(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1プーリ又は前記第2プーリが、組み付け時に選択された相対回転角度で前記駆動源の前記出力軸に結合されたことを特徴とする請求項3に記載のパワースライドウィンドウ。
前記スライドパネルが、前記ウィンドウガラスのパネル面に沿う左右方向と、前記ウィンドウガラスのパネル面に交差する前後方向とにスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパワースライドウィンドウ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパワースライドウィンドウは、ケーブルが延出する、パネル面と平行な方向へしかスライドパネルをスライドさせることができない。例えば、カム機構を用いることで、スライドパネルをパネル面に交差する方向へもスライドさせることが考えられる。但し、このような複雑な動作を伴ってスライドパネルをスムースにスライド駆動するためには、スライドパネルの上側にも、左右の両端から左右両側へ延出する2本のケーブルを接続し、上下で計4本のケーブルによってスライドパネルを駆動する必要がある。そのような場合、4本のケーブルを巻き取り・巻き出しするために4つのプーリが必要になる。
【0005】
ここで、巻き取りと巻き出しとが同時に行われる2本のケーブルからなる1対のケーブルを1つのプーリに巻きつけることが考えられる。このような構成にすると、上側の1対のケーブルを巻き取り・巻き出すプーリと、下側の1対のケーブルを巻き取り・巻き出すプーリとの2つのプーリにより、4本のケーブルを巻き取り・巻き出しすることができる。ところが、上側のケーブル及び下側のケーブルの巻き取り・巻き出しを同期させるためには、それら2つのプーリを一体に結合する必要がある。また、ケーブル組み付け時に、上側のケーブル及び下側のケーブルの巻き取り量・巻き出し量を揃えて2つのプーリを結合するためには、それら2つのプーリの相対回転角度の調整が不可欠であるため、組み付け作業が煩雑である。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑み、上側の駆動ケーブル及び下側の駆動ケーブルの巻き取り・巻き出しを同期させることができる上、組み付け作業が容易なパワースライドウィンドウを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明に係るパワースライドウィンドウ(1)のある実施形態は、開口(2a)が形成されたウィンドウガラス(2)と、前記開口を開閉するように前記ウィンドウガラスにスライド可能に設けられたスライドパネル(3)と、前記スライドパネルをスライド駆動するための駆動源(5)と、前記スライドパネルの上部に接続され、前記スライドパネルから前記ウィンドウガラスのパネル面に沿う左右方向に延出する上側駆動ケーブル(10U)と、前記スライドパネルの下部に接続され、前記スライドパネルから前記ウィンドウガラスのパネル面に沿う左右方向に延出する下側駆動ケーブル(10D)と、前記駆動源によって回転駆動され、前記上側駆動ケーブルの巻き取り・巻き出しを行う第1プーリ(40)と、前記駆動源によって回転駆動され、前記下側駆動ケーブルの巻き取り・巻き出しを行う第2プーリ(50)と、前記第1プーリと前記第2プーリとを、組み付け時に選択された相対回転角度で互いに結合する結合構造(60)と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第1プーリと前記第2プーリとを、所望の相対回転角度に調整した上で結合構造により結合できる。そのため、上側駆動ケーブル及び下側駆動ケーブルの巻き取り・巻き出しを同期させることができる上、組み付け作業が容易である。
【0009】
好ましくは、上記構成において、前記結合構造(60)は、前記第1プーリ及び前記第2プーリの一方(50)の端面に凹設され、軸線方向に沿う複数の溝(54)が内周面に形成された凹状部(53)と、前記第1プーリ及び前記第2プーリの他方(40)の端面に前記凹状部と相補完形状をなすように凸設され、前記溝に嵌合する複数の突部(46)が外周面に形成された凸状部(45)とを有するとよい。
【0010】
この構成によれば、簡単な構成によって第1プーリと第2プーリとの相対回転角度の調整ができる。
【0011】
