特許第6491784号(P6491784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6491784単結晶炭化ケイ素基板、単結晶炭化ケイ素基板の製造方法、および半導体レーザ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6491784
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】単結晶炭化ケイ素基板、単結晶炭化ケイ素基板の製造方法、および半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20190318BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01S5/022
   C30B29/36
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-146437(P2018-146437)
(22)【出願日】2018年8月3日
【審査請求日】2018年8月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹盛 英昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 久
(72)【発明者】
【氏名】板垣 徹
【審査官】 島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−188516(JP,A)
【文献】 特開2002−043676(JP,A)
【文献】 特開2001−135885(JP,A)
【文献】 特開平11−220218(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/098689(WO,A1)
【文献】 特開2014−225660(JP,A)
【文献】 特開2003−078084(JP,A)
【文献】 特開2007−019087(JP,A)
【文献】 特開平06−244149(JP,A)
【文献】 特開2005−005681(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0171434(US,A1)
【文献】 特開2008−290888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00− 5/50
H01L23/34−23/473
C30B29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶炭化ケイ素基板の一方の面に第一の配線膜および第二の配線膜を備え、
前記一方の面上の前記第一の配線膜と前記第二の配線膜との間を、当該一方の面の第一端部から第二端部まで断絶することなく連続した第一の間隙が形成されており、
前記第一の間隙内において、前記一方の面上の前記第一の配線膜と前記第二の配線膜との間を、前記単結晶炭化ケイ素基板の前記一方の面の、ドライエッチングを用いて鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルのうち少なくとも何れかが付着して汚染されてなる表面汚染層を除去した地肌を露出してなる第一の絶縁部を備えること、
を特徴とする単結晶炭化ケイ素基板。
【請求項2】
単結晶炭化ケイ素基板の一方の面に配線膜を備え、
前記配線膜の周囲に、断絶することなく連続して前記単結晶炭化ケイ素基板の表面が露出しており、
露出した前記表面内、または、露出した前記表面の周囲において、前記単結晶炭化ケイ素基板の前記一方の面の、ドライエッチングを用いて鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルのうち少なくとも何れかが付着して汚染されてなる表面汚染層を除去した地肌を露出してなる絶縁部を備えること、
を特徴とする単結晶炭化ケイ素基板。
【請求項3】
請求項1または2の単結晶炭化ケイ素基板と、
前記単結晶炭化ケイ素基板上に構成された半導体レーザ素子と、
を含んで構成される半導体レーザ。
【請求項4】
単結晶炭化ケイ素基板の製造方法であって、
前記単結晶炭化ケイ素基板の一方の面の表面全体に配線膜を成膜するステップと、
前記配線膜の上層部の一部に、パターニングにより第一のフォトレジスト層および当該第一のフォトレジスト層と所定の間隙で第二のフォトレジスト層を形成するステップと、
前記第一のフォトレジスト層および前記第二のフォトレジスト層以外のパターニングされていない領域の前記配線膜をドライエッチングにより除去するステップと、
前記第一のフォトレジスト層および前記第二のフォトレジスト層を剥離して第一の配線膜と第二の配線膜を露出させるステップと、
前記間隙内の前記単結晶炭化ケイ素基板の一部または全部の表面を削り取り、前記一方の面上の前記第一の配線膜と前記第二の配線膜との間を、当該一方の面の第一端部から第二端部まで所定幅で断絶することなく連続して、前記単結晶炭化ケイ素基板の前記一方の面の地肌を露出してなる第一の絶縁部を形成するステップと、
を備えることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の製造方法。
【請求項5】
前記一方の面上で、
前記間隙に接する辺を除く、前記第一の配線膜および前記第二の配線膜それぞれの周辺において、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面の一部または全部を削り取り、前記第一の絶縁部に接続し、かつ断絶することなく連続して前記単結晶炭化ケイ素基板の前記一方の面の地肌を露出してなる第二の絶縁部を形成するステップ、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の単結晶炭化ケイ素基板の製造方法。
【請求項6】
単結晶炭化ケイ素基板の製造方法であって、
