(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のベアリングバーが一対のエンドプレートの間に平行して配置されると共に、これら複数のベアリングバーと交差するツイストバーを備えるグレーチングに取り付けられる固定具であって、
ICインレットおよび当該ICインレットを覆う本体部を備えるICタグ体が取り付けられると共に、前記ベアリングバーに付勢力を及ぼす状態で挟持することで、前記ベアリングバーに取り付けられる挟持部材と、
前記挟持部材に接続されていると共に、前記ベアリングバーへの取り付け後に切り離される引手部と、
を備えることを特徴とする固定具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の測量地点明示プレートにおいては、次のような問題がある。すなわち、測量地点明示プレートは、測量のために設置されているので、設置個所が分散しており、またその個数はさほど多くはない。したがって、補正が必要になる目的地でのGPSの位置補正には不十分な場合がある。
【0006】
また、測量地点明示プレートにおいては、電波の飛距離が安定しないという問題もある。すなわち、測量地点明示プレートは、地面に設置されるので、その測量地点明示プレート上に積雪したり土砂が堆積したり、コケや雑草が繁茂する場合がある。また、降雨等によって測量地点明示プレートが冠水する場合もある。このような場合には、電波の飛距離が短くなり、測量地点明示プレートを専用のリーダ装置で認識することが難しくなる場合がある。
【0007】
さらに、たとえばトンネル内や地下空間等のように、測量地点明示プレートの設置が少ないか見当たらない場所もある。なお、トンネル内や地下空間等では、GPSを用いて位置情報を得ることも難しくなる。
【0008】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、精度の良い位置情報を得ることが可能なグレーチングおよびグレーチングに固定される固定具を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、複数のベアリングバーが一対のエンドプレートの間に平行して配置されると共に、これら複数のベアリングバーと交差するツイストバーを備えるグレーチングであって、ICインレットおよび当該ICインレットを覆う本体部を備えるICタグ体と、を備え、ICタグ体は、ベアリングバーの側面であって、平面視したときにツイストバーの下方に取り付けられている、ことを特徴とするグレーチングが提供される。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、ICタグ体は、エンドプレートから離れた中央領域に設けられ、その中央領域のうち一対のエンドプレートの間のうち最も中央側のツイストバーの下方に配置されている、ことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、ICタグ体は、タグ取付部に取り付けられていて、このタグ取付部は、閉じ方向に付勢力を与える挟持部材に設けられていて、挟持部材は、ベアリングバーに付勢力を及ぼす状態で挟持することで、ベアリングバーに取り付けられる、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の第2の観点によると、複数のベアリングバーが一対のエンドプレートの間に平行して配置されると共に、これら複数のベアリングバーと交差するツイストバーを備えるグレーチングに取り付けられる固定具であって、ICインレットおよび当該ICインレットを覆う本体部を備えるICタグ体が取り付けられると共に、ベアリングバーに付勢力を及ぼす状態で挟持することで、ベアリングバーに取り付けられる挟持部材と、挟持部材に接続されていると共に、ベアリングバーへの取り付け後に切り離される引手部と、を備えることを特徴とする固定具が提供される。
【0013】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、挟持部材には、ICタグ体が取り付けられるタグ取付部と、タグ取付部と対向する対向部と、タグ取付部と対向部とを連結する連結部と、が設けられていて、これらによって閉じ方向に付勢力を与えられることで、ベアリングバーに付勢力を及ぼす状態で取り付けられる、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、タグ取付部には、ツイストバーが嵌まり込むガイド窪み部が設けられていて、このガイド窪み部にツイストバーが嵌まり込んだ取付状態で平面視したときに、ICタグ体の中央部分にツイストバーが位置している、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、精度の良い位置情報を得ることが可能なグレーチングおよびグレーチングに固定される固定具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、精度の良い位置情報を得るために、グレーチングを用い、そのグレーチングにICタグを取り付ける構成としている。
