【実施例1】
【0013】
図1は、パーキングブレーキ用ドラムブレーキ(電動式ドラムブレーキ)10が中央部に備えられたドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。
図1に示すように、ドラムブレーキ10には、略円板形状を成すバッキングプレート14と、バッキングプレート14の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能すなわち拡開可能に配設された円弧状を成す一対の第1ブレーキシュー(プライマリシュー)16および第2ブレーキシュー(セカンダリシュー)18と、第1ブレーキシュー16の一端部16aと第2ブレーキシュー18の一端部18aとの間においてバッキングプレート14に位置固定に設けられたアンカ部材20と、アンカ部材20と第1ブレーキシュー16の一端部16aとの間、およびアンカ部材20と第2ブレーキシュー18の一端部18aとの間にそれぞれ張設され、それら第1ブレーキシュー16の一端部16aと第2ブレーキシュー18の一端部18aとを互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング(スプリング)22および24と、第1ブレーキシュー16の一端部16aと第2ブレーキシュー18の一端部18aとの間に架け渡された長手板状のストラット26と、第1ブレーキシュー16の他端部16bと第2ブレーキシュー18の他端部18bとの間に介在させられてアジャストホイール28aの回転に伴って全長が変化させられることによりブレーキドラム(回転ドラム)30と一対の第1ブレーキシュー16および第2ブレーキシュー18との間の間隙すなわちシュー間隙を調節する長手状の間隙調節装置(連結装置)28とが備えられている。上記間隙調節装置28には、第1ブレーキシュー16の他端部16bと第2ブレーキシュー18の他端部18bとの間に張設されてそれら他端部16b、18bを互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置28を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング28bが備えられており、その間隙調節装置28は、第1ブレーキシュー16の他端部16bと第2ブレーキシュー18の他端部18bとを相対回動可能に連結する連結装置として機能している。上記ストラット26には、ストラット26を第2ブレーキシュー18側に常時付勢させるコイル状のスプリング32が配設されている。なお、上記ドラムブレーキ10は、第1ブレーキシュー16および第2ブレーキシュー18が拡開したドラムブレーキ制動時において、ブレーキドラム30すなわち車輪が前進方向すなわち矢印F1方向に回転しようとすると、第1ブレーキシュー16がブレーキドラム30の内周面30aに食い込んで第2ブレーキシュー18がブレーキドラム30の内周面30aに押し付けられる押付力が増大させられるデュオサーボ型ドラムブレーキである。
【0014】
一対の第1ブレーキシュー16および第2ブレーキシュー18は、何れも、バッキングプレート14の板面と略平行な平板状を成し且つ
図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ34および36と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム38および40と、それらシューリム38および40の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング42および44とを備えてそれぞれ構成されている。
【0015】
図1および
図2に示すように、第2ブレーキシュー18には、略円柱形状の取付軸46を備えた長手平板状のブレーキレバー48が配設されており、第2ブレーキシュー18の一端部18aとブレーキレバー48の基端部48aとが、取付軸46によって、その取付軸50の軸心C1まわりに相対回転可能に連結されている。ブレーキレバー48には、その基端部48aの内周縁において取付軸46から所定距離離間したストラット26の一端部26aと係合する第1係合部48bが形成されている。また、第1ブレーキシュー16には、そのシューウェブ34のストラット26側の端部の内周縁においてストラット26の他端部26bと係合する第2係合部34aが形成されている。
【0016】
図1乃至
図3に示すように、バッキングプレート14には、断面円形のブレーキケーブル50をバッキングプレート14の内側、外側へ挿通するためにそのバッキングプレート14に貫通して設けられたケーブル挿通穴14aが備えられている。ブレーキレバー48の先端部48cには、ブレーキケーブル50の一端部50aが掛け止められて連結されている。
【0017】
図3に示すように、バッキングプレート14の外側には、そのバッキングプレート14の外側からブレーキケーブル50の他端部50bを引っ張ることによって、ブレーキレバー48の先端部48cに操作力F2を発生させる電動アクチュエータ52が備えられている。
