(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491716
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】負圧湿式予作動スプリンクラー設備
(51)【国際特許分類】
A62C 37/40 20060101AFI20190318BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20190318BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
A62C37/40
A62C35/68
F16K37/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-168084(P2017-168084)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-42094(P2019-42094A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 徹
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−253002(JP,A)
【文献】
特開2011−045557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火水槽から送水ポンプを介して上方に立ち上がって配管された一次側配管と、
前記一次側配管に接続され、スプリンクラーヘッドまで配管された二次側配管と、
前記一次側配管と前記二次側配管との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置と、
火災を感知して火災信号を送出する火災感知器と、
前記二次側配管に一端側を接続すると共に、他端側を、真空ポンプから立ち上がって配管された吸気管と、下端が前記消火水槽まで垂下した排水管とに接続された吸引管と、
前記吸引管の途中部に設置された、前記二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁と、
前記吸引管の途中部における前記流量制御弁より前記二次側配管側の位置に設置された、前記二次側配管内の圧力を検出する真空スイッチと、
火災発生時に前記火災感知器からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤と、
前記信号受信盤からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置を開状態として前記一次側配管と前記二次側配管とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプを作動させる制御盤とからなり、
火災発生時以外のときには前記一次側配管と前記二次側配管のいずれにも水が充填されており、且つ前記二次側配管内を、前記吸引管及び前記吸気管を介して前記真空ポンプで負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、
前記吸引管の途中部に設置された流量制御弁として、
電磁弁に代えて、
二次側配管から吸引管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、
前記本体部は、シリンダ部と、該シリンダ部の一端側に装着されるカバー部とからなり、
前記シリンダ部は、その一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分の中心部に、流出口と、該流出口の内側に連成された該流出口より小径の開口を設けてなり、
前記カバー部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分の中心部に、前記流出口と同径の流入口を設けてなり、
前記ピストン部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部の内径と等しいフランジ部を形成し、閉塞部分の中心部に前記シリンダ部における閉塞部分の開口より小径の開口を設けると共に、円筒状部分に該開口より大径の開口を設けてなり、流入する水の圧力によって前記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分が前記シリンダ部の閉塞部分の内側面に密接するようになされた、電力不要の流量制御弁を用いてなることを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備。
【請求項2】
ピストン部におけるフランジ部の外周部に、前部が低い傾斜面を形成する一方、シリンダ部における前記ピストン部のフランジ部の傾斜面に対応する位置に孔を貫設し、該孔内に、下端部が前記ピストン部のフランジ部の傾斜面に摺接し、コイルバネをもって内方に移動するよう付勢された円柱状のインジケータを出没自在に挿入してなる請求項1記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備。
【請求項3】
シリンダ部に孔を貫設し、該孔内に、コイルバネをもって内方に移動するよう付勢された円柱状のインジケータを出没自在に挿入し、前記ピストン部が最前進位置まで移動したときの水の圧力により前記コイルバネの付勢力に抗して前記孔から突出するようになした請求項1記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における消火設備として、スプリンクラーヘッドの破損等が生じた場合に漏水を防止し、且つ火災発生時に速やかに放水する機能を有する、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備がある。
【0003】
図
