(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1から
図6は、単結晶炭化ケイ素の基板13fの製造方法を示す図である。
【0017】
図1は、第一の加工前の単結晶炭化ケイ素の基板13aの側面図である。
基板13aは、最初は平板状の単結晶炭化ケイ素基板1で構成される。炭化ケイ素(SiC)とは、天然には存在しない人工化合物で、珪砂と炭素から合成される。炭化ケイ素は、高温(1500℃)まで強度が持続するほか、軽量で耐食性も高く、耐熱材料として優れている。この単結晶炭化ケイ素基板1に対して、第一の加工を施すことで、
図6に示した基板13fを得ることができる。以下、この第一の加工について説明する。
【0018】
図2は、配線膜2を成膜した基板13bの側面図である。
基板13bは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面の表面全体に、スパッタ、蒸着などにより配線膜2が形成されている。
【0019】
図3は、フォトレジスト層3のパターニングを行った基板13cの側面図である。
フォトリソグラフィ技術とは、感光性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光(パターン露光、像様露光等とも言う)することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術である。フォトリソグラフィ技術は、主に、半導体素子、プリント基板、液晶ディスプレィ、プラズマディスプレィパネル等の製造に用いられる。フォトレジスト層3は、フォトリソグラフィにおいて使用される、光や電子線等によって溶解性などの物性が変化する組成物である。フォトレジストが選択的に溶解される現象を現像という。物質の表面に塗布され、後に続くエッチングなどの処理から物質表面を保護することからレジストの名が付与されている。
【0020】
図2に示す基板13bの表面側に、感光性の物質であるフォトレジストを塗布したのち(図示省略)、その配線膜2を剥き出しにしたい部位に露光すると、フォトレジストが反応して、その後の現像により
図3に示すように回路パターンがフォトレジスト層3として焼き付けられる。
【0021】
図4は、ドライエッチングによってフォトレジスト層3の無い箇所の配線膜2を除去した基板13dの側面図である。
ドライエッチングとは、反応性の気体(アルゴン等のエッチングガス)や、イオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。半導体産業においては、ドライエッチングが主力となっている。エッチングの種類としては他に、液体によるエッチング(ウェットエッチング)、化学反応を伴わない物理エッチング等がある。
図3に示したフォトレジスト層の無い箇所の配線膜2が剥き出している部位がエッチングされる。よって基板13dは、配線膜2が剥き出している部位において基板表面11が露出する。
基板表面11は、この例では、配線膜2の周囲に断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面が露出している部位である。基板表面11には、ドライエッチング工程により、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルなどが付着して汚染されている。
【0022】
図5は、フォトレジスト層3を剥離(除去)した基板13eの側面図である。
図4に示した基板13dに対し、薬品などでフォトレジスト層3を全て剥離(除去)することで、
図5に示す基板13eを得ることができる。基板13eは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面に配線膜2が形成され、かつ、この配線膜2は、フォトリソグラフィ技術により、ミクロンオーダで所望のパターンに形成されている。
【0023】
図6は、単結晶炭化ケイ素基板1の表面に溝加工を施して、基板の表面地肌を露出してなる絶縁部12を形成した基板13fを示す側面図である。
図6に示す基板13fは、個々に切り分けられている。配線膜2の周囲に、断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11が露出している。露出した基板表面11の周囲に、断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板の表面の地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。すなわち、
図5の基板表面11の一部が溝加工により掘り下げられている。このように絶縁部12が形成されているので、基板13fの配線膜2と外部のグランド等との絶縁特性が確保されている。
【0024】
Dynamic-SIMS(Dynamic Secondary Ion Mass Spectrometry)の分析結果によれば、ドライエッチング工程により単結晶炭化ケイ素基板1に付着した鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルの深さ方向浸透量は0.1μm以下である。従って、単結晶炭化ケイ素の溝加工による加工量は、深さ方向に最大1μmで十分であるが、実際は加工性を考え約30μm程度加工される。表面汚染層の除去方法は、レーザ加工または機械加工であれば加工方法は問わない。加工方法と加工形状においては自由度がある。加工方法は、例えば、ブレードによる溝加工、レーザによる加工、ブラスト加工等がある。加工形状は、例えば、直線、折り曲げ、曲線等、任意の形状での加工等がある。
【0025】
図7から
図12は、単結晶炭化ケイ素の基板14fの製造方法を示す図である。
図7は、第二の加工前の単結晶炭化ケイ素の基板14aの側面図である。
基板14aは、最初は平板状の単結晶炭化ケイ素基板1で構成される。この単結晶炭化ケイ素基板1に対して、第二の加工を施すことで、
図12に示した基板14fを得ることができる。以下、この第二の加工について説明する。
【0026】
図8は、配線膜2を成膜した基板14bの側面図である。
