特許第6491849号(P6491849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491849
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/52 20060101AFI20190318BHJP
   H02K 3/18 20060101ALI20190318BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20190318BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H02K3/52 E
   H02K3/18 J
   H02K11/30
   H02K15/04 E
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-204257(P2014-204257)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-77036(P2016-77036A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】日本電産サーボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩畑 彰雄
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−178162(JP,A)
【文献】 特開2006−325364(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0299451(US,A1)
【文献】 特開平06−343236(JP,A)
【文献】 実開平02−017973(JP,U)
【文献】 実開平01−071951(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 3/18
H02K 11/30
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プレートと、
前記固定プレートの上面に取り付けられた回路基板と、
前記固定プレートの前記上面側に取り付けられ、導線が巻き付けられたステータ部と、
前記ステータ部に対して相対回転する回転部と、
前記回路基板の主面に設けられ、前記ステータ部から引き延ばされた前記導線を固定する導線固定部と、
前記回路基板の前記主面側において、前記導線の延びる方向を基準にして前記ステータ部から離れた側に、前記導線固定部に沿って設けられた逃げ部と、
前記逃げ部の上方に位置する前記導線の切断端部と、
前記逃げ部は、前記回路基板の前記主面から深さ方向に窪む穴を有することを特徴とするモータ。
【請求項2】
固定プレートと、
前記固定プレートの上面に取り付けられた回路基板と、
前記固定プレートの前記上面側に取り付けられ、導線が巻き付けられたステータ部と、
前記ステータ部に対して相対回転する回転部と、
前記回路基板の主面に設けられ、前記ステータ部から引き延ばされた前記導線を固定する導線固定部と、
前記回路基板の前記主面側において、前記導線の延びる方向を基準にして前記ステータ部から離れた側に、前記導線固定部に沿って設けられた逃げ部と、
前記逃げ部の上方に位置する前記導線の切断端部と、
前記逃げ部は、前記回路基板の周縁から前記導線固定部に沿って延びる切り欠きを有することを特徴とするモータ。
【請求項3】
前記回路基板の前記主面と反対側の背面が、前記固定プレートに密着して固定されている、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記回路基板が、前記主面のみに実装領域を有する片面実装タイプであり、前記導線固定部が前記ステータ部の下方に位置する、
請求項に記載のモータ。
【請求項5】
前記導線固定部が、前記回路基板の前記主面において前記ステータ部の周囲に複数設けられ、
前記回路基板の前記主面において、複数の前記導線固定部に沿って前記逃げ部が設けられている、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項6】
複数の前記導線固定部に沿って、複数の前記逃げ部がそれぞれ設けられている、
請求項に記載のモータ。
【請求項7】
前記逃げ部は、前記導線を引き延ばす方向と直交する方向において前記導線の径の3倍以上の大きさを有する、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項8】
