【実施例1】
【0028】
図1は本発明が適用される液晶表示パネルの平面図である。
図1において、TFT基板100と対向基板200がシール材30によって接着し、TFT基板100と対向基板200の間に液晶が挟持されている。TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成されており、TFT基板100が1枚となっている部分は端子部150となっている。端子部150には、液晶表示パネルを駆動するICドライバ160、液晶表示パネルに、電源、映像信号、走査信号等を供給するためのフレキシブル配線基板を接続するための端子等が形成されている。
【0029】
図1において、表示領域1000には走査線10が横方向に延在し、縦方向に配列している。また、映像信号線20が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線10と映像信号線20とで囲まれた領域が画素25となっている。狭額縁では、表示領域1000の端部と液晶表示装置の端部の距離wは1mm程度にまで小さくなっている。この場合、シール材30の接着幅は0.5mm程度しか確保することが出来ない。したがって、シール部における接着強度は重要な問題となる。
【0030】
図2は、
図1のA−A断面に相当するシール部の詳細断面図である。
図2において、ガラスで形成されたTFT基板100に第1の絶縁膜101が形成されている。第1の絶縁膜101はガラスからの不純物がTFTの半導体層を汚染することを防止するために形成されるアンダーコート膜である場合もある。第1の絶縁膜101の上に第2の絶縁膜102が形成されている。第2の絶縁膜102は、TFTにおけるゲート絶縁膜である場合もある。第2の絶縁膜102の上に走査線10および走査線引出し線11が形成されている。矩形の走査線引き出し線は、
図1における、図面の上側からの走査線引出し線11の断面である。
【0031】
走査線10および走査線引出し線11を覆って有機パッシベーション膜103が形成されている。有機パッシベーション膜103は2乃至3μmと、厚く形成され、平坦化膜としての役割も有している。有機パッシベーション膜103は感光性樹脂で形成され、パターニングにフォトレジストを必要としない。
【0032】
有機パッシベーション膜103の上にSiNで形成された層間絶縁膜104が形成されている。この層間絶縁膜104は、IPS方式の液晶表示装置の表示領域において、平面べたで形成された下層電極とスリットを有する上層電極の層間の絶縁膜である。下層電極がコモン電極で、上層電極が画素電極である場合もあるし、その逆の場合もあるが、下層電極も上層電極もITO(Indium Tin Oxide)で代表される透明酸化物導電膜105で形成されている。以下の説明は、透明酸化物導電膜105はITOであるとして説明するが、IZO(Indium Zinc Oxide)で形成される場合もある。
【0033】
図2において、層間絶縁膜104の上にITO105が形成されている。これが本発明の特徴である。このITO105は少なくとも、表示領域1000における画素電極のITOとは絶縁されている。しかし、ITO105は、表示領域における上層電極を形成するときに同時に形成される。
【0034】
ITO105を覆って配向膜106が形成されている。配向膜106とITO105との接着力は強いので、シール幅が狭くとも、配向膜106とITO105との接着強度は確保することができる。なお、配向膜106とITO105との接着力は、他の部分においても重要であるが、シール部においてはシール材30との間に応力が生ずるので、接着力が特に問題となる。
【0035】
配向膜106がシランカップリング材を有している場合は、配向膜106とITO105との接着力をさらに向上させることができる。シランカップリング材のOH基とITO105のOH基が強く結びつくからである。なお、ITO105は、その下地膜であるSiNで形成された層間絶縁膜104とも強く接着する。ITO105はTFT基板100の端部までには形成されていないので、ITO105と接触する他の層との界面から水分が浸入するということも無い。
【0036】
配向膜106は、当初液体である配向膜材料を、フレキソ印刷、インクジェット等によって塗布するが、配向膜材料がシール部の外側端部にまで達しないように、ストッパーとして、有機パッシベーション膜103に凹部65,66,67を形成している。そして、凹部のさらに外側に形成されている溝状スルーホール60も配向膜材料に対するストッパーの役割を有する。
図2においては、配向膜材料は3個ある凹部65,66,67を乗り越えて、最後の溝状スルーホール60において止まっている。
【0037】
図2において、対向基板200側にはブラックマトリクス201が形成されている。
図2におけるブラックマトリクス201はシール部30からの光漏れを防止するために設けられている。ブラックマトリクス201は樹脂で形成されているので、樹脂を浸透してくる水分を遮断するためにブラックマトリクス溝2011が形成されている。ブラックマトリクス201の上には、カラーフィルタ202が紙面垂直方向にストライプ状に形成されている。カラーフィルタ202はオーバーコート膜203の上に形成される柱状スペーサ40に対応して形成されている。
【0038】
