特許第6491794号(P6491794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6491794免疫アッセイのためのパルボウイルスのアルカリ前処理
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  • 特許6491794-免疫アッセイのためのパルボウイルスのアルカリ前処理 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491794
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】免疫アッセイのためのパルボウイルスのアルカリ前処理
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20190318BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20190318BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20190318BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G01N33/569 L
   G01N33/543 501H
   G01N33/53 D
   C12Q1/02
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-507013(P2018-507013)
(86)(22)【出願日】2016年8月11日
(65)【公表番号】特表2018-528418(P2018-528418A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016069150
(87)【国際公開番号】WO2017025603
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】15180536.3
(32)【優先日】2015年8月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ファーツ,エルケ
(72)【発明者】
【氏名】ミュンヒ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リッター,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】タバレス,グロリア
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−513865(JP,A)
【文献】 特開2011−112631(JP,A)
【文献】 特開2001−033459(JP,A)
【文献】 特開平02−219591(JP,A)
【文献】 特開2001−343388(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/032990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象からの試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法であって、以下の工程:
(a)前記試料を塩基と接触させる工程、および
(b)前記試料中の前記ウイルスのカプシドポリペプチドを検出する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記カプシドポリペプチドの検出が、捕捉化合物により固体表面に少なくとも1種類のカプシドポリペプチドを捕捉することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに前記カプシドポリペプチドを検出化合物と接触させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記捕捉化合物および/または検出化合物が、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスの前記検出が、前記ウイルスをサンドイッチ免疫アッセイで検出することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、便試料または体液の試料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料の塩基との前記接触が、前記試料を少なくとも10.5のpHでインキュベートすることを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料の塩基との前記接触が、前記試料を前記塩基の存在下で少なくとも2分間インキュベートすることを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記カプシドポリペプチドの検出が、ウイルスのVP1、VP2およびVP3カプシドポリペプチドの少なくとも1つを検出することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記非エンベロープウイルスが、パルボウイルス科のウイルス、一態様において霊長類エリスロパルボウイルス1(パルボウイルスB19)である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドの検出のために対象からの試料を前処理するための方法であって、前記試料を塩基と接触させることを含む、前記方法。
【請求項13】
試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するためのキットであって、塩基および前記ウイルスに特異的に結合する少なくとも1種類の結合化合物を含む、前記キット。
【請求項14】
非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための免疫アッセイにおける使用のために対象の試料を前処理するための;または免疫アッセイにより対象の試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための塩基の使用。
【請求項15】
試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための分析デバイスであって、分析ユニットを試料処理ユニットと共に含み、前記の分析ユニットが、以下の工程:
(a)前記試料処理ユニットに適用された試料を塩基と接触させる工程、および
(b)前記試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出する工程;
を実施させるために適合している、前記分析デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象からの試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法であって、以下の工程:(a)前記の試料を塩基と接触させ、そして(b)前記の試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出する;を含む方法に関する。さらに、本発明は、ウイルスの検出のために対象からの試料を前処理するための方法であって、前記の試料を塩基と接触させることを含む方法に関する。さらに、本発明は、前記の方法に関するキット、使用およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
非エンベロープウイルスは、ほとんどのエンベロープウイルスとは対照的に、それらの頑強性およびそれらが熱、酸、界面活性剤等を含む環境的影響に比較的非感受性であることが知られている。結果として、非エンベロープウイルスの存在を検出するために、ウイルスの構成分子を得るために非エンベロープウイルスを分解することは困難であることが知られている。
【0003】
非エンベロープウイルスの群の一例であるパルボウイルスは、カプシド中にパッケージングされた線状非分節一本鎖DNAゲノムを有する小さい非エンベロープウイルスである。パルボウイルスのカプシドは、本質的に2〜4種類のカプシドタンパク質(それぞれVP1〜VP2またはVP1〜VP4と呼ばれる)からなる。カプシドタンパク質は、ウイルスのゲノム中のオープンリーディングフレームから発現され、その内の少なくとも一部は、全てのVPタンパク質に関して同一であり、従ってVPタンパク質は、アミノ酸配列において部分的に同一である。パルボウイルスは、広い範囲のpH値、溶媒、および温度に非感受性であるそれらのカプシドの並外れた安定性に関して知られている(例えば、Yuan and Parrish (2001), Virology 279: 546)。
【0004】
ヒトに感染するエリスロパルボウイルス属の一員である霊長類エリスロパルボウイルス1型(パルボウイルスB19)は、“第5病”としても知られている伝染性紅斑の原因因子である。その疾患の症状は、発熱、頭痛、吐き気、および下痢のようなウイルス感染の古典的症状を含む。これらの後に、通常は、特に頬における赤い発疹(典型的には法令線、額、および口は含まない);ならびに体幹および/または四肢における赤い発疹が生じる。妊婦におけるパルボウイルスB19感染は、それが胎児における胎児水腫および貧血症の発現をもたらし得るため、特に重大である。
【0005】
パルボウイルスB19感染の免疫学的診断は、通常は血液試料中で実施され、ウイルスカプシドタンパク質を検出する。用いられる方法は、アッセイの感度を増大させるためのウイルス粒子の分解を目的とした試料の酸性前処理を含む(国際公開第2008/072216号)。カオトロピック塩も、同じ目的のために用いられる(JP 2007−278902)。しかし、酸処理は、可逆的変性を引き起こし、ウイルス粒子の少なくとも部分的な再構築を可能にする。さらに、血液試料由来の混同する(confounding)可能性のある免疫グロブリンも再生する可能性があり、従って、効果的に除去されない。カオトロピック塩は、検出反応を妨げる可能性があり、除去された場合、カプシドおよび交絡因子(confounders)の再生を可能にする。さらに、それらの使用は、ステンレス鋼モジュールを含むデバイスにおいて、それらが腐食を引き起こし得るため、重大である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/072216号
【特許文献2】JP 2007−278902
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yuan and Parrish (2001), Virology 279: 546
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、パルボウイルスを検出するための向上した手段および方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明の手段および方法により、独立項の特徴を用いて解決される。分離された様式で、またはあらゆる任意の組み合わせで実現され得る好ましい態様が、従属項において列挙されている。
【0010】
従って、本発明は、対象からの試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法であって、以下の工程:
(a)前記試料を塩基と接触させる工程、および
(b)前記試料中の前記ウイルスの前記カプシドポリペプチドを検出する工程;
