特許第6491766号(P6491766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 八千代工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000002
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000003
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000004
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000005
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000006
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000007
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000008
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000009
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000010
  • 特許6491766-サンシェード装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491766
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】サンシェード装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/00 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   B60J7/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-561554(P2017-561554)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2016087314
(87)【国際公開番号】WO2017122487
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-5588(P2016-5588)
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上岡 宏崇
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−6983(JP,A)
【文献】 実開昭62−149422(JP,U)
【文献】 実開平3−28918(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/00
3/02
7/00− 7/047
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を開閉すべくスライド可能に設けられ、前記開口の後方で上下方向に互いに重なり合って前記開口を開放する収納状態、及び前後方向に並んで前記開口を閉塞する展開状態をとり得る複数のボードと、
前記展開状態で前後に並ぶボードのうち後方のボードの前部に設けられる被係合部と、
前記展開状態で前後に並ぶボードのうち前方のボードの後部に設けられ、前記収納状態から前記展開状態に移行する時に後方のボードの前記被係合部に係合する一方、前記展開状態から前記収納状態に移行する時に後方のボードの前記被係合部から離脱する係合部と、
各ボードの前部に設けられる前スライダと、
各ボードの後部に設けられる後スライダと、
前後方向に延在し、前記前スライダ及び前記後スライダをガイドするガイド溝と、
前記ガイド溝に接続し、前記収納状態において複数の前記前スライダを上下方向に互いに重なり合うように収容する前スライダ収容部と、
前記ガイド溝に接続し、前記収納状態において複数の前記後スライダを上下方向に互いに重なり合うように収容する後スライダ収容部と
を備え、
前記ガイド溝が、前記前スライダ収容部との接続部に、前記前スライダ収容部側に突の湾曲部を有することを特徴とするサンシェード装置。
【請求項2】
前記ガイド溝が、前記湾曲部よりも後方において後方に向けて前記後スライダ収容部側に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載のサンシェード装置。
【請求項3】
前記前スライダ収容部が、前記湾曲部の頂部から上下方向に延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサンシェード装置。
【請求項4】
前記後スライダ収容部が、前記傾斜部の後端から上下方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載のサンシェード装置。
【請求項5】
前記湾曲部における前記前スライダ収容部との接続部の前方にて前記ガイド溝に突出する突出位置と前記ガイド溝から退避する退避位置との間を移動可能に設けられ、前記突出位置にある時に前記前スライダ収容部に収容された前記前スライダの前方への移動を規制する規制部材を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のサンシェード装置。
【請求項6】
前記規制部材を前記突出位置側へ付勢する付勢部材と、
前方へスライドする前記後スライダが前記湾曲部を乗り越える際に、当該後スライダにより駆動されて前記規制部材を前記退避位置側へ移動させる駆動部材と
を更に備えることを特徴とする請求項5に記載のサンシェード装置。
【請求項7】
前記被係合部が前記前スライダの下面に設けられ、前記係合部が前記後スライダの上面に設けられ、前記係合部が前記被係合部に係合している状態では前記前スライダと前記後スライダとが一体となって前記ガイド溝に受容されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のサンシェード装置。
【請求項8】
展開状態で最も前方に設けられるボードに結合された動力伝達部材を介して当該ボードを前後方向に駆動する駆動源を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のサンシェード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等のルーフに形成された開口を、スライド可能に設けられた複数のボードによって開閉する多板サンシェード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
