(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る二重管61が適用される空調装置1を示す概略構成図である。
【0011】
空調装置1は、冷媒が循環する冷凍サイクル2と、温水が循環する高水温サイクル4と、車室内の空調に利用する空気が通過するHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット5と、弁の動作などを制御するコントローラ10と、から構成される冷暖房可能なヒートポンプシステムである。例えば、冷媒にはHFC−134aが用いられ、温水には不凍液が用いられる。
【0012】
冷凍サイクル2は、コンプレッサ21と、水冷コンデンサ22と、室外熱交換器23と、リキッドタンク24と、内部熱交換器60と、エバポレータ25と、アキュムレータ26と、これらを冷媒が循環可能となるように接続する冷媒流路20と、から構成される。
【0013】
コンプレッサ21は、ガス状冷媒を吸入し圧縮する。これにより、ガス状冷媒は高温高圧になる。
【0014】
水冷コンデンサ22は、暖房時に、コンプレッサ21を通過した後の冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21によって高温高圧となった冷媒と高水温サイクル4を循環する温水との間で熱交換を行い、冷媒の熱を温水に伝達する。
【0015】
室外熱交換器23は、例えば車両のエンジンルーム(電気自動車においてはモータルーム)内に配置され、冷媒と外気との間で熱交換を行う。室外熱交換器23は、冷房時には凝縮器として機能し、暖房時には蒸発器として機能する。室外熱交換器23には、車両の走行や室外ファン32の回転によって、外気が導入される。
【0016】
リキッドタンク24は、冷房時に、室外熱交換器23を通過して凝縮した冷媒を一時的に溜めるとともに、冷媒をガス状冷媒と液状冷媒とに気液分離する。リキッドタンク24からは、分離した液状冷媒のみが内部熱交換器60へと流れる。
【0017】
内部熱交換器60は、冷媒流路20の冷媒の温度差を利用して熱交換を行う二重管61を備える熱交換器である。内部熱交換器60の二重管61について、
図2及び
図3を用いて詳しく説明する。
図2は、二重管61の概略構成図であり、
図3は、
図2のIII−III線に沿う断面図である。
【0018】
二重管61は、内管63と、内管63を内部に有する外管62と、を備える。内管63と外管62とは、それぞれ内部に空洞を有するよう筒状に形成される。
【0019】
内管63の内部には、ガス状冷媒が流れる内側流路20aが形成される。内管63と外管62との間には、液状冷媒が流れる外側流路20bが形成される。
【0020】
内側流路20aには、冷媒流路20のエバポレータ25からアキュムレータ26へと流れる低圧のガス状冷媒が流通する。外側流路20bには、冷媒流路20のリキッドタンク24から第2膨張弁28へ流れる高圧の液状冷媒が流通する。これにより、内側流路20aを流れるガス状冷媒と外側流路20bを流れる液状冷媒との間において、内管63を介した熱交換が行われる。
【0021】
内管63は、ガス状冷媒と液状冷媒との熱交換効率を向上させるために、薄めの板厚に形成される。他方で、外管62は、二重管61の耐圧性を確保するために厚めの板厚に形成される。したがって、内管63の板厚は、外管62の板厚よりも薄くなる。
【0022】
内管63の内部には、
図2及び
図3に示すように、長手方向に延在する板部材64が挿入される。
【0023】
板部材64は、内管63の内径Dinと同じ幅の金属板である。板部材64は、内管63の内部を2つの室63a、63bに分ける。内管63の内部すなわち内側流路20aを流通するガス状流体は、それぞれの室63a、63bを流れる。
【0024】
板部材64は、長手方向両端を支持され、一端を長手方向軸中心に回転させることによって捩られることで、長手方向に螺旋状に形成される。板部材64は、螺旋周期Pが内管63の内径Dinよりも長くなるように形成される。板部材64は、螺旋状に捩れることで、内管63の内径Dinよりも僅かに縮径して、内管63の中に挿入可能となる。
【0025】
このように、内管63と板部材64とがそれぞれ別体に形成された後、内管63に板部材64が挿入される。
