の場合などは、S16は省略できる。
【0050】
次に、S18でOCTのゼロ点調整を行う。OCT光学系の測定光路長であるファイバーカプラ114から被検眼の網膜の直前位置までの距離と、参照光路長であるファイバーカプラ114からプリズム112までの距離を一致させる。S18におけるOCTのゼロ点調整は本発明のポイントであるため、その詳細は後述する。
【0051】
S18でOCTのゼロ点調整が完了したら、S20でSLO光学系のフォーカス調整を行う。フォーカスレンズ203を光軸上で移動制御して光源201から照射されるSLO光が被検眼の眼底(網膜)上で焦点が合う(フォーカスする)ようにする。そして、この時得られた制御信号の値から被検眼の眼屈折力も算出され、本体内の記憶部に記憶される。
【0052】
次に、S22でOCTのフォーカス調整を行う。フォーカス調整はフォーカスレンズ104を光軸上で移動させて撮影対象位置である眼底(網膜)にOCTの光が焦点を結ぶようにフォーカスレンズ104を位置制御して実施する。
【0053】
OCTのフォーカス調整が終了したら、S24で「n=0」とする。本実施例の場合、3次元画像を取得するため、Bスキャンの位置を移動しながら複数枚のBスキャン像を取得する。そのため、最初のBスキャン像を0番目のBスキャン像としてカウントする。
【0054】
S26でOCTの撮影を開始する。本実施例のようなフーリエドメイン型のOCTであるSS−OCTの場合、深さ方向(Z方向)のスキャンは必要ないため、ガルバノミラー105により、X方向又はY方向に一度スキャンすることにより、スキャンした範囲の複数のAスキャンデータが取得できるため、本実施例の場合、以下、OCT撮影とはBスキャン撮影と同意として扱う。そして、OCT撮影して得られた画像をBスキャン像又はBスキャン画像という。Bスキャン画像は、本実施例では眼底部の深さ方向の2次元断層(画)像である。そして、予め設定した枚数(つまり予め設定した枚数n(final))を取得するまで、以下で説明するS26〜S40の操作をBスキャンの位置を移動しながら繰り返し、取得した複数枚のBスキャン像から3次元断層画像を取得することができるのである。
【0055】
図3のフローには記載がないが、SLO撮影はOCT撮影(Bスキャン撮影と同意)と並列して実施される。そして、SLO撮影で取得したSLO画像から、眼底部の移動検出(S28)を行い、S30で眼底部の移動量を算出して、算出した眼底部の移動量に基づいてS32でOCTスキャンの位置を補正(変更)する。
【0056】
S32のSLO画像を用いたOCTスキャンの位置補正(アイトラッキングと呼ぶこともある)は必ずしも必要ではない。本実施例の場合、被検物が人の眼であるため、固視されていても、固視微動などが常に生じ、取得したOCT画像にモーションアーチファクトが入りやすい。そのため、本実施例では上述のようなアイトラッキングを実施しているのであって、被検物が生体ではないような場合で、モーションアーチファクトを考慮しなくてもいい場合は、上記のようなアイトラッキングは必要ないため、S28〜S32の工程は削除できる。
【0057】
OCT撮影中もS34により、予め設定した網膜色素上皮層などの所定の干渉ピークの位置検出は行われ、所定の干渉ピークの位置が移動したら(Y)、S36で、後述説明する算出された測定光路長TになるようにZアライメントとプリズム112の移動を同時に行うように制御することができる。
【0058】
もし、所定の干渉ピークの位置に移動がなければ(N)、S38に進み、次のOCT画像を撮影する(S38、n=n+1)。
【0059】
もし、撮影した枚数が所定の数になったら(S40、n>n(final))、OCTの撮影は終了する。撮影した枚数が所定の数より少ない場合はS26に戻ってOCT撮影を続ける。
【0060】
OCTの撮影が終了したら、撮影された複数のOCT画像は演算部500でフーリエ変換され、平滑処理などの画像処理がなされ、被検眼の眼底部の断層画像が記憶部に記憶させると共に、モニタなどに表示される。
【0061】