前記逃げ部が、前記ステータ部と前記回路基板の主面上の配線パターンとの間に位置する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項9】
前記モータは、アウターロータ型のモータである、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項10】
前記導線固定部が、前記回路基板の前記主面に設けられたランドと、前記ランド上に設けられた半田部と、を有し、前記導線が前記半田部に埋設されている、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項11】
固定プレートと、
前記固定プレートの上面に取り付けられた回路基板と、
前記固定プレートの前記上面側に取り付けられ、導線が巻き付けられたステータ部と、
前記ステータ部に対して相対回転する回転部と、
前記回路基板の主面に設けられ、前記ステータ部から引き延ばされた前記導線を固定する導線固定部と、
前記回路基板の前記主面側において、前記導線の延びる方向を基準にして前記ステータ部から離れた側に、前記導線固定部に沿って設けられた逃げ部と、
前記逃げ部の上方に位置する前記導線の切断端部と、
前記逃げ部は、貫通孔を有し、
前記固定プレートの前記上面は、前記貫通孔から露出することを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
アウターロータ型のモータとしてステータ部から導線を引き延ばし、回路基板に半田付けして接続したものが知られている。例えば特許文献1には、導線を基板の裏側に取り回して、回路基板の裏側で半田付けを行う構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−166851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板として片面実装タイプを採用する場合には、回路基板のステータ部を取り付ける側の面で導線を半田付けする必要が生じる。この場合には、半田付けした導線の余った部分が、回路基板上の配線、又は周囲の部品等と接触する虞がある。そこで、導線を半田付けした後に、導線の余った部分を切断することが好ましい。
導線の切断作業は、基板を傷つけないよう細心の注意が必要とされ、多くの工数を要する。また、回路基板の上方には、モータのステータ部等の比較的大型の部品が配置されるため、導線の切断工程を自動化することも困難であった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、余分な導線を切断する際に、基板及び基板上のパターンを傷つけず、しかも導線の切断端部が、基板上の実装部品や、ロータ等の周囲の部品と接触しないモータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の例示的な一実施形態に係るモータは、固定プレートと、前記固定プレートの上面に取り付けられた回路基板と、前記固定プレートの前記上面側に取り付けられ、導線が巻き付けられたステータ部と、前記ステータ部に対して相対回転する回転部と、前記回路基板の主面に設けられ、前記ステータ部から引き延ばされた前記導線を固定する導線固定部と、前記回路基板の前記主面側において、前記導線の延びる方向を基準にして前記ステータ部から離れた側に、前記導線固定部に沿って設けられた逃げ部と、前記逃げ部の上方に位置する前記導線の切断端部と、前記逃げ部は前記回路基板の前記主面から深さ方向に窪む穴を有することを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る例示的な一実施形態によれば、切断工具の刃先を逃がすための逃げ部が、導線固定部に沿って設けている。したがって、切断工具の先端を逃げ部に退避させた状態で導線を切断することができ、導線の切断時に基板や基板上のパターンを傷つけることがない。また、導線の切断端部を導線固定部に沿う逃げ部の上方に位置させることとなり、切断端部が、基板上の実装部品や、ロータ等の周囲の部品と接触しないモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のモータの外観構成を表す斜視図である。
図2図2は、一実施形態のモータの断面図である。
図3図3は、一実施形態のモータの分解図である。
図4図4は、一実施形態のモータの斜視図であり、回転部、及び軸受を取り外した状態を示す。
図5図5は、一実施形態のモータに採用される回路基板の平面図である。
