(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の接合前スパッタリングターゲットの端同士を接触させて配置するか、又は複数の接合前スパッタリングターゲットの端部同士を重ねて配置することによって、接合前ターゲット群を形成する工程A1と、
前記接合前ターゲット群の表面のうち、スパッタ面となる面の全面に、固相攪拌用回転ツールを挿入し、摩擦攪拌を行なって、前記複数の接合前スパッタリングターゲットを相互に接合して、大型の接合ターゲットを形成するとともに、接合部分と接合部分以外の部分との間で、前記摩擦攪拌によって組織の均一化を図る工程B1と、
を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
前記工程Bの後に、更に、前記スパッタリングターゲットの材料の融点をTm(温度単位:K)としたとき0.5Tm以上0.95Tm以下の温度範囲で熱処理をする工程Cを有することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
前記工程B1の後に、更に、前記スパッタリングターゲットの材料の融点をTm(温度単位:K)としたとき0.5Tm以上0.95Tm以下の温度範囲で熱処理をする工程Cを有することを特徴とする請求項2に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
前記工程Aは、摩擦攪拌接合法、TIG溶接法、MIG溶接法、電子ビーム溶接法、レーザー溶接法又は摩擦圧接法によって、前記複数の接合前スパッタリングターゲットを接合する工程であることを特徴とする請求項1又は3に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
前記複数の接合前スパッタリングターゲットが、曲面板状、同一径筒状又は同一径円柱状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
前記工程B又は前記工程B1は、前記固相攪拌用回転ツールの回転方向と進行方向とが合致した側を、前記固相攪拌用回転ツールの回転方向と進行方向とが逆となる側で、重ねながら前記固相攪拌用回転ツールを動かし、少なくとも、前記固相攪拌用回転ツールの回転方向と進行方向とが合致した側をエロージョン領域の内側には残さずに摩擦攪拌を行なう工程であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0020】
図1は、大型の接合ターゲットが円筒型である場合の一例を示す斜視図である。
図3は、接合部の部分拡大断面図である。
図4は、工程Bの一例を説明するための部分拡大断面図である。
図5は、工程Bの一例を説明するための平面図である。本実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、
図1、
図3に示すように、複数の接合前スパッタリングターゲット101を相互に接合して、大型の接合ターゲット100を形成する工程Aと、
図4、
図5に示すように、接合ターゲットのスパッタ面100aの全面に、固相攪拌用回転ツール10を挿入し、摩擦攪拌を行なう工程Bと、を有する。
【0021】
(工程A)
まず、工程Aについて、接合ターゲットが円筒型である場合を例にとって
図1及び
図6を参照しながら説明する。接合前スパッタリングターゲット101は、例えば、
図6に示すような曲面板状であり、大型のスパッタリングターゲットの構成部品である。工程Aでは、例えば、
図6に示すように、曲面板状の接合前スパッタリングターゲット101を複数個用意して、
図1に示すように、それらを相互に接合して、円筒型の大型の接合ターゲット100を形成する。
図1において、符号102は接合部分を示す。工程Aでは、平板状の接合前スパッタリングターゲット(不図示)を複数枚用意して、それらを相互に接合した後、筒状に丸めて対向する端辺同士を接合し、
図1に示すような円筒型の大型の接合ターゲット100としてもよい。また、工程Aについて、接合ターゲットが円筒型である場合の別の例について
図2及び
図7を参照しながら説明する。工程Aでは、
図7に示すように、筒状で同一径の接合前スパッタリングターゲット201を複数個用意して、
図2に示すように、それらを相互に接合して、円筒型の大型の接合ターゲット200を形成してもよい。
図2において、符号202は接合部分を示す。接合前スパッタリングターゲット101,201の数は、形成しようとするスパッタリングターゲットの大きさに合わせて選択する事項であり、本発明では特に限定されない。
【0022】
次に、工程Aについて、接合ターゲットが円柱型である場合(不図示)について説明する。接合ターゲット100が円柱型(不図示)であるとき、工程Aでは、例えば、同一径の円柱状の接合前スパッタリングターゲット(不図示)を複数個用意して、円柱の主軸を合わせた状態とした上でそれらを相互に接合して、円柱型の接合ターゲット(不図示)を形成する。また、工程Aについて、接合ターゲットが角板型である場合について
図8(a)(b)を参照しながら説明する。接合ターゲットが角板型であるとき、工程Aでは、例えば、
図8(a)に示すように、平板状の接合前スパッタリングターゲット301を複数個用意して、