好ましくは、上記構成において、前記第1プーリ(40)及び前記第2プーリ(50)が前記駆動源(5)の出力軸(35)と同軸に配置されるとよい。
【0012】
この構成によれば、パワースライドウィンドウのコンパクト化が図れる。
【0013】
好ましくは、上記構成において、前記第1プーリ(40)又は前記第2プーリ(50)が、組み付け時に選択された相対回転角度で前記駆動源(5)の前記出力軸(35)に結合されるとよい。
【0014】
この構成によれば、第1プーリ又は第2プーリを、所望の相対回転角度に調整した上で出力軸に結合できる。そのため、組み付け作業が容易である。
【0015】
好ましくは、上記構成において、前記第1プーリ及び前記第2プーリの前記他方(40)の端面には、軸線方向に沿う複数の溝(44)が内周面に形成された凹状部(43)が形成され、前記駆動源(5)の前記出力軸(35)の外周面には、前記凹状部と相補完形状をなすように、前記溝に嵌合する複数の突部(36)が形成されているとよい。
【0016】
この構成によれば、簡単な構成によって第1プーリ又は第2プーリと出力軸との相対回転角度の調整ができる。
【0017】
好ましくは、上記構成において、前記上側駆動ケーブル(10U)は2本の上ケーブル(10UL、10UR)からなり、前記下側駆動ケーブル(10D)は2本の下ケーブル(10DL、10DR)からなり、前記上ケーブル及び前記下ケーブルのそれぞれは、前記スライドパネル(3)の左右の端部の対応する側に接続される一端(10a)と、対応する前記第1プーリ又は前記第2プーリに固定される他端(10b)とを有し、前記第1プーリは、2本の前記上ケーブルの巻き取り・巻き出しを相補的に行い、前記第2プーリは、2本の前記下ケーブルの巻き取り・巻き出しを相補的に行うとよい。
【0018】
この構成によれば、2つのプーリによってスライドパネルを開方向及び閉方向へスムースにスライド駆動できる。また、ケーブルがプーリに対して滑ることがないため、駆動ケーブルを緊張状態で設ける必要がなく、組み付けが容易である。
【0019】
好ましくは、上記構成において、前記スライドパネル(3)が、前記ウィンドウガラス(2)のパネル面に沿う左右方向と、前記ウィンドウガラスのパネル面に交差する前後方向とにスライド可能に設けられているとよい。
【0020】
この構成によれば、ウィンドウガラスの開口内にスライドパネルを配置し、ウィンドウガラスのパネル面の凹凸を小さくできるため、外観意匠の改善によってパワースライドウィンドウの商品性を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、上側駆動ケーブル及び下側駆動ケーブルの巻き取り・巻き出しを同期させることができる上、組み付け作業が容易なパワースライドウィンドウを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係るパワースライドウィンドウ1を、ピックアップ自動車のリヤウィンドウに適用した実施形態について詳細に説明する。以下、パワースライドウィンドウ1が自動車に搭載された状態を基準として前後、上下を定め、車室側からパワースライドウィンドウ1を見て、即ち自動車の前方から後方を見て左右を定める。また、前側及び後側を、車室を基準として内側及び外側ということがある。上下で対に設けられる部材には、同一の符号を付して符号の後ろに上下を示す添字「U」、「D」を付すことがある。左右で対に設けられる部材にも、同一の符号を付して符号の後ろに左右を示す添字「L」、「R」を付すことがある。総称する場合や上下、左右の区別をしない場合には、添字を省略することがある。
【0024】
図1は、実施形態に係るパワースライドウィンドウ1の閉状態の全体構成を、斜め前方から(車室側から)示す斜視図である。パワースライドウィンドウ1は、ピックアップ自動車の車体に固定され、リヤウィンドウをなすウィンドウガラス2を備えている。ウィンドウガラス2は、パネル面(主面)を前後に向けて概ね鉛直に延在しており、パネル面に沿う左右の寸法がパネル面に沿う上下の寸法に比べて大きい横長の略矩形状とされている。ウィンドウガラス2には、その中央部に矩形の開口2a(
図2)が形成され、この開口2aを閉じるように矩形のスライドパネル3が設けられている。ウィンドウガラス2の周縁部及び開口2aの周縁部には、黒色顔料を含む塗料(黒セラ)の塗布により遮光処理が施された遮光部2bが形成されている。
【0025】
