特許第6491556号(P6491556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491556
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】配線回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20190318BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20190318BHJP
   H05K 3/20 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H05K1/02 B
   H05K1/03 610H
   H05K3/20 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-137963(P2015-137963)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-22237(P2017-22237A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英志
(72)【発明者】
【氏名】増田 将太郎
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第7487587(US,B2)
【文献】 特開2014−65225(JP,A)
【文献】 特開昭60−176292(JP,A)
【文献】 特開2011−14721(JP,A)
【文献】 特開2013−146870(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069275(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0192082(US,A1)
【文献】 特表2013−524866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0230747(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0051005(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0052268(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2845726(EP,A1)
【文献】 国際公開第2014/124044(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/124049(WO,A2)
【文献】 特表2012−515436(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0178722(US,A1)
【文献】 特公昭57−2199(JP,B2)
【文献】 特公昭57−4115(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層に埋め込まれている導体パターンと
を備え、
前記導体パターンは、前記絶縁層の厚み方向一方面から露出する露出面を有し、
前記絶縁層は、JIS P8115(2001年)に準拠して測定される耐折回数が100回以上であり、
周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で前記絶縁層を動的粘弾性測定したときの、20℃における引張貯蔵弾性率E’が、100MPa以下であることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記導体パターンの前記露出面は、前記絶縁層の前記厚み方向一方面と面一となるように位置し、または、前記絶縁層の前記厚み方向一方面に対して前記厚み方向他方側に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記導体パターンの前記露出面は、前記絶縁層の前記厚み方向一方面に対して前記厚み方向他方側に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記導体パターンの厚みT1の、前記絶縁層の厚みT0に対する比(T1/T0)が、0.05以上であることを特徴とする、請求項2または3に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記導体パターンの厚みT1が、1.0μm以上であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記導体パターンは、さらに、前記露出面に対して前記厚み方向他方側に間隔を隔てて対向配置される対向面と、前記露出面の周端部および前記対向面の周端部を連結する連結面とを有し、
前記対向面および前記連結面は、前記絶縁層によって被覆されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の配線回路基板を備えることを特徴とする、ウエアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびウエアラブルデバイス、好ましくは、配線回路基板、および、それを備えるウエアラブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエアラブルデバイスは、ユーザの身体や衣服の一部に装着されて用いられる。そのようなウエアラブルデバイスは、例えば、電気信号を処理するための電子素子を実装するために、配線回路基板を備える。