図8(b)に示すように、角板の各辺同士をつき合わせた状態とした上でそれらを相互に接合して、角板型の大型の接合ターゲット300を形成する。最後に、工程Aについて、接合ターゲットが円板型である場合(不図示)について説明する。接合ターゲットが円板型(不図示)であるとき、工程Aでは、例えば、
図8(a)(b)に示すように、平板状の接合前スパッタリングターゲット301を相互に接合して、角板型の大型の接合ターゲット300を形成した後、これを円板型に切り出して円板型の大型の接合ターゲット(不図示)を形成するか、又は接合後に円板となるように予め成形した平板状の接合前スパッタリングターゲット(不図示)を相互に接合して形成してもよい。接合後に円板となるように予め成形した平板状の接合前スパッタリングターゲット(不図示)を相互に接合して形成する形態は、例えば、扇形板状の接合前スパッタリングターゲット(不図示)を複数個用意して、半径箇所同士をつき合わせた状態とした上でそれらを相互に接合して円板型の大型の接合ターゲット(不図示)を形成する形態、又は接合前スパッタリングターゲットとして、円を、弦方向に分割したもの(不図示)を用意して、弦同士をつき合わせた状態とした上でそれらを相互に接合して円板型の大型の接合ターゲット(不図示)を形成する形態である。
【0023】
接合ターゲット100は、
図1又は
図2に示すような円筒型又は円柱型(不図示)であることが好ましい。スパッタ時のターゲットの使用効率をより向上させることができる。また、本実施形態に係る製造方法では、ターゲットが円筒型又は円柱型であっても、容易に、かつ、効率的に製造することができる。
【0024】
接合ターゲット100の組成は、例えば、Al,Cu,Ag,Au,Ir,Ru,Pt,Pd,Rh,又はこれらの金属を含む合金である。合金は、例えば、Ag−Pd−Cu合金、Ru−Co合金である。接合ターゲット100の形成方法は、例えば、溶解法、焼結法である。ターゲットの材質にも依るが、いずれの形成方法においても、組織をより均一にするために塑性加工することが好ましい。
【0025】
接合ターゲット100の外寸は、特に限定されないが、例えば、接合ターゲット100,200が円筒型(
図1又は
図2に図示)又は円柱型(不図示)であるとき、例えば、直径200mm以上、長さ3m以上である。また、接合ターゲット300が角板型(
図8(b)に図示)又は円板型(不図示)であるとき、例えば、平面部分の少なくとも1辺の長さが3m以上である。
【0026】
工程Aは、摩擦攪拌接合法、TIG溶接法、MIG溶接法、電子ビーム溶接法、レーザー溶接法又は摩擦圧接法によって、複数の接合前スパッタリングターゲット101を接合する工程であることが好ましい。接合をより効率的に行なうことができる。摩擦攪拌接合法では、ツールの挿入側とは反対側にキッシングボンドと呼ばれる未接合の欠陥が発生する場合がある。この問題を解決するために、ツールの形状、回転数又は押付け圧力などの各種摩擦攪拌接合の条件を最適化するか、又はTIG溶接法、MIG溶接法、電子ビーム溶接法若しくはレーザー溶接法などの溶融接合を組み合わせて接合してもよい。
【0027】
(工程B)
固相攪拌用回転ツール(以降、ツールということもある。)10は、
図4に示すように、例えば円柱状の胴体部11と、胴体部11の一端に設けられたショルダ部12と、ショルダ部12の一端に設けられたピン部13とを有する。ツール10は、例えば、Fe、Ni、Co、W、Ir及びそれらを基材とした合金の他、セラミック系の材料からなる。ツール10は、前記ツール形状及び材質は限定されない。
【0028】
ツール10は、胴体部11の一部に形成された取付部(不図示)で装置のモータ(不図示)に取付けられて、モータによって回転する。工程Bでは、回転するツール10を接合ターゲット100のスパッタ面100aに挿入する。このとき、ツール10では、ピン部13が接合ターゲット100内に埋没し、ショルダ部12が接合ターゲット100の表面に押し当てられる。ツール10が回転した状態のままピン部13がスパッタ面100aに挿入されると、摩擦によって接触部分のターゲット材料を急速に加熱して、その結果、ターゲット材料の機械的強度が低下する。ツール10は、ターゲット材料を攪拌しながら、その進行方向14に沿って移動する。ツール10が挿入された部分では、ピン部13及びショルダ部12が接合ターゲット100に当接しながら回転することで発生した摩擦熱が、ピン部13及びショルダ部12の周りの金属に高温の可塑性領域16を形成する。ツール10が通過後、可塑性領域16は冷却されて微細な組織が形成される。これらの現象はすべてターゲット材料の融点よりも低い温度で生じる。
【0029】
工程Bは、スパッタ面100aの全面を、摩擦攪拌する工程である。ツール10は、接合部分102(
図3に図示)を含む、スパッタ面100aの全面を通過する。その結果、接合前スパッタリングターゲット101同士が一体化される。さらに、接合部分102と接合部分102以外の部分との間で、攪拌によって組織を均一にすることができる。そして、より安定したスパッタを行なえるスパッタリングターゲットとすることができる。接合ターゲット300が角板型(
図8(b)に図示)又は円板型(不図示)であるとき、例えば、摩擦攪拌処理を行う装置(以降、処理装置という。)に接合ターゲット300を固定する方法として接合ターゲット300の外周面のみを抑える方法や、ツールが通過するときのみターゲット面の押さえを外す方法の他、真空チャック法などを採用することで、スパッタ面300a(