ウィンドウガラス2の遮光部2bには、左右方向に水平且つ互いに平行に延在し、スライドパネル3を案内する上下のガイドレール4(4U、4D)が取り付けられている。即ち、スライドパネル3は、上下一対のガイドレール4に沿って左右方向にスライド可能に設けられている。本実施形態では、スライドパネル3は、
図1に示される開口2aを閉じる閉位置と、
図2に示されるように、閉位置から左方へスライドして開口2aを開放した開位置との間をスライドし、開口2aを開閉する。他の実施形態では、スライドパネル3が、閉位置から右方へスライドして開口2aを開放する構成とされてもよく、閉位置から右方及び左方の両方へスライド可能に設けられ、閉位置から選択された一方にスライドして開口2aを開放する構成とされてもよい。
【0026】
図1に示されるように、ウィンドウガラス2の下方には、スライドパネル3をスライド駆動するための駆動源5が設けられている。駆動源5は、電動モータ6と、減速機構7(
図7参照)と、減速機構7を収容するハウジング8とを備え、ハウジング8を介して車体に固定される。ハウジング8には4本のガイドパイプ9が接続されている。右側に配置された2本のガイドパイプ9は、ハウジング8から右方へ延出し、その後上方へ湾曲して上下のガイドレール4U、4Dにそれぞれ右方から接続されている。左側に配置された2本のガイドパイプ9は、ハウジング8から左方へ延出し、その後上方へ湾曲して上下のガイドレール4U、4Dにそれぞれ左方から接続されている。
【0027】
上側のガイドレール4Dに接続する2本のガイドパイプ9は、ハウジング8に対して比較的前方の位置で接続され、下側のガイドレール4Dに接続する2本のガイドパイプ9は、ハウジング8に対して比較的後方の位置で接続されている。各ガイドパイプ9の内部には、駆動源5の駆動力を伝達してスライドパネル3をスライド駆動するためのケーブル10(10DL、10DR、10UL、10UR、
図3参照)が摺動可能に設けられる。右側の上ケーブル10URと左側の上ケーブル10ULとは、1つのプーリ(
図7に示される第1プーリ40)によって巻き取り・巻き出しを相補的に行われる。同様に、右側の下ケーブル10DRと左側の下ケーブル10DLとは、他の1つのプーリ(
図7に示される第2プーリ50)によって巻き取り・巻き出しを相補的に行われる。
【0028】
図3は、
図1に示されるパワースライドウィンドウ1の分解斜視図である。
図4は、
図1中のIV−IV断面図である。
図3及び
図4に示されるように、スライドパネル3は、ウィンドウガラス2と同じ厚さを有する可動ガラス11と、可動ガラス11の周縁に設けられたフレーム12とにより構成される。可動ガラス11は、ウィンドウガラス2の開口2aよりも若干小さく形成され、ウィンドウガラス2と面一となるように開口2a内にウィンドウガラス2と平行に配置されている。可動ガラス11の周縁部には、黒色顔料を含む塗料(黒セラ)の塗布により遮光処理が施された遮光部11bが形成されている。
【0029】
フレーム12は、可動ガラス11の遮光部11bの内面に接着剤を介して接合されるブラケットフレーム13を有している。ブラケットフレーム13は、可動ガラス11の外形輪郭よりも小さな内形輪郭と可動ガラス11の外形輪郭よりも大きな外形輪郭とを有する矩形環状を呈している。ブラケットフレーム13は、
図4に示されるように、可動ガラス11の内面から比較的近い位置で可動ガラス11と対向する内側部13aと、可動ガラス11の内面と面一をなすウィンドウガラス2の内面から比較的遠い位置でウィンドウガラス2と対向する外側部13bと、内側部13aと外側部13bとを連結する中間部13cとを有するクランク形状の断面を有している。
【0030】
ブラケットフレーム13の外側部13bの外面(後面)には、中空断面形状を有する環状のシール部材14が接着されている。シール部材14は、合成ゴム等の、弾性率が小さい弾性材料から形成されている。シール部材14は、外力を受けていない状態では、
図4に想像線で示されるように、ブラケットフレーム13からウィンドウガラス2の内面までの距離よりも大きな高さを有している。可動ガラス11がウィンドウガラス2と面一に配置された状態では、シール部材14は、
図3に実線で示されるように高さを小さくするように弾性変形し、先端をウィンドウガラス2の内面に弾接させる。これにより、可動ガラス11とウィンドウガラス2との間のシール性が確保される。
【0031】
