(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491707
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】簡易型防水装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20190318BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-150327(P2017-150327)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-27228(P2019-27228A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】598113564
【氏名又は名称】株式会社富士商会
(74)【代理人】
【識別番号】100070286
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 伸治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 晃司
【審査官】
小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−108897(JP,A)
【文献】
特開2010−163741(JP,A)
【文献】
特開2016−056578(JP,A)
【文献】
特開2017−082509(JP,A)
【文献】
米国特許第09080369(US,B2)
【文献】
特開2016−169522(JP,A)
【文献】
特開2016−211285(JP,A)
【文献】
特開2014−118796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 7/16−7/24
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口床面上に載置する水平板部の後縁部から止水板部を起立させ断面L字形に形成される止水板と、前記水平板部上に載置し、且つ後背部を前記止水板部の前面に当接して前記止水板を定位置に固定する少なくとも一対の固定錘とから構成される簡易型防水装置であって、
前記止水板は、所要の剛性と多少の撓み性を併せ持つ薄板を素材に形成し、前記水平板部と前記止水板部との角度の変化を可能にすると共に、前記水平板部の下面には全幅に亘って弾性シ−ル材を付設し、また前記止水板部の背面両側部には縦向きにそれぞれ弾性シ−ル材を付設して、使用に当たっては前記出入口床面上の所定位置に前記止水板の水平板部を仮置き設置した後、この止水板の前記水平板部の左右の側縁部上に前記対をなす固定錘をそれぞれ載置してその重量で下面に付設する前記弾性シ−ル材を前記出入口床面上に圧迫密着させると同時に、この各固定錘のそれぞれの後背部を前記止水板部の左右の側縁部前面に押圧当接し、前記素材の撓み性を活用してその各背面に付設する前記それぞれの弾性シ−ル材を前記出入口開口部の左右の側部前面に圧迫密着させ、これにより該出入口開口部内への水の浸入を防止するようにした簡易型防水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易型防水装置において、前記止水板の水平板部の下面に付設する弾性シ−ル材は所要厚みを有する帯板状にして上記下面の後縁部に沿ってその全幅に亘り一体に付設されることを特徴とした簡易型防水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の簡易型防水装置において、前記水平板部の下面には前記弾性シ−ル材を付設する前方側の適所に該水平板部の水平状態を維持する姿勢補助材を付設してなることを特徴とした簡易型防水装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3のいずれかの請求項に記載の簡易型防水装置において、止水板の止水板部の前面には該止水板部を補強する補強用リブを横幅方向に一体に付設してなることを特徴とした簡易型防水装置。
