(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷電粒子多重ビーム処理又は検査装置(100)用のパターン画定デバイス(7、7’)であって、該デバイスが、荷電粒子のビーム(lp)で照射されて、前記ビームを複数の開口から通過させて、対応する数のビームレットを形成するように構成された開口アレイフィールド(af)を備え、各ビームレットが、各ビームレット経路(p0)に沿って前記開口アレイフィールド(af)を通過して、前記パターン画定デバイスを通って、各ビームレットについての公称経路に対する前記パターン画定デバイスの下流に伝播し、
前記パターン画定デバイス(7、7’)が、前記開口アレイフィールド(af)に配置された偏向アレイデバイス(52)を含み、該偏向アレイデバイス(52)が、
ビームレットを前記偏向アレイデバイスから通過させる複数のブランキング開口部(520)と、
複数の偏向デバイス(521、501)とを備え、各偏向デバイスが、各ブランキング開口部(520)と対応していて、少なくとも一つの静電電極(522、523、502)を備え、前記偏向デバイスが、選択的に作動可能であり、対応するブランキング開口部を通過するビームレットを偏向させることが永続的にできずビームレット(b’)を“非偏向ビームレット”のままにする欠陥のある一つ以上の偏向デバイス(501)を除いて、作動時に、各ブランキング開口部を通過する前記ビームレットに影響を与えて、前記ビームレットを公称経路から逸脱させるのに十分なビームレット偏向角で前記ビームレットを偏向させるように構成され、
前記パターン画定デバイス(7、7’)が、前記開口アレイフィールド(af)に配置されたフィルタリングデバイス(53)を更に備え、該フィルタリングデバイス(53)が、
各偏向デバイス(521)に欠陥のない偏向アレイデバイス(52)のブランキング開口部(520)を通過するビームレットについて少なくとも、前記フィルタリングデバイスからビームレットを通過させる複数の通過開口部(70)であって、各ビームレットの経路が前記フィルタリングデバイスによって影響を受けない、複数の開口部(70)と、
各非偏向ビームレット(b’)に影響を与えない開状態(71)と、各非偏向ビームレット(b’)が各公称経路に沿って前記パターン画定デバイスの下流に伝播することを防止する妨害状態(74)という少なくとも一つの非偏向ビームレット(b’)に関する二つの永続的な状態をとるようにプログラム可能な少なくとも一つの妨害デバイス(71、74)とを備え、
前記フィルタリングデバイスが、前記偏向アレイデバイス(52)の複数のブランキング開口部(520)に対応する開口部(70)のアレイ及び複数の妨害デバイス(71、74)を備えたプレート状デバイスとして実現され、各妨害デバイスが、各開口部(70)に対応していて、少なくとも一つの静電電極(72、73、742、743)を備え、前記偏向デバイスが、最小期間にわたって、各開口部を通過するビームレットを公称経路から逸脱させて、各ビームレットが各公称経路に沿って前記パターン画定デバイスの下流に伝播することを防止することによって、前記妨害状態(74)を実現するように選択的に作動可能であり、前記フィルタリングデバイスの前記妨害デバイスが、前記偏向デバイスのビームレット偏向角に平行に方向付けられた偏向角で、ビームレットを偏向させるよう構成されている、パターン画定デバイス。
前記開口アレイフィールド(af)の開口部が、開口部の複数の行を備えたアレイで配置されて、各行が複数の開口部を備え、前記妨害デバイス(71)が、前記偏向アレイデバイス(52)の前記偏向デバイス(521)を作動させる典型的な期間に前記偏向アレイデバイスの一行の開口部における開口部の個数を掛けた積よりも長い最小期間にわたって、前記妨害状態(74)にスイッチング可能であるように構成されている、請求項1または2に記載のパターン画定デバイス。
前記偏向アレイデバイス(52)及び前記フィルタリングデバイス(53)がそれぞれ開口部(20、50、70)のアレイを備えたプレート状デバイスとして実現され、前記フィルタリングデバイス(53)が、前記偏向アレイデバイス(52)に対して実質的に平行で前記開口アレイフィールドに配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のパターン画定デバイス。
前記フィルタリングデバイスが、前記開口アレイフィールドに複数の開口(90、90’)を備えた開口アレイデバイス(91)であり、該開口(90)が、前記パターン画定デバイスで形成されるビームレットの形状を決めるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のパターン画定デバイス。
前記フィルタリングデバイスが、前記偏向アレイデバイス(82)の複数のブランキング開口部に対応する開口部(80)のアレイを備えたプレート状デバイス(83’)を備え、該プレート状デバイス(83’)が、前記ビームの方向に沿って見た際の前記パターン画定デバイス(8’)の最後の構成要素を表し、該開口部(80)を除いて、平滑な形状の下流側表面(86)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のパターン画定デバイス。
欠陥のある偏向デバイスの個数が、前記偏向アレイデバイスの偏向デバイスの総数よりも少なくとも一桁少ない、請求項1から7のいずれか一項に記載のパターン画定デバイス。
【背景技術】
【0004】
荷電粒子多重ビームリソグラフィ及び処理は、シリコンウェーハ基板上への多重ビームマスク描画、マスクなしの多重ビーム直接描画プロセス等のナノリソグラフィ及びナノパターニングの応用に対して非常に興味が持たれている。本発明に関して、“ターゲット”と“基板”との用語は特に意味を区別することなく用いられる。
【0005】
特に、電子多重ビーム描画は、193nm液浸リソグラフィに必要とされるような最先端のフォトマスク、超紫外線リソグラフィ(EUVL,extended ultra−violet lightography)用のEUVマスク、及び、ナノインプリントリソグラフィ用のテンプレート(1×マスク)、特にサブ20nmの半導体技術ノード(サブ10nm技術ノードへの拡張性を有する)用のものの将来的な工業的生産に対する有力なコンセプトである。多重ビームマスク描画機(multi−beam mask writer)について、本出願人は、eMET(electron Mask Exposure Tool)との造語を用いている。多重コラムPML2(Projection Mask‐Less Lithography)におけるシリコンウェーハに対する多重電子ビーム直接描画(EBDW,electron beam direct write)処理の構成については、本出願人の特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0006】
