(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前端部に筆記芯を案内する先端パイプを出没可能にする開口が形成された外側スライダーと、前記外側スライダー内に摺動可能に配置されて前記先端パイプを支持すると共に、当該先端パイプを軸方向にスライド移動させる内側スライダーとを備えたシャープペンシルであって、
前記外側スライダーには、軸方向に沿って案内溝が形成されると共に、前記内側スライダーには前記外側スライダーの案内溝内を移動する突起が、軸芯から外側に向かって一体に形成されることで、前記外側スライダーから前記内側スライダーの脱落を防止させたことを特徴とするシャープペンシル。
前記外側スライダーの案内溝は、外側スライダーの先端部側に向かって溝幅が除々に狭くなるテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたシャープペンシル。
前記外側スライダーおよび内側スライダーのいずれか一方を一次側成形体として形成し、いずれか他方を前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、二色成形後に前記外側スライダーおよび内側スライダーが分離されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたシャープペンシル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記したように先端パイプが軸方向にスライド可能に構成されたシャープペンシルにおいては、例えば特許文献2に開示されているように、先端パイプはスライダーに取り付けられ、このスライダーが口先部材内において軸方向に摺動可能にされた構成が採用される。
この場合、スライダーの外形形状に対して、口先部材内に形成される支持面の内側寸法が大きいと、両者のクリアランス(隙間)によって、先端パイプに遊び(ぐらつき)が生じ、筆記の感触を悪くするだけでなく、筆記芯の芯折れを助長させるという問題が発生する。さらに、スライダーが口先部材から脱落する虞もある。
【0008】
また、スライダーの外形形状に対して、口先部材内に形成される支持面の寸法差が僅かであると、寸法精度のばらつきによっては、先端パイプを保持するスライダーの円滑なスライド動作が疎外され、商品価値を損ねるという問題が発生する。
【0009】
一方、筆記動作に伴って筆記芯を回転駆動させるシャープペンシルにおいて、筆記芯の回転状態をユーザに見せることができる表示部を備えた構成が、前記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示された表示部によると、軸筒の透明素材を介して回転部材の一部を確認することができるように構成されている。これによると軸筒を握る手指により表示部が隠されて、回転状態の見える角度が限定されるなどの問題が残される。
【0010】
この発明は、前記特許文献に開示されたシャープペンシルの問題点に着目してなされたものであり、先端パイプのスライド動作が円滑になし得ると共に、先端パイプの遊び(ぐらつき)を防止し、芯折れなどの問題を解消することができるシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
加えてこの発明は、筆記動作に伴って筆記芯を回転駆動させる回転駆動装置を備えた構成において、軸筒を把持する手指による影響を受けることなく、筆記芯の回転動作を確実に把握することが可能なシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるシャープペンシルは、前端部に筆記芯を案内する先端パイプを出没可能にする開口が形成された外側スライダーと、前記外側スライダー内に摺動可能に配置されて前記先端パイプを支持すると共に、当該先端パイプを軸方向にスライド移動させる内側スライダーとを備えたシャープペンシルであって、前記外側スライダーには、軸方向に沿って案内溝が形成されると共に、前記内側スライダーには前記外側スライダーの案内溝内を移動する突起が、軸芯から外側に向かって一体に形成され
ることで、前記外側スライダーから前記内側スライダーの脱落を防止させたことを特徴とする。
【0012】
加えてこの発明にかかるシャープペンシルは、
前記外側スライダーの案内溝は、外側スライダーの先端部側に向かって溝幅が除々に狭くなるテーパー状に形成されていることが望ましい。
さらに、前記筆記芯に加わる筆記圧に基づいて、筆記芯を一方向に回転駆動させる回転駆動機構が備えられ
ていると共に、前記外側スライダーが軸筒先端の口先部から突出して配置され、前記筆記芯の回転駆動と共に、前記外側スライダーおよび内側スライダーが回転駆動を受けるように構成される。
【0013】
さらに前記外側スライダーおよび内側スライダーのいずれか一方を一次側成形体として形成し、いずれか他方を前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、二色成形後に前記外側スライダーおよび内側スライダーが分離された構成を好適に採用することができる。
