特許第6491595号(P6491595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6491595白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491595
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20190318BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20190318BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190318BHJP
   C22C 5/04 20060101ALN20190318BHJP
【FI】
   B22F9/24 E
   B22F1/00 K
   H01B13/00 501Z
   !C22C5/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-253415(P2015-253415)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-115217(P2017-115217A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】横田 幸尚
(72)【発明者】
【氏名】川畑 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠太
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−162868(JP,A)
【文献】 特開2010−144215(JP,A)
【文献】 特開平03−215605(JP,A)
【文献】 特開2012−067333(JP,A)
【文献】 特開2006−193796(JP,A)
【文献】 特開2011−001589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0183028(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00〜9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金化合物とパラジウム化合物とロジウム化合物と還元剤とを湿式で反応させて白金パラジウムロジウム合金粉末を製造する方法において、
ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液と還元剤とを反応させて第1の水溶液とし、前記第1の水溶液の酸化還元電位を、前記ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液における還元剤と反応させる前における酸化還元電位以下であり、かつ、プラス0.6V(vs.SHE:標準水素電極)以上の電位とすることにより、前記3価のロジウムを2価のロジウムへ還元する第1の工程と、
白金の価数が4価である白金化合物の水溶液とパラジウムの価数が2価であるパラジウム化合物の水溶液と前記第1の水溶液を混合して第2の水溶液を得る第2の工程と、
還元剤を含む第3の水溶液と前記第2の水溶液とを反応させて第4の水溶液とし、その第4の水溶液の酸化還元電位を、前記還元剤を含む第3の水溶液における前記第2の水溶液と混合する前の酸化還元電位以上であり、かつ、プラス0.2V(vs.SHE)以下の電位とすることにより前記白金およびロジウムおよびパラジウムを0価に還元させて白金パラジウムロジウム合金粉末を析出させる第3の工程と、
を含むことを特徴とする白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程における前記ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液における前記還元剤と反応させる前の酸化還元電位がプラス0.8〜プラス1.0V(vs.SHE)であり、前記第3の工程における前記還元剤を含む第3の水溶液における第2の水溶液と混合する前の酸化還元電位がマイナス0.5〜マイナス0.3V(vs.SHE)であることを特徴とする、請求項1に記載の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【請求項3】
前記ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液が塩化ロジウム(III)の水溶液であり、
前記白金の価数が4価である白金化合物の水溶液が塩化白金(IV)酸の水溶液であり、