【請求項5】
請求項4に記載の簡易型防水装置において、前記補強用リブは止水板部の前面の全幅に亘って1又は複数個付設されることを特徴とした簡易型防水装置。
【請求項6】
請求項1に記載の簡易型防水装置において、前記固定錘は水平板部の上面に載置される底面部と止水板部の前面に押圧当接される後背部とが直角状をなすことを特徴とした簡易型防水装置。
【請求項7】
請求項6に記載の簡易型防水装置において、前記固定錘は底面部の前方と後背部の上方にそれぞれ延長部を一体に設けて前記止水板の水平板部及び止水板部に対する各当接面積を拡張させてなることを特徴とした簡易型防水装置。
【請求項8】
請求項1,6又は7のいずれかの請求項に記載の簡易型防水装置において、固定錘の上面中央部には後方を高くして前下がりに傾斜を付した取っ手を設けてなることを特徴とした簡易型防水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に向けて開口する建物等の出入口、地下鉄駅の出入口や地下駐車場の出入口等に取り外し自由に設置される簡易型防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の出入口開口部に設置される簡易型の防水装置は、洪水や集中豪雨などによって道路が冠水したとき、ビルの出入口や道路上に開放する地下施設の出入口、例えば地下鉄駅の構内や地下の商業施設、地下駐車場等の出入口からの水の浸入を防ぐため設置される設備であるが、この装置は平常時は人や車の出入りの妨げにならないように水止めの止水板を取り外してこれを格納庫などに格納し、出水など緊急時にこれを取り出して出入口に取付け、建物や地下の施設への水の浸入を防止するものとなる。
【0003】
この防水装置については、防水のための止水板を動力を利用して開閉する構造のもの、或は止水板を防水装置を設置する出入口の下に設ける格納室に格納して通行の妨げにならないようにしたもの等、各種構造を異にした装置が提案されているが、中でも構造が簡単であって取扱いが比較的容易な装置として、出入口の左右向い合せの側壁面に縦の装着溝を形成してこれに横長に形成した板体、つまり止水板の両端を人手を使って嵌め込み、落し込んで所要の高さの堰を作って出入口を閉鎖する構造の簡易型の防水装置が広く知られており、多く実用化されている。
【0004】
この普及型とも言える止水板を着脱するタイプの簡易型の防水装置には、堰板を構成する止水板を予め横長の複数個の板に分割して小型化し、取扱いを便利にしたものも知られるが、いずれにおいてもこのタイプの防水装置は、平常時はこの分割して小型化した止水板を装着溝から抜き取って通行の妨げにならない場所に設ける格納庫等に格納し、保管するようにしており、洪水等の緊急使用時にこの格納場所から取り出して前記装着溝に順次差し入れ、出入口を遮断する構造になっている。
【0005】
この止水板を着脱する構造の防水装置は、構造が簡潔であって設置が容易であることに加え、開閉のために特別な動力を必要としないことから、緊急時の使用において故障の心配がなく、また取扱いも止水板の抜き差しの操作によって行えることから簡便であり、広く普及するものとなっている。
【0006】
しかし、この装置における一つの難点は、止水板を装着するための装着溝を予め建物等の出入口に設備して置かなければならないことにある。
【0007】
上記装着溝は、装着する止水板に適合する構造に設計されることに加えて、予め出入口の左右の面に相対向して構築されることになる。しかし、これに装着される止水板は装着溝に対して単に嵌め入れるだけでは止水効果を挙げられないことから確実な防水効果を挙げるため装着溝には溝の内壁面にシ−ル材を止着して嵌め込む止水板との間に介挿し、更に、上記シ−ル材が有効に機能するために装着溝とシ−ル材とが、またこのシ−ル材と止水板とが確実に密着し止水できるようにクレセント等の締付け手段を併用するのが普通である。
【0008】