カラーフィルタ202の上にオーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203には、カラーフィルタ202の部分に対応して凸部が形成されている。この凸部は、配向膜材料を塗布した時に配向膜材料が基板外側方向に広がろうとするのを防止する役割を有する。オーバーコート膜203の凸部に第1柱状スペーサ40が形成されている、第1柱状スペーサ40はシール部における対向基板200とTFT基板100の間隔を規定する役割を有する。第1柱状スペーサ40と第1柱状スペーサ40の間には、第1柱状スペーサ40よりも高さが低い第2柱状スペーサ45が形成されている。第2柱状スペーサ45は対向基板200に外部から圧力が加わった場合、TFT基板100と対向基板200の間隔が過度に小さくなることを防止する役割を有する。
【0039】
オーバーコート膜203を覆って配向膜106が形成されている。シール部の端部には壁状スペーサ50が形成されている。壁状スペーサ50は、液晶表示パネルが複数形成されたマザー基板において、隣接する液晶表示パネルの境界に配置され、壁状スペーサ50の中心に沿ってスクライビングをいれ、その後、破断することによって個々の液晶表示パネルを分離する。壁状スペーサ50が無い場合、この部分はシール材30となるが、シール材30が存在すると、スクライビングを入れても破断が出来ないからである。
図2において、壁状スペーサ50とTFT基板100側との間のわずかな隙間にシール材30が存在しているが、この部分のシール材の厚さが1μm以下であれば、破断作業に大きな影響を与えない。また、シール材30厚さが1μm以下であっても、対向基板200とTFT基板100の接着に寄与する場合もある。
【0040】
図2において、対向基板200側の配向膜106はオーバーコート膜203に形成された凸部を乗り越えて壁状スペーサ50において、止まっている。対向基板200側では、配向膜106はオーバーコート膜203の上に形成されている。オーバーコート膜203も配向膜106も有機材料であり、有機材料同士の接着力は強いので、配向膜106とオーバーコート膜203との接着力は大きな問題にはならない。
【0041】
シール部において、シール材30によってTFT基板100と対向基板200が接着している。
図2では、シール材30は配向膜106と接着しているが、シール材30と配向膜106の接着は実用的には維持できるようになっている。
図2において、シール材30の内側には液晶300が充填されている。
【0042】
図3は、
図1および
図2のTFT基板100の平面図である。
図3は、シール部、表示領域1000、層間絶縁膜104、溝状スルーホール60、ITO105の関係を示す模式図である。
図3において、点線31より外側がシール部となっており、シール材が形成されている。表示領域を囲んでITO105が形成され、ITO105の外側を溝状スルーホール60が囲み、その外側に有機パッシベーション膜を覆う層間絶縁膜104が存在している。
【0043】
配向膜106は表示領域1000から溝状スルーホール60まで覆っている。シール部において、配向膜106はITO105の上に形成されている。ITO105と配向膜106、およびITO105とSiNで形成されている層間絶縁膜104との接着力は強い。したがって、
図3のシール部における配向膜106の接着の信頼性は高い。また、ITO105は、TFT基板100の端部までは形成されていないので、TFT基板100の端部からITO105の界面を通して水分が浸入するということも無い。
【0044】
図4は、本実施例の他の形態を示す断面図である。
図4が
図2と異なる点は、TFT基板100の有機パッシベーション膜106に凹部が形成されていない点である。
図4において、配向膜106は有機パッシベーション膜103の溝状スルーホール60で止まっている。
図4においても、ITO105が層間絶縁膜104と配向膜106の間に形成されているので、配向膜106の接着性は確保することができる。また、ITO105はTFT基板100の端部までは形成されていないので、TFT基板100の端部からITO105の界面を通して水分が浸入するということも無い。
【0045】
図5は本実施例のさらに他の形態を示す断面図である。
図5が
図2と異なる点は、対向基板200側において、オーバーコート膜203に溝70が形成されていることである。この溝70は、表示領域1000を囲む形で形成されている。オーバーコート膜溝70の役割は、TFT基板100における有機パッシベーション膜103に形成された溝状スルーホール60の役割と同様である。すなわち、オーバーコート膜203を通して外部から浸透してくる水分をこの溝において遮断している。
【0046】
図5において、配向膜106はオーバーコート膜溝70において止まっている。また、オーバーコート膜溝70の中にもシール材30が充填されている。その他の構成は
図2と同様であり、効果も
図2の構成と同様である。
【0047】
図6は本実施例におけるさらに他の形態を示す断面図である。
図6が
図5と異なるところは、配向膜106がシール材30の端部付近まで形成されず、シール材30の途中で止まっている点である。シール材30と配向膜106の接着に多少問題がある場合は、
図6のような形態のほうがシール部の信頼性を増すことができる。
【0048】
図6において、配向膜106はTFT基板100側では、第3の凹部67で止まっており、対向基板200側では、表示領域側から2番目の凸部で止まっている。TFT基板100側において、シール材30は配向膜106、ITO105、層間絶縁膜104と接着しており、対向基板200側では、シール材30は配向膜106、オーバーコート膜203と接着している。シール材30とITO105との接着強度、シール材30と層間絶縁膜104との接着強度、シール材30とオーバーコート膜203との接着強度は、シール材30と配向膜106との接着強度よりも大きい。
【0049】
以上のように、本実施例によれば、TFT基板100側のシール部において、配向膜106の剥がれを防止することができるので、シール部の信頼性を向上させることができる。
