(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リール本体と、前記リール本体の前部に設けられ、周壁部および底部を備えた有底筒状部と、前記リール本体に設けられたハンドルの回転操作に連動して前記有底筒状部の周りを回転するロータと、を備えた魚釣用スピニングリールにおいて、
前記底部は、環状のフランジ部を有し、前記フランジ部の外縁部が前記周壁部の外周面よりも径方向外側に突出しており、
前記周壁部の外面と前記ロータの内面との間に形成される第一隙間に配置され、前記外面および前記内面の少なくとも一方から前記第一隙間内に突出する第一壁部と、
前記底部の前面と前記ロータの底部の後面との間に形成される第二隙間に配置され、前記前面および前記後面のうち、少なくとも前記前面から前記第二隙間内に突出する複数の壁部からなる第二壁部と、
前記底部の後面に保持され、前記有底筒状部の内側に配置される機能部材を外部からシールするためのシール機構と、を備え、
前記シール機構は、前記底部の前記前面よりも後方でのみ前記第二隙間から前記有底筒状部の内側に連通する部分をシールしており、
前記フランジ部の外縁部は、前記第一壁部の一部として機能し、防塵防護壁の一部を担っており、かつ、前記第二隙間に面している側の角部が面取りされていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
前記第一壁部および前記第二壁部の少なくとも一方は、別体の壁部材で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは、
図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは、
図7に示す方向を基準とする。
【0021】
図1に示すように、主として、魚釣用スピニングリールは、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1(例えば、金属材料で形成される)と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ4と、このロータ4の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール5とを有して構成される。
リール本体1の前部1Bには、有底筒状の保護カバー10が装着されている。保護カバー10は、ロータ4の内側に位置している。保護カバー10は、特許請求の範囲における「周壁部および底部を備えた有底筒状部」に相当する。保護カバー10の詳細は後記する。
【0022】
リール本体1には、図示しない軸受を介してハンドル軸2が回転可能に支持されている。ハンドル軸2の図示しない突出端部には、巻き取り操作されるハンドル7が取り付けられている。ハンドル軸2には、図示しない軸筒が回り止め固定されている。この軸筒には、ロータ4を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギヤ6が一体的に形成されている。このドライブギヤ6は、ハンドル軸2と直交する方向に延出するとともに内部に軸方向に延出する空洞部を有する駆動軸筒8(駆動軸、
図2参照)のピニオンギヤ8a(
図2参照)に噛合している。
【0023】
駆動軸筒8は、
図2に示すように、前側軸受(ボールベアリング)9aと不図示の後側軸受(ボールベアリング)を介してリール本体1に回転可能に支持されている。また、駆動軸筒8はスプール5側に向けて延出しており、その先端部にロータ4がロータナット4a(一部図示)によって取り付けられている。
前側軸受9aは、その後端がピニオンギヤ8aの前端、およびリール本体1の前部中央に形成された凹所の支持部1cに突き当てられて保持されている。また、前側軸受9aは、前端の外輪9a1がリール本体1の前部1Bに係止される係止板1zで抜け止めされ、ローラ式一方向クラッチ11(以下、単に「一方向クラッチ」という)の内輪13は、軸受9aの内輪9a2に当接されている。
【0024】
一方向クラッチ11は、ハンドル7(ロータ4)の釣糸放出方向への逆回転を防止する公知の逆転防止機構(ストッパ)を構成している。
一方向クラッチ11は、リール本体1の下部に設けられた切換部材12(
図1参照)に連動しており、切換部材12を回動操作することで、一方向クラッチ11が作動状態と非作動状態とに切り換えられるように構成されている。この場合、切換部材12を作動状態に切り換えることで、ハンドル7(ロータ4)の逆転方向の回転(釣糸放出方向の回転)が防止される。
このような一方向クラッチ11は、リール本体1の前部1Bの周壁部1dによって覆われ、さらにその外側を保護カバー10で保護されている。
【0025】