従って、装着溝に止水板を装着し、防水する構造の上記防水装置においては、取扱いが比較的簡単である反面、絶対的要件として予め出入口に装着溝を装備して置かなくてはならないこと、つまり、装着溝を備えない出入口には止水板を設置できないと言う決定的な問題がある。
【0009】
また同時に、装着溝は予め設備して置くことに加えて、この装着溝の設置工事自体が費用掛かりとなり、増してや建物等の出入口に後付けによって設置するに至っては更に費用負担が大きくなる問題がある。勿論、この装着溝を使用するタイプの防水装置においては前述した通り装着溝内部へのシ−ル材の設置や締付け手段の組み付け等があるため相応の費用が掛かることになる。
また、その他の問題として、例えば装飾性を重視する店舗等の出入口の場合には外観上装着溝それ自体の設置が困難になると言った問題もある。
【0010】
特許文献1には、上記装着溝(溝付支柱の溝)に止水板を落とし込んで出入口開口部を閉塞するタイプの一例が示されている。ここには所定の装着溝を設けること、そして装着溝にはシ−ル材を付設し、この装着溝に装着する止水板には上記シ−ル材を圧縮する締付け手段たる固定ハンドルが設けられることが記載されている。
しかし、この文献1に記載の防水装置は、装着溝の設置が必須であり、また締付けの固定ハンドルも必須の要素となっており、更なる簡易化は期待できないもとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−278458号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、上述したことから明らかな様に、防水装置の設置に当って止水板を装着するための装着溝を出入口開口部に設備する必要がなく、開口部の適所に置くだけの簡単な操作によって止水し、建物等の施設内部への水の浸入を簡単に阻止できるようにした簡易型防水装置を提供することを目的とする。
ことに、本発明は、装着溝を使用しないことによってその構築費を不要にすると共に、この装着溝を設備しない既設の出入口に対しても特別の加工を要することなく直ちに利用実施できる簡易型防水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の目的を達成するため、水平板部とこの板部の後縁部から直角状に起立する止水板部とを一体に有する断面L字形の止水板と、この止水板を定位置に固定する少なくとも一対の固定錘と、から構成される簡易型の防水装置を提供するものである。
【0014】
更に詳述するならば、本発明は、出入口床面上に載置する水平板部の後縁部から止水板部を起立させて断面L字形に形成する止水板と、前記水平板部上に載置し、且つ後背部を前記止水板部の前面に当接して前記止水板を定位置に固定する少なくとも一対の固定錘とから構成される簡易型防水装置であって、前記止水板は、前記水平板部の下面に全幅に亘る弾性シ−ル材を付設し、また前記止水板部の背面両側部に縦向きにそれぞれ弾性シ−ル材を付設して、使用に当たっては前記出入口床面上の所定位置に前記止水板を仮置き設置して、その後、この止水板の前記水平板部の左右の側縁部上に前記対をなす固定錘をそれぞれ載置し、その重量で下面に付設する前記弾性シ−ル材を前記出入口床面上に圧迫密着させると同時に、この各固定錘のそれぞれの後背部を前記止水板部の左右の側縁部前面に押圧当接してその背面に付設する前記各弾性シ−ル材を出入口開口部の左右の側部前面に押圧密着させ、これにより該出入口開口部内への水の浸入を防止するようにした簡易型防水装置を提供することにある。
【0015】
上記止水板は、例えば所要の剛性を有する肉薄の金属板を素材にして水平板部と止水板部とを一体に形成する。この一体成形に当っては特に成形方法を特定されないが、最も簡単な方法として金属板を横長長方形状に切り出し、その上下方向の略中央部分で直角状に折り曲げ、これにより水平板部とこの板部の後縁部から直角に起立した状態で止水板部を一体に成形することができる。
【0016】
尚、この止水板は、防水する出入口の開口部幅に合せてその横幅が決定されることになる。例えば、開口部の間口が1200mmの場合には、この開口部の左右の側壁或いは左右の柱の前面部分を被うことができる幅、つまり上記柱の場合、その前面の幅が130mmあるとすれば、これを加えた略1460mm前後の幅に形成することになる。