【実施例3】
【0053】
図9乃至19は、本発明において、TFT基板100におけるITO105の形成範囲を示す例である。各図において、配向膜106は、表示領域1000を含み有機パッシベーション膜106に形成された溝状スルーホール60より内側全面に形成されている。しかし、配向膜106の形成範囲はシール部を含むTFT基板100全面に形成してもよい。また、配向膜106の外側エッジは、シール材30と重なる範囲において、有機パッシベーション膜103の溝状スルーホール60よりも内側のこともありうる。しかし、ITO105の形成範囲は全ての例において、有機パッシベーション膜103に形成された溝状スルーホール60の内側である。すなわち、ITO105は、シール材30の外側端部よりは内側に形成されている。
【0054】
図9は、ITO105の塗布範囲を2列に分けて、シール材30の内側エッジ31を内側のITO105の上に形成した例である。この場合はシール材30の一部は層間絶縁膜104と接着しているが、シール材30の大部分はITO105とオーバーラップしているので、シール部における配向膜の剥がれを防止でき、シール部の接着強度は確保することができる。
【0055】
ITO105がシール材30とオーバーラップする範囲は、幅にして100μm以上とすることが望ましい、
図9のように、ITO105がシール材106とオーバーラップする範囲が2つの範囲に分かれる場合は、ITO105の2つの範囲の合計の幅が100μm以上とすればよい。ITOが3個以上から形成される場合も同様である。
【0056】
図10は、ITO105の形状を連続でなく、多数の島状に形成した例である。すなわち、
図10において、シール材30の内側エッジの位置は任意でよいが、シール材30とITO105がオーバーラップする範囲は、シール材30の接着面積の20%以上とすることが好ましい。
【0057】
図11は、ITO105を枠状に形成するが、各辺のITO105には、TFT基板の外側に向かう隙間が存在している。配線の都合等により、
図11のようにする場合もあるが、この場合もITO105とシール材30のオーバーラップする面積をシール材30の接着面積の20%以上とすればよい。
【0058】
図12は、端子部150側の辺を除く3辺は
図3と同様な形状であるが、端子部150側の辺には、ITO105を形成しない例である。端子部150側は、映像信号線20、走査線10等の引出し線が集中しており、レイアウト的に、層間絶縁膜104を覆ってITO105を形成することが困難な場合もある。一方、端子部150側のシール部は他の3辺と比べて額縁の幅を比較的広くとることができるので、シール幅も大きくすることや製造ばらつきを加味してもシール部と配向膜をオーバーラップさせない事が可能であり、端子部150側においては、ITO105を設けなくとも接着力を確保することができる場合もあるからである。
図13および
図14は、端子部150側の辺において、ITO105を除去する範囲の変形例である。作用は
図12で説明したのと同様である。
【0059】
図15は、端子部150側の辺を除く3辺を
図8と同じ構成とし、端子部150側の辺にはITO105を形成しない例である。
図16および
図17は、
図15における端子部150側においてITO105を除去する範囲の変形例である。作用は
図12で説明したのと同様である。
【0060】
図18は端子部150側の辺を除く3辺において、
図9のように、表示領域1000を囲んでITO105を2列形成する例において、端子部150側の辺は、内側のITO105のみシール材30とオーバーラップさせた例である。
図18では、走査線10と外側のITO105は、端子部150側の辺と平行には延在していないが、層間絶縁膜104の端部までは形成されている。
図19は、端子部150側の辺において、内側のITO105のみをシール材30とオーバーラップさせる例の変形例であり、外側ITO105は層間絶縁膜104の端子部150側の端部までは延在していない。
【0061】
以上、ITO105の形成範囲を種々の場合について説明したが、共通している点は、表示領域1000を囲むようにしてITO105を形成する場合は、ITO105のシール材30とオーバーラップする幅が100μm以上であり、ITO105が連続して形成されていない場合は、ITO105とシール材30とがオーバーラップする面積が、シール材30の接着面積の20%以上であるということである。ここで、シール材30の接着面積とは、接着材30がTFT基板100側において、接着している面積を言う。また、環状のITO105が複数形成されており、複数のITO105がシール材30とオーバーラップしている場合は、シール材30とオーバーラップしている複数のITO105の幅の合計が100μm以上であるということである。
【0062】
以上の説明では、層間絶縁膜104と配向膜106の間には透明酸化物導電膜105としてのITO105が形成されているとして説明した。ITO105は、表示領域においてITOで形成された画素電極またはコモン電極を形成するときに同時に形成することができる。しかし、画素電極あるいはコモン電極がIZOで形成される場合は、層間絶縁膜104と配向膜106の間に形成する透明酸化物導電膜105としては、IZOでもよい。
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、シール部における配向膜の剥離を防止することができるので、狭額縁になっても、シール部の信頼性を確保することができる。なお、IPS方式において、配向膜に対して光配向処理を行う場合、配向膜とその下地膜との接着力が弱くなる。したがって、光配向を用いたIPS方式においては、本発明は特に効果がある。