前記単結晶炭化ケイ素基板の一方の面の表面全体に配線膜を成膜するステップと、
前記配線膜の上層部の一部に、パターニングによりフォトレジスト層を形成するステップと、
前記フォトレジスト層以外のパターニングされていない前記配線膜をドライエッチングにより除去するステップと、
前記フォトレジスト層を剥離するステップと、
前記配線膜の周囲に露出し、断絶することなく連続した前記単結晶炭化ケイ素基板の表面の更に周囲において、前記単結晶炭化ケイ素基板の一部または全部の表面を削り取り、前記単結晶炭化ケイ素基板の前記一方の面の地肌を露出してなる絶縁部を形成するステップと、
を備えることを特徴とする単結晶炭化ケイ素基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶炭化ケイ素基板、単結晶炭化ケイ素基板の製造方法、および半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高速化、小型・軽量(高密度)化、高出力化、高信頼性化に対する要求は極めて強い。半導体素子は、急速に高集積化、大サイズ化、マルチチップ化、高出力化の方向に向かっている。また電子回路は、微細化、配線長の短縮化、低抵抗化の方向に向かっている。このような動きの中で、素子の発熱をいかに効率よく除去(放熱)するかが重要な問題となっている。
【0003】
電子回路には、発熱以外にも、配線密度の増大や高電力化による基板の絶縁破壊等の問題点が指摘されている。基板用の素材には、熱伝導性がよいこと、電気絶縁性が優れること、高周波特性が良いこと、熱膨張係数がSiやGaAsに近いこと、化学的に安定していること、機械的強度が大きいこと、回路形成が容易であること、気密封止ができることが求められる。また、製造面からは、安価であること、技術完成度が高いこと、原料が入手しやすいこと、単純かつ廉価な製造プロセスが適用可能なこと、公害物質など毒性物質を含まないことが求められる。
【0004】
セラミックス製の基板材料としては、一般的に多結晶アルミナ(熱伝導率:約23W/m・K)、多結晶窒化アルミニウム(熱伝導率:約170W/m・K)、多結晶炭化ケイ素(熱伝導率:約300W/m・K)等が用いられている。
しかし近年、熱伝導率300W/m・Kの多結晶炭化ケイ素を基板材料として使った場合でも放熱特性が不十分となる半導体レーザが増えてきている。そこで、熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素が基板材料として注目されている。
【0005】
特許文献1には、炭化ケイ素の表面に反応性イオンエッチングにより微細加工を施す際に、炭化ケイ素の表面を任意形状かつ高精細に微細加工することができ、特に、ナノメートル級の寸法公差による微細加工を行うことができる炭化ケイ素の表面処理方法に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−290888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、半導体レーザの高出力化、半導体素子の高集積化および電子回路の微細化等が進む中、単結晶炭化ケイ素基板を使用する上で、多結晶の基板では起きなかった課題が発生した。それは、基板の製造工程において基板の絶縁特性が低下することである。このような課題やその解決手段は、特許文献1には何ら記載されていない。
【0008】
本発明者らは、上記課題について検討し、まず、基板製造工程においてドライエッチングを用いた多結晶および単結晶炭化ケイ素基板の表面を、オージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)の2つの方法にて調査した。なお、オージェ電子分光法に比べて、飛行時間型二次イオン質量分析法の方がより精度よく詳細に基板表面を調査できる。
【0009】
《検証結果1》
調査の結果、単結晶炭化ケイ素基板の表面に、基板の絶縁特性に悪影響を及ぼす元素である鉄、クロム、ニッケル、アルミニウムが付着して、表面汚染層を形成していた。これらの元素は基板製造装置を構成する元素と考えられる。なお、鉄、クロム、ニッケルは、チャンバーの成分であり、アルミニウムは治具の成分である。多結晶炭化ケイ素基板の表面には、単結晶炭化ケイ素基板で確認された付着は確認されなかった。この表面汚染層は、オージェ電子分光法では確認されず、より詳細に分析できる飛行時間型二次イオン質量分析法によって確認された。
【0010】
《検証結果2》
次に、発明者らは、製造工程面から検討を行った。メタルマスクを用いて配線膜を形成した単結晶炭化ケイ素基板と、ドライエッチングを用いて配線膜を形成した単結晶炭化ケイ素基板の表面を、飛行時間型二次イオン質量分析法によって調査した。
メタルマスクを用いた製造方法では、基板表面に絶縁特性に悪影響を及ぼす元素の付着は確認されなかった。しかし、メタルマスクを用いた製造方法では、配線膜の寸法精度と位置精度が悪いため、半導体レーザの基板として利用できない。ドライエッチングを用いた製造方法は、配線膜の寸法精度と位置精度が良いが、基板表面に絶縁特性に悪影響を及ぼす元素の付着が確認され、表面汚染層の形成が確認された。
【0011】
上記の検証結果1,2より、単結晶炭化ケイ素基板の製造工程において、ドライエッチングを用いた場合、基板の表面に、基板の絶縁特性に悪影響を及ぼす元素が付着し、表面汚染層が形成されることがわかった。
【0012】