図8(b)に図示)の全面を処理することができる。真空チャック法は、装置のテーブルに複数の穴が形成され、真空ポンプによってターゲットとテーブルとの間の空気を脱気することで、接合ターゲット300をテーブルに密着させる方法である。また、接合ターゲット100,200が円筒型(
図1又は
図2に図示)であるとき、例えば、接合ターゲット100,200を処理装置に固定する方法としてスクロールチャックで円筒の内側から固定する方法や、バッキングチューブがついている場合にはバッキングチューブを固定する方法を採用することで、スパッタ面100a,200aの全面を処理することができる。接合ターゲットが円柱型(不図示)であるとき、例えば、接合ターゲットを処理装置に固定する方法として円柱の軸方向から挟み込む方法を採用することで、スパッタ面の全面を処理することができる。
図4では、ツール10をスパッタ面100a側から挿入する形態を示したが、接合ターゲット300が角板型(
図8(b)に図示)又は円板型(不図示)であるとき、ツール10をスパッタ面300aとは反対側の面から挿入してもよい。このうち、スパッタ面300a及びその近傍の組織をより均一にできる点で、ツール10は、スパッタ面300a側から挿入することがより好ましい。
【0030】
工程Bは、固相攪拌用回転ツール10の回転方向15と進行方向14とが合致した側(Advancing Side、以降、ASという。)5を、固相攪拌用回転ツール10の回転方向15と進行方向14とが逆となる側(Retreating Side、以降、RSという。)6で、重ねながら固相攪拌用回転ツール10を動かし、少なくとも、固相攪拌用回転ツール10のAS5に形成された組織をエロージョン領域の内側には残さずに摩擦攪拌を行なうことが好ましい。エロージョン領域とは、スパッタにて消耗する部分である。摩擦攪拌を行なった領域では、熱及び塑性流動の影響を受けて、TMAZと呼ばれる、摩擦攪拌前の材料に対して組織又は内部応力が大きく異なる部分が存在する。エロージョン領域にTMAZが存在すると、スパッタによって形成される膜厚が面内において不均一となる場合がある。TMAZは、AS5でより強く発生する。そこで、エロージョン領域の内側をRS6で摩擦攪拌された組織とすることで、TMAZの影響をより小さくすることができる。
【0031】
接合ターゲットが円筒型(
図1又は
図2に図示)又は円柱型(不図示)である場合のツール10を移動させる具体例について、
図5を参照して説明する。なお、ツールの回転方向は、
図4、
図5に示したツール10において、ツール10の中心軸を回転軸とし、胴体部11の一部に形成された取付部(不図示)側からショルダ部12が設けられている側に向かって見た場合の回転方向を示している。接合ターゲット100が円筒型又は円柱型であるとき、四角形ABDCは、円筒又は円柱の側面の展開図である。展開図において辺A−Bと辺C−Dとが一致するとき、まず、ツール10を反時計回りに回転させ、側面の周方向(辺A−Bから辺C−Dに向かう方向)に移動させ、辺C−D(辺A−B)に到達したら、ツール10を辺B−Dの方向にピン部13の先端の直径以下だけ移動させる。次いで、再び辺A−Bから辺C−Dに向かって移動させ、先行して行った摩擦攪拌処理領域のAS5を、RS6で摩擦攪拌する。さらに、この操作を繰り返す(以降、移動形態1という。)。展開図において辺A−Bと辺C−Dとが一致するとき、ツール10を、円筒又は円柱の周方向に螺旋状に移動させてもよい(以降、移動形態2という。)。また、展開図において辺A−Cと辺B−Dとが一致するとき、ツール10を時計回りに回転させ、円筒又は円柱の軸方向(辺A−Bから辺C−Dに向かう方向)に移動させ、辺C−Dに到達したら、ツール10を一旦引き抜き、次いで、ツール10を辺B−Dの方向にピン部13の先端の直径以下だけ移動させ、ツール10を再び辺A−Bから辺C−Dに向かって移動させる操作を繰り返してもよい(以降、移動形態3という。)。展開図において辺A−Cと辺B−Dとが一致するとき、ツール10を辺B−Dの方向にピン部13の先端の直径以下ずつ移動させながら辺A−Bと辺C−Dとの間を往復移動させる(不図示)(以降、移動形態4という。)か、又はツール10の中心軸の軌跡を渦巻き状に移動させてもよい(不図示)(以降、移動形態5という。)。移動形態4では、ツール10が辺A−Bから辺C−Dに向かって移動するときはツール10の回転方向を反時計回りとし、ツール10が辺C−Dから辺A−Bに向かって移動するときはツール10の回転方向を時計回りとすることが好ましい。エロージョン領域の内側に残る、AS5に形成されたTMAZが最小限となるように施工することができる。また、移動形態5では、渦巻きが四角形ABDCの略中心部から始まり周辺部に向かう場合は、ツール10の回転方向を時計回りとし、かつ、ツール10の進行方向も時計回りとするか、又は、ツール10の回転方向を反時計回りとし、かつ、ツール10の進行方向も反時計回りとすることが好ましい。また、渦巻きが四角形ABDCの周辺部から始まり略中心部に向かう場合は、ツール10の回転方向を時計回りとし、かつ、ツール10の進行方向を反時計回りとするか、又はツール10の回転方向を反時計回りとし、かつ、ツール10の進行方向を時計回りとすることが好ましい。エロージョン領域の内側に残る、AS5に形成されたTMAZが最小限となるように施工することができる。なお、これらの例はあくまでも例示であって、本発明はツール10を移動させる形態に限定されないが、移動形態1、移動形態2がより好ましい。移動形態1、移動形態2のように、ツール10を円筒又は円柱の周方向に移動させることで、エロージョン領域の内側に残る、AS5に形成されたTMAZが最小限となるように摩擦攪拌を行なうことができる。また、スパッタ面100aの全面にわたって摩擦攪拌を効率的に行なうことができる。