【0003】
そのような配線回路基板として、例えば、熱可塑性エラストマーからなる絶縁ベース材と、絶縁ベース材の上に形成された配線層と、配線層の上に形成された熱可塑性エラストマーからなる絶縁層とを備える伸縮性フレキシブル回路基板が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載の伸縮性フレキシブル回路基板は、まず、配線層を絶縁ベース材の上に形成し、その後、絶縁層を絶縁ベース材および配線層にラミネートすることにより、製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−187380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、絶縁ベース材の上に配線層を形成した回路基板(つまり、絶縁層をラミネートする前の回路基板)を伸縮性フレキシブル回路基板またはその基材として製造および販売することがある。
【0007】
しかし、このような回路基板では、配線層が絶縁ベース材から剥離し易いという不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、導体パターンが絶縁層から剥離することを抑制することのできる配線回路基板およびウエアラブルデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明は、絶縁層と、前記絶縁層に埋め込まれている導体パターンとを備え、前記導体パターンは、前記絶縁層の厚み方向一方面から露出する露出面を有し、前記絶縁層は、JIS P8115(2001年)に準拠して測定される耐折回数が10回以上であることを特徴とする、配線回路基板である。
【0010】
この構成であれば、導体パターンは、絶縁層に埋め込まれているので、導体パターンが絶縁層から剥離しにくく、とりわけ、絶縁層は、JIS P8115(2001年)に準拠して測定される耐折回数が上記した下限以上であるので、配線回路基板を伸縮させても、導体パターンが絶縁層から剥離することを抑制することができる。そのため、配線回路基板は、信頼性に優れる。
[2]本発明は、前記導体パターンの前記露出面は、前記絶縁層の前記厚み方向一方面と面一となるように位置し、または、前記絶縁層の前記厚み方向一方面に対して前記厚み方向他方側に位置していることを特徴とする、上記[1]に記載の配線回路基板である。
【0011】
この構成によれば、導体パターン間の短絡を抑制することができる。
[3]本発明は、前記導体パターンの前記露出面は、前記絶縁層の前記厚み方向一方面に対して前記厚み方向他方側に位置していることを特徴とする、上記[2]に記載の配線回路基板である。
【0012】
この構成によれば、ロール・トゥ・ロール法で製造され、配線回路基板の厚み方向一方面をロールに対向させる場合に、導体パターンの露出面とロールの表面との間に空隙を設けるとともに、配線回路基板の厚み方向一方面におけるロールとの接触面積を小さくすることができる。そのため、配線回路基板とロールとのブロッキングを抑制することができる。
[4]本発明は、前記導体パターンの厚みT1の、前記絶縁層の厚みT0に対する比(T1/T0)が、0.05以上であることを特徴とする、上記[2]または[3]に記載の配線回路基板である。
【0013】
この構成によれば、T1/T0が特定の下限以上であるので、配線回路基板の薄型化を図ることができる。
[5]本発明は、前記導体パターンの厚みT1が、1.0μm以上であることを特徴とする、上記[2]〜[4]のいずれか一項に記載の配線回路基板である。
【0014】
この構成によれば、導体パターンの厚みT1が上記した下限以上であるので、導体パターンの絶縁層に対する密着性を向上させることができる。
[6]本発明は、前記導体パターンは、さらに、前記露出面に対して前記厚み方向他方側に間隔を隔てて対向配置される対向面と、前記露出面の周端部および前記対向面の周端部を連結する連結面とを有し、前記対向面および前記連結面は、前記絶縁層によって被覆されていることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の配線回路基板である。
【0015】
この構成によれば、対向面および連結面は、絶縁層によって被覆されているので、導体パターンの絶縁層に対する密着力を向上させることができる。そのため、導体パターンが絶縁層から剥離することをより一層抑制することができる。
[7]本発明は、周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で前記絶縁層を動的粘弾性測定したときの、20℃における引張貯蔵弾性率E’が、1,000MPa以下であることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の配線回路基板である。
【0016】
この構成によれば、絶縁層の引張貯蔵弾性率E’が、特定の上限以下であるので、伸縮性に優れる。
[8]本発明は、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の配線回路基板を備えることを特徴とする、ウエアラブルデバイスである。
【0017】
この構成によれば、ウエアラブルデバイスは、信頼性に優れる配線回路基板を備えるので、信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配線回路基板およびウエアラブルデバイスは、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態の平面図を示す。
図2図2は、図1に示す配線回路基板の断面図であって、A−A線に沿う左右方向断面図を示す。
