特許第6491856号(P6491856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTファシリティーズの特許一覧

<>
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000002
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000003
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000004
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000005
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000006
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000007
  • 特許6491856-制動装置と免震装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491856
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】制動装置と免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20190318BHJP
   F16C 29/04 20060101ALI20190318BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20190318BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   F16F15/04 E
   F16C29/04
   E04H9/02 331D
   F16F15/02 L
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-233700(P2014-233700)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-98846(P2016-98846A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 義文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹夫
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−074097(JP,A)
【文献】 特開2010−249169(JP,A)
【文献】 実開昭50−034683(JP,U)
【文献】 特開平11−293954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16F 7/00− 7/14
F16C 29/04
E04H 9/00− 9/16
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に設けた押圧部材と、
前記支持体の可動方向に沿って設けた静止体と、
前記静止体に複数配列されていて前記押圧部材に当接して前記支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え
前記突起部は所定間隔で配列された減衰領域を有し且つ前記突起部の所定間隔を異ならせた複数の前記減衰領域の配列を有していることを特徴とする制動装置。
【請求項2】
構造物に設けた支持体と、
前記支持体に設けた押圧部材と、
前記支持体の移動方向に沿って配設されている静止体と、
前記静止体に複数配列されていて前記押圧部材に当接して前記支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え
前記突起部は所定間隔で配列された減衰領域を有し且つ前記突起部の所定間隔を異ならせた複数の前記減衰領域の配列を有していることを特徴とする免震装置。
【請求項3】
構造物に設けた支持体と、
前記支持体に設けた押圧部材と、
前記支持体の移動方向に沿って配設されている静止体と、
前記静止体に複数配列されていて前記押圧部材に当接して前記支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え、
前記静止体は、支持体の基準位置付近に支持体の移動を減衰させるための突起部が所定間隔で配列された一次減衰領域と、前記一次減衰領域の突起部よりも長い間隔で突起部が配列された二次減衰領域と、一次減衰領域の突起部よりも短い間隔で突起部が配列された三次減衰領域とを、前記基準位置から離間する方向に順次備えていることを特徴とする免震装置。
【請求項4】