採光のためのサンルーフを備えた車両では、直射日光がサンルーフから直接車室内へ射し込むことを防ぐためにサンシェード装置を備えるものがある。このようなサンシェード装置として、複数の矩形のボード(サンシェードパネル)を車両前後方向にスライド可能に設け、最前方に位置するサンシェードパネルに駆動源を連結して各サンシェードパネルを連動させることにより車両のルーフの内開口部を開閉する多板サンシェード装置がある(例えば、本出願人による特許文献1参照)。
【0003】
多板サンシェード装置では、開口を開放する収納状態においては複数のボードが開口の一方(例えば、車両後方)で上下方向に互いに重なり合い、開口を閉塞する展開状態においては互いに連結しながら前方へ移動した複数のボードが前後方向に並ぶように設けられる。そのため、収納状態から展開状態に移行する閉動作時には、前方のボードが後方のボードに係合し、展開状態から収納状態に移行する開動作時には、前方のボードが後方のボードとの係合を解除するように、両ボードを係脱自在に連結させる必要がある。
【0004】
特許文献1に記載のサンシェード装置では、ボードの左右縁部に支持ブラケットが前後方向に延設され、支持ブラケットの後端部に水平状に突設されたカムピンと、支持ブラケットの基体の前端部の内側側面に後ろ斜め下方へ延設されて下端が後方に向けて開口するように形成されたカム溝とから構成される連結機構が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−6983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のサンシェード装置では、開閉動作時に、収容位置にある後方のボードの下面(正確には支持ブラケットの下面)に前方のボードの上面(正確には支持ブラケットの上面)が摺接する状態で、前方のボードが後方のボードの下方をスライドする。そのため、後方のボードの支持ブラケットの下面に半円形状の摺接部が突設され、ボード間にクリアランスが設けられることによって摺接部以外でのボード同士の摺接防止が図られている。ところが、このような構成では、上下方向に重なる収納状態においても上下に隣接するボード間にクリアランスが生じ、収納状態のボードの高さが大きくなる。この問題は、ボード収容部の面積を小さくするために1枚のボード寸法を小さくしてボード枚数を増やすほど顕著になる。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、ボード同士の摺接を抑制しつつ、収納状態のボード高さを小さくすることができるサンシェード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明に係るサンシェード装置(10)は、開口(4)を開閉すべくスライド可能に設けられ、前記開口の後方で上下方向に互いに重なり合って前記開口を開放する収納状態、及び前後方向に並んで前記開口を閉塞する展開状態をとり得る複数のボード(11)と、前記展開状態で前後に並ぶボードのうち後方のボードの前部に設けられる被係合部(36)と、前記展開状態で前後に並ぶボードのうち前方のボードの後部に設けられ、前記収納状態から前記展開状態に移行する時に後方のボードの前記被係合部に係合する一方、前記展開状態から前記収納状態に移行する時に後方のボードの前記被係合部から離脱する係合部(46)と、各ボードの前部に設けられる前スライダ(32)と、各ボードの後部に設けられる後スライダ(42)と、前後方向に延在し、前記前スライダ及び前記後スライダをガイドするガイド溝(52B)と、前記ガイド溝に接続し、前記収納状態において複数の前記前スライダを上下方向に互いに重なり合うように収容する前スライダ収容部(61)と、前記ガイド溝に接続し、前記収納状態において複数の前記後スライダを上下方向に互いに重なり合うように収容する後スライダ収容部(62)とを備え、前記ガイド溝が、前記前スライダ収容部との接続部に、前記前スライダ収容部側に突の湾曲部(63)を有する構成とする。
【0009】
この構成によれば、開閉動作時に、収容位置にある後方のボードの前スライダが湾曲部に接続する前スライダ収容部にある状態で、前方のボードの後スライダがガイド溝の湾曲部以外の部分をスライドする。そのため、後方のボードと重なる位置を前方のボードがスライドする際には、両ボード間にクリアランスが形成され、両ボードの摺接が抑制される。一方、収納状態では、前方のボード或いはその前スライダ及び後スライダが後方のボード或いはその前スライダ及び後スライダに接触した状態となり得る。そのため、両ボードのクリアランスがスライド時のクリアランスに比べて小さくなり、収納状態のボード高さが小さくなる。
【0010】
また、上記の発明において、前記ガイド溝(52)が、前記湾曲部(63)よりも後方において後方に向けて前記後スライダ収容部側に傾斜する傾斜部(64)を有する構成とするとよい。
【0011】
この構成によれば、ボードが前方に移動する際には、後スライダが傾斜部を通過することで、移動する前方のボードの後部が、収納位置にある後方のボードの後部との間にクリアランスを形成する。一方、ボードが後方に移動する際には、後スライダが傾斜部を通過することで、移動する前方のボードの後部が、収納位置にある後方のボードの後部とのクリアランスを小さくする。このように、ボードの後部同士の摺接を抑制しつつ、収納状態のボードの高さを小さくする構成が簡単に実現できる。
【0012】
また、上記の発明において、前記前スライダ収容部(61)が、前記湾曲部(63)の頂部(63b)から上下方向に延びている構成とするとよい。
【0013】
この構成によれば、後方のボードに重なった状態で前方のボードがスライドする際のクリアランスを最も大きくすることができる。
【0014】
また、上記の発明において、前記後スライダ収容部(62)が、前記傾斜部(64)の後端から上下方向に延びている構成とするとよい。
【0015】
この構成によれば、後方のボードに重なっている前方のボードが、収納状態の位置から前方へ移動する瞬間から両ボードの後部間のクリアランスを大きくすることができる。また、ボードが後方へ移動する際には、前方のボードの後スライダがガイド溝の傾斜部を後方へ移動する際に後方のボードの後スライダが後スライダ収容部の奥へ押し込む。つまり、前方のボードを後方のボードに重ね合わせて収納状態にする構成を簡単に実現できる。
【0016】
また、上記の発明において、前記湾曲部(63)における前記前スライダ収容部(61)との接続部の前方にて前記ガイド溝(52)に突出する突出位置と前記ガイド溝から退避する退避位置との間を移動可能に設けられ、前記突出位置にある時に前記前スライダ収容部に収容された前記前スライダ(30)の前方への移動を規制する規制部材(74)を更に備える構成とするとよい。
【0017】
この構成によれば、前方のボードが後方のボードに重なる位置を移動している時に、収納位置にある後方のボードの前スライダが前方へ移動することを規制部材によって規制することができる。