【0018】
すなわち、殆どの道路やトンネル、地下空間等では、雨水を排水するために、側溝が設けられているが、その側溝の上部にはコンクリート製の蓋の他に所々グレーチングが配置されて、側溝の上部を塞いでいる。そのため、グレーチングは、測量地点明示プレートよりも格段に設置個数が多く、また測量地点明示プレートよりも密に配置されている。そこで、上述したように、本発明では、グレーチングにICタグを取り付けて、精度の良い位置情報を得るようにしている。以下、本発明の一実施の形態に係る、グレーチングについて、図面に基づいて説明する。
【0019】
<1.グレーチング10の基本構成について>
図1は、グレーチング10の構成を示す斜視図である。グレーチング10は、側溝の上部に取り付けられて、その側溝を塞ぐための部材である。かかるグレーチング10は、たとえば鉄に亜鉛溶融めっき等のような表面処理を施したものや、ステンレス、FRP(ガラス強化プラスチック)等の強度を有する材質から形成されている。
【0020】
図1に示すように、グレーチング10は、エンドプレート20と、ベアリングバー21と、ツイストバー22とを有している。エンドプレート20は、グレーチング10の幅方向の両端に設けられている。このエンドプレート20は、たとえば側溝の段差部に搭載される部分であり、そのため側溝の長手方向に沿っている。エンドプレート20は、規格で定められた所定の肉厚および高さを有する板状の部材から構成されている。
【0021】
また、ベアリングバー21は、一対のエンドプレート20を橋渡しする板状の部材である。そのため、ベアリングバー21は、グレーチング10の幅方向に沿って配置されている。ベアリングバー21は、その両端側がエンドプレート20にそれぞれ溶接等によって取り付けられている。そのため、グレーチング10上に車両等の重量物が位置しても、このベアリングバー21によって重量物の荷重を支持することが可能となっている。なお、ベアリングバー21も、規格で定められた所定の肉厚および高さを有している。
【0022】
また、ツイストバー22は、ベアリングバー21の延伸方向(グレーチング10の幅方向)の中途部分において、グレーチング10の長手方向に延伸するように配置されている。そのため、ツイストバー22は、多数のベアリングバー21を連結するように設けられている。それにより、ベアリングバー21の変形を抑えている。このツイストバー22は、高さ方向の寸法がベアリングバー21よりもはるかに小さい棒状部材であるが、さらにたとえば矩形の棒状部材を捩じることで形成されている。なお、ツイストバー22も、ベアリングバー21に対して溶接等により取り付けられている。
【0023】
また、ツイストバー22は、グレーチング10の上方側に位置する。このツイストバー22の上面は、ベアリングバー21の上面と同程度の高さに設けられているが、ベアリングバー21よりは上方に突出しないように設けられている。このツイストバー22の存在により、グレーチング10の幅方向の開口部が分割される。そのため、自転車やベビーカー等の車輪が、この開口部に落ち込むのを防止可能となっている。
【0024】
なお、以下の説明においては、隣り合うベアリングバー21と、隣り合うツイストバー22とで囲まれた矩形の開口部を、スロット23と称呼する。
【0025】
<2.ICタグ体30について>
次に、ICタグ体30について説明する。ICタグ体30は、所定の周波数(たとえば920MHzのUHF帯域)の電磁波に対応している。このICタグ体30は、たとえば1m以上離れた位置に、UHF帯域に対応した専用端末が存在していても、その専用端末との間で、情報の送受信が可能となっている。
【0026】
図2は、ICタグ体30の構成を示す斜視図である。また、
図3は、ICタグ体30の構成を示す側断面図である。
図2および
図3に示すように、ICタグ体30は、本体部31と、ICインレット34とを有している。本体部31は、誘電性樹脂材料で形成された樹脂部32を備え、この樹脂部32によりICインレット34が覆われている。すなわち、ICインレット34は、樹脂部32の内部に埋め込まれている。
【0027】
また、本体部31は、樹脂部32以外に、保護部材33を有している。保護部材33は、たとえばステンレス鋼(SUS304)等の金属を材質としているが、この保護部材33は、樹脂部32を保護する強度を有している。なお、