また、前記内側スライダーの胴部の後端外径が前端外径より大きい構成を好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る前記したシャープペンシルによると、筆記芯を案内する先端パイプは内側スライダーに取り付けられ、先端パイプは外側スライダーの前端部に形成された開口から出没可能となるように構成される。
そして、外側スライダーには、軸方向に沿って案内溝が形成されると共に、前記内側スライダーには前記外側スライダーの案内溝内を移動する突起が、軸芯から外側に向かって一体に形成される。これにより、内側スライダーの脱落を防ぐことができる。
【0015】
また前記構成に加えて、外側スライダーと内側スライダーとを、二色成形法により形成することで、一次側成形体の表面の一部を二次側成形体の一部に転写した状態で成形することができる。したがって二色成形法を利用することによっても、先端パイプに遊び(ぐらつき)が生ずるのを効果的に防止することが可能となる。
【0016】
そして、筆記芯に加わる筆記圧に基づいて、筆記芯を一方向に回転駆動させる回転駆動機構が備えられ、前記筆記芯の回転駆動と共に、前記外側スライダーおよび内側スライダーも回転駆動を受けるように構成することで、筆記する紙面等の直前に存在する前記外側スライダーの回転動作を、筆記しつつ容易に確認をすることができる。
【0017】
また、外側スライダーと内側スライダーとの摺動抵抗を無くすことにより、筆記時の芯の磨耗に合わせて先端パイプおよび内側スライダーが後退し、先端パイプの後退限までの筆記が可能である。これにより、先端パイプが後退しきるまでの間、筆記途中での芯繰り出しのノック操作を行う必要がないので、従来の先端パイプスライドのシャープペンシルより、長距離筆記が可能となる。
さらに、前記内側スライダーの胴部の後端外径が前端外径より大きいことで、スライダー後退時はクリアランスが有り、摺動抵抗がなく、下向きでのノックで芯がチャックの把持から開放され自重落下するので、チャックの繰り出し長さ以上の先端パイプの突出量を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明にかかるシャープペンシルについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に示す各図においては同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により、一部の図面においては代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付けた符号を引用して説明する場合もある。
【0020】
図1および
図2は、シャープペンシルを前半部および後半部に別けて全体構成を示した断面図である。そして
図1は先端パイプが突出されて筆記可能な状態を示し、
図2は先端パイプが外側スライダー内に収容された状態を示している。
図1および
図2に示すように軸筒を構成する先軸1の先端部には、口先部材2が螺合されることで、口先部材2が先軸1に対して着脱可能に取り付けられている。そして、先軸1および後述する後軸の軸芯に沿って筒状に形成された樹脂製の芯ケース3が収容されており、この芯ケース3の先端部には、短軸の芯ケース継手4が取り付けられ、前記芯ケース継手4を介して真ちゅう製のチャック5が連結されている。
【0021】
前記チャック5内には、その軸芯に沿って筆記芯Lの通孔が形成され、またチャック5の先端部が軸回りに複数(例えば3つ)に分割されて、分割された先端部が真ちゅうによりリング状に形成された締め具6内に遊嵌されている。
リング状の前記締め具6は前記チャック5の周囲を覆うようにして配置された中継パイプ7の先端部内面に装着されている。
なお、この中継パイプ7の後端部は筆記圧を利用して筆記芯(替え芯)を回転させる後述する回転駆動機構に連結されている。
【0022】
前記中継パイプ7の前端部には、内側スライダー9を軸方向にスライド可能に支持する外側スライダー10が嵌合されて取り付けられている。前記外側スライダー10の前半部の一定の領域は、その内径が軸方向にほぼ等しく形成されており、この外側スライダー10内に、先端パイプ11が取り付けられた内側スライダー9が、軸方向にスライド可能に収容されている。
また、前記内側スライダー9における先端パイプ11の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が収容されている。
なお、前記内側スライダー9、外側スライダー10、先端パイプ11の構成については、
図4〜
図10に基づいて後で詳しく説明する。
【0023】
前記した芯ケース3に続くチャック5内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ11に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に筆記芯Lが挿通される。そして、前記した中継パイプ7と芯ケース継手4との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0024】
前記チャックスプリング13は、その前端部が中継パイプ7の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手4の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の作用により、前記チャック5は中継パイプ7内を後退してその先端部がリング状の締め具6内に収容される方向に付勢され、これによりチャック5は筆記芯Lを把持するように作用する。