図3図3A図3Fは、図2に示す配線回路基板の製造方法の工程図であって、図3Aは、シード層を剥離層の上面に形成する工程(1)、図3Bは、めっきレジストをシード層の上面に形成する工程、図3Cは、導体パターンをシード層の上面に形成する工程(2)、図3Dは、シード層および導体パターンを絶縁層によって被覆する工程(3)、図3Eは、剥離層をシード層から剥離する工程(4)、図3Fは、シード層を除去する工程(5)を示す。
図4図4A図4Cは、図1に示す配線回路基板を備えるウエアラブルデバイスを手首の内側部分の皮膚に貼り付ける態様であり、図4Aは、手首が伸展および屈曲していない状態、図4Bは、手首が伸展している状態、図4Cは、手首が屈曲している状態を示す。
図5図5は、一実施形態の変形例の配線回路基板(導体パターンの上面が、絶縁層の上面と面一となる態様)の拡大断面図を示す。
図6図6は、一実施形態の変形例の配線回路基板(導体パターンの上面が、絶縁層の上面に対して上側に位置する態様)の拡大断面図を示す。
図7図7は、一実施形態の変形例の配線回路基板(導体パターンが、断面略テーパー形状を有する態様)の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2において、紙面左右方向は、左右方向(第1方向)であり、紙面左側が左側(第1方向一方側)、紙面右側が右側(第1方向他方側)である。図2において、紙面上下方向は、上下方向(第1方向に直交する第2方向、厚み方向)であり、紙面上側が上側(第2方向一方側、厚み方向一方側)、紙面下側が下側(第2方向他方側、厚み方向他方側)である。図2において、紙面奥行方向は、先後方向(第1方向および第2方向に直交する第3方向、長手方向(図1参照))であり、紙面手前側が先側(第3方向一方側、長手方向一方側)、紙面奥側が後側(第3方向他方側、長手方向他方側)である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0021】
なお、図4A図4Cにおいて、配線回路基板1(後述)の形状を明確に示すために、センサ18およびメモリ25(後述)を省略している。
【0022】
1.配線回路基板
本発明の一実施形態である配線回路基板1は、図1および図2に示すように、絶縁層2と、絶縁層2に埋め込まれている導体パターン3とを備える。
【0023】
1−1. 絶縁層
絶縁層2は、図1に示すように、配線回路基板1の外形形状と同一の外形形状を有する。具体的には、絶縁層2は、先後方向に延びる平面視略矩形のフィルム(シート)形状を有している。絶縁層2は、図2に示すように、平坦な下面10と、下面10の上側に間隔を隔てて対向する上面11とを備える。また、絶縁層2は、導体パターン3に対応する複数の溝部4を備えている。複数の溝部4のそれぞれは、上方に向かって開放されている。
【0024】
絶縁層2は、例えば、後述する耐折回数を満足する絶縁材料から形成される。絶縁材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂の意味であり、以下同義)、ウレタン・(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、イソブチレン系樹脂などが挙げられる。絶縁材料は、単独使用または2種以上組み合わせることもできる。
【0025】
絶縁材料として、柔軟性と靱性とを兼ね備える特性を得るために、好ましくは、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン・(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられ、優れた耐折性を得る観点から、より好ましくは、ウレタン・(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。
【0026】
ウレタン・(メタ)アクリル系樹脂は、紫外線硬化性樹脂であって、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートと、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリレートとを含む原料を配合して、光重合開始剤の存在下、それらを反応させることにより得られる。具体的には、上記した原料および光重合開始剤を配合して、混合物を調製し、混合物に対して紫外線を照射して硬化させる。
【0027】
シリコーン系樹脂は、熱硬化性樹脂であって、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられ、好ましくは、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0028】
絶縁層2は、JIS P8115(2001年)に準拠して測定される耐折回数が10回以上であり、好ましくは、100回以上、より好ましくは、1,000回以上、さらに好ましくは、10,000回以上であり、また、例えば、100,000回以下である。絶縁層2の耐折回数が上記した下限に満たない場合には、配線回路基板1を繰り返し伸縮させたときに、導体パターン3が絶縁層2から剥離することを抑制できない。
【0029】
絶縁層2の耐折回数の測定方法の詳細は、後の実施例で詳述される。
【0030】
絶縁層2の20℃における引張貯蔵弾性率E’は、例えば、2,000MPa以下、好ましくは、1,000MPa以下、より好ましくは、100MPa以下、さらに好ましくは、50MPa以下、とりわけ好ましくは、20MPa以下であり、また、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、0.5MPa以上である。