図2に示す構成では、保護部材33は、本体部31の長手方向の一端側を覆っているが、本体部31の長手方向の他端側には開口部33bが設けられている。なお、本体部31の短手方向側は、保護部材33で覆われずに開口している。また、
図2に示すように、保護部材33には、大面積の取付板部33aが設けられていて、その取付板部33aには、ボルト等を差し込むための貫通孔33a1が設けられている。
【0028】
また、ICインレット34は、ICタグ基板341と、ICチップ342と、コイルアンテナ343とを備えている。ICタグ基板341は、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板341としては、たとえばPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。かかるICタグ基板341には、ICチップ342と、コイルアンテナ343とが設けられているが、そのうちICチップ342は、各種のデータを記憶する。また、コイルアンテナ343は、電磁誘導方式の場合には、フレミング右手の法則によりコイルアンテナ343に電流を生じさせるが、電波方式の場合には、コイルアンテナ643が受信した電波に基づいて電流を生じさせる。
【0029】
<3.ICタグ体30の第1の取付態様について>
次に、ICタグ体30の第1の取付態様について説明する。
図2および
図3に示すようなICタグ体30は、ベアリングバー21に取り付けられている。この様子を、
図4に基づいて説明する。
図4は、ICタグ体30の第1の取付態様に係り、グレーチング10に対してICタグ体30が取り付けられた部位を拡大して示す部分的な斜視図である。
【0030】
図4に示すように、ICタグ体30は、ベアリングバー21の側面に取り付けられているが、そのベアリングバー21においては、ICタグ体30は、ツイストバー22の下方に取り付けられている。しかしながら、ICタグ体30は、ツイストバー22よりも上方には突出しないように設けられている。したがって、車両がベアリングバー21やツイストバー22の上方に位置しても、ICタグ体30にダメージが与えられない状態となっている。
【0031】
なお、ICタグ体30は、ベアリングバー21に対して溶接によって取り付けても良く、リベットやねじ止め等によって取り付けても良く、その取付手法は、特に限定されるものではない。
【0032】
また、
図4に示すように、ICタグ体30の幅方向の中央部分には、ツイストバー22が差し掛かるように設けられている。換言すると、グレーチング10を上方から見た場合、ICタグ体30がツイストバー22を挟み込むように配置されている。ここで、
図4に示すように、ICタグ体30のコイルアンテナ343には、高周波電流を変圧器の1次電流として相互誘導された2次電流が流れ、この2次電流によって誘導される高周波の磁力線φが、外部から再びコイルアンテナ343に戻るような閉ループを形成する。この磁力線φによって、ツイストバー22の表面に高周波電流iが流れ、特に図示しないが、その電流による進行波および反射波によっても、定在波が形成される。
【0033】
したがって、ツイストバー22の表面においては、高周波電流の進行波と、このツイストバー22の端部等から反射する高周波電流の反射との干渉により所定の強度の定在波が形成される。そして、この定在波の形成により、定在波が全く形成されない場合と比較して、遠くまで電波放射を発生させることができる。ちなみに定在波が形成されない場合は、グレーチング10の表面のツイストバー22の高周波電流iによる近距離となる電磁誘導方式の通信飛距離となる。
【0034】
また、
図1に示すように、ICタグ体30は、グレーチング10の中央領域に取り付けられている。詳述すると、グレーチング10においては、ベアリングバー21やツイストバー22のピッチは、グレーチング10の幅方向の端部側が狭く設けられている。加えて、たとえばグレーチング10の幅方向の両端側は、側溝の段差部に載置される。したがって、グレーチング10の幅方向の両端側には、土砂が溜まったり付着し易い。しかも溜まったり付着した土砂に対して、草や苔が生える場合も多い。そのため、グレーチング10の幅方向の両端や、長手方向の両端に、ICタグ体30を取り付けた場合には、それらの土砂の堆積や草や苔の繁茂によって、電磁波の飛距離が低下してしまう。
【0035】
なお、グレーチング10の長手方向の両端側においても、エンドプレート20やベアリングバー21が他の部位よりも密に存在する等により、土砂が溜まったり付着し易く、その土砂等に対して、草や苔が生える場合も多い。
【0036】
一方、グレーチング10は、コンクリート製の蓋と比較して、スロット23からの排水性に優れているが、特に、グレーチング10の中央領域では、土砂が溜まり難い。したがって、電磁波の飛距離を良好に維持するために、ICタグ体30は、グレーチング10の中央領域に設けられている。ここで、中央領域とは、グレーチング10の幅方向および長手方向の中央側の領域を指すが、グレーチング10のうち幅方向の両端側や長手方向の両端側を除いた領域が中央領域に該当するものとしても良い。