【0026】
板部材64が挿入された内管63が外管62の内部に組み込まれることで、
図2に示すような二重管61が形成される。内管63は、挿入された板部材64によって内部から螺旋状に保持されることで、径方向の剛性がどの方向においても高くなる。その後、二重管61の一部が曲げられることによって、二重管61には曲げ部61aが形成される。
【0027】
曲げ部61aの内部では、外管62と同様に内管63も曲げられている。内管63が曲げられることによって、内管63の外側が延び、内部に挿入された板部材64も内管63の形状に沿って曲げられて内管63の内壁に嵌合固定される。なお、板部材64は、長手方向両端を溶接又はロウ付けされることにより内管63に固定されてもよい。
【0028】
図1に戻り、エバポレータ25は、HVACユニット5内に配置され、冷房時に、エバポレータ25を通過する空気の熱を冷媒に吸収させることで、冷媒を蒸発させる。エバポレータ25によって蒸発した冷媒は、内部熱交換器60を通ってアキュムレータ26へ流れる。
【0029】
アキュムレータ26は、冷媒流路20を流れる冷媒を一時的に溜めるとともに、ガス状冷媒と液状冷媒とに気液分離する。アキュムレータ26からは、分離したガス状冷媒のみがコンプレッサ21へと流れる。
【0030】
冷媒流路20には、冷媒を減圧膨張させる第1膨張弁27と、第2膨張弁28と、が配置される。また、冷媒流路20には、開閉によって冷媒の流れを切り換える第1開閉弁29と、第2開閉弁30と、第3開閉弁31と、が配置される。
【0031】
第1膨張弁27は、水冷コンデンサ22と室外熱交換器23との間に配置され、水冷コンデンサ22で凝縮した冷媒を減圧膨張させる。第1膨張弁27には、例えば、固定絞りや可変絞りが用いられる。固定絞りには、例えば、オリフィスやキャピラリーチューブを用いることができ、予め使用頻度の高い特定の運転条件に対応するように絞り量が設定される。また、可変絞りには、例えば、段階的に又は無段階的に開度を調節できる電磁弁を用いることができる。
【0032】
第2膨張弁28は、内部熱交換器60とエバポレータ25との間に配置され、内部熱交換器60を通過した液状冷媒を減圧膨張させる。第2膨張弁28には、エバポレータ25を通過した冷媒の温度に応じて開度が調節される温度式膨張弁が用いられる。
【0033】
第1開閉弁29及び第3開閉弁31は、冷房時に開かれ、暖房時に閉じられる。第1開閉弁29が開かれることで、コンプレッサ21によって圧縮された冷媒は、室外熱交換器23へ直接流入する。また、第3開閉弁31が開かれることで、内部熱交換器60を通過した液状冷媒は、エバポレータ25へと流れる。
【0034】
第2開閉弁30は、暖房時に開かれ、冷房時に閉じられる。第2開閉弁30が開かれることで、室外熱交換器23で蒸発した冷媒は、アキュムレータ26に直接流入する。
【0035】
高水温サイクル4は、
図1に示すように、ウォータポンプ41と、ヒータコア42と、補助加熱器43と、水冷コンデンサ22と、これらを温水が循環可能となるように接続する温水流路40と、から構成される。
【0036】
ウォータポンプ41は、温水流路40内の温水を送液して循環させる。
【0037】
ヒータコア42は、HVACユニット5内に配置され、暖房時に、ヒータコア42を通過する空気に温水の熱を吸収させることで、空気を加熱する。
【0038】
補助加熱器43は、内部に図示しないヒータを有し、通過する温水を加熱する。ヒータには、例えば、シーズヒータやPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが用いられる。
【0039】
HVACユニット5は、空調に利用する空気を冷却又は加熱する。HVACユニット5は、空気を送風するブロワ52と、ヒータコア42を通過する空気の量を調整するエアミックスドア53と、を備える。HVACユニット5内にはヒータコア42とエバポレータ25とが配置され、ブロワ52から送風された空気は、ヒータコア42及びエバポレータ25内を流れる冷媒との間で熱交換を行う。
【0040】
ブロワ52は、HVACユニット5内に空気を送風する送風機である。
【0041】