【0025】
軸筒を構成する前記した先軸1には例えばゴムなどの弾性素材により形成されたグリップ部材14が先軸1を取り巻くようにして装着されている。このグリップ部材14を先軸1に装着するにあたっては、先に飾りリングとして機能する透明な樹脂素材により形成された透明リング15が先軸2の先端部側から装着される。
【0026】
この透明リング15は、先軸1に一体に成形された環状の鍔部1aによって位置決めされ、続いて前記グリップ部材14が同方向から先軸1を取り巻くようにして装着される。
その後に、前記した口先部材2が先軸1の前端部に螺合されることで、前記透明リング15およびグリップ部材14が軸方向で位置決めされて、前記先軸1の外側に取り付けられる。
【0027】
前記した飾りリングとして機能する透明リング15は、予め先軸1に巻回されるようにして貼り付けられた加飾シール16を覆い、この加飾シール16の周面が視認できるように構成されている。
この加飾シール16には、例えば金もしくは銀色などの光沢のある印刷が施され、その適宜の位置には印刷が施されない透明部分が形成されている。そして、この透明部分および透明な樹脂素材により成形された前記先軸1を透視して、内部の中継パイプ7の一部が視認できるように構成されている。
【0028】
この場合、中継パイプ7における加飾シール16に対向する位置には、例えばストライプ状などの模様を施しておくことが好ましい。
これにより、後述する回転駆動機構によって中継パイプ7が回転駆動される様子を、透明リング15を介して確認することができる。
【0029】
前記した先軸1の後端部には、軸筒を構成する後軸18の前端部内面が嵌合されて取り付けられており、この後軸18の前半部分には、ユニット化された筆記芯の回転駆動機構20が収容されている。
この回転駆動機構20には前記したとおり中継パイプ7の後端部が接続されており、この中継パイプ7は筆記動作に基づく筆記芯の僅かな後退および前進動作(これを、クッション動作ともいう。)を前記チャック5を介して受けて、回転駆動機構25に伝達させる機能を果たす。
【0030】
また、前記中継パイプ7は前記クッション動作によって生ずる前記回転駆動機構20による回転運動を、前記チャック5に伝達させるように作用する。これにより、チャック5に把持された筆記芯Lは、筆記動作に伴い前記回転駆動機構20による回転運動を受けることになる。
なお、回転駆動機構20のより詳細な構成および作用については、
図3に基づいて後で説明する。
【0031】
前記した回転駆動機構20の後部側にはノック棒31が軸方向に摺動可能に装着されている。このノック棒31の前端部は円環状の楔形突出部31aになされており、この楔形突出部31aが後軸18内に形成された環状突起18aを軸方向に乗り越えて取り付けられている。そして、環状突起18aとノック棒31との間にはコイル状のノック棒スプリング32が配置され、このスプリング32によって、前記ノック棒31を後軸18の後端部側に向けて付勢するように構成されている。
【0032】
また、ノック棒31の中央よりも若干後端部寄りには、筆記芯の補給孔31bを備えた当接部31cが形成されており、さらにこのノック棒31の後端部には、図示せぬ消しゴムが装着される空間部31dが形成されている。そしてノック棒31の後端部を覆うようにしてノック部材としてのノックカバー33が、ノック棒31に対して軸方向に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
なお、前記ノック棒31の当接部31cと、前記した芯ケース3の後端部とは所定の間隔をもって対峙した構成にされている。この構成によると、筆記による前記したクッション動作によりチャック5および芯ケース3が若干後退しても、芯ケース3の後端部が前記ノック棒31の当接部31cに衝突することはなく、前記回転駆動機構20による回転動作に障害を与えるのを防止することができる。
【0034】
前記ノック棒31に対して着脱可能に取り付けられた前記ノックカバー33には、このノックカバー33の側壁面に円盤状の突起部33aが一体に形成されている。そして、円盤状突起部33aの円盤面には、円形状にして中央部が若干凸面状になされ前記ノックカバー33とは異色の樹脂盛りシール34が装着されている。
【0035】
また、前記後軸18の後端部における周方向の一部には、軸方向に切欠き溝18bが形成されており、前記円盤状突起部33aが前記切欠き溝18bに沿って配置されることで、前記ノックカバー33のノック操作が可能となるように構成されている。
なお、前記ノックカバー33に形成された円盤状突起部33aは、前記樹脂盛りシール34により飾りの機能を果たすと共に、シャープペンシルの転がり止めとしての機能も果たすものとなる。
【0036】
図3は、ユニット化された前記回転駆動機構20の構成を拡大して示したものである。この回転駆動機構20には円筒状に形成された回転カム21が具備されており、前記した中継パイプ7は、回転駆動機構20の前端部において、前記回転カム21の軸芯に形成された軸孔内に接合することで連結されている。
【0037】