【0031】
絶縁層2の引張貯蔵弾性率E’が上記した上限以下であれば、絶縁層2の優れた伸縮性を確保することができる。一方、絶縁層2の引張貯蔵弾性率E’が上記した下限以上であれば、優れた靱性および優れた取扱性を確保することができる。
【0032】
絶縁層2の20℃における引張貯蔵弾性率E’は、周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で絶縁層2を動的粘弾性測定することにより求められる。
【0033】
絶縁層2の厚みT0は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0034】
絶縁層2の厚みT0は、図2に示すように、厚み方向に投影したときに、導体パターン3と重ならない領域における、絶縁層2の下面10と上面11との厚み方向における距離T0である。
【0035】
絶縁層2の厚みT0は、配線回路基板1の厚みと同一である。
【0036】
1−2.導体パターン
導体パターン3は、図1および図2に示すように、厚み方向に投影したときに、絶縁層2の投影面に含まれるように、配置されている。導体パターン3は、先後方向に延びる配線5と、配線5の先後両端部のそれぞれに接続される端子6とを一体的に備える。
【0037】
配線5は、左右方向に間隔を隔てて複数設けられている。複数の配線5のそれぞれは、略波形(または正弦波形)形状を有している。
【0038】
端子6は、配線回路基板1の先端部および後端部のそれぞれに複数設けられている。また、複数の端子6のそれぞれは、配線5の先後両端部に連続するように設けられている。複数の端子6のそれぞれは、平面視略矩形状を有するランドである。
【0039】
導体パターン3(具体的には、配線5)は、図2に示すように、断面略矩形状を有しており、具体的には、露出面の一例としての上面7と、上面7に対して下側(厚み方向他方側の一例)に間隔を隔てて対向配置される対向面の一例としての下面8と、上面7の周端部および下面8の周端部を連結する連結面の一例としての側面9とを一体的に有している。導体パターン3は、絶縁層2の上面11から露出するように、溝部4に嵌っている。
【0040】
導体パターン3の上面7は、絶縁層2の上面11に対して下側(厚み方向他方側の一例)に位置している。導体パターン3の上面7と、上面7より上側の溝部4の内側面とによって、絶縁層2の上面11に対する段差部21が形成されている。また、導体パターン3の上面7は、絶縁層2の上面11に対して平行な面であって、先後方向に延びる平坦面である。さらに、導体パターン3の上面7は、絶縁層2の上面11から露出する露出面である。
【0041】
導体パターン3の下面8は、導体パターン3の上面7に平行する平坦面である。導体パターン3の下面8は、絶縁層2の溝部4の内側面によって被覆されている。具体的には、導体パターン3の下面8は、絶縁層2の溝部4に対して直接接触している。
【0042】
導体パターン3の側面9は、厚み方向(上下方向)に沿う面であって、絶縁層2の溝部4の内側面によって被覆されている。導体パターン3の側面9は、絶縁層2の溝部4に対して直接接触している。
【0043】
導体パターン3は、例えば、銅、ニッケル、金、および、それらの合金などの導体材料などから形成される。導体材料として、好ましくは、銅が挙げられる。
【0044】
導体パターン3の寸法は、用途および目的に応じて適宜設定され、特に限定されない。複数の配線5のそれぞれの左右方向長さ(幅)は、例えば、12μm以上、好ましくは、15μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、750μm以下であり、隣接する配線5間の間隔は、例えば、12μm以上、好ましくは、15μm以上であり、また、例えば、10,000μm以下、好ましくは、7,500μm以下であり、また、先後方向長さ(長さ)は、例えば、10mm以上、好ましくは、20mm以上であり、また、例えば、250mm以下、好ましくは、100mm以下である。複数の端子6の左右方向長さおよび先後方向長さは、例えば、100μm以上、好ましくは、200μm以上であり、また、例えば、10,000μm以下、好ましくは、5,000μm以下であり、隣接する端子6間の間隔は、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、10,000μm以下、好ましくは、5,000μm以下である。
【0045】
導体パターン3の平面積S1(厚み方向に投影したときの投影面積)の、絶縁層2の平面積S0に対する比(S1/S0)、つまり、厚み方向に投影したときにおける導体パターン3の絶縁層2に占める割合は、また、例えば、70%以下、好ましくは、60%以下であり、例えば、1%以上、好ましくは、3%以上である。S1/S0が上記した上限以下であれば、配線回路基板1の伸縮性に優れる。
【0046】
導体パターン3の厚みT1(上面7と下面8との厚み方向における距離T1)、すなわち、配線5および端子6のそれぞれの厚みT1は、例えば、0.3μm以上、好ましくは、0.8μm以上、より好ましくは、1.0μm以上であり、また、例えば、112μm以下、好ましくは、75μm以下、より好ましくは、40μm以下である。導体パターン3の厚みT1が上記した下限以上であれば、導体パターン3の絶縁層2に対する密着力を向上させることができ、導体パターン3の絶縁層2からの剥離を抑制することができる。
【0047】
導体パターン3の厚みT1の、絶縁層2の厚みT0に対する比(T1/T0)は、例えば、1未満、好ましくは、0.9以下、より好ましくは、0.8以下であり、また、例えば、0.05以上、好ましくは、0.1以上、より好ましくは、0.2以上である。T1/T0が、上記した下限以上であれば、配線回路基板1の薄型化を図ることができる。