【0018】
また、上記の発明において、前記規制部材(74)を前記突出位置側へ付勢する付勢部材(73)と、前方へスライドする前記後スライダ(40)が前記湾曲部(63)を乗り越える際に、当該後スライダにより駆動されて前記規制部材を前記退避位置側へ移動させる駆動部材(75)とを更に備える構成とするとよい。
【0019】
この構成によれば、前方へスライドする後スライダの動作を利用した駆動部材によって規制部材を退避位置に移動させることを、追加駆動源を要することなく、簡単な構成で実現できる。
【0020】
また、上記の発明において、前記被係合部が前記前スライダの下面に設けられ、前記係合部が前記後スライダの上面に設けられ、前記係合部が前記被係合部に係合している状態では前記前スライダと前記後スライダとが一体となって前記ガイド溝に受容される構成とするとよい。
【0021】
この構成によれば、被係合部が前スライダと一体に構成され、係合部が後スライダと一体に構成されるため、部品構成を簡素化できる。また、互いに係合した前スライダと後部スライダとが一体となってガイド溝に受容されるため、衝撃等によって両者の係合が解除されることを抑制できる。
【0022】
また、上記の発明において、展開状態で最も前方に設けられるボードに結合された動力伝達部材を介して当該ボードを前後方向に駆動する駆動源を更に備える構成とするとよい。
【0023】
この構成によれば、簡単な構成でサンシェード装置を電動化できる。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明によれば、ボード同士の摺接を抑制しつつ、収納状態のボード高さを小さくできるサンシェード装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係るサンシェード装置が適用された車両の屋根の平面図
図2】ボード展開状態(閉状態)のサンシェード装置の斜視図
図3】ボード収納状態(開状態)のサンシェード装置の斜視図
図4】サンシェード装置の部分分解斜視図
図5図4の要部拡大斜視図
図6】ボード収納状態のサンシェード装置の後部透視側面図
図7図6中のVII−VII断面
図8】ボード展開状態のサンシェード装置の後部断面図(図1中のVIII−VIII断面)
図9】サンシェード装置の作動要領の説明図
図10】サンシェード装置の作動要領の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るサンシェード装置10の好適な実施形態について説明する。
【0027】
図1はサンシェード装置10が適用された車両1(自動車)の屋根の平面図である。車両1のルーフ外板2には、仮想線にて示される矩形状の開口(以下、外開口3という)が形成されている。外開口3はガラスパネルによって塞がれる。車室側の天井は、ルーフ外板2の下方に配置される内装板によって構成される。内装板にも、外開口3の下方に外開口3よりも小さな仮想線にて示される矩形状の開口(以下、内開口4)が形成されている。ルーフ外板2と内装板との間には、内開口4を複数(本実施形態では10枚)のボード11(サンシェードパネル)によって開閉することにより、外開口3からの採光及び遮光を切り替える多板式のサンシェード装置10が取り付けられる。
【0028】
図2は内開口4を閉じた状態(全てのボード11を展開させた状態)のサンシェード装置10の斜視図であり、図3は内開口4を開けた状態(全てのボード11を収納した状態)のサンシェード装置10の斜視図である。図1図3に示されるように、サンシェード装置10は、前後方向に延在する左右1対のガイドフレーム12を有している。ガイドフレーム12は、内開口4の左右の側縁よりも外方の車室側から見えない位置に内開口4の側縁に沿って配置される。左右のガイドフレーム12の前端は、内開口4の前縁よりも前方に配置されたフロントフレーム13によって互いに連結されている。ガイドフレーム12の後部は、内開口4の後縁よりも後方に配置されたリヤフレーム14によって互いに連結されている。ガイドフレーム12の後端は、リヤフレーム14よりも更に後方へ延出しており、内開口4を開放した開状態で複数のボード11を上下方向に重ねた状態で内開口4の後方の収納位置に収納できるようになっている。
【0029】
全てのボード11はガイドフレーム12に沿って前後にスライド可能とされている。各ボード11は、樹脂製のボード本体部15を備えている。ボード本体部15の下面には、内装板に合わせた生地16がボード本体部15の前縁及び後縁を包むように貼付されている(図5参照)。図2に示される展開状態では、全てのボード11が前後方向に並べられる。ボード11の前端にはボード11の厚さ分だけ上方に偏倚した重なり部11aが設けられている。前後に互いに隣接する2枚のボード11は、前方のボード11の後端に後方のボード11の重なり部11aが上方に重なった状態で並ぶことにより、両者の間から光漏れが生じないようになっている。
【0030】
一方、図3に示される収納状態では、全てのボード11が上下方向に互いに重なり合っている。本実施形態では、展開状態で最も前に位置するボード11(以下、最前方のボード11という)は、収納状態では最も下に位置し、展開状態で最も後ろに位置するボード11(以下、最後方のボード11という)は、収納状態では最も上に位置する。なお、「互いに重なり合う」とは、上下方向に互いに隣接する2枚のボード11同士が重なり合っていることを意味し、必ずしも最も下に位置する最前方のボード11と最も上に位置する最後方のボード11とが平面視で重なることを意味するものではない。但し、本実施形態では、収納状態において最前方のボード11と最後方のボード11が平面視で重なるように収納されており、これにより収納スペースの前後寸法の縮小が図られている。
【0031】
本実施形態では、サンシェード装置10が電動とされている。ボード11を開閉駆動するための駆動源20は、複数のボード11の後方に配置されている。駆動源20は、電気モータと減速機構とによって構成される。駆動源20は、ドライブパイプ21及びアイドルパイプ22を介して左右のガイドフレーム12に連結されている。なお、サンシェード装置10は手動であってもよい。
【0032】
図4は、サンシェード装置10の一部を分解して示す斜視図であり、図5はその要部を拡大して示す斜視図である。図4及び図5に示されるように、左右のドライブパイプ21の内部には、前端が最前方のボード11に結合されたプッシュプルケーブル23が軸方向に移動可能に収容されている。駆動源20は、左右のプッシュプルケーブル23を同時に押し引き(前方への送り出し及び後方への引き戻し)することにより、最前方のボード11をガイドフレーム12に沿って前後にスライドさせる。本実施形態では、駆動源20の動力を伝達する動力伝達部材としてプッシュプルケーブル23が用いられているが、ラックベルトやワイヤケーブル等が用いられてもよい。