前記パラジウムの価数が2価であるパラジウム化合物の水溶液が塩化パラジウム(II)の水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程における前記水溶液に酸を含ませることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程における前記還元剤を含む第3の水溶液にアルカリを含ませることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【請求項6】
前記酸が塩酸であることを特徴とする請求項4に記載の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリが、アンモニア水であることを特徴とする請求項5に記載の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法に関し、特に白金化合物等を湿式で還元させて白金パラジウムロジウム合金粉末を得る製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貴金属粉末の用途として、貴金属ペーストを用いて各種電子部品の導電膜・発熱体回路・電極等を製造する用途がある。貴金属ペーストの一般的な成分構成は、貴金属粉末と、基板との結合剤を担う金属酸化物やガラス系フリット等の無機酸化物と、有機ビヒクルとを含む。貴金属ペーストは、セラミックス等の絶縁基板や素子等へのスクリーン印刷等の手段でコーティング処理された後、コーティング層が焼成されて、導電膜、発熱体回路、電極等が形成される。
【0003】
貴金属粉末としては、白金粉末等の単一金属粉末の他、合金粉末がある。特許文献1には、白金化合物を湿式で還元させて粉末化する方法、すなわち、液相還元法による白金粉末の製造方法が開示されている。特許文献1には、塩化白金酸またはその塩の還元析出反応において、還元剤として塩化ヒドラジンを使用し、還元反応において酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の緩衝剤を使用して還元を行い、析出した白金粉を溶液から分離し、残存塩類を洗浄除去する白金粉の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には熱分解法とよばれる方法による白金ロジウム合金粉末の製造方法が開示されている。すなわち、特許文献2には、白金微粉末又は加熱により白金微粉末を熱分解する白金化合物の微粉末と、ロジウム微粉末又は加熱によりロジウム微粉末を熱分解するロジウム化合物の微粉末と、炭酸カルシウム粉末とを混合し、この混合体を加熱処理して炭酸カルシウム粉末を酸化カルシウムと二酸化炭素とに熱分解させ、酸化カルシウム介在下で白金微粉末とロジウム微粉末とを焼結粒成長させ、次いでこの加熱処理体を水に接触させて酸化カルシウムを水酸化カルシウムに変化させ、水酸化カルシウムを酸処理によって溶解して水洗除去後乾燥させて残余の粒成長した白金ロジウム焼結合金粉末を得る白金ロジウム合金粉末の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−2766
【特許文献1】特開平10−102107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液相還元法において、球状で合金度の高い白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法は知られていない。
【0007】
本発明の目的は、液相還元法において、粒子形状がほぼ球形で合金度の高い白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
白金、パラジウム、ロジウムイオン等が錯体を形成している場合において、錯体の核となるロジウムイオンは、その酸化還元電位が他のイオンに比べて相対的に低いため、ロジウムイオンは還元されにくい。本発明者らは、ロジウム化合物におけるロジウムイオンの価数を下げる予備還元を行うことで、合金度の高い合金粉末が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、上記目的は、白金化合物とパラジウム化合物とロジウム化合物と還元剤とを湿式で反応させて白金パラジウムロジウム合金粉末を製造する方法において、ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液と還元剤とを反応させて第1の水溶液とし、前記第1の水溶液の酸化還元電位を、前記ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液における還元剤と反応させる前における酸化還元電位以下であり、かつ、プラス0.6V(vs.SHE:標準水素電極)以上の電位とすることにより、前記3価のロジウムを2価のロジウムへ還元する第1の工程と、白金の価数が4価である白金化合物の水溶液とパラジウムの価数が2価であるパラジウム化合物の水溶液と前記第1の水溶液を混合して第2の水溶液を得る第2の工程と、還元剤を含む第3の水溶液と前記第2の水溶液とを反応させて第4の水溶液とし、その第4の水溶液の酸化還元電位を、前記還元剤を含む第3の水溶液における前記第2の水溶液と混合する前の酸化還元電位以上であり、かつ、プラス0.2V(vs.SHE)以下の電位とすることにより前記白金およびロジウムおよびパラジウムを0価に還元させて白金パラジウムロジウム合金粉末を析出させる第3の工程と、を含むことを特徴とする白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