【0048】
なお、導体パターン3の下方に位置する絶縁層2の厚みT2、すなわち、導体パターン3と厚み方向において対向する絶縁層2の厚みT2は、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下、より好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、5μm以上である。
【0049】
導体パターン3の下方に位置する絶縁層2の厚みT2の、絶縁層2の厚みT0に対する比(T2/T0)は、例えば、0.95以下、好ましくは、0.85以下、より好ましくは、0.75以下であり、また、例えば、0.1以上である。T2/T0が、上記した上限以下であれば、導体パターン3の絶縁層2に対する密着力を確保しつつ、配線回路基板1の薄型化を図ることができる。
【0050】
また、導体パターン3の厚みT1の、導体パターン3の下方に位置する絶縁層2の厚みT2に対する比(T1/T2)は、例えば、0.05以上、好ましくは、0.1以上であり、また、例えば、0.9以下、好ましくは、0.8以下である。T1/T2が、上記した下限以上であれば、配線回路基板1の薄型化を図ることができる。
【0051】
また、導体パターン3の上面7と、絶縁層2の上面11との、厚み方向における距離T6、すなわち、上記した段差部21の深さT6は、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0052】
段差部21の深さT6の、絶縁層2の厚みT0に対する比(T6/T0)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.03以上であり、また、例えば、0.5以下、好ましくは、0.3以下である。T6/T0が上記した下限以上であれば、後述する工程(5)におけるシード層15を除去する時間を十分に確保することができるので、隣接する導体パターン3同士のシード層15を介した短絡を抑制することができる。
【0053】
また、導体パターン3の厚みT1と、段差部21の深さT6との和(T1+T6)は、溝部4の深さであって、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0054】
また、溝部4の深さ(T1+T6)の、絶縁層2の厚みT0に対する比((T1+T6)/T0)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、0.9以下、好ましくは、0.8以下である。上記した比が上記した下限以上であれば、導体パターン3の絶縁層2に対する密着力を確保しつつ、配線回路基板1の薄型化を図ることができる。
【0055】
2.配線回路基板の製造方法
次に、配線回路基板1の製造方法について、図3A図3Fを参照して説明する。
【0056】
この製造方法は、シード層15を剥離層16の上面(厚み方向一方面の一例)に形成する工程(1)(図3A参照)、導体パターン3をシード層15の上面(厚み方向一方面の一例)に形成する工程(2)(図3Bおよび図3C参照)、シード層15および導体パターン3を絶縁層2によって被覆する工程(3)(図3D参照)、剥離層16をシード層15から剥離する工程(4)(図3E参照)、および、シード層15を除去する工程(5)(図3F参照)を備える。
【0057】
また、この製造方法では、例えば、ロール・トゥ・ロール法、あるいは、枚葉(バッチ)方式で、配線回路基板1を製造する。
【0058】
以下、各工程について説明する。
【0059】
2−1.工程(1)
工程(1)では、図3Aに示すように、シード層15を剥離層16の上面(厚み方向一方面の一例)に形成する。
【0060】
シード層15は、例えば、クロム、金、銀、白金、ニッケル、チタン、ケイ素、マンガン、ジルコニウム、およびそれらの合金、またはそれらの酸化物などの金属材料から形成される。金属材料として、好ましくは、銅が挙げられる。
【0061】
剥離層16は、シード層15に対して剥離可能に支持できる支持層であれば、特に限定されず、例えば、樹脂層、金属層などが挙げられ、好ましくは、金属層が挙げられる。金属層は、例えば、ステンレス、アルミニウム、42アロイなどの金属材料からシート形状に形成されている。金属材料として、好ましくは、ステンレスが挙げられる。剥離層16の厚みは、例えば、18μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0062】
シード層15を剥離層16の上面に形成するには、例えば、めっきなどのウェットプロセス、例えば、蒸着、スパッタリングなどのドライプロセスなどが用いられる。好ましくは、めっき、より好ましくは、電解めっきによって、シード層15を剥離層16の上面に形成する。
【0063】
シード層15は、剥離層16の上面全面に形成される。
【0064】
シード層15の厚みは、例えば、0.03μm以上、好ましくは、0.3μm以上であり、また、例えば、5μm以下、好ましくは、3μm以下である。
【0065】
2−2.工程(2)
工程(2)は、工程(1)の後に実施される。工程(2)では、図3Cに示すように、導体パターン3をシード層15の上面に形成する。
【0066】
好ましくは、図3Bおよび図3Cに示すように、アディティブ法によって、導体パターン3をシード層15の上面に形成する。
【0067】
具体的には、まず、図3Bに示すように、ドライフィルムレジストからめっきレジスト17を、導体パターン3の逆パターンで、シード層15の上面に形成する。次いで、図3Cに示すように、シード層15から給電する電解めっきによって、導体パターン3を、めっきレジスト17から露出するシード層15の上面に積層する。その後、図3Cの仮想線で示すめっきレジスト17を、例えば、剥離液を用いて除去する。
