(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491541
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】手摺りの角度調整機構
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-109932(P2015-109932)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-223151(P2016-223151A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日:平成27年3月13日 販売した場所:有限会社新和施工
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)販売日:平成27年3月31日 販売した場所:おおにし工房
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (3)販売日:平成27年5月15日 販売した場所:株式会社トライアングル
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (4)公開日:平成27年5月10日 刊行物名:新建ハウジング(平成27年5月10日付)第13面
(73)【特許権者】
【識別番号】397042089
【氏名又は名称】イズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】泉 茂寿
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−256672(JP,A)
【文献】
特開2009−167675(JP,A)
【文献】
特開2009−046943(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0277640(US,A1)
【文献】
実開昭60−142421(JP,U)
【文献】
特開昭59−187952(JP,A)
【文献】
特開2010−094353(JP,A)
【文献】
特開2004−027540(JP,A)
【文献】
実公昭49−032832(JP,Y1)
【文献】
実開昭58−081238(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
F16B 7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の支柱に支持された手摺り部材の取り付け角度を調整可能とする手摺りの角度調整機構において、
中心部に固定ボルトが貫通される貫通孔が設けられた正面視略円盤状の角度調整盤であって、外周面には手摺り部材を支持する手摺り支持体が取り付けられると共に、円盤状の表面には奥に行くにしたがって次第に幅狭に形成された断面略V字形状のV溝が複数隣接して配置された角度調整盤と、
前記支柱の頂部に設けられ、上部側に前記角度調整盤が収容配置される側面視略U字形状の収容部を備えた角度調整部ベースであって、前記角度調整盤に設けられた前記貫通孔に対応する位置には前記固定ボルトが挿通されるボルト孔が設けられ、前記V溝に対応する位置には角度調整ネジを取り付けるための角度調整用ネジ孔が設けられた角度調整部ベースと、
を備え、
前記角度調整用ネジ孔を介して複数の前記V溝のうちの所定のV溝に前記角度調整ネジを固定することによって前記手摺り支持体に支持された手摺り部材の角度を所望の角度に位置させた状態で前記手摺り部材を強固に固定することを特徴とする手摺りの角度調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺りの角度調整機構において、
前記角度調整用ネジ孔は2箇所に設けられると共に、前記角度調整用ネジ孔に対応する複数のV溝も角度調整盤の表面の2箇所に設けられていることを特徴とする手摺りの角度調整機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の手摺りの角度調整機構において、
前記手摺り支持体は前記角度調整盤の外周面の2箇所に設けられていることを特徴とする手摺りの角度調整機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の手摺りの角度調整機構において、
前記支柱は高さ調整可能に形成されていることを特徴とする手摺りの角度調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺りの角度調整機構に関し、特に、1本の支柱に手摺り部材を水平或いは所定の傾斜に確実に固定することが可能な角度調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
床や通路等に設置される手摺りは、長尺の手摺り部材の両端をそれぞれ支柱で支持した構造が一般的である。しかし、場所によっては手摺り部材の両端を支持する支柱を配置することができない場合もある。そのような場合には長尺の手摺り部材の途中位置を一本の支柱で支持することになる。手摺り部材の両端をそれぞれ支柱で支持する構造の手摺りの場合には床や通路等の傾斜角度に応じて傾斜して配置することは比較的容易であるが、1本の支柱で支持する後者の構造の手摺りの場合には、手摺り部材と支柱の結合は1カ所になるため、手摺り部材を任意の角度に設定(調整)することは容易であるが、それを確実に固定することは容易でない。
【0003】