液相還元法において、粒子形状がほぼ球形で合金度の高い白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のSEM写真
図2】実施例2のSEM写真
図3】比較例のSEM写真
【0012】
以下、本発明の白金パラジウムロジウム合金粉末の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液と還元剤とを反応させて第1の水溶液とし、前記第1の水溶液の酸化還元電位を、前記ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の水溶液における還元剤と反応させる前における酸化還元電位以下であり、かつ、プラス0.6V(vs.SHE:標準水素電極)以上の電位とすることにより、前記3価のロジウムを2価のロジウムへ還元する第1の工程を含む。この工程における反応を第1の還元反応(またはロジウムの予備還元)と称する。
【0014】
本発明において使用し得るロジウム化合物は、ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物である。ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物の例として、塩化ロジウム(III)が挙げられる。塩化ロジウム(III)は、ロジウムの価数が3価であり、安価で入手しやすいため、本発明の出発物質として好ましい。
【0015】
ロジウムの価数が3価である白金化合物を、白金化合物、パラジウム化合物とともに一度に0価に還元しようとすると、合金度の低い粉末となるが、このような予備還元工程を設けることで粉末の合金度を向上させることができる。
【0016】
一方、ロジウムの価数が2価であるロジウム化合物を出発物質とすることが考えられるが、ロジウムの価数が2価であるロジウム化合物は、不安定であることから、反応出発物質とするのが難しい。したがって、安定かつ安価な3価のロジウム化合物のロジウムの価数を3価から一度、2価に還元し、2価のロジウムをその後の一連の還元操作の中で0価に還元することで、経済的、安定的に合金度の高い粉末を得ることが可能となる。
【0017】
還元剤は、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、ヒドラジン一水和物または水素化ホウ素ナトリウム(SBH)を使用することができる。
【0018】
第1の工程では、先ず、塩化ロジウム(III)の水溶液を調整する。具体的には、3価の塩化ロジウムを純水に溶解し、必要に応じて塩酸を添加、塩化ロジウム(III)の水溶液としてその水溶液を50〜90℃に加温して、その水溶液の水素イオン指数(pH)を例えば、pH=−1〜+1に調整する。その水溶液の酸化還元電位は、プラス0.8〜プラス1.0V(vs.SHE)の値となる。pHの値を小さく(酸性側)すると還元剤の酸化還元電位が上がり、還元力が小さくなり、pHの値を大きく(アルカリ性側)すると還元剤の酸化還元電位が下がり、還元力が大きくなる。事後的に添加する水素イオン指数(pH)調整用の酸には、塩酸、硫酸、硝酸等の酸を使用することができる。
【0019】
次に、その塩化ロジウム(III)の水溶液と還元剤とを反応させて第1の水溶液とする。具体的には、50〜90℃に加温した塩化ロジウム(III)の水溶液と塩酸ヒドラジン(還元剤)とを混合して反応させる。第1の水溶液の酸化還元電位は、塩化ロジウム(III)の水溶液における還元剤と反応させる前における酸化還元電位以下かつ、プラス0.6V(vs.SHE)以上の値に収まる。
【0020】
塩化ロジウム(III)の水溶液は、ロジウムの価数が3価であることを反映して赤色(ワイン色)を呈している。塩化ロジウム(III)の水溶液は、塩酸ヒドラジンと反応することで、水溶液の色が褐色に変化する。当該色の変化は、ロジウムの価数が3価から2価に減少したことを示している。
【0021】
本発明は、白金の価数が4価である白金化合物の水溶液とパラジウムの価数が2価であるパラジウム化合物の水溶液と前記第1の水溶液を混合して第2の水溶液を得る第2の工程を含む。
【0022】
白金の価数が4価である白金化合物の水溶液の例として塩化白金(IV)酸の水溶液が、パラジウムの価数が2価であるパラジウム化合物の水溶液の例として塩化パラジウム(II)の水溶液が挙げられる。