【0018】
また、
図3に示すように、電動アクチュエータ52には、図示しない電子制御装置から出力される駆動電流によって出力軸54aを回転駆動する電動モータ54と、電動モータ54の出力軸54aの回転がその出力軸54aに固定された歯車54bを介して伝達される第1歯車56およびその第1歯車56に噛み合う第2歯車58を有する減速歯車装置60と、減速歯車装置60の第2歯車58において第2歯車58の第1回転軸線D1に沿って穿設された円柱形状の雌ねじ穴58aと、第2歯車58の雌ねじ穴58aの内周面に形成された雌ねじ58bと螺合する雄ねじ62aを外周面に形成しブレーキケーブル50の他端部50bが先端部62bに連結された軸状のねじ軸部材62と、それらねじ軸部材62、減速歯車装置60、電動モータ54を収容する収容ケース64とが備えられている。
【0019】
電動アクチュエータ52では、電動モータ54の出力軸54aがその出力軸54aまわり所定回転方向Eへ回転駆動すなわち正回転で回転駆動させられると、歯車54bおよび第1歯車56を介して減速歯車装置60の第2歯車58が第1回転軸線D1まわりに回転して、ねじ軸部材62の先端部62bがそのねじ軸部材62の外周面に形成された雄ねじ62aと第2歯車58の雌ねじ穴58aの雌ねじ58bとのねじの作用によって第2歯車58に接近する方向に移動する。
【0020】
収容ケース64には、
図2に示すように、バッキングプレート14のケーブル挿通穴14aからバッキングプレート14の内側に突き出してブレーキケーブル50を支持するケーブル支持部64aと、収容ケース64を締結ボルト66によってバッキングプレート14に取り付けられるケース取付部64bと、例えばねじ軸部材62、減速歯車装置60、電動モータ54等を収容する収容部64cとが備えられている。第1歯車56は、収容ケース64の収容部64cに設けられた一対の軸受68、68によって第2回転軸線D2まわりに回転可能に支持されている。第2歯車58は、収容ケース64の収容部64cに設けられた一対のスラスト軸受70、70によって第1回転軸線D1まわりに回転可能に支持されている。
【0021】
以上のように構成された電動アクチュエータ52によれば、例えば図示しないパーキングレバー或いはパーキングペダル等が操作されて電子制御装置から駆動電流が電動モータ54に出力されると、電動モータ54の出力軸54aが回転方向Eに回転駆動させられてブレーキケーブル50が引っ張られるので、そのブレーキケーブル54を介してブレーキレバー48の先端部48cに操作力F2が発生し、ブレーキレバー48の先端部48cが取付軸50の軸心C1まわりドラムブレーキ10の中心C2すなわちバッキングプレート14の中心C2側へ回動する。
【0022】
図4は、従来のドラムブレーキ(デュオサーボ型ドラムブレーキ)100を示す正面図である。なお、従来のドラムブレーキ100は、第1ブレーキシュー(プライマリシュー)102がアンカ部材20の円柱状のアンカ部20aの軸心C3とドラムブレーキ100の中心C2すなわちバッキングプレート14の中心C2とを結ぶ直線L1に対して第2ブレーキシュー(セカンダリシュー)104と対称である点と、ブレーキレバー106の形状がブレーキレバー48の形状に対して異なる点とで本実施例のドラムブレーキ10に対して相違しており、その他はドラムブレーキ10と略同様である。また、従来のドラムブレーキ100と本実施例のドラムブレーキ10との大きさは同じである。なお、従来のドラムブレーキ100の説明において、本実施例のドラムブレーキ10と共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0023】
図4に示すように、従来のドラムブレーキ100おいて、第1ブレーキシュー102は、上記直線L1に対して第2ブレーキシュー104と対称であるので、第1ブレーキシュー102の他端部102aと第2ブレーキシュー104の他端部104aとの間に連結された連結装置である間隙調節装置28は、直線L1上に配置される。このため、従来のドラムブレーキ100では、ブレーキレバー106における先端部106a、取付軸50、第1係合部106bの位置に基いて算出されるレバー比R1を大きくしようとすなわち直線L1方向におけるブレーキレバー106に設けられた取付軸46の軸心C1とブレーキレバー106の先端部106aとの距離A1を長くしようと、ブレーキレバー106の先端部106aを直線L1上に配置させようとすると、間隙調節装置28に当接してしまうので、制動時、非制動時にブレーキレバー106が取付軸50の軸心C1まわりに回動しても先端部106が間隙調節装置28に当接しない程度にそのブレーキレバー106の先端部106aの位置が決められている。
【0024】