【0068】
導体パターン3は、シード層15の上面に連続する形状を有する。
【0069】
2−3.工程(3)
工程(3)は、工程(2)の後に実施される。工程(3)では、図3Dに示すように、シード層15および導体パターン3を絶縁層2によって被覆する。
【0070】
例えば、シート形状に予め形成された半固形状または固形状(より具体的には、Bステージ)の絶縁材料からなる絶縁層2を用意し、続いて、それをシード層15および導体パターン3に対して圧着または転写する。または、液体状(より具体的には、Aステージ)の絶縁材料(ワニスなど)を、シード層15および導体パターン3に対して塗布する。
【0071】
その後、半固形状または固形状の絶縁材料、または、液体状の絶縁材料が、未硬化状態(Aステージ状態またはBステージ状態)であれば、紫外線照射または加熱によって、絶縁材料を硬化(Cステージ化)させる。
【0072】
これによって、シード層15の上面において、導体パターン3間、および、導体パターン3の外側に充填された絶縁層2が、導体パターン3およびシード層15を被覆するように、形成される。具体的には、絶縁層2は、シード層15の上面と、導体パターン3の対向面8(図3Dでは、上面8に相当。一方、図2では、下面8に相当。)および側面9とを被覆している。なお、絶縁層2において、導体パターン3の対向面8および側面9を被覆する部分は、溝部4である。
【0073】
2−4.工程(4)
工程(4)は、工程(3)の後に実施される。工程(4)では、図3Eに示すように、剥離層16をシード層15から剥離する。
【0074】
具体的には、図3Dの仮想線で示すように、剥離層16を下方に撓ませながら、シード層15から剥離する。例えば、剥離層16の右端部を把持し、それを下方に引き下げて、剥離層16を下方に湾曲するように撓ませることによって、剥離層16の右端部、左右方向中央部および左端部を、それぞれ、シード層15の下面の右端部、左右方向中央部および左端部から順次引き剥がす。
【0075】
2−5.工程(5)
工程(5)は、工程(4)の後に実施される。工程(5)では、図3Fに示すように、シード層15を除去する。
【0076】
例えば、ウエットエッチングなどのエッチングによって、シード層15を除去する。
【0077】
シード層15の除去に伴って、溝部4に充填されていた導体パターン3の下端部が除去される。これによって、段差部21が形成される。除去される導体パターン3の下端部の厚みT6は、上記した段差部21の深さT6と同一である。
【0078】
上記した工程(1)〜工程(5)によって、図1および図2に示す配線回路基板1が得られる。
【0079】
3.ウエアラブルデバイス
次に、上記した配線回路基板1を備えるウエアラブルデバイス20について説明する。
【0080】
ウエアラブルデバイス20は、図1に示すように、配線回路基板1と、センサ18(仮想線)と、メモリ25(仮想線)とを備える。
【0081】
なお、図2の仮想線で示すように、配線回路基板1には、必要により、被覆層19および感圧接着層23が設けられている。被覆層19は、配線5を被覆するように絶縁層2の上面11に形成されており、絶縁層2で例示した絶縁材料などから形成されている。感圧接着層23は、絶縁層2の下面に設けられている。
【0082】
センサ18は、例えば、ユーザの脈拍、体温などのデータを測定できる測定手段である。センサ18は、配線回路基板1における先端部の端子6と電気的に接続されている。
【0083】
メモリ25は、センサ18が測定したデータを記憶できる記憶手段である。メモリ25は、配線回路基板1における後端部の端子6と電気的に接続されている。
【0084】
このウエアラブルデバイス20は、例えば、図4Aに示すように、ユーザーの手首24の内側部分の皮膚に、感圧接着層23によって貼り付けられる(装着される)。
【0085】
このウエアラブルデバイス20は、図4Bに示すような、手首24の伸展(手の甲側への移動)、および、図4Cに示すような、手首24の屈曲(掌への移動)に対して、柔軟に追従する。
【0086】
具体的には、図4Bに示すように、手首24の伸展によって、手首24の内側部分の皮膚が伸長し、これに追従するように、ウエアラブルデバイス20の配線回路基板1が伸長する。
【0087】
一方、図4Cに示すように、手首24の屈曲によって、手首24の内側部分の皮膚が屈曲し、これに追従するように、ウエアラブルデバイス20の配線回路基板1が屈曲する。
【0088】
4.作用効果
この配線回路基板1では、導体パターン3は、絶縁層2に埋め込まれているので、導体パターン3が絶縁層2から剥離しにくく、とりわけ、絶縁層2は、JIS P8115(2001年)に準拠して測定される耐折回数が上記した下限以上であるので、配線回路基板1を伸縮させても、導体パターン3が絶縁層2から剥離することを抑制することができる。そのため、配線回路基板1は、信頼性に優れる。
【0089】
また、導体パターン3の厚みT1の、絶縁層2の厚みT0に対する比(T1/T0)が、特定の上限以下であれば、配線回路基板1の薄型化を図ることができる。
【0090】
また、導体パターンの厚みT1が上記した下限以上であれば、導体パターン3の絶縁層2に対する密着性を向上させることができる。
【0091】
また、この配線回路基板1によれば、下面8および側面9は、絶縁層2によって被覆されているので、導体パターン3の絶縁層2に対する密着力を向上させることができる。そのため、導体パターン3が絶縁層2から剥離することをより一層抑制することができる。
