(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)アクリルポリオール、(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種、及び(C)イソシアネート化合物の総重量100重量部当たり、成分(B)が0.01〜8.0重量部配合されている、請求項1又は2に記載の積層シート用接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の積層シート用接着剤は、(A)アクリルポリオール;(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種のカルボキシル基含有化合物;及び(C)イソシアネート化合物を混合することで得られるウレタン樹脂を含む。
【0021】
ウレタン樹脂を合成する際、成分(A)〜(C)の配合の順序及び方法は、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得られる限り、特に制限されることはない。例えば、成分(A)〜(C)の3成分を同時に混合しても良い。あるいは、成分(B)を成分(A)と先に混合し、その混合物をさらに(C)成分と混合しても良い。成分(B)を成分(C)と先に混合した後、その混合物を(A)成分と混ぜてもよい。
本発明に係るウレタン樹脂は、(A)アクリルポリオール及び(C)イソシアネート化合物を混合することで、反応して得られるポリマーであって、ウレタン結合を有する。
【0022】
(A)アクリルポリオールは、重合性単量体の付加重合で得られ、重合性単量体は「水酸基を有する単量体」および「その他の単量体」を含む。
「水酸基を有する単量体」は、水酸基とエチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体であり、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得ることができる限り特に制限されるものではない。水酸基を有する単量体は、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含み、1種類のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを単独で使用しても、2種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて使用してもよい。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート以外の水酸基を有する単量体とを併用してもよい。
【0023】
「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート以外の水酸基を有する重合性単量体」として、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0024】
「その他の単量体」は、水酸基を有する単量体以外の「エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」であって、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得ることができる限り特に制限されるものではない。その他の単量体は、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステル以外のエチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体を更に含んでもよい。本発明の積層シート用接着剤は、その他の単量体がアクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを含む場合、養生後の剥離強度により優れ、積層シートの外観がより向上し好ましい。
【0025】
「アクリロニトリル」とは一般式:CH
2=CH−CNで表される化合物であり、アクリルニトリル、アクリル酸ニトリル、シアン化ビニルとも呼ばれる。
アクリロニトリルは、重合性単量体100重量部当たり、1〜40重量部で含まれることが好ましく、5〜35重量部で含まれることがより好ましく、5〜25重量部で含まれることが特に好ましい。アクリロニトリルの量が上記範囲にある場合、積層シートの外観がより向上し、養生後の剥離強度、耐加水分解性のバランスに優れた積層シート用接着剤を好ましく得ることができる。
【0026】
「(メタ)アクリル酸エステル」は、例えば、(メタ)アクリル酸とモノアルコールとの縮合反応で得ることができ、エステル結合を有する。たとえエステル結合を有しても、水酸基を有する単量体は、(メタ)アクリル酸エステルに含まない。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びグリシジル(メタ)アクリレート等を例示できる。この「アルキル基」には、鎖状アルキル基も環状アルキル基も含まれる。
【0027】
「(メタ)アクリル酸エステル」は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、メチルメタクリレート及びn-ブチルアクリレートの双方を含むことが最も好ましい。
【0028】
尚、本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいい、「アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル」を総称して「(メタ)アクリル酸エステル」又は「(メタ)アクリレート」ともいう。
【0029】
「アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステル以外のエチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」として、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン及びビニルトルエン等を例示できるが、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得られる限り、特にこれらに制限されることはない。
【0030】
重合性単量体の重合方法は、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得られる限り、特に限定されるものではないが、例えば、通常の溶液重合の方法を使用して、有機溶媒中で適宜触媒等を用いて、上述の重合性単量体をラジカル重合することで、重合性単量体の重合を行うことができる。ここで「有機溶媒」とは重合性単量体を重合するために用いることができ、重合反応後の積層シート用接着剤としての特性に実質的に悪影響を与えないものであれば特に限定されるものではない。そのような溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒並びにそれらの組み合わせを例示することができる。
【0031】
重合性単量体を重合させる際の反応温度、反応時間、有機溶媒の種類、単量体の種類及び濃度、攪拌速度、並びに重合開始剤の種類および濃度等の重合反応条件は、目的とする接着剤の特性等によって、適宜選択され得るものである。
【0032】
「重合開始剤」とは、少量の添加によって重合性単量体の重合を促進させることができる化合物であって、有機溶媒中で使用可能なものが好ましい。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を例示することができる。
【0033】
本発明における重合では、分子量を調節するために、連鎖移動剤等を適宜用いることができる。「連鎖移動剤」として、当業者に周知の化合物を使用できる。例えば、n−ドデシルメルカプタン(nDM)及びラウリルメチルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類を例示できる。
【0034】
上述のように重合性単量体を重合させることによりアクリルポリオールが得られる。アクリルポリオールの重量平均分子量(Mw)は、接着剤の塗工適性の観点から、20万以下であることが好ましく、5000〜10万であることがより好ましく、1万〜8万であることが最も好ましい。尚、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL−8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ−Mを2本用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求める。
【0035】
アクリルポリオールのガラス転移温度は、使用する単量体の種類とその質量分率を調整することにより、設定することができる。アクリルポリオールのガラス転移温度は、各単量体から得られる単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度とアクリルポリオール中で使用される単独重合体の質量分率から、下記の計算式(i)を用いて求めることができる。この計算によって求められるガラス転移温度を目安にして単量体組成を決定することが好ましい。
【0036】
(i):1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[前記式(i)中、Tgはアクリルポリオールのガラス転移温度を示し、W1、W2、・・・Wnは各単量体の質量分率を示し、Tg1、Tg2、・・・Tgnは対応する各単量体の単独重合体のガラス転移温度を示す。]
【0037】
尚、単独重合体のTgは、文献に記載されている値を用いることができる。そのような文献として、例えば、以下の文献を参照できる:三菱レーヨン社のアクリルエステルカタログ(1997年度版);北岡協三著、「新高分子文庫7、塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、1997年発行、第168〜169頁;及び「POLYMER HANDBOOK」第3版第209〜277頁、John Wiley & Sons, Inc. 1989年発行。
【0038】
本明細書では、下記の単量体の単独重合体のガラス転移温度は以下のとおりとする。
メチルメタクリレート:105℃
2−エチルヘキシルアクリレート:−70℃
n−ブチルアクリレート:−54℃
エチルアクリレート:−20℃
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:55℃
アクリル酸2-ヒドロキシエチル:−15℃
グリシジルメタクリレート:41℃
アクリロニトリル:130℃
スチレン:105℃
シクロヘキシルメタクリレート:83℃
アクリル酸:106℃
【0039】
本発明において、アクリルポリオールのガラス転移温度は、−35℃〜20℃である。
フィルムへの初期密着性、養生後の剥離強度、耐加水分解性を考慮すると、ガラス転移温度は、−30℃〜20℃であることがより好ましく、−20℃〜15℃であることが特に好ましい。
ガラス転移温度が−35℃より低い場合、積層シート用接着剤の凝集力が低下し、養生後の剥離強度、耐加水分解性が低下し得る。ガラス転移温度が20℃より高い場合、接着剤が硬くなりすぎ、フィルムへの初期密着性が低下し得る。
【0040】
アクリルポリオールの水酸基価は、0.5〜40mgKOH/gであり、1〜30mgKOH/gであることがより好ましく、4〜20mgKOH/gであることが特に好ましい。アクリルポリオールの水酸基価が上記範囲から外れる場合、積層シート用接着剤は、養生後の剥離強度および耐加水分解性に充分な性能が得られず、積層シート用接着剤としての使用が難しくなる。
【0041】
本明細書で水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのmg数を示す。