駆動軸筒8の内部には、空洞部が形成されており、この空洞部には、摺動可能なクリアランスを有してスプール軸9が挿通支持されている。スプール軸9の後端には、スプール5(スプール軸9)を前後往復動させるための公知のスプール往復動装置15(
図1参照)が係合している。
【0026】
このような構成を有する魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル7により巻き取り操作を行うと、ロータ4が巻き取り駆動機構を介して回転駆動されるとともに、スプール5がスプール往復動装置15を介して前後往復動される。これにより、釣糸は、ロータ4の釣糸案内部4c(
図1参照)を介してスプール5の巻回胴部5a(
図1参照)に均等に巻回される。
【0027】
ロータ4は、
図1に示すように、略円筒状に形成された筒部41と、筒部41の前端に連続する底部42とを備えている。筒部41と底部42とは一体形成されている。
一方、ロータ4の内側に配置される保護カバー10は、キャップ状の第一部材20(有底筒状部の底部)と、円筒状の第二部材30(有底筒状部の周壁部)と、からなる前後二部材で構成されている。
【0028】
図2に示すように、ロータ4の筒部41の内面41aと保護カバー10の第二部材30の外面30aとの間には、第一隙間S1が形成されている。また、ロータ4の底部42の後面42aと保護カバー10の第一部材20の前面20aとの間には、第二隙間S2が形成されている。第一隙間S1と第二隙間S2は連続している。ロータ4は、これらの第一隙間S1および第二隙間S2を有することで保護カバー10の周りを回転可能に設けられている。
第一隙間S1には、防水防塵壁として機能する第一壁部K1が設けられている。また、第二隙間S2には、同じく防水防塵壁として機能する第二壁部K2が設けられている。第一壁部K1および第二壁部K2の詳細は後記する。
【0029】
ロータ4の筒部41の外周には、
図1に示すように、略180°間隔おいて一対のアーム部49が形成されている。各アーム部49は、筒部41の後部(リール本体1側)から径方向外方に突き出した連結部49aを介して筒部41に一体形成されており、連結部49aから軸方向に延出している。これにより、筒部41と各アーム部49との間にはスペース44が形成されている。スペース44には、スプール5のスカート部5bが配置される。
【0030】
また、ロータ4の底部42の前面外周縁部には、
図2に示すように、周溝42bが形成されている。周溝42bには、糸落ち係止部材45が装着されている。糸落ち係止部材45はねじ46により抜け止めされている。糸落ち係止部材45は、糸ふけ等によって前記スペース44に釣糸が侵入することによる糸落ち現象が生じた場合に、侵入した釣糸を係止し、これより前方へ釣糸が移動してしまうのを阻止する役割をなす。
【0031】
次に、保護カバー10について説明する。保護カバー10は、リール本体1と別体に設けられており、
図7に示すように、リール本体1の前部1Bを覆う状態に装着される。保護カバー10は、全体が有底円筒状(環状カバー体)を呈している。保護カバー10は、底部を形成する第一部材20の後部に周壁部を形成する第二部材30が接続されてなる。
【0032】
第一部材20は、第二部材30よりも高強度の材料(金属材料)により構成されており、形成精度の高いものとなっている。本実施形態では、第一部材20が非磁性金属材料、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、オーステナイト系ステンレス等からなる。第一部材20は、削り出し、プレス加工、または鍛造により形成される。
【0033】
第一部材20は、
図4(b)に示すように、フランジ部21と、フランジ部21の後部に一体形成された円筒部22と、を備えている。フランジ部21は、環状を呈しており、外縁部21aが円筒部22の外周面よりも径方向外側に延出している。本実施形態では、
図2,
図3に示すように、外縁部21aが、第二部材30の外周面よりも径方向外側に突出しており、第一隙間S1内に位置している。これにより、外縁部21aは、第一壁部K1の一部として機能し、防塵防護壁の一部を担っている。なお、
図3において、ロータ4の構成は簡略化している。
【0034】
フランジ部21の後面は、第二部材30の基部31の前端部に対峙している。フランジ部21と円筒部22との角部には、
図2に示すように、ゴム材からなる弾性を有するシール部材1eが配置されている。第一部材20は、このシール部材1eを介して第二部材30のリブ34をフランジ部21が押圧する状態に、前部1Bに対して圧着固定される。
【0035】
一方、フランジ部21の内周縁部は径方向内側に延出している。その内周縁部の前面には、
図4(a)に示すように、二重円環状の突状部23,23が形成されている。突状部23,23は、第二壁部K2(
図2,3参照)を構成している。