上述のタイプの多重ビームPDDを備えた荷電粒子多重ビーム装置が、関連する従来技術として本願に組み込まれる本出願人の特許文献3に開示されている。特許文献3には、PML2と称される荷電粒子リソグラフィ並びに処理方法及び装置が記載されており、本出願人の更なる文献では、eMET(electron multi−beam Mask Exposure Tool)が記載されており、これらは両方とも、多重ビーム描画のコンセプトを実現するものであり、荷電粒子(電子又はイオン)の単一の源から抽出された荷電粒子ビームを構造化するためのPDDを用いる。PDDは、好ましくは、所謂、開口プレートシステム(APS,aperture plate system)として実現されるプログラム可能多重開口デバイスである。プログラム可能APSに基づいた実施は、集束単一スポットビームシステム、並びに可変成形ビーム(VSB,variable shaped beam)システムと比較して、達成可能な生産性を顕著に改善することができる。生産性が改善される理由は、第一に、複数のビームを用いた処理の並列化であり、第二に、同じ分解能において基板に対してイメージング可能な(並列で描画を行う全てのビームレットの)電流の増大である。単一電子ビームシステムと比較して、電子多重ビーム描画装置のターゲットにおける電流密度(A/cm
2単位)は、VSBシステムと比較して略二桁小さく、高電流密度(>100A/cm
2)で単一ビームシステムを用いる場合に不可避である瞬間的な加熱効果を低減する。
【0007】
図1は、発明の背景として、PDD102を備えた荷電粒子多重ビーム装置100の概略図を示す。APS設計に従い、PDD102は、積層された構成において、少なくとも二枚のプレート201、202で構成される。これらプレートは異なる専用の機能を有し、具体的には、開口アレイプレート(201)(AAP,aperture array plate)と、偏向アレイプレート(202)(DAP,deflector array plate)とである。複数のビームレットがAAP201によって形成され、DAP202のより大きな開口部を通過する。DAP202において、一部のビームレットが、公称経路から偏向する一方で、他のビームレットは偏向せずに通過する。DAP202で偏向したビームレットは、荷電粒子投影光学系103の第二交差部2c又はその近傍に位置する停止プレート17によってフィルタリング除去される。DAP202で偏向されないビームレットは、交差部c2を通って続いていき、ターゲット14上にイメージングされて、ターゲット上に画素が曝露される。
図2は、この方法によってターゲット14上に曝露可能な画素p1の配置mfを示す。
【0008】
PDDのAPS設定における異なる種類のプレートが、開口及び偏向器の高集積密度を実現する。PDD内部において、二枚以上のプレートの正確な整列と、入射ビームの方向に向けた適切な調整とが必要とされる。この整列は、特許文献4に開示されているような構成を用いることによって、in‐situ(その場)で達成可能である。
【0009】
DAPは、ターゲット上に生成されるパターンに応じて、個々のビームレットの“スイッチオン”及び“スイッチオフ”を可能にするために開口に関連した電子回路を有する。特に、DAPには、選択されたビームレットを偏向(“スイッチオフ”)させるための複数の偏向デバイスで構成された偏向アレイが設けられる。各偏向デバイスは、DAPに形成された開口部に位置し、開口部を通過する個々のビームレットを公称経路から偏向させるのに十分な静電場を発生させることができる。上述のように、偏向されないビームレットは、ターゲット14上にイメージングされる。
【0010】
DAPは、以下の三つの主要プロセスステップによって製造される:1)CMOS回路の製造;2)開口を形成するためのエッチングプロセス;3)容量性ブランカを構築するためのMEMSプロセス。現状において、DAP用の製造プロセスは非常に信頼できるものであるが、それでも、指定通りに働かないビームレット偏向器が常に或る数で存在する。この製造プロセスの複雑性は、制御不能となる一部ブランカの機能化についての或る割合での故障率につながり得て、開状態のままの開口や、永遠に閉じたままの開口が生じる。典型的には、こうしたビームレット偏向器の欠陥の数は小さく、0.1%よりも小さい(つまり、一つのDAPが10万よりも多くのプログラム可能ビームに対して動作した場合に100回程度)。通常、ビームレット偏向器の欠陥はまとまったものではなく、つまり、開口フィールドに対して統計的に分布している。従って、一般的には、隣接するビームレット偏向器の欠陥は存在しないと予想することができ、つまり、こうした二つの欠陥の位置の間には、少なくとも一つ、通常はいくつかの動作しているビームレット偏向器が存在していると仮定される。
【0011】
ビームレット偏向器の欠陥は、“常時オフ”又は“常時オン”のいずれかの欠陥を生じさせる。ビームレットが、あらゆる時点において、また、特に、パターン情報にかかわらず、PDDを通過することが妨害されるか、又は、ターゲットに到達しないようにその経路から偏向される場合に、“常時オフ”の欠陥が存在する。“常時オフ”の欠陥は、開口アレイプレート及び/又はDAPにおける閉じた開口によるものであるか、又は、DAPの個々の開口部に関連した偏向デバイスの偏向電極における電圧(この電圧は、DAPの動作中にオフにすることができないものである)の存在によるものであり得る。従って、この“常時オフ”の欠陥の影響を受けるビームレットは、常にフィルタリング除去されて、ターゲット上にパターンを曝露するのに用いることができない。従って、基板にパターンを描画する間、“常時オフ”の欠陥は、正確な曝露に必要なビームレットを通過させない。
【0012】
偏向デバイスに欠陥がある場合、“常時オン”の欠陥(“常時開”とも称される)が発生し、例えば、その欠陥は、欠陥のある電極や、動作しない電極電圧源によるものであり、個々のビームレットが、全く偏向されずに、又はターゲットの前方で(例えば、停止プレート17において)完全にフィルタリング除去されるのに十分な量で偏向されずに、常に対応する開口を通過することができるようになる。
【0013】
