特許第6491588号(P6491588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 参天製薬株式会社の特許一覧

特許6491588ピリジルアミノ酢酸化合物を含む医薬製剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491588
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】ピリジルアミノ酢酸化合物を含む医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20190318BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20190318BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20190318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20190318BHJP
【FI】
   A61K31/444ZMD
   A61P27/06
   A61K9/08
   !A61P43/00 111
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-219845(P2015-219845)
(22)【出願日】2015年11月9日
(62)【分割の表示】特願2015-527691(P2015-527691)の分割
【原出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-27060(P2016-27060A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】61/925,882
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】シャムズ ナヴィード
(72)【発明者】
【氏名】クルーン ヘンク アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】川田 久
(72)【発明者】
【氏名】川端 敬子
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057633(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113957(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/113600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/08
A61P 27/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001〜0.003%(w/v)含み、pHが4.0〜8.0であることを特徴とする、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤。
【請求項2】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011〜0.0030%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011〜0.0029%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0013〜0.0027%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0015〜0.0025%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0010%(w/v)、0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)又は0.0030%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)又は0.0030%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)又は0.0029%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.002%(w/v)含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
剤形が点眼剤である、請求項1〜9のいずれか1記載の医薬製剤。
【請求項11】
1日1回又は2回、点眼投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1記載の医薬製剤。
【請求項12】
1回1又は2滴を、点眼投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1記載の医薬製剤。
【請求項13】
1日1回、1回1滴を点眼投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1記載の医薬製剤。
【請求項14】
緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項1〜13のいずれか1記載の医薬製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルは、下記式(1):
【化1】
で表される化合物であり、特許文献1に膨大な数のピリジルアミノ酢酸化合物の一つとして記載されている。また、それらの膨大なピリジルアミノ酢酸化合物はEP2アゴニスト作用を有することから(特許文献2)、眼圧下降作用を有することが期待され、緑内障治療剤となりうる可能性が示唆されている(特許文献1)。なお、特許文献1及び2の全ての記載内容は、本明細書の開示として援用する。
【0003】
しかしながら、それらの膨大な数のピリジルアミノ酢酸化合物のどの化合物が、特に優れた眼圧下降作用を有し、緑内障治療または予防剤となりうるかの具体的な記載はなく、また、それらの化合物の含有量が眼圧下降作用にどのような影響を与えるかの記載は全くなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0190852号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0054172号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、膨大な数のピリジルアミノ酢酸化合物の中から、どの化合物が特に優れた眼圧下降作用を有し、緑内障若しくは高眼圧症治療または予防剤、または眼圧下降剤となりうるか、また、見出された化合物をどのような用法および/または用量で患者(主にヒト)に投与した時に有効な治療効果又は予防効果が得られるか、を見出すことである。
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩(以下、「本化合物」ともいう)が、特に優れた眼圧下降作用を有し、緑内障若しくは高眼圧症治療又は予防剤、または眼圧下降剤となりうることを見出した。さらに本化合物の含有量が高い場合よりも、当該含有量がある程度低い場合の方が、優れた眼圧下降作用を示し、さらに、驚くべきことに、ヒトにおいて、本化合物の含有量が0.001〜0.01%(w/v)のもの、特に0.001〜0.003%(w/v)のものを、1日1回又は2回、1回1又は2滴、点眼投与したときに、特に優れた眼圧下降作用を示し、そのような用法および/または用量で使用した場合に有効な治療または予防効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。ここで、「%(w/v)」は、点眼液100mL中に含まれる有効成分(ここでは、本化合物)や添加剤(界面活性剤等)の質量(g)を意味する。例えば、本化合物0.01%(w/v)とは、点眼液100mL中に含まれる本化合物の含有量が0.01gであることを意味する。