突状部23,23は、同心円状に形成されており、対向配置されるロータ4の底部42の後面42aに向けて突出している(
図2参照)。外側の突状部23と内側の突状部23との間には、これらによって仕切られる溝部23aが形成されている。突状部23,23は、
図2に示すように、ロータ4の底部42の後面42aに対して接触することなく、若干の隙間を有して対峙している。
なお、
図4(a)に示すように、フランジ部21の内縁部の上下部分には、切欠部23b,23bが形成されている。切欠部23b,23bには、第一部材20を装着する際に用いる図示しない治具のピンが挿入される。
【0036】
一方、ロータ4の後面42aには、第二壁部K2を構成する二重円環状の突状部43,43が形成されている。
突状部43,43は、同心円状に形成されており、対向配置される保護カバー10の第一部材20のフランジ部21の前面20aに向けて突出している。このうち外側の突状部43は、
図2,3に示すように、保護カバー10の外側の突状部23の径方向外側に位置している。つまり、外側の突状部43は、径方向外側から保護カバー10の外側の突状部23を部分的に覆っている。また、内側の突状部43は、保護カバー10の溝部23a内に位置している。つまり、内側の突状部43は、径方向内側から保護カバー10の外側の突状部23を部分的に覆うとともに、保護カバー10の内側の突状部23を径方向外側から部分的に覆っている。突状部43,43は、
図2に示すように、保護カバー10の第一部材20の前面20aに対して接触することなく、若干の隙間を有して対峙している。
【0037】
以上のような第二壁部K2は、前記した突状部23,23と前記した突状部43,43とが径方向に交互に重なって形成されており、第二隙間S2においてラビリンス構造をなしている。
【0038】
なお、第二壁部K2は、複数の壁部(突状部23,23、突状部43,43)から構成するものを示したが、これに限られることはなく、単数の壁部、例えば、突状部23のみ、あるいは突状部43のみで構成してもよい。
【0039】
第一部材20のフランジ部21の内周縁部の後面は、リール本体1の前部1Bの前端部に対峙しており、この前端部との間に、磁気シール機構50の前極板(保持板)51を挟持し抜け止め支持している。つまり、第一部材20は、前極板51を介して、リール本体1の前部1Bの前端部に当接して位置決めされる。前極板51の外周縁部と前部1Bの前端部との間には、ゴム材からなる弾性を有するシール部材1f(円環状のOリング)が介設されている。
【0040】
磁気シール機構50は、
図2に示すように、磁性材からなる前極板51と、磁石53と、磁性材からなる後極板(保持板)52と、磁性部14と、支持板54と、磁性流体55と、を備え、これらが一つのユニットとして構成される。
前極板51は、磁石53を前側から保持する磁気リングとして機能している。磁石53は、環状を呈しており、駆動軸筒8を所定の隙間を有して囲うように配置されている。後極板52は、磁石53を後側から保持する磁気リングである。環状の磁石53は、前極板51と後極板52で同芯状に挟着支持された状態で接着等の手段で一体的にアッセンブリー化されて、前部1Bの前部内周面1kに後極板52の外周が嵌合されるとともに、前部1Bの前端面1k1に前極板51の後面が当接されてフランジ部21の内周縁部の後面で抜け止め支持されている。
なお、後極板52と一方向クラッチ11の前端部との間に非磁性の支持板54が介在されてこれらを軸方向に支持規制している。
【0041】
磁性部14は、一方向クラッチ11の内輪13の前端部に一体的に圧入嵌合されている。磁性部14は、磁石53を挟持する前極板51と後極板52との間に磁気回路を形成している。内輪13は、駆動軸筒8に回り止め嵌合されて一方向クラッチ11に嵌入されている。磁性部14の内側には、駆動軸筒8との間にロータ4の支持部47が支持されている。なお、磁性部14は、特許請求の範囲における「駆動軸筒に一体回転可能に装着された装着部材」に相当する。磁性部14は必ずしも設けなくてもよく、一方向クラッチ11の内輪13を前方に延在させて磁性部14として機能させてもよい。
【0042】
ここで、前極板51、後極板52は、磁石53を挟持して保持しつつその内側に周方向に沿って凹所が生じるように、かつ、磁性部14の外面との間に磁性流体55を保持するためのわずかな隙間を確保するように配置される。前極板51および後極板52は、磁性部14との間で(駆動軸筒8との間で)磁性領域を発生させるような構造であればよい。
【0043】
なお、磁性流体55は、例えば、Fe
3O
4のような磁性微粒子を、界面活性剤によってベースオイル中で安定な分散状態が保たれているものであり、粘性があって磁石を近づけると引き寄せられる特性を備えている。このため、磁性流体55は、磁石53、前極板51および後極板52、さらに、磁性体としての磁性部14によって形成される磁気回路によって、前記凹所内および磁石53周りに形成される隙間に安定して保持され、これらの内縁部で囲まれる開口部をシールする。