本出願人の特許文献5に開示されるように、冗長描画を用いた曝露アルゴリズムにおいて“常時オフ”の欠陥の影響を補償することが可能であり、故障したデバイスの影響を受けるビームレットの位置を考慮して、同一の冗長性グループ内の一つ以上の他のビームレットに対して対応する曝露量をシフトさせる。これによって、そのビームレットの機能が、機能している偏向デバイスの一つ以上のビームレットによって置き換えられる。こうした“常時オフ”の欠陥とは対照的に、“常時オン”の欠陥は、煩わしいだけではなく、一般的に、対処することがより難しいか、不可能なものである。従って、PDDが“常時オン”のビーム欠陥を有さないことを保証することが望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下で説明される本発明の多様な実施形態は、大幅縮小投影システムを有するeMET型の荷電粒子多重ビーム曝露装置及びそのPDDシステムの開発に基づくものである。以下では、まず、装置の技術的背景について、本発明に関する限りにおいて説明し、次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態や、PDDシステムの特定のレイアウトに限定されるものではなく、それらは単に本発明について考えられる実施形態の例を表しているものであり、本発明は、荷電粒子ビーム及び多重ビームパターニングを用いる他のタイプの処理システムにも適していることを理解されたい。
【0032】
図1は、本発明を採用した電子多重ビームマスク曝露ツール100(マスク描画機)の概略図を示す。以下における詳細は、明確性のための本発明の開示に必要なものとして与えられ、構成要素は、
図1において縮尺通りに示されておらず、特に、粒子ビームの横方向の幅は誇張されている。eMETもPML2も原理は同様のものであり、詳細については、荷電粒子多重ビーム装置及びPDDシステムの全体的なレイアウトに関して教示している特許文献2及び特許文献7(参照として本願に含まれる)を参照されたい。eMETシステムは、電子ビームを発生させる適切な源を実現する。イオン多重ビームツール用にイオン源を用いる場合にも等価な原理が当てはまり、本出願人はそれも実現している(CHARPAN,Charged‐Particle Nano‐patterningの略)。
【0033】
装置100の主な構成要素は、
図1において垂直下向きのビームlb、pbの方向順に、照射システム101、PDDシステム102、投影システム103、ターゲット又は基板を備えたターゲットステーション104である。荷電粒子光学システム101、103は、静電レンズのみを用いるか(例えば、イオン多重ビームを用いる場合)、又は、静電レンズ及び磁気レンズの組み合わせ(例えば、電子多重ビームを用いる場合)のいずれかによって実現される。装置100の荷電粒子光学部分101、102、103は、装置の光軸に沿ったビームlb、pbの伝播が妨げられないことを保証するために、高真空に保持された真空筐体(図示せず)内に含まれる。
【0034】
照射システム101は、例えば、電子又はイオン源11、仮想源の位置を定める抽出器構造、ジェネラルブランカ(
図1に示さず、イオンビームを用いる場合には、イオン質量種フィルタとしても用いられる)、及び、荷電粒子光学集束レンズシステム13によって実現される照射荷電粒子光学系を備える。図示される実施形態では、粒子源11は、例えば5keV等の適切な運動エネルギーの電子を放出する。他の実施形態では、典型的には数keV(例えば、PDDシステム102において5keV)に定められた(運動)エネルギーを、例えばΔE=1eVの比較的小さなエネルギーの広がりで有する水素やAr
+イオン等の主に特定種のイオンといった他の荷電粒子が用いられ得る。速度/エネルギー依存フィルタ(図示せず)が、源11において生成され得る他の望ましくない粒子種をフィルタリング除去するために設けられ得る。フィルタは、ビームレットの再配置中においてビームを全体的にブランキングするためにも用いられ得る。光学集束レンズシステム13を用いて、源11から放出された荷電粒子が、ビームlbとして機能する広範囲の、実質的にテレセントリックビームに成形される。
【0035】
次に、ビームlbがブランキングデバイスに照射され、そのブランキングデバイスが、その位置を保つのに必要とされるデバイス(図示せず)と共に、
図1の左側に拡大斜視図としても示されているPDDシステム102を形成する。PDDシステムは、複数の開口20によって形成された開口アレイパターンに照射されるビームlbの経路内の特定の位置に保持される。上述のように、各開口を、“スイッチオン”又は“スイッチオフ”することができる。“スイッチオン”又は“開”状態では、開口は、各開口を通り抜けるビームレットがターゲットに到達するようにし、つまり、開口は入射ビームに対して透明であると称される。一方、開口が“スイッチオフ”又は“閉”の場合、各ビームレットのビーム経路が影響を受けて(例えば、横電圧が印加される偏向電極を用いて)、ビームレットが、ターゲットに到達する前に、吸収されるか又はそのビーム経路から外され、開口は、ビームに対して効果的に不透明である。
【0036】
各スイッチオフのビームレットは、例えば、荷電粒子投影光学系の第二交差部c2に又はその近傍に位置する停止プレート17で吸収される。スイッチオンの他のビームレットは、プレート17の中心開口部を通過して、ターゲット上に投影される。偏向したビームレットのフィルタリングは、DAPの近傍の更に下流においてPDDシステムに配置された第三プレート(“末端プレート”)でも行われ得る(特許文献3のFig.7に示されるように)。対照的に、
図1に示されるレイアウトでは、偏向したビームレットの停止プレート17でのフィルタリングは、DAPの末端プレートが必要とされないという利点を有し、ビームブランキングを達成するためにDAPによって与えられる偏向角を顕著に小さくすることができる。
【0037】
図1では、パターニングされたビームpbに五本のビームレットしか示されていないが、ビームレットの実際の数は非常に多く、つまり、典型的には数千本であることは明らかである。図示されているビームレットについて、左から一番目のものは、スイッチオフされているとして示されている(このビームレットを偏向させる活性電極の位置の下に矢印で表されている)。PDDシステム設計については、以下で
図3及び
図4を参照して更に詳細に説明する。
【0038】
スイッチオンの開口は、ビームlbに対して透明なPDDの一部のみであり、ビームlbが、開口から出て行くと(つまり、
