(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セメント、骨材、シリカフューム微粒子、水および重合体添加剤を含有する水硬性材料組成物であって、前記シリカフューム微粒子の平均粒径が0.01〜0.5μmであり、前記セメントと前記シリカフューム微粒子の質量の和に対する前記水の質量の比率(水の質量/前記セメントの質量と前記シリカフューム微粒子の質量との和)が7〜15質量%であり、前記重合体添加剤が下記(I)成分、(II)成分および(III)成分から構成され、(I)成分、(II)成分および(III)成分の合計質量を100質量部としたとき、下記式(1)を満足する水硬性材料組成物。
(I):(II):(III)=3〜20質量部:20〜45質量部:45〜70質量部・・・(1)
(I)成分:
下記の式(2)で示される単量体をT質量部と、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルから選ばれる単量体をU質量部とを、下記の式(3)を満足する割合で共重合して得られ、重量平均分子量が5,000〜10,000であるマレイン酸系共重合体。
R1O(A1O)n1R2 ・・・(2)
[式(2)中、R1は炭素数2〜5の不飽和炭化水素基、R2は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基、A1Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、n1は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、n1=10〜30を満たす。]
T+U=100、70≦T≦95、5≦U≦30 ・・・(3)
(II)成分:
下記の式(4)で示される単量体をV質量部と、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルから選ばれる単量体をW質量部とを、下記の式(5)を満足する割合で共重合して得られ、重量平均分子量が12,000〜18,000であるマレイン酸系共重合体。
R3O(A2O)n2R4 ・・・(4)
[式(4)中、R3は炭素数2〜5の不飽和炭化水素基、R4は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基、A2Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、n2は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、n2=20〜70を満たす。]
V+W=100、85≦V≦99、1≦W≦15 ・・・(5)
(III)成分:
α,β−不飽和モノカルボン酸をX質量部と、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体をY質量部と、(メタ)アリルビスフェノール類をZ質量部とを、下記の式(6)を満足する割合で共重合して得られ、重量平均分子量が5,000〜10,000である(メタ)アクリル酸系共重合体。
X+Y+Z=100、10≦X≦50、40≦Y≦85、1≦Z≦10 ・・・(6)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水硬性材料組成物は、セメント、骨材、シリカフューム微粒子、水および重合体添加剤を含有する。セメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率(水の質量/セメントの質量とシリカフューム微粒子の質量との和)が7〜15質量%である。セメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率が7質量%を下回ると水和反応に必要最低限の水量に満たず、強度の発現に問題が生じる。セメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率が15質量%を上回ると系内での微視的な物質偏在が起き、超高強度コンクリートとしての強度が発現しない。
【0013】
(セメント)
本発明の水硬性材料組成物に使用するセメントとしては、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントまたは高炉セメントを用いることができ、1種類または2種類以上の組み合わせについて制限はない。
【0014】
(シリカフューム)
本発明の水硬性材料組成物に使用されるシリカフューム微粒子は、平均粒径が通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。この範囲を外れると、ボールベアリング効果が十分でなかったり水硬性材料組織が緻密でなかったりして、施工性の低下および目標強度を達成できないため好ましくない。
【0015】
また、シリカフュームの使用量は、セメント100質量部にたいして、シリカフューム5〜30質量部とすることが好ましく、10〜25質量部とすることが更に好ましい。
シリカフュームの使用量が5質量部未満の場合、ボールベアリング効果による施工性の向上、アルカリ条件下での水和反応や水硬性材料組織を緻密にすることによる強度向上が不十分となるため好ましくない。使用量が30質量部より多い場合、水硬性材料組成物の粘性が高まり、作業性が低下するため好ましくない。
【0016】
なお、本発明において、平均粒径とは、湿式の動的光散乱式粒度分布測定装置によって測定されるオーバサイズ(後述)50%のメジアン径(D50)を意味する。
【0017】