を含む前記方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で用いられる際、用語“有する”、“含む(comprise)”もしくは“含む(include)”またはそれらのあらゆる任意の文法上のバリエーションは、非排他的方式で用いられている。従って、これらの用語は、これらの用語により導入される特徴に加えて、さらなる特徴がこの文脈において記載される実体中に存在しない状況、ならびに1以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことができる。例として、表現“AはBを有する”、“AはBを含む(comprises)”および“AはBを含む(includes)”は、両方とも、Bに加えて他の要素がA中に存在しない状況(すなわち、唯一かつ排他的にBからなる状況)およびBに加えて1以上のさらなる要素、例えば要素C、要素CおよびD、またはさらに他の要素が実体A中に存在する状況の両方を指すことができる。
【0012】
さらに、以下において用いられる際、用語“好ましくは”、“より好ましくは”、“最も好ましくは”、“詳細には”、“より詳細には”、“具体的には”、“より具体的には”または類似の用語は、任意の特徴と合わせて、さらなる可能性を制限することなく用いられている。従って、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を制限することは決して意図されていない。本発明は、当業者が認識しているであろうように、代替の特徴を用いることにより実施されることができる。同様に、“本発明の一態様において”または類似の表現により導入される特徴は、任意の特徴であることが、本発明のさらなる態様に関する一切の制限なしで、本発明の範囲に関する一切の制限なしで、かつそのような方式で導入される特徴を本発明の他の任意の、または任意ではない特徴と組み合わせる可能性に関する一切の制限なしで意図されている。さらに、別途特筆されない限り、用語“約”は、示された値±20%に関する。
【0013】
本発明の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法は、一態様において、インビトロ法である。さらに、それは、上記で明確に言及された工程に加えて工程を含むことができる。例えば、さらなる工程は、例えば、工程a)に関する試料を得ること、または工程b)において測定値もしくは修正された測定値を計算することをに関することができる。さらに、前記の工程の1以上は、自動化された設備により実施されることができる。従って、ある態様において、非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法は、以下の工程を含む:
(a)試料を塩基と接触させ、それにより試料が前記の塩基と相互作用することを可能にする反応混合物を作製し、
(b)場合により前記の反応混合物を中和し、
(c)前記のカプシドポリペプチドに特異的に結合する少なくとも2種類の結合化合物を添加し、前記の少なくとも2種類の結合化合物の1種類は、捕捉化合物であり、前記の少なくとも2種類の結合化合物の1種類は、検出化合物であり、
(d)前記の反応混合物を前記の結合化合物と混合することにより、免疫反応混合物を形成し、
(e)前記の免疫反応混合物を、前記の試料中に存在する前記のカプシドポリペプチドが少なくとも2種類の結合化合物と免疫反応して免疫反応産物を形成することを可能にするために十分な期間の間維持し、そして
(f)前記の免疫反応産物のいずれかの存在および/または濃度を検出する。
【0014】
当業者には理解されるであろうように、対象の試料中のウイルスのカプシドポリペプチドの検出は、通常はウイルスの存在を示すであろう。従って、非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法は、一態様において、以下の工程を含む、対象からの試料中の非エンベロープウイルスを検出するための方法である:
(a)前記の試料を塩基と接触させ、
(b)前記の試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出し、そして、それにより、
(c)前記のウイルスを検出する。
【0015】
一態様において、前記の方法において、カプシドポリペプチドは、非サイズ判別検出法、すなわち、一態様において、検出される分析物の分子量を検出することなく前記のカプシドポリペプチドの特徴を検出する方法により検出される。従って、一態様において、前記の方法は、サンドイッチ免疫アッセイ、特に二重抗体サンドイッチ免疫アッセイ、例えばサンドイッチELISAまたはサンドイッチECLIAを含む。
【0016】
用語“ウイルス”は、当業者により理解されている。用語“非エンベロープウイルス”は、最も外側の覆いとしてカプシドを有するウイルスに関し;従って、一態様において、非エンベロープウイルスは、脂質膜により取り囲まれていないウイルスである。一態様において、非エンベロープウイルスは、レオウイルス、カリシウイルス(Calcivirus)、ピコルナウイルス、パルボウイルス、サーコウイルス、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、またはアデノウイルスである。一態様において、非エンベロープウイルスは、ヒト病原性ウイルスである。従って、さらなる態様において、非エンベロープウイルスは、ヒト病原性レオウイルス、ヒト病原性カリシウイルス(Calcivirus)、ヒト病原性ピコルナウイルス、ヒト病原性パルボウイルス、ヒト病原性サーコウイルス、ヒト病原性ポリオーマウイルス、ヒト病原性パピローマウイルス、またはヒト病原性アデノウイルスである。
【0017】
一態様において、非エンベロープウイルスは、パルボウイルス科のウイルスである。一般に“パルボウイルス”とも呼ばれる用語“パルボウイルス科”は、当業者には既知である。ウイルスの科であるパルボウイルス科は、2つの亜科を含む:アンビデンソウイルス属(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス属(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス属(Hepandensovirus)、イテラデンソウイルス属(Iteradensovirus)、およびペンスチルデンソウイルス属(Penstyldensovirus)を含むデンソウイルス亜科;ならびにアムドパルボウイルス属(Amdoparvovirus)、アベパルボウイルス属(Aveparvovirus)、ボカパルボウイルス属(Bocaparvovirus)、コピパルボウイルス属(Copiparvovirus)、デペンドパルボウイルス属(Dependoparvovirus)、エリスロパルボウイルス属(Erythroparvovirus)、プロトパルボウイルス属(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス属(Tetraparvovirus)を含むパルボウイルス亜科。従って、用語“パルボウイルス科のウイルス”は、ゲノムの類似性に基づいて前記のウイルスのファミリーの一員として分類された、または分類可能であるウイルスに関する。一態様において、ウイルスは、パルボウイルス亜科のウイルスである。さらなる態様において、ウイルスは、エリスロパルボウイルス属のウイルスである。さらなる態様において、ウイルスは、霊長類エリスロパルボウイルス1型(パルボウイルスB19)である。
【0018】
本発明の方法の文脈において用いられる用語“接触させること”は、当業者により理解されている。一態様において、その用語は、本発明の化合物、特に塩基を試料と、またはさらなる化合物と物理的に接触させ、それにより化合物およびさらなる化合物を相互作用させることに関する。本明細書で用いられる際、用語“反応混合物”は、第1化合物を第2化合物と、例えば塩基を試料と接触させ、前記の第1および第2化合物が反応することを可能にするあらゆる混合物に関する。
【0019】
用語“塩基”は、本明細書で用いられる際、水溶液中のpHの増大を誘導する化合物に関する。一態様において、塩基は、ブレンステッド・ローリー塩基である。さらなる態様において、塩基は、水酸化物イオンを含む、または水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物である。さらなる態様において、塩基は、アルカリ金属水酸化物、例えばLiOH、NaOH、KOH、もしくはRbOH;またはアルカリ土類金属水酸化物、例えばBe(OH)、Mg(OH)、もしくはCa(OH)である。別の態様において、塩基は、高くても4、一態様において高くても3、さらなる態様において高くても2のpKB値を有する。さらなる態様において、塩基は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0020】
一態様において、試料を塩基と接触させることは、前記の試料を少なくとも10.5のpHで、さらなる態様において少なくとも11のpHで、さらなる態様において少なくとも11.5のpHで、さらなる態様において少なくとも11.7のpHでインキュベートすることを含む。当業者により理解されているであろうように、強アルカリ性のpHにおける長期のインキュベーションは、カプシドポリペプチドを含むポリペプチドの加水分解を引き起こし得る。従って、一態様において、試料は、高くても14、さらなる態様において高くても13のpHでインキュベートされる。他の態様において、試料は、12±1.5のpHで、一態様において11.5±1のpHで、さらなる態様において11.5±0.5のpHでインキュベートされる。一態様において、水溶液のpHは、DIN EN ISO 10523(2012年4月)に従って決定される。従って、一態様において、試料を塩基と接触させることは、試料を上で示されたpHの緩衝液、一態様において少なくとも1つのpKを上で示されたpHにおいて有する緩衝化合物を含む緩衝液と接触させることである。
【0021】
一態様において、試料を塩基と接触させることは、試料を塩基の存在下で少なくとも2分間、一態様において少なくとも5分間、さらなる態様において少なくとも9分間インキュベートすることを含む。当業者により理解されているであろうように、強アルカリ性のpHにおける長期のインキュベーションは、カプシドポリペプチドを含むポリペプチドの加水分解を引き起こし得る。従って、一態様において、試料は、塩基の存在下で2時間未満、一態様において1時間未満、さらなる態様において30分未満インキュベートされる。従って、一態様において、試料は、塩基の存在下で2分間〜60分間、一態様において5分間〜20分間、さらなる態様において9分間〜15分間インキュベートされる。
【0022】
従って、一態様において、試料を塩基と接触させることは、試料を12±1.5のpHで2分間〜60分間、一態様において5分間〜20分間、さらなる態様において9分間〜15分間インキュベートすることを含む。別の態様において、試料を塩基と接触させることは、試料を11.5±1のpHにおいて2分間〜60分間、一態様において5分間〜20分間、さらなる態様において7分間〜15分間インキュベートすることを含む。さらなる態様において、試料を塩基と接触させることは、試料を11±0.5のpHにおいて2分間〜60分間、一態様において5分間〜20分間、さらなる態様において9分間〜15分間インキュベートすることを含む。
【0023】
一態様において、試料を塩基と接触させることは、前記の試料を10℃〜50℃、一態様において20℃〜45℃、さらなる態様において30℃〜40℃の温度において、さらなる態様において37±3℃の温度においてインキュベートすることを含む。
【0024】