【0032】
接合ターゲットが角板型(
図8(b)に図示)である場合のツール10を移動させる具体例について、
図5を参照して説明する。接合ターゲットが角板型であるとき、四角形ABDCは、角板の平面部分である。まず、ツール10を反時計回りに回転させ、辺A−Bから辺C−Dに向かって移動させ、辺C−Dに到達したら、ツール10を一旦引き抜く。次いで、ツール10を辺B−Dの方向にピン部13の先端の直径以下だけ移動させ、ツール10を再び辺A−Bから辺C−Dに向かって移動させ、先行して行った摩擦攪拌のAS5を、RS6で摩擦攪拌する。さらに、この操作を繰り返す。また、ツール10を辺B−Dの方向にピン部13の先端の直径以下ずつ移動させながら辺A−Bと辺C−Dとの間を往復移動させる形態(不図示)、ツール10の中心軸の軌跡が渦巻きを描くように移動させる形態(不図示)であってもよい。また、接合ターゲットが円板型(不図示)である場合、ツール10は、接合ターゲットが角板型である場合のツール10の移動例において辺A−Bから辺C−Dに向かって移動させるところを変更して、円の弦方向に移動させる。そして、ツール10を一方通行で移動させるか、又は往復移動させてもよい。または、ツール10の中心軸の軌跡が渦巻きを描くように移動させてもよい。これらの移動例は、エロージョン領域の内側に残る、AS5に形成されるTMAZが最小限となるように摩擦攪拌を行なうことができる。また、スパッタ面100aの全面にわたって摩擦攪拌を効率的に行なうことができる。なお、これらの例はあくまでも例示であって、本発明はツール10を移動させる形態に限定されない。
【0033】
接合ターゲット100は、ツール10を挿入した部分(以降、摩擦攪拌開始部という。不図示)、ツール10を引き抜いた部分(以降、摩擦攪拌終了部という。不図示)及び端部(
図5では辺B−D)に残るTMAZ(以降、残留TMAZという。)を有さないことが好ましい。接合ターゲット100に、摩擦攪拌開始部、摩擦攪拌終了部及び残留TMAZを残さない方法は、例えば、摩擦攪拌開始部、摩擦攪拌終了部及び残留TMAZを、接合ターゲット100を支持する部材(不図示)に配置する方法、摩擦攪拌開始部、摩擦攪拌終了部及び残留TMAZを、接合ターゲット100の端部に配置し、当該端部を切除する方法、接合ターゲット100に継当て部(不図示)を設け、摩擦攪拌開始部、摩擦攪拌終了部及び残留TMAZを、継当て部に形成した後、継当て部を切除する方法である。接合ターゲット100を支持する部材又は継当て部は、接合ターゲット100と同じ材質の部材であることが好ましい。また、
図4、
図5ではツール10だけが移動する形態を示したが、ツール10に加えて、更に接合ターゲット100がツール10の進行方向とは反対方向に移動する形態(不図示)、又は接合ターゲット100だけが移動する形態(不図示)であってもよい。
【0034】
ここまで、製造方法が工程A及び工程Bを有する場合について説明してきたが、本実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、工程A及び工程Bに代えて、複数の接合前スパッタリングターゲットの端同士を接触させて配置するか、又は複数の接合前スパッタリングターゲットの端部同士を重ねて配置することによって、接合前ターゲット群を形成する工程A1と、前記接合前ターゲット群の表面のうち、スパッタ面となる面の全面に、固相攪拌用回転ツールを挿入し、摩擦攪拌を行なう工程B1と、を有していてもよい。
【0035】
(工程A1)
工程Aの別例として工程A1について説明する。工程Aと工程A1の違いとしては、工程Aでは、複数の接合前スパッタリングターゲットを接合する工程を必要とするが、工程A1では、複数の接合前スパッタリングターゲット101を接合せずに、複数の接合前スパッタリングターゲットの端同士を接触させるか、複数の接合前スパッタリングターゲットの端部同士を重ねることによって、接合前ターゲット群を形成する。工程A1では、接合前スパッタリングターゲット同士の接合を不要としているが、それは、この後の工程B1によって複数の接合前ターゲットが相互に接合されるためである。
【0036】
(工程B1)
工程B1は、摩擦攪拌によって、複数の接合前スパッタリングターゲットを相互に接合すると同時に、接合部分102と接合部分102以外の部分との間で、攪拌によって組織を均一にする。工程B1は複数の接合前ターゲットを配置して形成した接合前ターゲット群を固定せずに行うことも可能であるが、接合前ターゲット群が動かないようにして固定して行なうことが好ましい。工程B1において、スパッタ面の全面を摩擦攪拌する方法は、工程Bと同様の方法を採用することができる。
【0037】