エアミックスドア53は、HVACユニット5内に配置されたヒータコア42のブロワ52側に設置される。エアミックスドア53は、暖房時にヒータコア42側を開き、冷房時にヒータコア42側を閉じる。エアミックスドア53の開度によって、空気とヒータコア42内の温水との間の熱交換量が調節される。
【0042】
空調装置1には、吐出圧センサ11と、室外熱交換器出口温センサ12と、エバポレータ温度センサ13と、水温センサ14と、が設置されている。
【0043】
吐出圧センサ11は、コンプレッサ21の吐出側の冷媒流路20に設置され、コンプレッサ21に圧縮されたガス状冷媒の圧力を検出する。
【0044】
室外熱交換器出口温センサ12は、室外熱交換器23の出口付近の冷媒流路20に設置され、室外熱交換器23を通過した冷媒の温度を検出する。なお、室外熱交換器出口温センサ12は、室外熱交換器23の出口部分に設置されてもよい。
【0045】
エバポレータ温度センサ13は、HVACユニット5のエバポレータ25の空気流れ下流側に設置され、エバポレータ25を通過した空気の温度を検出する。なお、エバポレータ温度センサ13は、エバポレータ25に直接設置されてもよい。
【0046】
水温センサ14は、補助加熱器43の出口付近の温水流路40に設置され、補助加熱器43を通過した温水の温度を検出する。
【0047】
コントローラ10は、CPU、ROM、RAMなどによって構成され、ROMに記憶されたプログラムをCPUによって読み出すことで、空調装置1に各種機能を発揮させる。コントローラ10には、吐出圧センサ11と、室外熱交換器出口温センサ12と、エバポレータ温度センサ13と、水温センサ14と、からの信号が入力される。なお、コントローラ10には、図示しない外気温度センサ等の信号が入力されてもよい。
【0048】
コントローラ10は、入力された信号に基づいて、冷凍サイクル2の制御を実行する。すなわち、コントローラ10は、
図1に破線で示すように、コンプレッサ21の出力を設定するとともに、第1開閉弁29、第2開閉弁30、及び第3開閉弁31の開閉制御を実行する。また、コントローラ10は、図示しない出力信号を送信することで、高水温サイクル4やHVACユニット5の制御も実行する。
【0049】
次に、
図4及び
図5を参照して、空調装置1の各空調運転モードについて説明する。
【0050】
<暖房モード>
図4は、空調装置1の暖房モードについて説明する図である。暖房モードでは、いわゆる外気吸熱ヒートポンプ運転が実行され、冷媒流路20の冷媒と温水流路40の温水とが、
図4に太実線で示すようにそれぞれ循環する。
【0051】
コントローラ10は、第1開閉弁29及び第3開閉弁31を閉じた状態にするとともに、第2開閉弁30を開いた状態にする。これにより、コンプレッサ21で圧縮され高温になった冷媒は、水冷コンデンサ22へと流れる。
【0052】
水冷コンデンサ22へ流れた冷媒は、水冷コンデンサ22の内部で温水を加熱することにより熱を奪われて低温になった後、第1膨張弁27を通って減圧膨張することでさらに低温となって、室外熱交換器23へと流れる。室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気との間で熱交換を行い加熱された後、そのまま第2開閉弁30を通って、アキュムレータ26へと流れて気液分離される。そして、アキュムレータ26で気液分離された冷媒のうちガス状冷媒が、再びコンプレッサ21へと流れる。
【0053】
一方で、水冷コンデンサ22で冷媒によって加熱された温水は、循環してヒータコア42に流れ、ヒータコア42の周囲の空気を加熱する。加熱された空気は、HVACユニット5の下流側に流されることで、暖房風として用いられる。なお、水冷コンデンサ22で冷媒が十分に温水を加熱できない場合には、外気吸熱ヒートポンプ運転と併用して又は独立して補助加熱器43を運転させることによって温水を加熱してもよい。
【0054】
<冷房モード>
図5は、空調装置1の冷房モードについて説明する図である。冷房モードでは、冷媒流路20の冷媒が、
図5に太実線で示すように循環する。
【0055】
コントローラ10は、第2開閉弁30を閉じた状態にするとともに、第1開閉弁29及び第3開閉弁31を開いた状態にする。これにより、コンプレッサ21で圧縮され高温高圧になった冷媒は、第1開閉弁29を通ってそのまま室外熱交換器23へと流れる。
【0056】