【0044】
本実施形態では、第一部材20の前記した螺合による固定とともに、磁気シール機構50を構成する各要素を前部1Bの前端部に支持固定されるように構成されている。つまり、第一部材20を前部1Bに固定する際に磁気シール機構50を構成する各要素(前極板51、後極板52、磁石53)も一緒に固定される。ここで、第一部材20は、第二部材30よりも高強度の金属製であるので、これによって固定される磁気シール機構50は、リール本体1の前部1Bにガタツキや傾き、変形等なく高精度に取り付けられる。
【0045】
第一部材20の円筒部22の内面には、
図4(c)に示すように、螺着部としての雌ねじ22aが形成されている。雌ねじ22aは、リール本体1の前部1Bの前端部に形成された雄ねじ1jに対して直接螺合可能である。つまり、第一部材20は、前部1Bの雄ねじ1jに円筒部22の雌ねじ22aを螺合することにより、他のねじ等の部材を用いることなく前部1Bに対して取り付けられる。雌ねじ22aは、特許請求の範囲における「螺合部」に相当する。
【0046】
第二部材30は、第一部材20と異種材料である、例えば、合成樹脂材により形成されている。第二部材30は、
図5に示すように、保護カバー10の周壁部をなす基部31と、基部31の内面に設けられた内側フランジ部32と、内側フランジ部32に隣接して基部31の内面に設けられたリブ34およびガイド片35と、基部31の外面に設けられた突起部33と、を備えている。また、基部31の外面には、
図5(d)に示すように、段面くさび状の突起31aからなる意匠が周方向に所定の間隔を空けて施されている。
【0047】
内側フランジ部32は、
図5(c)に示すように、基部31の内周面に沿って環状に形成されている。内側フランジ部32の内周縁部には、
図5(a)に示すように、周方向に所定の間隔を空けて突部32aが設けられている。各突部32aは、リール本体1の前部1Bに設けられた上部受部1mおよび左右受部1g(
図6参照、
図2において左右受部1gは断面で図示)に対応して形成されている。具体的に、
図3に示すように、内側フランジ部32の上部の内周縁部に形成された突部32aは、前部1Bの上部受部1mに形成された段部1nに係合される。また、内側フランジ部32の左右の内周縁部に形成された突部32aは、
図2に示すように、前部1Bの左右受部1g(図では左受部1g)に形成された段部1hに係合される。なお、左右受部1gは、
図6(b)に示すように、前部1Bの上部外面および下部外面から左右側方へ向けて延出している。
【0048】
第二部材30の内面の前部には、
図5(a)(c)、
図7(b)に示すように、前後方向に延在する複数のリブ34が形成されている。各リブ34の後端部は、内側フランジ部32に達している(
図5(c)参照)。リブ34の前端部には、
図2に示すように、シール部材(円環状のOリング)1eが配置される。リブ34には、シール部材1eを介して第一部材20を前部1Bに装着する際の、前記雄ねじ1jと前記雌ねじ22aとの螺合による締付け力が作用するようになっている。なお、リブ34に作用する締付け力は、内側フランジ部32を介して後方の上部受部1mおよび左右受部1gに作用する。これによって、前部1Bと第一部材20との間に第二部材30が挟持される。
【0049】
なお、第一部材20の締付け力は、第二部材30のリブ34に作用するものであり、基部31に対して直接的に作用するものではない。したがって、基部31が薄肉に形成されている構成でありながら基部31に歪みや変形が生じ難いものとなっている。したがって、第二部材30の意匠性の自由度が高くなっている。
【0050】
ガイド片35は、第二部材30の後部の上部内面に一対設けられている。一対のガイド片35は、前部1Bの上部受部1mに対応して形成されている。一対のガイド片35は、前部1Bに第二部材30を装着する際に、上部受部1mの左右両側部を両側から挟むように当接して第二部材30のガイド部材として機能する。
【0051】
突起部33は、
図5(b)に示すように、基部31の前部側の外面に周状に形成されている。突起部33は、前記した第一隙間S1に向けて突出しており、第一壁部K1として機能する。突起部33は、
図2に示すように、ロータ4の筒部41の内面41aに対して接触することなく、若干の隙間を有して対峙している。
【0052】
第二部材30の内面の前部には、前後方向に延在する複数のリブ34が形成されている。各リブ34の後端部は、内側フランジ部32に達している。内側フランジ部32は、
図2に示すように、リール本体1の前部1Bに設けられた支持部1g(
