【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料と、消泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料と、水とを含有する気泡形成剤に関する。
【0009】
本明細書において発泡は、空気量の増大が混合プロセスの終了後40分以内に起こることを意味する。消泡は、混合プロセスの終了後40分以内に空気量が減少することを意味する(それぞれ、DIN EN 1015−7に準拠して測定される)。
【0010】
このため、発泡により混合中に空気の導入の増大が起こる、すなわち安定性が増大する一方で、消泡により空気の導入が低減する、すなわち気泡の不安定化が起こる。
【0011】
効果の異なる気泡形成材料のこの組合せにより、適応性の広く有用な気泡形成剤がもたらされる。気泡形成物質を混ぜ合わせる際、発泡又は消泡に関する中間の挙動を示す気泡形成材料を使用しない代わりに、全体の結果が中間の挙動となるように、発泡効果を有する気泡形成材料と消泡効果を有する気泡形成材料とを混ぜ合わせるようにすることが重要である。
【0012】
本発明による気泡形成剤の使用により、特によりしっかりした空気の導入及びより安定した気泡がもたらされる。中でも、本発明による気泡形成剤を使用することで、セメント又はモルタルのタイプ、骨材及び粒の組成、混合機のタイプ、混合時間、温度、並びに混合強度に応じた気泡の量及び気泡サイズの依存性を最小限に抑えるか又は排除することも可能である。例えば結合材及び高流動化剤等の追加の使用物質に応じた依存性は、本発明による気泡形成剤を用いることで劇的に低減することができる。
【0013】
好ましい実施の形態では、発泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料の効果と消泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料の効果とが互いに打ち消し合う。本明細書において互いに打ち消し合うとは、混合プロセスの終了後40分以内の空気量の変化が元の空気量の20%(相対値)以下であることを意味する(DIN EN 1015−7に準拠して測定される)。空気量の変化が元の空気量の10%(相対値)以下、とりわけ特に好ましくは元の空気量の5%(相対値)以下であることが特に好ましい。
【0014】
発泡効果を有する気泡形成材料及び消泡効果を有する気泡形成材料に関して、使用されるセメント質系に応じて、同じ物質を、発泡効果を有する気泡形成材料と更には消泡効果を有する気泡形成材料との両方に使用することができることを初めて指摘している。これは、同じ物質を或る系では発泡効果を有する気泡形成材料として、また別の系では消泡効果を有する気泡形成材料として使用することができることを意味する。当然ながら、同じ物質は同じ系においては2つの可能な効果の内の一方しか有することができない。
【0015】
原則として、本発明による気泡形成剤における発泡効果を有する気泡形成材料としては、既知の気泡形成材料であればどれでも使用することが可能である。しかしながら、上記気泡形成材料がトール油、アニオン界面活性剤及び/又は脂肪酸であることが有益である。蒸留トール油を使用することが特に好ましい。上記トール油は、特に規定済みの安定した組成を有することが有益である。蒸留トール油の脂肪酸画分を使用することが特に好ましい。Chemische Fabrik Schweizerhallから市販されているSylvatal 25/30の形での蒸留トール油の使用がとりわけ特に好ましい。発泡効果を有する気泡形成材料として、脂肪族アルコールスルフェート、特にアニオン性脂肪族アルコールスルフェート、アミノ酸誘導体、特にアニオン性アミノ酸誘導体、例えばサルコシネート、オレフィンスルホネート、特にアニオン性オレインスルホネート、スルホスクシナメート、特にアニオン性スルホスクシナメートを使用することも好ましい。
【0016】
加えて、発泡効果を有する気泡形成材料として、ホスフェート、特にアニオン性ホスフェート、両性化合物、例えばコカミドプロピルベタイン、アルキルフェノールエトキシレート、特に非イオン性アルキルフェノールエトキシレート、アミドエトキシレート、特に非イオン性アミドエトキシレート、アミンエトキシレート、特に非イオン性アミンエトキシレートを使用することが可能である。
【0017】