(骨材)
本発明の水硬性材料組成物に使用される骨材としては、細骨材および粗骨材がある。本発明の水硬性材料組成物に使用される細骨材としては、山砂、川砂、海砂、砕砂、珪砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、コンクリート再生骨材などを用いることができ、1種類または2種類以上の組み合わせについて制限はない。モルタル用途には細骨材が好適に使用でき、コンクリート用途には細骨材と粗骨材を好適に使用できる。また、本発明に使用される粗骨材としては、産地に限定はなく、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、コンクリート再生骨材などを用いることができ、1種類または2種類以上の組み合わせについて制限はない。骨材は、セメントとシリカフュームの質量の和を100質量部としたとき、好ましくは1〜200質量部の比率で用いられ、より好ましくはモルタル用途には5〜50質量部の比率、コンクリート用途には50〜150質量部で用いられる。
【0018】
(水)
本発明の水硬性材料組成物に使用される水としては、JIS
A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水(河川水、湖沼水、井戸水など)を使用することができる。
【0019】
(重合体添加剤)
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤は、以下に示す(I)〜(III)成分を含有する。
【0020】
((I)成分)
(I)成分はマレイン酸系共重合体であり、式(2)で示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数が10〜30である単量体をT質量部、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルから選ばれる単量体をU質量部とした場合、T+U=100、70≦T≦95、5≦U≦30を満足する割合で共重合して得られるものである。(I)成分の重量平均分子量(以下、Mwと略記する場合がある)は5,000〜10,000である。
【0021】
このマレイン酸系共重合体は、アルカリ条件下で水和反応を示すシリカフュームを迅速に分散させ、流動性の改善が可能となる。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)とは、合成したマレイン酸共重合体を精製後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量をいう。
【0022】
式(2)中、A
1Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられ、50モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上がオキシエチレン基である。また、式(2)中、n1は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の付加モル数であり、10〜30である。n1が10より小さい場合、本発明の水硬性材料用組成物の凝結遅延性が高くなり、低材齢での強度の低下が問題となる。このためn1を10以上とするが、15以上が更に好ましい。また、n1が30より大きい場合、シリカフュームを迅速に分散させることが困難となり、流動性が十分でない。このためn1を30以下とするが、25以下が更に好ましい。
【0023】
(I)成分のMwの上限は、10,000以下であり、好ましくは9,000以下である。Mwが10,000より大きいものについては、シリカフュームを迅速に分散させることが困難となり、流動性が十分ではない。本発明においては、Mwが低いものほどシリカフュームの分散性が高く、Mwが5,000未満のものについては、製造上困難を伴うことがあり、Mwの下限は5,000であり、好ましくは7,000以上である。
【0024】
式(2)中、R
1は、炭素数2〜5の不飽和炭化水素基を示し、かかる不飽和炭化水素基は直鎖状および分枝状のいずれの形態であってもよい。中でも、炭素数3〜4の不飽和炭化水素基が好ましく、適度な重合性を有し、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルとの共重合が容易である点で、アリル基がより好ましい。
【0025】
式(2)中、R
2は、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を示し、かかる炭化水素基は直鎖状および分枝状のいずれの形態であってもよい。中でも、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0026】
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤を構成する(I)成分は、例えば特開2007−261911号公報等に記載の公知の方法によって、重合開始剤を使用した重合反応により合成される。(I)成分の重合反応に使用する重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−2−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸ジメチル)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの油性アゾ系開始剤が好ましく、2,2’−アゾビス−2−イソブチロニトリルが特に好ましい。アゾ系の開始剤の使用量は、単量体全量に対して、通常1〜10モル%が好ましく、3〜7モル%がより好ましい。