図6図6は、一実施形態の導線固定部と逃げ部とを含む回路基板の断面拡大図を示す。
図7図7は、一実施形態の導線切断工程の様子を示す工程図である。
図8図8は、図7に示す導線切断工程における切断工具の動作を示す図である。
図9図9は、図7に示す例とは異なる導線切断工程の様子を示す工程図である。
図10図10は、図7に示す例とは異なる導線切断工程の様子を示す工程図である。
図11図11は、一実施形態のモータに採用される回路基板の変形例1を示す図であり、導線固定部と逃げ部とを含む回路基板の断面拡大図を示す。
図12図12は、一実施形態のモータに採用される回路基板の変形例2を示す図であり、回路基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
また、各図にはX−Y−Z座標系を示した。以下の説明において、必要に応じて各座標系に基づき各方向の説明を行う。
【0010】
図1は、本実施形態のモータ100の外観構成を表す斜視図である。また、図2は、モータ100の断面図である。図3は、モータ100の分解図である。本実施形態のモータ100は、コイルを12極有するアウターロータ型のモータである。
本明細書の各部の説明において、図中の+Z方向を上方向、−Z方向を下方向と定める。しかしながらモータ100は、+Z方向を上方向とした状態での使用に限定されない。例えばモータ100の+Z方向を横向き又は下向きにした状態で使用しても良い。
【0011】
図1に示すように、モータ100は、固定プレート10と、固定プレート10の上面10aに取り付けられた回路基板20と、回路基板20の主面20a側に位置する駆動部1と、を有する。また、図2図3に示すように、駆動部1は、ステータ部40と、ステータ部40に対して相対回転する回転部60と、軸受ハウジング50と、軸受55と、軸受56と、を主に有する。回転部60は、主軸62とロータホルダ61とマグネット63と、を有する。
【0012】
<ステータ部>
図2図3に示すように、ステータ部40は、固定プレート10の上面10a側に取り付けられている。ステータ部40は、円環形状のコアバック45a及びコアバック45aから放射状に突出する磁歯45bを備えたステータコア45と、磁歯45bに巻きつけられた導線41と、を有する。
【0013】
磁歯45bは、コアバック45aより径方向の外側に放射状に12個突出している。磁歯45bには、絶縁材を介して、導線41が巻きつけられている。
円環形状のコアバック45aの内周面には、軸受ハウジング50が嵌め合わされている。コアバック45aには、ステータ部40を固定プレート10に固定するための固定ネジ44が挿入される3つの孔45cが設けられている。
【0014】
導線41は、12個の磁歯45bに巻きつけられて12個のコイルを構成し、ステータ部40からは3つの導線41が、延び出る。
3つの導線41は、回路基板20に接続され、流す電流の向き、並びにON、OFFが切り替えられる。導線41に流す電流を切り替えることで、モータ100は、各コイルと回転部60のマグネット63との間に引きあう力又は反発しあう力を生じさせ、回転部60を回転させる。
【0015】
<軸受ハウジング>
図2に示すように、軸受ハウジング50は、ステータ部40の円環状のコアバック45aの内側に配置されている。軸受ハウジング50は、円筒形状を有する円筒部51と、円筒部51の内周面に設けられた環状突出部52と、円筒部51の外周面に設けられた鍔部53と、を有する。
【0016】
環状突出部52は、円筒部51の内径を小さくするように内側に突出する。環状突出部52は、円筒部51の内周面において、上下方向の略中央に位置する。円筒部51の内周面において、環状突出部52の上方及び下方には、それぞれ軸受55と軸受56とが設けられている。
【0017】
鍔部53は、円筒部51の外径を大きくするように外側に突出する。鍔部53は、円筒部51の外周面において、下端に位置する。図3に示すように、鍔部53は、さらに外側に突出する3つの突出部53aを有している。3つの突出部53aは、円筒部51の中心軸に対しそれぞれ回転対称となっている。突出部53aには、孔53bが設けられている。軸受ハウジング50の突出部53aに設けられた3つの孔53bと、ステータ部40のコアバック45aに設けられた3つの孔45cには、それぞれ固定ネジ44が挿入される。固定ネジ44cは、固定プレート10に設けられたネジ穴10cにかみ合わされる。これにより、ステータ部40と軸受ハウジング50が、固定プレート10に固定される。
【0018】