【0033】
駆動源20がプッシュプルケーブル23を送り出し、収納状態にある最前方のボード11を前方へスライドさせて複数のボード11を展開する開動作時には、上下方向に互いに隣接する2枚のボード11は、連結機構によって互いに連結される。一方、駆動源20がプッシュプルケーブル23を引き戻し、展開状態にある最前方のボード11を後方へスライドさせて複数のボード11を収納する閉動作時には、前後方向に互いに隣接する2枚のボード11は、後方のボード11が収納位置に至るまでは連結機構によって連結を維持され、後方のボード11が収納位置に至ると連結機構による連結を解除され、上下方向に重なることが可能になる。連結機構の詳細については後述する。
【0034】
ボード11の前部には、左右の前スライダ30(第1前スライダ30A、第2前スライダ30B)が側方へ突出するように設けられている。ボード11の後部には、左右の後スライダ40(第1後スライダ40A、第2後スライダ40B)が側方へ突出するように設けられている。前スライダ30及び後スライダ40は、ガイドフレーム12によって前後方向に摺動可能に保持される部分であり、本実施形態ではボード本体部15と別部材として樹脂により形成され、ボード本体部15に取り付けられており、全てのボード11のボード本体部15が同一形状及び同一寸法とされている。他の実施形態では、前スライダ30及び後スライダ40がボード本体部15に一体に形成されてもよい。プッシュプルケーブル23は、最前方のボード11の前スライダ30に結合される。
【0035】
左右のガイドフレーム12の後部には、互いに重なり合う収納位置にある複数のボード11のがたつきを抑制するため、ボード11を下方へ付勢して保持するボード保持具17が取り付けられている。ボード保持具17は、本実施形態では、前後方向に延びる軸線回りに回動可能に設けられたアーム部材18をねじりコイルばね19によって下方へ付勢する構成とされている。アーム部材18は、収納位置にある最後方(最も上)のボード11の上面に当接する。
【0036】
図6は、収納状態のサンシェード装置10の後部を透視して示す側面図であり、図7図6中のVII−VII断面図である。図6及び図7に示されるように、ガイドフレーム12は、ルーフ外板2に固定されるフレームベース51と、フレームベース51の車幅方向内側に一体に形成され、内方に向けて開口するガイド溝52を画定する断面コ字状のガイドレール53とを有している。ガイドレール53は、車幅方向の内側に上下寸法が比較的大きい内側ガイド溝52Aを画定し、車幅方向の外側に上下寸法が比較的小さい外側ガイド溝52Bを画定している。
【0037】
フレームベース51の上部には、プッシュプルケーブル23用のケーブル挿通孔54をガイド溝52よりも上方に画定するケーブルガイド部55が設けられている。ケーブル挿通孔54は内方に向けて開口しており、ケーブル挿通孔54の内方には、内向きに開口するケーブルガイド溝56をガイド溝52の上方に画定するケーブルガイドレール57がフレームベース51に一体に設けられている。ガイドフレーム12は、一定の断面形状を有しており、アルミ合金等の押し出し成形品により構成することができる。
【0038】
図5及び図7に示されるように、最前方のボード11の前スライダ30(以下、第1前スライダ30Aと称する)には、前方へ延出した後に上方へ延出する延出部分33が一体に形成されている。延出部分33には、プッシュプルケーブル23の前端を保持するケーブル保持具34が結合されている。ケーブル保持具34と延出部分33とを連結する部分は、ケーブルガイドレール57により摺動可能に保持されるケーブルスライダ35となっている。
【0039】
第1前スライダ30Aは、内側ガイド溝52Aに受容されてガイドレール53によりガイドされる第1前スライダ基部31Aと、第1前スライダ基部31Aから外方へ突出し、外側ガイド溝52Bに受容されてガイドレール53によりガイドされる第1前スライダ端部32Aとを有している。図6に示されるように、第1前スライダ端部32Aは、上方に向けて後方に傾斜した前面及び後面を有する概ね平行四辺形の側面視形状とされている。
【0040】
図5及び図6に示されるように、前から2番目から最後方のボード11の前スライダ30(以下、第2前スライダ30Bと称する)も、第1前スライダ30Aと同様に、内側ガイド溝52Aに受容される第2前スライダ基部31Bと、外側ガイド溝52Bに受容される第2前スライダ端部32Bとを有している。一方、第2前スライダ端部32Bの形状は第1前スライダ端部32Aと異なっている。即ち、第2前スライダ端部32Bは、上方に向けて後方に傾斜する前面を有する第1前スライダ端部32Aの前側上部に対応する形状とされ、第1前スライダ端部32Aよりも低い高さとされている。第2前スライダ端部32Bの後面は概ね鉛直とされ、第2前スライダ端部32Bの下面には係合凹部36が形成されている。係合凹部36は、概ね鉛直の前面と、上方に向けて前方に傾斜した傾斜後面とを有している。
【0041】
本実施形態では、係合凹部36の前面下部は、下方に向けて前方に傾斜する傾斜前面36aとなっている。傾斜前面36aは、第2前スライダ端部32Bの前面と平行になっている。図6に示されるように、収納状態において、上方に収納される後方のボード11の第2前スライダ端部32Bの傾斜前面36aが形成された部分には、下方に収納される前方のボード11の第2前スライダ端部32Bの上部が入り込む。これにより、第2前スライダ端部32Bの上下寸法がボード11の厚さよりも大きくても、収納状態において上下に重なる第2前スライダ端部32Bの1つが占める上下寸法が小さくなり、収納状態におけるボード11間のクリアランスが小さくなるため、上下に重なるボード11の全体の高さが小さくなる。また、収納状態において下方に収納された前方のボード11が前方へスライドするスライド初期に、上方に収納された後方のボード11が上方へ押し上げられてボード11間の間隔が大きくなるため、ボード11の前部の摺接が抑制される。
【0042】
図5及び図6に示されるように、最後方のボード11の後スライダ40(以下、第1後スライダ40Aという)は、後ろから2番目から最前方のボード11の後スライダ40(以下、第2後スライダ40Bという)と同一の形状とされている。全てのボード11の後スライダ40は、内側ガイド溝52Aに受容される後スライダ基部41(第1後スライダ基部41A及び第2後スライダ基部41B)と、後スライダ基部41から外方へ突出し、外側ガイド溝52Bに受容される後スライダ端部42(第1後スライダ端部42A及び第2後スライダ端部42B)とを有している。後スライダ端部42は、上方に向けて後方に傾斜する後面を有する第1前スライダ端部32Aの後側下部に対応する形状とされ、第1前スライダ端部32Aよりも低い高さとされている。後スライダ端部42の前面は概ね鉛直とされ、後スライダ端部42の上面前側には、係合凹部36と相補完形状をなす係合凸部46が形成されている。係合凸部46は、概ね鉛直の前面と、上方に向けて前方に傾斜した傾斜後面とを有している。最後方のボード11の第1後スライダ端部42Aは、係合凸部46を有している必要はなく、第1前スライダ端部32Aと同様の形状とされてもよい。