図1において、PDDシステム102の下方において)パターニングされたビームpbに成形される。PDDシステム102によって画定されるパターンのおかげで、任意のビームパターンを発生させて、基板に転写することができる。ターゲット上に曝露されるパターンに応じて、一つの画素の曝露から次のものへと、ビームレットが“スイッチオン”又は“スイッチオフ”となる変化が存在する。従って、実際のパターンの詳細は、本発明に説明とは無関係であるが、パターンの適切な曝露のためには、パターンを非常に高速で変化させながら、顕著な数のビームレットをターゲットの照射過程においてスイッチオフにする必要があることを検討することが重要である。
【0039】
次に、荷電粒子光学投影システム103は、基板14(レジストコーティングを備えた6インチのマスクブランク等)に向かうパターニングされたビームpbで表されるように、パターンを投影する。スイッチオフされたビームレットが停止プレート17において吸収されるので、スイッチオンのビームレットのみが、スイッチオンの開口のイメージ(像)を形成する。投影システム103は、本出願人が実現しているように、例えば200:1の縮小を行う。基板14は、例えば、eMET型システムの場合、6インチのマスクブランク、ナノインプリントの1×マスク又はマスターテンプレートであり得て、電子感受性レジスト層で覆われる。一方、PML2システムでは、基板14は、荷電粒子感受性レジスト層で覆われたシリコンウェーハであり得る。基板14は、ターゲットステーション104の基板ステージ(図示せず)によって保持及び位置決めされる。
【0040】
投影システム103は、例えば、交差部c1及びc2有する二つの連続した荷電粒子光学投影部で構成される。荷電粒子イメージングシステムの技術的実現法は当該分野において周知であるので、投影機を実現するのに用いられる荷電粒子光学レンズ30、31(例えば、静電多重電極加速レンズ30及び二つの磁気レンズ31を備える)は、
図1において、記号的に示されているだけである。第一投影部30は、PDDシステムの開口平面を、中間イメージへとイメージングし、今度は、その中間イメージが、第二投影部31によって、基板表面上にイメージングされる。両投影部は、交差部c1、c2を介して縮小イメージングを用いるので、中間イメージは反転しているが、基板上に生成される最終的なイメージは反転していない。縮小率は、いずれの段階においても略14:1であり、全体的には200:1の縮小率になる。この程度の縮小率が、PDDシステムの小型化を向上させるために、リソグラフィ設定において特に適切である。
【0041】
イメージに対する小さな横方向(つまり、光軸cxに垂直な方向に沿った)シフトを導入するための手段として、偏向手段16が、投影部のいずれか一方又は両方に設けられる。こうした偏向手段は、例えば、特許文献3で説明されているような多極電極システムとして実現可能である。また、軸方向電流コイルを用いて、必要に応じて基板平面内でのパターンの回転を提供する軸方向磁場を発生させ得る。PDDを出て行く構造化ビームpbの幅を荷電粒子投影光学系の縮小率で割ったものである基板におけるビームアレイフィールドの横方向の幅と比較して、横方向の偏向は通常極めて小さい。従って、横方向偏向は、ビームアレイフィールドの幅よりも少なくとも一桁小さい(この点に関して、ビームレット間の横方向距離は、ビームアレイフィールドの上述の幅よりも顕著に小さいことを理解されたい)。
【0042】
図2を参照すると、装置100は、例えば、レジストで覆われたマスクブランク又はウェーハであるターゲット14上にイメージフィールドmfを形成する。イメージフィールドmfは、有限のサイズを有し、そのサイズは、通常、ターゲット上に曝露される全領域よりも十分に小さい。従って、走査ストライプ曝露法が用いられ、ターゲットを入射ビームの下で移動させて、ターゲットに対するビームの位置を連続的に変化させる。走査方向sdに沿ってターゲット表面を効果的にビームで走査する。図示される実施形態では、(大規模な)移動を行うのはターゲットであり、ビーム走査法には大規模な移動が必要とされない。本発明の目的については、ターゲットに対するイメージフィールドmfの相対的移動のみが関係があることを強調しておく。
【0043】
図2は、パターン画素pxの基本格子内の一次画素p1のグリッドの配置として考えられるものを一つ示す。イメージフィールドmfは、複数のパターン画素pxで構成される。しかしながら、画素pxのサブセットしか同時に曝露することができないことを理解されたい。何故ならば、有限の数の開口しか、PDシステムの開口アレイフィールドには存在しないからである。同時に曝露可能な画素は、一次画素p1とも称される。一次画素p1は、規則的な矩形グリッドで配置され、この場合、グリッドは、基本格子に3×3の間隔を有する正方形状のグリッド(“四角グリッド”)である。一次画素p1は、PDDシステムの開口20のイメージであり、PDDシステムのAAPの開口の空間的配置(
図3を参照)を、光学システムでの縮小によって異なる縮尺において再現する。連続的な画素曝露サイクルの流れにおいて、イメージフィールドmfが、経路a4に沿ってターゲットを掃引して(これは、ターゲットの移動、ビームの移動、又は両者の適切な組み合わせによって達成される)、ターゲット上の全ての画素pxを逐次的に曝露する。sdに沿った基本的な相対移動に加えて、例えば、偏向手段16(
図1)を用いて、横方向の移動も行われる。多数の画素が、経路a4に沿った異なる画素線において曝露された後に、その移動は、元々の画素線に戻る(これに、無効期間中に行われるような方向sdに沿った直線変位が加わる)。従って、横方向移動の大きさは小さいものとなり得て、その大きさは、ビームレットの相互間隔程度のものであることを理解されたい。他の開口配置は、スタッガード格子等の他の幾何学的形状を実現し得る。
【0045】
図3及び
図4は、上述のPDD200を示し、より詳細には、本出願人による特許文献3及び特許文献8に基本的には適合したものである。
図3は、規則的な開口アレイを備えたPDDの底面図を示し(照射ビームの方向と反対方向の図)、
図4は、
図3の線4に対応する平面に沿った縦断面図を示す。開口アレイは、特許文献3に示されるようなスタッガード開口アレイ等の他の配置でも実施され得る。
【0046】
PDDシステム200は、積層されて取り付けられる複数のプレート201、202を備え、各構成要素が特定の機能を果たす複合デバイスを実現する。各プレートは、好ましくは、シリコンマイクロシステム技術で実現され、その構造は、例えば、特許文献9及び特許文献10に概説されているようなマイクロ構造化法によって形成される。
【0047】
複数の開口が、通常はより小さな四角又は矩形状に切断されたシリコンウェーハの薄化領域によって形成された膜mbに配置されて、開口アレイフィールド(