図6参照)に対して係合するようになっている。ここで、支持部1gは、
図6に示すように、前部1Bの左右側方へ向けて延在する板状の片であり、前部1Bの左右両側に計4つ設けられている。
なお、第二部材30は、軽量化および強度向上を図るために、繊維強化樹脂等で形成してもよい。
【0053】
次に、リール本体1の前部1Bに対して保護カバー10を装着する際の手順について説明する。
まず、前部1Bに対して第二部材30を装着する。この場合、前部1Bの前方から第二部材30を前部1Bに近付け、第二部材30の一対のガイド片35を前部1Bの上部受部1mの左右両側部に当接させるようにして、第二部材30を後方へ移動させる。そうすると、第二部材30の内側フランジ部32(突部32a)が、前部1Bの上部受部1mの段部1nおよび左右受部1gの段部1hに係合して、第二部材30が前部1Bに位置決めされる。
【0054】
その後、第一部材20の円筒部22にシール部材1eを装着し、前部1Bの前端の雄ねじ1jに対して第一部材20の雌ねじ22aを螺合する。そうすると、第一部材20が前部1Bに固定されるとともに、第一部材20の締付け力が、シール部材1eを介して第二部材30のリブ34に作用し、前部1Bと第一部材20との間に第二部材30が挟持される。これによって、前部1Bに対して保護カバー10が固定される。
【0055】
また、第一部材20の固定にともなって、前部1Bの前端部と第一部材20の内周縁部の後面との間に前極板51が挟持される。これによって、前部1Bに磁気シール機構50が構成される。
【0056】
また、固定された保護カバー10の周りにロータ4を固定することで、保護カバー10とロータ4との間に第一隙間S1および第二隙間S2が形成される。そして、第一隙間S1には、突起部33および外縁部21aによる第一壁部K1が構成される。また、第二隙間S2には、突状部23,23および突状部43,43によるラビリンス構造の第二壁部K2が構成される。
【0057】
以上のような魚釣用スピニングリールにおいて、ある程度の水圧を有する海水や水、あるいはこれらに混じった砂、異物等が第一隙間S1を通じて侵入してきた場合の作用について説明する。
実釣時等において、第一隙間S1を通じて海水や異物等が侵入した場合には、第一隙間S1に配置される第一壁部K1の突起部33によってその移動が阻まれる。また、突起部33を越えて海水や異物等がさらに前部側へ移動した場合には、第一壁部K1の外縁部21aによってその移動が阻まれる。また、外縁部21aを越えて海水や異物等がさらに前部側へ移動した場合には、第二壁部K2の突状部23,23および突状部43,43によるラビリンス構造によって駆動軸筒8側へ向けた移動が阻まれる。
このように、第一壁部K1および第二壁部K2の各壁部による防水防塵作用によって、海水や異物等の直接的な駆動部への侵入が好適に阻まれる。
【0058】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、保護カバー10とロータ4との間に形成される隙間に備わる第一壁部K1と第二壁部K2との相乗効果によって、防水防塵機能を良好に発揮できるので、保護カバー10の内側に備わる機能部材、例えば、前側軸受9aやローラ式一方向クラッチ11等を好適に保護することができる。したがって、ロータ4等の円滑な回転性能を長期間に亘って好適に維持することが可能となる。
【0059】
また、第一壁部K1および第二壁部K2が複数の壁部(突起部33、外縁部21a、突状部23,23および突状部43,43)から構成され、防水防塵壁としての機能がより一層高められるので、保護カバー10の内側に備わる機能部材を、海水や異物等から効果的に保護することができる。
さらに、第二壁部K2がラビリンス構造とされることで、防水防塵壁としての機能がより一層高められるので、保護カバー10の内側に備わる機能部材を、海水や異物等からより一層効果的に保護することができる。
【0060】
また、磁気シール機構50を備えることで、ロータ4を駆動する駆動軸筒8の回転性能を低下させることなく、防水、防塵を図ることができるので、保護カバー10の内側に備わる機能部材を、海水や異物等から効果的に保護することができるとともに、錆びや塩分等に起因する回転性能の悪化を未然に防止できる。
例え、磁気シール機構50まで浸水したとしても、第一壁部K1および第二壁部K2により水圧が弱まり、磁気シール機構50の性能を長期に亘り維持できる。
【0061】
また、第一部材20に、高精度かつ適度な強度をもたせることができるとともに、第二部材30の軽量化を図ることができる。また、第二部材30は、材料の選択の幅が広がるので、意匠性の向上を図ることができる。したがって、安定した防水性能を発揮できるとともに、保護カバー10の軽量化および意匠性に優れた魚釣用スピニングリールが得られる。