【0037】
なお、ベアリングバー21の高さが30mm程度以上、ツイストバー22の太さが10mm程度以上であれば、幅が10mm、長さが30mm程度のICタグ体30をツイストバー22の直下に位置するベアリングバー21に取り付けても、直接脱落の力が加わらないことになる。
【0038】
<4.ICタグ体30の第2の取付態様について>
続いて、ICタグ体30の第2の取付態様について説明する。
図5は、ICタグ体30の第2の取付態様に係り、ICタグ体30を取り付けるための固定具40を示す斜視図である。
図6は、ICタグ体30の第2の取付態様に係り、グレーチング10に対し固定具40を介してICタグ体30を取り付けた状態を拡大して示す部分的な斜視図である。
【0039】
図5に示すように、ICタグ体30は、固定具40に取り付けられている。そして、その固定具40を介してグレーチング10にICタグ体30を取り付けても良い。特に、既に設置されているグレーチング10においては、ICタグ体30を容易に後付け可能であることが好ましい。しかしながら、グレーチング10においては、スロット23の幅は狭く、そのため溶接やねじ止めといった手法にて、ICタグ体30をベアリングバー21に取り付けるのは、非常に困難である。したがって、
図5に示すような固定具40を用いることで、ICタグ体30をグレーチング10の地上側からスロット23に挿し込んでツイストバー22に引っ掛けるなどして容易に取り付けることが可能である。つまり、固定具40を固定するためにグレーチング10を溝からはずして裏返しするなど取り付け前準備工程が不要となると言った優れた特徴が得られる。以下、その詳細について説明する。
【0040】
固定具40は、挟持部材41と、引手部42とを有している。挟持部材41は、鉄等の金属を材質として形成されているが、この挟持部材41をバネ性を有する金属材質から形成しても良く、それによって挟持部材41が強固にベアリングバー21を維持する状態としても良い。そのようなバネ性を有する材質としては、バネ用ステンレス鋼やリン青銅等が挙げられる。
【0041】
挟持部材41は、タグ取付部41aと、対向部41bと、連結部41cとを有している。これらのうち、タグ取付部41aは、ICタグ体30が取り付けられる板状の部分である。なお、ICタグ体30は、タグ取付部41aに対して、たとえばリベット止め、溶接またはねじ止め等の手法によって固定される。
【0042】
また、対向部41bは、タグ取付部41aと対向して設けられる板状の部分である。また、連結部41cは、タグ取付部41aと対向部41bを連結する部分であり、
図5に示す構成では、湾曲状に設けられている。
図5に示す構成では、タグ取付部41aと対向部41bとは開いている状態となっている。しかしながら、挟持部材41がバネ性を有する場合には、対向部41bの上端側がタグ取付部41aに近接するように連結部41cの曲率半径が小さくなり、そのときが挟持部材41の閉じ状態となる。そして、その閉じ状態を開いてベアリングバー21に取り付けることで、固定具40がベアリングバー21に固定される状態が維持される。
【0043】
また、固定具40は、引手部42を有している。引手部42は、固定具40をベアリングバー21に固定する際に、一時的に用いられる部分である。引手部42は、挟持部材41よりも上方に向かって突出している部分であり、取り付けの作業にはグレーチング10よりも上方に大きく突出する部分である。この引手部42には、孔部421が設けられていて、この孔部421に別途の工具等の引っ掛け部分を差し込むことで、作業時の利便性を高めることが可能となっている。
【0044】
この引手部42は、固定具40がベアリングバー21に固定されると、挟持部材41から切り離される状態となっている。かかる切り離し性を良好とするために、挟持部材41と引手部42の境界部分には、引手部42の付け根の幅寸法を小さくするための切込部43が設けられている。そのため、引手部42は、挟持部材41から容易に切り離すことが可能となっている。
【0045】
さらに、固定具40には、ガイド窪み部44が設けられている。ガイド窪み部44は、挟持部材41の上端部分を窪ませている部分であり、このガイド窪み部44には上述したツイストバー22が位置する。そのため、固定具40を取り付ける際に、ICタグ体30をツイストバー22の直下に位置させることができ、ICタグ体30の位置決めを行うことが可能となる。
【0046】
なお、固定具40のベアリングバー21に対する挟持性を向上させるために、タグ取付部41aおよび対向部41bの上端には、係止湾曲部41a1,41b1を設けるようにしても良い。この場合には、ベアリングバー21に対する挟持部材41の挟持性を向上させることができる。