12は斯かる負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。該図において100は負圧湿式予作動スプリンクラー設備である。
【0004】
101は消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管である。104は前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管である。
【0005】
106は前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置である。107は天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器である。
【0006】
108は前記二次側配管104に一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、真空ポンプ109から立ち上がって配管された吸気管110と、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管111とに接続された吸引管である。
【0007】
112は前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常時には少量の、異常時には多量の流通量とする流量制御弁である。また、該流量制御弁112は、図
13及び図
14に示すオリフィス付き自動弁であり、口径40Aの直動式電磁弁のものがある。そしてまた、その定格はDC24ボルト、1,580mAである。
【0008】
また、該流量制御弁112であるオリフィス付き自動弁は、図
13に示す如く、二次側配管104内の負圧の状態の正常時(緩慢な圧力上昇)には、入口側の開口112aから本体内に流入した水を含んだ空気は、矢標で示すようにオリフィス(小孔)112Aを通過することによって少量が出口側の開口112bに流れるようにされている。そしてまた、二次側配管104内の負圧の状態の異常時(圧力の急上昇)には、図
14に示す如く、通電によって電磁コイル112c及びプランジャ112dを介して弁体112eを上昇させ、開放された本来の流路112Bを通って多量が出口側の開口112bに流れるようにされているものである。
【0009】
また、図
12において113は前記吸引管108の途中部における前記流量制御弁112より二次側配管104側の位置に設置された、二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチである。
【0010】
114は火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤である。
【0011】
115は前記信号受信盤114からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプ103を作動させる制御盤である。尚、その他図中116は前記吸気管110の前記吸引管108への接続部分に設置した気水分離器、117は前記吸引管108の前記吸気管110と排水管111との接続部分に設置した逆止弁である。
【0012】
そして、火災発生時以外のときには一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管110を介して真空ポンプ109で負圧状態とするものである。
【0013】
また、火災発生時には、火災感知器107が火災を感知して火災信号を信号受信盤114に送信し、そして該信号受信盤114から該信号を制御盤115に送信する。該信号を受信した制御盤115は予作動式流水検知装置106を開状態とすると共に送水ポンプ103を作動させる。これによりスプリンクラーヘッド105から放水が連続して行われるものである。尚、斯かる際には、流量制御弁112であるオリフィス付き自動弁は、図
13に示す平常時の状態であって、真空ポンプ109の作動は停止される。
【0014】
従来における負圧湿式予作動スプリンクラー設備は上記の通りである。しかし、斯かる設備には二次側配管内の負圧の状態を適正に保持する構成において問題がある。それは、吸引管108の途中部に設置された流量制御弁112としてオリフィス付き自動弁を用いていることによるものである。
【0015】
而して、斯かるオリフィス付き自動弁は電磁弁であり、そして、斯かる電磁弁は、無通電時には閉止し、通電時に開放するなど制御方法がシンプルであるというメリットがある一方、消費電流が大きく、且つ弁体の開放中は通電し続けなければならず、大きな電源が必要となる。そして、上記の如く、従来の設備に用いられていたオリフィス付き自動弁は、口径40Aの直動式電磁弁のものがあり、そして、その定格はDC24ボルト、1,580mAであって、消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であった。
【0016】
また、従来用いられていた電磁弁は、上記の通り消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であることから、停電時における問題もある。即ち、停電時において、二次側配管の破損等で二次側配管内の圧力が急上昇する事態が起き、弁を開放させる必要が生じることがあるが、その場合に備えて容量の大きい蓄電池を設けるか、非常電源設備による給電を行うなどの対策が必要であった。しかし、容量の大きい蓄電池を設ける場合には、蓄電池自体の大きさだけでなく、それを収納する制御盤の大きさも大きくなり、コストも増えることになる。また、非常電源設備による給電を行う場合には、予め非常電源設備の設計の際に電源容量を見込む必要があり、設備のリニューアルに対応できない等の問題があった。また、電磁弁の場合には目視では現在弁が開放しているのか閉止しているのかが分らないという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力消費の大きい従来のオリフィス付き自動弁に