本発明では具体的には、下記式(ii)で算出される。
(ii):水酸基価=(水酸基を有する単量体の重量/水酸基を有する単量体の分子量)×水酸基を有する単量体1モルに含まれる水酸基のモル数×KOHの式量×1000/アクリルポリオールの重量
【0042】
本明細書において、(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種とは、カルボン酸及びカルボン酸無水物のいずれか一方を単独で用いても、双方を混合して用いても差し支えないことを意味する。
本発明の積層シート用接着剤は、成分(B)を含むことによって、適度なポットライフを維持しつつ、硬化性に優れたものとなる。
【0043】
「カルボン酸」とは少なくとも一つのカルボキシル基を有する有機酸であり、「カルボン酸無水物」とは二つのカルボキシル基が脱水縮合した構造(無水カルボン酸基)を有する化合物をいう。
【0044】
カルボン酸としては、ギ酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベオレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ソルビン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシプロパントリカルボン酸、3-ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、ジフェノール酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、没食子酸、ケイ皮酸、フタル酸、イソフタル酸、2-オキソプロパン酸、ダイマー酸、トリマー酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、メリト酸、ピロメリット酸、及びトリメリット酸等が挙げられる。
【0045】
カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水安息香酸、4,4−オキシフタル酸無水物、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、及びシクロヘキサン−1,2,4-トリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0046】
本発明において、(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種は、融点が280℃以下の化合物を含むことが好ましい。成分(B)は、融点250℃以下の化合物を含むことがより好ましく、200℃以下の化合物を含むことが最も好ましい。成分(B)の融点が上記範囲にある場合、本発明の積層シート用接着剤の硬化性は向上し、得られる積層シートの外観は良好になる。
【0047】
本明細書において、融点とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度10℃/minで測定して、融解ピークの頂点の値を融点とする。
【0048】
本発明において、(A)アクリルポリオール100重量部当たり、(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種は、0.01〜10重量部配合されることが好ましい。成分(B)が上記範囲内にある場合、本発明の積層シート用接着剤は、硬化性が向上するにもかかわらず、ポットライフが短くなり過ぎないので、接着剤を用いる塗工作業がし易くなる。
【0049】
本発明において、成分(A)〜(C)の総重量100重量部当たり、成分(B)が0.01〜8.0重量部配合されることが好ましい。成分(B)が上記範囲内にある場合、本発明の積層シート用接着剤は、硬化性が向上するにもかかわらず、ポットライフが短くなり過ぎないので、接着剤を用いる塗工作業がし易くなる。
【0050】
本発明では、成分(B)がアジピン酸、安息香酸、ダイマー酸、アゼライン酸及び無水トリメリット酸から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の積層シート用接着剤は、成分(B)がアジピン酸、安息香酸、ダイマー酸、アゼライン酸及び無水トリメリット酸から選択される少なくとも1種を含む場合、硬化性が向上するのみならず、養生後の剥離強度及び耐加水分解性に優れる。
【0051】
本発明では、(C)イソシアネート化合物として、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート及び芳香族イソシアネートを例示でき、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0052】
本明細書では、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は、結合していない。
尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
【0053】
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環と、イソシアネート基は、直接結合していない。
【0054】
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつ、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
【0055】
従って、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN−C
6H
4−CH
2−C
6H
4−NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN−CH
2−C
6H
4−CH
2−NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。
尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環している環状構造を含む。
【0056】
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)等を例示できる。
【0057】
脂環式イソシアネートとして、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、及び1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
【0058】
芳香族イソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、及びm−フェニレンジイソシアネート等を例示できる。これらのイソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0059】
本発明において、イシシアネート化合物は、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得ることができる限り特に限定されないが、耐候性の観点から脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択することが好ましく、特に、HDI、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートから選択することが好ましい。
【0060】
本発明に係るウレタン樹脂は、(A)アクリルポリオール;及び(C)イソシアネート化合物を反応させることで得ることができる。反応は、既知の方法を用いることができ、通常、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を混合することで行うことができる。混合方法は、本発明に係るウレタン樹脂を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0061】
本発明では、(A)アクリルポリオールに由来する水酸基に対し、(C)イソシアネートに由来するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.5〜4.5であることが好ましく、1.0〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.5であることが特に好ましい。当量比が上記範囲にある場合、積層シート用接着剤は、硬化性、養生後の剥離強度および耐加水分解性により優れる。
本明細書では、NCO/OH当量比は、下記式(iii)より算出される。
(iii):NCO/OH比=イソシアネート量(重量部)×(561/アクリルポリオールの水酸基価)×(NCO%/(42×100)×(100/ポリオール量(固形分重量))
【0062】
本発明の積層シート用接着剤は、長期耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を含有してよい。紫外線吸収剤として、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物および市販の他の紫外性吸収剤を使用することができる。「ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物」とは、トリアジン誘導体の一種であり、トリアジン誘導体の炭素原子にヒドロキシフェニル誘導体が結合したものであり、例えば、BASF株式会社から市販されている、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン479、チヌビン477及びチヌビン460(いずれも商品名)等を例示できる。
【0063】
積層シート用接着剤は、更に、ヒンダードフェノール系化合物を含有していてもよい。「ヒンダードフェノール系化合物」とは、一般にヒンダードフェノール系化合物とされるものであり、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0064】
ヒンダードフェノール系化合物は、市販されているものを使用することができる。ヒンダードフェノール系化合物として、例えば、BASF社から市販されている。IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX1330及びIRGANOX1520(いずれも商品名)等を例示できる。ヒンダードフェノール系化合物は、酸化防止剤として接着剤に添加され、例えば、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等と組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本発明の積層シート用接着剤は、更に、ヒンダードアミン系化合物を含んでいてもよい。「ヒンダードアミン系化合物」とは、一般にヒンダードアミン系化合物とされるものであり、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0066】
ヒンダードアミン系化合物は、市販されているものを使用することができる。ヒンダードアミン系化合物として、例えば、BASF社から市販されているチヌビン765、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292及びチヌビン5100(いずれも商品名)等を例示できる。ヒンダードアミン系化合物は、光安定剤として接着剤に添加され、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等と組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明に係る積層シート用接着剤は、目的とする積層シート用接着剤を得ることができる限り、更にその他の成分を含むことができる。