ブラケットフレーム13の内方(前方)には、ブラケットフレーム13及びシール部材14を覆う環状のカバーフレーム15が設けられている。カバーフレーム15は、適宜な位置でブラケットフレーム13に固定されている。このように、ブラケットフレーム13、シール部材14及びカバーフレーム15を有するフレーム12は、可動ガラス11の車室側(前側)に設けられ、可動ガラス11の遮光部11bとウィンドウガラス2の遮光部2bとに亘って設けられる。これにより、可動ガラス11の周縁とウィンドウガラス2の開口縁との間の隙間は、フレーム12により車室側から全周に亘って覆われる。
【0032】
図3に示されるように、ブラケットフレーム13の上部における左右の端部には、上方に突出する左右の上部ピン16(16L、16R)が一体に設けられている。ブラケットフレーム13の下部における左右の端部には、下方に突出する左右の下部ピン17(17L、17R)が一体に設けられている。また、ブラケットフレーム13の上部における上面には、上方に突出する2つの板ばね18(18L、18R)が設けられている。板ばね18は、上側のガイドレール4Uの下面に弾接してブラケットフレーム13を下方に付勢すると共に、ブラケットフレーム13のスライドに伴って上側のガイドレール4Uの下面を摺動する。
【0033】
上側のガイドレール4Uには、左右の上部スライダ20(20L、20R)が摺動可能に設けられ、下側のガイドレール4Dには、左右の下部スライダ21(21L、21R)が摺動可能に設けられている。左右の上部スライダ20及び左右の下部スライダ21は、それぞれ、対応するガイドレール4に沿って延びる軸状部材22と、軸状部材22に一体に連結され、水平に延在する板状部材23(下側の2つのみを図示)とを有している。各軸状部材22には、上記スライドパネル3をスライド駆動するための4本のケーブル10のうちの対応する1本の端部が接続される。各板状部材23には、対応する上部ピン16又は下部ピン17が係合する。即ち、4本のケーブル10は、左右の上部スライダ20及び左右の下部スライダ21を介して、スライドパネル3の上部及び下部における左右の端部に接続される。
【0034】
また、上下のガイドレール4U、4Dの左側には、スライドパネル3の左方への移動時に、左側の上部スライダ20L及び左側の下部スライダ21Lに当接することで、スライドパネル3の移動を開位置で規制する弾性部材からなる2つの左ストッパ24L(下側の1つのみを図示)が設けられる。更に、上下のガイドレール4U、4Dの右側には、スライドパネル3の右方への移動時に、右側の上部スライダ20R及び右側の下部スライダ21Rに当接することで、スライドパネル3の移動を閉位置で規制する弾性部材からなる2つの右ストッパ24R(下側の1つのみを図示)が設けられる。
【0035】
図5は、
図1中のV部拡大図である。左右の上部スライダ20及び左右の下部スライダ21によるケーブル10とスライドパネル3との4つの接続部の構造は同様である。そのため、ここではこれらを代表して右側の下部スライダ21Rを介する接続部の構造について説明する。
【0036】
図5に示されるように、下側のガイドレール4Dには、下部スライダ21Rをスライド可能に受容する直線状のスライダガイド溝26と、下部ピン17Rを受容してガイドするピンガイド溝27とが形成されている。右ストッパ24Rはスライダガイド溝26に設けられ、スライダガイド溝26に突出形成された支持壁28によって支持される。スライダガイド溝26の支持壁28よりも右側の部分には、ガイドパイプ9が受容されている。ガイドパイプ9の先端は支持壁28に当接し、ガイドパイプ9の先端から延出する右側の下ケーブル10DRが支持壁28及び右ストッパ24Rに形成された溝を通って右側の下部スライダ21Rに至っている。右側の下ケーブル10DRの端部には拡径する第1係合端部10aが形成されている。右側の下ケーブル10DRの第1係合端部10aと相反する側端部には、拡径する第2係合端部10b(
図9)が形成されている。ピンガイド溝27は、下側のガイドレール4Dに沿って左右に延びており、ピンガイド溝27の右端には、右端側ほど後方を向くように湾曲しながら後方へ傾斜し、右側の下部ピン17Rをガイドするカム溝部27aが形成されている。なお、左側の下部ピン17Lをガイドするカム溝部27a(
図6)は、同様の形状をもってピンガイド溝27の中間部に分岐するように形成される。
【0037】