代えて電力不要の流量制御弁を用いることにより、上記従来の問題点を悉く解消することができるようになした負圧湿式予作動スプリンクラー設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
而して、本発明の要旨とするところは、消火水槽から送水ポンプを介して上方に立ち上がって配管された一次側配管と、
前記一次側配管に接続され、スプリンクラーヘッドまで配管された二次側配管と、
前記一次側配管と前記二次側配管との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置と、
火災を感知して火災信号を送出する火災感知器と、
前記二次側配管に一端側を接続すると共に、他端側を、真空ポンプから立ち上がって配管された吸気管と、下端が前記消火水槽まで垂下した排水管に接続された吸引管と、
前記吸引管の途中部に設置された、前記二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁と、
前記吸引管の途中部における前記流量制御弁より前記二次側配管側の位置に設置された、前記二次側配管内の圧力を検出する真空スイッチと、
火災発生時に前記火災感知器からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤と、
前記信号受信盤からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置を開状態として前記一次側配管と前記二次側配管とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプを作動させる制御盤とからなり、
火災発生時以外のときには前記一次側配管と前記二次側配管のいずれにも水が充填されており、且つ前記二次側配管内を、前記吸引管及び前記吸気管を介して前記真空ポンプで負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、
前記吸引管の途中部に設置された流量制御弁として、
電磁弁に代えて、
二次側配管から吸引管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、
前記本体部は、シリンダ部と、該シリンダ部の一端側に装着されるカバー部とからなり、
前記シリンダ部は、その一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分の中心部に、流出口と、該流出口の内側に連成された該流出口より小径の開口を設けてなり、
前記カバー部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分の中心部に、前記流出口と同径の流入口を設けてなり、
前記ピストン部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部の内径と等しいフランジ部を形成し、閉塞部分の中心部に前記シリンダ部における閉塞部分の開口より小径の開口を設けると共に、円筒状部分に該開口より大径の開口を設けてなり、流入する水の圧力によって前記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分が前記シリンダ部の
閉塞部分の内側面に密接するようになされた
、電力不要の流量制御弁を用いてなることを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備にある。
【0019】
また、上記構成において、ピストン部におけるフランジ部の外周部に、前部が低い傾斜面を形成する一方、シリンダ部における前記ピストン部のフランジ部の傾斜面に対応する位置に孔を貫設し、該孔内に、下端部が前記ピストン部のフランジ部の傾斜面に摺接し、コイルバネをもって内方に移動するよう付勢された円柱状のインジケータを出没自在に挿入するようになしてもよい。
【0020】
また、上記構成において、シリンダ部に孔を貫設し、該孔内に、コイルバネをもって内方に移動するよう付勢された円柱状のインジケータを出没自在に挿入し、前記ピストン部が最前進位置まで移動したときの水の圧力により前記コイルバネの付勢力に抗して前記孔から突出するようになしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記の如き構成であり、二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力消費の大きい従来のオリフィス付き自動弁に代えて電力不要の流量制御弁を用いるものであるから、従来の問題点を悉く解消することができるものである。また、非常電源設備からの給電を検討する必要もない。また、ピストン部の最前進位置への移動に伴いシリンダ部からインジケータが突出するようになした場合には、目視でピストン部の位置を確認することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
【
図2】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
【
図3】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の断面図であり、火災発生時の状態を示すものである。である。
【
図4】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の第1変形例の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
【
図6】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の第1変形例の断面図であり、火災発生時の状態を示すものである。