図3において参照符号afで指称される)を形成する。膜mbは、周囲のフレームfs(
図4、フレームは
図3ではハッチングで示されている)によって安定化されている。各開口は、そのプレートに画定された一組の連続的な開口部に対応している。
図3及び
図4に見て取れる開口の数は、明確性のために少なく、膜mbに開口アレイフィールドを形成する多数の開口を代表するものである。
図4では、二つの開口のみが示されている。荷電粒子ビームlbは、開口アレイフィールドafの開口アレイを通って、プレートを通過する。
【0048】
AAP201は、広範囲粒子ビームで照射されるように設計されていて、複数の開口20を通してのみ荷電粒子を通過させることができる。従って、AAPは、入射した荷電粒子ビームlbの大部分を吸収するが、荷電粒子は、形状の画定された複数の開口20を通過することができ、複数のビームレットを形成し、そのうち二つのビームレットb1、b2が図示されている。各ビームレットは、各ビームレット経路に沿って開口を通過する。ビームレットを形成する役割とは別に、AAP201は、後続のプレートを照射の損傷から保護する。局所的な帯電を防止するため、開口アレイプレートを、適切な層210(通常、酸化物を形成しない金属層(例えば、イリジウム))で被覆し得る。イオンビームを用いる場合、層210及びその形成方法は、特許文献11に概説されているように、照射粒子がシリコン結晶マトリクス内に組み込まれること(膜の応力の変化をもたらす)を防止するように適切に選択される。
【0049】
図3を参照すると、AAPは、規則的な矩形グリッドに沿って“直交”開口アレイフィールドaf内に配置された複数の開口apを備える。図示される実施形態では、開口アレイフィールドは、規則的なグリッドを実現していて、例えば、開口が3×3のグリッドにおいて間隔を空けて配置されて、開口と開口の間のオフセットは、グリッドのいずれかの方向に沿った公称開口幅w1の三倍である(従って、隣接する開口と開口の間の自由空間は2×w1である)。この開口配置は、
図2の一次画素の配置と一致している。つまり、開口アレイフィールドafは、各行が複数の開口を備える複数の行に配置された開口apの規則的なアレイを実現している。例えば、開口は、512×512アレイに配置され得て、つまり、512個の開口が512行存在している。
【0050】
偏向アレイプレート(DAP)202(装置100におけるその機能の観点からブランキングプレートとも称される)が、AAP201に近接して、好ましくはAAPの下流に設けられる。DAP202は、選択されたビームレットを偏向させて、そのビーム経路を変更するように機能する。DAPは、複数の所謂ブランキング開口部を有し、その各々が、開口アレイプレート201の各開口に対応している。上述のように、また
図4に示されるように、DAPのブランキング開口部は、開口アレイプレートの開口部よりも大きい。DAP開口部と開口部の間の領域は、ビームレット偏向デバイスの制御及び電力供給を行うCMOS電子機器(
図4及び
図5においてクロスハッチングで示される)を収容するのに用いられる。従って、AAPで成形されたビームレットは、DAPを自由に(つまり、幾何学的な障害なく)通過することができる。本出願人の以前の文献で説明されているように、DAPにおいて、ビームレットをその公称経路から逸脱させるのに十分な量で、ビームレットを選択的に偏向させることができ、偏向したビームレットがターゲットに到達することができないようになる。
【0051】
DAPの各ブランキング開口部に、ビームレット偏向デバイスを設けて、開口部を通過する荷電粒子を個別に偏向させることができ、開口部を通過するビームレットをその経路から逸脱させる。各ビームレット偏向デバイスは、一組(通常は一対)のビームレット偏向電極を含む。好ましくは、各組は、異なるタイプの電極を有し、第一のタイプは、“接地電極”であり、PDデバイスの電位で適用され、一方で、他のタイプは、本願において“活性電極”と称され、対応するブランキング開口部を通過するビームレットを偏向させるために個別の電位で適用される。接地電極は、隣接するビームレット偏向デバイス間で共有され得る。接地電極は、活性電極の高さに対して実質的な高さを有するように形成され得る。これは、クロストーキングや他の望ましくない効果(偏向電極の幾何学的形状によって引き起こされるレンズ効果等)に対してブランキング偏向デバイスを十分に防御するために行われる。
【0052】
図4に示されるDAPでは、各ビームレット偏向デバイスはそれぞれ活性電極221、221’と、接地電極220、220’とを備える。電極は、例えば、DAPベース膜に対して自立している。こうした電極は、例えば、電気メッキ法などの先進技術を用いた垂直成長によって形成され得る。
【0053】
例えば、ビームレットb1は、偏向せずに、パターン画定システム102の後続のより大きな開口部を通過する。何故ならば、各組のビームレット偏向電極によって形成されるビームレット偏向デバイスが稼働しておらず、つまり、活性電極221とそれに関連する接地電極220との間に電圧が印加されていないからである。これは、開口の“スイッチオン”状態に対応する。ビームレットb1は、影響を受けずにパターン画定システム102を通過し、交差部を介して粒子光学システムによって集束されて、荷電粒子投影光学系によって誘起される縮小を伴って、ターゲット上にイメージングされる。例えば、本出願人によるシステムでは、200:1もの大きさの縮小率が実現されている。対照的に、ビームレットb2について示されているように、“スイッチオフ”の状態は、その開口のビームレット偏向デバイスを稼働させること、つまり、対応する接地電極に対して活性電極221’に電圧を印加することによって、実現される。この状態では、電極220’、221’によって形成されるビームレット偏向デバイスは、対応するビームレットb2の経路にわたる局所的な電場を発生させて、ビームレットb2をその公称経路p0から偏向方向へと偏向させる。結果として、ビームレットは、荷電粒子光学システムを通る過程において、変更された経路p1に従い、ターゲットに到達するのではなくて、PDDシステム又は荷電粒子光学システムに設けられた吸収手段(例えば、
図1の停止プレート17)で吸収される。このようにして、ビームレットb2がブランキングされる。ビーム偏向角は
図4において大幅に誇張されており、一般的には非常に小さく、典型的には0.2から1(千分の一ラジアン単位)である。
【0054】