図2に示すように、軸受ハウジング50の下面50bには、ネジ穴50cが設けられている。ネジ穴50cには、受け板15の孔15aを介し固定ネジ16がかみ合わされる。これにより、受け板15は、軸受ハウジング50の下面50bに固定される。
受け板15は、主軸62の下端との間に隙間を介して配置されている。受け板15は、主軸62に鉛直下方の外力が加わり、主軸62が下方に移動した場合に、主軸62を支持する。
【0019】
<軸受>
図2に示すように、軸受55及び軸受56は、内輪が主軸62に嵌合され、外輪が軸受ハウジング50に嵌合されている。軸受55及び軸受56は、主軸62を軸受ハウジング50に対し回転可能に支持する。
【0020】
<回転部>
図2図3に示すように、回転部60は、主軸62と、ロータホルダ61と、マグネット63とを有する。回転部60は、ステータ部40に対して相対回転する。
【0021】
主軸62は、ボールネジ(図示略)の一部を構成する雄ネジ部62cと、軸受55及び軸受56と嵌合される嵌合部62dと、を有している。雄ネジ部62cの軸径に対して、嵌合部62dの軸径は小さい。また、嵌合部62dは、主軸62の全長において下部領域に設けられている。
【0022】
雄ネジ部62cには、回転不能かつ上下方向の移動が可能であるナット(図示略)が取り付けられる。ナットと主軸62は、ボールネジを構成し、主軸62の回転に応じてナットが上下方向に移動する。
嵌合部62dにおいて、最も雄ネジ部62c側の領域には、ローレット加工面62bが設けられている。ローレット加工面62bには、ロータホルダ61が嵌合される。
【0023】
ロータホルダ61は、カップ形状を有し、中央に主軸62が連結された円板状の天板部61aと、天板部61aの外周を下方に延ばすように設けられた円筒部61bとを有する。
図2に示すように、ロータホルダ61の中央には、バーリング加工部61cが設けられている。バーリング加工部61cには、主軸62の嵌合部62dが挿入される。特にバーリング加工部61cの内周面には、嵌合部62dのローレット加工面62bが圧入される。これにより、ロータホルダ61と主軸62とが固定され連結される。
マグネット63は、円筒形状を有しておりロータホルダ61の円筒部61bの内周面に固定されている。マグネット63は、円筒部61bの内周面に沿って4局に交互に着磁されている。
【0024】
<固定プレート>
固定プレート10は、金属製の平板である。固定プレート10の上方の面である上面10aには、背面20bを上面10aに対向させた回路基板20が固定されている。固定プレート10の上面10aと回路基板20の背面20bとの固定は、例えばネジによりなされている。回路基板20は、固定プレート10の上面10a側に取り付けられている。
図3に示すように、固定プレート10の略中央には、受け板15を取り付けるための孔10dが設けられている。また、孔10dの周囲には、ステータ部40及び軸受ハウジング50を固定するためのネジ穴10cが設けられている。
【0025】
<回路基板>
図4は、モータ100の斜視図であり、回転部60、軸受55、56を取り外した状態を示す。図5は、回路基板20の平面図であり、ステータ部40を二点鎖線で示し、ステータ部40から引き延ばされた導線41を示す。
回路基板20は、上方の面である主面20aと主面20aの反対側であり下方の面である背面20bとを有している。回路基板20は、主面20aを上方に向けて、固定プレート10の上面10aに取り付けられている。回路基板20は、主面20aのみに実装領域を有する片面実装タイプである。回路基板20の背面20bは、固定プレート10に密着して固定されている。
【0026】
回路基板20の略中央には、孔20cが設けられている。孔20cからは、固定プレート10の孔10d及びネジ穴10cが露出している。孔20cは、軸受ハウジング50の下面50dと平面視形状が略一致しており、孔20cには、軸受ハウジング50が配置される。
回路基板20の主面20aには、ステータ部40の導線41に電流を供給するための3本の給電配線29が設けられている。回路基板20の主面20aにおいて、回転部60のマグネット63の直下には、磁極検出用のホールIC27(図2参照)が実装されている。さらに回路基板20には、コネクタ28が装着され、コネクタ28に接続される外部装置がモータ100に電源及び制御信号を与える。
【0027】
図5に示すように、回路基板20の主面20aには、ステータ部40から引き延ばされた導線41を固定する導線固定部21が設けられている。導線固定部21は、引き延ばされた3本の導線41に対応して、回路基板20の主面20a上に3つ設けられている。3つの導線固定部21は、主面20a上において互いに隣り合って配置されている。また、それぞれの導線固定部21は、回路基板20上の給電配線29と主面20a上で接続されている。