特に発泡効果を有する気泡形成材料は、少なくとも1種の不飽和脂肪酸、好ましくは少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含有する。いくつかの異なる脂肪酸を含有する混合物、特に少なくとも1種の一価不飽和脂肪酸と少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸との混合物を使用することも有益である。例えば、リノール酸及びオレイン酸を、任意に樹脂酸とともに含有する混合物が好適である。本明細書では脂肪酸はトール油及び/又は蒸留トール油に由来するものであることが好ましい。
【0018】
好ましい実施の形態において、本発明による気泡形成剤は2種の発泡効果を有する気泡形成材料を含有する。これにより、骨材、添加剤及び他の影響に対する感受性が低減されるという利点がもたらされる。
【0019】
2種の発泡効果を有する気泡形成材料が本発明による気泡形成剤に使用される場合、トール油、好ましくは蒸留トール油に加えて、界面活性剤、好ましくはアニオン界面活性剤、特にラウリルエーテルスルフェートが使用されることが有益である。この組合せの使用には、骨材、添加剤及び他の影響に対する感受性が低減されるという更なる利点がある。
【0020】
好ましい実施の形態において、界面活性剤、有益にはアニオン界面活性剤、特に好ましくは塩基性アニオン界面活性剤が、消泡効果を有する気泡形成材料として使用される。消泡効果を有する気泡形成材料が、例えばアニオン界面活性剤である場合、アニオン界面活性剤は所与のセメント質系において同時に発泡効果を有する気泡形成材料となることができないことは明らかである。消泡効果を有する気泡形成材料として、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、特にアニオン性脂肪族アルコールエーテルスルフェート、及びアルコールエトキシレート、特に非イオン性アルコールエトキシレートを使用することも可能である。
【0021】
加えて、消泡効果を有する気泡形成材料として、ホスフェート、特にアニオン性ホスフェート、両性化合物、例えばコカミドプロピルベタイン、アルキルフェノールエトキシレート、特に非イオン性アルキルフェノールエトキシレート、アミドエトキシレート、特に非イオン性アミドエトキシレート、及びアミンエトキシレート、特に非イオン性アミンエトキシレートを使用することができる。
【0022】
本発明による気泡形成剤における発泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料と消泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料との比は、原則として可変であり、使用する材料及び装置に応じて異なる。しかしながら、この比は10:90〜90:10、好ましくは30:70〜70:30であることが有益であることが分かっている。この比はスラグ及び/又はフライアッシュとともに本発明による気泡形成剤を使用することが可能となるように、また炭素粒子のマイナスの影響が隠蔽されるように選択されるのが好ましい。この後者の特徴が気泡の炭素に対する感受性を低減する。
【0023】
特に好ましい実施の形態において、本発明による気泡形成剤は、溶解度を増大させる物質、好ましくは安定化剤、錯化剤、とりわけ特に好ましくはニトリロ三酢酸、可溶化剤、及び/又はpH調整物質、特に好ましくはアルカリ液、とりわけ特に好ましくは水酸化ナトリウムアルカリ液を含有する。アルカリ液を使用することで、本発明による気泡形成剤が安定化する。
【0024】
好ましい実施の形態において、本発明による気泡形成剤は保存剤を含有する。原則として、既知の保存剤であればどれでも使用することができるが、ホルムアルデヒドを切断する保存剤の使用が特に好ましい。
【0025】
0.02重量%〜6重量%、特に0.2重量%〜6重量%の発泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料と、0.02重量%〜6重量%、特に0.2重量%〜6重量%の消泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成材料と、80重量%〜99.9重量%の水と、任意に0.02重量%〜2.5重量%のアルカリ液と、任意に0.01重量%〜0.5重量%の保存剤とを含有する気泡形成剤を使用することが特に好ましい。
【0026】
特に好ましい実施の形態において、本発明による気泡形成剤は0.02重量%〜5.0重量%、特に0.2重量%〜5.0重量%の発泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成剤と、0.02重量%〜5.0重量%、特に0.2重量%〜5.0重量%の消泡効果を有する少なくとも1種の気泡形成剤と、80重量%〜99.9重量%の水と、任意に0.05重量%〜1.0重量%のアルカリ液と、任意に0.01重量%〜0.5重量%の保存剤とを含有する。このような気泡形成剤には、空気導入の際の粒度分布及び/又は混合機のタイプに対する感受性が低いという更なる利点がある。