「その他の成分」を、積層シート用接着剤に添加する時期は、目的とする積層シート用接着剤が得られる限り、特に制限されるものではない。その他の成分は、例えば、ウレタン樹脂を合成する際に、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物と一緒に添加しても良く、また、まずアクリルポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてウレタン樹脂を合成した後に添加してもよい。
【0068】
「その他の成分」として、例えば、触媒、粘着付与樹脂、顔料、可塑剤、難燃剤、ワックス、及びシラン化合物等を例示することができる。
「触媒」としては、金属触媒及び非金属触媒が挙げられる。
【0069】
金属触媒として、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、及びジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、及びオクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒としてはナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩や、ビスマスオクトエート、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウム等が挙げられる。
非金属触媒としては、アミン系触媒が好ましく、アミン系触媒として、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、及びジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
【0070】
「粘着付与樹脂」として、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂(ポリエステルポリオールを除く)等を例示できる。
「顔料」として、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等を例示できる。
【0071】
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアジペート及びミネラルスピリット等を例示できる。
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤及び、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
「ワックス」として、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等のワックスが好ましい。
【0072】
「シラン化合物」として、例えば、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類、(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類、ビニルトリアルコキシシラン類、ビニルアルキルアルコキシシラン類、エポキシシラン類、メルカプトシラン類及びイソシアヌレートシラン類を用いることができるが、これらのシラン化合物のみに限定されることはない。
【0073】
「(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び4−(メタ)アクリロキエチルトリメトキシシラン等を例示できる。
「(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び3−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン等を例示できる。
【0074】
「ビニルトリアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、及びビニルトリ(エトキシメトキシ)シラン等が例示できる。
「ビニルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルメトキシシラン、及びビニルジエチル(メトキシエトキシ)シラン等を例示できる。
【0075】
「エポキシシラン類」は、例えば、グリシジル系シラン及びエポキシシクロヘキシル系シランに分類できる。「グリシジル系シラン」は、グリシドキシ基を有するもので、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を例示できる。
【0076】
「エポキシシクロヘキシル系シラン」は、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するもので、具体的には、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を例示できる。
【0077】
「メルカプトシラン類」として、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を例示できる。
「イソシアヌレートシラン類」として、例えば、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート等を例示できる。
【0078】
本発明の積層シート用接着剤のポットライフは、(A)〜(C)およびその他添加剤を混合後、数時間、粘度を測定し、粘度上昇の程度で評価される。積層シート用接着剤の粘度は、回転粘度計(TOKIMEC社製BM型)等を用いて測定される。積層シート用接着剤が急激に粘度上昇すると、積層シートの生産性に不具合が生じることがある。
【0079】