すなわち、本発明は、以下に関するものであり得る。
【0007】
(1) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001〜0.01%(w/v)含むことを特徴とする、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための医薬製剤。
(2) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001〜0.003%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(3) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011〜0.0030%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(4) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011〜0.0029%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(5) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0013〜0.0027%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(6) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0015〜0.0025%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(7) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0010%(w/v)、0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)又は0.0030%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(8) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)又は0.0030%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(9) (6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)又は0.0029%(w/v)含む、(1)に記載の医薬製剤。
(10) 剤形が点眼剤である、(1)〜(9)のいずれかに記載の医薬製剤。
(11) ヒト用である、(1)〜(10)のいずれかに記載の医薬製剤。
(12) 1日1回又は2回、点眼投与されるように用いられることを特徴とする、(1)〜(11)のいずれかに記載の医薬製剤。
(13) 1回1又は2滴を、点眼投与されるように用いられることを特徴とする、(1)〜(12)のいずれかに記載の医薬製剤。
(14) 1日1回、点眼投与されるように用いられることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれかに記載の医薬製剤。
(15)1回1滴を、点眼投与されるように用いられることを特徴とする、(1)〜(14)のいずれかに記載の医薬製剤。
(16) (1)〜(11)のいずれかに記載の医薬製剤を、緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防が必要な患者に投与することを含む、緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防方法。
(17)前記投与が点眼投与である、(16)に記載の方法。
(18) 1日1回又は2回、点眼投与することを特徴とする、(16)又は(17)に記載の緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防方法。
(19) 1回1又は2滴、点眼投与することを特徴とする、(16)又は(17)に記載の緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防方法。
(20) 1日1回、1回1滴、点眼投与することを特徴とする、(16)又は(17)に記載の緑内障若しくは高眼圧症の治療または予防方法。
【0008】
本発明は、本化合物を上記(1)〜(15)に記載された用量を含み、及び/又は用法に従って投与することにより、患者、特にヒトに対して優れた眼圧下降作用を有する、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための、または眼圧を下降するための医薬製剤を提供する。
本発明は、また、当該医薬製剤を用いて緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するための方法、並びに眼圧を下降するための方法を提供する。
本発明は、さらに、緑内障若しくは高眼圧症を治療または予防するため、または眼圧を下降するための当該医薬製剤を製造するために本化合物を使用する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の、緑内障若しくは高眼圧症治療または予防剤、または眼圧下降剤(以下、あわせて「薬剤(medicament)」ともいう)に含有される、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩は、米国特許出願公開第2012/0190852号明細書(特許公報1)に記載の方法、当該技術分野における通常の方法等に従って製造することができる。
【0010】
本発明の薬剤に含有される、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの塩は、薬理上許容される塩であれば特に制限されない。具体的には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩;又は酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、好ましくは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0011】
本発明の薬剤に含有される、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量は、0.001〜0.01%(w/v)の範囲内であれば特に制限されない。具体的に、下限は0.001%(w/v)が好ましく、0.0011(w/v)がより好ましく、0.0013%(w/v)がさらに好ましく、0.0015%(w/v)が特に好ましい。上限は0.01%(w/v)が好ましく、0.005%(w/v)がより好ましく、0.003%(w/v)がさらに好ましく、0.0029%(w/v)がさらにより好ましく、0.0027%(w/v)が特に好ましく、0.0025%(w/v)が最も好ましい。より詳細に、含有量は、0.001〜0.005%(w/v)が好ましく、0.001〜0.003%(w/v)がより好ましく、0.0011〜0.0030%(w/v)がさらに好ましく、0.0011〜0.0029%(w/v)が殊更好ましく、0.0013〜0.0027%(w/v)が特に好ましく、0.0015〜0.0025%(w/v)が最も好ましい。より具体的には、0.0010%(w/v)、0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)、0.0030%(w/v)、0.005%(w/v)、0.01%(w/v)が好ましい。