理解されるであろうように、特に用いられる結合化合物(単数または複数)の性質に応じて、塩基で処理された試料を結合化合物と接触させる前に塩基を中和することが、好都合である可能性がある。従って、一態様において、方法は、工程b)においてカプシドポリペプチドを検出する前に塩基を中和するさらなる工程を含む。しかし、中和は、例えば塩基で処理された試料が塩基処理の後に強く希釈される場合、および/または用いられる結合化合物(単数または複数)がアルカリ性条件に非感受性である場合には、不要であってもよい。一態様において、試料は、8±2のpHまで、一態様において7±2のpHまで、さらなる態様において7±1のpHまで中和される。当業者は、塩基を水溶液中で中和するための適切な方法を知っている。一態様において、中和は、適切なpHにおいて緩衝された緩衝化合物を添加することにより成し遂げられる。一態様において、中和は、試料が本発明の結合化合物に接触させられる前に実施される。さらなる態様において、本発明の結合化合物(単数または複数)は、中和のために用いられる中和溶液中に含まれ、すなわち、中和が実施される一方で、前記のウイルスを結合ポリペプチドと接触させる。
【0025】
一態様において、変性したポリペプチドは、アルカリ処理後に、特に塩基を中和した後に試料から除去されない。さらなる態様において、変性したポリペプチドは、カオトロピック剤、特にカオトロピック界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムの添加により可溶化されない。しかし、本発明により、アルカリ処理後に、弱い、一態様において非イオン性の界面活性剤が、例えば固体表面の湿潤を確実にするために添加される。
【0026】
本明細書で用いられる際、用語“検出する”は、試料中の検出されるべきウイルスのカプシドポリペプチドの少なくとも1つの特徴、一態様において免疫学的特徴を定性的または定量的に検出することを指す。本発明に従う特徴は、一態様において、試料中のカプシドポリペプチドの検出、例えば前記の特徴に特異的に結合する結合化合物による検出を促進するカプシドポリペプチドの構造的特徴である。一態様において、前記の特徴は、免疫学的手段によるカプシドポリペプチドの同定、さらなる態様において定量化を容易にする。典型的な使用可能な特徴は、試料中に存在する他の化学化合物からの前記のカプシドポリペプチドの識別を容易にする特徴である。一態様において、カプシドポリペプチドの検出は、カプシドポリペプチドが試料中に方法の検出限界より上の力価で存在するかまたは存在しないかを確立する。所与の方法に関する検出限界を確立する方法は、当業者には既知であり、例えば希釈滴定実験を含む。さらなる態様において、検出は、試料中のカプシドポリペプチドまたはウイルスの量または力価を半定量的または定量的に検出することである。定量的検出に関して、カプシドポリペプチドもしくはウイルスの絶対量もしくは正確な量が検出されると考えられ、またはカプシドポリペプチドもしくはウイルスの相対量が検出されるであろう。相対量は、正確な量が検出されることができない、または検出されないものとする場合に検出され得る。前記の場合、カプシドポリペプチドまたはウイルスが存在する量が、第2の、一態様において予め決定された量の前記のカプシドポリペプチドまたはウイルスを含む第2試料に関して増大したかまたは減少したかが、検出されることができる。
【0027】
当業者には理解されるであろうように、カプシドポリペプチドの検出は、選択されるアッセイ形式に依存するであろう。一態様において、アッセイは、サンドイッチアッセイであり、ここで、分析物、例えばウイルス、そのカプソマー、またはそのカプシドポリペプチドが、固体表面に結合した捕捉化合物に結合し、ここで、捕捉された分析物の量は、本明細書において下記で明記されている検出化合物の前記の捕捉された分析物への結合により検出される。一態様において、捕捉および/または検出化合物は、抗体であり、サンドイッチアッセイは、サンドイッチ免疫アッセイである。当業者には理解されるであろうように、一態様において、分析物の検出可能な特徴は、分析物上に一度より多く存在することができ;そのような場合、捕捉化合物および検出化合物は、両方とも前記の特徴を認識することができ;または、捕捉化合物は、第1の特徴を認識し、かつ検出化合物は、第2の、すなわち構造的に異なる特徴を認識する。しかし、分析物の特異的な検出可能な特徴は、分析物上に一度だけ存在することができ;そのような場合、一態様において、捕捉化合物は、第1の特徴を認識し、かつ検出化合物は、第2の、すなわち構造的に異なる特徴を認識する。
【0028】
一態様において、検出されるウイルスおよび/またはカプシドポリペプチドの特徴は、前記のウイルスのカプシドポリペプチド中に含まれるエピトープである。用語“カプシドポリペプチド”は、本明細書で用いられる際、本発明のウイルスのカプシド中に検出可能な量で含まれるあらゆるポリペプチドに関する。さらなる態様において、カプシドポリペプチドという用語は、ウイルスカプシドの構造的構成要素であるポリペプチドに関し、ここで、一態様において、カプシドの構造的構成要素は、構造的に正常なカプシドを形成するために、および/または感染性ウイルス粒子を形成するために必要とされる構成要素である。さらなる態様において、カプシドポリペプチドは、ウイルスカプシド中にカプシドあたり少なくとも5コピー、一態様においてカプシドあたり少なくとも10コピー存在するポリペプチドである。一態様において、ウイルスは、パルボウイルスであり、カプシドポリペプチドは、ウイルスのVP1、VP2、VP3、およびVP4カプシドポリペプチドの少なくとも1つである。従って、一態様において、本発明のパルボウイルス科のウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法は、ウイルスのVP1、VP2、VP3、およびVP4カプシドポリペプチドの少なくとも1つを検出することを含む。
【0029】
本発明の方法は、非エンベロープウイルス、一態様において上記で明記されたようなパルボウイルス科のウイルスのカプシドポリペプチドを検出することを含み;従って、前記の方法において検出されるべき“分析物”は、一態様において、前記のカプシドポリペプチドである。当業者には理解されるであろうように、本発明の方法は、さらに、さらなる分析物、例えば1種類以上のさらなるカプシドポリペプチド(単数または複数)を検出することを含むことができる。当業者には理解されるであろうように、分析物としてのウイルスカプシドポリペプチドの検出は、一態様において、前記のカプシドポリペプチドのオリゴマーの検出を含み、かつ/または完全なカプシドの検出を含むことができる。
【0030】
一態様において、カプシドポリペプチドの検出は、試料を結合化合物に接触させることを含む。本明細書で用いられる際、用語“結合化合物”は、本発明の分析物に、一態様においてカプシドポリペプチドに結合する化学分子に関する。一態様において、結合化合物は、有機分子またはその複合体であり、さらなる態様において、生物学的高分子、特にポリペプチドまたはその複合体である。一態様において、結合化合物は、抗体、特にモノクローナル抗体である。従って、本明細書で用いられる際、用語“免疫反応産物”は、一態様において、少なくとも1つの抗体および本発明のカプシドポリペプチドの間の特異的複合体に関する。一態様において、結合化合物は、間接的または直接的に、本発明の分析物に、分析物および結合化合物を含む複合体の検出を可能にする十分な親和性で結合する。一態様において、分析物/結合化合物の解離定数(K)は、高くても10−7mol/L、さらなる態様において高くても10−8mol/L、さらなる態様において高くても10−9mol/Lである。一態様において、結合化合物は、間接的または直接的に、本発明のカプシドポリペプチドに、カプシドポリペプチドおよび結合化合物を含む複合体の検出を可能にする十分な親和性で結合する。一態様において、結合化合物は、本発明の分析物に、特にカプシドポリペプチドに特異的に結合する化合物である。一態様において、結合化合物は、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合し;従って、一態様において、結合化合物は、本明細書の他の箇所で明記されているようなアルカリ処理により変性していないカプシドポリペプチドのエピトープに結合する。さらなる態様において、結合化合物は、分析物、例えばカプシドポリペプチドの連続した(線状)エピトープ、すなわちアミノ酸配列中で連続しているアミノ酸により形成されるエピトープに結合する。従って、一態様において、結合化合物は、分析物の立体構造エピトープに結合しない結合化合物である。一態様において、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物は、本明細書において以下で記載される方法により同定される結合化合物である。
【0031】
当業者は理解するであろうように、用語“特異的に結合すること”またはその文法上のバリエーションは、試料中に存在する他の化合物、典型的には生体分子が、本発明のリガンド、特に結合化合物に有意に結合しないことを示すために用いられ;一態様において、これは、化学化合物、例えば干渉化合物の、分析物との相互作用に関わらない結合化合物の領域への結合を排除しない。一態様において、結合化合物の分析物以外の化合物への結合のレベルは、結果として分析物に対する親和性の高くてもそれぞれ10%以下、5%以下、2%以下、または1%以下である結合親和性をもたらす。
【0032】
一態様において、カプシドポリペプチドの検出は、カプシドポリペプチドを捕捉化合物により固体表面に捕捉することを含む。本明細書で用いられる際、用語“捕捉化合物”は、本明細書の他の箇所で明記されているような固体表面に取り付けられている、または取り付けられるのに適合している結合化合物に関する。当業者には理解されるであろうように、捕捉化合物の固体表面への取り付けおよび前記の固体表面に結合した捕捉化合物の試料との接触は、前記の捕捉化合物により結合された分析物を、(存在する場合)前記の試料中に含まれる他の化合物から特異的に分離することを可能にする。結合化合物、例えば生物学的分子、典型的にはポリペプチドを固体表面に取り付ける方法は、当該技術で周知であり、例えば疎水性相互作用による結合、ビオチン化および固定されたストレプトアビジンを介した結合、共有結合、抗体−抗原相互作用等、またはこれらの相互作用の組み合わせを含む。一態様において、捕捉化合物は、捕捉複合体であることもできる。一態様において、捕捉化合物は、抗体である。さらなる態様において、捕捉化合物は、モノクローナル抗体である。別の態様において、捕捉化合物は、抗体、すなわち捕捉抗体、特にモノクローナル抗体である。一態様において、捕捉抗体は、ビオチンに共有結合している。
【0033】
一態様において、カプシドポリペプチドの検出は、前記のカプシドポリペプチドを検出化合物と接触させることを含む。本明細書で用いられる際、用語“検出化合物”は、本明細書の他の箇所で明記されているような指示体に結合した結合化合物に関する。一態様において、検出化合物は、固体表面に結合しておらず、固体表面に結合するのに適合していない。一態様において、検出化合物は、本発明の分析物に、一態様においてカプシドポリペプチドに直接結合する化合物である。一態様において、検出化合物は、検出複合体であることもできる。当業者は、選択される指示体に応じてどのように結合化合物または結合複合体を指示体に結合させるかを知っている。一態様において、検出化合物中の結合剤および指示体の間の結合は、共有結合である。一態様において、検出化合物は、抗体、すなわち検出抗体である。さらなる態様において、検出化合物は、モノクローナル抗体である。別の態様において、検出化合物は、ルテニウムイオンを含む錯体、例えばトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)錯体に共有結合した抗体、特にモノクローナル抗体である。