本発明の積層シート用接着剤は、上述のウレタン樹脂、場合により加えてもよい、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤及び/又はその他の成分を混合することによって製造することができる。混合方法は、本発明が目的とする積層シート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明に係る積層シート用接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。そして得られた積層シート用接着剤は、高温下で長期にわたって優れた耐加水分解性を維持し、硬化性に優れ、養生後のフィルムへの初期接着性、総合的なバランスに優れる。
【0080】
従って、本発明の積層シート用接着剤で複数の被着体を貼り合わせて積層シートを作製し、得られた積層シートは様々な包装袋や屋外材料を製造するために用いられる。
本発明の包装袋とは、食品、洗剤、シャンプー及びリンス等を内包するために、積層シートを加工して得られた袋状の物品をいう。本発明の屋外材料としては、防壁材、屋根材、太陽電池モジュール、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、及び看板等の屋外で使用される物品が挙げられる。
【0081】
これらの包装袋や屋外材料は、被着体として、複数のフィルムが貼り合わされた積層シートを含む。フィルムとしては、プラスチック基材に金属が蒸着されたフィルム(金属蒸着フィルム)、金属が蒸着されていないフィルム(プラスチックフィルム)がある。
積層シート用接着剤のうち、太陽電池モジュールを製造する接着剤には特に高いレベルのフィルムへの初期接着性及び硬化性、更に、高温下で長期的な耐加水分解性が要求される。本発明の積層シート用接着剤は、高温下で長期にわたる耐加水分解性に優れるので、太陽電池バックシート用接着剤として好適である。
【0082】
積層シートを作製する際には、本発明の積層シート用接着剤をフィルムに塗布する。塗布は、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、及びコンマコートなどの様々な塗布方法を用いて行うことができる。本発明の積層シート用接着剤が塗布された複数のフィルムを貼り合わせて、積層シートが完成する。
【0083】
本発明の積層シートの一の形態を
図1〜3に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の積層シートの一形態を示す断面図である。積層シート10は、2枚のフィルムとその間の積層シート用接着剤13から形成されており、2枚のフィルム11及び12は、積層シート用接着剤13によって貼り合わされている。フィルム11及び12は、同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。
図1では、2枚のフィルム11及び12が、貼り合わされているが、3枚以上のフィルムが貼り合わされていてもよい。
【0084】
本発明に係る積層シートの他の形態を
図2に示す。
図2では、フィルム11と積層シート用接着剤13との間に、箔膜11aが形成されている。例えば、フィルム11が、プラスチックフィルムである場合、フィルム11の表面に、金属薄膜11aが形成されている形態を示す。金属薄膜11aは、プラスチックフィルム11の表面に、例えば蒸着によって形成することができ、この金属薄膜11aが形成されたフィルム11とフィルム12を、積層シート用接着剤13を介して貼り付けて、
図2に係る積層シートを得ることができる。
【0085】
プラスチックフィルムに蒸着する金属として、例えば、アルミニウム、鋼及び銅等を例示できる。プラスチックフィルムに蒸着加工を施すことで、フィルムにバリア性を付与することができる。蒸着材料としては、酸化珪素及び酸化アルミニウムが用いられる。基材のプラスチックフィルム11は、透明でも、白や黒等に着色されていてもよい。
【0086】
フィルム12として、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、及びアクリル樹脂等から選択されるプラスチックでできているフィルムが用いられるが、耐熱性、耐候性、剛性、及び絶縁性等を付与するためにポリエチレンテレフタレートフィルム及び/又はポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。フィルム11及び12は、透明でも、着色されても良い。
フィルム11の蒸着薄膜11aとフィルム12とは、本発明の積層シート用接着剤13を用いて貼り付けられるが、フィルム11及び12は、ドライラミネート法によって積層されることが多い。
【0087】
図3は、本発明の屋外材料の一形態である太陽電池モジュールの一例の断面図を示す。
図3では、太陽電池モジュール1は、ガラス板40、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等の封止材20、一般に複数の太陽電池セル30を接続して所望の電圧を発生するもの、バックシート10を重ね合わせて、スペーサ50でこれらの部材10、20、30及び40を固定して、得ることができる。
【0088】
バックシート10は、上述したように、複数のフィルム11及び12の積層シートなので、積層シート用接着剤13には、バックシート10が、たとえ長期間屋外に曝されても、フィルム11及び12が剥離しないことが要求される。
太陽電池セル30は、シリコンを用いて製造されることが多いが、色素を含んだ有機樹脂を用いて製造されることもある。その場合、太陽電池モジュール1は、有機系(色素増感)太陽電池モジュールとなる。有機系(色素増感)太陽電池には着色性が要求されるので、太陽電池バックシート10を構成するフィルム11及び12として透明フィルムが使用されることが多い。従って、積層シート用接着剤13には、長期間屋外で曝されたとしても、色差変化が極めて小さく、耐候性に優れていることが要求される。
本発明では、封止材20とバックシート10とが一体化しても、積層シート用接着剤13とフィルム11とが剥離することがない。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0090】
<アクリルポリオールの合成>