構造物に設けた支持体と、
前記支持体に設けた押圧部材と、
前記支持体の移動方向に沿って配設されている静止体と、
前記静止体に複数配列されていて前記押圧部材に当接して前記支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え、
前記突起部は前記支持体の基準位置から離間するに従って間隔が次第に小さくなるよう所定間隔で配列していることを特徴とする免震装置。
【請求項5】
前記支持体には振動後に基準位置に復帰させるための弾性部材が設置されている請求項2から4のいずれか1項に記載された免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の際に建物等の支持体が移動しても制動または免震を行える制動装置と免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震に対する構造安全性や居住性の向上を実現する技術として免震構造技術が存在する。免震構造とは、上部構造物とそれを支える下部構造物の間に、免震装置や減衰装置を配置し、地震の揺れを直接上部構造物に伝えないようにした構造システムである。その形態は、建物全体を免震化した免震建物や、居室の一部、あるいは機器等を対象とした免震床や免震台などが存在する。地震による激しい振動が発生しても、上部構造物はゆったりと揺れ、単純に固定された場合に比べて、上部構造物の加速度応答が低減される。このことにより、構造の安全性や居住性の向上を図ることができる。
【0003】
このような免震構造システムを実現するために、免震装置や減衰装置の水平方向の剛性は比較的小さくする必要がある。そのため、それらが存在する免震層には大きな変形が発生する。場合によっては、変形が想定よりも過大になり、許容変形量を超過して衝突する可能性も考えられ、このような場合には大きな衝撃を受ける。このような変形をなるべく小さくするために免震構造物には減衰機構が導入されている。
【0004】
一般的に、減衰機構を多く導入するほど免震層の変形量を小さくできるが、上部構造物の加速度応答が大きくなる。逆に、減衰機構を少なめに導入すると上部構造物の加速度応答を小さくできるが、今度は免震層の変形量が大きくなる。通常、免震構造物の設計の際には、加速度応答低減効果と変形量抑制効果の両者を見て、バランスの良い設計が行われるが、これらの効果の両立には限界があった。
【0005】
例えば特許文献1に記載された免震装置では、地盤に設置した基台と構造物に連結した被免震物とにX−Y方向に配設した円弧状の凹曲面をなす下部レール及び上部レールと下部レール及び上部レールにそれぞれ当接するローラーとを免震層として設けている。即ち、基台には下部レールと上部レールに当接するローラーとが設置され、被免震物には下向きの上部レールと下部レールに当接するローラーとが設置されている。
そして、地震時には構造物と基台との間に設けた上下部レールと各ローラーとで相対的に摺動して振動することで免震性能を発揮する。しかも、地震終了後には上下部レールが凹曲面状に湾曲形成されていることで被免震物が上下部レールの中央位置に復帰するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3187226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された免震装置では、上下部レールがそれぞれ凹曲面状に形成されているために振動終了後に各凹曲面の中央位置に各ローラーが復帰するが、振動時の減衰特性はレール全域においてほぼ一定となっている。また、免震装置の許容変形量は、免震装置自体のしくみや免震装置を設置する場所の条件により決定され、必要なだけ大きな変形量を確保するということはできない。そのため、加速度応答低減効果を高める場合は減衰特性が小さく設定されるため、免震装置が設置される場所に許容される地震動の大きさは、衝突をさせないという免震装置の変形量に支配される。一方、変形量抑制効果を高めることは減衰特性を大きくすることにより可能であり、より大きな地震動に対しても免震装置の変形量を許容変形量以下とすることができるが、減衰特性が大きいため、大きな地震動のみでなく小さな地震動の場合でも上部構造物に大きな加速度を発生させてしまうという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構造物等を支持する支持体の加速度応答低減効果と変形量抑制効果をバランスさせると共に、支持体の振動等を効率よく低減できるようにした制動装置と免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による制動装置は、支持体と、支持体に設けた押圧部材と、支持体の可動方向に沿って設けた静止体と、静止体に複数配列されていて押圧部材に当接して支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え、前記突起部は所定間隔で配列された減衰領域を有し且つ前記突起部の所定間隔を異ならせた複数の前記減衰領域の配列を有していることを特徴とする。