(工程C)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法では、工程B又は工程B1の後に、更に、スパッタリングターゲットの材料の融点をTm(温度単位:K)としたとき0.5Tm以上0.95Tm以下の温度範囲で熱処理をする工程Cを有することが好ましい。熱処理温度は、スパッタリング接合ターゲット100の材料の融点をTm(温度単位:K)としたとき0.5Tm以上0.95Tm以下である。より好ましくは、0.65Tm以上0.93Tm以下であり、特に好ましくは、0.80Tm以上0.90Tm以下である。熱処理温度が0.5Tm未満では、内部応力を減少させることができない場合がある。また、摩擦攪拌された部分の結晶粒の大きさを均一にすることができない場合がある。熱処理温度が0.95Tmを超えると、接合ターゲット100が熱変形する場合がある。熱処理時間は、熱処理の開始後120分以上であることが好ましく、310分以上であることがより好ましく、600分以上であることが特に好ましい。熱処理時間が120分未満では、接合ターゲット100が十分に加熱されず、内部応力を減少させることができない場合がある。また、摩擦攪拌された部分の結晶粒の大きさを均一にすることができない場合がある。熱処理時間の上限は、1440分以下であることが好ましく、720分以下であることがより好ましい。
【0038】
熱処理方法は、例えば、熱処理炉で加熱する方法、通電加熱、高周波加熱である。このうち、熱処理炉で加熱する方法が温度の均一性という点でより好ましい。このうち、熱処理方法は、通電加熱又は高周波加熱であることが好ましい。大型な設備を必要としない。
【0039】
本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、例えば
図6に示すように、複数の接合前スパッタリングターゲット101が相互に接合されて、
図1に示すように、より大型の接合ターゲット100となっており、接合ターゲット100のスパッタ面100aの全面が、固相攪拌用回転ツールによって、摩擦攪拌されている。本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、
図1又は
図2に示すように、接合ターゲット100が円筒型である形態のほか、例えば、
図8(b)に示す接合ターゲット300が角板型である形態、接合ターゲットが円板型である形態(不図示)又は接合ターゲットが円柱型である形態(不図示)を包含する。
【0040】
本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、摩擦攪拌後に熱処理が行われ、熱処理によって摩擦攪拌された部分の内部応力が減少していることが好ましい。より好ましくは、摩擦攪拌後に行なった熱処理によって摩擦攪拌された部分の内部応力が除去されている。また、熱処理後の大型スパッタリングターゲットは、等軸な結晶粒を有することが好ましい。摩擦攪拌後は、摩擦攪拌を行なう前と比較して内部応力が高くなり、また、結晶粒が小さくなり、強度及び硬度が高くなる傾向にある。また、摩擦攪拌後の組織は左右非対称であり、また、上下方向(スパッタ面の深さ方向)での結晶粒の大きさが異なる。この組織のままであると、接合ターゲット100の面内における組織の均一性が十分ではない。摩擦攪拌後熱処理前のターゲットでは、部分的に内部応力が高い部分があったり、結晶粒の大きさにばらつきがあったりするため、スパッタ面でのスパッタのしやすさの程度にばらつきがあり、スパッタ面の深さ方向についても同様にばらつきがあり、膜厚を均一にできない場合がある。そこで、熱処理を行なうことで、スパッタ面100aの全域及びその深さ方向にわたる接合ターゲット100の全体において、内部応力を減少させることができる。より好ましくは、内部応力を除去させることができる。また、熱処理によって、摩擦攪拌された部分の結晶粒の粒径が大きくなり、スパッタ面100aの全域及びその深さ方向にわたる接合ターゲット100の全体において、結晶粒の大きさの違いを緩和することができる。すなわち、スパッタ面100aの全域及びその深さ方向にわたる接合ターゲット100の全体において、内部応力を減少、より好ましくは除去させ、かつ、結晶粒の大きさを均一とすることで、組織を均一化することができる。内部応力は、硬さの測定など一般的な方法で確認することができる。内部応力が減少していることの確認は、例えば次のように行なう。熱処理前後の接合ターゲット100について、それぞれ硬さを測定する。熱処理によって内部応力が減少している場合は、熱処理後の接合ターゲット100の硬さが、熱処理前の接合ターゲット100の硬さよりも軟化している。内部応力が除去されていることの確認は、例えば次のように行なう。熱処理後の接合ターゲット100の摩擦攪拌された部分の硬さ(硬さA)を測定する。また、熱処理後の接合ターゲット100の摩擦攪拌された部分の一部を切り出して、更に追加の熱処理(例えば、熱処理温度0.5Tm以上、熱処理時間120分以上)を行い、この追加の熱処理を行なったサンプルについて硬さ(硬さB)を測定する。内部応力が除去されている場合は、硬さBの値が、硬さAの値と同程度となる。また、摩擦攪拌によって、結晶粒の配向性が特定の方向に偏る場合がある。すなわち、優先方位が発生する場合がある。熱処理を行なうことで、摩擦攪拌後の結晶粒の配向性を、摩擦攪拌前の結晶粒の配向性と同様に、ランダムにすることができる。その結果、スパッタによって形成される膜厚を、場所によらずにより均一にすることができる。
【実施例】
【0041】
以降、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0042】
(実施例1)