そこで、本発明は、単結晶炭化ケイ素基板の製造工程において、ドライエッチングを用いた場合、基板の絶縁特性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するため、本発明の単結晶炭化ケイ素基板は、単結晶炭化ケイ素基板の一方の面に第一の配線膜および第二の配線膜を備え、前記一方の面上の前記第一の配線膜と前記第二の配線膜との間を、当該一方の面の第一端部から第二端部まで断絶することなく連続した第一の間隙が形成されており、前記第一の間隙内において、前記一方の面上の前記第一の配線膜と前記第二の配線膜との間を、前記単結晶炭化ケイ素基板の前記一方の面の、ドライエッチングを用いて鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルのうち少なくとも何れかが付着して汚染されてなる表面汚染層を除去した地肌を露出してなる第一の絶縁部を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単結晶炭化ケイ素基板の製造工程において、ドライエッチングを用いた場合に基板の絶縁特性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一の加工前の単結晶炭化ケイ素基板の側面図である。
図2】配線膜を成膜した基板の側面図である。
図3】フォトレジストのパターニングを行った基板の側面図である。
図4】ドライエッチングによってフォトレジスト層の無い箇所の配線膜を除去した基板の側面図である。
図5】フォトレジスト層を剥離(除去)した基板の側面図である。
図6】単結晶炭化ケイ素基板の表面に溝加工を施して、基板の表面地肌を露出してなる絶縁部を形成した基板を示す側面図である。
図7】第二の加工前の単結晶炭化ケイ素基板の側面図である。
図8】配線膜を成膜した基板の側面図である。
図9】フォトレジストのパターニングを行った基板の側面図である。
図10】ドライエッチングにてフォトレジスト層の無い箇所の配線膜を除去した基板の側面図である。
図11】フォトレジスト層を剥離(除去)した基板の側面図である。
図12】単結晶炭化ケイ素基板の表面に溝加工を施して、基板の表面地肌を露出してなる絶縁部を形成した状態を示す側面図である。
図13】第一の配線膜と第二の配線膜との間に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
図14】第一の配線膜と第二の配線膜との間に、レーザ加工またはブラスト加工を施した例を示す図である。
図15】配線間および配線膜の周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
図16】配線間および配線膜の周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
図17】配線膜の周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
図18】配線膜の周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
図19】ダイシングブレードの形状例を示す図である。
図20】表面の第一の配線膜と第二の配線膜の間に溝加工を施し、裏面の配線膜の四辺に溝加工を施した場合の基板を示す図である。
図21】表面に配線膜を備え、裏面の配線膜の四辺に溝加工を施した場合の基板を示す図である。
図22】溝加工(施工前)の半導体レーザを示す斜視図である。
図23】溝加工(施工後)の半導体レーザを示す側面図である。
図24】第一の半導体レーザの加工例を示す斜視図である。
図25】第二の半導体レーザの加工例を示す斜視図である。
図26】第一、第二の半導体レーザを1つにパッケージ化する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1から図6は、単結晶炭化ケイ素の基板13fの製造方法を示す図である。
【0017】
図1は、第一の加工前の単結晶炭化ケイ素の基板13aの側面図である。
基板13aは、最初は平板状の単結晶炭化ケイ素基板1で構成される。炭化ケイ素(SiC)とは、天然には存在しない人工化合物で、珪砂と炭素から合成される。炭化ケイ素は、高温(1500℃)まで強度が持続するほか、軽量で耐食性も高く、耐熱材料として優れている。この単結晶炭化ケイ素基板1に対して、第一の加工を施すことで、図6に示した基板13fを得ることができる。以下、この第一の加工について説明する。
【0018】
図2は、配線膜2を成膜した基板13bの側面図である。
基板13bは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面の表面全体に、スパッタ、蒸着などにより配線膜2が形成されている。
【0019】
図3は、フォトレジスト層3のパターニングを行った基板13cの側面図である。
フォトリソグラフィ技術とは、感光性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光(パターン露光、像様露光等とも言う)することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術である。フォトリソグラフィ技術は、主に、半導体素子、プリント基板、液晶ディスプレィ、プラズマディスプレィパネル等の製造に用いられる。フォトレジスト層3は、フォトリソグラフィにおいて使用される、光や電子線等によって溶解性などの物性が変化する組成物である。フォトレジストが選択的に溶解される現象を現像という。物質の表面に塗布され、後に続くエッチングなどの処理から物質表面を保護することからレジストの名が付与されている。
【0020】
図2に示す基板13bの表面側に、感光性の物質であるフォトレジストを塗布したのち(図示省略)、その配線膜2を剥き出しにしたい部位に露光すると、フォトレジストが反応して、その後の現像により図3に示すように回路パターンがフォトレジスト層3として焼き付けられる。
【0021】
図4は、ドライエッチングによってフォトレジスト層3の無い箇所の配線膜2を除去した基板13dの側面図である。
ドライエッチングとは、反応性の気体(アルゴン等のエッチングガス)や、イオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。半導体産業においては、ドライエッチングが主力となっている。エッチングの種類としては他に、液体によるエッチング(ウェットエッチング)、化学反応を伴わない物理エッチング等がある。図3に示したフォトレジスト層の無い箇所の配線膜2が剥き出している部位がエッチングされる。よって基板13dは、配線膜2が剥き出している部位において基板表面11が露出する。