【0017】
一方、止水板の水平板部の前後の幅は、出入口の床面上に載置したときに止水板部を起ち上げた状態、つまり自立することができる幅であり、また後述する固定錘をその上面に載置できる広さの幅が求められる。
また、止水板部については、防水するに当って実質的にこの止水板部が水を止めることになる為、その高さは止めようと想定する水位の高さを基準にして、想定水位を超える高さに設定されることになる。尚、本発明では、簡易型の防水装置であることを前提にして
標準的な高さとして350mm程度を想定している。
【0018】
他方、上記止水板を固定する一対の固定錘は、所定の位置に止水板を安定的に固定すると共に、この止水板に付設する弾性シ−ル材を押圧して圧縮し、止水効果を出すためのものであり、外からの水圧を受けて動かない重さ、つまり所要の重量を求める上から、また成形の容易さから金属製素材乃至コンクリ−ト素材が選択される。
この固定錘は、ブロック型に形成して止水板に載置する底面部を平滑面にして安定化を図る一方、後背部は上記底面部に対して略直角状を成すように形成して止水板部の前面に押圧当接できるように形成する。またブロック状にすることによって持ち運びに便利にしてある。
【0019】
止水板の水平板部と止水板部に付設される弾性シ−ル材は、固定錘によって圧迫されたとき、弾性反発力に抗して容易に変形し、床面や壁面との間に出来る細かな隙間を埋めることができる耐水性の素材、例えば、ゴム製乃至合成樹脂製のシ−ル材が適しており、所要の板厚を持った帯板状のものが適している。
尚、この弾性シ−ル材は、水平板部の下面にあってはその全幅に亘って、ことに後縁部に沿った部分に付設するのが止水効果を挙げる上で好ましく、また止水板部の左右側部の背面部に付設する弾性シ−ル材は、この背面部の縁に沿って全長に亘り付設することが求められる。ただ、この弾性シ−ル材は、下端部については止水板部の下端に一致させ、これに付設する弾性シ−ル材と連続させることが望まれるが、上端部については止水のため想定する水位の高さを超える高さであれば足りることになる。
【0020】
また本発明は、前記止水板の水平板部の下面に対して前記弾性シ−ル材を付設する前方側の適所に該水平板部の水平状態を維持する姿勢補助材を付設することを特徴とした簡易型防水装置を提供することにある。
上記姿勢補助材は、弾性シ−ル材の付設によって水平板部の底面部が傾きシ−ル材の止水効果が下がるのを補正するためのものであり、弾性シ−ル材と同種のものが適する。
【0021】
また本発明は、前記止水板の止水板部の前面に該止水板部を補強する補強用リブを横幅方向に1又は複数個一体に付設することを特徴とした簡易型防水装置を提供することにある。
この補強用リブは、肉薄の素材によって形成される止水板、ことに止水板部を水圧から守るためのもであり、主として中央部に、或いは上縁部に沿って横断する方向に付設することになる。
【0022】
また本発明は、前記固定錘の底面部の前方と後背部の上方にそれぞれ延長部を一体に設けて前記止水板の水平板部及び止水板部に対する各当接面積を拡張させてなることを特徴とした簡易型防水装置を提供することにある。
この固定錘は、止水板を固定するとき、水平板部及び止水板部をより安定的に押圧して各弾性シ−ル材を確実に圧縮出来ることが望まれることから、その本体部分を持ち運びしやすく小型化する一方、当接する面積が広くなることが望まれる。
【0023】
また本発明は、前記固定錘の上面中央部に後方を高くして前下がりに傾斜を付した取っ手を設けてなることを特徴とした簡易型防水装置を提供することにある。
この取っ手は、持ち運び移動に便利に使用するためと、固定錘を止水板に押し当てるために使用されるもので、止水板に対して定位置に簡単に載置できる利点がある。
【発明の効果】
【0024】
上記の構成から、本発明によれば、止水板とこの止水板を出入口開口部の所定位置に設置固定する固定錘とから構成される極めて単純、且つ簡単な構造に係ることから従来の同種装置に比較して実施が容易であり、また廉価に得られる利点がある。