【0023】
第2の工程では、例えば、塩化白金酸(IV)を含む水溶液と塩化パラジウム(II)を含む水溶液と第1の溶液とを混合する。これを第2の溶液とする。3つの溶液の混合順序は問わない。たとえば、塩化白金(IV)酸の水溶液と塩化パラジウム(II)の水溶液とを混合し、その混合物と第1の溶液とを混合しても良い。また、たとえば、塩化白金(IV)酸の水溶液と第1の水溶液とを混合し、その混合物と塩化パラジウム(II)の水溶液とを混合しても良い。
【0024】
本発明は、還元剤を含む第3の水溶液と第2の水溶液とを反応させて第4の水溶液とし、その第4の水溶液の酸化還元電位を、その還元剤を含む第3の水溶液における第2の水溶液と混合する前の酸化還元電位以上であり、かつ、プラス0.2V(vs.SHE)以下の電位とすることにより白金およびロジウムおよびパラジウムを0価に還元させて白金パラジウムロジウム合金粉末を析出させる第3の工程を含む。
【0025】
第3の工程ではまず、還元剤を含む第3の水溶液を調整する。
【0026】
還元剤は、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、ヒドラジン一水和物または水素化ホウ素ナトリウム(SBH)を使用することができる。ここで、第3の工程における還元剤は第1の工程における還元剤と同一であっても良く、異なっていてもよい。
【0027】
また、還元剤を含む第3の水溶液液には、分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、使用する溶媒中で、生成する白金粉末の凝集を防止して分散性を良好に維持する作用を有するものであればよい。具体的には、界面活性剤、分散剤としての能力を有する化合物(高分子化合物を含む)、たとえばメチルセルロース等を使用することができる。
【0028】
還元剤を含む第3の水溶液にはアルカリを含ませて、その第3の水溶液における第2の水溶液と混合する前の水素イオン指数(pH)を例えば、約7〜9に調整する。アルカリは、アンモニア水を使用することができる。なお、アルカリ添加前の時点で、還元剤を含む第3の水溶液が目的のpH値を示す場合にはアルカリを添加しなくても良い。
【0029】
還元剤を含む第3の水溶液の酸化還元電位は、マイナス0.5〜マイナス0.3V(vs.SHE)の範囲の値となる。
【0030】
次に、還元剤を含む第3の水溶液と第2の水溶液とを反応させる。具体的には、第2の水溶液に、50〜90℃以上に加温した還元剤を含む第3の水溶液を添加し、攪拌する。還元剤を含む第3の水溶液の温度が90℃を超えると合金粉末の球形が維持できなくなるとともに、粒子径のばらつきが大きくなる。この反応を第2の還元反応と称する。
【0031】
還元剤を含む第3の水溶液と第2の水溶液とを反応させて得られる第4の水溶液における酸化還元電位は、その還元剤を含む第3の水溶液における第2の水溶液と混合する前の酸化還元電位以上であり、かつ、プラス0.2V(vs.SHE)以下の値となる。
【0032】
このようにして、白金パラジウムロジウム合金粉末が析出される。その後、白金パラジウムロジウム合金粉末を含む水溶液をろ過、洗浄、乾燥を行い、粉末を得る。
【0033】
第2の工程において、第2の水溶液中における白金、パラジウム、ロジウムの重量比率を調整するとともに、第1の工程、第2の工程の条件を調整することで、白金パラジウムロジウム合金粉末の組成を変更することができる。この場合、白金とパラジウムは還元されやすさが同程度であるので両者の組成比は広い範囲で合金化が可能である。したがって、白金とパラジウムの重量比率が95:5〜50:50であり、白金とパラジウムとロジウムの合計重量に対するロジウムの重量比率が0.1〜15wt%である白金パラジウムロジウム合金粉末を好適に製造することができる。さらに、白金含有率70〜89wt%、パラジウム含有率10〜29wt%、ロジウム含有率1〜10wt%であって合金度70%以上の白金パラジウムロジウム合金粉末を好適に製造することができる。
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0035】
実施例1
先ず第1の工程を説明する。ロジウムの価数が3価であるロジウム化合物として塩化ロジウム(III)を使用する。塩化ロジウム(III)(Rh含有率39.49%)を101.29gを純水に溶解して400mlに調整し、80℃に加温する。このようにして塩化ロジウム(III)の水溶液を得る。この塩化ロジウム(III)の水溶液(還元剤と反応させる前)のpHを、pH計(東亜DKK製)により測定すると、0.9であった。また、ORP計(東亜DKK製)による酸化還元電位を測定すると、プラス0.9V(vs.SHE)であった。
【0036】