基板14bは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面に配線膜2が形成されている。
【0027】
図9は、フォトレジスト層3のパターニングを行った基板14cの側面図である。
図8に示す基板14bの表面側に、感光性の物質であるフォトレジストを塗布したのちに配線膜2を剥き出しにしたい部位に露光すると、フォトレジストが反応してその後の現像によりフォトレジスト層3a,3bからなる回路パターンが焼き付けられる。
【0028】
図10は、ドライエッチングによってフォトレジスト層3a,3bの無い箇所の配線膜2を除去した基板14dの側面図である。
図9に示したフォトレジスト層の無い箇所の配線膜2が剥き出している部位がエッチングされる。よって基板14dは、配線膜2が剥き出している部位において基板表面11が露出する。基板表面11が露出することにより配線膜2a,2bに分離される。
基板表面11は、配線膜2a,2bの周囲に断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面が露出している部位である。基板表面11には、ドライエッチング工程により、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルなどが付着して汚染されている。
【0029】
図11は、フォトレジスト層3a,3bを剥離(除去)した基板14eの側面図である。
図10に示した基板14dに対し、薬品などでフォトレジスト層3a,3bを全て剥離(除去)することで、
図11に示す基板14eを得ることができる。基板14eは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面に配線膜2a,2bが形成され、かつ、この配線膜2a,2bは、フォトリソグラフィ技術により所望のパターンに形成されている。
【0030】
図12は、単結晶炭化ケイ素基板1の表面に溝加工を施して、基板の表面地肌を露出してなる絶縁部12を形成した基板14fを示す側面図である。
図12に示す基板14fは、個々に切り分けられている。配線膜2a,2bの間には、この基板14fの第一端部から第二端部まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面が露出している。そして、露出した表面において、第一端部から第二端部まで断絶することなく連続して、単結晶炭化ケイ素の表面地肌を露出してなる絶縁部12を備えている。この絶縁部12は、機械加工またはレーザ加工によって、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成された部位である。
第一端部:基板の四辺のうち、いずれか一辺に存在する端部のことをいう。また第二端部とは、基板の四辺のうち、第一端部を含まない他辺に存在する端部のことをいう。
なお、基板の四辺を第一〜第四辺と定義すると、第一辺は、基板の上辺、右辺、下辺、左辺の4通りのいずれかが選択できる。第一端部および第二端部を含む辺となりうる組み合わせは、第一辺および第二辺、第一辺および第三辺、第一辺および第四辺の3通りであり、合計12通りの組み合わせのうちいずれかが選択できる。
この絶縁部12は配線部2a,2bを切断するように連続している。絶縁部12の部位は、表面汚染層が除去されているので、基板14fの配線膜2a,2bの間の絶縁特性が確保されている。
配線膜2a,2bの周囲は、断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11が露出している。
【0031】
具体的にいうと、発明者らは、ドライエッチング実施後に、それぞれTi(0.1μm)/Pt(0.2μm)/Au(5μm)で成膜された配線膜2において、150μmの配線間ギャップを形成した。更に基板の配線間ギャップに対して、幅30μm、深さ30μmのブレードによる溝加工を行った。すると、表面加工前の配線間抵抗値が10
9〜10
10Ωであったのに対して、表面加工後の配線間抵抗値は10
11Ωに改善した。このように、絶縁部12の形成により、配線膜2a,2bの間の絶縁特性が確保される。
【0032】
以下の
図13から
図18と、
図20、
図21に示した基板は、ドライエッチングを実施して配線膜のパターニングを行っている。これにより高精度で基板上に配線膜を配置することができる。
図13は、第一の配線膜2aと第二の配線膜2bとの間に、ダイシングブレード4(
図19参照)によるスリット加工を施した例を示す図である。
図13から
図17は、平面図と側面図を同時に示している。
基板15aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0033】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
この絶縁部12は、後記するダイシングブレード4(
図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して幅約30μm、深さ約30μmほどの溝が形成されている。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0034】
図14は、第一の配線膜2aと第二の配線膜2bとの間に、レーザ加工またはブラスト加工を施した例を示す図である。
基板15bは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、L字型の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、これら配線膜2a,2bの対向部を含むようにクランク状の間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板15bの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0035】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含み、かつ、この対向部よりも長くクランク状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。この絶縁部12は、レーザ加工、またはブラスト加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0036】