前記回転カム21は、その前端部付近が若干径を太くした太径部になされ、その太径部の一端面(後端面)には第1カム面21aが形成されており、太径部の他端面(前端面)には第2カム面21bが形成されている。
一方、前記回転カム21の後端部側を覆うようにして円筒状の上カム形成部材22が、前記回転カム21を軸支するように配置されており、前記上カム形成部材22の前端部外周には、円筒状の下カム形成部材23が嵌合されて取り付けられている。
【0038】
そして、前記回転カム21における第1カム面21aに対峙する上カム形成部材22の前端面に、固定カム面(第1固定カム面ともいう。)22aが形成されている。また、前記回転カム21における第2カム面21bに対峙する下カム形成部材23の前端部内面に、固定カム面(第2固定カム面ともいう。)23aが形成されている。
【0039】
前記した上カム形成部材22の後端部側には、シリンダー部材24が嵌め込まれており、このシリンダー部材24の後端部には前記した芯ケース3が挿通できる挿通孔24aが形成されている。そして、前記シリンダー部材24内には円筒状に形成され、軸方向に移動可能なトルクキャンセラー25が配置され、当該トルクキャンセラー25の内周面前端部と前記シリンダー部材24の内周面後端部との間にはコイル状のクッションスプリング26が装着されている。
【0040】
前記クッションスプリング26は、前記トルクキャンセラー25を前方に付勢するように作用し、この付勢力を受けた前記トルクキャンセラー25に押されて前記回転カム21は前方に向かうように作用する。
【0041】
以上のとおり前記した回転駆動機構20は、その中央部が芯ケース3を通す空間部になされて芯ケース3とは隔離されており、回転駆動機構20は前記した符号21〜26で示す各部材により一体に形成されてユニット化されている。
【0042】
前記した構成の回転駆動機構20によると、筆記を行った場合には先端パイプ11から突出している筆記芯Lに筆記圧が加わり、チャック5はクッションスプリング26の付勢力に抗して僅かに後退する。これに伴って回転カム21も軸方向に僅かに後退する。
したがって、回転カム21に形成されている円環状の第1カム面21aは同じく円環状に形成された第1固定カム面22aに接合して噛み合い状態になされる。
【0043】
前記第1カム面21aは周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第1固定カム面22aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、対峙した状態の第1カム面21aと固定カム面22aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように第1カム面21aが第1固定カム面22aに接合して噛み合い状態になされることによって、回転カム21は第1カム面21aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0044】
このようにして第1カム面21aが第1固定カム面22aに接合して噛み合い状態になされた状態においては、周方向に沿って連続的に鋸歯状にカム面が形成された回転カム21の第2カム面21bと前記第2固定カム面23aが、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0045】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯Lに対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッションスプリング26の作用により回転カム21は軸方向に前進し、回転カム21に形成された第2カム面21bが、下カム形成部材23側の第2固定カム面23aに噛み合う。これにより回転カム21は第2カム面21bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を再び受ける。
【0046】
以上のとおり、このシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転カム21の軸方向への往復運動(クッション動作)に伴って、回転カム21は第1カム面21aおよび第2カム面21bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、チャック5を介してこれに把持された筆記芯Lも同様に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0047】
なお、前記したクッションスプリング26の付勢力を受けて回転カム21を前方に押し出す円筒状のトルクキャンセラー25は、このトルクキャンセラー25の前端面と前記回転カム21の後端面との間ですべりを発生させて、筆記の繰り返しにより生ずる回転カム21の回転運動を、クッションスプリング26に伝達させないように作用する。
【0048】
換言すれば、前記回転カム21とクッションスプリング26との間に、トルクキャンセラー25が介在されることにより、前記回転カム21の回転運動が前記したすべり作用により前記スプリング26に伝達されるのを阻止するように作用し、スプリング26の捩じれ戻り(バネトルク)が発生することで、回転カム21の回転動作に障害を与える問題を解消させることができる。