基板表面11は、この例では、配線膜2の周囲に断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面が露出している部位である。基板表面11には、ドライエッチング工程により、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルなどが付着して汚染されている。
【0022】
図5は、フォトレジスト層3を剥離(除去)した基板13eの側面図である。
図4に示した基板13dに対し、薬品などでフォトレジスト層3を全て剥離(除去)することで、図5に示す基板13eを得ることができる。基板13eは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面に配線膜2が形成され、かつ、この配線膜2は、フォトリソグラフィ技術により、ミクロンオーダで所望のパターンに形成されている。
【0023】
図6は、単結晶炭化ケイ素基板1の表面に溝加工を施して、基板の表面地肌を露出してなる絶縁部12を形成した基板13fを示す側面図である。
図6に示す基板13fは、個々に切り分けられている。配線膜2の周囲に、断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11が露出している。露出した基板表面11の周囲に、断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板の表面の地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。すなわち、図5の基板表面11の一部が溝加工により掘り下げられている。このように絶縁部12が形成されているので、基板13fの配線膜2と外部のグランド等との絶縁特性が確保されている。
【0024】
Dynamic-SIMS(Dynamic Secondary Ion Mass Spectrometry)の分析結果によれば、ドライエッチング工程により単結晶炭化ケイ素基板1に付着した鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルの深さ方向浸透量は0.1μm以下である。従って、単結晶炭化ケイ素の溝加工による加工量は、深さ方向に最大1μmで十分であるが、実際は加工性を考え約30μm程度加工される。表面汚染層の除去方法は、レーザ加工または機械加工であれば加工方法は問わない。加工方法と加工形状においては自由度がある。加工方法は、例えば、ブレードによる溝加工、レーザによる加工、ブラスト加工等がある。加工形状は、例えば、直線、折り曲げ、曲線等、任意の形状での加工等がある。
【0025】
図7から図12は、単結晶炭化ケイ素の基板14fの製造方法を示す図である。
図7は、第二の加工前の単結晶炭化ケイ素の基板14aの側面図である。
基板14aは、最初は平板状の単結晶炭化ケイ素基板1で構成される。この単結晶炭化ケイ素基板1に対して、第二の加工を施すことで、図12に示した基板14fを得ることができる。以下、この第二の加工について説明する。
【0026】
図8は、配線膜2を成膜した基板14bの側面図である。
基板14bは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面に配線膜2が形成されている。
【0027】
図9は、フォトレジスト層3のパターニングを行った基板14cの側面図である。
図8に示す基板14bの表面側に、感光性の物質であるフォトレジストを塗布したのちに配線膜2を剥き出しにしたい部位に露光すると、フォトレジストが反応してその後の現像によりフォトレジスト層3a,3bからなる回路パターンが焼き付けられる。
【0028】
図10は、ドライエッチングによってフォトレジスト層3a,3bの無い箇所の配線膜2を除去した基板14dの側面図である。
図9に示したフォトレジスト層の無い箇所の配線膜2が剥き出している部位がエッチングされる。よって基板14dは、配線膜2が剥き出している部位において基板表面11が露出する。基板表面11が露出することにより配線膜2a,2bに分離される。
基板表面11は、配線膜2a,2bの周囲に断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面が露出している部位である。基板表面11には、ドライエッチング工程により、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルなどが付着して汚染されている。
【0029】
図11は、フォトレジスト層3a,3bを剥離(除去)した基板14eの側面図である。
図10に示した基板14dに対し、薬品などでフォトレジスト層3a,3bを全て剥離(除去)することで、図11に示す基板14eを得ることができる。基板14eは、単結晶炭化ケイ素基板1の一方の面に配線膜2a,2bが形成され、かつ、この配線膜2a,2bは、フォトリソグラフィ技術により所望のパターンに形成されている。
【0030】
図12は、単結晶炭化ケイ素基板1の表面に溝加工を施して、基板の表面地肌を露出してなる絶縁部12を形成した基板14fを示す側面図である。
図12に示す基板14fは、個々に切り分けられている。配線膜2a,2bの間には、この基板14fの第一端部から第二端部まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面が露出している。そして、露出した表面において、第一端部から第二端部まで断絶することなく連続して、単結晶炭化ケイ素の表面地肌を露出してなる絶縁部12を備えている。この絶縁部12は、機械加工またはレーザ加工によって、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成された部位である。