【0027】
(I)成分の合成において、分子量の調整は重合反応時の連鎖移動剤の使用により行うことが出来る。(I)成分の重合反応に使用する連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−ベンゾチアゾールチオールのような油性連鎖移動剤を使用することが好ましく、ドデシルメルカプタンが特に好ましい。連鎖移動剤の使用量は、単量体全量に対して、通常5〜25モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
【0028】
このようにして得られた(I)成分は、無水マレイン酸およびマレイン酸部分の一部または全部をアルカリによる中和、または水により開環させて使用することができる。中和に用いるアルカリとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンなどのアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルメタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水などが挙げられる。なお、これらは1種類または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
((II)成分)
(II)成分は、式(4)で示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数が20〜70である単量体をV質量部、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルから選ばれる単量体をW質量部とした場合、V+W=100、85≦V≦99、1≦W≦15を満足する割合で共重合して得られる、Mwが12,000〜18,000のマレイン酸系共重合体である。
【0030】
式(4)中、A
2Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられ、50モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上がオキシエチレン基である。また、式(4)中、n2は炭素数2〜3のオキシアルキレン基の付加モル数は20〜70であり、好ましくは30〜50である。n2がこの範囲を外れると、本発明の水硬性材料用組成物は、十分な流動性を得ることが困難になる。
【0031】
(II)成分のMwは、12,000〜18,000であり、好ましくは14,000〜16,000である。この範囲を外れると、本発明の水硬性材料用組成物は、十分な流動性を得ることが困難になる。
【0032】
式(4)中、R
3は、炭素数2〜5の不飽和炭化水素基を示し、かかる不飽和炭化水素基は直鎖状および分枝状のいずれの形態であってもよい。中でも、炭素数3〜4の不飽和炭化水素基が好ましく、適度な重合性を有し、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルとの共重合が容易である点で、アリル基がより好ましい。
【0033】
式(4)中、R
4は、炭素数1〜18の炭化水素基を示し、かかる炭化水素基は直鎖状および分枝状のいずれの形態であってもよい。中でも、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0034】
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤を構成する(II)成分は、例えば特開2007−261911号公報等に記載の公知の方法によって、重合開始剤を使用した重合反応により合成される。(II)成分の重合反応に使用する重合開始剤としては、ラジカルを発生するものであれば特に選ばないが、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムといった過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキシドのような水溶性の過酸化物を用いることが好ましい。
【0035】
このようにして得られた(II)成分は、無水マレイン酸およびマレイン酸部分の一部または全部をアルカリによる中和、または水により開環させて使用することができる。中和に用いるアルカリとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンなどのアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルメタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水などが挙げられる。なお、これらは1種類または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
((III)成分)
(III)成分は、α,β−不飽和モノカルボン酸をX質量部、不飽和結合を有するポリオキシアルキレンモノエステル系単量体をY質量部および(メタ)アリルビスフェノール類をZ質量部とした場合、X+Y+Z=100、10≦X≦50、40≦Y≦85、1≦Z≦10を満足する割合で共重合して得られる重量平均分子量が5,000〜10,000の(メタ)アクリル酸系共重合体である。
【0037】