【0043】
図6に示されるように、収納状態において1つの第2前スライダ端部32Bが占める高さは、ボード11の厚さに対し同等又は若干大きくされている。また、後スライダ端部42の高さはボード11の厚さに対し同等又は若干大きくされている。これらの設定により、収納状態でボード11が実質的に隙間なく上下に重なるようになっている。
【0044】
図8図1中のVIII−VIII断面図であり、展開状態のサンシェード装置10の後部断面を示している。図5及び図8に示されるように、ガイドフレーム12は後部内側を切り欠かれ、この切り欠き部分に嵌合するように収容フレーム60がガイドフレーム12に取り付けられている。収容フレーム60は、前方のボード11の第2後スライダ端部42Bと後方のボード11の第2前スライダ端部32Bとを係脱させることで前方のボード11と後方のボード11との連結、連結解除を行うと共に、第2前スライダ30Bの一部である第2前スライダ端部32B及び後スライダ40の一部である後スライダ端部42を収容するための部材である。
【0045】
収容フレーム60は、後方へ延長させるように外側ガイド溝52Bを画定すると共に、画定した外側ガイド溝52Bの前部に接続し、外側ガイド溝52Bの前部から上方へ延びる前スライダ収容部61、及び画定した外側ガイド溝52Bの後部に接続し、外側ガイド溝52Bの後部から上方へ延びる後スライダ収容部62を画定している。前述したボード保持具17のアーム部材18は、前スライダ収容部61と後スライダ収容部62との間に設けられる。
【0046】
また、収容フレーム60は、前スライダ収容部61が接続する前部において、前スライダ収容部61側である上方へ突の湾曲部63を有するように外側ガイド溝52Bを画定している。ここで、「上方へ突の湾曲部63」とは、後方へ延びる外側ガイド溝52Bが上方に屈折又は湾曲した後に下方に屈折又は湾曲し、再び後方へ延びるように上方に屈折又は湾曲することで、前後の部分に対して山なり形状を呈することを意味する。即ち、湾曲部63は、外側ガイド溝52Bの底面及び天井面の両方が上方に山なりに突出或いは凹陥し、溝が湾曲する部分であり、底面及び天井面の一方のみが山なりに突出或いは凹陥する部分を意味するものではない。
【0047】
本実施形態では、外側ガイド溝52Bの湾曲部63は、後方へ概ね水平に延びる外側ガイド溝52Bの主部から上方に屈曲して後方に向けて上方に傾斜する前側傾斜部63aと、前側傾斜部63aから下方に屈曲して概ね水平に後方へ延びる頂部63bと、頂部63bから下方に屈曲して後方に向けて下方に傾斜する後側傾斜部63cとを有している。後側傾斜部63cは、上方に屈曲する態様で後方へ延びる外側ガイド溝52Bの主部に接続する。頂部63bの天井面の前後方向長さは前スライダ収容部61の前後方向長さよりも長く、前スライダ収容部61は頂部63bから上方へ延出するように外側ガイド溝52Bの湾曲部63に直接接続している。
【0048】
更に、収容フレーム60は、湾曲部63よりも後方において後方に向けて後スライダ収容部62側である上方に傾斜する傾斜部64を有するように外側ガイド溝52Bを画定している。傾斜部64は外側ガイド溝52Bの後端部分をなしており、後スライダ収容部62は傾斜部64の後端に直接接続し、傾斜部64の後端から上方へ延びている。本実施形態では、外側ガイド溝52Bの傾斜部64は、後方へ延びる外側ガイド溝52Bの主部から上方に屈曲して前側傾斜部63aと平行に後方に向けて上方に傾斜し、屈曲する態様で後スライダ収容部62に接続している。他の実施形態では、傾斜部64は、後方へ延びる外側ガイド溝52Bの主部と後スライダ収容部62とをなだらかに接続させるように湾曲していてもよい。
【0049】
外側ガイド溝52Bの前スライダ収容部61との接続部は、第2前スライダ端部32Bのスライドをガイドする部分であると共に、第2前スライダ端部32Bを収容する部分でもある。この接続部の後方に後側傾斜部63cがあることにより、前方のボード11の係合凸部46が後方のボード11の係合凹部36に対して係合・係合解除を行い、展開状態で前後に並ぶ2枚のボード11が互いに連結・連結解除される。即ち、後方のボード11の第2前スライダ30Bに一体に設けられた被係合部である係合凹部36と、前方のボード11の第2後スライダ40Bに一体に設けられた係合部である係合凸部46と、外側ガイド溝52Bの湾曲部63(より正確には、その後側傾斜部63c)とにより、連結機構が構成される。
【0050】
一方、湾曲部63の前側傾斜部63aは、連結機構を構成するものではなく、収納状態で上下に重なるボード11の前部同士が摺接することを防止するために設けられている。図6を参照して説明したように、第2前スライダ端部32Bの係合凹部36の前面下部が傾斜前面36aとなっていることにより、収納位置の最下部にある前方のボード11が前方へスライドするスライド初期に上方に収納された後方のボード11の前部が上方へ押し上げられるが、前方のボード11の第2前スライダ端部32Bが、上に重なる後方のボード11の第2前スライダ端部32Bよりも前方までスライドすると、後方のボード11が下りて来て、ボード11間のクリアランスが再び小さくなり得る。本実施形態では、外側ガイド溝52Bと前スライダ収容部61との接続部をなす頂部63bの前方に前側傾斜部63aが設けられていることにより、前方へ移動を開始した後方のボード11の第2前スライダ端部32Bが前側傾斜部63aを降下する。これにより、更に後方(上方)のボード11が接続部に下りて来ても、後方のボード11の前部と収納位置の最下部にある更に後方のボード11の前部とが摺接することがない。
【0051】
なお、最前方のボード11の第1前スライダ端部32Aは、図5及び図7を参照して説明したようにケーブル保持具34が結合されているため、湾曲部63を通過することはない。従って、第1前スライダ端部32Aの収納位置は、図6に示されるように外側ガイド溝52Bの湾曲部63よりも前方になる。また、最前方のボード11も他のボード11と同じ寸法であるため、最前方のボード11の第1後スライダ端部42Aの収容位置も、後スライダ収容部62と外側ガイド溝52Bとの接続部ではなく、より前方になる。本実施形態では、外側ガイド溝52Bの主部の後端(湾曲部63の前端及び傾斜部64の前端)が最前方のボード11の第1前スライダ端部32A及び第1後スライダ端部42Aの収容位置になっている。
【0052】