室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気と熱交換を行い冷却された後、リキッドタンク24を通って気液分離される。リキッドタンク24の下流側に接続される内部熱交換器60の外側流路20bには、リキッドタンク24で気液分離された冷媒のうち液状冷媒が、
図2に示すように流通する。
【0057】
外側流路20bを流通する液状冷媒は、高圧の流体であり、リキッドタンク24で気液分離されることで、過冷却度がほぼ0℃の略飽和液状態となっている。
【0058】
他方で、内側流路20aを流通するガス状冷媒は、第2膨張弁28を通過する際に減圧膨張した低圧の流体であり、エバポレータ25を通過する際に空気によって暖められ蒸発している。
【0059】
ここで、内側流路20aは、螺旋状の板部材64によって、螺旋状の室63aと室63bとにそれぞれ区画されている。そのため、内側流路20aに流通したガス状冷媒は、板部材64によって螺旋状に撹拌されながら室63a、63bをそれぞれ流通する。
【0060】
エバポレータ25で蒸発したガス状冷媒は、リキッドタンク24で気液分離された液状冷媒と比べて低圧になっているので、冷媒の飽和温度特性に基づいて、所定の過熱度を超えるまでは飽和液状態の液状冷媒よりも低温となる。
【0061】
したがって、内部熱交換器60の外側流路20bを流通する際に、液状冷媒は、低温のガス状冷媒との間で内管63を介して熱交換を行うことで、ガス状冷媒によって過度に冷却される。過度に冷却された液状冷媒は、飽和液状態から過冷却度をもった過冷却状態となる。また、内側流路20aを流通するガス状冷媒は、液状冷媒によって加熱されることで過熱度をもった過熱状態となる。
【0062】
さらに、内側流路20aの室63a、63bをそれぞれ流通するガス状冷媒は、螺旋状の板部材64によって撹拌されている。そのため、より多くのガス状冷媒が内管63の内壁と熱的に接触するので、内管63を介して、外側流路20bを流通する液状冷媒との間で熱交換を行い易くなる。そして、ガス状冷媒は、外側流路20bを流通する液状冷媒との間で、板部材64を介して熱交換を行うこともできる。その結果、液状冷媒は、螺旋状に内側流路20aを流通するガス状冷媒によって、より冷却されることで、より大きな過冷却度をもった過冷却状態となる。
【0063】
なお、板部材64の螺旋周期Pが内管63の内径Dinよりも長い周期となっているので、ガス状冷媒は、内側流路20aの室63a、63bをそれぞれ流通する際に、圧損が高くなりすぎることなく流通することができる。
【0064】
内部熱交換器60の外側流路20bを流通する際に過冷却状態となった液状冷媒は、第2膨張弁28を通って減圧膨張することでさらに低温となって、エバポレータ25へと流れる。
【0065】
エバポレータ25へ流れた液状冷媒は、エバポレータ25を通過する空気との間で熱交換を行い加熱されることで蒸発し、ガス状冷媒となって内部熱交換器60へと流れる。その際、液状冷媒は、過冷却状態になるまで過度に冷却されているので、エバポレータ25を通過する空気を、より冷却することができる。
【0066】
エバポレータ25における熱交換により蒸発しガス状冷媒となった冷媒は、内部熱交換器60の内側流路20aへ流通し、上述の様に内管63を介して外側流路20bを流通する液状冷媒を冷却する。そして、ガス状冷媒は、液状冷媒によって加熱された後、アキュムレータ26を介して再びコンプレッサ21へと流れ圧縮される。
【0067】
一方で、エバポレータ25で冷媒によって冷却された空気は、HVACユニット5の下流側に流されることで、冷房風として用いられる。
【0068】
なお、エバポレータ25で空気を冷却することによって空気中の水蒸気を凝縮させ取り除いた後、ヒータコア42で再加熱することによって、除湿風を得ることもできる(除湿モード)。
【0069】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0070】
二重管61は、内部に低圧の第1流体としてのガス状冷媒が流れる内管63と、内管63を内部に有し、内管63との間に高圧の第2流体としての液状冷媒が流れる外管62と、を備える。内管63は、内管63の内部を複数の室63a、63bに分け、長手方向に延在する板部材64を有する。板部材64は、長手方向に螺旋状である。