図15は、配線間および配線膜2a,2bの周辺に、ダイシングブレード4(
図19参照)によるスリット加工を施した例を示す図である。
基板16aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板16aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0037】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
更に配線膜2a左側の基板表面11の更に左側には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L1(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。配線膜2b右側の基板表面11の更に右側に、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R1(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。この絶縁部12L1,12R1は、後記するダイシングブレード4(
図19参照)による加工で機械的に形成されており、基板16aの上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続している。絶縁部12L1,12R1は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
【0038】
絶縁部12L1により、この基板16aの左側をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2aとグランド等との絶縁特性が確保できる。また、絶縁部12R1により、この基板16aの右側をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2bとグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0039】
図16は、配線間および配線膜2a,2bの周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
基板16bは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板16aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0040】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板16bの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
更に配線膜2aを囲う基板表面11の上下の辺と左辺に、それぞれ単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L2(第2の絶縁部)が形成されている。配線膜2bを囲う基板表面11の上下の辺と右辺に、それぞれ単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R2(第2の絶縁部)が形成されている。
これら絶縁部12,12L2,12R2は、ダイシングブレードによるスリット加工で機械的に形成される。絶縁部12,12L2,12R2は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
【0041】
これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。更にこの基板16bの上下左右の辺をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2a,2bとグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0042】
図17は、配線膜2の周辺に、ダイシングブレード4(
図19参照)によるスリット加工を施した例を示す図である。
基板17aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2が形成されている。配線膜2の四辺には、それぞれ基板表面11が露出している。配線膜2を囲う基板表面11の左辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L3(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。配線膜2を囲う基板表面11の右辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R3(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。これら絶縁部12L3,12R3は、ダイシングブレード4(
図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12L3,12R3は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、この基板17aの左右をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2とグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0043】
図18は、配線膜2の周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