【
図8】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の第2変形例の断面図であり、平常時の状態を示すものである。
【
図10】
本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の第2変形例の断面図であり、火災発生時の状態を示すものである。
【
図12】
従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
【
図13】
従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備におけるオリフィス付き自動弁の作用説明図であり、二次側配管内の圧力の緩慢な上昇時の状態を示すものである。
【
図14】
従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備におけるオリフィス付き自動弁の作用説明図であり、二次側配管内の圧力の急上昇時の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′の概略構成図である。尚、吸引管の途中部に設置された、二次側配管内の圧力の状態を適正に保持する流量制御弁の点のみが異なり、その他の構成は図12に示した従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
而して、本実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′は、吸引管108の途中部に設置された、二次側配管104内の圧力の適正保持用の流量制御弁として電力不要の流量制御弁1を用いることにおいて前記従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備100と相違するものである。
【0026】
また、斯かる電力不要の流量制御弁1は、図2に示す如く、二次側配管104から吸引管108に流入する空気と水が通過する本体部2と、該本体部2内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部9と、該ピストン部9を後退移動方向に付勢するコイルバネ13とによって構成される。
【0027】
また、前記本体部2は、シリンダ部2Aと、該シリンダ2Aの一端側に装着されるカバー部2Bとからなる。
【0028】
前記シリンダ部2Aは、その一端部(図2における右端部)が閉塞された円筒状に形成されており、閉塞部分2A′の中心部には、流出口3と、該流出口3の内側に連成された該流出口3より小径の円形の開口4を設けている。また、該流出口3は、逆止弁117の流入側に接続され、続いて逆止弁117の流出側は、吸引管108と排水管111の接合部108Bに接続される。
【0029】
また、前記シリンダ部2Aの他端側の外周面には雄ネジ5が刻設され、これに対応して内周面に雌ネジ6が刻設されたカバー部2Bを螺合装着するようになされている。
【0030】
また、前記カバー部2Bは、一端部(図2における左端部)が閉塞された円筒状に形成されており、閉塞部分2B′の中心部には、前記流出口3と同径の流入口7が形成されている。
【0031】
また、前記シリンダ部2Aの他端側の端面と前記カバー部2Bの閉塞部分2B′との間にはOリング8が介装され、シリンダ部2Aとカバー部2Bとの間の水密性が保たれている。
【0032】
また、前記ピストン部9は、前記シリンダ部2Aの内部に水の圧力により前進移動可能に設けられている。また、該ピストン部9は円筒状であって、一端部(図2における右端部)が閉塞9′されており、他端部(図2における左端部)にはフランジ部10が形成されている。
【0033】
該フランジ部10は、その外径がシリンダ部2Aの内径と略等しく設定され、該フランジ部10の外周面がシリンダ部2Aの内周面に沿って移動することで、ピストン部9の中心線方向に沿った進退移動をガイドしている。
【0034】
また、前記ピストン部9の閉塞部分9′の中心部には、前記シリンダ部2Aの開口4より小さい円形の開口11が形成されると共に、ピストン部9の円筒状部分には、該開口11より大径の開口12が形成されている。
【0035】
また、ピストン部9は、シリンダ部2A内において、互いに中心線が同一軸上になるように配設され、且つピストン部9はその中心線方向に沿って進退移動自在とされている。そして、ピストン部9は最前進位置まで移動(図3)することにより、その閉塞部分9′がシリンダ部2Aの閉塞部分2A′の内側面に密接することが可能となっている。
【0036】
このとき、シリンダ部2Aの開口4とピストン部9の小径の開口11とは互いに重合した状態となる。また一方、ピストン部9の円筒状部分に形成された大径の開口12は、ピストン部9の閉塞部分9′とシリンダ部2Aの閉塞部分2A′の内側面の密接により流路が閉塞された状態となる。
【0037】
つまり、ピストン部9は、最前進位置に位置していないとき(図2)には、該ピストン部9内に流入した空気と水を小径の開口11と大径の開口12とに通過させることができ、最前進位置に位置するとき(図3)には、該ピストン部9内に流入した水をピストン部9の小径の開口11にのみ通過させることができる。
【0038】
尚、ピストン部9に形成された小径の開口11と大径の開口12の全開口面積はシリンダ部2Aの開口4の開口面積より小さく設定されている。
【0039】
また、前記コイルバネ13は、前記シリンダ部2A内において、ピストン部9を挿入させた状態でそのフランジ部10に当接し、該ピストン部9を流入口7側に押圧付勢している。したがって、流入口7から水が流入し、その圧力が該コイルバネ13の付勢力を超えている状態でピストン部9は前進移動が行われることになる。
【0040】