【0071】
このような二重管61によれば、螺旋状の板部材64が内管63の内部を複数の室63a、63bに分けるように長手方向に延在するので、内管63の内部を流れるガス状冷媒は、板部材64によって撹拌される。また、ガス状冷媒は、内管63だけでなく板部材64も介して液状冷媒との間で、熱交換を行う。さらに、内管63は、螺旋状の板部材64によって内管63の内部から螺旋状に保持されるので、径全体の剛性が高くなる。その結果、内外圧差によって内管63が潰れることがなく、かつ、内管63及び板部材64を介したガス状冷媒と液状冷媒との間における熱交換効率を向上させることができる。
【0072】
二重管61は、内管63及び外管62が曲げられた曲げ部61aを有する。曲げ部61aの内管63の内部には、板部材64が配置される。曲げ部61aの内管63は、外側が引っ張られて延びることによって薄くなり易い。しかしながら、曲げ部61aに板部材64が配置された場合には、板部材64も内管63の内部で曲げられ内管63の内壁に嵌合固定される。その結果、板部材64が内管63にかかる応力を3次元的に拡散させることで、内管63の剛性がより高くなるので、曲げ部61aの内管63の外側が延びて薄くなった場合でも内管63が潰れることを抑制できる。
【0073】
二重管61では、内管63の板厚は、外管62の板厚よりも薄い。これにより、内管63を介したガス状冷媒と液状冷媒との間における熱交換効率をより向上させることができる。また、内管63の板厚が外管62の板厚よりも薄くても、内管63は、板部材64によって内部から螺旋状に保持されて径全体の剛性が高くなるので、内外圧差によって潰れることを抑制することができる。
【0074】
さらに、二重管61では、内管63及び板部材64は、別体形成される。すなわち、内管63は、筒状に加工することで簡単に形成でき、板部材64は、長手方向の両端を支持し、一端を長手方向軸中心に回転させることで簡単に形成できる。したがって、内管63及び板部材64は、内管63及び板部材64を一体形成する場合と比較して、それぞれ別体形成して内管63内に板部材64を挿入し嵌合固定することで、簡単に形成でき、加工効率を高くすることができる。
【0075】
板部材64の螺旋周期Pは、内管63の内径Dinよりも長い。したがって、圧損が高くならないように内管63の内部の内側流路20aを流通するガス状冷媒が撹拌されることになるので、コンプレッサ21に過度に負荷がかかることを抑制しつつ、熱交換性能を向上させることができる。
【0076】
なお、板部材64の螺旋周期Pは、内側流路20aを流通するガス状冷媒を確実に撹拌するために、板部材64の長手方向に少なくとも1周期以上となるよう設定されるのが望ましい。また、板部材64は、ガス状冷媒の撹拌性能が高くなるように、曲げ部61aの外管62の曲率半径の3倍以下となるよう螺旋周期Pが設定されるのが望ましい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
例えば、上記実施形態では、内管63の内部に挿入される板部材64は、内管63の内部を2つの室63a、63bに分けることとしたが、3つ以上の複数の室に分けることとしてもよい。
【0079】
また、板部材64は、内管63の内部を室63aと室63bとに完全に区画する態様に限られない。板部材64を、内管63の内径Dinよりも短い幅に形成することによって、内管63の内部の一部だけを長手方向に沿って区切るようにしてもよい。このような板部材64によっても、ガス状冷媒を撹拌することができるので、内部熱交換器60の熱交換効率を向上させることができる。
【0080】
さらに、上記実施形態を適用した実施例に係る二重管61について、
図6から
図8を参照して説明する。
図6は、実施例に係る二重管61の概略構成図である。
図7は
図6のVII−VII線に沿う断面図であり、
図8は
図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。なお、以下の実施例では、上記実施形態と同じ機能を果たす構成には同一の符号を用い、重複する記載を適宜省略して説明する。
【0081】
二重管61の内管63の内部には、