基板17bは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2が形成されている。配線膜2の四辺には、それぞれ基板表面11が露出している。配線膜2を囲う基板表面11の四辺には、それぞれ単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。この絶縁部12は、ダイシングブレードによるスリット加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、この基板17bの上下左右をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2とグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0044】
図19は、ダイシングブレード4の形状例を示す図である。
ダイシングブレード4は、円盤状であり、厚みが30〜200μmであり、端部が次第に細くなっている。このダイシングブレード4を図示していないダイシングソーに装着して、例えば時計回りの方向に回転させながら単結晶炭化ケイ素基板1に接触させることで、単結晶炭化ケイ素基板1に約30μmほどの深さの溝を形成させることができる。
【0045】
図20は、表面の第一の配線膜2aと第二の配線膜2bの間に溝加工を施し、裏面の配線膜2cの二辺に溝加工を施した場合の基板17cを示す図である。この
図20は、平面図と側面図と裏面図を同時に示している。
基板17cは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板17cの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0046】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板17cの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
この絶縁部12は、ダイシングブレード4(
図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0047】
基板17cは、単結晶炭化ケイ素基板1の裏面側に、矩形の配線膜2cが形成されている。配線膜2cの四辺には、所定幅で基板表面11が露出している。配線膜2cを囲う基板表面11の左辺と右辺には、所定幅で単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が直線状に形成されている。
基板17cの裏面は、切断時のバリ対策のため、配線膜2cの外周の四辺が切り取られている。その後、基板17cの裏面には、ダイシングブレード4(
図19参照)による溝加工が実施される。この際、配線膜2cを切断しないようにプルバックされる。これにより、基板裏面に形成された表面汚染層が除去され、基板17cの左右いずれかをグランドに隣接させた場合でも、配線膜2cとグランド間の絶縁特性が確保できる。
【0048】
図21は、表面に配線膜2aの左右に溝加工を施し、裏面の配線膜2cの四辺に溝加工を施した場合の基板17dを示す図である。この
図21は、平面図と側面図と裏面図を同時に示している。
基板17dは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2aが形成されている。配線膜2aの周囲の四辺は、所定幅で基板表面11が露出しており、更にその基板表面11の左辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L4(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。この絶縁部12L4は、基板表面11において、基板17dの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
基板表面11の右辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R4(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。この絶縁部12R4は、基板表面11において、基板17dの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
この絶縁部12L4,12R4は、ダイシングブレード4(
図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12L4,12R4は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、基板17dの左右をグランドに隣接させた場合でも、配線膜2aとグランド間の絶縁特性が確保できる。
【0049】
基板17dは、単結晶炭化ケイ素基板1の裏面側に、矩形の配線膜2cが形成されている。配線膜2cの四辺には、所定幅で単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。
基板17dの裏面は、切断時のバリ対策のため、最初、配線膜2cの外周の四辺が切り取られる。その後、基板17dの裏面には、溝加工が実施される。この際、配線膜2dが切断されないようにプルバックされる。これにより、基板裏面に形成された表面汚染層が除去され、基板17dの上下左右いずれかをグランドに隣接させた場合でも、配線膜2cとグランド間の絶縁特性が確保できる。
【0050】
以下、
図22から
図26において、熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板を半導体レーザの基板として用いた場合を説明する。
【0051】
《第1の実施形態の半導体レーザ》
図22は、溝加工前の半導体レーザ18を示す斜視図である。
半導体レーザ18は、単結晶炭化ケイ素基板1と、裏面に形成された配線膜2cと、表面に形成された配線膜2a,2bと、配線膜2b上の薄膜ハンダ5と、薄膜ハンダ5上の半導体レーザ素子6aとを含んで構成される。これら配線膜2a,2bの間には、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように間隙が形成され、基板表面11が露出している。基板表面11(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。