そして、該コイルバネ13の弾発力(バネ定数)は、火災発生時において二次側配管104内に一次側配管101から水が供給され、該水の一部が吸引管108内に流入したときの圧力によってのみ縮小する程度であることを要する。
【0041】
次に、上記流量制御弁の作用について説明する。
火災発生時以外のときにおける二次側配管の温度変化による体積膨張や流量制御管等からの微少な空気流入等による緩慢な圧力上昇があるときは、図2に示す如く、ピストン部9は後退位置にあり、カバー部2Bの流入口7から流入した空気と水は、ピストン部9の小径の開口11と大径の開口12を通って合流し、シリンダ部2Aの開口4と流出口3から流出する。
【0042】
また、スプリンクラーヘッド等が破損して二次側配管内の圧力が急速に上昇したときには、ピストン部9は図2と同じ後退位置にあって、真空ポンプ109が作動する。そして、この吸引によって漏水が防止される。尚、その際において真空ポンプ109の吸引力はコイルバネ13の弾発力より低いためピストン部9は移動しない。
【0043】
また、火災発生時において一次側配管101から二次側配管104に水が供給され、その水の一部が吸引管108内に流入すると、図3に示す如く、その水の圧力によってコイルバネ13の付勢力に抗してピストン部9が最前進位置まで移動し、その閉塞部分9′がシリンダ部2Aの閉塞部分2A′の内側面に密接する。また、このときにおいては真空ポンプ109は作動しない。そして、これにより水はピストン部9の小径の開口11を通じて少量しか流れず、スプリンクラーヘッド105からの充分な放水が確保される。尚、ピストン部9の小径の開口11から引き続き水が流出するが、該開口11の径は小さいことから流出の影響は少ない。
【0044】
そして、消火完了後、予作動式流水検知装置106が閉止すると、ピストン部9の小径の開口11から水が流出することで二次側配管104内の圧力が減少し、ピストン部9はコイルバネ13によって再び後退位置に戻される。
【0045】
以上の如く、本実施形態に係る流量制御弁1は、電力を要することなく作動するものである。
【0046】
次に、図4乃至図7に示す流量制御弁1の第1変形例について説明する。
【0047】
斯かる第1変形例は、ピストン部の位置を外部から確認することができるようにしたものであり、インジケータの部分を除いてその他の構成は上記実施形態における流量制御弁と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
而して、該第1変形例は、ピストン部9におけるフランジ部10の外周部に、前部が低い傾斜面10Aを形成する一方、シリンダ部2Aにおける前記ピストン部9のフランジ部10の傾斜面10Aに対応する位置に孔2A″を貫設し、該孔2A″内に、下端部が前記ピストン部9のフランジ部10の傾斜面10Aに摺接し、コイルバネ14をもって内方に移動するよう付勢された円柱状のインジケータ15を出没自在に挿入してなるものである。尚、インジケータ15とシリンダ部2Aの孔2A″との間にはOリング16が介装され、インジケータ15とシリンダ部2Aとの間の水密性が保たれている。また、シリンダ部2Aの孔2A″の開口端には、インジケータ15を摺動自在に嵌合した環状バネ受け17が取着されている。
【0049】
該第1変形例においては、図4及び図5に示す如く、ピストン部9が後退位置にあるときにおいてはインジケータ15の上端部はシリンダ部2Aの孔2A″内に没入しており、また、図6及び図7に示す如く、ピストン部9が最前進位置に移動したときには、インジケータ15がピストン部9のフランジ部10の傾斜面10Aによって突き上げられ、その上端部がシリンダ部2Aの孔2A″から突出するものである。
【0050】
次に、図8乃至図11に示す流量制御弁1の第2変形例について説明する。
【0051】
斯かる第2変形例は、前記第1変形例と同じくピストン部の位置を外部から確認することができるようにしたものであり、インジケータの部分を除いてその他の構成は上記実施形態における流量制御弁と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
而して、該第2変形例は、シリンダ部2Aに孔2A″を貫設し、該孔2A″内に、コイルバネ18をもって内方に移動するよう付勢された円柱状のインジケータ19を出没自在に挿入し、前記ピストン部9が最前進位置まで移動したときの水の圧力により前記コイルバネ18の付勢力に抗して前記孔2A″から突出するようになしたものである。尚、インジケータ19とシリンダ部2Aの孔2A″との間にはOリング20が介装され、インジケータ19とシリンダ部2Aとの間の水密性が保たれている。また、シリンダ部2Aの孔2A″の開口端には、インジケータ19を摺動自在に嵌合した環状バネ受け21が取着されている。
【0053】
該第2変形例においては、図8及び図9に示す如く、ピストン部9が後退位置にあるときにおいてはインジケータ19の上端部はシリンダ部2Aの孔2A″内に没入しており、また、図10及び図11に示す如く、ピストン部9が最前進位置に移動したときには、インジケータ19が流入した水の圧力によって押し上げられ、その上端部がシリンダ部2Aの孔2A″から突出するものである。
【符号の説明】
【0054】
1 流量制御弁
2 本体部
2A シリンダ部
2A′ 閉塞部分
2A″ 孔
2B カバー部
3 流出口
4 開口
7 流入口
9 ピストン部
9′ 閉塞部分
10 フランジ部
10A 傾斜面
11 小径の開口
12 大径の開口
13 コイルバネ
14 コイルバネ
15 インジケータ
18 コイルバネ
19 インジケータ
100′ 負圧湿式予作動スプリンクラー設備
100 負圧湿式予作動スプリンクラー設備
101 一次側配管
102 消火水槽
103 送水ポンプ
104 二次側配管
105 スプリンクラーヘッド
106 予作動式流水検知装置
107 火災感知器
108 吸引管
109 真空ポンプ
110 吸気管
111 排水管
113 真空スイッチ
114 信号受信盤
115 制御盤