外側ガイド溝52Bの傾斜部64は、収納状態で上下に重なるボード11の後部同士が摺接することを防止するために設けられている。即ち、前から2番目から最後方のボード11の後スライダ端部42(42A、42B)は、ボード11が収納位置にある時に上下に重なって後スライダ収容部62に収容されている。そのうち最も前方(最も下)のボード11が前方へのスライドを開始すると、このボード11の後スライダ端部42が斜め下方へ移動する。これにより、後方のボード11の下方を前方のボード11がスライドする際にボード11の後部同士の摺接が抑制される。また、傾斜部64は、ボード11を収納する開動作時に、後スライダ収容部62の下部に収容されている後スライダ端部42を上方へ押し上げるためのカム溝としての機能も果たす。
【0053】
図8に示されるように、前スライダ収容部61及び後スライダ収容部62は、外側ガイド溝52Bから上方に向けて若干後方に傾斜している。これは、ボード11が前端に重なり部11aを有しており、上下方向に隙間なく重ねると鉛直方向に重ならないためである。ボード11が重なり部11aを有していない場合には、前スライダ収容部61及び後スライダ収容部62が上方へ鉛直に延びていてもよい。
【0054】
また、前スライダ収容部61及び後スライダ収容部62は、互いに平行に延びている。そのため、第2前スライダ端部32B及び後スライダ端部42が前スライダ収容部61及び後スライダ収容部62に収容されるボード11の前後方向長さを一定にすることが可能になり、ボード11の製造や組み付けが容易になっている。
【0055】
図5及び図8に示されるように、収容フレーム60の前スライダ収容部61を画定する部分には、収納位置にある第2前スライダ端部32Bのうち最も下方の第2前スライダ端部32B(外側ガイド溝52Bの頂部63bにある第2前スライダ端部32B)の前方への移動を規制する規制装置70が設けられている。規制装置70は、収容フレーム60に取り付けられる板状のガイド部材71と、ガイド部材71に沿って上下方向に移動可能に設けられる可動部材72と、可動部材72を下方へ付勢する付勢部材73とを備えている。可動部材72は、前側で下方へ突出する規制部74と、後ろ側で下方へ突出する駆動部75とを備えている。付勢部材73は、収容フレーム60に形成された軸部に取り付けられるねじりコイルばねによって構成されている。付勢部材73の一端は、収容フレーム60により保持され、付勢部材73の他端は可動部材72の上面に当接して可動部材72を下方へ付勢する。
【0056】
規制部74は、可動部材72が上下に移動することにより、頂部63bの前端にて外側ガイド溝52Bに突出する突出位置(図8に示される状態)と、外側ガイド溝52Bから上方へ退避した退避位置(図10(D)に示される状態)との間を上下に移動する。規制部74の下面は、突出位置にある時に前側傾斜部63aに臨んでいる。これにより、後方へ移動しているボード11の第2前スライダ端部32Bが前側傾斜部63aを上昇する際に、規制部74が第2前スライダ端部32Bによって退避位置に押し上げられる。
【0057】
駆動部75は、可動部材72が移動することにより、頂部63bの後端にて外側ガイド溝52Bに突出する突出位置(図8に示される状態)と、上方側へ外側ガイド溝52Bから退避する退避位置(図9(C)、図10(D)に示される状態)との間を上下に移動する。駆動部75の下面は、突出位置にある時に後側傾斜部63cに臨んでいる。これにより、前方へ移動しているボード11の第2後スライダ端部42Bが湾曲部63を乗り越える際、より詳しくは後側傾斜部63cを上昇する際に、駆動部75が第2後スライダ端部42Bによって退避位置に押し上げられ、規制部74が退避位置に駆動される。
【0058】
図9及び図10は、サンシェード装置10の作動要領を説明するために、図6に対応するサンシェード装置10の後部を透視して示す側面図である。なお、図9及び図10には、最前方のボード11から前から4番目のボード11のみを示している。収納状態のボード11を展開させる閉動作時には、図9(A)に示される状態から順に図10(F)に示される状態に遷移し、展開状態にあるボード11を収納する開動作時には、逆に図10(F)に示される状態から順に図9(A)に示される状態に遷移する。
【0059】
最初に、ボード11を展開させる閉動作について説明する。図9(A)は、全てのボード11が収納位置にある状態を示している。前から2番目から4番目のボード11の第2前スライダ端部32Bは、前スライダ収容部61の下部に収容され、前から2番目から4番目のボード11の第2後スライダ端部42Bは、後スライダ収容部62の下部に収容されている。全てのボード11は、ガイドフレーム12と平行に配置されている。
【0060】
第2前スライダ端部32Bが前スライダ収容部61に収容されたボード11のうち最も前方に並べられる前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bは、外側ガイド溝52Bと前スライダ収容部61との接続部にある。しかしながら、規制部74が外側ガイド溝52Bに突出する突出位置にあるため、前から2番目のボード11の前方への移動は規制される。なお、前から2番目のボード11の後方への移動は、第2前スライダ端部32Bの後方に駆動部75があることによっても規制され得るが、第2後スライダ端部42Bが後スライダ収容部62に収容されていることよって規制されている。
【0061】
この状態から最前方のボード11が前方へ駆動されると、図9(B)に示されるように、最前方のボード11は、第1前スライダ端部32A及び第2後スライダ端部42Bが外側ガイド溝52Bの主部にガイドされながら、ガイドフレーム12と平行のまま前方へスライドし、第2後スライダ端部42Bが湾曲部63の後端(主部の前端)に達した状態となる。
【0062】
更に最前方のボード11が前方へ駆動されると、図9(C)に示されるように、最前方のボード11の第2後スライダ端部42Bが後側傾斜部63cを上昇し、駆動部75を上方へ押し上げて規制部74を退避位置に駆動すると共に、前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bに係合する。より具体的には、図6に示される最前方のボード11の係合凸部46の鉛直な前壁が、前から2番目のボード11の係合凹部36の鉛直な前壁に係合する。この状態では、最前方のボード11は、後部が上方へ持ち上げられ、ガイドフレーム12に対して傾斜した状態となる。
【0063】
更に最前方のボード11が前方へ駆動されると、図10(D)に示されるように、最前方のボード11の第2後スライダ端部42Bと前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bとが一体となって頂部63bを前方へ移動する。この時、規制部74は、前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bが下方にあるため、下方へ移動できずに退避位置に留まる。また、前から2番目のボード11は、第2後スライダ端部42Bが外側ガイド溝52Bの傾斜部64を降下するため、前部が上方へ持ち上げられ、ガイドフレーム12に対して傾斜した状態となる。