【0047】
<5.実験結果>
以上のようにして、ツイストバー22の直下のベアリングバー21に取り付けたICタグ体30について、外部のリーダ装置との間の通信にどのように影響するか実験で確認した。この実験では、ICタグ体30を日立化成株式会社製X07型ICタグ(UHF帯920MHz)とした。また、ICタグ体30の保護部材33のうち取付板部33aから突出している部位について、その幅が10mm、長さが20mmとなっていて、さらにICタグ体30の全体の厚みが5mmとなっている。また、保護部材33は、厚さが1mmのステンレス鋼材となっている。さらに、取付板部33aは、縦・横の寸法がそれぞれ22mmとなっている。
【0048】
また、グレーチング10は、道路工事用に標準的に市販されているものを用いた。具体的には、長さ500mm、幅360mm、高さ45mmとしたとき、スロット23の長さは90mmであり、スロット23の幅は25mmとなっている。また、グレーチング10の表面レベルと隣接する路面やコンクリート製側溝蓋の表面レベルを合わせるためのグレーチング10のかさ上げ部は50mmとなっている。かかる構成について、グレーチング10の裏面側からツイストバー22の直下に取り付けた。このとき、リーダ装置でどの位の通信距離が得られるか実験したところ、リーダ装置の電波920MHz、出力30dBmで、2m以上の上空で通信が可能であった。
【0049】
ちなみに、組み込んだICタグ体30について、グレーチング10と同等寸法の金属板上の中央表面に設置して確かめたところ、同条件の電波で上空1.5mの通信距離(電波方式の通信距離)であった。これは、スロット23の寸法が電波の波長と同調して感度を助長したと推察している。なお、スロット23の長さが45mm、幅が25mmの場合、同30dBmで約30cm程度の通信距離(電磁誘導方式の通信距離)に減少している。また、感度すなわち通信距離は、側溝の溝内部が空で乾燥しているときが最大であり、水が満水になるにつれ減少する。
【0050】
ここで、スロット23の寸法が、電波の波長と同調すると、上空方向に高い感度を獲得できる。経験上、スロット23の長さが波長の1/4程度に近づくと、スロット23の幅を決定するツイストバー22に、より大きな高周波電流iが流れる。また、高周波電流iに誘導されることにより、高周波磁界φが発生する。そして、磁界φがICタグ体30を貫通することで、ICタグ体30が電磁的に励起される。そして、ICタグ体30に対して、ICタグ情報に関する通信を行うことができる。なお、磁界φによる閉ループは、ツイストバー22を取り囲むが、あるスロット23から磁界φが飛び出ると、グレーチング10の幅方向で隣り合うスロット23が入り込む。つまりICタグ体の真上にあるツイストバー22の両側に形成される一組のスロット23を磁界φが出入りすることになる。
【0051】
<6.作用効果について>
以上のような構成のグレーチング10によると、グレーチング10には、ICタグ体30が取り付けられている。このため、リーダ装置との間でICタグ体30が通信を行うことにより、精度の良い位置情報を得ることが可能となる。すなわち、グレーチングは、測量地点明示プレート等と比較して、設置されている個数が非常に多いので、そのグレーチングのうちICタグ体30が取り付けられているものを起点とすることにより、精度の良い位置情報を得ることが可能となる。
【0052】
また、たとえばトンネル内や地下空間等のように、測量地点明示プレートが殆ど設置されていない場所であっても、排水のために側溝が存在し、その側溝にグレーチングが取り付けられているケースも非常に多い。そのため、トンネル内や地下空間等といった場所でも、精度の高い位置情報を得ることが可能となる。したがって、誤って、対象物とは異なる屋外インフラに対して、点検や工事を行うのを、より確実に防止可能となる。
【0053】
また、ICタグ体30は、ベアリングバー21の側面であって、平面視したときにツイストバー22の下方に取り付けられている。このため、ICタグ体30はツイストバー22よりも上方には位置しないので、車両等がグレーチング10の上部に位置しても、その衝撃を直接受けることがない。したがって、ICタグ体30にダメージが生じるのを防止可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、ICタグ体30は、ツイストバー22の直下に位置しているので、ICタグ体30のICインレット34が備えるコイルアンテナ343とツイストバー22との間で、トランス結合を生じさせることができる。それにより、高周波電流iによる電磁誘導で、ICタグ体30を電磁的に励起することができる。