このような構造の手摺りの一例として、例えば、特許文献1に示すものがある。特許文献1に示される手摺りは、笠木を楕円型にし、その中間部に取付部材を介在させ、1本の支柱に取り付けたものである。笠木の傾斜角度の調整は、取付部材の面歯車部と被固着部材の面歯車部との噛み合わせにより行えるようにし、挿通孔を介してビス止めすることで笠木を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−32701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、長尺の手摺り部材の途中位置を一本の支柱で支持する構造の手摺りの場合には、手摺り部材の端部に加わる力は支持部分に大きな負荷となる。そのため、特許文献1のような面歯車部同士の噛み合わせ構造とすることは有効な手段であるが、歯車の噛み合わせが十分でないと噛み合わせが外れて笠木が回動するおそれがある。万一、笠木が回動してしまうと大きな事故につながりかねないので、手摺り部材は確実に固定される必要がある。また、角度を変更する場合には歯車部同士の噛み合わせを一旦解除する必要があり、調整が煩雑になりやすい。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、手摺り部材が1本の支柱に支持される構造の手摺りであっても角度調整が簡単で、手摺り部材が支柱に確実に固定できるようにした手摺りの角度調整機構を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、2本以上の支柱を設置することができない場所であっても1本の支柱に支持された手摺り部材の角度調整を可能とした手摺りの角度調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、1本の支柱に支持された手摺り部材の取り付け角度を調整可能とする手摺りの角度調整機構において、中心部に固定ボルトが貫通される貫通孔が設けられた正面視略円盤状の角度調整盤であって、外周面には手摺り部材を支持する手摺り支持体が取り付けられると共に、円盤状の表面には奥に行くにしたがって次第に幅狭に形成された断面略V字形状のV溝が複数隣接して配置された角度調整盤と、支柱の頂部に設けられ、上部側に角度調整盤が収容配置される側面視略U字形状の収容部を備えた角度調整部ベースであって、角度調整盤に設けられた貫通孔に対応する位置には固定ボルトが挿通されるボルト孔が設けられ、V溝に対応する位置には角度調整ネジを取り付けるための角度調整用ネジ孔が設けられた角度調整部ベースを備え、角度調整用ネジ孔を介して複数のV溝のうちの所定のV溝に角度調整ネジを固定することによって手摺り支持体に支持された手摺り部材の角度を所望の角度に位置させた状態で手摺り部材を強固に固定することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の手摺りの角度調整機構において、前記角度調整用ネジ孔は2箇所に設けられると共に、前記角度調整用ネジ孔に対応する複数のV溝も角度調整盤の表面の2箇所に設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の手摺りの角度調整機構において、前記笠木支持体は前記角度調整盤の外周面の2箇所に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の手摺りの角度調整機構において、前記支柱は高さ調整可能に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る手摺りの角度調整機構によれば、角度調整盤に設けられた所定のV溝を角度調整用ネジで固定するように構成したので、角度調整の変更も簡単に行え、且つ、手摺り部材を確実に固定することができるので、安全性の高い1本の支柱に取り付けた手摺を提供することができるという効果がある。
【0013】
また、本発明に係る手摺りの角度調整機構によれば、V溝を2箇所に設けているので手摺り部材を確実に保持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る角度調整機構の一実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明に係る角度調整機構を備えた手摺りの全体構成の正面図である。
【
図3】(a)は角度調整盤の正面図、(b)はB−B矢視断面図である。
【
図7】(a)はベース柱と高さ調整柱の部分斜視図、(b)は角度調整部ベースの周辺構成を示す斜視図である。
【
図8】支柱に取り付けられる止めねじ(とがり先、くぼみ先)の構造を示す斜視図である。
【
図9】手摺り部材を傾斜させた手摺りの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る手摺りの角度調整機構(以下、角度調整機構という)について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る角度調整機構の一実施形態の斜視図、
図2は本発明に係る角度調整機構を備えた手摺りの全体構成の正面図、
図3(a)は角度調整盤の正面図、同(b)はB−B矢視断面図である。また、
図4は角度調整盤の斜視図、
図5は角度調整部ベースの側面図、
図6は角度調整部ベースの正面図である。初めに、角度調整機構1が取り付けられた手摺り10の全体構造について説明し、その後で角度調整機構1の構成について説明する。
【0016】
[手摺り10の全体構成]
手摺り10は、
図2に示すように、概略として、パイプ状のベース柱2aと、このベース柱2aに入れ子式に昇降自在に挿入される柱状の高さ調整柱2bによって形成される支柱2を備えており、高さ調整柱2bの頂部に角度調整機構1が取り付けられている。角度調整機構1は、後述するように、角度調整部ベース3と、角度調整部ベース3に回動自在に取り付けられる角度調整盤4によって構成されている。そして、角度調整盤4にはV字形に配置された手摺り支持体5a,5bが取り付けられており、手摺り支持体5a,5bには両端側がほぼ直角に屈曲された棒状の手摺り部材6が取り付けられて手摺り10が形成されている。
【0017】
また、ベース柱2aの下端側にはベースプレート9が取り付けられており、ベースプレート9は図示しないアンカーにネジ止めなどの適宜の手段によって床や地面などの所定の取り付け箇所へ固定される。そして、ベース柱2aに挿入された高さ調整柱2bを上下に昇降させることによって手摺り部材6の高さ位置を自由に調整することが可能とされている。ベース柱2aに対する高さ調整柱2bの固定は、