【0064】
更に最前方のボード11が前方へ駆動されると、図10(E)に示されるように、一体となった最前方のボード11の第2後スライダ端部42Bと前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bとが前側傾斜部63aを降下し、湾曲部63の前端(主部の後端)に移動する。この状態では、最前方のボード11及び前から2番目のボード11が再びガイドフレーム12と平行な状態になる。前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bの降下に伴い、規制部74は下方の突出位置に移動する。これにより、前から3番目のボード11の第2前スライダ端部32Bが前方への移動が規制される。
【0065】
更に最前方のボード11が前方へ駆動されると、図10(F)に示されるように、前から2番目のボード11が、第2前スライダ端部32B及び第2後スライダ端部42Bを外側ガイド溝52Bの主部にガイドされながら、ガイドフレーム12と平行のまま前方へスライドし、第2後スライダ端部42Bが湾曲部63の後端(主部の前端)に達した図9(B)に対応する状態となる。
【0066】
以降は、図9(C)から図10(F)の状態を繰り返し、全てのボード11が前後に並ぶ展開状態となり、内開口4がボード11によって閉塞される。なお、最後方のボード11の第1後スライダ端部42Aは、展開状態においても湾曲部63よりも後方に位置しており、湾曲部63を乗り上げることはない。
【0067】
次に、ボード11を収納する開動作について、重複する説明を割愛して簡単に説明する。図10(F)の状態から最前方のボード11が後方へ駆動されると、図10(E)に示されるように、前から2番目のボード11が、ガイドフレーム12と平行のまま後方へスライドし、第2後スライダ端部42Bが外側ガイド溝52Bの主部の後端(湾曲部63の前端)に達した状態となる。ボード11が後方へスライドする際には、図6に示される前方のボード11の係合凸部46の傾斜後面が、後方のボード11の係合凹部36の傾斜後面に係合している。係合凹部36の傾斜後面には上方への分力が発生するが、第2後スライダ端部42B及び第2前スライダ端部32Bが外側ガイド溝52Bに一体となって受容されているため、第2前スライダ端部32Bは後方へスライドするだけである。
【0068】
更に最前方のボード11が後方へ駆動されると、図10(D)に示されるように、一体となった最前方のボード11の第2後スライダ端部42B及び前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bが前側傾斜部63aを上昇し、規制部74を上方へ押し上げて退避位置に移動させながら前側傾斜部63aの後端(頂部63bの前端)に至る。この状態では、規制部74に同期して上下動する駆動部75も外側ガイド溝52Bから退避する。また、前から2番目のボード11の第2後スライダ端部42Bが外側ガイド溝52Bの主部の後端(傾斜部64の前端)に位置している。
【0069】
続いて、図9(C)に示されるように、一体となった最前方のボード11の第2後スライダ端部42B及び前から2番目のボード11の第2前スライダ端部32Bが頂部63bの後端に至る。この状態では、駆動部75の下方に第2後スライダ端部42Bがあるため、駆動部75及び規制部74は下方へ移動できず退避位置に留まる。また、前から2番目のボード11は、第2後スライダ端部42Bが傾斜部64を上昇して後スライダ収容部62の下端に至ることにより、前から3番目以降のボード11の第2後スライダ端部42Bを後スライダ収容部62内で上方へ押し上げ、これ以上後方へスライドできない状態になる。
【0070】
その後、更に最前方のボード11が後方へ駆動されると、図9(B)に示されるように、前から2番目のボード11の係合凹部36から最前方のボード11の係合凸部46が離脱して両者の係合が解除され、最前方のボード11の第2後スライダ端部42Bのみが後側傾斜部63cを降下する。
【0071】
更に最前方のボード11が後方へ駆動されると、図9(A)に示されるように、最前方のボード11が後方へスライドし、全てのボード11が収納された収納状態となる。
【0072】
以下、このように構成されたサンシェード装置10の主要構成及びその作用効果を説明する。
【0073】
図1図3に示されるように、本実施形態に係るサンシェード装置10は、内開口4を開閉すべくスライド可能に設けられ、内開口4の後方で上下方向に互いに重なり合って内開口4を開放する収納状態、及び前後方向に並んで内開口4を閉塞する展開状態をとり得る複数のボード11を備える。図5及び図6に示されるように、展開状態で前後に並ぶボード11のうち後方のボード11の前部には、係合凹部36が設けられ、展開状態で前後に並ぶボード11のうち前方のボード11の後部には、収納状態から展開状態に移行する閉動作時に後方のボード11の係合凹部36に係合する一方、展開状態から収納状態に移行する開動作時に後方のボード11の係合凹部36から離脱する係合凸部46が設けられる。各ボード11の前部には前スライダ端部32を有する前スライダ30が設けられ、各ボード11の後部には後スライダ端部42を有する後スライダ40が設けられる。また、図7及び図8に示されるように、サンシェード装置10は、前後方向に延在し、前スライダ30及び後スライダ40をガイドするガイド溝52と、ガイド溝52の外側ガイド溝52Bに接続し、収納状態において複数の前スライダ端部32を上下方向に互いに重なり合うように収容する前スライダ収容部61と、外側ガイド溝52Bに接続し、収納状態において複数の後スライダ端部42を上下方向に互いに重なり合うように収容する後スライダ収容部62とを備える。そして、外側ガイド溝52Bが、前スライダ収容部61との接続部に、前スライダ収容部61側に突の湾曲部63を有している。
【0074】
以上の構成により、図9及び図10に示されるように、開閉動作時に、収容位置にある後方のボード11の前スライダ端部32が湾曲部63に接続する前スライダ収容部61にある状態(図9(A)、(B)、図10(E)、(F))で、前方のボード11の後スライダ端部42が外側ガイド溝52Bの湾曲部63以外の部分をスライドする。そのため、後方のボード11と重なる位置を前方のボード11がスライドする際には、上下のボード11間にクリアランスが形成され、上下に重なるボード11の摺接が抑制される。一方、収納状態では、前方のボード11或いはその前スライダ端部32及び後スライダ端部42が後方のボード11或いはその前スライダ端部32及び後スライダ端部42に接触した状態となり得る。そのため、上下のボード11のクリアランスがスライド時のクリアランスに比べて小さくなり、収納状態のボード11高さが小さくなる。これらにより、サンシェード装置10は、ボード11同士の摺接を抑制しつつ、収納状態のボード11高さを小さくすることが可能である。