Xの範囲が10から50、Yの範囲が40から85、Zの範囲が1から10が好ましく、Xの範囲が15から35、Yの範囲が55から75、Zの範囲が1.5から5が更に好ましい。Xの範囲が10から50、Yの範囲が40から85、Zの範囲が1から10を外れる場合、共重合体の親水性と電荷のバランスが悪くなり良好な分散性が発揮できない。
【0038】
(III)成分のMwは、5,000〜10,000であり、好ましくは6,000〜9,500である。これよりもMwが低いと分散性能を示さない低分子部分が多くなりすぎ、良好な分散性能は得られない。また、これよりもMwが高すぎると重合物が凝集性を示すようになり、やはり良好な分散性が得られない。
【0039】
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤を構成する(III)成分は、例えば特開平8−119701号公報等に記載の公知の方法によって、重合開始剤を使用した重合により合成される。重合開始剤は、ラジカルを発生するものであれば特に選ばないが、水溶媒中では、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムといった過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキシドのような水溶性の過酸化物を用いることが好ましい。また、有機溶媒中では、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の芳香族アゾ化合物を用いることが好ましい。
【0040】
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤を構成する(III)成分を合成する際、必要に応じて連鎖移動剤を用い、分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルおよび2−メルカプトメタンスルホン酸等の既知のチオール化合物が挙げられる。
【0041】
水中で共重合する場合、重合時のpHは、通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、必要に応じて適当なpHに調整できる。しかしエステル系の単量体中のエステル結合が不安定となるため、pHは8以下が好ましい。pH調整に用いるアルカリに特に限定はないが、NaOH、Ca(OH)
2等が好ましい。またpH調整は、重合前の単量体および重合後の共重合体に対して行うことができる。
【0042】
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤である(I)〜(III)成分の割合は、質量比として、(I)+(II)+(III)=100に対して、(I):(II):(III)=3〜20:20〜45:45〜70とする。
【0043】
(I)成分が3質量%未満の場合、十分な流動性を得ることができない。この観点から、(I)成分の割合を3質量%以上とするが、5質量%以上が更に好ましい。(I)成分の割合が20質量%より多い場合は、十分な流動性を得られず、かつ凝結遅延により低材齢での強度不足に繋がるため好ましくない。この観点から、(I)成分の割合を20質量%以下とするが、15質量%以下が更に好ましい。
【0044】
また、(I)成分を3〜20質量%含有しているにも関わらず、(II)成分が45質量%より多い場合または(III)成分が45質量%未満の場合、(II)成分が20質量%未満の場合または(III)成分が70質量%より多い場合、十分な流動性を得られず、かつ凝結遅延により低材齢での強度不足に繋がるため好ましくない。この観点から、(II)成分の割合を20〜45質量%とするが、30質量%以上が好ましく、また、40質量%以下が好ましい。また、(III)成分の割合を45〜70質量%とするが、48質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることが更に好ましく、また、60質量%以下とすることが好ましい。
【0045】
本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤の添加量は、セメントとシリカフューム微粒子の質量の和100質量部に対して、固形成分で0.2〜2.0質量部であることが好ましく、0.5〜1.0質量部であることがさらに好ましい。また、本発明の水硬性材料組成物に使用される重合体添加剤は、そのままの形態で用いることができるが、必要に応じて水で希釈して用いることも可能である。
【0046】
(その他の材料)
本発明の水硬性材料組成物には、本発明の効果を損なわない程度に、公知の硬化促進剤、凝結遅延剤、AE剤、防錆剤、防水剤、防腐剤等を併用しても問題ない。また、その他の混和剤の使用量についても通常と同量で問題はなく、特に考慮する必要はない。また、水硬性材料組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては通常と同様の方法で問題はなく、特に制限する必要はない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。各実施例および比較例中、%は特に断らない限り質量%である。
【0048】
(測定方法)
実施例および比較例において用いたシリカフューム微粒子の平均粒径(D50)は、Particle Sizing Systems社製動的光散乱法粒度分布計(NICOMP 370A)によって測定して得られた値である。
【0049】