【0034】
一態様において、捕捉化合物で構成される結合剤および検出化合物の結合化合物は、同一ではない。
用語“指示体”は、本明細書で用いられる際、前記の指示体を含む分子または複合体の存在を検出可能にするのに適合している化合物に関する。典型的には、指示体は、検出可能な特性、典型的には光学的および/または酵素的特性を有する。しかし、前記の検出可能な特性が、放射線を発する特性であることも、想定されている。
【0035】
用語“光学的特性”は、本明細書で用いられる際、光学機器により検出されることができるあらゆる特性に関する。具体的には、光学的に決定可能な特性は、以下の特性からなる群から選択される少なくとも1つの特性であることができ、またはそれを含むことができる:反射特性、透過特性、放射特性、散乱特性、蛍光特性、燐光特性、回折特性、および偏光特性。本発明により想定されるさらなる光学的特性は、色、蛍光、発光、または屈折である。一態様において、本明細書で言及される光学的に決定可能な特性は、光学的に検出されることができる化学化合物の特性、例えば光吸収、光放射、再発光(light remission)、またはそれと関係する特性を指す。本明細書で用いられる光学的に決定可能な特性の検出は、以前に検出不能であった特性の存在の検出、以前に検出されている特性の非存在の検出、および特性の定量的変化の検出、すなわち少なくとも1つの光学的特性の変化の程度に相関する信号強度の変化の検出を包含することは、理解されるであろう。用語“光学的に決定可能な特性”は、一態様において、電気発生化学発光としても知られている電気化学発光にも関することは理解されている。
【0036】
用語“酵素的特性”は、本明細書で用いられる際、生物学的触媒作用により基質から検出可能な生成物を生成する指示体の特性に関する。従って、酵素的特性は、典型的には前記の指示体中の前記の酵素的特性を有するポリペプチドの存在により与えられる。典型的には、酵素的特性は、以下の酵素活性からなる群から選択される少なくとも1種類の酵素活性である:(例えばアルカリホスファターゼにおける)ホスファターゼ活性、(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼにおける)ペルオキシダーゼ活性、および(例えばベータ−ガラクトシダーゼにおける)グリコシダーゼ活性。酵素活性に関する典型的な基質は、当該技術で周知である。典型的には、前記の酵素活性は、本明細書において上記で明記された決定可能な光学的特性を有する生成物を生成し、または/かつ前記の酵素活性は、電気機器により決定可能である生成物を生成する。
【0037】
本明細書で用いられる際、用語“固体表面”は、本発明の捕捉化合物に結合するのに適合しており、かつ例えば物理的手段により試料から分離されるのに適合しているあらゆる適切な固体表面に関する。一態様において、前記の固体表面は、ビーズ、一態様においてマイクロビーズ、例えば磁気または常磁性マイクロビーズの表面である。一態様において、前記の表面は、例えば捕捉化合物の部分構造に結合する分子を共有結合的または非共有結合的に取り付けることにより捕捉化合物の結合を向上させるように適合している。捕捉化合物の部分構造に結合する典型的な分子は、例えば抗体、ストレプトアビジン、錯体形成したニッケルイオン等である。さらなる態様において、固体表面は、前記の捕捉化合物に、共有結合および/または非共有結合により、例えば疎水性相互作用により結合する。従って、一態様において、前記の固体表面は、マルチクラスタープレートの表面である。一態様において、マルチクラスタープレートの表面は、捕捉化合物の結合に関する親和性および/または能力を増大させるために前処理されている。適切な前処理は、当該技術で既知である。
【0038】
用語“試料”は、本明細書で用いられる際、本発明のウイルスまたはその構成部分を含むことが疑われる試料に関する。一態様において、試料は、本発明のウイルスのカプシドポリペプチドを含むことが疑われる試料である。一態様において、試料は、体液の試料、組織もしくは器官からの試料、または外部もしくは内部体表面から得られた洗浄/すすぎ液もしくはスワブもしくはスメアの試料であるか、またはそれを含む。一態様において、便、尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清、血漿、または涙液の試料が、本発明の方法による試料として包含される。試料は、ブラシ、(綿)スワブ、スパーテル、すすぎ/洗浄液、パンチ生検デバイスの使用、針もしくはランセットによる腔の穿刺により、または外科用器具により得られることができる。しかし、一態様において尿生殖路、肛門周囲領域、肛門管、口腔、上部気道消化管および表皮からのかき落とし、スワブまたは生検を含む周知の技法により得られた試料も、本発明の試料として含まれる。無細胞流体は、体液または組織もしくは器官から、溶解技法、例えばホモジナイゼーションにより、および/または分離技法、例えば濾過もしくは遠心分離により得られることができる。一態様において、試料は、本発明のウイルスおよび/またはウイルスカプシドポリペプチドを含むことが知られている体液、すなわち、一態様において、血液、血漿、血清、唾液等から得られる。試料は、本発明の方法を実施するためにさらに処理されることができることは、理解されるべきである。特に、細胞は、当該技術で既知の方法および手段により試料から除去されることができる。一態様において、試料は、免疫グロブリンを含む試料、一態様において血液、血清、または血漿試料である。
【0039】
用語“対象”は、本明細書で用いられる際、動物、一態様において哺乳類、さらなる態様において霊長類、さらなる態様においてヒトに関する。一態様において、本発明に従う対象は、パルボウイルスに感染していることが疑われる対象であり;従って、一態様において、対象は、少なくとも1つ、さらなる態様において少なくとも2つの、当業者に既知であるような、そして本明細書の他の箇所で明記されているようなパルボウイルス感染の症状を示している対象である。しかし、対象が、子供の親戚、家族の一員、遊び仲間、および/または保護者であることも、想定されており、ここで、前記の子供は、パルボウイルスに感染していることが診断されたものである。
【0040】
用語“抗体”は、本明細書で用いられる際、モノクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成された多特異性抗体(例えば二特異性抗体)、および抗体断片を、それらが本明細書の他の箇所で明記されている所望の結合活性を示す限り含む。一態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。一態様において、抗体は、完全長抗体または抗体フラグメントである。
【0041】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられることができる。免疫グロブリンの5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、さらに下位クラス(イソ型)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けられることができる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は、周知であり、例えばAbbas et al., Cellular and Mol. Immunology, 第4版, W.B. Saunders, Co. (2000)において一般的に記載されている。抗体は、抗体の1以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合により形成されるより大きい融合分子の一部であることができる。
【0042】
用語“完全長抗体”、“完全抗体”および“抗体全体”は、本明細書において、その実質的に完全な形態であり下記で定義されるような抗体フラグメントではない抗体を指すために互換的に用いられている。その用語は、特にFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。“抗体フラグメント”は、完全な抗体の部分を含み、一態様においてその抗原結合領域を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子、ナノボディ、および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を有する“Fab”フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントおよび残りの“Fc”フラグメントを生成し、その名前は、その容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理は、2つの抗原組み合わせ(antigen−combining)部位を有し、なお抗原を架橋することができるF(ab’)2フラグメントを生じる。“Fv”は、完全な抗原結合部位を含有する最小限の抗体フラグメントである。一態様において、2鎖Fv種は、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの密着した非共有結合的会合での2量体からなる。短鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインが、軽鎖および重鎖が2鎖Fv種における構造に類似した“2量体”構造で会合することができるように、柔軟なペプチドリンカーにより共有結合的に連結されていることができる。それぞれの可変ドメインの3つの超可変領域(HVR)が相互作用して抗原結合部位を定めているのは、この立体配置においてである。まとめると、6つのHVRは、抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、(結合部位全体よりは低い親和性においてではあるが)抗原を認識して結合する能力を有する。用語“ダイアボディ”は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)中で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上での2つのドメインの間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、そのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対になり2つの抗原結合部位を作り出すことを強いられる。ダイアボディは、二価または二重特異性であることができる。ダイアボディは、例えば欧州特許第0 404 097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134;およびHollinger et al., PNAS USA 90 (1993) 6444-6448においてより完全に記載されている。トリアボディ(Triabodies)およびテトラボディ(tetrabodies)も、Hudson et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134において記載されている。
【0043】