【0075】
図8に示されるように、本実施形態の外側ガイド溝52Bは、湾曲部63よりも後方において後方に向けて後スライダ収容部62側に傾斜する傾斜部64を有している。そのため、ボード11が前方に移動する際には、後スライダ端部42が外側ガイド溝52Bの傾斜部64を通過することで(図9(C)〜図10(D))、移動する前方のボード11の後部が、収納位置にある後方のボード11の後部との間にクリアランスを形成する。一方、ボード11が後方に移動する際には、後スライダ端部42が外側ガイド溝52Bの傾斜部64を通過することで(図10(D)〜図9(C))、移動する前方のボード11の後部が、収納位置にある後方のボード11の後部とのクリアランスを小さくする。このように、ボード11の後部同士の摺接を抑制しつつ、収納状態のボード11の高さを小さくする構成が簡単に実現される。
【0076】
図8に示されるように、本実施形態の前スライダ収容部61は湾曲部63の頂部63bから上方に延びている。そのため、後方のボード11に重なった状態で前方のボード11がスライドする際(図9(A)〜(B)、図10(E)〜(F))のクリアランスが最も大きくなり、ボード11の摺接が抑制される。
【0077】
図8に示されるように、本実施形態の後スライダ収容部62は傾斜部64の後端から上方に延びている。そのため、後方のボード11に重なっている前方のボード11が、図9(C)に示される収納状態の位置から前方へ移動する瞬間から上下に重なるボード11の後部間のクリアランスが大きくなる(図10(D))。また、ボード11が後方へ移動する際には、前方のボード11の後スライダ端部42が外側ガイド溝52Bの傾斜部64を後方へ移動する際に(図10(D)〜図9(C))後方のボード11の後スライダ端部42を後スライダ収容部62の奥へ押し込む。つまり、前方のボード11を後方のボード11に重ね合わせて収納状態にする構成が簡単に実現される。
【0078】
図9(A)〜(B)、図10(E)〜(F)に示されるように、前方のボード11が後方のボード11に重なる位置を移動している時には、収納位置にある後方のボード11は、後スライダ端部42が後スライダ収容部62によって後方への移動を規制され、後方へ移動することはない。一方、このような時には、収納位置にある後方のボード11は、後スライダ端部42が前方への移動を規制されていないと、前方へ移動し得る。本実施形態では図5及び図8に示されるように、サンシェード装置10が、湾曲部63における前スライダ収容部61との接続部の前方にて外側ガイド溝52Bに突出する突出位置と外側ガイド溝52Bから退避する退避位置との間を移動可能に設けられ、突出位置にある時に前スライダ収容部61に収容された前スライダ端部32の前方への移動を規制する規制部74を有する可動部材72を更に備えている。そのため、図9(A)〜(B)、図10(E)〜(F)において前方のボード11が後方のボード11に重なる位置を移動している時にも、収納位置にある後方のボード11の前スライダ端部32の前方への移動が規制される。
【0079】
一方、規制部74は、前方のボード11が後方のボード11に重なる位置を移動している時には(図9(A)〜(B)、図10(E)〜(F))、後方のボード11の前方への移動を規制するために突出位置にある必要があるが、前方へ移動する前方のボード11の係合凸部46が後方のボード11の係合凹部36に係合した図9(C)〜図10(D)の状態にかけては、移動規制を解除するために規制部74が退避位置に位置している必要がある。本実施形態では、図5及び図8に示されるように、サンシェード装置10が、規制部74を突出位置側へ付勢する付勢部材73と、前方へスライドする後スライダ端部42が湾曲部63を乗り越える際に、この後スライダ端部42により駆動されて規制部74を退避位置側へ移動させる駆動部75とを更に備えている。そのため、前方へスライドする後スライダ端部42の動作を利用した駆動部75により、追加駆動源を要することなく、簡単な構成で規制部74を退避位置に移動させることができる。
【0080】
図5及び図8に示されるように、本実施形態では、係合凹部36が前スライダ端部32の下面に設けられ、係合凸部46が後スライダ端部42の上面に設けられ、係合凸部46が係合凹部36に係合している状態では前スライダ端部32と後スライダ端部42とが一体となって外側ガイド溝52Bに受容される。そのため、部品構成が簡素になる。また、互いに係合した前スライダ端部32と後スライダ端部42とが一体となって外側ガイド溝52Bに受容されるため、衝撃等によって両者の係合が解除されることが抑制される。
【0081】
図4及び図5に示されるように、展開状態で最も前方に設けられるボード11に結合されたプッシュプルケーブル23を介してこのボード11を前後方向に駆動する駆動源20が設けられている。これにより、簡単な構成でサンシェード装置10が電動化される。
【0082】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、サンシェード装置10を車両1の屋根に適用したが、車両1以外の屋根や、壁等にも適用可能である。また、上記実施形態では、複数のボード11が内開口4の車両後方で上下に重なる収納状態をとるように構成したが、車両前方で収納状態をとってもよい。更に、上記実施形態では、開作動時に先に収納されるボード11が上に位置し、後から収納されるボード11が収納位置にあるボード11の下方に重なるように構成したが、上下が逆であってもよい。この場合、前スライダ収容部61及び後スライダ収容部62は外側ガイド溝52Bから下方へ延出し、湾曲部63が下方へ突となるように構成すればよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0083】
4 内開口
10 サンシェード装置
11 ボード
30 前スライダ
30A 第1前スライダ(最前方のボード)
30B 第2前スライダ(前から2番目から最後方のボード)
32A 第1前スライダ端部(最前方のボード)
32B 第2前スライダ端部(前から2番目から最後方のボード)
36 係合凹部(被係合部)
40 後スライダ
40A 第1後スライダ(最後方のボード)
40B 第2後スライダ(後ろから2番目から最前方のボード)
42A 第1後スライダ端部(最後方のボード)
42B 第2後スライダ端部(後ろから2番目から最前方のボード)
46 係合凸部(係合部)
52 ガイド溝
52B 外側ガイド溝
61 前スライダ収容部
62 後スライダ収容部
63 湾曲部
63b 頂部
64 傾斜部
72 可動部材
73 付勢部材
74 規制部(規制部材)
75 駆動部(駆動部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10