図4に示される構成では、プレート201、202は、既知の結合法を用いて、フレームの結合領域212において互いに結合される。他の変形例では、プレートは、機械的に分離していて、例えば、本出願人の特許文献12に記載されているような調節可能保持装置によって適所に保持される。これには、開口アレイプレートがDAPの位置の変化によって影響されないという利点がある。他のプレートに対するDAPの僅かな位置変化は許容可能である。何故ならば、DAPは、個々のビームレットを偏向させる目的しか有さないからであり、一方、偏向されないビームレットはDAPを通過して基板にイメージングされる。
【0055】
PDDシステムは追加のプレート(図示せず、しかしながら
図9の変形例には見て取れる)、所謂フィールド境界アレイプレート(FAP,field−boundary array plate)を更に含み得て、電場に関して、PDD102と荷電粒子投影光学系103との間に画定される境界を与える。
【0057】
図5は、
図4と同様の断面図で、“常時オン”の欠陥を発生させる欠陥ビームレット偏向器を有するPDDシステム55の概略的な例を示す。実際には、多数(数千になり得る)ビームレットと、典型的なPDDシステムの偏向デバイスとに関して、いくつかの偏向デバイスに欠陥があり得ることを、その数は非常に少ないにもかかわらず、考慮しなければならない。開口アレイプレート51の開口50で画定された五本のビームレットが図示されていて、実際のPDD設定に存在する多数のビームレットを代表している。各ビームレットは、各開口部520を介してDAP52を通過し、各開口部520の箇所には、偏向デバイス521が設けられる。各偏向デバイス521は、少なくとも二つの電極を備え、例えば、少なくとも一つの活性電極522が、対向電極523に対して作動する。画定デバイスの対向電極は、共通“接地電位”に保持されて、これら対向電極は、別々のものであるか、又は互いに接続され得る。
【0058】
更に、
図5において、偏向デバイス521のうち一つに欠陥があり、具体的には、ビームレットbに関係したデバイス501に欠陥がある。このデバイス501は、“常時オン”の欠陥を有する欠陥偏向デバイス(DDD,defective deflection device)となり、例えば、活性電極502の電圧源が故障したことによるものである。従って、ビームレットbは、常にスイッチオン状態であり、その公称経路に沿って伝播する。何故ならば、このDDDの偏向制御ユニットに提供されるパターン情報にかかわらず、なんら偏向効果が得られないからである。一方、他のビームレット(機能している偏向デバイス521に関係している)は、
図5の底に二重の矢印で示されるように、スイッチオン状態とスイッチオフ状態との間でスイッチング可能である。
【0059】
こうした“常時オン”の欠陥は、in‐situビーム診断を用いて検出可能であり、又は、多重ビーム描画又は検査ツールに挿入する前のPDDユニットの特性評価によって、こうしたビーム欠陥の位置がわかっているものであり得る。特に、各DAPを専用の試験ベンチで試験して、偏向器欠陥を有する開口部を見つけることができる。この目的に適した試験ベンチは、非特許文献1に記載されている。この試験は、“常時オン”及び“常時オフ”の欠陥の位置のマップを与える。従って、各DAPについてDDDの数及び位置を求めることが可能になる。
【0061】
本発明に係る“常時オン”の欠陥を補正する第一の方法は、“常時オン”の欠陥を失くすためにin‐situデバイスとして用いられる補正プレートを使用するものである。好ましい一つの実施では、この補正プレートは、PDデバイスのプレート積層体に挿入される追加のプレート状デバイスである。
【0062】
図6Aは、本発明の第一実施形態に係るPDDシステム7を備えた多重ビーム装置を示す。
図6Bは、PDD7の拡大詳細図である。
図5のものに対応する開口アレイプレート51及びDAP52に加えて、PDD7は、補正プレートと称される追加のプレート状デバイス53を含み、本発明に係るフィルタリングデバイスの一実施形態を表している。補正プレート53は、選択されたビームレットに対して常に作用するように、つまり、こうした(常時オンの)ビームレットを偏向させるように構成され、これらのビームレットが、
図6Aのビームレットb’で示されるように、投影光学系において、例えば、停止プレート17又は他の吸収表面でフィルタリング除去されるようにする。一方、他のビームレットは補正プレート53の影響を受けない。
図6Aは、ビームレットに対する具体的な一つのスイッチング状態を示し、最も左側のビームレット(動作している偏向デバイスによって制御される)とビームレットb’(“スイッチオフ”)とが偏向している一方で、他のビームレットはスイッチオン状態で、ターゲットに到達する。
【0063】
補正プレート53は、DAPと外見上同様のプログラム可能デバイスであり、DAPから発した個々のビームレットを偏向又は通過させる性能を有する。DAPとは対照的に、その偏向の構成は、曝露処理全体の間において保持される。補正プレート53は、PDDシステム内に、例えば、DAP52の下流に短距離で配置される。補正プレート53は、通常、開口部520を備えたDAP52と同じ個数及び幾何学的位置の開口部70を備えて構成される。
【0064】
特に、補正プレート53には、複数の補正偏向デバイス71(CDD,correction deflection device)が設けられ、各CDD71は、それぞれ一つの開口部70の箇所に配置されて、作動時には、開口部70を通過するビームレットを偏向させることができる。例えば、各CDD71は、少なくとも二つの電極を備え、例えば、少なくとも一つの活性電極72が、対向電極73に対して作動する。CDDの対向電極73は、別々のものであるか、又は互いに接続され得る。対向電極73は、共通“接地電位”に保持され得て、又は、CDDを作動させた際に逆電位(例えば、活性電極72の電位と同じ値であるが逆符号のもの)で適用され得る。
【0065】
図6Bでは、DAP52のDDD501の補正は、CDD74に対応するビームレットb’を例として示されている。CDD74を、活性電極742に静電位を印加することによって作動させて、活性電極742が、対応する対向電極743と共に静電場を発生させる。従って、ビームレットb’がその公称経路から常に偏向する一方で、他のビームレット(機能している偏向デバイス521に関係している)を、上述の
図5Bの底部に二重矢印で示したように、スイッチオン状態とスイッチオフ状態との間でスイッチングさせることができる。
【0066】
図6Bに示される実施形態では、補正プレートはDAPの下流に配置される。しかしながら、
図6Cに示されるように、PDDシステム7’において、DAP52の上流に補正プレート53を配置することも同様に可能である。何故ならば、偏向角が非常に小さいので、補正プレートが偏向させたビームレットも問題なくDAPの開口部を通過するからである。