また、従来のドラムブレーキ100では、ブレーキレバー106との干渉を避けるために、長手状の間隙調整装置28の一端部28cおよび他端部28dが、第1ブレーキシュー102の他端部102aの内周縁と外周縁との間の中間位置よりも可及的に外周縁側の位置、および第2ブレーキシュー104の他端部104aの内周縁と外周縁との間の中間位置よりも可及的に外周縁側の位置にそれぞれ係合されているので、例えば間隙調節装置28の一端部28cとドラムブレーキ100の中心C2との距離である寸法CR1が比較的大きな値になる。
【0025】
上記レバー比R1は、直線L1方向における取付軸50の軸心C1からブレーキレバー106の先端部106aまでの距離A1を、直線L1方向における取付軸50の軸心C1からブレーキレバー106の第1係合部106bまでの距離B1で割った値(A1/B1)である。また、上記寸法CR1は、長手状の間隙調節装置28の長手方向に対して直交する方向におけるバッキングプレート14の中心C2から第1ブレーキシュー102の間隙調節装置28への出力点C4までの距離である。なお、上記出力点C4は、長手状の間隙調節装置28の一端部28cと第1ブレーキシュー102の他端部102aとの当接点である。
【0026】
図1および
図2に示すように、本実施例のドラムブレーキ10において、円弧状の第1ブレーキシュー16は、上記直線L1に対して円弧状の第2ブレーキシュー18と非対称であり、円弧状の第2ブレーキシュー18における両端の弧の長さが、円弧状の第1ブレーキシュー16における両端の孤の長さより長くなっているので、第1ブレーキシュー16の他端部16bと第2ブレーキシュー18の他端部18bとの間に連結された間隙調節装置28は、従来のドラムブレーキ100のように直線L1上に配置されない。間隙調節装置28は、直線L1上ではない例えばバッキングプレート14のケーブル挿通穴14aの周辺部の位置に配置される。このため、ドラムブレーキ10では、ブレーキレバー48における先端部48c、取付軸46、第1係合部48bの位置に基いて算出されるレバー比R2を大きくしすなわち直線L1方向における取付軸46とブレーキレバー48の先端部48cとの距離A2を長くし、そのブレーキレバー48の先端部48cが直線L1上に配設される。
【0027】
図2および
図4に示すように、従来のドラムブレーキ100では、直線L1上に間隙調節装置28が配置されており、ブレーキレバー106の先端部106aを直線L1上に配置させることができないので、上記距離A2は上記距離A1より長くなり、ブレーキレバー48のレバー比R2はブレーキレバー106のレバー比R1より高くなる。上記レバー比R2は、直線L1方向における取付軸46の軸心C1からブレーキレバー48の先端部48cまでの距離A2を、直線L1方向における取付軸46の軸心C1からブレーキレバー48の第1係合部48bまでの距離B2で割った値(A2/B2)である。なお、本実施例のドラムブレーキ10の距離B2は、従来のドラムブレーキ100の距離B1と同じである。
【0028】
また、
図2および
図4に示すように、本実施例のドラムブレーキ10では、間隙調節装置28の一端部28cおよび他端部28dは、第1ブレーキシュー16の他端部16bの内周縁と外周縁との中間位置および第2ブレーキシュー18の他端部18bの内周縁と外周縁との中間位置にそれぞれ係合され、その間隙調節装置28の一端部28cは従来のドラムブレーキ100に比較してドラムブレーキ10の中心C2側に配置されるので、寸法CR2が寸法CR1より小さくなる。上記寸法CR2は、長手状の間隙調節装置28の長手方向に対して直交する方向におけるバッキングプレート14の中心C2から第1ブレーキシュー16の間隙調節装置28の一端部28cへの出力点C4までの距離である。なお、上記出力点C4は、長手状の間隙調節装置28の一端部28cと第1ブレーキシュー16の他端部16bとの当接点である。なお、本実施例のドラムブレーキ10では、間隙調節装置28が直線L1上に配置されなくなり、ブレーキレバー48の先端部48cによって第1ブレーキシュー16の他端部16bと第2ブレーキシュー18の他端部18bとの間における間隙調節装置28の位置が制約されなくなったので、間隙調節装置28の一端部28cおよび他端部28dは、第1ブレーキシュー16の他端部16bの内周縁と外周縁との中間位置および第2ブレーキシュー18の他端部18bの内周縁と外周縁との中間位置にそれぞれ係合させることができる。
【0029】