その水溶液に22.4gの塩酸ヒドラジンを添加して3価のロジウムを2価に還元した。還元後、水溶液の色が赤色(ワイン色)から褐色に変化しており、ロジウムの価数が3価から2価に減少したことがわかる。その後2時間保持し、ガラスフィルターにてろ過後、1,000mlに液調整する。これを第1の水溶液とする。第1の水溶液のpHは0.3、酸化還元電位は、プラス0.7V(vs.SHE)であった。
【0037】
次に第2の工程を説明する。白金4.50gを含む塩化白金(IV)酸の水溶液と、パラジウム1.20gを含む塩化パラジウム(II)の水溶液と、ロジウム0.30gを含む第1の溶液とを混合し、これを第2の溶液とする。
【0038】
次に第3の工程を説明する。純水660mlに硫酸ヒドラジン33.0g、アンモニア水19.6ml、界面活性剤を添加、85℃に加温してこれを還元剤を含む第3の水溶液とする。その第3の水溶液(第2の水溶液と混合する前)のpHは7.6、酸化還元電位は、マイナス0.4V(vs.SHE)であった。
【0039】
第2の溶液に第3の溶液を添加して撹拌・混合し、反応を終了させた(第4の水溶液)。第2の溶液中の金属が0価に還元され粉末が析出した。第4の水溶液のpHは1.9、酸化還元電位は、プラス0.1V(vs.SHE)であった。析出した粉末を純水にて数回洗浄し、ガラスフィルターでろ過後、120℃にて乾燥する。
【0040】
実施例2
第2の工程における第2の水溶液の調整を下記の条件に設定した以外は、実施例1と同じ条件で白金パラジウムロジウム合金粉末を得た。第2の水溶液の調整は、白金4.50gを含む塩化白金(IV)酸の水溶液と、パラジウム0.90gを含む塩化パラジウム(II)の水溶液と、ロジウム0.60gを含む第1の溶液とを混合した。
【0041】
第1の工程における塩化ロジウム(III)の水溶液のpHは0.9、酸化還元電位はプラス0.9V(vs.SHE)であった。第1の工程における第1の水溶液のpHは0.3、酸化還元電位は、プラス0.7V(vs.SHE)であった。第3の工程における第3の水溶液のpHは7.6、酸化還元電位は、マイナス0.4V(vs.SHE)であった。第3の工程における第4の水溶液のpHは2.0、酸化還元電位は、プラス0.1V(vs.SHE)であった。
【0042】
比較例
比較例は、ロジウムの予備還元を行わない例である。塩化ロジウム(III)(Rh含有率39.49%)を101.29gを純水に溶解し1000mlに調整して塩化ロジウム(III)の水溶液とする。
【0043】
白金4.50gを含む塩化白金(IV)酸の水溶液と、パラジウム1.20gを含む塩化パラジウム(II)の水溶液と、ロジウム0.30gを含む塩化ロジウム(III)の水溶液とを混合し、これを第2の水溶液とする。
【0044】
純水660mlに硫酸ヒドラジン33.0g、アンモニア水19.6ml、界面活性剤を添加、85℃に加温してこれを第3の水溶液とする。
【0045】
次に、第2の水溶液に第3の水溶液を添加して撹拌・混合し、反応を終了させ第4の水溶液を得た。析出した粉末を純水にて数回洗浄し、ガラスフィルターでろ過後、120℃にて乾燥する。
【0046】
得られた粉末の組成はプラズマ発光分光分析法で測定した。また、走査型顕微鏡(SEM)写真を撮影した。得られた粉末の粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定法で測定し、粒度分布の積算値が90%、10%、50%に相当する粒径D90、D10、D50を求めた。D50を平均粒径とした。粒度分布の指標としてスパンを求めた。ここでスパンとは、D90、D10、D50から次式で計算して求められる値をいい、粒径のばらつきの指標である。スパンが小さいほうが粒度分布が狭く粒径が均一であることを示す。
スパン=(D90−D10)/D50
【0047】
得られた粉末の合金化度は、X線回折スペクトルから求めた。すなわち、対象粉末のX線回折スペクトルを測定し、その(220)面の回折ピークについて、対象粉末を構成する複数の金属元素および合金のピークに分離・分解し、合金と構成金属元素それぞれの回折ピーク強度を用いてZ=X/(A1+A2+A3+・・・An+X)として計算した。ここで、A1〜Anは粉末を構成する元素のピーク強度、Xは合金のピーク強度である。具体的には、白金・パラジウム・ロジウムのピーク位置の値は入力した各金属元素の値に固定し、その回折ピークを4つのローレンツ関数でフィッティングし、白金・パラジウム・ロジウムおよび合金のピーク強度(A1,A2,A3,X)を得、合金化度Z=X/(A1+A2+A3+X)を算出した。
【0048】
得られた粉末の特性を表1に示す。実施例では、合金化度は84〜95%という高い値が得られた一方、比較例では、合金化度0.7と極めて低いであった。粒度分布については、実施例が、スパン1.1〜1.2に対し、比較例では1.75であり、実施例は粒度分布が改善されていることがわかる。また、写真より、実施例は、粒子形状がほぼ球形であることがわかる。
【0049】
【表1】

図1
図2
図3