ことに、この装置においては、止水板を装着する装着溝が要らないこと、つまり従来の装置の様に出入口開口部に予め装着溝を設備する必要が無いことから費用を節減できると同時に、既設の建物等の出入口に対して直接設置することが可能であることから、その利用実施の範囲を大幅に拡大できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る簡易型防水装置の使用状態を説明する斜視図。
【
図9】固定錘相互の位置関係を説明する拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面は、本発明に係る簡易型防水装置の一実施形態を表わしたものである。以下、この図面に基づき本発明を説明し、その特徴とするところを明らかにする。
図面において、符号1は本発明に係る簡易型防水装置の止水板であり、2は止水板1を定位置に固定するための固定錘である。
【0027】
止水板1は、肉薄の金属板を素材に形成してあり、ここでは横長長方形状に形成した板を上下の略中央部で直角状に折り曲げて水平板部1Aと止水板部1Bとが一体をなすように形成してある。
この止水板1は、
図1に示したように本装置を設置する建物等の出入口開口部3の開口幅に合せてその横幅が決定されるもので、ここでは出入口開口部3を形成する左右の柱4,4の前面4a,4a間に亘り、且つ止水板部1Bの両端部がこの前面4a,4aに接面する長さに形成される。
具体的な例として示せば、上記開口部3の幅が1200mmとして左右の柱4,4の前面の幅が各130mmとしたとき、止水板1の横幅は略1460mmに形成されることになる。
【0028】
一方、この止水板1の水平板部1Aは、前後の幅を止水板が自立できる幅であって、且つ後述するようにその上面に前記固定錘2を乗せられる広さの幅に形成される。上記例に合せれば、略200mmの幅に形成することになる。そして、止水板部1Bの高さについては、予想する増水時の水位を基準にしてこれを超える高さに形成することになり、上記の例に合せれば、350mm程の高さに形成される。
尚、止水板1の全体的な大きさは、上述した通り使用を想定した出入口開口部3の規模に合せて決定されることになる。また、この止水板1の強度、ことに水圧に対する強度についてはこの大きさを考慮して決定されることになるが、この時、軽量化を損なわないことが重要であり、これらは設計者の選択に委ねられることになる。
【0029】
この止水板の水平板部1Aと止水板部1Bにはそれぞれ弾性シ−ル材5及び6が付設される。この両弾性シ−ル材5,6は、止水板1を設置したとき止水板の外側を伝わって浸入する水を止めるものであり、適当な弾力性と柔軟性(撓み性)を備えたゴム製乃至合成樹脂製のシ−ル材が適している。更に言えば、図示するように所要の厚みを持った帯板状のシ−ル材が適している。
【0030】
図6に示した様に、水平板部1Aの下面に付設される弾性シ−ル材5は、後縁部に沿って全幅に亘り付設され、その前方の下面にはこの弾性シ−ル材5によって水平板部5が前下がりに傾くのを防止するための姿勢補助材7,8,9が付設配置されている。
上記姿勢補助材7〜9は、この実施例では弾性シ−ル材5,6と同種のものから作られており、適宜分散して配置されることによって平均した水平姿勢が作られるようにしてあり、併せて弾性シ−ル材5に対する固定錘2の重量が全体的に、且つ適切に負荷してこれを圧迫し圧縮できるようにしてある。
【0031】
一方、止水板部1Bの背面両側部に付設される弾性シ−ル材6,6は、縁に沿って縦に配置される。この弾性シ−ル材は、止水板部1Bの背面の両側からの水の浸入を止めるもであり、下端部は前記弾性シ−ル材5に達してこれと共同して止水できるようにしてあり、上端部は止水板部の上端に達するようにしてある。
【0032】
そして、この実施例では、止水板部1Bの前面部に横方向に上下2つの補強リブ10,11が形成してある。
この補強リブ10,11は、肉薄の金属板から形成される止水板部1Bの強度を補うものであり、ここでは断面半円弧状(角形状であっても良い)に形成した止水板と同種の金属板からなる形材を止水板部1Bの前面に一体に止着することによって形成してある。