【0012】
尚、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの塩を含有する場合、塩が遊離した時の(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルの含有量が前記の範囲となることを意味する。
【0013】
本発明の薬剤には、必要に応じて添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体等を加えることができる。
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な界面活性剤を適宜配合することができる。
界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
より具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は5〜100が好ましく、20〜50がより好ましく、30〜40が特に好ましく、35が最も好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられ、ポリオキシル35ヒマシ油が最も好ましい。
【0014】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は10〜100が好ましく、20〜80がより好ましく、40〜70が特に好ましく、60が最も好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が最も好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65等が挙げられ、ポリソルベート80が最も好ましい。
ビタミンE TPGSは、トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルともいう。
【0016】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0017】
本発明の薬剤に界面活性剤を配合する場合、その含有量は、界面活性剤の種類等により適宜調整することができる。具体的に、下限は0.001%(w/v)が好ましく、0.01%(w/v)がより好ましく、0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましく、0.8%(w/v)が最も好ましい。上限は10%(w/v)が好ましく、5%(w/v)がより好ましく、4%(w/v)がさらに好ましく、3%(w/v))が特に好ましく、2%(w/v)が最も好ましい。より詳細に、含有量は、0.001〜10%(w/v)が好ましく、0.01〜5%(w/v)がより好ましく、0.1〜4%(w/v)がさらに好ましく、0.5〜3%(w/v)が特に好ましく、0.8〜2%(w/v)が最も好ましい。
【0018】
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を適宜配合することができる。
緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε−アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。より具体的には、リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。中でも、ホウ酸若しくはその塩、又は、クエン酸若しくはその塩が好ましい。
【0019】
本発明の薬剤に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、緩衝剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001〜10%(w/v)が好ましく、0.01〜5%(w/v)がより好ましく、0.1〜3%(w/v)がさらに好ましく、0.2〜2%(w/v)が最も好ましい。
【0020】
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。
等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。
イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。本発明の薬剤に等張化剤を配合する場合、その含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.01〜10%(w/v)が好ましく、0.02〜7%(w/v)がより好ましく、0.1〜5%(w/v)がさらに好ましく、0.5〜4%(w/v)が特に好ましく、0.8〜3%(w/v)が最も好ましい。
【0021】
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。
安定化剤の例としては、エデト酸、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、エデト酸二ナトリウムが特に好ましい。エデト酸ナトリウムは水和物であってもよい。本発明の薬剤に安定化剤を配合する場合、その含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001〜1%(w/v)が好ましく、0.005〜0.5%(w/v)がより好ましく、0.01〜0.1%(w/v)が最も好ましい。
【0022】
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。
防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。本発明の薬剤に防腐剤を配合する場合、その含有量は、防腐剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0005〜0.1%(w/v)がより好ましく、0.001〜0.05%(w/v)がさらに好ましく、0.005〜0.010%(w/v)が最も好ましい。
【0023】
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。
抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の薬剤に抗酸化剤を配合する場合、その含有量は、抗酸化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0005〜0.1%(w/v)がより好ましく、0.001〜0.05%(w/v)が最も好ましい。
【0024】
本発明の薬剤には、医薬品の添加物として使用可能な高分子量重合体を適宜、配合することができる。
高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
本発明の薬剤に高分子量重合体を配合する場合、その含有量は、高分子量重合体の種類などにより適宜調整することができるが、0.001〜5%(w/v)が好ましく、0.01〜1%(w/v)がより好ましく、0.1〜0.5%(w/v)が最も好ましい。
本発明の薬剤のpHは、4.0〜8.0が好ましく、4.5〜7.5がより好ましく、5.0〜7.0が特に好ましく、5.5〜6.5が最も好ましい。本発明の薬剤は、当該pHを調整するためのpH調整剤として、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を添加してもよい。
【0025】