【0049】
また、前記した構成のシャープペンシルにおいては、前記したノックカバー33をノック操作することで、ノック棒31の当接部31cが芯ケース3を前方に押し出し、芯ケース3の前端部に取り付けられた芯ケース継手4を介してチャック5も前方に押し出される。これにより、チャック5の先端部が締め具6から突出してチャック5による筆記芯の把持状態が解除される。そして、前記ノック操作の解除により、チャックスプリング13の作用によりチャック5および芯ケース3等は軸筒内において後退する。
【0050】
この時、筆記芯Lは保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により一時的に保持され、この状態でチャック5が後退してその先端部が前記締め具6内に収容されることで、筆記芯Lを再び把持状態にする。すなわち、ノックカバー33のノック操作の繰り返しによりチャック5が前後に移動し、これにより筆記芯Lの解除と把持が行われ、筆記芯Lはチャック5から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0051】
そして、前記したノックカバー33をノックした状態で、筆記芯Lおよび先端パイプ11を指先等で押し込むと、筆記芯Lはチャック5による把持状態が解かれているので後退し、前記先端パイプ11も内側スライダー9と共に、外側スライダー10内において後退する。
図2は前記したとおり、先端パイプ11が内側スライダー9と共に、外側スライダー10内において後退した状態を示しており、これにより、先端パイプ11が突出していることにより不用意に怪我を負うなどの危険性を避けることができる。
【0052】
また、
図1に示したように先端パイプ11を前進させるには、前記ノックカバー33をノック操作すると、前記したとおりチャック5が前進してチャック5の先端部によって内側スライダー9を外側スライダー10内において前方に押し出す。したがって、内側スライダー9に取り付けられた先端パイプ11も外側スライダー10内を前進して外側スライダー10の前方に突出し、
図1に示す状態となる。
【0053】
図4〜
図10は、前記内側スライダー9、外側スライダー10、先端パイプ11のより詳細な構成について示したものである。
すでに説明したとおり、前記した外側スライダー10の前半部の一定の領域は、その内径が軸方向にほぼ等しく形成されており、この外側スライダー10内に、先端パイプ11が圧入された内側スライダー9が、軸方向に摺動可能に収容されている。
そして、外側スライダー10の前端部中央には、前記先端パイプ11が出没できる開口10aが形成されている。
【0054】
また前記外側スライダー10の周側面には、軸対称の位置に軸方向に沿って一対の案内溝10bが形成されており、内側スライダー9には前記一対の案内溝10b内を移動する一対の突起9aが、その前端部における軸対称の位置にそれぞれ外側に向かって一体に形成されている。
すなわち、内側スライダー9と外側スライダー10は相対的な軸方向へのスライドは可能であるが、互いに分離されないように構成されている。
【0055】
図4(A)は内側スライダー9と先端パイプ11とが外側スライダー10内において前進した状態、すなわち
図1に示した筆記可能な状態を示しており、
図4(B)は内側スライダー9と先端パイプ11とが外側スライダー10内において後退した状態、すなわち
図2に示した状態を示している。
図4(A)に示したように、内側スライダー9が前進した筆記可能な状態においては、筆記に伴う前記したクッション動作により、前記した回転駆動機構20が回転駆動される。これに伴い、口先部材2から突出している前記外側スライダー10も、筆記芯Lの回転と共に回転駆動を受ける。
【0056】
したがって、筆記する紙面等の直前に存在する前記外側スライダー10の回転動作を、筆記しつつ容易に確認することができる。しかも前記外側スライダー10には、
図4(A)に示されているように、外側スライダー10に形成された案内溝10bから、内側スライダー9に形成された突起9aが突出した状態になされているので、これらが回転する様子を確実に監視することができる。
【0057】
なお、このシャープペンシルにおいては、すでに説明したとおり、軸筒の前方寄りに配置された透明リング15を介して回転駆動機構20の回転状態を観察することができる。しかしながら、軸筒を握る手指により透明リング15が隠されて、回転状態の見える角度が限定されるなどの問題が残されるものの、前記した外側スライダー10の回転は、透明リング15の機能の弱点を補うことができる。また、内側スライダー9の突起9aと外側スライダー10の案内溝10bを形成することで、残芯時に筆記する際も内側スライダー9の回転方向の空回りを防止することができる。
【0058】
図5〜
図10は、外側スライダー10と、この外側スライダー10に収容された内側スライダー9について示したものであり、
図5〜
図7は内側スライダー9が前進した状態を示しており、
図8〜
図10は、同じく内側スライダー9が後退した状態を示している。
【0059】
この実施の形態においては、
図5〜