また、第一部材20がリール本体1の前部1Bに直接固定されることで第一部材20の組付精度を高めることができるので、防水性能の安定性が高まる。
【0062】
また、第一部材20が金属製であり、第二部材30が樹脂製であるので、磁気シール機構50の組付精度の向上、保護カバー10の軽量化および意匠性の向上を容易に図ることができる。したがって、防水性能の安定性が高まるとともに、保護カバー10の軽量化および意匠性に優れた魚釣用スピニングリールが得られる。
【0063】
また、雌ねじ22aを介してリール本体1の前部1Bに第一部材20を組み付けることで、リール本体1の前部1Bに第二部材30を一緒に固定することができるので、組付性が高まり生産性が向上する。
【0064】
また、第一部材20が、磁気シール機構50の前極板51を支持して磁気シール機構50の位置決めがなされるので、磁気シール機構50の組付精度が高まり、防水性能の安定性が高まる。これによって、保護カバー10と磁性部14との密封性が確保される。したがって、保護カバー10の内側に備わる機能部材を、海水や異物等から効果的に保護することができるとともに、錆びや塩分等に起因する回転性能の悪化を未然に防止できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、第一壁部K1の変形例として、
図8(a)に示すように、ロータ4の筒部41の内面41aに突起部48を設けてもよい。この場合、ロータ4の筒部41の内面41aに付着した海水や異物等の侵入防止を突起部48によって好適に実現することができる。なお、
図8(b)では突起部48を有するロータ4の装着を可能とするために、保護カバー10の外縁部21a(
図2参照)を削除している。
【0066】
また、
図8(b)に示すように、ロータ4の底部42の後面42aに設けた溝部43aを後面42aよりも深く形成し、この溝部43a内に深く入り込む状態に、保護カバー10の第一部材20の突状部23を延在させてもよい。このように構成することによって、ラビリンス構造における突状部23と突状部43とのオーバーラップ量が多くなり、防水防塵機能がより一層良好に発揮される。また、ラビリンス構造の一部をロータ4の底部42の厚みを利用してスペース効率よく形成することができる。
【0067】
また、前記実施形態では、第一壁部K1を構成する突起部33や外縁部21a、および第二壁部K2を構成する突状部23,43は、いずれも周状に形成されるものを示したが、これに限られることはなく、周方向に部分的に途切れるように形成してもよい。また、周方向に点在するように形成してもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、第一壁部K1および第二壁部K2を保護カバー10やロータ4に一体形成したものについて説明したが、これに限られることはなく、第一壁部K1および第二壁部K2の少なくとも一方を別体の壁部材で構成してもよい。このように、別体の壁部材で構成した場合には、壁部材を保護カバー10やロータ4に取り付けることで、第一壁部K1や第二壁部K2を簡単に設けることができるので、コストの低減が可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、磁気シール機構50を備える魚釣用スピニングリールについて説明したが、これに限られることはなく、ゴム製等の弾性シール部材によってシールする弾性シール機構を備えた魚釣用スピニングリールについても本発明を適用することができる。この場合、シール部材を支持する支持プレートを第一部材20によって支持してもよい。
【0070】
また、前記実施形態では、第一壁部K1および第二壁部K2の両方を複数の壁部(突起部33、外縁部21a、突状部23,23および突状部43,43)で構成したが、これに限られることはなく、第一壁部K1および第二壁部K2の少なくとも一方を複数の壁部から構成してもよい。また、第一壁部K1および第二壁部K2の両方をラビリンス構造としてもよい。
【0071】
また、保護カバー10の第二部材30の基部31に対して、周方向に点在する孔部を設けて軽量化を図ってもよい。
【0072】
また、前記実施形態では、リール本体1の前部1Bに別体の保護カバー10が装着される例を示したが、これに限られることはなく、前部1Bに対して保護カバー10に相当する有底筒状部の一部あるいは全部が一体的に設けられるものに対しても本発明を採用することができる。
【0073】
また、前記実施形態では、第一部材20が金属製で第二部材30が樹脂製であるものを示したが、これに限られることはなく、第一部材20と第二部材30とが異種材料で、第一部材20が第二部材30よりも高強度の材料で形成されていればよい。このようにすることによって、第一部材20に高精度かつ適度な強度をもたせることができるので、安定した防水性能を発揮できる。