第一端部:基板の四辺のうち、いずれか一辺に存在する端部のことをいう。また第二端部とは、基板の四辺のうち、第一端部を含まない他辺に存在する端部のことをいう。
なお、基板の四辺を第一〜第四辺と定義すると、第一辺は、基板の上辺、右辺、下辺、左辺の4通りのいずれかが選択できる。第一端部および第二端部を含む辺となりうる組み合わせは、第一辺および第二辺、第一辺および第三辺、第一辺および第四辺の3通りであり、合計12通りの組み合わせのうちいずれかが選択できる。
この絶縁部12は配線部2a,2bを切断するように連続している。絶縁部12の部位は、表面汚染層が除去されているので、基板14fの配線膜2a,2bの間の絶縁特性が確保されている。
配線膜2a,2bの周囲は、断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11が露出している。
【0031】
具体的にいうと、発明者らは、ドライエッチング実施後に、それぞれTi(0.1μm)/Pt(0.2μm)/Au(5μm)で成膜された配線膜2において、150μmの配線間ギャップを形成した。更に基板の配線間ギャップに対して、幅30μm、深さ30μmのブレードによる溝加工を行った。すると、表面加工前の配線間抵抗値が10〜1010Ωであったのに対して、表面加工後の配線間抵抗値は1011Ωに改善した。このように、絶縁部12の形成により、配線膜2a,2bの間の絶縁特性が確保される。
【0032】
以下の図13から図18と、図20図21に示した基板は、ドライエッチングを実施して配線膜のパターニングを行っている。これにより高精度で基板上に配線膜を配置することができる。
図13は、第一の配線膜2aと第二の配線膜2bとの間に、ダイシングブレード4(図19参照)によるスリット加工を施した例を示す図である。図13から図17は、平面図と側面図を同時に示している。
基板15aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0033】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
この絶縁部12は、後記するダイシングブレード4(図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して幅約30μm、深さ約30μmほどの溝が形成されている。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0034】
図14は、第一の配線膜2aと第二の配線膜2bとの間に、レーザ加工またはブラスト加工を施した例を示す図である。
基板15bは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、L字型の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、これら配線膜2a,2bの対向部を含むようにクランク状の間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板15bの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0035】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含み、かつ、この対向部よりも長くクランク状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。この絶縁部12は、レーザ加工、またはブラスト加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0036】
図15は、配線間および配線膜2a,2bの周辺に、ダイシングブレード4(図19参照)によるスリット加工を施した例を示す図である。
基板16aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板16aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0037】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
更に配線膜2a左側の基板表面11の更に左側には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L1(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。配線膜2b右側の基板表面11の更に右側に、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R1(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。この絶縁部12L1,12R1は、後記するダイシングブレード4(図19参照)による加工で機械的に形成されており、基板16aの上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続している。絶縁部12L1,12R1は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
【0038】
絶縁部12L1により、この基板16aの左側をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2aとグランド等との絶縁特性が確保できる。また、絶縁部12R1により、この基板16aの右側をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2bとグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0039】