【0092】
また、この配線回路基板11では、絶縁層2の引張貯蔵弾性率E’が、特定の上限以下であれば、伸縮性に優れる。
【0093】
また、このウエアラブルデバイス20は、信頼性に優れる配線回路基板1を備えるので、信頼性に優れる。
【0094】
5.変形例
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
一実施形態では、図2に示すように、導体パターン3の上面7は、絶縁層2の上面11に対して下側に位置しているが、例えば、図5に示すように、絶縁層2の上面11と面一となるように位置することもできる。
【0096】
つまり、図5に示すように、導体パターン3の上面7と、絶縁層2の上面11とは、面方向(先後方向および左右方向)に投影したときに、同一位置に位置している。これによって、導体パターン3の上面7と、絶縁層2の上面11とは、単一の平坦面を形成する。つまり、配線回路基板1の上面には、一実施形態における段差部21(図2参照)が形成されない。
【0097】
図5に示す配線回路基板1を得るには、工程(5)(図3F参照)において、エッチング時間を、シード層15のみが除去され、溝部4に充填されている導体パターン3の下端部が除去されないように、調整する。
【0098】
図5に示す配線回路基板1によっても、一実施形態の配線回路基板1と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
一方、一実施形態の配線回路基板1は、図5に示す配線回路基板1に対して、ロールとのブロッキングを抑制する観点から、好ましい。
【0100】
つまり、図2に示すような、一実施形態の配線回路基板1であれば、ロール・トゥ・ロール法で製造され、配線回路基板1の上面をロール(図示せず)に対向させる場合に、図5に示す配線回路基板1と異なり、導体パターン3の上面7とロールの表面との間に空隙(隙間)を設けることができる。それとともに、配線回路基板1の上面におけるロールとの接触面積を小さくすることができる。そのため、図2に示すような、一実施形態の配線回路基板1は、図5に示す配線回路基板1に比べて、ロールとのブロッキングを抑制することができる。
【0101】
一方、図6に示すように、導体パターン3の上面7は、絶縁層2の上面11に対して上側に位置することもできる。
【0102】
図6に示す配線回路基板1において、導体パターン3の上端部は、絶縁層2の上面11に対して上側に向かって突出する一方、下端部および中央部は、絶縁層2に埋め込まれている。
【0103】
導体パターン3の埋め込み深さT4(つまり、導体パターン3の下面8と、絶縁層2の上面11との厚み方向における距離T4)、導体パターン3の突出長さT5(つまり、導体パターン3の上面7と、絶縁層2の上面11との厚み方向における距離T5)、および、導体パターン3における埋め込み深さT4の、突出長さT5に対する比(T4/T5)は、用途および目的に応じて適宜設定される。
【0104】
図6に示す配線回路基板1を得るには、工程(5)(図3Eおよび図3F参照)において、まず、ドライフィルムレジスト(図示せず)をシード層15の下面に積層し、次いで、露光および現像により、導体パターン3と同一パターンのエッチングレジスト(図示せず)をドライフィルムレジストから形成し、その後、エッチングレジストから露出するシード層15のみを除去する。その後、エッチングレジストを除去する。
【0105】
図6に示す配線回路基板1も、一実施形態における図2に示す配線回路基板1と同様の作用効果を奏することができる。
【0106】
一方、図2および図5に示す配線回路基板1は、導体パターン3間の短絡を抑制する観点から、図6に示す配線回路基板1に比べて、好ましい。
【0107】
図2および図5に示す配線回路基板1は、図6に示す配線回路基板1と異なり、導体パターン3の上面7は、絶縁層2の上面11に対して下側、あるいは、同一位置に位置しているので、導体パターン3間の短絡を抑制することができる。
【0108】
一実施形態では、図2に示すように、導体パターン3は、断面略矩形状を有しているが、例えば、図7に示すように、断面略テーパー形状を有することもできる。
【0109】
図7において、導体パターン3は、上側に向かって次第に左右方向長さ(幅)が短く(狭く)なる断面略テーパー形状を有する。
【0110】
つまり、左右方向に互いに対向する側面9は、上側に向かうに従って近接するように、傾斜している。
【0111】
配線5における下面8の左右方向長さ(幅)は、配線5における上面7の左右方向長さ(幅)に対して、例えば、101%以上、好ましくは、105%以上であり、また、例えば、145%以下である。
【0112】
そして、図7に示す配線回路基板1によれば、導体パターン3の絶縁層2に対するアンカー効果により、導体パターン3の絶縁層2に対する密着力をより一層向上させることができる。
【0113】
また、一実施形態では、図2の仮想線に示すように、配線回路基板1に感圧接着層23を設けて、感圧接着層23を介して絶縁層2をユーザーの手首24の内側部分の皮膚に貼着しているが、例えば、感圧接着層23を設けることなく、配線回路基板1の絶縁層2をユーザーの手首24の内側部分の皮膚に、直接、貼着(貼り合わせ)することもできる。
【実施例】
【0114】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0115】
実施例1
ステンレスからなり、厚み50μmの剥離層16を用意し、続いて、電解銅めっきにより、銅からなり、厚み1.0μmのシード層15を剥離層16の上面に形成した(工程(1)、図3A参照)。
【0116】