【0028】
回路基板20には、主面20a側において導線固定部21に沿って逃げ部25が設けられている。逃げ部25は、3つの導線固定部21にそれぞれ対応して3つ設けられている。
【0029】
図6に導線固定部21と逃げ部25を含む回路基板20の断面拡大図を示す。なお、図6は、特徴部分を強調する目的で部分的に拡大した模式図である。
図6に示すように、導線固定部21は、ランド21aと、ランド21a上に設けられた半田部21bとを、有する。導線41は、半田部21bによってランド21a上に固定されるとともに、導線41とランド21aとの電気的な接続を確保する。
【0030】
逃げ部25は、貫通孔22と隙間部23とを有している。貫通孔22は、回路基板20の主面20aから背面20bに達する。貫通孔22からは、固定プレート10の上面10aが露出している。貫通孔22は、ステータ部40の径方向に沿って導線固定部21と並んで設けられている。また、貫通孔22は、ステータ部40の中心軸(即ちモータ100の回転軸)に対し導線固定部21の外側に位置する。隙間部23は、貫通孔22と導線固定部21との間に設けられた隙間の領域である。
【0031】
本実施形態において、導線41は、ステータ部40の中心軸側から外側に向かって引き延ばされる。したがって、引き延ばされた導線41は、ステータ部40側から導線固定部21、逃げ部25を順に通過する。
【0032】
逃げ部25は、導線固定部21の周囲において、導線41を引き延ばす方向を基準にしてステータ部40から離れた側に設けられることが好ましい。本実施形態において、導線41は、ステータ部40の中心軸側から外側に向かって引き延ばされているため、逃げ部25は、導線固定部21の外側に設けられることが好ましい。これにより、導線41の切断端部41aを逃げ部25の上方に配置することができる。
また、例えば、導線41が、ステータ部40の外周円の接線方向に引き延ばされていても良い。この場合には、逃げ部25及び導線固定部21は、ステータ部40の外周円の接線方向に沿って並んで配置されることが好ましい。また、逃げ部25は、導線固定部21より導線41の端末側に位置するように配置されることが好ましい。これにより、導線41の切断端部41aを逃げ部25の上方に配置することができる。
【0033】
導線41の切断端部41aは、逃げ部25の上方に位置している。本実施形態においては、特に、切断端部41aは、逃げ部25の貫通孔22の上方に位置している。逃げ部25は、導線固定部21に沿って設けられているために、導線41の半田部21bから飛び出す切断後の余剰部41bの長さを短くすることができる。
【0034】
逃げ部25の幅W(貫通孔22の幅)は、導線41の径D(図7参照)の3倍以上とすることが好ましい。なお、逃げ部25の幅とは、導線41を引き延ばす方向と直交する方向における逃げ部25の長さを意味する。作業者は、切断工具70の刃先71aを逃げ部25に退避させた状態で導線41の切断を行う。逃げ部25を導線41の径Dの3倍以上とすることで、切断工具70の一対の刃部71により導線41を挟み込んだ状態で、切断工具70の刃先71aを逃げ部25に退避させることができる。
【0035】
図5に示すように、逃げ部25は、ステータ部40と回路基板20の主面20a上の配線パターン26との間に位置する。換言すると、回路基板20は、主面20a上において、逃げ部25の外側に配線パターン26を有する。これにより、回路基板20の主面20a上のスペースを配線パターン26として有効に使用することができる。
【0036】
導線41を導線固定部21に固定する手順の一例を説明する。
まず、図3に示すように、固定ネジ44を用いて、回路基板20が固定された固定プレート10にステータ部40を取り付ける。
さらに、図4に示すように、ステータ部40から3本の導線41を引き延ばし、ランド21aと逃げ部25(貫通孔22及び隙間部23)の上を通過するように配置する。
【0037】
次にランド21aに導線41を半田付けする。これにより、導線41が半田部21bに埋設されて、導線41を固定するとともに、導線41とランド21aの電気的な接続を確保できる。即ち、ランド21aと半田部21bは、導線固定部21を構成して、導線41を固定する。これにより、図7に示すように、導線41の余剰部41bが、半田部21bから貫通孔22側に延びた状態となる。導線41は、貫通孔22の上方を通過するように配置されている。
【0038】
次に、半田部21bから延び出す導線41の余剰部41bを切断する手順の一例を説明する。