図7に示したように外側スライダー10の周側面には、軸対称の位置に軸方向に沿って一対の案内溝10bが形成されており、内側スライダー9には前記一対の案内溝10b内を移動する一対の突起9aが、その前端部における軸対称の位置にそれぞれ外側に向かって一体に形成されている。
加えて、外側スライダー10に形成された一対の案内溝10bは、外側スライダー10の先端部側に向かって溝幅が徐々に狭くなるテーパー状に形成されている。
【0060】
したがって、内側スライダー9が前進した
図5〜
図7に示す状態においては、内側スライダー9の前端部付近に形成された一対の突起9aが、外側スライダー10のテーパー状に形成された案内溝10bの先端部に位置して、両者のクリアランスが少ない状態で位置決めがなされる。この時の内側スライダー9の後端部側は、外側スライダー10の内径が軸方向にほぼ等しく形成された部分に位置して、この時の両者のクリアランスが少ない位置に設定される。
【0061】
なお、
図7に示される内側スライダー9の胴部9bの後端外径をφA、前端外径をφBとし、φA>φBを満たす(例えばφA−φB=φ0.1〜1.0mm)寸法に形成すると、下向きでノックをすることでチャック5の押圧力だけでなく内側スライダー9およびパイプ11の自重による重力落下が可能になる。この自重による重力落下を利用することで、
図5〜
図7、および
図11に示されるように、チャック5の前進限より前方の内側スライダーの前進限まで内側スライダー9が移動することができ、先端パイプ11の突出長さを増やすことができ、後退限までノックすることなく、パイプの紙面の引きずり感を感じること無く書き続けることができる。
【0062】
一方、前記内側スライダー9と外側スライダー10とを二色成形により成形することで、先端パイプ11の遊び少なく構成することができる。
すなわち
図12は、内側スライダー9が一次側成形体として、また外側スライダー10が二次側成形体として、二色成形される例を示している。
【0063】
まず
図12(A)は、一次側成形体としての内側スライダー9を成形する状態を示しており、第1金型51,第1コアピン53,第2コアピン54により形成されるキャビティ内において、内側スライダー9が一次側成形体として成形される。
なお、前記第1金型51は図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号51aは第1金型51に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0064】
図12(B)は、一次側成形体としての内側スライダー9が、第1金型51から離型された状態を示しており、内側スライダー9は第1コアピン53に取り付けられた状態で第1金型51から離型される。
【0065】
そして、一次側成形体としての内側スライダー9は、
図12(C)に示す第2金型52内に収容され、この第2金型52と第1コアピン53,第2コアピン54により形成されるキャビティ内において、外側スライダー10が二次側成形体として成形される。
なお、第2金型52においても、図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号52aは第2金型52に形成された樹脂注入用のランナーを示している。
【0066】
この二次側成形体としての外側スライダー10は、
図12(C)に示すように、一次成形された内側スライダー9が外側スライダー10内で前進した状態で成形されることが望ましい。
これにより、内側スライダー9の前記した胴部9bが、外側スライダー10の内側に転写された状態で成形され、部品間の公差を考慮する必要なく成形後における両者間のクリアランスを限り無く小さくすることができる。また同様に内側スライダー9の前端部付近に形成された一対の突起9aと、外側スライダー10のテーパー状に形成された案内溝10bの先端部との間は、両者のクリアランスを限り無く小さくすることができ、またクリアランスを精度良く形成することができる。
【0067】
図12(D)は、一次側成形体としての内側スライダー9と、二次側成形体としての外側スライダー10が、第2金型52から離型された状態を示している。
この状態において、外側スライダー10に形成された開口10a側から、例えば前記した先端パイプ11を内側スライダー9に向かって圧入することで、同時に内側スライダー9を外側スライダー10内において、軸方向で分離することができる。
【0068】
前記した二色成形するにあたっては、一次側成形体と二次側成形体とに、同一の素材であるPOM(ポリアセタール)を利用することが望ましい。すなわち、POMを利用することにより二色成形後において、両者は貼り付くことなく分離が可能であり、しかも分離されたPOM同志は互いに潤滑性(滑り)が良好であるという特質を活かすことができる。したがって、前記外側スライダー10に対する内側スライダー9の軸方向の移動も抵抗なく円滑になし得ることができる。
【0069】
なお、以上説明した二色成形においてなされる一次側成形体と二次側成形体とは、必ずしも図に示した特定な成形順序によって得る必要はなく、一次側成形体と二次側成形体とは、前後を入れ替えて成形しても同様の作用効果をもたらすシャープペンシルを得ることができる。また前記した二種のみならず三種以上の多色成形にも適用可能であり、同様の作用効果をもたらすシャープペンシルを得ることができる。