以上のように構成されたドラムブレーキ10によれば、図示しないパーキングレバー或いはパーキングペダル等が操作されると、電動アクチュエータ52によりブレーキレバー48の先端部48cに操作力F2が発生させられてそのブレーキレバー48が取付軸46の軸心C1まわりに回動する。これによって、ブレーキレバー48における先端部48c、取付軸46の軸心C1、第1係合部48bの位置に基いて算出されるレバー比R2に基いて操作力F2より大きくされた力がストラット26を介して第1ブレーキシュー16の第2係合部34aに作用して第1ブレーキシュー16の一端部16aが第1ブレーキシュー16の他端部16bと間隙調整装置28の一端部28cとの当接する位置すなわち当接点C4まわりに回動して拡開すると共に、ストラット26に作用した力の反作用により取付軸46を介して第2ブレーキシュー18の一端部18aが拡開する。このため、例えばブレーキドラム30すなわち車輪が前進方向すなわち矢印F1方向に回転しようとすると、第1ブレーキシュー16がブレーキドラム30の内周面30aに食い込んで第2ブレーキシュー18がブレーキドラム30の内周面30aに押し付けられる押付力が増大させられて、ドラムブレーキ10に制動力が発生する。
【0030】
上述のように、本実施例のドラムブレーキ10によれば、第1ブレーキシュー16は、アンカ部材20とドラムブレーキ10の中心C2とを結ぶ直線L1に対して第2ブレーキシュー18と非対称であることから、それら第1ブレーキシュー16の他端部16bと第2ブレーキシュー18の他端部18bとの間に配設される間隙調節装置28が従来のドラムブレーキ100のように直線L1上に配置されないので、直線L1方向における取付軸46とブレーキレバー48の先端部48cとの距離A2が長くなるようにブレーキレバー48の先端部48cを直線L1上に配置させられる。これによって、直線L1方向におけるブレーキレバー48に設けられた取付軸48とブレーキレバー48の先端部48cとの距離A2が従来のドラムブレーキ100の距離A1に比較して長くなりブレーキレバー48のレバー比R2が高くなるので、従来に比較してドラムブレーキ10の制動力が向上させられる。
【0031】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、間隙調節装置28の一端部28cおよび他端部28dは、第1ブレーキシュー16の他端部16bの内周縁と外周縁との中間位置および第2ブレーキシュー18の他端部18bの内周縁と外周縁との中間位置にそれぞれ係合されている。これによって、間隙調節装置28の一端部28cおよび他端部28dを従来のドラムブレーキ100に比較してドラムブレーキの中心C2側へ配置させることができるので、ドラムブレーキ10の中心C2から第1ブレーキシュー16の間隙調節装置28への出力点C4までの距離すなわち寸法CR2を従来のドラムブレーキ100の寸法CR1に比較して短くすることができる。このため、制動時ブレーキレバー48からストラット26を介して第1ブレーキシュー16の第2係合部34aに操作力F2が作用すると、第1ブレーキシュー16の一端部16aが出力点C4まわりに回動する回動量が従来のドラムブレーキ100に比較して大きくなるので、第1ブレーキシュー16がブレーキドラム30の内周面30aに食い込む食込み量が大きくなりドラムブレーキ10の制動力が向上する。
【0032】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48の先端部48cに連結されたブレーキケーブル50を引っ張る電動アクチュエータ52が備えられており、電動アクチュエータ52に設けられた電動モータ54の出力軸54aが回転させられることによってブレーキケーブル50が引っ張られてブレーキレバー48の先端部48cに操作力F2が発生する。このため、ドラムブレーキ10においてドラムブレーキ10の制動力が従来のドラムブレーキ100に比較して向上させられるので、従来のドラムブレーキ10程度の制動力を発生させるのであれば、電動アクチュエータ52の設けられた電動モータ54の出力を低減させることができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0034】
本実施例のドラムブレーキ10は、電動アクチュエータ52に設けられた電動モータ54の出力軸54aが回転駆動することによってブレーキケーブル50を介してブレーキレバー48の先端部48cに操作力F2が発生させられる電動式のドラムブレーキであったが、例えばパーキングレバー或いはパーキングペダル等を運転者が操作する操作力をブレーキケーブル50を介してブレーキレバー48の先端部48cに伝達する手動式のドラムブレーキを適用しても良い。
【0035】
また、本実施例のドラムブレーキ10は、パーキングブレーキ専用のドラムブレーキであったが、車両走行中に使用されるサービスブレーキ(常用ブレーキ)として使用されても良い。
【0036】
また、本実施例のドラムブレーキ10では、間隙調節装置28の一端部28cおよび他端部28dは、第1ブレーキシュー16の他端部16bの内周縁と外周縁との中間位置および第2ブレーキシュー18の他端部18bの内周縁と外周縁との中間位置にそれぞれ係合されていたが、上記中間位置とは、上記他端部16b、18bの内周縁と外周縁との距離を厳密に半分に分ける位置に限定されるものではなくその位置の周辺部を含むものである。
【0037】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。