図16は、配線間および配線膜2a,2bの周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
基板16bは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板16aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0040】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板16bの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
更に配線膜2aを囲う基板表面11の上下の辺と左辺に、それぞれ単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L2(第2の絶縁部)が形成されている。配線膜2bを囲う基板表面11の上下の辺と右辺に、それぞれ単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R2(第2の絶縁部)が形成されている。
これら絶縁部12,12L2,12R2は、ダイシングブレードによるスリット加工で機械的に形成される。絶縁部12,12L2,12R2は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
【0041】
これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。更にこの基板16bの上下左右の辺をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2a,2bとグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0042】
図17は、配線膜2の周辺に、ダイシングブレード4(図19参照)によるスリット加工を施した例を示す図である。
基板17aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2が形成されている。配線膜2の四辺には、それぞれ基板表面11が露出している。配線膜2を囲う基板表面11の左辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L3(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。配線膜2を囲う基板表面11の右辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R3(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。これら絶縁部12L3,12R3は、ダイシングブレード4(図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12L3,12R3は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、この基板17aの左右をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2とグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0043】
図18は、配線膜2の周辺に、ダイシングブレードによるスリット加工を施した例を示す図である。
基板17bは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2が形成されている。配線膜2の四辺には、それぞれ基板表面11が露出している。配線膜2を囲う基板表面11の四辺には、それぞれ単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。この絶縁部12は、ダイシングブレードによるスリット加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、この基板17bの上下左右をグランド等に接触させた場合でも、配線膜2とグランド等との絶縁特性が確保できる。
【0044】
図19は、ダイシングブレード4の形状例を示す図である。
ダイシングブレード4は、円盤状であり、厚みが30〜200μmであり、端部が次第に細くなっている。このダイシングブレード4を図示していないダイシングソーに装着して、例えば時計回りの方向に回転させながら単結晶炭化ケイ素基板1に接触させることで、単結晶炭化ケイ素基板1に約30μmほどの深さの溝を形成させることができる。
【0045】
図20は、表面の第一の配線膜2aと第二の配線膜2bの間に溝加工を施し、裏面の配線膜2cの二辺に溝加工を施した場合の基板17cを示す図である。この図20は、平面図と側面図と裏面図を同時に示している。
基板17cは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2a(第一の配線膜)と、矩形の配線膜2b(第二の配線膜)が形成されている。これら配線膜2a,2bの間には、長手方向にこれら配線膜2a,2bの間の対向部を含むように間隙10が形成され、基板表面11が露出している。間隙10(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、基板17cの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。配線膜2a,2bの間の対向部を除く各辺にも、所定幅で基板表面11が露出している。
【0046】
この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように直線状に形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板17cの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