右側の下部スライダ21Rの軸状部材22には、上面に開放し、右端に至るケーブル保持溝29が形成されている。ケーブル保持溝29は、右側部分に比べて左側部分の断面が大きくなっている。ケーブル保持溝29の右側部分の断面は、ケーブル10の本体部を通過可能且つ第1係合端部10aを通過不能な大きさとされている。ケーブル保持溝29に上から挿入された右側の下ケーブル10DRは、ケーブル保持溝29の左側部分に第1係合端部10aが受容されて軸状部材22に係止され、右側の下部スライダ21Rの右端から右方へ延出する。同様に、
図3に示されるように、左側の下ケーブル10DLは左側の下部スライダ21Lの左端から左方へ延出し、左側の上ケーブル10ULは左側の上部スライダ20Lの左端から左方へ延出し、右側の上ケーブル10URは右側の上部スライダ20Rの右端から右方へ延出する。
【0038】
図5に戻って説明を続ける。右側の下部スライダ21Rの板状部材23には、ピンガイド溝27に突入する右側の下部ピン17を挿通させる長孔30が形成されている。長孔30は、板状部材23の後部で左右方向に延び、右端側ほど前方を向くように湾曲しながら前方へ傾斜している。スライドパネル3が閉位置にある
図5の状態では、右側の下部ピン17は、板状部材23の長孔30の左端に位置し、ピンガイド溝27の右端(カム溝部27aの後端)に位置している。
【0039】
上記のように1つのプーリによって巻き取り・巻き出しが相補的に行われる右側の下ケーブル10DRと左側の下ケーブル10DLとは、スライドパネル3の下部をスライド駆動する下側駆動ケーブル10Dを構成する。同様に、1つのプーリによって巻き取り・巻き出しが相補的に行われる右側の上ケーブル10URと左側の上ケーブル10ULとは、スライドパネル3の上部をスライド駆動する上側駆動ケーブル10Uを構成する。
【0040】
図6は、パワースライドウィンドウ1の開閉動作の説明図であり、スライドパネル3が(A)閉位置にある時、(B)閉位置に対して概ね前方にある時、(C)閉位置に対して前方且つ左方にある時の状態をそれぞれ示している。パワースライドウィンドウ1は、スライドパネル3を開作動させる場合には、(A)から順に(C)の状態を辿り、逆にスライドパネル3を閉作動させる場合には、(C)から順に(A)の状態を辿る。なお、以下では、スライドパネル3の下部の動作を説明し、
図6にも下部の符号を付しているが、上部の動作も同様である。
【0041】
図6(A)に示されるように、スライドパネル3がウィンドウガラス2と面一の閉位置にある時には、左右の下部ピン17L、17Rは、板状部材23の長孔30の左端に位置し、ピンガイド溝27のカム溝部27aの前端に位置している。この状態で、下側駆動ケーブル10D(10DL、10DR)が、左方へ相補的に巻き取り・巻き出しされ、左右の下部スライダ21(21L、21R)が左方へスライド駆動されると、
図6(B)に示されるように、左右の下部ピン17L、17Rがそれぞれ対応する長孔30によって前方へ駆動されると共にピンガイド溝27のカム溝部27aに沿って前方及び左方へ移動する。これにより、スライドパネル3の全体が、ウィンドウガラス2と平行の姿勢を保ったまま、ウィンドウガラス2のパネル面と交差する方向である前方からパネル面と平行な左方へ向きを変えつつスライドする。
図6(B)の状態では、可動ガラス11の後面がウィンドウガラス2の前面よりも前方に位置する。
【0042】
この状態から更に下側駆動ケーブル10Dが、左方へ相補的に巻き取り・巻き出しされて左右の下部スライダ21を左方へスライドさせると、
図6(C)に示されるように、左右の下部ピン17L、17Rがそれぞれ対応する長孔30の前端に位置したままピンガイド溝27に沿って左方へ移動する。これにより、スライドパネル3の全体が左方へスライドする。スライドパネル3の開位置は、ウィンドウガラス2の開口2aの全体が開放される位置に設定されている。このように、板状部材23に前後方向に長い長孔30が形成されていることにより、軸状部材22及び下側駆動ケーブル10Dの前後方向位置を変えることなく、スライドパネル3を前後方向にスライドさせることができる。
【0043】
スライドパネル3が開位置にある時に、下側駆動ケーブル10Dが右方へ相補的に巻き取り・巻き出しされ、左右の下部スライダ21が右方へスライド駆動されることにより、
図6(C)、
図6(B)の状態を経て、
図6(A)に示される状態に戻る。この際、左側の下部ピン17Lは、