用語“モノクローナル抗体”は、本明細書で用いられる際、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団中に含まれる個々の抗体は、可能性のある変異、例えば微量存在し得る自然発生変異を除いて同一である。従って、修飾語句“モノクローナル”は、別々の抗体の混合物ではないものとしての抗体の性質を示す。特定の態様において、そのようなモノクローナル抗体は、典型的には分析物に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、ここで、その分析物に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の分析物に結合するポリペプチド配列の選択を含むプロセスにより得られた。例えば、選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールからの独特のクローンの選択することができる。選択された標的結合配列は、さらに、例えば標的に関する親和性を向上させるために、標的結合配列をヒト化するために、細胞培養におけるその産生を向上させるために、インビボでのその免疫原性を低減するために、多特異性抗体を作り出すために、等で変更されることができること、そして変更された標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることは、理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的にはそれらに他の免疫グロブリンが混入していない点で有利である。
【0044】
好都合には、本発明の基礎となる研究において、アルカリ処理は非エンベロープウイルスのカプシド、例えばパルボウイルスのカプシドを分解させ、これらのカプシドポリペプチドを検出する方法における信号強度における増大を引き起こすことが分かった。さらに、カプシドポリペプチドは、ほとんどの他のポリペプチドとは対照的に、強アルカリ性処理の後でさえも可溶性のままである。従って、アルカリ前処理は、カプシドポリペプチドの特異的信号を増大させ、一方で干渉化合物の信号は減少させることが見出された。
【0045】
上記でなされた定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。さらに下でなされる追加の定義および説明も、本明細書において記載される全ての態様に、必要な変更を加えて適用される。
【0046】
本発明は、さらに、前記の試料を塩基と接触させることを含む、ウイルスの検出のために対象からの試料を前処理するための方法に関する。
対象からの試料を前処理するための方法は、明確に言及された工程に加えて工程を含むこともできる。さらに、方法は、一態様において、インビトロ法である。一態様において、検出されるべきウイルスは、非エンベロープウイルスであり、さらなる態様において、本明細書において上記で明記されたパルボウイルス科のウイルスである。
【0047】
本発明は、試料中のウイルスを検出するためのキットであって、塩基および少なくとも1種類の、一態様において少なくとも2種類の前記のウイルスに特異的に結合する結合化合物(単数または複数)を含むキットにも関する。
【0048】
用語“キット”は、本明細書で用いられる際、一緒に包装されることができる、またはできない本発明の前記の化合物、手段または試薬の集合を指す。キットの構成要素は、別々のバイアルに(すなわち、別々の部分のキットとして)含まれていることができ、または(特に結合剤)単一のバイアル中で提供されることもできる。さらに、本発明のキットは、本明細書において上記で言及された方法を実施するために用いられるべきであることは、理解されるべきである。一態様において、全ての構成要素が上記で言及された方法を実施するために使用準備済の様式で提供されることが、想定されている。さらに、キットは、一態様において、前記の方法を実施するための指示を含有する。指示は、紙または電子形態の取扱説明書により提供されることができる。加えて、説明書は、本発明のキットを用いて前記の方法を実施した際に得られた結果を解釈するための指示を含むことができる。一態様において、キットは、少なくとも2種類の結合化合物を含み、ここで、少なくとも1種類の結合化合物は、捕捉化合物であり、かつここで、少なくとも1種類の結合化合物は、検出化合物である。一態様において、キットに含まれる少なくとも1種類の捕捉化合物は、ビオチン標識を含む。別の態様において、キットに含まれる少なくとも1種類の検出化合物は、ルテニウム標識を含む。また、一態様において、キットは、さらに中和手段、例えば緩衝剤を含む。一態様において、検出されるべきウイルスは、非エンベロープウイルスであり、さらなる態様において、本明細書において上記で明記されたパルボウイルス科のウイルスである。
【0049】
さらに、本発明は、非エンベロープウイルスを検出するための免疫アッセイにおける使用のために対象の試料を前処理するための塩基の使用に関し;そして、本発明は、免疫アッセイにより対象の試料中の非エンベロープウイルスを検出するための塩基の使用に関する。
【0050】
さらに、本発明は、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を同定するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
a1)前記の結合化合物をアルカリ処理されたカプシドポリペプチドに接触させ、
a2)工程a1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されたカプシドポリペプチドへの結合を検出し、
b1)前記の結合化合物を、アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、そしてアルカリ処理されたカプシドポリペプチドに接触させ、
b2)工程b1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されたカプシドポリペプチドへの結合を検出し、
c)工程a2)における前記の結合化合物の結合を、工程b2)における前記の結合化合物の結合に対して比較し、そして
d)(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を、工程c)の比較に基づいて同定する。
【0051】
さらに、本発明は、(i)アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を同定するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
a1)前記の結合化合物をアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに接触させ、
a2)工程a1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドへの結合を検出し、
b1)前記の結合化合物を、アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、そしてアルカリ処理されたカプシドポリペプチドに接触させ、
b2)工程b1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドへの結合を検出し、
c)工程a2)における前記の結合化合物の結合を、工程b2)における前記の結合化合物の結合に対して比較し、そして
d)(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を、工程c)の比較に基づいて同定する。
【0052】
本発明の結合化合物を同定するための方法は、一態様において、インビトロ法である。さらに、それらは、上記で明確に言及された工程に加えて工程を含むことができる。例えば、さらなる工程は、例えば最初にカプシドポリペプチドに結合する結合化合物を同定することに;またはカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されたカプシドポリペプチドを提供することに関することができる。さらに、前記の工程の1以上は、自動化された設備により実施されることができる。
【0053】
一態様において、カプシドポリペプチドは、非エンベロープウイルスの、さらなる態様において、本明細書において上記で明記されたパルボウイルス科のウイルスのカプシドポリペプチドである。従って、一態様において、前記の結合化合物のアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドへの、かつ/またはアルカリ処理されたカプシドポリペプチドへの結合の検出は、本質的に本明細書における上記の記載および実施例における記載に従って実施される。当業者には理解されるであろうように、本発明の結合化合物を同定するための方法は、本質的に競合アッセイであり、ここで、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドは、結合化合物への結合においてアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドと競合する。従って、アルカリ処理された、およびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドは、一態様において、アルカリ処理を除いて同一である。
【0054】
従って、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を同定するための前記の方法において、結合化合物は、工程a2)における前記の結合化合物の結合が工程b2)における前記の結合化合物の結合と有意に異なっていない場合、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに特異的に結合すると同定される。しかし、結合化合物は、工程a2)における前記の結合化合物の結合が工程b2)における前記の結合化合物の結合よりも有意に高い場合、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、かつアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合すると同定される。さらなる態様において、前記の結合化合物の結合は、可能性のある結合化合物/カプシドポリペプチド複合体を前記の結合化合物が由来する化合物のクラスを一般的に認識する化合物、例えば抗マウス抗体と接触させることにより検出される。
【0055】
対応して、(i)アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を同定するための前記の方法において、結合化合物は、工程a2)における前記の結合化合物の結合が工程b2)における前記の結合化合物の結合と有意に異なっていない場合、アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合すると同定される。しかし、結合化合物は、工程a2)における前記の結合化合物の結合が工程b2)における前記の結合化合物の結合よりも有意に高い場合、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、かつアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合すると同定される。さらなる態様において、前記の結合化合物の結合は、可能性のある結合化合物/カプシドポリペプチド複合体を前記の化合物が由来する化合物のクラスを一般的に認識する化合物、例えば抗マウス抗体と接触させることにより検出される。
【0056】