この絶縁部12は、ダイシングブレード4(図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0047】
基板17cは、単結晶炭化ケイ素基板1の裏面側に、矩形の配線膜2cが形成されている。配線膜2cの四辺には、所定幅で基板表面11が露出している。配線膜2cを囲う基板表面11の左辺と右辺には、所定幅で単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が直線状に形成されている。
基板17cの裏面は、切断時のバリ対策のため、配線膜2cの外周の四辺が切り取られている。その後、基板17cの裏面には、ダイシングブレード4(図19参照)による溝加工が実施される。この際、配線膜2cを切断しないようにプルバックされる。これにより、基板裏面に形成された表面汚染層が除去され、基板17cの左右いずれかをグランドに隣接させた場合でも、配線膜2cとグランド間の絶縁特性が確保できる。
【0048】
図21は、表面に配線膜2aの左右に溝加工を施し、裏面の配線膜2cの四辺に溝加工を施した場合の基板17dを示す図である。この図21は、平面図と側面図と裏面図を同時に示している。
基板17dは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面側に、矩形の配線膜2aが形成されている。配線膜2aの周囲の四辺は、所定幅で基板表面11が露出しており、更にその基板表面11の左辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12L4(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。この絶縁部12L4は、基板表面11において、基板17dの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
基板表面11の右辺には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12R4(第2の絶縁部)が直線状に形成されている。この絶縁部12R4は、基板表面11において、基板17dの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。
この絶縁部12L4,12R4は、ダイシングブレード4(図19参照)による加工で機械的に形成される。絶縁部12L4,12R4は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。
これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、基板17dの左右をグランドに隣接させた場合でも、配線膜2aとグランド間の絶縁特性が確保できる。
【0049】
基板17dは、単結晶炭化ケイ素基板1の裏面側に、矩形の配線膜2cが形成されている。配線膜2cの四辺には、所定幅で単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。
基板17dの裏面は、切断時のバリ対策のため、最初、配線膜2cの外周の四辺が切り取られる。その後、基板17dの裏面には、溝加工が実施される。この際、配線膜2dが切断されないようにプルバックされる。これにより、基板裏面に形成された表面汚染層が除去され、基板17dの上下左右いずれかをグランドに隣接させた場合でも、配線膜2cとグランド間の絶縁特性が確保できる。
【0050】
以下、図22から図26において、熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板を半導体レーザの基板として用いた場合を説明する。
【0051】
《第1の実施形態の半導体レーザ》
図22は、溝加工前の半導体レーザ18を示す斜視図である。
半導体レーザ18は、単結晶炭化ケイ素基板1と、裏面に形成された配線膜2cと、表面に形成された配線膜2a,2bと、配線膜2b上の薄膜ハンダ5と、薄膜ハンダ5上の半導体レーザ素子6aとを含んで構成される。これら配線膜2a,2bの間には、これら配線膜2a,2bの対向部を含むように間隙が形成され、基板表面11が露出している。基板表面11(第一の間隙)は、配線膜2a,2bの間を、表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して形成されている。
半導体レーザ素子6aと配線膜2aとの間には、金ワイヤ7が配線されている。熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板1の上に半導体レーザ素子6aが配置されているので、放熱性に優れており、高頻度動作や連続動作に適している。
【0052】
単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11は、ドライエッチングにより表面汚染層が形成されている。これにより、配線膜2a,2bの間の絶縁特性が損なわれている。そこで、溝加工位置121に沿って、機械加工またはレーザ加工によってこの表面汚染層を除去する。
【0053】
図23は、溝加工後の半導体レーザ18を示す側面図である。
半導体レーザ18は、配線膜2a,2bの間を、表面の上辺(第一端部)から下辺(第二端部)まで断絶することなく連続した間隙10(第一の間隙)が形成される。更に半導体レーザ18は、この間隙10内において、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が形成されている。この絶縁部12(第1の絶縁部)は、基板表面11において、基板15aの表面の上端(第一端部)から下端(第二端部)まで断絶することなく連続して単結晶炭化ケイ素基板1の表面の地肌を露出した部位である。この絶縁部12は、レーザ加工、ダイシングブレード4(図19参照)による加工またはブラスト加工で機械的に形成される。絶縁部12は、基板表面11に対して深さ方向に約30μmほどの溝が形成されている。これにより、基板表面11に形成された表面汚染層が除去され、配線膜2a,2b間の絶縁特性が確保できる。