図6に示すように、板部材64が挿入されている。ここで、上記実施形態で説明したように、板部材64は、螺旋状に捩られることで内管63の内径Dinよりも僅かに縮径されて、内管63の中に挿入可能となる。そのため、内管63の一部を曲げる曲げ加工前において、内管63の内部に挿入された板部材64と内管63の内壁との間で僅かに隙間が形成される。
【0082】
その後、板部材64が挿入された状態で内管63の一部が曲げられることによって、板部材64は、内管63の内壁に嵌合固定される。
【0083】
内管63と板部材64との間に形成された隙間は、
図6及び
図7に示すように、曲げ部61aにおいては、形成されない。曲げ加工によって板部材64は内管63の内壁に両側から挟まれて嵌合固定されるので、曲げ加工前に存在していた内管63と板部材64との間の隙間は、曲げ加工後に埋められた状態になる。その結果、板部材64は、曲げ部61aにおいて内管63の内部に当接し、内管63の内側から内管63を保持することになる。
【0084】
他方で、内管63と板部材64との間に形成された隙間は、
図6及び
図8に示すように、曲げ部61aではない場所においては、そのまま維持される。
【0085】
なお、板部材64には、内管63とともに曲げられる際に、板部材64自体の剛性によって曲げられる前の形状を維持する方向に曲げ加工に対する力が働くことになる。そのため、曲げ加工後の板部材64は、
図6及び
図8に示すように、曲げられた内管63の内部において位置が偏り、内管63の曲げ方向外側の内壁に当接する。このように、曲げ部61a以外においても板部材64の一部が内管63と当接することになるので、板部材64と内管63とを介して内管63の内部のガス状冷媒と外側の液状冷媒との間における熱交換効率を二重管61全体で向上させることができる。また、板部材64との間に形成される隙間は僅かな幅であるので、内管63の内部を流れるガス状冷媒は、その多くが螺旋状の板部材64によって撹拌されることになる。したがって、螺旋状の板部材64によって、ガス状冷媒と液状冷媒との間における熱交換効率を二重管61全体で向上させることができる。
【0086】
また、曲げ加工後の板部材64は、内管63の内部において位置が偏っていなくてもよく、内管63と板部材64の両端との間で隙間が均等に形成されてもよい。板部材64との間に形成される隙間は板部材64の内管63内の位置が偏った場合と同様に僅かな幅であるので、内管63の内部を流れるガス状冷媒は、その多くが螺旋状の板部材64によって撹拌されることになる。したがって、内管63と板部材64の両側との間に隙間を均等に形成した場合においても、螺旋状の板部材64によって、ガス状冷媒と液状冷媒との間における熱交換効率を二重管61全体で向上させることができる。
【0087】
このような実施例に係る二重管61によれば、板部材64が曲げ部61aにおいて内管63の内部に当接し、内管63の内側から内管63を保持することによって、曲げ部61aの潰れが抑制されるので、内管63内の通路面積の減少が抑制される。また、板部材64は螺旋状に形成されており、内管63の内側から内管63を螺旋状に保持するので、内管63の曲げ加工時の曲げ剛性が高い状態で維持されることがなくなり、潰れが集中することを回避できる。その結果、内管63の曲げに伴い、内管63の内側に皺が集中することが抑制され、通路面積の減少を抑制できる。
【0088】
また、螺旋状の板部材64が内管63内に介在することになるので、単純に捩れのない真っ直ぐな仕切り板が介在したものと比べて、内管63の長手方向や周方向の全体に渡って、内管63の内方への潰れを抑制できる。さらに、螺旋状の板部材64が曲げ部61aの内管63を内方から螺旋状に保持するので、内管63の一側面にのみ保持力が掛かることを回避でき、内管63の潰れや皺の発生が抑制され、通路面積の減少を抑制できる。
【0089】
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。例えば、内管63の形状は、円管に限らず、内管63に螺旋溝を形成してもよく、螺旋状の板部材64が螺旋溝部の内接円に当接してもよい。
【0090】
本願は、2016年3月14日に日本国特許庁に出願された特願2016−049833に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。