(OCTのゼロ点調整)
OCTで取得される断層像の深さ幅(検出窓)は数mm程度と小さいことや、OCTの計測感度が測定光路長と参照光路長が等しい位置ほど高いことから、OCT撮影したい位置に測定光路長を設定し、参照光路長をその測定光路長に等しくする(これを「OCTのゼロ点調整」とここでは記述する)ことは重要である。
【0062】
従来はいくつかのステップを踏んで実施していたため、このゼロ点調整に時間がかかっていた。本発明に係る方法はこの問題を解決するものであり、
図5を用いて本発明に係るゼロ点調整の方法を説明する。
【0063】
S100でヘッドを被検眼に対して前後方向に移動する前に、参照光路長を予め所定の距離に設定しておく。本実施例の場合、測定の対象が被検眼の眼底部であるため、ファイバーカプラ114からプリズム112までの距離である参照光路長の距離は、ファイバーカプラ114から被検眼の網膜の直前位置までの距離である測定光路長の距離に近い値に設定しておくことが望ましい。この測定光路長の距離は、ファイバーカプラ114から被検眼の角膜上皮位置までの距離と被検眼の眼軸長の和として求めることができる。ファイバーカプラ114から被検眼の角膜上皮位置までの距離は予め光学設計する際に設定した値を用いることができる。そして、被検眼の眼軸長は、他の装置で被検眼の眼軸長が測定されていれば、その値を用いることができるし、眼軸長が不明な場合は正常眼データの平均眼軸長の値である24mmを用いてもよい。このように、参照光路長の距離を予め適切な値に設定しておくことにより、S102における所定のピークの検出がされやすくなるのである。
【0064】
そして、S100でヘッドを被検眼に対して前後方向(Z軸方向、光軸方向)に移動する。OCT撮影による干渉信号を取得し、S102で、取得した干渉信号の中に予め設定した所定のピークを検出する。本実施例の場合、測定対象は被検眼の眼底部であるため、眼底部の中で比較的反射強度の高い網膜色素上皮層における干渉ピークを所定の干渉ピークとして設定し、この所定の干渉ピークが検出可能な閾値を予め設定し、その閾値を超える強度を持った干渉ピークを検出する方法を用いることができる。
【0065】
S102で、所定の干渉ピークを検出したら(Y)、S106の光路長Tを算出するステップに進む。検出できない場合(N)は、再度、S100に戻り、ヘッドを被検眼に対して前後方向に移動する。S100に戻る前に、上述のように予め設定した参照光路長の距離が適切でなかった場合、例えば、被検眼の眼軸長の値が正常眼データの平均眼軸長の値である24mmに比べ極端に異なっている場合は、S104で参照光路長の距離を変更する。S104の処理は、適宜実施すればいいのであり、必ずしも実施する必要はない。
【0066】
S102で所定の干渉ピークを検出したら、S106で光路長Tを算出する。以下に検出した所定の干渉ピークから光路長Tを算出する方法を記述する。
【0067】
図8は、本実施例における光路長Tを算出する方法を説明する図である。この場合、所定の干渉ピークは網膜色素上皮層のピークである。この時の参照光路長の距離をdとすると、取得されるOCT画像データにおける所定のピークである網膜色素上皮層のピークの位置は参照光路長の距離dを始点とした位置であり、この始点から網膜色素上皮層のピークの位置までの距離をaとすると、ファイバーカプラ114から網膜色素上皮までの距離Aは、dとaの和(d+a)として算出できる。ここで、dは既知であり、aはOCT画像データから求めることができるので、この時点におけるファイバーカプラ114から網膜色素上皮までの距離AはA=d+aとして算出できる。
【0068】
ここで算出したファイバーカプラ114から網膜色素上皮層までの距離Aは、ファイバーカプラ114から被検眼の角膜上皮までの距離Zdと角膜上皮から網膜色素上皮層までの距離ALの和(A=Zd+AL(=d+a))でもある。
そこで、ヘッド位置を検出する(図示しない)位置センサからヘッド位置を求めることによりファイバーカプラ114から角膜上皮までの距離Zdを算出して、先に算出したファイバーカプラ114から網膜色素上皮層までの距離AからZdを差し引くことにより、ALが算出できる。(AL=A−Zd)