図示する様に2つの補強リブ10,11は、止水板部の上縁部と、下端に近い高さの途中にそれぞれ一体的に設けている。
尚、この補強リブ10,11は、止水板の素材を変更することによって外すことができるが、例えば強度を出すために板厚を増すなどすると、重量が嵩み持ち運び移動に不便を生じることになるので、その選択には十分な配慮が求められる。
【0033】
前記固定錘2は、止水板1を安定的に押さえ付け固定するための固定手段であり、ここでは金属製のものにして、その主体部分を側面から見て直角三角形に形成し、所要の幅を持たせてその長方形をなす一面を底面部2aとし、またこれに直角に隣接する一面を後背部2bとしている。そして、この直角三角形を成す主体部には上記底面部2aを前方に延長してこの下面を拡張する延長部2cを設けると共に、同じく後背部2bを上方に延長してこの面を拡張する延長部2dを設けている。それと共に、この後背部2bには前記補強リブ11に対応する高さの途中にこれを受け入れる溝型の凹部2eを設けている。
【0034】
この固定錘2は、押し付け固定するのに十分な重量物となることから、ここでは前下がりに傾斜する上面部2fにコ字形の棒状の取っ手12が付けられている。
この取っ手12は、持ち運ぶためと、止水板1上に載置する際に固定錘2を水平板部1Aの上面を後方に滑らせてその後背部2bを止水板部1Bの前面に容易に押し付けられるようにするもので、上面部2fの中央部に縦向けに一体に固定してある。尚、止水板1に固定錘2を乗せる際、取っ手が前下がりに傾斜していることから、この傾斜を利用して後方に向けての押し付けが簡単に行えるようにもなっている。
【0035】
次に、上記本発明に係る簡易型止水装置の使用の実際について
図1に基づき説明することにする。
止水板1と固定錘2とは、平常時には建物等の出入口開口部3から離れた格納場所に格納保管され、出水の緊急時に持ち出されることになる。
設置に当たっては、最初に止水板1を開口部3の前面に臨ませて水平板部1Aをその床面13の上に置くと共に、止水板部1Bの背面を開口部3に寄せてその左右の側部の背面をそれぞれ前記左右の柱4,4の前面4a,4aに接面させ、これにより止水板1の仮置きを完了する。この設置位置は、定位置であり、常に止水板部1Bの背面が出入口開口部3の前面に寄り添って当接した状態となる。
【0036】
この止水板1の仮置きが行われたところで、次に、この止水板の水平板部1Aの左右の縁部の上に固定錘2,2をそれぞれ載置し、本防水装置の設置を完了することになる。
上記固定錘2,2の載置は、左右の縁部上面に沿って縦向き(前後方向)に置き、その後背部2bを止水板部1Bの前面に押し付ける形で行うことになる。
【0037】
固定錘2,2の載置を受けた止水板1は、その重量を受けて水平板部1Aの下面に付設した弾性シ−ル材5が圧迫され、床面13上に密着することになる。この時、同様に分散して配置した姿勢補助材7,8,9にも重量が作用して圧迫されることになる結果、止水板部1Aは水平を保って沈み込み、上記弾性シ−ル材5を全体に亘って均一に圧縮することになる。
一方、固定錘2,2による前方からの押し付けを受けた止水板部1Bは、それぞれの固定錘2,2によってその左右の背面に設ける弾性シ−ル材6,6を開口部3の左右の柱4,4の前面4a,4aに押し付けて圧接され、密着することで止水効果を発生させることになる。
【0038】
以上の通り、止水板1は、固定錘2,2を乗せることによって弾性シ−ル材5及び6,6をもって開口部3を構成する床面13と左右の柱4,4の前面4a,4aとを囲むことになり、それぞれと密着することによって止水し、開口部3内への水の浸入を阻止することになる。
【0039】
尚、図中14は、補助の固定錘であり、この錘は必要に応じて止水板1に載置される。 この補助固定錘14は、止水板1が横長に形成されて左右に載置する2個の固定錘2,2では十分に押さえ付けることができないとき等において、これを補助するために使用されるものであり、ここでは図示するように長方形の立法体形に形成して平滑な下面を水平板部1Aに乗せ、後背部を止水板部1Bの前面に当接して(尚、ここでは止水板部1Bの前面に設ける補強リブ11に当接させている。)前記固定錘2,2と同様に使われることになる。