本発明によれば、支持体が静止体に沿って移動した際に、支持体に設けた押圧部材が静止体に設けた突起部に衝突して変形することでその摩擦力によって支持体を制動することができる。
【0010】
本発明による免震装置は、構造物に設けた支持体と、支持体に設けた押圧部材と、支持体の移動方向に沿って配設されている静止体と、静止体に複数配列されていて押圧部材が衝突して支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え、前記突起部は所定間隔で配列された減衰領域を有し且つ前記突起部の所定間隔を異ならせた複数の前記減衰領域の配列を有していることを特徴とする。
本発明によれば、支持体が静止体に沿って移動した際に、支持体に設けた押圧部材が静止体に設けた複数の突起部に順次衝突して変形することでその摩擦力によって支持体を制動することができる。
【0011】
また、本発明による免震装置は、構造物に設けた支持体と、前記支持体に設けた押圧部材と、前記支持体の移動方向に沿って配設されている静止体と、前記静止体に複数配列されていて前記押圧部材に当接して前記支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え、静止体は、支持体の基準位置付近に支持体の移動を減衰させるための突起部が所定間隔で配列された一次減衰領域と、前記一次減衰領域の突起部よりも長い間隔で突起部が配列された二次減衰領域と、一次減衰領域の突起部よりも短い間隔で突起部が配列された三次減衰領域とを、前記基準位置から離間する方向に順次備えていることを特徴とする。
免震建物における強風時及び免震床や免震台における機器設置時では、支持体が振動しようとすると一次減衰領域において押圧部材と突起部が衝突し、摩擦力により支持体の振動を拘束し静止状態を保つ。
比較的小さい地震では、支持体の振動によって押圧部材が一次減衰領域の範囲、または一次減衰領域を超えて二次減衰領域に至るまでの範囲で振動する。支持体が振動している間は、押圧部材が一次減衰領域の所定間隔で配列された複数の突起部、そして二次減衰領域の比較的長い間隔で配列された突起部に順次衝突して突起部を弾性変形させ、その摩擦力で制動効果を発揮する。その際、二次減衰領域における突起部の間隔は比較的大きいので断続的または連続的に押圧部材が突起部に衝突して振動を停止させるため、加速度応答低減効果を十分発揮できる。しかも支持体の変形量抑制効果も発揮できる。
一方、比較的大きい地震では、支持体の振動によって押圧部材が二次減衰領域を超えて三次減衰領域に達し、支持体は一次減衰領域から三次減衰領域の範囲で振動する。三次減衰領域では、押圧部材が一次減衰領域より短い間隔で配列された複数の突起部に順次衝突して突起部を弾性変形させてその摩擦力で強く制動でき、その際、突起部の間隔は比較的短いので連続して押圧部材が突起部に衝突して振動を停止させるため、変形量抑制効果を十分発揮できる。そのため、加速度低減効果と変形量抑制効果をバランスさせることができる。
【0012】
なお、一次減衰領域及び二次減衰領域では、突起部の配列間隔は、押圧部材が断続的または連続的に突起部に衝突して振動を減衰させるように離間して配列することができる。
また、三次減衰領域では、突起部の配列間隔は、押圧部材が断続的または連続的に突起部に衝突して振動を減衰させるようにわずかに離間しまたは互いに密着して配列することができる。
【0013】
本発明による免震装置は、構造物に設けた支持体と、前記支持体に設けた押圧部材と、前記支持体の移動方向に沿って配設されている静止体と、前記静止体に複数配列されていて前記押圧部材に当接して前記支持体を制動する変形可能な複数の突起部と、を備え、前記突起部は前記支持体の基準位置から離間するに従って間隔が次第に小さくなるよう所定間隔で配列していることを特徴とする
また、支持体はガイドレールに沿って移動可能としてもよい。
地震等の際に支持体がガイドレールに沿って振動するために、ガイド部材や壁面等の静止体に突起部を配列させることが容易である。
【0014】
また、支持体には振動後に基準位置に復帰させるための弾性部材が設置されていることが好ましく、地震等が発生しても、支持体の上部に設けた構造物を所定位置に保持できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による制動装置と免震装置によれば、支持体の地震等による振動や移動の際に押圧部材を突起部に衝突させて変形させ摩擦力によって制動または制震を効率よく発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による免震装置を示す要部平面図である。