【0067】
DAP52と本発明の補正プレート53とには決定的な差があることに留意されたい。即ち、DAP52は、高速変化パターン情報に対処するために高速CMOS回路を含まなければならない一方、補正プレート53の回路は低速のものとなり得る。何故ならば、補正プレートの動作モードは、少なくとも、ターゲット14の曝露処理全体の期間にわたって一定のままだからである。ウェーハの曝露期間(ターゲット上の一行の画素の曝露期間の倍数(数桁倍))に対応する最小期間にわたって、補正プレート53の回路がプログラムされた状態を保持することができれば十分である。PDDの要素に関して、この期間は、DAP52の偏向デバイス521を作動させる期間に開口フィールドafの一行の開口における開口の個数をかけたものの倍数である。例えば、補正プレート回路の一実施形態は、単純な有線部品を含み得て、又は単純な(フリップフロップ)低速CMOS回路として実現され得る。後者の場合について、
図7A〜
図7Dを参照して、以下詳細に説明する。
【0068】
[プログラム可能補正プレートの論理回路の設計]
【0069】
図7A〜
図7Dを参照すると、補正プレート53のフリップフロップ回路RR(
図7D)の実施形態は、行で配置された複数のシフトレジスタを含む。各シフトレジスタは、各CDDの電極電源ユニットに接続された論理出力部を有し、この電源ユニットは、“ブランカ”と称される。曝露が行われる前に、これらのシフトレジスタの行に、どのビームレットを永続的に偏向させるのかを定めるパターンがロードされて、パターンの各ビットの論理状態が、関連するブランカの状態を決定する。パターンは、シフトレジスタにおいて保持されて、曝露中において変更なく保たれる。図示される例は、2
18=262144本のビームレットのアレイについての補正プレートに関係していて、それらのビームレットは、512×512のマトリクスに配置された対応する数の開口部を通る(
図3と同様の少数の開口部のみを示す)。
【0070】
図7Aは、各ブランカ76をプログラミングするための二つのレジスタ77、77’を示し、キューシーケンスS1を形成する64個のレジスタのうちの初めの二つを表している。
図7Bに見て取れるように、直列に接続された8つのキューシーケンスS1、S2、…S8は、512個のフリップフロップレジスタFF1からFF512を備えた行R01を形成する。
図7Cに示されるように、これらレジスタの64行R01、R02、…R64が直列に接続されて、グループG1(=32768個のフリップフロップ)を形成する。
図7Dは、合計262144個のレジスタを備えたシフトレジスタアレイRRを形成するように組み合わせられた8グループG1、G2、…G8を示す。
【0071】
PDデバイスを作動させる前に、ビットパターンが、補正プレートのシフトレジスタアレイRRにロードされて、新たなパターンがロードされるまで(又は電力が失われる)までは、そのままである。各シフトレジスタ77のビットは、二つの状態(低及び高)を有する。レジスタの低状態は、電圧を印加しないことによって、各偏向デバイスのブランカ76を“開”に設定し、ビームレットが偏向されずに通過するようにする。一方、高状態は、ブランカ76が電極に電圧を印加するようにして、各ビームレットの偏向を行う。アレイにロードされるビットパターンは、初期設定で、低ビットにされて、全てのビームレットを通過させる。DAPの欠陥があり永続的に開状態の偏向デバイスに対応するビットのみを高状態に設定する。
【0072】
図7Aは、補正プレート53のCDDをプログラムするための静電回路の二つの例を示す。各開口部(
図7に示さず)は、対応するCDD71及びブランカ76に関連している。各ブランカ76について、単一のシフトレジスタ77が設けられて、そのシフトレジスタ77は、一つのデータ入力部と、一つのデータ出力部と、一つのクロック入力部と(それぞれD、Q、CLKで表される)を備えたD型フリップフロップである。論理回路は、ブランカに電力供給を行うのにも用いられ得る3.3V電源を有する。CDD71の電極用の電圧源は図示されていない。64個のフリップフロップレジスタが、このようにしてキューシーケンスS1で接続される。キューシーケンスS1において、各レジスタ77のデータ出力部Qは、対応するブランカ76と、次のフリップフロップのデータ入力部Dに直接接続される。最後のフリップフロップの出力は、続くキューシーケンスS2に提供するためにキューS1から出て行く(
図7B)。
【0073】
図7Dに示されるように、複数個(2
18個)のレジスタ(この例ではプレート53に存在している)が、8グループに分けられて、各グループが32768個のレジスタを備える。各グループG1…G8は、その入力部として、一つのデータ入力ライン及びクロック入力ラインを有し、グループG1用のData1in、Clock1inから、グループG8用のData8in、Clock8inまで番号が付けられている。第一グループG1の入力Data1in、Clock1inが、
図7Aから
図7Cの入力ラインData、Clockに対応している。一つのグループのレジスタの個数は、補正プレートの一行の開口部の個数(512個)を超える。グループG1について
図7Cに示されるように、各グループは、64行R01、R02、…R64で幾何学的に配置される。従って、クロック入力ラインClock1inは、32768個のレジスタ(512個のフリップフロップが64行)を駆動させるのに用いられる。この数は、クロック信号を提供する外部デバイスのファンアウト(論理出力数)をはるかに超えているので、各行R01…R64は、多数のリピータA1、A2、…A8を備え、これは行R01について
図7Bに示されている。従って、各行に、八個のリピータA1…A8が設けられ、その各々が、64個のフリップフロップから成る各キューシーケンスS1…S8に対応している。
【0074】
真空条件下では、補正プレート53の温度は、放射冷却のみによって制御される。電源から取り出される電流を最少にして、パターンのローディング中におけるスイッチングプロセスからの発熱を低減するため、8グループG1…G8には、個別のデータData1in…Data8in及びクロック信号Clock1in…Clock8inを用いて、パターンデータが一つずつ逐次的にロードされる。クロックサイクル時間は、カスケードクロックリピータの伝播遅延が考慮されるように適切に選択される。何故ならば、最後のフリップフロップに到達するクロック信号は、リピータA1からA8で8回の伝播遅延を受けるからである。
【0075】
図7A〜