【0040】
図示の実施例では、止水板1に等間隔を置いて3個の補助固定錘14が配置されているが、実際の取り扱いでは前述した通り止水板1の大きさや補助固定錘14自体の重量の大小によって配置する個数が決められることになる。
尚、この補助固定錘14は載置する数を任意選択できることから例えば略13Kg前後の重量に形成される固定錘2に対して、これに比較して軽量(例えば、5〜10Kgの重量)に形成されることになる。勿論、この重量は、設計者が自由に選択できるもであり、一つに限定されないことは言うまでもない。そして、この補助固定錘14にも持ち運びを考慮して取っ手15が付けられている。
【0041】
以上の説明で明らかな様に、本発明によれば建物等の出入口開口部3に止水板1を寄り添うように置いて、次に、この止水板1の左右の縁部の上に2個の固定錘2,2を載置すれば設置は完了し、この簡単な操作で開口部3に対する止水が完了することから特段の技術を要することなく極めて簡単な作業を通して使用することができることになる。
また、本発明に係る簡易型止水装置は、断面L字形に形成される止水板1と固定錘2によって構成され、止水板には水平板部1Aの底面と止水板部1Bの背面に弾性シ−ル材5及び6,6を付設するだけの簡単な構造に係ることから製造が簡単且つ容易であり、比較的に廉価に提供できる利点もある。
【0042】
更に、本来の目的である止水の効果については、止水板1に付設した各弾性シ−ル材5及び6,6が固定錘2,2の載置によって直ちに止水の効果を発揮できるものとなっていることから、確実に開口部3を止水することができることになる。
そして、ここでは従来の装置の様にハンドルやクレセント等の締め具を使って止水板を固定すると言った必要が無くなることから締付け操作の誤りによる水漏れを生じる問題も未然に解消することができる。
【0043】
更に言えば、本発明において有利な点は、止水板1自体を軽量に形成できることに併せて、薄板で形成される止水板1が所要の剛性を有する中で多少の撓み性を併せ持つことから止水効果を更に高められる利点があることである。つまり、この撓み性を併せ持つことによって固定錘2,2による押し付けの際に、これの受け手となる床面13や開口部3の前面に歪みがあってもこれを撓みによって吸収し、弾性シ−ル材5乃至6,6を柔軟に対応させて馴染ませることができるため、常に安定したより完全な止水効果を挙げられるものとなるのである。
【0044】
また、この撓み性は、止水板1の水平板部1Aと止水板部1Bとの接続部、つまり直角に折れ曲がる部分にも作用するため、この両板部1A,1Bのなす角度にも多少変化する余裕が生じ、これによって個々設置する床面13と柱の前面4aとの角度に多少の差が生じてもこれに対応し、安定した密着性が得られることになる。
【0045】
尚、前記実施例では、本発明に係る簡易型止水装置の止水板につき、所要の強度と剛性を有し、しかも軽量であることに着目して前記説明した様に金属製の薄板を素材にして形成すこととしたが、これらの特性と同等のものを備えるのであれば、素材の選択は自由である。例えば、合成樹脂を素材にしても特段問題は無い。
【0046】
また、実施例では、出入口開口部3を建物の出入口としたが、建物に付帯する地下へのエレべ−タの出入口等にも本発明の防水装置は有効に実施することができるものである。ことにこの場合、出入口の左右の壁、或いは柱の外側の面が比較的平滑に仕上げられていることが多いことから弾性シ−ル材との密着性が良く、従って良好な使用効果が得られるものともなる。
【符号の説明】
【0047】
1 止水板
1A 止水板の水平板部
1B 止水板の止水板部
2 固定錘
2a 固定錘の底面
2b 固定錘の後背部
2c,2d 固定錘の延長部
2e 固定錘の後背部に形成した凹部
2f 固定錘の上面
3 建物の出入口開口部
4 開口部を形成する左右の柱
4a 柱の前面
5,6 弾性シ−ル材
7,8,9 姿勢補助材
10,11 補強リブ
12 固定錘の取っ手
13 開口部の床面