図7(a)に示すように、ベース柱2aの側面の長さ方向に穿設された複数のネジ孔2c,2cに
図8(b)に示す止めネジ(くぼみ先)8,8をねじ込むことにより行われる。
【0018】
[角度調整機構の構成]
次に、角度調整機構1の構成について説明する。角度調整機構1は、概略として、角度調整部ベース3と、角度調整盤4を備えて構成されている。
【0019】
角度調整盤4は、
図3及び
図4に示すように、中心部に固定ボルト20が貫通される貫通孔41が設けられた正面視略円盤状の円盤部40を備えており、円盤部40の側面の2箇所には棒状の手摺り部材6を支持する手摺り支持体5a,5bがV字形状に延伸するようにして取り付けられている。また、貫通孔41の下方の円盤部40の表面には円形状の外周縁に沿って奥に行くにしたがって次第に幅狭に形成された断面略V字形状のV溝42a,42bが2箇所にそれぞれ設けられている。V溝42a,42bは傾斜面が台形状とされ、山と谷の連続によって形成されており、V溝42a,42bの開口部の大きさや隣り合う間隔を適宜に調整することにより手摺り部材6の傾斜角度の調整可能範囲を適宜に変更することが可能である。
【0020】
また、V溝42a,42bの谷部分には、後述する角度調整部ベース3に螺着される
図8(a)に示す止めねじ(とがり先)7の先端が係止される。この止めねじ(とがり先)7は通称「イモネジ」と称されるものである。この止めねじ(とがり先)7の先端がV溝42a,42bの谷の一つに係止することによって角度調整盤4の回動が確実にロックされ、したがって、手摺り支持体5a,5b及び手摺り部材6の回動が阻止される。ここで、V溝42aには後述する角度調整部ベース3に設けられた角度調整用ネジ孔33aが対応し、V溝42bには後述する角度調整部ベース3に設けられた角度調整用ネジ孔33bが対応する。
【0021】
角度調整部ベース3は、
図5に示すように、上部側に角度調整盤4が収容配置される側面視略U字形状の収容部31を備えた本体30と、角度調整盤4に設けられた貫通孔41に対応する位置には固定ボルト20が挿通されるボルト孔32が設けられている。また、本体30の下部側には高さ調整柱2bの上端が嵌入される基台部34が形成されている。そして、ボルト孔32の下方であって角度調整盤4に設けられたV溝42a,42bがそれぞれ位置する部分には角度調整用ネジである止めねじ(とがり先)7,7が螺着される角度調整用ネジ孔33a,33bがそれぞれ穿設されている。ここで、手摺り部材6を水平状態に設定した場合には角度調整用ネジ孔33aは
図3(a)に示す一番右側のV溝42aに対応し、角度調整用ネジ孔33bは
図3(a)に示す一番右側のV溝42bに対応する。そして、手摺り部材6を図(a)における左側が下がるように傾斜させた場合には、角度調整用ネジ孔33a,33bに対応するV溝42a,42bもそれぞれ左側に移動し、角度調整用ネジ孔33a,33bが一番左側のV溝42a,42bに対応した状態において、手摺り部材6が左側に最大傾斜させた状態となる。
【0022】
[手摺りの角度調整方法]
次に、上述した角度調整機構1による手摺りの角度調整方法について説明する。初めに、手摺り10設置する場所(床、通路等)を決定し、その設置場所に支柱2を設置するために図示しない複数のアンカーを所定の配置で埋設(または打ち込み)する。次に、ベース柱2aの下端に取り付けられているベースプレート9をアンカーにネジ止めする。次いで、ベース柱2a内に高さ調整柱2bを挿入(予め高さ調整柱2bが挿入されていてもよい)し、所定の高さに調整する。所定の高さ位置において高さ調整柱2bを保持した状態で、止めネジ8,8を対応する複数のネジ孔2c,2cにねじ込み、高さ調整柱2bをベース柱2aに固定する。
【0023】
次に、そして、予め手摺り支持体5a,5bと手摺り部材6を取り付け済みの状態の角度調整盤4を高さ調整柱2bの頂部に取り付けられた角度調整部ベース3の収容部31に配置する。そして、手摺り部材6の角度を所望の角度に設定したところでそれぞれ角度調整用ネジ孔33a,33bに止めねじ8,8を十分にねじ込み、その先端をそれぞれV溝42a,42bの一つの谷(V溝)に係止させて角度調整盤4を角度調整部ベース3にしっかりと固定する。そして、固定ボルト20をボルト孔32と貫通孔41を介して袋ナット21でしっかりと固定する。以上の作業によって手摺り部材6を所定の角度に傾斜させた状態の手摺り10が完成する(
図2、
図9参照)
【0024】
尚、手摺り部材6の角度を変更したい場合には、固定ボルト20を緩め、角度調整部ベース3の二つの止めねじ(とがり先)7,7を緩めて取り外し、次いで、手摺り部材6の傾斜角度を変更する。そして、所望の角度のところで再び止めねじ8,8を角度調整用ネジ孔33a,33bのそれぞれにねじ込み、固定ボルト20及び袋ナット21で固定して角度調整部ベース3と角度調整盤4とを確実に固定する。
【0025】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る角度調整機構によれば、手摺り支持体5a,5bが取り付けられた角度調整盤4の表面に2箇所にV溝42a,42bを形成し、このV溝42a,42bに角度調整部ベース3に設けた角度調整用ネジ孔33a,33bを介して止めねじ8,8をねじ込んで係止させ、さらに固定ボルト20で固定することで手摺り部材6の傾斜角度を適宜に調整できると共に、角度調整部ベース3と角度調整盤4とを確実に固定することができるという効果がある。
【0026】
また、本実施形態に係る角度調整機構によれば、V溝を2箇所に設けているので手摺り部材を確実に保持することができるという効果がある。
【0027】
以上のように、好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1 角度調整機構
2 支柱
2a ベース柱
2b 高さ調整柱
2c ネジ孔
3 角度調整部ベース
4 角度調整盤
5a,5b 手摺り支持体
6 手摺り部材
9 ベースプレート
10 手摺り
20 固定ボルト
21 袋ナット
30 本体
31 収容部
32 ボルト孔
33a,33b 角度調整用ネジ孔
34 基台部
40 円盤部
41 貫通孔
42a,42b V溝