縦1m×横1m×高さ(厚さ)0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(接合前スパッタリングターゲット)を9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列にAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの端同士が接触するように並べた。その後、各Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの接触する箇所を摩擦攪拌接合で接合して大型の接合ターゲットを得た。次いで、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(大型の接合ターゲット)のスパッタ面の全面を摩擦攪拌処理し、当該摩擦攪拌処理した箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図9に示す。
【0043】
(比較例1)
実施例1の摩擦攪拌処理する前の接合前スパッタリングターゲットの断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図10に示す。
【0044】
図9の組織を観察すると、摩擦攪拌処理することでAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットに見られる圧延等による加工歪みは不明瞭になったことが確認された。摩擦攪拌処理を重ねて行うことで、広い範囲でより均一な組織を得ることができた。このように、摩擦攪拌処理した部分と摩擦攪拌していない部分とでは、組織が異なる。従って、ターゲット全体の組織を均一にするには、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのスパッタ面の全面を摩擦攪拌処理する必要がある。
【0045】
(実施例2)
縦1m×横1m×高さ0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットを9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列に各ターゲットの端同士が接触するように並べて接合前ターゲット群を形成し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を並べた状態で固定した。その後、接合前ターゲット群の表面のうち、スパッタ面となる面を全面にわたり摩擦攪拌処理した。次いで、600℃(0.71Tm)で2時間、熱処理を行った。熱処理後のAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの摩擦攪拌処理箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図11に示す。
【0046】
(実施例3)
熱処理温度を700℃(0.79Tm)とした以外は実施例2と同様に行い、熱処理後、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの摩擦攪拌処理箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図12に示す。
【0047】
(実施例4)
熱処理温度を800℃(0.87Tm)とした以外は実施例2と同様に行い、熱処理後、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの摩擦攪拌処理箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図13に示す。
【0048】
(実施例5)
熱処理を行なわなかったこと以外は実施例2と同様に行い、摩擦攪拌処理後、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの摩擦攪拌処理箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図14に示す。
【0049】
(実施例6)
熱処理温度を300℃(0.46Tm)とした以外は実施例2と同様に行い、熱処理後、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの摩擦攪拌処理箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図15に示す。
【0050】
図11〜
図15を観察すると、摩擦攪拌処理を行った後の実施例5は、
図10に示す比較例1よりも粒径が小さくなり、圧延などによる加工歪みが少なくなったことが確認された。実施例2乃至4は、熱処理をしていない実施例5又は所定の温度範囲より低い温度で熱処理をした実施例6と比較して粒径が大きくなっていた。また、実施例2乃至4は、実施例5又は実施例6と比較して摩擦攪拌処理によるTMAZが不明瞭となっていた。摩擦攪拌処理によるTMAZは、
図14及び