(合成例1)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリオキシエチレン(n1=23)モノアリルモノメチルエーテル186質量部、無水マレイン酸24質量部を量り取った(式(2)において、T=88、U=12に相当)。窒素ガス雰囲気下、60℃以下で重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2質量部、連鎖移動剤としてN−ドデシルメルカプタン7質量部を添加し、75〜85℃で8時間反応を行い、本発明の(I)成分として用いる共重合体p−1を得た。その後、水を加え、30分撹拌後、目的とする共重合体p−1の20%水溶液を得た。得られた共重合体p−1の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は、9,000であった。
【0050】
(合成例2)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリオキシエチレン(n2=34)モノアリルモノメチルエーテル160質量部、無水マレイン酸18質量部、水182質量部を量り取った(式(5)において、V=90、W=10に相当)。窒素ガス雰囲気下、50℃以下で重合開始剤として過硫酸アンモニウム4質量部を添加し、50〜60℃で15時間反応を行い、本発明の(II)成分として用いる共重合体p−2を得た。その後、水を加え、30分撹拌後、目的とする共重合体p−2の20%水溶液を得た。得られた共重合体p−2の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は、15,000であった。
【0051】
(合成例3)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を備えた反応容器に水を2618質量部仕込み、100℃に昇温した。100℃に保持した反応容器へ、メタクリル酸241質量部、メトキシポリオキシエチレンメタクリレート(平均付加モル数9)694質量部、30%NaOH水溶液53質量部、4, 4’-ジヒドロキシジフェニルプロパンのジアリル置換体19質量部および水863質量部の混合液(1)と、過硫酸ナトリウム20質量部および水313質量部の混合液(2)を各々3時間で連続滴下した。さらに、温度を100℃に維持し、1時間反応させることにより本発明の(III)成分として用いる共重合体p−3を得た。この溶液を30%NaOH水溶液でpH7に調整し、目的とする共重合体p−3の20%水溶液を得た。得られた(メタ)アクリル酸系共重合体p−3の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は、9,000であった。上記共重合単量体の仕込みモル比から、(メタ)アクリル酸系共重合体p−3について、式(6)において、X=25、Y=73、Z=2と算出される。
【0052】
(比較合成例1)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリオキシエチレン(n=18)モノアリルモノメチルエーテル255質量部、無水マレイン酸31質量部を量り取った(式(2)において、T=89、U=11に相当)。窒素ガス雰囲気下、60℃以下で重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3質量部、連鎖移動剤としてN−ドデシルメルカプタン4質量部を添加し、75〜85℃で8時間反応を行い、本発明の(I)成分の類似体である共重合体q−1を得た。その後、水を加え、30分撹拌後、共重合体q−1の20%水溶液を得た。得られた共重合体q−1の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は、13,000であった。
【0053】
合成例1〜3において合成した共重合体p−1〜3、および比較合成例1において合成した共重合体q−1を所定の割合で混合し、重合体添加剤として用いて水硬性材料組成物を調整し、モルタルとしての評価を行った。
【0054】
(実施例1)
セメントとして低熱ポルトランドセメント1522g、細骨材として岩瀬産砕砂(密度:2.61g/cm
3、粗粒率FM:3.03)394g、シリカフューム微粒子(平均粒径:0.1μm)323g、水として上水道水160.5gおよび重合体添加剤62.5g(共重合体12.5g、水50g)を混練して水硬性材料組成物であるモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。重合体添加剤は、p−1:p−2:p−3=9:36:55の割合で混合したものを使用した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。また、環境温度は20℃である。
【0055】
(実施例2)
重合体添加剤として、p−1:p−2:p−3=3:37:60の割合で混合したものを使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。
【0056】
(実施例3)
水として上水道水156.5g、重合体添加剤としてp−1:p−2:p−3=20:32:48の割合で混合したもの66.5g(共重合体13.3g、水53.2g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。
【0057】
(比較例1)
重合体添加剤として、p−2:p−3=40:60の割合で混合したものを使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。
【0058】
(比較例2)
水として上水道水145g、重合体添加剤としてp−1:p−2=20:80の割合で混合したもの78.0g(共重合体15.6g、水62.4g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。