図2図1に示す免震装置の要部側面図である。
図3図1に示す免震装置のガイドレールの長手方向から見た正面断面図である。
図4】免震装置が一次減衰領域から二次減衰領域にある状態を示す要部平面図である。
図5】免震装置が三次減衰領域にある状態を示す要部平面図である。
図6図5に示す免震装置の車輪と突起部との衝突状態を示す要部拡大図である。
図7】免震装置の変形例を示す図1と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による免震装置の減衰機構について図1から図6に基づいて説明する。
図1から図3は本発明の実施形態による免震装置1を示すものであり、建物等の構造物の耐震対策のために用いられる。
本実施形態による免震装置1を構築する下部構造物2には、例えば直線状のガイドレール3が設置され、ガイドレール3上には例えばブロック状の支持体4が設置されている。支持体4は例えば所定間隔で縦横方向に複数個設置され、その上部には構造物が設置されている。ガイドレール3は例えば縦方向または横方向に略平行に複数配設され、各ガイドレール3に沿って構造物を部分的に支える支持体4が所定間隔で複数本設置されているものとし、図1では1つの支持体4と1条のガイドレール3を示している。
【0018】
図2及び図3において、構造物を支える支持体4の下部には基部6が固定され、基部6の下面にはガイドレール3に嵌合されてガイドレール3の天面である摺動面3aと両側面3bに対向する凹部6aが形成されている。凹部6a内の底面には摺動可能な複数のベアリング7が軸受に回転可能に装着されている。なお、凹部6aの側面側やコーナー部にもベアリングが装着されていてもよい。複数のベアリング7は凹部6aの延在方向に所定間隔で設置され、ガイドレール3の摺動面3aに当接して支持体4を揺動可能としている。支持体4は常態において予め設定された基準位置Pに保持されて構造物を支持し、地震等の際にはガイドレール3に沿って揺動可能とされている。なお、基部6または支持体4の上部にはガイドレール3に直交する方向に別の基部6とガイドレール3が配列されている。これによって免振装置1は構造物を直交する2方向の振動に対応して揺動可能に支持している。
【0019】
また、基部6の両側面には上下の支持枠8が水平方向に連結され、上下の支持枠8間に固定された軸部9には円盤状の車輪10が回転可能に支持されている。車輪10は例えば剛性の高いスチール等の金属等またはゴム等の弾性体で形成されている。なお、図に示す例では、車輪10は支持体4の基部6の両側面に2基ずつ設置されている。
【0020】
また、図1及び図3において、ガイドレール3の両側には間隔をあけて断面略L字状のガイド部材12がガイドレール3と平行に設置されており、その起立部12aにはガイドレール3に向けて例えばゴムやウレタン等の弾性部材、または高減衰性を有する高減衰ゴム等の粘弾性部材からなる複数の突起部13が配列されている。突起部13は略半球状または略凸曲面状であり、支持体4の基準位置Pの領域に設けた一次減衰領域P1では支持体の移動を拘束するように所定間隔h1を開けて複数の突起部13がガイドレール3に沿って配列されている。
そして、一次減衰領域P1に隣接する二次減衰領域P2では比較的長い所定間隔h2を開けて複数の突起部13がガイドレール3に沿って配列されている。更に、二次減衰領域P2から更にさらに離れた三次減衰領域P3では複数の突起部13がガイドレール3に沿って互いに密着した間隔h3で配列されている。ここで、一次減衰領域P1、二次減衰領域P2、三次減衰領域P3における突起部13の各間隔h1、h2、h3の大きさはh2>h1>h3に設定されている。
【0021】
本実施形態では、一次減衰領域P1における突起部13の間隔は任意に設定できるが、図に示す例では車輪10の外径より若干小さい程度に設定してある。そのため、支持体4が振動した際に断続的に車輪10が突起部13に衝突して変形させ、その摩擦力で制動効果を生じるため、いわゆるポンピングブレーキの機能を発揮できる。
なお、図1図4図5に示す免震装置1において、支持体4の基準位置Pの一方側にのみ突起部13の一次減衰領域P1と二次減衰領域P2と三次減衰領域P3を配設した構成を示したが、他方側にも同一の構成が配設されているものとする。これによって、地震時等の振動に対応して支持体4の振動を効果的に減衰できる。
【0022】
そして、支持体4の基部6に設けた車輪10はガイド部材12の起立部12aに近接して非接触位置にあり、支持体4がガイドレール3に沿って振動した場合には両側で各車輪10が突起部13を押圧して弾性変形させることで支持体4に制動や制震効果を発揮させることができる。
しかも、一次減衰領域P1と二次減衰領域P2では、各突起部13が所定間隔h1、h2に設置されているために制震効果は比較的小さいが、支持体4と構造物の加速度応答を小さくできる。
【0023】