導線41の切断には、切断工具70を用いる。切断工具70は、一対の刃部71を有している。切断工具70は、刃部71の間に導線41を挟み込んで切断することができる。
まず、半田部21bから延び出す導線41の余剰部41bを把持する。さらに、ニッパ等の切断工具70の刃先71aを貫通孔22の下側開口から露出する固定プレート10の上面10aに接触させた状態で、導線41を一対の刃部71で挟み込み、導線41の切断を行う。導線41の切断端部41aは、逃げ部25の上方、より具体的には、貫通孔22の直上に位置することになる。
【0039】
上述したように、本実施形態における切断工程は、切断工具70の刃先71aを平坦な面である固定プレート10の上面10aに接触させた状態で行う。導線41を切断する際の切断工具70の導線41の様子を、図8に示す。
図8において、刃先71aを接触した状態で、一対の刃部71により導線41を挟み込んだ状態を、第1の状態とする。さらに、刃部71を閉じて、導線41を切断した瞬間の状態を第2の状態とする。切断工具70の刃部71を開閉すると刃先71aは、円の軌跡を描く。したがって、刃先71aを平坦な面に接触させた状態で、第1の状態から第2の状態へと一対の刃部71を閉じると、41は、高さhだけ上方に持ち上げられる。これにより、導線41がランド21aから浮き上がろうとする力が加わる。
【0040】
本実施形態において、逃げ部25は、導線固定部21と隣接し、導線固定部21と貫通孔22との間に位置する隙間部23を有している。隙間部23は、導線41の引き延ばされた方向に沿って距離Lのだけ設けられている。隙間部23の距離Lは、導線41の径Dの3倍以上とすることが好ましい。距離Lを導線41の径Dの3倍以上とすることで、切断後の導線41の余剰部41bの長さを導線41の径Dの3倍以上とすることができる。したがって、切断工程において導線41が持ち上げられる高さhに対して、半田部21bに生じる応力を十分に小さくすることができ、半田部21b及びランド21aの損傷を抑制できる。
【0041】
次に、切断工程のその他の2例について、図9図10を基に説明する。
図9に示す例では、切断工具70の刃部71の側面71bを貫通孔22のエッジ部22aに接触させた状態で、導線41の切断を行う。したがって、切断工具70は、導線固定部21側に傾いて導線41の切断を行う。導線41の切断端部41aは、逃げ部25の上方であって隙間部23の直上に位置することになる。
【0042】
図10に示す例では、切断工具70の刃部71の先端である刃先71aを貫通孔22の側壁22bに接触させた状態で、導線41の切断を行う。この場合には、導線41の切断端部41aは、貫通孔22の直上に位置した状態となる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態のモータ100には、逃げ部25が、導線固定部21に沿って設けられている。逃げ部25は、切断工具70の刃先71aを逃がすための貫通孔22を有している。したがって、作業者は、刃先71aを逃げ部25に退避させた状態で導線41を切断することができる。これにより、刃先71aが接触することで、導線41の切断時に回路基板20上のパターンを傷つけることがない。
【0044】
さらに、作業者は、切断工具70の刃部71を貫通孔22から露出する固定プレート10の上面10a、貫通孔22のエッジ部22a、若しくは貫通孔22の側壁22bに接触した状態で導線41を切断できる。したがって、作業者は、切断工具70の刃部71を安定させた状態で切断工程を行うことができる。
【0045】
加えて、本実施形態のモータ100は、導線41の切断端部41aを逃げ部25の上方に位置している。逃げ部25は、導線固定部21に沿って配置されているため切断後の余剰部41bは十分に短い。したがって、切断端部41aが、基板上の実装部品や、ロータ等の周辺部品と接触しないモータ100を得ることができる。
【0046】
上述したような、導線41を固定する導線固定部21に沿って逃げ部25を設ける構造は、本実施形態として示したようなアウターロータ型のモータに好適に採用される。アウターロータ型のモータ100では、ステータ部40の径方向外側でマグネット63を備えたロータホルダ61が回転する。ロータホルダ61の円筒部61bは、回路基板20の上方に僅かな隙間を介して配置されている。したがって、導線41とロータホルダ61との接触を回避するためには、ロータホルダ61の円筒部61bの下方を導線41が通過しないことが好ましい。即ち、ステータ部40から引き延ばされる導線41を短くし、ロータホルダ61の円筒部61bより内側で回路基板20に固定され余剰部41bの端末処理がなされることが好ましい。このことを鑑みると、導線固定部21は、ステータ部40の下方に位置することが望まれる。