【0059】
(比較例3)
水として上水道水156g、重合体添加剤としてp−1:p−2:p−3=9:60:31の割合で混合したもの67.0g(共重合体13.4g、水53.6g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。
【0060】
(比較例4)
水として上水道水148g、重合体添加剤としてp−1:p−3=20:80の割合で混合したもの75g(共重合体15.0g、水60.0g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。
【0061】
(比較例5)
水として上水道水157g、重合体添加剤としてp−1:p−2:p−3=9:10:81の割合で混合したもの66.0g(共重合体13.2g、水52.8g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。
【0062】
(比較例6)
水として上水道水140.5g、重合体添加剤としてp−1:p−2:p−3=36:9:55の割合で混合したもの82.5g(共重合体16.5g、水66.3g)を使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。このときのセメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する水の質量の比率は、11質量%であった。
【0063】
(比較例7)
重合体添加剤として、q−1:p−2:p−3=9:36:55の割合で混合したものを使用したこと以外は、実施例1と同様にモルタルを製造し、モルタル試験を実施した。
【0064】
モルタルの製造は、強制練りモルタルミキサを使用し、セメント、細骨材およびシリカフュームを低速20秒撹拌、その後、上水道水と重合体添加剤を添加して低速120秒撹拌、掻き落しを行い高速90秒撹拌し、5分間静置。その後、高速30秒間撹拌して練上がりとした。
【0065】
フレッシュモルタルの流動性は、ミニスランプコーン(JIS
A 1171準拠)を使用したモルタルフロー値とし、重合体添加剤の使用量を増減して、重合体添加剤添加率とミニスランプフローの関係である流動曲線(
図1参照)を確認し、モルタルフロー値が上限限界に達するミニスランプフロー値を確認した。
空気量は、質量法(400mLの鋼製容器使用、JIS
A 1116に準拠)で測定し、空気量は消泡剤を一定量使用して1.0〜2.0%の範囲とした。また、ウレタン製の簡易断熱箱にモルタル試料350gを封入し、注水時間から最高温度に到達するまでの時間を測定した。簡易断熱温度は凝結時間及び初期水和の指標となる。
【0066】
【表1】
【0067】
表中に記載した「ハンドリングの抵抗性」の判定基準は、次の通りである。
○:良好
△:やや重い
×:粘りが多い
【0068】
実施例1〜3から明らかな通り、本発明の水硬性材料組成物は、重合体添加剤の添加率(セメントとシリカフューム微粒子の質量の和に対する重合添加剤固形分の質量の比率)を低減しているにも関わらず、流動限界フロー値が330mm以上と十分な流動性を有しており、最大温度到達時間が短いことから凝結遅延が小さく、ハンドリング抵抗性が良好であることから施工性に優れることがわかる。
【0069】
一方、(I)成分を含有しない比較例1においては、流動限界フロー値が330mm以下と流動性が不十分であり、最大温度到達時間が若干長いことから凝結遅延が若干大きく、ハンドリング抵抗性が不十分であることから施工性に問題があることがわかる。
【0070】
(III)成分を含有しない比較例2においては、重合体添加剤の添加率が増加しているにも関わらず、流動限界フロー値が330mm以下と流動性が不十分であり、ハンドリング抵抗性が不十分であることから施工性に問題があることがわかる。
【0071】
比較例3においては、(II)成分の含有量が多く、(III)成分の含有量が少ないために、流動限界フロー値が330mm以下と流動性が不十分であり、最大温度到達時間が若干長いことから凝結遅延が若干大きく、ハンドリング抵抗性が不十分であることから施工性に問題があることがわかる。
【0072】
(II)成分を含有しない比較例4においては、重合体添加剤の添加率が増加しているにも関わらず、流動限界フロー値が330mm以下と流動性が不十分であり、最大温度到達時間が長いことから凝結遅延が大きく、ハンドリング抵抗性が不十分であることから施工性に問題があることがわかる。
【0073】
比較例5においては、(II)成分の含有量が少なく(III)成分の含有量が多いために、流動限界フロー値が330mm以下と流動性が不十分であり、最大温度到達時間が長いことから凝結遅延が大きく、ハンドリング抵抗性が悪いことから施工性に問題があることがわかる。
【0074】
比較例6においては、(I)成分の含有量が多く(II)成分の含有量が少ないため、重合体添加剤の添加率が増加しているにも関わらず、流動限界フロー値が330mm程度と流動性が不十分であり、最大温度到達時間が長いことから凝結遅延が大きく、ハンドリング抵抗性が不十分であることから施工性に問題があることがわかる。
【0075】
比較例7においては、(I)成分の代わりに、重量平均分子量が本発明の(I)成分の範囲外である共重合体を含有している。このため、流動限界フロー値が330mm以下と流動性が不十分であり、最大温度到達時間が若干長いことから凝結遅延が若干大きく、ハンドリング抵抗性が不十分であることから施工性に問題があることがわかる。