合成例1(A1)アクリルポリオール(ポリマー1)
攪拌翼、温度計、及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル(和光純薬(株)製)100重量部を仕込み、約80℃で還流させた。このフラスコ内に、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリルを1.0重量部加え、表1に示す量の単量体の混合物を1時間30分かけてフラスコ内に連続的に滴下した。更に1時間加熱した後、2,2−アゾビスイソブチロニトリルを0.2重量部加えて1時間反応させる工程を4回繰り返した。アクリルポリオールの不揮発分(固形分)が50重量%の溶液を得た。
アクリルポリオール(ポリマー1)の重合性単量体成分の組成及び得られたポリマー1の物性を表1に示す。
【0091】
合成例2〜18
2,2−アゾビスイソブチロニトリルの添加量を変えることでポリマー(A)の分子量を調整し、表1及び2に示すように、アクリルポリオールの合成に用いる単量体等の組成を変更し、合成例1と同様の方法で(A2)ポリマー2〜(A’18)ポリマー18を得た。得られたポリマー2〜18の物性を表1及び2に示す。
【0092】
表1及び2に示す重合性単量体及びその他の成分を以下に示す。
・メチルメタクリレート(MMA):和光純薬(株)製
・2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):和光純薬(株)製
・ブチルアクリレート(BA):和光純薬(株)製
・エチルアクリレート(EA):和光純薬(株)製
・グリシジルメタクリレート(GMA):和光純薬(株)製
・アクリロニトリル(AN):和光純薬(株)製
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):和光純薬(株)製
・2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):和光純薬(株)製
・スチレン(St):和光純薬(株)製
・シクロヘキシルメタクリレート(CHMA):和光純薬(株)製
・アクリル酸(AA):和光純薬(株)製
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
<ポリマーのガラス転移温度(Tg)の算出>
(A1)ポリマー1〜(A’18)ポリマー18のTgは、各ポリマーの原料である「重合性単量体」の単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度を用い、既出の計算式(i)を用いて計算した。メチルメタクリレート等、各ホモポリマーのTgは、文献値を用いた。
【0096】
<積層シート用接着剤の製造>
表1及び2に示される成分(A)と、以下に示す成分(B)及び成分(C)とを配合し、積層シート用接着剤を製造した。
【0097】
(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種
(B1)酢酸(和光純薬社製、融点−8℃)
(B2)ヘキサン酸(和光純薬社製、融点−6℃)
(B3)ステアリン酸(和光純薬社製、融点63℃)
(B4)アジピン酸(和光純薬社製、融点156℃)
(B5)アゼライン酸(和光純薬社製、融点104℃)
(B6)オレイン酸(和光純薬社製、融点2℃)
(B7)マレイン酸(和光純薬社製、融点143℃)
(B8)安息香酸(和光純薬社製、融点125℃)
(B9)イソフタル酸(和光純薬社製、融点351℃)
(B10)無水トリメリット酸(和光純薬社製、融点169℃)
(B11)4,4−オキシジフタル酸無水物(和光純薬社製、融点229℃)
(B12)ダイマー酸(クローダ社製のプリポール1013(商品名)、融点−47℃)
(B’13)メタンスルホン酸(和光純薬社製 融点21℃)
【0098】
成分(B)の融点は、エス・アイ・アイ・ナノテクノロジ−社製DSC6220を用いて測定した。(B)カルボン酸及びカルボン酸無水物の試料、約10mgをアルミニウム製容器に量りとり、DSC装置にセットし、約−70℃まで冷却した後、昇温速度10℃/分で測定した。得られたDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。
【0099】
(C)イソシアネート化合物
(C1)イソシアネート化合物1(ヘキサメチレンジイソシアネート3量体:住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名):イソシアヌレート体)
(C2)イソシアネート化合物2(ヘキサメチレンジイソシアネート3量体:住化バイエルウレタン社製のスミジュールHT(商品名):トリメチロールプロパンのアダクト体)
(C3)イソシアネート化合物3(キシリレンジイソシアネート:三井化学化社製のタケネート500(商品名))
【0100】
実施例1
表3に示すように、90.1gの(A1)ポリマー1[180.2gのポリマー1の酢酸エチル溶液(固形分50.0重量%)]、4.5gの(B6)オレイン酸、4.05gの(C1)イソシアネート化合物1、1.35gの(C3)イソシアネート化合物3、0.5gのEVONIK社製3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(S1)を秤量して混合し、さらに固形分が35%になるように酢酸エチル溶液を添加して積層シート用接着剤を得た。
【0101】
実施例2〜19および比較例1〜7
実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、成分(A)〜(C)を表3〜5に示される配合で混合し、積層シート用接着剤を得た。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
これらの積層シート用接着剤は、以下に記載された試験によって評価された。
<積層シート1の製造>