本実施形態のモータ100によれば、逃げ部25を設けて切断工具70の刃先71aを回路基板20の厚さ方向に退避させて切断工程が行われる。したがって、作業者は、切断工具70をステータ部40に接触させることなく余剰部41bの切断処理を行うことができる。
また、切断工具70を近づけるために逃げ部25は、平面視でステータ部40の外周より外側に配置されていることが好ましい。
【0047】
本実施形態において、逃げ部25の貫通孔22は、3つの導線固定部21に対応するように3つ設けられている。しかしながら、隣り合う逃げ部25の貫通孔22同士は、繋がっていても良い。例えば、回路基板20は、3つの導線固定部21の外側に沿って延びる1つの貫通孔を有していても良い。この場合には、3つの逃げ部25は、1つの貫通孔を共有することとなる。
【0048】
なお、本実施形態のモータ100において、逃げ部25は、貫通孔22と隙間部23とを有しているが、隙間部23を有していなくても良い。この場合には、導線固定部21のランド21aと貫通孔22が、隣接する。逃げ部25が隙間部23を有さない場合には、貫通孔22のエッジ部22aまで半田部21bが達した状態となる。したがって、逃げ部25が隙間部23を有さない場合には、切断工具70の刃部71の側面71bを貫通孔22のエッジ部22aに接触させて導線41の切断を行うことが困難となる。逃げ部25が隙間部23を有さない場合には、切断工具70の刃先71aを貫通孔22の側壁22b、又は貫通孔22から露出する固定プレート10の上面10aに接触させて切断工程を行うことが好ましい。
【0049】
本実施形態において、逃げ部25は、回路基板20の主面20aから背面20bに達する貫通孔22を有する。貫通孔22は、回路基板20にエンドミルなどの加工工具を用いて、容易に加工できるという点で、好ましい形態である。しかしながら、逃げ部25は、貫通孔22に代えて、所定の深さの穴を有していても良い。また、回路基板20の周縁から延びる切り欠きを有していても良い。このような形態について、変形例1、変形例2として、以下に説明を行う。
【0050】
<変形例1>
上述したモータ100に採用可能な、変形例の回路基板120について図11を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図11は、回路基板120の断面図であって、上述した実施形態における図6に対応する。
【0051】
回路基板120の主面120aには、引き延ばされた導線41を固定する導線固定部121が設けられている。導線固定部121は、ランド121aと、ランド121a上に設けられた半田部121bとを、有する。
また、回路基板120には、主面120a側において導線固定部121に沿って逃げ部125が設けられている。逃げ部125は、穴122と隙間部123とを有している。
【0052】
穴122は、回路基板120の主面120aから深さ方向(即ち、背面120bに向かう方向)に窪む穴である。穴122は、底面122cと底面122cから上方に立ち上がる側壁122bを有している。隙間部123は、穴122と導線固定部121との間に設けられた隙間の領域である。
【0053】
本実施形態において、導線41は、ステータ部40の中心軸側から外側に向かって引き延ばされる。したがって、ステータ部40の中心軸からみて導線固定部121の外側に逃げ部125を設けることで、引き延ばされた導線41が、ステータ部40側から導線固定部121、逃げ部125を順に通過する。逃げ部125は、導線41が引き延ばされる方向に対し導線固定部121のより導線41の端末側に位置していれば良い。
【0054】
導線41の切断端部41aは、逃げ部125の上方に位置している。本実施形態においては、特に、切断端部41aは、逃げ部125の上方に位置している。
導線41の切断工程は、上述した切断工程と同様の手順で行うことができる。
まず、ランド121aに導線41を半田付けして導線41を半田部121bに埋設させる。これにより、ランド121aと半田部121bは、導線固定部121を構成して、導線41を固定する。次に、導線41を一対の刃部71で挟み込み、導線41の切断を行う。切断する際には、切断工具70の刃先71aは、穴122の底面122c、又は穴122の側壁122bに接触させることが好ましい。また、切断工具70の側面71bを穴122のエッジ部122aに接触させた状態で切断工程を行っても良い。
なお、第1実施形態と同様に、逃げ部125は隙間部123を有していなくても良い。