半導体レーザ素子6aと配線膜2aとの間には、金ワイヤ7が配線されている。熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板1の上に半導体レーザ素子6aが配置されているので、放熱性に優れており、高頻度動作や連続動作に適している。
【0052】
単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11は、ドライエッチングにより表面汚染層が形成されている。これにより、配線膜2a,2bの間の絶縁特性が損なわれている。そこで、溝加工位置121に沿って、機械加工またはレーザ加工によってこの表面汚染層を除去する。
【0053】
図23は、溝加工後の半導体レーザ18を示す側面図である。
半導体レーザ18は、配線膜2a,2bの間を、表面の上辺(第一端部)から下辺(第二端部)まで断絶することなく連続した間隙10(第一の間隙)が形成される。更に半導体レーザ18は、この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。この絶縁部12は、レーザ加工、ダイシングブレード4(
図19参照)による加工またはブラスト加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0054】
《第2の実施形態の半導体レーザ》
第2の実施形態では、波長が異なる第1、第2の半導体レーザを1つにパッケージする例を示す。
図24は、第一の半導体レーザ18aの加工例を示す斜視図である。
半導体レーザ18a(第一の半導体レーザ)は、例えばコンパクトディスクやデジタル多用途ディスクの光ピックアップ用途であり、単結晶炭化ケイ素基板1と、裏面に形成された配線膜2cと、表面に形成された配線膜2dと、配線膜2d上の薄膜ハンダ5と、薄膜ハンダ5上の半導体レーザ素子6aとを含んで構成される。熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板1の上に半導体レーザ素子6aが配置されているので、放熱性に優れており、高頻度動作や連続動作に適している。
【0055】
単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11は、ドライエッチングにより表面汚染層が形成されている。これにより、基板表面11は、絶縁特性が損なわれている。そこで、溝加工位置121に沿って機械加工またはレーザ加工によって溝を加工し、この表面汚染層を除去する。
【0056】
図25は、第二の半導体レーザ18bの加工例を示す斜視図である。
半導体レーザ18b(第二の半導体レーザ)は、例えばブルーレイディスク(登録商標)の光ピックアップ用途であり、単結晶炭化ケイ素基板1と、裏面に形成された配線膜2cと、表面に形成された配線膜2eと、配線膜2e上の薄膜ハンダ5と、薄膜ハンダ5上の半導体レーザ素子6bとを含んで構成される。半導体レーザ素子6bは、半導体レーザ素子6aとは異なる波長で発振する。熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板1の上に半導体レーザ素子6bが配置されているので、放熱性に優れており、高頻度動作や連続動作に適している。
【0057】
単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11は、ドライエッチングにより表面汚染層が形成されている。これにより、基板表面11は、絶縁特性が損なわれている。そこで、溝加工位置121に沿って、機械加工またはレーザ加工によって溝を加工し、この表面汚染層を除去する。
【0058】
図26は、第一、第二の半導体レーザを1つにパッケージ化する例を示す図である。
このパッケージ9の内部には、前述した半導体レーザ18aと半導体レーザ18bとが他部材8の上に設置されている。半導体レーザ18aは、パッケージ9の左側に設置されている。半導体レーザ18bは、パッケージ9の右側に設置されている。
【0059】
パッケージ9は金属製であり、図示していないグランドに接続される。このとき、半導体レーザ18aの基板表面11のうち、パッケージ9と接する部分には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が直線状に形成されている。これにより、パッケージ9と配線膜2dとの絶縁特性を確保することができる。
【0060】
同様に半導体レーザ18bの基板表面11のうち、パッケージ9と接する部分には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が直線状に形成されている。これにより、パッケージ9と配線膜2eとの絶縁特性を確保することができる。
【0061】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0062】
本発明の変形例として、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 絶縁部を形成する方法は、ダイシングブレードによる機械加工、ブラスト加工、レーザ加工のうちいずれであってもよい。
(b) 配線膜2a,2b間を、第一端部から第二端部まで断絶することなく連続した間隙が形成され、かつ間隙内において、第一端部から第二端部まで断絶することなく連続して、単結晶炭化ケイ素基板の表面地肌を露出してなる絶縁部を備える基板において、更に配線膜2a,2bの周囲に、断絶することなく連続して、単結晶炭化ケイ素基板の表面地肌を露出してなる絶縁部を備えてもよい。
(c) 間隙や絶縁部は、上端と下端までを断絶することなく連続した形態に限定されない。上端と下端に代えて、左端と右端、左端と上端、左端と下端、右端と上端、右端と下端のうちいずれかを断絶することなく連続していればよい。
【解決手段】単結晶炭化ケイ素の基板15aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面に配線膜2aおよび配線膜2bを備え、この表面上の配線膜2a,2bの間に、表面の上端から下端まで断絶することなく連続した間隙が形成されており、この間隙内において、表面の上端から下端まで断絶することなく連続した単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12を備える。