【0027】
本発明はセメント質系、好ましくはコンクリート混合物及びモルタル混合物における気泡の形成のための上記の本発明による気泡形成剤の使用にも関する。
【0028】
本発明による気泡形成剤は、あらゆる既知のセメント質系における気泡の形成に使用することができる。セメント質系はコンクリート混合物又はモルタル混合物であるのが好ましい。
【0029】
本発明は更に、セメント質系、好ましくはコンクリート混合物及びモルタル混合物における気泡の形成のための上記の本発明による気泡形成剤の使用に関する。
【0030】
本明細書において、セメント質系はセメント質結合材を含有する系を指すものである。本明細書におけるセメント質結合材は、特にセメントクリンカーの含有量が少なくとも5重量%、特に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、とりわけ特に好ましくは少なくとも65重量%である結合材又は結合材組成物を指すものである。セメントクリンカーはポルトランドセメントクリンカーであるのが好ましい。本明細書において、セメントクリンカーは、特に粉砕セメントクリンカーを表す。
【0031】
特に、無機結合材は水硬性結合材、好ましくはセメントを含有する。セメントクリンカーの含有量が35重量%以上のセメントが特に好ましい。CEM I、CEM II及び/又はCEM IIIAタイプのセメント(EN 197−1規格に準拠)が特に好ましい。全無機結合材における水硬性結合材の含有量は、有利には少なくとも5重量%、特に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、とりわけ特に好ましくは少なくとも65重量%である。更なる有益な実施の形態によれば、無機結合材は、95重量%以上の水硬性結合材、特にセメントクリンカーのみからなる。
【0032】
しかしながら、結合材が他の結合材を含有するか又は他の結合材のみからなることも有益であり得る。他の結合材は特に、潜在的な水硬性結合材及び/又はポゾラン結合材である。好適な潜在的な水硬性結合材及び/又はポゾラン結合材は、例えばスラグ、フライアッシュ及び/又はシリカ粉塵である。結合材が例えば石灰岩、石英粉末及び/又は顔料等の不活性物質を含有することも可能である。
【0033】
有利な実施の形態では、無機結合材は、5重量%〜95重量%、特に5重量%〜65重量%、特に好ましくは15重量%〜35重量%の潜在的な水硬性結合材及び/又はポゾラン結合材(複数の場合もあり)を含有する。有益な潜在的な水硬性結合材及び/又はポゾラン結合材はスラグ及び/又はフライアッシュである。
【0034】
特に好ましい実施の形態では、無機結合材は水硬性結合材、特にセメント又はセメントクリンカーと、潜在的な水硬性結合材及び/又はポゾラン結合材、好ましくはスラグ及び/又はフライアッシュとを含有する。本明細書において潜在的な水硬性結合材及び/又はポゾラン結合材の含有量は、特に好ましくは5重量%〜65重量%、特に好ましくは15重量%〜35重量%である一方、水硬性結合材の含有量は少なくとも35重量%、特に好ましくは少なくとも65重量%である。
【0035】
本発明について、「無機結合材」は「無機結合材組成物」と同等であると考えられる。同じことがセメント質結合材という表現にも当てはまる。
【0036】
好ましい実施の形態では、セメント質系、好ましくはコンクリート混合物及びモルタル混合物は流動化剤を含有する。流動化剤として、例えばポリカルボキシレートエーテル、ビニルコポリマー、メラミン−又はナフタリン−ホルムアルデヒド凝集物、リグニンスルホネート又は炭水化物を使用することができ、ポリカルボキシレートエーテル含有高流動化剤によってより多くの水の低減を達成することができることから、ポリカルボキシレートエーテル含有高流動化剤の使用が特に好ましい。本発明によれば、ポリカルボキシレートエーテルは気泡形成材料としては不適であり、気泡形成材料ではないと考えるものとする。流動化剤は0.5重量%〜1.5重量%の量で、特に好ましくは0.6重量%〜1.2重量%の量で使用するのが好ましい。
【0037】
気泡の形成のために本発明による気泡形成剤が導入されるセメント質系における水/セメント比は、好ましくは0.2〜0.8、特に好ましくは0.4〜0.7である。
【0038】
別の好ましい実施の形態において、本発明による気泡形成剤はセメント質系の結合材含有量に対して0.1重量%〜2重量%、好ましくは0.2重量%〜1.2重量%の量で使用される。