【0055】
<変形例2>
上述したモータ100に採用可能な、変形例の回路基板220について図12を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図12は、回路基板220の平面図であり、上述した実施形態における図5に対応する。
【0056】
回路基板220の主面220aには、引き延ばされた導線41を固定する1つの導線固定部221A及び2つの導線固定部221Bが設けられている。導線固定部221Aは、図12において、ステータ部40の中心軸に対し+Y側に配置されている。一方、2つの導線固定部221Bは、ステータ部40の中心軸に対し−Y側に配置されている。2つの導線固定部221B同士は互いに隣り合って配置されている。また、それぞれの導線固定部221A及び導線固定部221Bは、回路基板220上の給電配線229と主面220a上で接続されている。
導線固定部221A及び導線固定部221Bは、ランド221aと、ランド221a上に設けられた半田部221bとを、有する。
【0057】
回路基板220には、主面220a側において導線固定部221Aに沿って配置された逃げ部225A、並びに2つの導線固定部221Bにそれぞれ沿って配置された2つの逃げ部225Bが設けられている。逃げ部225Aは、切り欠き222Aを有しており、逃げ部225Bは、切り欠き222Bを有している。
【0058】
切り欠き222Aは、回路基板220の+Y側の周縁から導線固定部221Aに沿って延びている。一方、切り欠き222Bは、回路基板220の−Y側の周縁から導線固定部2つの221Bに沿って延びている。切り欠き222Bは、2つの導線固定部221Bを跨ぎ2つの導線固定部221Bに沿って配置されるのに十分な幅を有している。
【0059】
切り欠き222A及び切り欠き222Bからは、固定プレート10の上面10aが露出する。切り欠き222A及び切り欠き222Bは、ステータ部40の中心軸(即ちモータ100の回転軸)に対し、導線固定部221A又は導線固定部221Bの外側に位置する。
切断工具70を近づけるために切り欠き222A及び切り欠き222Bは、回路基板220は、周縁から、平面視でステータ部40の外周より若干外側まで延びていることが好ましい。
導線41の切断端部41aは、逃げ部225A又は逃げ部225Bの上方に位置している。
なお、変形例の回路基板220は、逃げ部225A及び逃げ部225Bに隙間部を有していない。しかしながら、回路基板220は、切り欠き222Aと導線固定部221Aとの間、並びに切欠222Bと導線固定部221Bとの間に、隙間部が設けられていても良い。
【0060】
上述した実施形態のモータ100は、回路基板20に代えて変形例1の回路基板120又は変形例2の回路基板220を採用した場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0061】
以上に、本発明の実施形態とその変形例を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0062】
例えば、上述の実施形態において導線固定部は、ランドと半田部とからなるものであるが、これに限るものではない。例えば、導線をネジなどで挟み込んで固定するものであっても良い。
【0063】
また、例えば、上述の実施形態において切断工程は作業者が切断工具を用いて行うものとして説明した。しかしながら、自動化された切断装置を用いて切断工程を行っても良い。
【符号の説明】
【0064】
1…駆動部、
10…固定プレート、
20、120、220…回路基板、
20a、120a、220a…主面、
20b、120b…背面、
21、121、221A、221B…導線固定部、
21a、121a、221a…ランド、
21b、121b、221b…半田部、
22…貫通孔、
22a、122a…エッジ部、
22b、122b…側壁、
23、123…隙間部、
25、125、225A、225B…逃げ部、
26…配線パターン、
40…ステータ部、
41…導線、
41a…切断端部、
41b…余剰部、
45…ステータコア、
45a…コアバック、
45b…磁歯、
50…軸受ハウジング、
55…軸受、
56…軸受、
60…回転部、
61…ロータホルダ、
62…主軸、
63…マグネット、
70…切断工具、
71…刃部、
71a…刃先、
71b…側面、
100…モータ、
122…穴、
122c…底面、
222A、222B…切り欠き、
D…径、
L…距離、
W…幅、
h…高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12