当業者には上記から理解されるであろうように、結合化合物を同定するための両方の方法が、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドの両方に結合する結合化合物を同定するために適している。やはり当業者には理解されるであろうように、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに結合する結合化合物が同定されるであろう場合、それに関するアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドにも結合するかどうかの知識は、必要とされず、工程b1)〜c)は、上記で明記された(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を同定するための方法から省略されることができる。従って、本発明は、以下の工程を含む、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに結合する、一態様において特異的に結合する結合化合物を同定するための方法にも関する:
a1)前記の結合化合物をアルカリ処理されたカプシドポリペプチドに接触させ、
a2)工程a1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されたカプシドポリペプチドへの結合を検出し、そして
b)工程a2)における結合の検出に基づいてアルカリ処理されたカプシドポリペプチドに結合する結合化合物を同定する。
【0057】
さらに、本発明は、試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための分析デバイスであって、分析ユニットを試料処理ユニットと共に含み、前記の分析ユニットが以下の工程:
(a)前記の試料処理ユニットに適用された試料を塩基と接触させ、そして
(b)前記の試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出する;
を実施させるために適合している分析デバイスにも関する。
【0058】
一態様において、分析ユニットの試料処理ユニットは、制御装置ユニットに接続されており、前記の制御装置ユニットは、上記で明記された工程が実施されるように方向付けるために適合している。
【0059】
用語“デバイス”は、本明細書で用いられる際、検出の結果が得られることを可能にするように互いに作動的に(operatively)連結された前記の手段を少なくとも含む手段のシステムに関する。試料を塩基と接触させるための、およびカプシドポリペプチドを検出するための好ましい手段は、上記で本発明の方法と関連して開示されている。どのようにその手段を作動する様式で連結するかは、デバイス中に含まれる手段のタイプに依存するであろう。一態様において、手段は、単一のデバイスに含まれる。
【0060】
一態様において、試料処理ユニットは、試料のための容器を含む。容器は、直接試料と接触していることができ、または試料を受けるさらなる手段のための容器であることもでき、ここで、さらなる手段は、例えばマルチウェルプレートであることができ、それに対して試料または多数の試料が適用されることができる。さらに、試料処理ユニットは、一態様において、塩基を、例えば乾燥形態で、または投与手段に接続されたリザーバー、例えばポンプに接続された配管中に含む。場合により、試料処理ユニットは、試料を前記の塩基に接触させた後に試料中のpHを下げるための中和手段を含むことができる。一態様において、試料処理ユニットは、少なくとも1種類の検出化合物を、例えば乾燥形態で、または投与手段に接続されたリザーバー、例えばポンプに接続された配管中に含む。さらなる態様において、試料処理ユニットは、混合のための手段および反応混合物の温度を調節するための手段を含む。
【0061】
一態様において、検出の結果は、使用者による目視検査により、または適切なデバイスにおいて検出測定を実施することにより得られることができる。一態様において、本発明のデバイスの分析ユニットは、さらに、本発明のカプシドポリペプチドを検出するための、一態様において本発明のカプシドポリペプチドの量を検出するための検出ユニットを含む。本発明に従う検出ユニットとして適切な手段は、当業者には既知であり、例えば測光デバイスを含む。
【0062】
一態様において、本発明のデバイスは、さらに検出ユニットに接続されたデータ出力ユニットを含む。データ出力ユニットは、一態様において、検出ユニットにより得られたデータを出力するために適合している。適切なデータ出力ユニットは、当業者には既知であり、カプシドポリペプチドが検出閾値より上で検出されたことを示す単純な出力ユニット、例えば表示ランプまたはディスプレーを含む。しかし、出力ユニットは、評価デバイスへのインターフェイスであることもでき、ここで、前記のインターフェイスは、例えばケーブル接続、例えばUSB、無線接続、例えば無線LAN、bluetooth等、または間接接続、例えばインスタントメッセージ、eメール等によるデータ転送を含む、データを転送するあらゆる種類の手段であることができる。
【0063】
一態様において、本発明のデバイスは、分析システムの一部であり、前記の分析システムは、さらに評価デバイスを含む。当業者には理解されるであろうように、評価デバイスは、本発明のデバイスと同じ筺体中に、例えば評価ユニットとして含まれることができ、または別個のデバイスであることができる。一態様において、評価デバイスは、本発明のデバイスの出力ユニットから出力データを受け取り、前記の出力データの評価を提供する論理演算を実施するようにプログラムされたマイクロプロセッサーを含む。出力データの評価は、例えば1以上の対照検出反応において測定された値に関するデータの補正、統計計算、例えば2以上の並行した検出反応の平均値の計算、希釈因子に関するデータの補正、出力データの参照値に対する比較、リストにおけるデータの編集等を含むことができる。一態様において、評価デバイスは、さらにデータ記憶ユニットを含む。さらなる態様において、前記のデータ記憶ユニットは、参照値を、例えば参照値データベース中に含む。さらに、一態様において、データ記憶ユニットは、上記で明記された本発明のデバイスから受け取った出力データを記憶するために適合している。
【0064】
前記のウイルスのカプシドポリペプチドを自動的に検出するための手段が適用される態様において、前記の自動的に作動する手段により得られたデータは、例えば診断(すなわち、非エンベロープウイルスに感染した対象の同定)を確立するためにコンピュータープログラムにより処理されることができる。検出のための典型的な手段は、上記の本発明の方法に関する態様と関連して開示されている。そのような場合、手段は、システムの使用者が説明書において与えられる指示および解釈により量の決定の結果およびその診断的価値をまとめるという点で、作動的に連結されている。当業者は、どのようにその手段をそれ以上の独創的な技能を用いずに結び付けるかを理解しているであろう。典型的なデバイスは、専門の臨床医の特定の知識を用いずに適用されることができるデバイス、例えば単に試料の装填のみを必要とする試験細片または電子デバイスである。結果は、パラメーター的診断生データの出力として、好ましくは絶対量または相対量として与えられることができる。これらのデータは、臨床医による解釈を必要とするであろうことは、理解されるべきである。しかし、出力が処理された診断生データを含み、その解釈が専門の臨床医を必要としないエキスパートシステムデバイスも、想定されている。デバイスのさらなる態様は、上記で本発明の方法に従って言及された分析ユニット/デバイス(例えばポリペプチドを特異的に認識するリガンドに結合したバイオセンサー、アレイ、固体支持体、表面プラズモン共鳴デバイス、NMR分光計、質量分析計等)または評価ユニット/デバイスを含む。
【0065】
本発明は、さらに、プログラムが分析デバイス、コンピューターまたはコンピューターネットワーク上で実行される際に本明細書に含まれている(enclosed)態様の1以上において本発明に従う方法を実施するためのコンピューターで実行可能な指示を含むコンピュータープログラムを開示および提案する。具体的には、コンピュータープログラムは、コンピューターで読み取り可能なデータ媒体上に記憶されていることができる。従って、具体的には、上記で示された方法工程の1つ、1より多く、または全てさえも、コンピューターまたはコンピューターネットワークを用いることにより、好ましくはコンピュータープログラムを用いることにより実施されることができる。
【0066】
本発明は、さらに、プログラムが分析デバイス、コンピューターまたはコンピューターネットワーク上で実行される際に本明細書に含まれている態様の1以上において本発明に従う方法を実施するためのプログラムコード手段を有するコンピュータープログラム製品を開示および提案する。具体的には、プログラムコード手段は、コンピューターで読み取り可能なデータ媒体上に記憶されていることができる。
【0067】
さらに、本発明は、データ媒体であって、コンピューターまたはコンピューターネットワーク中に、例えばコンピューターまたはコンピューターネットワークのワーキングメモリーまたはメインメモリー中に読み込まれた後に本明細書で開示されている態様の1以上に従う方法を実行することができるその上に記憶されたデータ構造を有するデータ媒体を、開示および提案する。
【0068】
本発明は、さらに、プログラムがコンピューターまたはコンピューターネットワーク上で実行される際に本明細書で開示されている態様の1以上に従う方法を実施するために機械で読み取り可能な媒体上に記憶されているプログラムコード手段を有するコンピュータープログラム製品を提案および開示する。本明細書で用いられる際、コンピュータープログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に任意の形式で、例えば紙の形式で、またはコンピューターで読み取り可能なデータ媒体上に存在することができる。具体的には、コンピュータープログラム製品は、データネットワーク上で配布されることができる。
【0069】
最後に、本発明は、本明細書で開示されている態様の1以上に従う方法を実施するための、コンピューターシステムまたはコンピューターネットワークにより読み取り可能な指示を含有する変調されたデータ信号を提案および開示する。
【0070】
好ましくは、本発明のコンピューターで実施される側面に関して、本明細書で開示されている態様の1以上に従う方法の方法工程の1以上または方法工程の全てさえも、コンピューターまたはコンピューターネットワークを用いることにより実施されることができる。従って、一般に、データの提供および/または操作を含む方法工程の全てが、コンピューターまたはコンピューターネットワークを用いることにより実施されることができる。一般に、これらの方法工程は、方法工程の全てを、典型的には手作業を必要とする方法工程、例えば試料の提供および/または実測を実施する特定の側面を除いて、含むことができる。
【0071】
具体的には、本発明は、さらに以下のものを開示する:
−少なくとも1個のプロセッサーを含むコンピューターまたはコンピューターネットワーク、ここで、プロセッサーは、本記載において記載されている態様の1つに従う方法を実施するために適合している;
−本記載において記載されている態様の1つに従う方法を実施するために適合しているコンピューターで読み込み可能なデータ構造、ここで、データ構造はコンピューター上で実行される;
−コンピュータープログラム、ここで、コンピュータープログラムは、本記載において記載されている態様の1つに従う方法を実施するために適合しており、ここで、プログラムは、コンピューター上で実行される;
−本記載において記載されている態様の1つに従う方法を実施するためのプログラム手段を含むコンピュータープログラム、ここで、コンピュータープログラムは、コンピューター上で、またはコンピューターネットワーク上で実行される;