図15において、明部と暗部との境界線として現れている。以上より、実施例2乃至実施例4は、所定の温度範囲での熱処理をすることで、摩擦攪拌処理によるTMAZがより不明瞭となり、均一な組織が形成されたことが確認された。実施例6は、熱処理を行ったが温度が低かったため、摩擦攪拌処理によるTMAZがあまり変化しなかった。実施例5、6では摩擦攪拌処理によるTMAZが残っているが、摩擦攪拌処理によるTMAZが残った状態のAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットを用いても、成膜することは可能である。ただし、より均一な膜が求められるときは、実施例2乃至実施例4に示すようにAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの組織が均一であることが求められる。
【0051】
(実施例7)
縦1m×横1m×高さ0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットを9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列に各ターゲットの端同士が接触するように並べ、各Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの接触する箇所を摩擦攪拌接合で接合して大型の接合ターゲットを得た。得られた大型の接合ターゲットのスパッタ面を全面にわたり複数回の摩擦攪拌処理を行い、当該摩擦攪拌処理した箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図16に示す。
【0052】
実施例7で摩擦攪拌処理した結果、摩擦攪拌処理した箇所のAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの断面箇所は、粒径が細かく均一な組織に改質された。
【0053】
(実施例8)
縦1m×横1m×高さ0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(接合前スパッタリングターゲット)を9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列にAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの端同士が接触するように並べた。その後、接合前スパッタリングターゲット同士が接触する箇所をTIG溶接で接合して大型の接合ターゲットを得た。次いで、得られた大型の接合ターゲットのスパッタ面の全面を摩擦攪拌処理し、当該摩擦攪拌処理した箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図17に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例8において、摩擦攪拌処理する前のTIG溶接箇所の断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図18に示す。
【0055】
実施例8と比較例2とを比較すると、比較例2では
図18に示すように粒径が肥大化したままで、組織が不均一であった。一方、実施例8のようにAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのTIG溶接した箇所を摩擦攪拌処理すると、
図17に示すように溶融によって形成された組織が消え、粒径が細かく均一な組織に改質された。
【0056】
(実施例9A)
縦1m×横1m×高さ0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(接合前スパッタリングターゲット)を9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列に各ターゲットの端が接触するように並べた。その後、固相攪拌用回転ツールを用いて各Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの接触する箇所を摩擦攪拌接合で接合して大型の接合ターゲットを得た。次いで、固相攪拌用回転ツールを用いてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(大型の接合ターゲット)を、ASをRSで重ねながら前記固相攪拌用回転ツールを動かし、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの全面が摩擦攪拌処理されるまで繰り返し摩擦攪拌処理を行った。摩擦攪拌処理したAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図19に示す。
【0057】
実施例9Aの方法で摩擦攪拌処理した結果、摩擦攪拌処理したAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットにおいて、固相攪拌用回転ツールのAS側に固相攪拌用回転ツールのRS側を重ねて摩擦攪拌処理することにより、ASに形成されたTMAZがターゲットの内側に残ることなく、粒径が細かく均一な組織に改質された。
【0058】
(実施例9B)