図6(B)に示される左側の下部ピン17Lの位置から分岐する、ピンガイド溝27の右方へ延びる溝と後方へ湾曲するカム溝部27aとのうち、カム溝部27aに導かれる。その理由は以下の通りである。即ち、カム溝部27aは、下部スライダ21の右方への移動に伴って右方へ移動する下部ピン17を後方へスライドさせる向きに傾斜している。板状部材23の長孔30は、下部ピン17の前後動を許容するために前後方向に延在し、且つ、前後方向に対し、下部スライダ21が右方へ移動する時に下部ピン17に後方への分力を加える向き(下部ピン17を後方へスライドさせる向き)に傾斜している。そのため、下部スライダ21の右方への移動の際に、右側の下部ピン17Rが右側のカム溝部27aによって後方へ駆動されると同時に、左右の板状部材23が左右の下部ピン17L、17Rに対して右方へ相対移動する。これにより、左側の下部ピン17Lは、左側の長孔30にガイドされて後方へ駆動され、カム溝部27aに導かれ、スライドパネル3の左右方向のスライドと前後方向のスライドとが円滑に切り替えられる。或いは、ピンガイド溝27における左側の下部ピン17Lが通過すべき左側部分が右側部分よりも深く形成され、左側の下部ピン17Lが右側の下部ピン17Rよりも長く形成される構成とされることにより、上記動作が担保されてもよい。
【0044】
上側駆動ケーブル10Uは、下側駆動ケーブル10Dと同期して、相補的に巻き取り・巻き出しされる。これにより、スライドパネル3の上部も、左右の上部ピン16(
図3)が上側のガイドレール4Uのピンガイド溝27に沿って移動することで、前後方向及び左右方向に駆動される。このように、左右の上ケーブル10UL、10URが1つのプーリによって相補的に巻き取り・巻き出しされ、これと同期して、左右の下ケーブル10DL、10DRが1つのプーリによって相補的に巻き取り・巻き出しされることにより、スライドパネル3が開方向及び閉方向へスムースにスライド駆動される。
【0045】
次に、このように同期して巻き取り・巻き出しが行われる下側駆動ケーブル10D及び上側駆動ケーブル10Uの駆動部の構造について説明する。
図7は、
図1に示される駆動源5の出力軸35に沿った断面図である。
図7に示されるように、電動モータ6(
図1)の出力シャフトにはウォーム31(ねじ歯車)が設けられている。ウォーム31には、回転軸を前後方向に向けてハウジング8により軸支されたウォームホイール32(はす歯歯車)が噛み合っている。ウォームホイール32には、回転軸に沿って後方へ突出する駆動源5の出力軸35が一体形成されている。ウォーム31及びウォームホイール32により減速機構7が構成される。
【0046】
駆動源5の出力軸35には、出力軸35の後方に出力軸35と同軸に配置された第1プーリ40が直接結合される。第1プーリ40には、第1プーリ40の後方に駆動源5の出力軸35と同軸に配置された第2プーリ50が直接結合される。ハウジング8は、減速機構7を収容する前ハウジング8Aと、前ハウジング8Aの後面に結合され、第1プーリ40及び第2プーリ50を収容する後ハウジング8Bとを備えている。出力軸35は、前ハウジング8Aの後面よりも後方に突出している。後ハウジング8Bは、出力軸35に第1プーリ40及び第2プーリ50が結合された後に前ハウジング8Aの後面に結合される。
【0047】
図8は、
図7に示される第1プーリ40を、取付側となる後方から見た背面図である。
図7及び
図8に示されるように、第1プーリ40の外周面には1条の第1螺旋溝41が形成されている。第1螺旋溝41は、第1プーリ40の外周面に左巻きに5周(5巻き)形成されており、後端面に開放される一端41aと、前端面に開放される他端41bとを有している。第1プーリ40の後端面及び前端面には、第1螺旋溝41を開放端から延長させる前後の第1延長溝42が形成されている。第1延長溝42は、各ケーブル10を受容し、その第2係合端部10bを係止することでケーブル10を保持するための溝であり、第1螺旋溝41側の部分に比べて端部側の部分の断面が大きくなっている。第1延長溝42の小断面部は、ケーブル10の本体部を通過可能且つ第2係合端部10bを通過不能な大きさとされている。
【0048】
第1プーリ40の後端面に形成された第1延長溝42には、第1螺旋溝41に巻かれた左側の上ケーブル10ULの第2係合端部10bが保持される。第1プーリ40の前端面に形成された第1延長溝42には、第1螺旋溝41に巻かれた右側の上ケーブル10URの第2係合端部10bが保持される。スライドパネル3(