また、三次減衰領域P3では各突起部13が密着して連続設置されているために各突起部13に順次衝突して変形させることで制震効果、即ち、支持体4の変形量抑制効果が大きい。これらの車輪10と複数の突起部13による一次減衰領域P1、二次減衰領域P2及び三次減衰領域P3とは減衰機構を構成する。
また、免震装置1では支持体4を基準位置Pに戻すように付勢する弾性部材として、ばね15がガイドレール3の両側に設置され、各ばね15はその一端が支持体4に連結され、他端は下部構造物2に連結されている。
【0024】
本実施形態による免震装置1は上述の構成を備えており、次に免震装置1による免震方法について図1図4から図6を中心に説明する。
地震の発生しない状態では、構造物を支える各支持体4はその周囲の突起部13の一次減衰領域P1部分の基準位置Pで安定した状態に保持される。そして、地震発生時には振動によってガイドレール3に対して支持体4が相対的に移動し、図4に示すように両側のガイド部材12に設けた突起部13の二次減衰領域P2に至る。
一次減衰領域P1から二次減衰領域P2に移動すると、支持体4の両側の車輪10がそれぞれ一次減衰領域P1と二次減衰領域P2における所定間隔を開けた複数の突起部13に順次衝突し、突起部13を弾性変形させる際の摩擦力によって振動力を徐々に減衰させながら乗り越えて、後続の突起部13に衝突して停止する。なお、各突起部13は弾性材料で構成されているために車輪10が通過すると元の形状に復帰する。
【0025】
ここで、地震の規模が比較的小さい場合には、図4に示すように、一次減衰領域P1と二次減衰領域P2における複数の突起部13に車輪10が順次衝突して変形させて摩擦によって振動を低減させ、ポンピングブレーキ状に振動を減衰させて支持体4に設けた構造物の加速度応答を低減できる。そのため、地震によって発生する加速度に対して支持体4の上の構造物に作用する加速度を大幅に低減できる。そして、支持体4の車輪10が次々に一次減衰領域P1と二次減衰領域P2の突起部13に衝突して突起部13が順次変形して摩擦力で振動が減衰して停止する。
そして、地震によって、支持体4が逆方向に振動して同様に一次減衰領域P1と二次減衰領域P2の突起部13を順次変形させて摩擦力によって振動が減衰して停止する。こうして、ガイドレール3に沿った支持体4の往復振動を繰り返しながら、両側の一次減衰領域P1と二次減衰領域P2の複数の突起部13で振動を次第に減衰させる。そして支持体4はばね15の付勢力によって基準位置Pに戻り、静止する。
【0026】
また、地震の規模が比較的大きい場合には、支持体4は一次減衰領域P1と二次減衰領域P2の複数の突起部13を順次弾性変形させることで摩擦力によって振動を減衰させながらも、これらの突起部13を乗り越える。そして、二次減衰領域P2を超えて三次減衰領域P3の突起部13に衝突する。図5及び図6に示すように、三次減衰領域P3では、突起部13が密着して連続して設置されているため、支持体4の車輪10が突起部13に連続的に衝突して弾性変形させて強い摩擦力で振動を減衰させ、摩擦抵抗は一層大きくなる。このとき基準位置P側の支持体4の車輪10が三次減衰領域P3の突起部13に衝突すれば、一層の振動減衰力を発揮できる。
そのため、支持体4の車輪10が三次減衰領域P3中の適宜位置の突起部13に衝突すると、連続する大きな摩擦抵抗を受けて振動による支持体4の作動が阻止されて停止する。
【0027】
そして、地震の振動により,支持体4が逆方向に振動して、同様に一次減衰領域P1の突起部13を順次変形させて摩擦力で振動を減衰させながら乗り越える。次いで二次減衰領域P2の最も間隔の広い突起部13を経て、三次減衰領域P3の連続する複数の突起部13に順次衝突して、振動が減衰されて停止する。
こうして、ガイドレール3に沿った支持体4は往復振動を繰り返しながら両側の一次減衰領域P1と二次減衰領域P2と三次減衰領域P3における異なる間隔に配列された複数の突起部13によって振動を徐々に減衰させて往復振動を繰り返し、基準位置Pに戻る。
また、支持体4が基準位置Pに戻る前に振動力が消滅しても、支持体4はその両側に設けたばね15の付勢力によって基準位置Pに戻されて静止する。
【0028】
上述のように本実施形態による免震装置1によれば、地震等の際に支持体4がガイドレール3に沿って振動しても両側の車輪10を一次減衰領域P1と二次減衰領域P2、そして三次減衰領域P3における複数の突起部13に順次衝突させて弾性変形させることで、その摩擦力によって振動を効率よく低減させて減衰させることができる。
特に、本実施形態では、比較的小さい地震の際には、一次減衰領域P1と二次減衰領域P2において突起部13の配列間隔がh1からh2に広がるように配列させたことで、二次減衰領域P2では車輪10が複数の突起部13に間隔を開けて衝突して振動を断続的に低減させることで、加速度応答を十分低減させることができる。