次いで、ドライフィルムレジストをシード層15の上面全面に積層し、次いで、ドライフィルムレジストを露光および現像することにより、めっきレジスト17をシード層15の上面に、導体パターン3の逆パターンで形成した(図3B参照)。次いで、シード層15から給電する電解銅めっきによって、銅からなり、厚み3μmの導体パターン3を、シード層15の上面に積層した。その後、図3Cに示すように、めっきレジスト17を、剥離液を用いて除去した(図3Cの仮想線参照、工程(2))。
【0117】
複数の配線5のそれぞれの左右方向長さが50μm、先後方向長さが60mm、隣接する配線5間の間隔が4,050μm、複数の端子6の左右方向長さおよび先後方向長さが4,000μm、隣接する端子6間の間隔が100μmであった。導体パターン3の平面積S1は、70mmであった。
【0118】
別途、表1に記載の「絶縁材料」の「詳細」欄に記載の処方により調製した混合物(ウレタン・アクリル樹脂)のワニスを、シード層15および導体パターン3に対して塗布した。その後、Aステージ状態およびBステージ状態のワニスを、高圧水銀ランプを用いて、紫外線(照度340mW/cm、光量4,000mJ/cm)を照射して、ワニスを硬化(Cステージ化)させて、絶縁層2を形成した(工程(3)、図3D参照。)。
【0119】
絶縁層2の厚みT0は、10μmであった。また、導体パターン3に対向する絶縁層2の厚みT2は、7μmであった。溝部4の深さは、3μmであった。溝部4の深さ(後述するT1+T6に相当)の、絶縁層2の厚みT0に対する比((T1+T6)/T0)は、0.3であった。絶縁層2の平面積S0は、1,600mmであり、S1/S0は、4.375%であった。
【0120】
次いで、剥離層16をシード層15から剥離した(工程(4)、図3E参照)。
【0121】
その後、ウエットエッチングによって、シード層15を除去した(工程(5)、図3F参照)。さらに、シード層15の除去に伴って、溝部4に充填されている導体パターン3の下端部が除去された。
【0122】
除去された導体パターン3の下端部の厚みT6は、2μmであった。導体パターン3の厚みT1は、1μmであった。T1/T2は、0.143であり、T6/T0は、0.2
であり、T1/T0は、0.1であり、T2/T0は、0.7であった。
【0123】
これによって、絶縁層2および導体パターン3を備える配線回路基板1を得た(図1および図2参照)。
【0124】
実施例2〜7および比較例1、2
導体パターン3の寸法および配置、絶縁材料の種類、詳細および硬化条件等を、表1に記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、配線回路基板1を得た(図2および図6参照)。
【0125】
なお、実施例7では、導体パターン3と同一パターンで、エッチングレジストを形成し、その後、エッチングレジストから露出するシード層15のみを除去し、その後、エッチングレジストを除去した。これによって、実施例6では、導体パターン3の上面7が、絶縁層2の上面11に対して、上側に位置していた。
【0126】
[評価]
下記の項目を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0127】
(1) 絶縁層
(1−1)引張貯蔵弾性率E’
各実施例および各比較例の絶縁層2のみについて、20℃における引張貯蔵弾性率E’を、動的粘弾性測定(DMA法)により、温度範囲−10〜260℃、周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で、測定した。
【0128】
(1−2)MIT試験(耐折性)
各実施例および各比較例の絶縁層2のみについて、JIS P8115(2001年)に準拠した下記の条件で、MIT試験(耐折性試験)を実施して、耐折回数を数えた。そして、下記の基準に従って、耐折性を評価した。
【0129】
(条件)
試験片寸法 :幅15mm、長さ110mm
試験速度 :175cpm
折り曲げ角度 :135°
荷重 :1.0kgf
折り曲げクランプのR :0.38mm
折り曲げクランプの開き :0.25mm
(基準)
○:耐折れ回数が10回以上
×:耐折れ回数が10回未満
(2) 配線回路基板
(2−1)密着性
各実施例および各比較例の配線回路基板1の上面に、粘着テープ(No.360UL、日東電工社製)を貼り合わせ、その後、粘着テープを配線回路基板1から引き剥がした。続いて、上記した貼り合わせおよび引き剥がしの動作を繰り返した。そして、導体パターン3が絶縁層2から剥離するのに要した回数を求め、下記の基準に従って、密着性を評価した。
【0130】
◎:回数が3以上
○:回数が1または2
△:回数が0
(2−2)短絡
電気的に独立し、互いに隣接する2つの配線にプローブを当て、デジタルマルチメータ(ADVANTEST R6552 DIGITAL MULTIMETER)の2端子抵抗モードを使用して、導通を有無を、デジタルマルチメータの抵抗値に基づいて確認した。
【0131】
導通があれば、配線間で短絡があり(ショートしており)、導通がなければ、配線間で短絡がなかったことを示す。
・導通有りの場合、デジタルマルチメータの液晶表示部に何らかの数値(数字)が表示された。
・導通無しの場合、デジタルマルチメータの液晶表示部に「.OL」(OverLoadの意)と表示された。
【0132】
【表1】
【符号の説明】
【0133】
1 配線回路基板
2 絶縁層
3 導体パターン
7 上面(露出面)
8 下面(対向面)
9 側面(連結面)
11 上面(絶縁層)
20 ウエアラブルデバイス
E’ 引張貯蔵弾性率
T1 導体パターンの厚み
T0 絶縁層の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7