縦1m×横1m×高さ0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(接合前スパッタリングターゲット)を9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列に各ターゲットの端が接触するように並べた。その後、固相攪拌用回転ツールを用いて各Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの接触する箇所を摩擦攪拌接合で接合して大型の接合ターゲットを得た。次いで、固相攪拌用回転ツールを用いてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(大型の接合ターゲット)を、RSをASで重ねながら前記固相攪拌用回転ツールを動かし、前記Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの全面が摩擦攪拌処理されるまで繰り返し摩擦攪拌処理を行った。摩擦攪拌処理したAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの断面を光学顕微鏡(オリンパス社製GX51)で観察した。その画像を
図20に示す。
【0059】
実施例9Bの方法で摩擦攪拌処理した結果、摩擦攪拌処理したAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットにおいて、固相攪拌用回転ツールのAS側に形成されたTMAZがターゲットの内側に残り、その近辺の組織は他の部分と異なるものであった。実施例9Bは、摩擦攪拌処理によるTMAZが残っているが、摩擦攪拌処理によるTMAZが残った状態のAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットを用いても、成膜をすることは可能である。ただし、より均一な膜が求められるときは、実施例9Aに示すようにAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの組織が均一であることが求められる。
【0060】
(実施例10)
縦1m×横1m×高さ0.005mのAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(接合前スパッタリングターゲット)を9枚用意し、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット9枚を3枚ずつ3列に各ターゲットの端が接触するように並べた。その後、固相攪拌用回転ツールを用いて各Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットの接触する箇所を摩擦攪拌接合で接合して大型の接合ターゲットを得た。次いで、固相攪拌用回転ツールを用いてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲット(大型の接合ターゲット)のスパッタ面の全面を摩擦攪拌処理し、その後、600℃(0.71Tm)で2時間、熱処理を行った。熱処理後、JISZ2244:2009「ビッカース硬さ試験−試験方法」(以下、JISZ2244という)に基づいてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのビッカース硬さ試験を行った。試験結果を
図21に示す。
【0061】
(実施例11)
熱処理温度を700℃(0.79Tm)とした以外は実施例10と同様に行い、熱処理後、JISZ2244に基づいてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのビッカース硬さ試験を行った。試験結果を
図21に示す。
【0062】
(実施例12)
熱処理温度を800℃(0.87Tm)とした以外は実施例10と同様に行い、熱処理後、JISZ2244に基づいてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのビッカース硬さ試験を行った。試験結果を
図21に示す。
【0063】
(実施例13)
熱処理を行わなかったこと以外は実施例10と同様に行い、JISZ2244に基づいてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのビッカース硬さ試験を行った。試験結果を
図21に示す。
【0064】
(実施例14)
熱処理温度を300℃(0.46Tm)とした以外は実施例10と同様に行い、熱処理後、JISZ2244に基づいてAg−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットのビッカース硬さ試験を行った。試験結果を
図21に示す。
【0065】
(参考例1)
JISZ2244に基づいて、実施例1の摩擦攪拌処理する前の接合前スパッタリングターゲットのビッカース硬さ試験を行った。試験結果を
図21に示す。
【0066】
実施例10乃至14、参考例1のビッカース硬さ試験を行った結果、Ag−Pd−Cu合金スパッタリングターゲットは摩擦攪拌処理を施すことにより、実施例13のようにビッカース硬さが参考例1(母材)よりも大きくなる(硬くなる)ことが確認された。一方、実施例10〜12では所定の温度範囲で熱処理を施すことによってビッカース硬さが参考例1(母材)よりも小さくなった。このことは、内部応力が減少したことを示唆する。実施例14では熱処理の温度が低いため、参考例1(母材)よりもビッカース硬さが大きかった。このことから、内部応力の減少が実施例10〜12よりも小さいことが確認された。実施例13、14のように内部応力が残った状態でもスパッタリングは可能であるが、実施例10乃至12のように熱処理による内部応力の減少により、均一な組織となり、成膜し易くなる。