図1)が閉位置にある状態では、
図7に示されるように、第1プーリ40は、右側の上ケーブル10URの方が左側の上ケーブル10ULよりも多く第1螺旋溝41に巻かれた状態となっている。なお、左右の上ケーブル10UL、10URは、第1プーリ40が回転すると一方が巻き取られ、他方が相補的に巻き出されるため、それらの合計巻き量は常に一定である。
【0049】
第1プーリ40の取付面となる前端面には、破線で示されるように駆動源5の出力軸35と相補完形状をなす第1凹状部43が形成されている。具体的に説明すると、駆動源5の出力軸35の外周面には、軸線方向に沿って延びる複数の駆動側突条36が周方向に一定の間隔(ピッチ)をもって形成されている。本実施形態では、32本の駆動側突条36が11.25度間隔に設けられている。これに対応して、第1凹状部43の内周面には、軸線方向に沿って延びて駆動側突条36を受容する複数の第1溝44が形成されている。これらの第1溝44に駆動側突条36が嵌合することにより、出力軸35に対する第1プーリ40の回転が規制され、第1プーリ40が駆動源5により回転駆動される。
【0050】
このように、第1溝44及び駆動側突条36は、周方向に一定の間隔をもって形成されている。そのため、この間隔角度単位で第1プーリ40の回転角度(即ち、第1螺旋溝41に巻かれた左右の上ケーブル10UL、10URの巻き量)を調整した上で、第1プーリ40を駆動源5の出力軸35に結合することができる。即ち、出力軸35と第1凹状部43とにより、組み付け時に第1プーリ40を選択された相対回転角度で駆動源5の出力軸35にスプライン結合する構造が構成される。
【0051】
第1プーリ40の後端面には、回転軸に沿って後方へ突出する円柱状の第1凸状部45が凸設されている。第1凸状部45の外周面には、軸線方向に沿って延びる複数の第1突条46が周方向に一定の間隔(ピッチ)をもって形成されている。本実施形態では、32本の第1突条46が11.25度間隔に設けられている。
【0052】
図9は、
図7に示される第2プーリ50を、取付側となる後方から見た背面図である。
図7及び
図9に示されるように、第2プーリ50の外周面には1条の第2螺旋溝51が形成されている。第2螺旋溝51は、第2プーリ50の外周面に左巻きに5周(5巻き)形成されており、後端面に開放される一端51aと、前端面に開放される他端51bとを有している。第2プーリ50の後端面及び前端面には、第2螺旋溝51を開放端から延長させる前後の第2延長溝52が形成されている。第2延長溝52も、各ケーブル10の第2係合端部10bを係止して、ケーブル10を保持するための溝であり、第2螺旋溝51側の部分に比べて端部側の部分の断面が大きくなっている。第2延長溝52の小断面部は、ケーブル10の本体部を通過可能且つ第2係合端部10bを通過不能な大きさとされている。
【0053】
第2プーリ50の後端面に形成された第2延長溝52には、第2螺旋溝51に巻かれた左側の下ケーブル10DLの第2係合端部10bが保持される。第2プーリ50の前端面に形成された第2延長溝52には、第2螺旋溝51に巻かれた右側の下ケーブル10DRの第2係合端部10bが保持される。スライドパネル3(
図1)が閉位置にある状態では、
図7に示されるように、第2プーリ50は、右側の下ケーブル10DRの方が左側の下ケーブル10DLよりも多く第2螺旋溝51に巻かれた状態となっている。左右の下ケーブル10DL、10DRも、第2プーリ50が回転すると一方が巻き取られ、他方が相補的に巻き出されるため、それらの合計巻き量は常に一定である。
【0054】
第2プーリ50の取付面となる前端面には、破線で示されるように第1プーリ40の第1凸状部45(
図8)と相補完形状をなす第2凹状部53が凹設されている。即ち、第2凹状部53の内周面には、軸線方向に沿って延びて第1突条46(
図8)を受容する複数の第2溝54が形成されている。これらの第2溝54に第1突条46が嵌合することにより、第1プーリ40に対する第2プーリ50の回転が規制され、第1プーリ40が駆動源5により回転駆動される。
【0055】