【0054】
《第2の実施形態の半導体レーザ》
第2の実施形態では、波長が異なる第1、第2の半導体レーザを1つにパッケージする例を示す。
図24は、第一の半導体レーザ18aの加工例を示す斜視図である。
半導体レーザ18a(第一の半導体レーザ)は、例えばコンパクトディスクやデジタル多用途ディスクの光ピックアップ用途であり、単結晶炭化ケイ素基板1と、裏面に形成された配線膜2cと、表面に形成された配線膜2dと、配線膜2d上の薄膜ハンダ5と、薄膜ハンダ5上の半導体レーザ素子6aとを含んで構成される。熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板1の上に半導体レーザ素子6aが配置されているので、放熱性に優れており、高頻度動作や連続動作に適している。
【0055】
単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11は、ドライエッチングにより表面汚染層が形成されている。これにより、基板表面11は、絶縁特性が損なわれている。そこで、溝加工位置121に沿って機械加工またはレーザ加工によって溝を加工し、この表面汚染層を除去する。
【0056】
図25は、第二の半導体レーザ18bの加工例を示す斜視図である。
半導体レーザ18b(第二の半導体レーザ)は、例えばブルーレイディスク(登録商標)の光ピックアップ用途であり、単結晶炭化ケイ素基板1と、裏面に形成された配線膜2cと、表面に形成された配線膜2eと、配線膜2e上の薄膜ハンダ5と、薄膜ハンダ5上の半導体レーザ素子6bとを含んで構成される。半導体レーザ素子6bは、半導体レーザ素子6aとは異なる波長で発振する。熱伝導率が約490W/m・Kの単結晶炭化ケイ素基板1の上に半導体レーザ素子6bが配置されているので、放熱性に優れており、高頻度動作や連続動作に適している。
【0057】
単結晶炭化ケイ素基板1の基板表面11は、ドライエッチングにより表面汚染層が形成されている。これにより、基板表面11は、絶縁特性が損なわれている。そこで、溝加工位置121に沿って、機械加工またはレーザ加工によって溝を加工し、この表面汚染層を除去する。
【0058】
図26は、第一、第二の半導体レーザを1つにパッケージ化する例を示す図である。
このパッケージ9の内部には、前述した半導体レーザ18aと半導体レーザ18bとが他部材8の上に設置されている。半導体レーザ18aは、パッケージ9の左側に設置されている。半導体レーザ18bは、パッケージ9の右側に設置されている。
【0059】
パッケージ9は金属製であり、図示していないグランドに接続される。このとき、半導体レーザ18aの基板表面11のうち、パッケージ9と接する部分には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が直線状に形成されている。これにより、パッケージ9と配線膜2dとの絶縁特性を確保することができる。
【0060】
同様に半導体レーザ18bの基板表面11のうち、パッケージ9と接する部分には、単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12が直線状に形成されている。これにより、パッケージ9と配線膜2eとの絶縁特性を確保することができる。
【0061】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0062】
本発明の変形例として、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 絶縁部を形成する方法は、ダイシングブレードによる機械加工、ブラスト加工、レーザ加工のうちいずれであってもよい。
(b) 配線膜2a,2b間を、第一端部から第二端部まで断絶することなく連続した間隙が形成され、かつ間隙内において、第一端部から第二端部まで断絶することなく連続して、単結晶炭化ケイ素基板の表面地肌を露出してなる絶縁部を備える基板において、更に配線膜2a,2bの周囲に、断絶することなく連続して、単結晶炭化ケイ素基板の表面地肌を露出してなる絶縁部を備えてもよい。
(c) 間隙や絶縁部は、上端と下端までを断絶することなく連続した形態に限定されない。上端と下端に代えて、左端と右端、左端と上端、左端と下端、右端と上端、右端と下端のうちいずれかを断絶することなく連続していればよい。
【符号の説明】
【0063】
1 単結晶炭化ケイ素基板
10 間隙 (第一の間隙)
11 基板表面
12 絶縁部 (第一の絶縁部)
12L1,12R1,12L2,12R2,12L3,12R3,12L4,12R4 絶縁部 (第二の絶縁部)
121 溝加工位置
13a〜13f,14a14f 基板
15a〜15c 基板
16a,16b 基板
17a〜17d 基板
18,18a,18b 半導体レーザ
2,2c〜2e 配線膜
2a 配線膜 (第一の配線膜)
2b 配線膜 (第二の配線膜)
3 フォトレジスト層
3a フォトレジスト層 (第一のフォトレジスト層)
3b フォトレジスト層 (第二のフォトレジスト層)
4 ダイシングブレード
5 薄膜ハンダ
6a,6b 半導体レーザ素子
7 金ワイヤ
8 他部材
9 パッケージ
【要約】
【課題】単結晶炭化ケイ素基板の製造工程において、ドライエッチングを用いた場合の基板の絶縁特性を確保する。
【解決手段】単結晶炭化ケイ素の基板15aは、単結晶炭化ケイ素基板1の表面に配線膜2aおよび配線膜2bを備え、この表面上の配線膜2a,2bの間に、表面の上端から下端まで断絶することなく連続した間隙が形成されており、この間隙内において、表面の上端から下端まで断絶することなく連続した単結晶炭化ケイ素基板1の表面地肌を露出してなる絶縁部12を備える。
【選択図】図13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26