【0069】
S106において求める光路長Tは本実施例では、眼底部の断層像を高感度で取得する測定光路長の距離であり、厳密に言えば、(Zアライメントが最適に調整された時の)ファイバーカプラ114から網膜の直前の位置までの最適な距離である。
【0070】
Zアライメントが最適に調整された時のファイバーカプラ114から被検眼の角膜上皮までの距離をZ0、網膜色素上皮層と(適宜設定される)網膜の直前の位置との距離をΔtとすると、求める光路長TはT=Z0+AL−Δtとして算出できる。
【0071】
以上のように、検出した所定(網膜色素上皮層)の干渉ピークから測定に適した光路長Tを求めることができるのである。尚、上述に係る光路長Tの算出方法は一実施例であって、上述した方法に限定するものではない。後述するような方法なども採用可能である。また、上記説明では、所定の干渉ピークを網膜色素上皮層としたが、勿論、これに限定するものではなく、被検眼によっては、他の層の方が最適な場合もある。つまり、所定の干渉ピークは対象となる被検眼に応じて、適宜設定すればよいのである。
【0072】
S106で光路長Tを算出した後、
図8(b)に示すように、S108及びS110で測定光路長と参照光路長が光路長Tになるように、ヘッドZ位置調整(S108)とプリズム112の移動(S110)を同時に実施する。
【0073】
測定光路長と参照光路長が光路長Tになったら(S112)、OCTのゼロ点調整は完了し、このときの所定の干渉ピークの位置を記憶部に記憶しておき、この記憶した値に基づいて、上述のように、
図3におけるS34〜S36のOCT撮影時の光路長制御に用いることができるのである。
【0074】
または次のような実施も可能である。S100でヘッドを被検眼に対してアライメントを開始するときは、安全性のためヘッドと被検眼の距離関係は測定時よりも遠くにあることが通例である。ヘッドが被検眼より十分遠い位置であるとして、参照光路長を予め装置の最大値に設定しておき、ヘッドを被検眼に近づける。すると被検眼に近づく途中で、例えば参照光路長と測定光路長が一致し、所定のピークを検出し、S106以降の処理を行うことができる。このようにすると前述のように眼軸長を予測することなしにゼロ点調整をスムーズに実施することができる。
【0075】
または所定のピークは必ずしも測定対象の像に含まれなくてもよい。たとえば、所定のピークを網膜色素上皮層のピークのエイリアシングとすることもできる。エイリアシングであるかどうかは例えば強度の閾値やそのパターンなどが判断基準となる。この場合、エイリアシングが検出された(S102)位置は、網膜色素上皮層の位置と検出窓の深さ幅に関連する。それらの値を考慮したうえで光路長Tも算出可能である。このように測定対象の画像と測定光路長と参照光路長が一致しない場合でも、想定される所定のピークを適切に選択することで光路長Tの算出が可能であり、S106以降の処理を行うことができる。このような場合は、もちろん網膜色素上皮層そのものも、同時に所定のピークの1つとして同時に探索することができる。よって所定のピークは必ずしも1つのピークに限定されるものではない。
【0076】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0077】
例えば、上記実施例では、眼底正面画像取得のためSLOを採用したが、SLOに限定されるものでななく、眼底カメラを採用してもよい。さらに言えば、OCTのCスキャン画像から作成したエンファス像(
図5(b))を用いれば、SLOや眼底カメラのような眼底正面画像取得手段は、必ずしも必要ではない。このような場合、アイトラッキングを、例えば、別途、前眼部撮影光学系を配置し、取得した前眼部画像を用いて実施することも可能である。この前眼部撮影光学系は、眼底正面画像撮影光学系共に配置し、アイトラッキングを両方の撮影画像を用いて実施することも可能である。