このように、第2溝54及び第1突条46は、周方向に一定の間隔をもって形成されている。そのため、この間隔角度単位で第2プーリ50の回転角度(即ち、第2螺旋溝51に巻かれた左右の下ケーブル10DL、10DRの巻き量)を調整した上で、第2プーリ50を第1プーリ40に結合することができる。即ち、第1突条46が外周面に形成された第1凸状部45と第2溝54が内周面に形成された第2凹状部53とにより、組み付け時に第1プーリ40と第2プーリ50とを選択された相対回転角度で互いにスプライン結合する簡単な構成の結合構造60が構成される。
【0056】
第2プーリ50の後端面には、回転軸に沿って凹設され、ハウジング8に一体形成された円筒状の軸部8aによって軸支される有底の軸受孔55が形成されている。上記のように駆動源5の出力軸35に第1プーリ40を組み付け、第1プーリ40に第2プーリ50を組み付けた後、軸部8aを第2プーリ50の軸受孔55に挿入するようにして後ハウジング8Bを前ハウジング8Aに結合することにより、駆動部の組み付けが完了する。
【0057】
駆動部がこのように構成されていることにより、上側駆動ケーブル10Uと下側駆動ケーブル10Dとが互いに同期して、相補的に巻き取り・巻き出しされる。また、そのような組み付けを容易に行うことができる。即ち、第1プーリ40と第2プーリ50とを、組み付け時に所望の相対回転角度で互いに結合した上で、簡単な構成の結合構造60により結合することができる。また、各ケーブル10が、第2係合端部10bを介して対応する第1プーリ40又は第2プーリ50に保持され、滑ることがないため、上側駆動ケーブル10U及び下側駆動ケーブル10Dを緊張状態で設ける必要がなく、これによっても組み付けが容易になっている。本実施形態では、第1プーリ40及び第2プーリ50が駆動源5の出力軸35と同軸に配置されている。そのため、パワースライドウィンドウ1をコンパクト化することができる。
【0058】
また、スライドパネル3が、ウィンドウガラス2のパネル面に沿う左右方向と、ウィンドウガラス2パネル面に交差する前後方向とにスライド可能に設けられているため、
図3に示されるように、閉状態においてスライドパネル3の可動ガラス11をウィンドウガラス2の開口2a内に配置できる。これにより、ウィンドウガラス2のパネル面に凹凸が少なくなって意匠性を改善できるため、パワースライドウィンドウ1の商品性が向上する。
【0059】
なお、スライドパネル3の左右方向と前後方向とへのスライドは、以下の構成によって実現されている。即ち、パワースライドウィンドウ1は、開口2aが形成されたウィンドウガラス2と、ウィンドウガラス2に主面に沿って設けられるガイドレール4と、ガイドレール4にガイドレール4の長手方向に沿ってスライド可能に設けられるスライダ20、21と、スライダ20、21をスライド駆動する駆動源5と、スライダ20、21に支持され、開口2aを閉じる閉位置と開口2aを開く開位置との間をガイドレール4に沿ってスライドするスライドパネル3と、スライドパネル3に設けられ、ガイドレール4の長手方向に交差し且つスライドパネル3の主面に沿う方向に突出する少なくとも1つのピン16、17と、ガイドレール4に形成され、少なくとも1つのピン16、17をガイドするピンガイド溝27とを備える。そして、ピンガイド溝27には、ガイドレール4の長手方向に対して角度をなして延在し、ガイドレール4の長手方向に延在する溝主部からウィンドウガラス2に近接する向きに延出する少なくとも1つのカム溝部27aが形成され、スライダ20、21には、挿通された少なくとも1つのピン16、17を駆動する少なくとも1つの長孔30が形成されている。この構成により、上記動作が実現される。
【0060】
また、少なくとも1つの長孔30が、ガイドレール4の長手方向に対して角度をなして延在している。そのため、スライドパネル3の左右方向のスライドと前後方向のスライドとが円滑に切り替えられる。
【0061】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例としてピックアップトラックのリヤウィンドウにパワースライドウィンドウ1を適用したが、ワゴン車等のリヤウィンドウやサイドウィンドウに適用してもよい。また、上記実施形態では、第1プーリ40に第1凸状部45が形成され、第2プーリ50に第2凹状部53が形成されているが、第1プーリ40に凹状部が形成され、第2プーリ50に凸状部が形成されてもよい。また、凸状部の外周面に形成される突部は、第1突条46のように溝に対応する長さを有するものに限らず、溝に嵌合するように突出するものであればよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。