図7Dに示される回路アレイRRの行スタイルのレイアウトは、ウェーハダイベースのデバイスにおいて単純に実施することができる。何故ならば、これは、一行に512個のフリップフロップレジスタに基づくものであり、これがダイ上で複数回繰り返されて、一つのラインが一つの行の終わりから次の行の始まりに続くものだからである。
【0076】
[パッシブフィルタリングアレイプレート]
【0077】
本発明に係る第二の方法では、本発明に係るフィルタリングデバイスが、APSのパッシブプレートとして実現され、ここで、“パッシブ”との用語は、プレートが、ビームレットを偏向させる回路を含まないことを意味する。パッシブフィルタリングプレートでは、開口部/開口のアレイが設けられるが、“常時オン”の欠陥の位置に対応する箇所にある開口部が、失われているか、又は閉鎖されるように修正される。
【0078】
このように修正されたアレイを得るため、例えば、集束イオンビーム(FIB,focused ion beam)に基づいた修理システムを用いることが考えられ、ガス圧入で支持された堆積を用いて、“常時オン”の欠陥の箇所の開口部を閉鎖する。この手法では、FIBで誘起される堆積を用いると、表面上の堆積だけではなく、常に側方成長も存在するという事実を利用する。これを活用して、開口部に橋を架けて開口部を覆うことができ、開口部の一以上の縁においてFIB誘起堆積を開始して、開口部の全領域が堆積物質で覆われるまで、開口部の領域にわたってビームを移動させる。FIB誘起堆積の代わりに、レーザビーム又は電子ビーム誘起堆積法を用いることもできる。
【0079】
次に、
図8を参照すると、PDDシステム8に、パッシブ“フィルタリングアレイプレート”83が設けられる。フィルタリングアレイプレート83は、DAP82のものと同様であるが回路層を有さない開口部80の配置構成を有する膜プレートから形成される。選択された開口部85、つまり、DAP82においてDDDを有する開口部に対応するものを適切な物質で充填して、“不透明サイト”84を形成する。このプロセス中においては、他の全ての開口部80を開いたままにすることに注意する必要がある。充填物質は、開口部の上面及び/若しくは下面並びに/又は開口部内部に適用され得る。好ましくは、プレート83の開口部80の幅は、DAPの開口部の幅よりも大きく、開いたままの開口部85を通る各ビームレットの伝播が妨げられないことを保証する。
【0080】
そして、元々の開口アレイプレート81を保持したままで、フィルタリングアレイプレート83を、(部分的に欠陥のある)DAP82と組み合わせる。サイト84の物質は、各ビームレットb0を吸収するか又はその通過を妨げて、ビームレットがPDDシステム8を通過することを防止する。従って、ビームレットについての“常時オン”の欠陥を回避したPDD8が形成されて、妨害サイト84は、本発明に係る妨害デバイスとして機能する。
【0081】
図6B及び
図6Cと同様に、フィルタリングアレイプレート83は、DAPの下流又は上流に配置され得る。
【0082】
図9は、
図8の実施形態の一変形例を示し、PDDシステムは、(下流の)フィールド境界アレイプレート(FAP)を最終プレートとして含み、これは、フィルタリングアレイプレートが一つの構成要素に両方の機能を統合することによって適切に実現され得る。PDDシステム8’において、フィルタリングアレイプレート83’が、ビームレットの通過する開口部以外において、平滑で、好ましくは平坦な下流側表面86を有するように、そのフィルタリングアレイプレート83’の向きが決められる。この表面86を実現するために、プレート83’の向きを、
図8の同様のプレート83と比較して、適切に逆向きにする(“ひっくり返す”)。等電位面の良好な画定を保証するため、その表面86が、導電層を含み得る。その表面86は、その下流の向き、つまり、荷電粒子光学系103に向かっていることによって、電場に関してPDD102と投影光学系103との間に画定される境界を提供する。本発明に係るフィルタリングアレイプレートとしての機能について、プレート83’は開口部80のアレイを備え、DAP82においてDDDを有する開口部に対応して選択された開口部85に適切な物質が充填されて、不透明サイト84’を生じさせている。開口部85’における物質の位置は適切に選択され得て、好ましくは、プレート83’の下流側表面86が平坦な表面となるように物質が適用される。
【0083】
全ての実施形態において、PDDシステムの第一のプレートは、照射システム101に向けられた平坦な表面によって、上流のFAPとしても機能することができる点に留意されたい。この機能を強化するために、適切な導電カバー層(図示せず)を含むことができる。
【0084】
また、プログラム可能補正プレート(
図6B及び
図6C参照)も、下流又は上流のFAPとして機能するように構成され得る点に留意されたい。この場合、CDDは、プログラム可能補正プレートの内側表面に配置され(
図6B及び
図6Cに示されるレイアウトと反対側ではなくて)、その反対側の表面は、ビームレット用の開口部を除いて、均一で適切に平坦な表面(導電カバー層を含み得る)を表す。その均一/平坦な表面が外側に向けられるように、つまり、上流FAPの場合には照射ビームlbに向かう上流に向けられるように、下流FAPの場合には下流に向けられるように、そのプレートの向きが決められる。
【0085】
図10に示される他の変形例では、AAPが、本発明に係るフィルタリングデバイスとして動作するように修正される。この変形例では、開口部の完全なアレイを有するAAP(
図8のAAP81を参照)、又はそのコピーから始めて、DDDに対応する開口部90’を物質で充填して、照射ビームlbの粒子を吸収する又はその通過を妨げる“不透明サイト”94を形成することによって、“フィルタリング開口アレイプレート”91が形成される。このプロセス中においては、他の全ての開口部90を開いたままにすることに注意しなければならない。従って、吸収物質94が、第一プレートにおけるビームレットb9の形成を抑制することによって、関連する位置におけるPDDシステムからビームレットが通過することを抑制する妨害デバイスを形成する。このフィルタリング開口アレイプレート91は、元々のAAPの代わりに、DAP92と組み合わせられる。
【0086】
代わりに、プレートパターンを電子ビームで描画する先端製造プロセスを用いて、“常時オン”の欠陥の箇所における所定の開口が失われている開口アレイを備えたフィルタリング開口アレイプレートを形成することができる。このタイプの製造プロセスは分かりやすいものである。従って、この代替的な修正版の開口アレイプレートの形成も、非常に有効であると考えられる。