本発明の薬剤は、種々の素材で製造された容器に入れて保存することができる。例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の容器を用いることができ、点眼のし易さ(容器の硬さ)や本化合物の安定性等の観点で、ポリエチレン製の容器に入れて保存することが好ましい。
本発明の薬剤の剤形は、医薬品として使用可能なものであれば特に制限はない。具体的には、点眼剤、眼科用注射剤、眼軟膏等が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。これら薬剤の剤形は、当該技術分野における通常の方法に従って製造することができる。また、本発明の薬剤が液剤である場合の溶媒又は分散媒は水であることが好ましい。
【0026】
本発明の薬剤の一態様は、他の緑内障治療剤を含まず、かつ、他の緑内障治療剤と併用されない。
【0027】
本発明の薬剤は、1又は複数、好ましくは1〜3の、より好ましくは、1又は2の他の緑内障若しくは高眼圧症治療剤又は眼圧下降剤を含有してもよく、他の緑内障治療剤としては、特に制限はない。具体的には、市販又は開発中の緑内障治療剤等が好ましく、市販の緑内障治療剤等がより好ましく、本化合物と作用機序の異なる市販の緑内障治療剤等が特に好ましい。より具体的には、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤などが挙げられる。
非選択性交感神経作動薬の具体例としては、ジピベフリンが挙げられ、α2受容体作動薬の具体例としては、ブリモニジン、アプラクロニジンが挙げられ、α1受容体遮断薬の具体例としてはブナゾシンが挙げられ、β受容体遮断薬の具体例としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられ、副交感神経作動薬の具体例としてはピロカルピンが挙げられ、炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミドが挙げられ、プロスタグランジン類の具体例としては、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロストが挙げられ、Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、リパスジルが挙げられる。
【0028】
本発明の薬剤の用法は、所望の薬効を奏するのに十分な用法であれば特に制限はなく、疾患の症状、患者の年齢や体重、薬剤の剤形等に応じて適宜選択できる。
具体的には、1回量1〜5滴、好ましくは1〜3滴、より好ましくは1〜2滴、特に好ましくは1滴を、1日1〜4回、好ましくは1日1〜3回、より好ましくは1日1〜2回、特に好ましくは1日1回を、毎日〜1週間毎に点眼投与することができる。1日1回1滴を毎日、点眼投与することが好ましい。ここで、1滴は、通常、約0.01〜約0.1mLであり、好ましくは、約0.015〜約0.07mLであり、より好ましくは、約0.02〜約0.05mLであり、特に好ましくは約0.03mLである。
本発明の薬剤は、治療又は予防剤を意味し、より具体的には、緑内障治療若しくは予防剤、高眼圧症治療若しくは予防剤、又は眼圧下降剤を意味する。
本発明における緑内障としては、原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障、プラトー虹彩緑内障、混合型緑内障、発達緑内障、ステロイド緑内障、落屑緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体の嚢性緑内障、plateau iris syndrome等が、好ましくは原発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、原発閉塞隅角緑内障が挙げられ、特に本発明の医薬製剤は原発開放隅角緑内障に有効である。
【実施例】
【0029】
以下に製剤例及び臨床試験結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
製剤例
以下に本発明の薬剤における代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。また、本化合物Aは、(6−{[4−(ピラゾール−1−イル)ベンジル](ピリジン−3−イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン−2−イルアミノ)酢酸イソプロピルを意味する。
【0030】
[製剤例1]
点眼剤(100mL中)
本化合物A 0.002g
ホウ酸 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリソルベート80 0.5g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0031】
[製剤例2]
点眼剤(100mL中)
本化合物A 0.002g
リン酸二水素ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ビタミンE TPGS 0.8g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0032】
[製剤例3]
点眼剤(100mL中)
本化合物A 0.002g
クエン酸三ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0033】
なお、前記製剤例1〜3において、本化合物Aおよび/又は添加剤の種類および/又は配合量を適宜調整することで、所望の薬剤を得ることができる。
【0034】
1.臨床試験(1)
1−1.点眼剤の製造
表1に示す点眼剤1〜2及びプラセボ点眼剤を製造した。
【0035】
【表1】
【0036】
1−2.試験方法
原発開放隅角緑内障患者(ヒト、26人)又は高眼圧症患者(ヒト、18人)を対象に、点眼剤1、2又はプラセボ点眼剤を、4週間にわたって、1日1回1滴(約0.03ml)を毎日両眼点眼した。
【0037】
1−3.試験結果及び考察
最終点眼から16時間経過後における点眼剤1および2の点眼開始前(ベースライン)からの平均眼圧変化(mmHg)をプラセボ点眼剤の同平均眼圧変化との差として算出した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2から明らかなように、点眼剤1(0.003%)および点眼剤2(0.01%)のいずれも眼圧下降作用を示すが、本化合物Aの含有量が0.003%(w/v)である場合に、より優れた眼圧下降作用を示した。当業者の予想に反して、本化合物Aの含有量が大幅に少ない方が、より高い眼圧下降作用を示した。
【0040】
2.臨床試験(2)
2−1.点眼剤の製造
表3に示す点眼剤3〜6及びプラセボ点眼剤を製造した。但し、点眼剤3は本化合物Aが0.0003%(w/v)であるので、本発明の参考例である。
【0041】
【表3】
【0042】
2−2.試験方法
原発開放隅角緑内障患者(ヒト、37人)又は高眼圧症患者(ヒト、39人)を対象に、点眼剤3〜6、又はプラセボ点眼剤を、4週間にわたって、1日1回1滴(約0.03ml)を毎日両眼点眼した。
【0043】
2−3.試験結果及び考察
最終点眼から16時間経過後における点眼剤3〜6の点眼開始前(ベースライン)からの平均眼圧変化(mmHg)をプラセボ点眼剤の同平均眼圧変化との差として算出した。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
表4から明らかなように、点眼剤4〜6のいずれも、点眼剤3よりも高い眼圧下降作用を示した。従って、点眼剤4〜6のように本化合物Aの含有量が0.001〜0.003%(w/v)である場合に、特に優れた眼圧下降作用を示した。また、副作用の点でも、医薬品として十分認容できるものであった。