【0029】
また、比較的大きな地震の際には、一次減衰領域P1と二次減衰領域P2の複数の突起部13によって振動を低減させつつ加速度応答を低減させ、更に三次減衰領域P3で密着して配列させた複数の突起部13に車輪10が連続して衝突することで突起部13の変形と摩擦力によって振動を減衰できるので、支持体4の振動による変形量を十分抑制できる。
そのため、支持体4の車輪10と一次減衰領域P1及び二次減衰領域P2及び三次減衰領域P3の突起部13とによって地震等による振動を効率的に減衰させることができると共に、支持体4の加速度応答低減効果と変形量抑制効果とをバランスさせて制震できる。
【0030】
なお、本発明は上述の実施形態による免震装置1に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
例えば、上述した実施形態では、支持体4の両側に一対の支持枠8間の軸部9に車輪10を取り付けて、車輪10が突起部13に衝突した際に回転しながら突起部13を弾性変形させることで支持体4の衝突時の抵抗を低減させたが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、図7に示すように支持体4の基部6に剛性の高い金属等の固定部材18を取り付け、突起部13に衝突させて変形を生じさせることで振動を減衰させてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、突起部13を所定間隔h1、h2で配列させた一次減衰領域P1、二次減衰領域P2と突起部13を密着して配列させた三次減衰領域P3とを配設したが、このような構成に代えて、突起部13が比較的離れた間隔の一次減衰領域P1と、突起部13が配列されない二次減衰領域P2と、突起部13が互いに密着した三次減衰領域P3とをガイド部材12の起立部12aに配列させてもよい。
また、上述した実施形態の二次減衰領域P2と三次減衰領域P3の間に、突起部13の配列間隔が一次減衰領域P1の間隔h1より大きく二次減衰領域P2の間隔h2より小さい中間減衰領域P4をガイド部材12の起立部12aに追加で配列させてもよい。
【0032】
或いは、突起部13を異なる所定間隔で配列させた複数段の減衰領域を4段以上に順次近接配列させた構成を採用してもよい。
更に、ガイド部材12に配列する突起部13について、一次減衰領域P1、二次減衰領域P2、そして三次減衰領域P3を配設した構成に代えて、ガイド部材12に突起部13を連続して所定間隔で配列し、基準位置から離間するに従って、突起部13の間隔を次第に小さく設置するようにしてもよい。この場合でも、支持体4の基準位置Pからの振動初期では車輪10が断続的に突起部13に衝突し、次第に衝突間隔が短くなるようにしてもよい。
【0033】
なお、上述した実施形態では、ガイドレール3が直動ガイドレールであるが、本発明は直線状のガイドレール3に限定されるものではなく、湾曲したカーブ状のガイドレール3を採用してもよい。この場合、ガイドレール3に沿って一対のガイド部材12も同様に湾曲形成して湾曲部に複数の突起部13を配列させることができる。
また、実施形態ではガイドレール3に沿って振動可能な支持体4の両側にガイド部材12を設けて突起部13を配列させたが、ガイド部材12や突起部13はガイドレール3の片側にだけ設けていてもよい。この場合でも振動の減衰を達成することができる。
【0034】
また、本実施形態では、免震装置1においてガイドレール3の両側または片側にガイド部材12を配設して減衰機構を設置したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、静止体としての既存の壁面において複数の突起部13を任意の位置に設置して支持体4の制震を行うようにしてもよく、突起部13は任意の支持体4の制震を制御するために適宜の位置や壁面に設置できる。そのため、支持体4の振動または移動方向と壁面とが同一間隔であれば、支持体4のガイドレール3を設置しなくてもよい。
【0035】
また、上述の実施形態に代えて、車輪10または固定部材18を弾性変形可能な部材で構成し、突起部13を高剛性部材で構成してもよい。
なお、上述した実施形態では地震の際の免震装置1の減衰機構について説明したが、本発明は免震装置1に限定されるものではなく、走行する支持体4の制動をガイドする制動装置に採用してもよい。
また、本発明において、支持体4の車輪10と固定部材18は押圧部材を構成する。また、ガイド部材12は静止体を構成する。
【符号の説明】
【0036】
1 免震装置
3 ガイドレール
4 支持体
6 基部
10 車輪
12 ガイド部材
13 突起部
15 ばね
18 固定部材
P 基準位置
P1 一次減衰領域
P2 二次減衰領域
P3 三次減衰領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7