−先行する態様に従うプログラム手段を含むコンピュータープログラム、ここで、プログラム手段は、コンピューターに読み取り可能な記憶媒体上に記憶されている;
−記憶媒体、ここで、データ構造は、記憶媒体上に記憶されており、ここで、データ構造は、コンピューターの、またはコンピューターネットワークの主記憶装置および/または作業用記憶装置中に読み込まれた後に本記載において記載されている態様の1つに従う方法を実施するために適合している;ならびに
プログラムコード手段を有するコンピュータープログラム製品、ここで、プログラムコード手段は、プログラムコード手段がコンピューター上またはコンピューターネットワーク上で実行される場合、本記載において記載されている態様の1つに従う方法を実施するために記憶媒体上に記憶されることができ、または記憶されている。
【0072】
さらに、本発明は、非エンベロープウイルスによる対象の感染症を診断するためのデバイス、キットまたは組成物の製造のための塩基の使用に関する。
本発明の発見を要約すると、以下の態様が、好ましい:
1.対象からの試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための方法であって、以下の工程:
(a)前記の試料を塩基と接触させ、そして
(b)前記の試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出する;
を含む方法。
【0073】
2.態様1の方法であって、前記のカプシドポリペプチドの検出が、捕捉化合物により、一態様において捕捉抗体により固体表面に少なくとも1種類のカプシドポリペプチドを捕捉することを含む方法。
【0074】
3.態様1または2の方法であって、前記の方法が、さらに前記のカプシドポリペプチドを検出化合物、一態様において検出抗体と接触させることを含む方法。
4.態様1〜3のいずれか1態様の方法であって、前記の捕捉抗体および/または前記の検出抗体がモノクローナル抗体である方法。
【0075】
5.態様2〜4のいずれか1態様の方法であって、前記の捕捉化合物および/または検出化合物が、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物である方法。
【0076】
6.態様1〜5のいずれか1態様の方法であって、前記のウイルスの前記の検出が、前記のウイルスをサンドイッチ免疫アッセイで検出することを含む方法。
7.態様1〜6のいずれか1態様の方法であって、前記の試料が、便試料または体液の試料、一態様において便、尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清、または血漿試料である方法。
【0077】
8.態様1〜7のいずれか1態様の方法であって、前記の試料が、免疫グロブリンを含む試料、一態様において血液、血清、または血漿試料である方法。
9.態様1〜8のいずれか1態様の方法であって、前記の塩基が、ブレンステッド・ローリー塩基であり、一態様において水酸化物イオンを含む、または水溶液中で水酸化物イオンを生じる化合物であり、さらなる態様においてアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物である方法。
【0078】
10.態様1〜9のいずれか1態様の方法であって、前記の塩基が、高くても4、一態様において高くても3、さらなる態様において高くても2のpK値を有する方法。
11.態様1〜10のいずれか1態様の方法であって、前記の塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである方法。
【0079】
12.態様1〜11のいずれか1態様の方法であって、前記の試料の塩基との前記の接触が、前記の試料を少なくとも10.5、一態様において少なくとも11、さらなる態様において少なくとも11.5、さらなる態様において少なくとも11.7のpHでインキュベートすることを含む方法。
【0080】
13.態様1〜12のいずれか1態様の方法であって、前記の試料の塩基との前記の接触が、前記の試料を前記の塩基の存在下で少なくとも2分間、一態様において少なくとも5分間、さらなる態様において少なくとも9分間インキュベートすることを含む方法。
【0081】
14.態様1〜13のいずれか1態様の方法であって、前記の試料の塩基との前記の接触が、前記の試料を10℃〜50℃、一態様において20℃〜45℃、さらなる態様において30℃〜40℃の温度において、さらなる態様において37±3℃の温度においてインキュベートすることを含む方法。
【0082】
15.態様1〜14のいずれか1態様の方法であって、前記の方法が、工程b)において前記のウイルスを検出する前に前記の塩基を中和するさらなる工程を含む方法。
16.態様1〜15のいずれか1態様の方法であって、前記のカプシドポリペプチドの検出が、前記のウイルスのカプシド中に存在するポリペプチドを検出することを含み、一態様においてウイルスのVP1、VP2およびVP3カプシドポリペプチドの少なくとも1つを検出することを含む方法。
【0083】
17.態様1〜16のいずれか1態様の方法であって、前記の方法が、前記のウイルスを結合ポリペプチドと接触させる前に、または接触させている間に前記の塩基を中和するさらなる工程を含む方法。
【0084】
18.態様1〜17のいずれか1態様の方法であって、変性したポリペプチドが、前記の塩基を中和する前記のさらなる工程の後に試料から除去されない方法。
19.態様1〜18のいずれか1態様の方法であって、前記のウイルスの検出が、非サイズ判別検出法により実施される方法。
【0085】
20.態様1〜19のいずれか1態様の方法であって、前記の非エンベロープウイルスが、パルボウイルス科のウイルスであり、さらなる態様において、パルボウイルス亜科のウイルスである方法。
【0086】
21.態様1〜20のいずれか1態様の方法であって、前記の非エンベロープウイルスが、エリスロパルボウイルス属のウイルスである方法。
22.態様1〜21のいずれか1態様の方法であって、前記の非エンベロープウイルスが、霊長類エリスロパルボウイルス1(パルボウイルスB19)である方法。
【0087】
23.態様1〜22のいずれか1態様の方法であって、前記の対象が哺乳類、一態様において霊長類、さらなる態様においてヒトである方法。
24.態様1〜23のいずれか1態様の方法であって、前記の対象が、非エンベロープウイルスに、さらなる態様においてパルボウイルス科のウイルスに感染していることが疑われる対象である方法。
【0088】
25.非エンベロープウイルスの検出のために対象からの試料を前処理するための方法であって、前記の試料を塩基と接触させることを含む方法。
26.試料中の非エンベロープウイルスを検出するためのキットであって、塩基および前記のウイルスに特異的に結合する少なくとも1種類、一態様において少なくとも2種類の結合化合物(単数または複数)を含むキット。
【0089】
27.態様26のキットであって、前記のキットが前記の結合化合物の少なくとも2種類を含み、少なくとも1種類の結合化合物が、捕捉化合物であり、少なくとも1種類の結合化合物が、検出化合物であるキット。
【0090】
28.態様27のキットであって、前記の少なくとも1種類の捕捉化合物が、ビオチン標識を含むキット。
29.態様27または28のキットであって、前記の少なくとも1種類の検出化合物が、ルテニウム標識を含むキット。
【0091】
30.態様26〜29のいずれか1態様のキットであって、少なくとも1種類の結合化合物が、抗体、一態様においてモノクローナル抗体であるキット。
31.態様27〜30のいずれか1態様のキットであって、前記の捕捉化合物の少なくとも1種類および前記の検出化合物の少なくとも1種類が、抗体、一態様においてモノクローナル抗体であるキット。
【0092】
32.非エンベロープウイルスを検出するための免疫アッセイにおける使用のために対象の試料を前処理するための塩基の使用。
33.免疫アッセイにより対象の試料中の非エンベロープウイルスを検出するための塩基の使用。
【0093】
34.(i)アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を同定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a1)前記の結合化合物をアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに接触させ、
a2)工程a1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドへの結合を検出し、
b1)前記の結合化合物を、アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、そしてアルカリ処理されたカプシドポリペプチドに接触させ、
b2)工程b1)の前記の結合化合物の前記のアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドへの結合を検出し、
c)工程a2)における前記の結合化合物の結合を、工程b2)における前記の結合化合物の結合に対して比較し、そして
d)(i)アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物を、工程c)の比較に基づいて同定する。
【0094】
35.態様34の方法であって、工程a2)における前記の結合化合物の結合が工程b2)における前記の結合化合物の結合よりも有意に高い場合、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに特異的に結合する結合化合物が同定される方法。
【0095】
36.試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための分析デバイスであって、分析ユニットを試料処理ユニットと共に含み、前記の分析ユニットが、以下の工程:
(a)前記の試料処理ユニットに適用された試料を塩基と接触させ、そして
(b)前記の試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出する;
を実施させるために適合している分析デバイス。
【0096】
37.試料中の非エンベロープウイルスのカプシドポリペプチドを検出するための分析デバイスであって、分析ユニットを試料処理ユニットと共に含み、前記の分析ユニットが、制御ユニットに接続されており、前記の制御ユニットが、以下の工程:
(a)前記の試料処理ユニットに適用された試料を塩基と接触させ、そして
(b)前記の試料中の前記のウイルスのカプシドポリペプチドを検出する;
が実施されるように方向付けるために適合している分析デバイス。
【0097】
38.態様36または38の分析デバイスおよび評価デバイスを含む分析システム。
図の短い説明
本発明のさらなる任意の特徴および態様が、以下の好ましい態様の記載において、好ましくは従属項と合わせてより詳細に開示されるであろう。ここで、それぞれの任意の特徴は、分離された様式で、ならびに当業者が理解しているであろうようなあらゆる任意の実行可能な組み合わせで実現されることができる。本発明の範囲は、好ましい態様により制限されない。態様の側面が、図において模式的に描写されている。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図において:
図1図1は、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドまたは(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドビオチン化ウイルス様粒子を認識する抗体に関するスクリーニングの原理を示す。A)プレスクリーニング;B)プレスクリーニング後、アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドを認識する抗体の結合;C)アルカリ処理されていないカプシドポリペプチドのみを認識する抗体の結合。(1):ビオチン化ウイルス様粒子、(3):ルテニル化(ruthenylated)抗マウス検出抗体、(2):候補抗体(結合化合物)、(4)アルカリ処理されたカプシドポリペプチド。
【実施例】
【0099】
実施例1
モノクローナル抗パルボウイルスB19カプシド抗体の生成
a)マウスの免疫処置
NMRIマウスが、最初にCFA(完全フロイントアジュバント)と共に配合された100μgの組み換えB19ウイルス様粒子(VLP)(Diarect,フライブルク、ドイツ)で腹腔内に免疫された。免疫処置のために用いられた組み換えB19 VLPは、B19カプシドタンパク質VLP1およびVLP2で構成されていた。2回のさらなる腹腔内免疫処置工程が、6および10週間後に、IFA(不完全フロイントアジュバント)と混合されたマウスあたり100μgのB19 VLPの適用により行われた。続いて、マウスは、50μgのB19 VLPの静脈内投与によりブーストされ、3および2日後に、動物は屠殺され、脾臓細胞が分離され、融合のために用いられた。
【0100】
b)融合およびクローニング
脾臓細胞の骨髄腫細胞との融合が、ポリエチレングリコールを用いる標準的な手順により実施された。簡潔には、おおよそ1×10個の脾細胞が、おおよそ2×10個の骨髄腫細胞(P3x63−Ag8.653)とRPMI−1640中で混合され、遠心分離された(10分間、250×g)。細胞は、RPMI−1640で1回洗浄され、再度遠心分離された。その後、1mLのPEG(ポリエチレングリコール)が細胞のペレットに添加され、ピペット操作により混合された。1分後、37℃の水浴中で、5mlのRPMI−1640が滴加され、懸濁液が混合され、RPMI−1640を30mlまで補充され、遠心分離された(10分間、180×g)。細胞は、選択培地(10%FCS、100U/mL IL−6、2mM L−グルタミン、100μM NEAA、1mMピルビン酸ナトリウム、24μM 2−メルカプトエタノール、1×アザセリン/ヒポキサンチン(Sigma−Aldrich)を補われたRPMI−1640)中で再懸濁された。37℃で24時間の培養後、細胞は、96ウェル細胞培養プレート中にまかれた。おおよそ10日後、一次培養物が、(下記のように)特異的抗体の産生に関してアッセイされた。選択された一次培養物が、フローサイトメーター(FACSAria,BD Biosciences)を用いる単一細胞選別によりクローニングされた。細胞のクローンは、10%FCS、50U/mL IL−6、2mM L−グルタミン、100μM NEAA、1mMピルビン酸ナトリウムおよび24μM 2−メルカプトエタノールを補われたRPMI−1640中で増殖した。確立されたモノクローナルハイブリドーマ細胞株は、下記のように特異性に関して再検査された。
【0101】
c)B19 VLPに結合する抗体に関するスクリーニング(ELISA)
ハイブリドーマ細胞の培養上清中の抗体の特異性の決定のため、組み換えストレプトアビジン(MicroCoat、ベルンリート、ドイツ)でプレコートされた96ウェルプレートが、300ng/mLのビオチン化B19 VLPで室温(RT)で1時間コートされた。続いて、プレートは、0.9% NaCl/0.05% Tween−20(登録商標)で洗浄された。洗浄後、100μL/ウェルのアッセイされるべき抗体溶液(培養上清)が添加され、室温で1時間インキュベートされた。0.9% NaCl/0.05% Tween−20(登録商標)による洗浄後、100μL/ウェルのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識されたポリクローナルヒツジ抗マウスFcγ抗体のF(ab’)2フラグメント(100ng/mL)が、結合した試料抗体の検出のために添加された。室温で1時間のインキュベーション後、プレートは上記のように洗浄された。最後に、100μL/ウェルのABTS(登録商標)(Roche)が添加された。室温で30分間のインキュベーション後、吸光度が405nmおよび492nmにおいて測定された。
【0102】
このスクリーニングは、ELISAにおいてB19 VLPに結合する抗体の選択につながった。この抗体の選択は、下記のアッセイにおいてさらに特性付けられた。
d)B19 VLPに結合する抗体に関するスクリーニング(Elecsys)
試料のアルカリ性条件下でのインキュベーションは、結果としてウイルスカプシドの解離およびカプシドタンパク質の少なくとも部分的なアンフォールディングをもたらす。従って、アッセイのための適切な抗体は、好ましくは抗原の線状かつ構造的ではないエピトープに対して向けられている(図1A参照)。第1ラウンドにおいて、ビオチン化ウイルス様粒子(1)およびルテニル化抗マウス検出抗体(3)を含む抗体スクリーニングアッセイが、候補抗体(2)に関してスクリーニングするために用いられた。
【0103】
第2ラウンドにおいて、適切な候補は、アルカリ性条件下で予めインキュベートされたウイルス様粒子を検出するそれらの能力に関して試験された(4)(図1BおよびC)。これらの実験において、遊離のNaOHまたはHClで前処理されたウイルス様粒子は、固相に結合しているビオチン化された未処理のウイルス様粒子と競合する。アッセイ設計に適している抗体は、両方の抗原に結合し、結果として低下した信号をもたらすはずであり(図1B)、一方で立体構造特異的抗体は、影響を受けないはずである(図1C)。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に関して、未変性のVLPが固相に結合したVLPと調べられるべき抗体への結合に関して有効に競合する場合、信号の低減に関する結果は、100%の“信号の低減”に設定される。抗体2.053を見ると、未変性のVLPは固相に結合したVLPに対して完全に置き換わることが理解できる(100%の信号の低減)。一方で、(1.4M NaOHにより処理された)変性したVLPが抗体2.053への結合に関して未変性の固相に結合したVLPと競合する場合、信号は、57%までしか低減しない。これは、この抗体に関して、変性したVLPは、未変性のVLPと完全には競合しないことを意味する。換言すると、抗体2.053は、変性したVLPを有効に認識せず、または変性したVLPをより小さい程度までしか認識せず、従って、NaOHによる前処理後のウイルス抗原検出アッセイにおける結合構成要素としてはそれほど適切ではない。対照的に、例えば抗体2.061は、NaOHで変性したVLPが抗体2.061への結合に関して未変性のVLPと完全に(100%)競合することができるため、VLPの両方のバリアントに有効な様式で結合する。
【0106】
これらの結果から、抗体2.061、2.068、2.081および2.106(ならびにより低い程度で2.111および2.127)が、(i)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドに、または(ii)アルカリ処理されたカプシドポリペプチドおよびアルカリ処理されていないカプシドポリペプチドに結合する抗体として同定された。
【0107】
e)選択された抗B19モノクローナル抗体の中規模生成
選択されたmAbは、対応するハイブリドーマをCellLineバイオリアクター(Integra)中に蒔くことにより生成された。生成は、バイオリアクターの製造業者の指示に従って実施された。
【0108】
実施例2
ビオチンおよびルテニウム部分のモノクローナル抗体へのカップリング
選択されたクローンからの細胞培養上清は、3工程のクロマトグラフィー手順:最初に、プロテインAに対する親和性クロマトグラフィー、次いで、イオン交換クロマトグラフィー、最後に、微量のウシIgGを除去するための負親和性(negative−affinity)クロマトグラフィーに従って精製され、あるいは、仕上げ工程が、サイズ排除クロマトグラフィーを適用することにより実施された。
【0109】
融合ポリペプチドのリジンεアミノ基が、5〜30mg/mLのタンパク質濃度で、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化ビオチンおよびルテニウム標識分子をそれぞれ用いて修飾された。標識/タンパク質比は、それぞれの抗体に応じて2:1から10:1(mol:mol)まで変動した。反応緩衝液は、50mMリン酸カリウムpH8.4、150mM KClであった。反応は、室温で15分間実施され、緩衝されたL−リジンを10mMの終濃度になるように添加することにより停止された。標識の加水分解による不活性化を回避するため、それぞれのストック溶液は、乾燥DMSO(Sigma−Aldrich、ドイツ)中で調製された。反応緩衝液中の5%までのDMSO濃度は、試験された全ての融合タンパク質により十分に許容された。カップリング反応の後、未反応の遊離の標識は、粗製タンパク質コンジュゲートをゲル濾過カラム(例えば:Superdex 200 HiLoad)に通すことにより除去された。
【0110】
実施例3
アルカリ前処理によるパルボウイルスB19検出アッセイの感度の増大
パルボウイルスB19アッセイの感度が、自動化されたElecsys(登録商標)2010およびcobas e 411分析器(Roche Diagnostics GmbH)において評価された。Elecsys(登録商標)は、Rocheグループの登録商標である。測定は、二重抗体サンドイッチ形式で試料のプレインキュベーションを用いて実施された。
【0111】
Elecsys(登録商標)2010およびcobas e 411における信号検出は、電気化学発光に基づいている。ビオチンコンジュゲート(すなわち捕捉抗体)は、ストレプトアビジンコートされた磁気ビーズの表面上に固定され、一方で検出抗体は、錯体形成したルテニウム陽イオン(酸化還元状態2+および3+の間で切り替わる)を信号伝達部分として有する。特異的分析物の存在下で、発色性ルテニウム錯体は、固相に対して架橋され、白金電極での励起後に620nmにおいて光を発する。信号出力は、相対光単位(relative light unit)においてである。
【0112】
様々なpHでの試料のプレインキュベーションの作用が、2構成要素前処理により評価された。構成要素1(PT1)は、HClもしくはNaOHを異なる濃度で、または対照として等張NaClを含有し、構成要素2(PT2)は、界面活性剤および還元剤を含有する。後者の構成要素は、変動しない。9分間のプレインキュベーション後、試薬緩衝液(200mM Hepes、150mM NaCl、10mM EDTA、0.01%メチルイソチアゾリノン、0.20% Tween20、0.30%ウシ血清アルブミン、pH6.8)ならびにビオチン化およびルテニル化抗体が、添加される。アルカリ性条件下(試薬3〜5)でのプレインキュベーションは、結果として対照実験(試薬1)と比較して信号の増大をもたらし、それは、反応性試料(#2〜7)における酸性前処理と比較可能であるか、またはより優れている。加えて、非特異的交差干渉性試料(#8)の信号は、試薬3〜5においてバックグラウンド(試料#1)に対して低減し、一方で酸性前処理は、非特異的相互作用由来の信号を減少させない。アルカリ前処理のプラスの作用は、pH>10.5(試薬3〜5)に関して明らかであり、一方でより低いプレインキュベーションpH(試薬6)は、結果として信号の増大および非特異的信号の抑制をもたらさない。
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
図1