したがって、ICタグ体30は、比較的離れた距離にあるリーダ装置との間で例えば、条件がよければ車両の運転席から通信を行うことが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態では、ICタグ体30は、ベアリングバー21から離れた中央領域に設けられていて、その中央領域のうち一対のエンドプレート20の間のうち最も中央側のツイストバー22の下方に配置されている。ここで、グレーチング10においては、その端部側で土砂等が堆積し易く、またそのような端部側でコケや雑草が繁茂する場合がある。このような土砂等の堆積やコケや雑草の繁茂は、電磁波の飛距離が安定しない原因となる。しかしながら、上述のように、グレーチング10の中央領域といった排水性の良好な部位にICタグ体30が設けられることにより、ICタグ体30の上方に土砂等が堆積するのを防止可能となり、またコケや雑草がICタグ体30の上部に繁茂するのを防止することができる。したがって、電磁波の飛距離を安定化させることができる。
【0056】
さらに、本実施の形態では、ICタグ体30は、挟持部材41のタグ取付部41aに取り付けられている。また、このタグ取付部41aは、閉じ方向に付勢力を与える挟持部材41に設けられていて、挟持部材41は、ベアリングバー21に付勢力を及ぼす状態で挟持することで、ベアリングバー21に取り付けられる。したがって、挟持部材41の付勢力を利用することで、溶接やねじ止めを行わずに、ICタグ体30をグレーチング10に取り付けることができ、取付作業を容易化することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、固定具40を用いてICタグ体30がグレーチング10に固定されるが、この固定具40には、挟持部材41と引手部42とが設けられている。したがって、引手部42を引っ張りながら、固定具40の挟持部材41を、ベアリングバー21に挟持させることができる。また、取り付け後には、引手部42を切断することで、引手部42がグレーチング10の上方に飛び出すのを防止可能となる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、挟持部材41には、ICタグ体30が取り付けられるタグ取付部41aと、タグ取付部41aと対向する対向部41bと、タグ取付部41aと対向部41bとを連結する連結部41cと、が設けられていて、これらによって閉じ方向に付勢力を与えられることで、ベアリングバー21に付勢力を及ぼす状態で取り付けられる。したがって、挟持部材41によって生じる付勢力を利用することで、溶接やねじ止め等の工程が不要となり、挟持部材41をベアリングバー21に対して、しかもグレーチング10の表面の地上側からワンタッチで容易に固定させることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、タグ取付部41aには、ツイストバー22が嵌まり込むガイド窪み部44が設けられていて、このガイド窪み部44にツイストバー22が嵌まり込んだ取付状態で平面視したときに、ICタグ体30の中央部分にツイストバー22が位置している。このため、固定具40およびICタグ体30の取付位置が明瞭となり、作業性を向上させることができる。
【0060】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0061】
上述の実施の形態においては、グレーチング10はベアリングバー21およびツイストバー22を幾つ備えていても良い。また、グレーチングの形状は、矩形状には限られない。たとえば三角形状やその他の形状としても良い。
【0062】
また、上述の実施の形態では、ベアリングバー21とツイストバー22によって格子状のスロット23が形成されている。しかしながら、グレーチング10は、格子状の格子状のスロットを備えない構成を採用しても良い。たとえば、スロット形状が三角形状、五角形状等、種々の形状を採用することができる。
【0063】
また、ICインレット34に相当する部分を樹脂部32で覆ってICタグ体を構成し、そのICタグ体を、グレーチング10のベアリングバー21に形成した孔部に押し込むことで取り付けるようにしても良い。
【0064】
また、上述の実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数として920MHzが挙げられている。しかしながら、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては、たとえば860MHzから960MHzの帯域であれば、どのような周波数であっても良い。また、RFID通信にて用いられる周波数としては、UHF帯の周波数には限られず、2.45GHzを中心とする周波数であっても良く、433MHzを中心とする周波数であっても良く、その他の周波数であっても良い。