実施例及び比較例の各々の積層シート用接着剤を、透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/m
2となるように塗布して、80℃で5分間乾燥させた。積層シート用接着剤を塗布した面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ、熱ロールプレス機を用いて、圧締圧0.9MPa, 5m/minの条件で、プレスして、積層シート1を得た。
【0106】
<積層シート2の製造>
実施例1の積層シート用接着剤を、透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/m
2となるように塗布して、80℃で5分間乾燥させた。積層シート用接着剤を塗布した面に、表面処理PETフィルム(東洋紡社製のシャインビーム(商品名))の表面処理された面を被せ、熱ロールプレス機を用いて、圧締圧0.9MPa、5m/minの条件で、プレスして、積層シート2を得た。
【0107】
<評価>
積層シート用接着剤の評価を以下の方法で行った。評価結果を表2に示した。
1.ポットライフの評価
混合直後、25℃で5時間及び24時間保管後に、積層シート用接着剤の溶液粘度を測定して、ポットライフを評価した。溶液粘度は、回転粘度計(TOKIMEC社製BM型)を用い、25℃、回転数30回転/分で測定した。評価基準は以下のとおりである。
◎:24時間保管後の粘度上昇率が2倍未満
○:5時間保管後の粘度上昇率が2倍未満
△:5時間保管後の粘度上昇率が2倍以上
ここで、「粘度上昇率」は、下記式(iv)で求めることができる。
(iv):粘度上昇率=(5時間又は24時間保管後の粘度)/(混合直後の粘度)
【0108】
2.反応率(硬化性)の評価
プレス直後、50℃で72時間及び120時間養生後に、赤外吸収(IR)を測定することによって、積層シート1の積層シート用接着剤の反応率を評価した。IR測定は、サーモエレクトロン社製Nicolet380を用いて行い、イソシアネート基のピーク(2270cm
−1〜2250cm
−1)の高さと、炭化水素基のC−H伸縮振動のピーク(2970cm
−1〜2940cm
−1)の高さの比を、各養生時間において求めた。反応率は次式(v)で求めることができる。
(V):反応率(%)={1−(72時間又は120時間養生後のイソシアネート基のピークの高さ/72時間又は120時間養生後の炭化水素基のC−H伸縮振動のピークの高さ)/(プレス直後のイソシアネート基のピークの高さ/プレス直後の炭化水素基C−H伸縮振動のピークの高さ)}×100
評価基準は以下のとおりである。
◎:50℃で72時間養生後の反応率が95%以上
○:50℃で72時間養生後の反応率が80%以上、95%未満
△:50℃で72時間養生後の反応率が80%未満、120時間養生後の反応率が80%以上
×:50℃で120時間養生後の反応率が80%未満
【0109】
3. 積層シートの外観評価
積層シート1を50℃で5日間養生後、積層シートの表面を目視で観察して、評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:積層シートの表面のフィルムが平滑である。
△:積層シート用接着剤の塗工時の引き筋又は発泡による皺が、又は積層シートの収縮による皺が、積層シートの表面のフィルムの一部に確認される。
×:積層シート用接着剤の塗工時の引き筋又は発泡による皺が、又は積層シートの収縮による皺が、積層シートの表面のフィルムの大部分に確認される。
【0110】
4.フィルムへの初期密着性の評価
養生することなく積層シート1を15mm幅に切りだして、評価試料を得た。引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM−250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度100mm/min、180°で、評価試料の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:剥離強度が1N/15mm以上
△:剥離強度が0.1N/15mm以上1N/15mm未満
×:剥離強度が0.1N/15mm未満
【0111】
5.養生後のフィルムへの初期接着性の測定
積層シート2を50℃下で120時間養生した後、15mm幅に切り出して、評価試料を得た。引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM−250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度100mm/min、180°で、評価試料の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:剥離強度が12N/15mm以上
○:剥離強度が9N/15mm以上12N/15mm未満
△:剥離強度が6N/15mm以上9N/15mm未満
×:剥離強度が1N/15mm以上6N/15mm未満
【0112】
6.耐加水分解性の評価
加圧蒸気を用いた促進評価法により、耐加水分解性を評価した。積層シート2を、50℃で120時間養生後、15mm幅に切り出して、評価試料を得た。ハイプレッシャークッカー(ヤマト科学社製 オートクレーブSP300(商品名))を用いて、121℃、0.1MPa加圧環境下で、評価試料を48時間保管後、室温環境下にて一日養生した。その後、評価試料を8cmの長さに切断して試験片を得た。試験片について手剥離試験を行った。
手剥離試験とは、機械を用いず、同一の測定者が手で試験片の基材と被着体(又は2枚の被着体、この試験片では、具体的にはPETシートとPETフィルム)を剥離し、その剥離状態で接着剤を評価する試験である。接着剤の接着性が良好に保たれている場合、被着体を剥離する際、被着体又は基材が破壊される(即ち、材料破壊を生じる)。接着剤の接着性が低下している場合、被着体又は基材の材料破壊が起こらずに、接着剤自身の破壊が生じる、又は接着剤と被着体又は基材の間で剥離が生じる。測定者が被着体の剥離長さと材料破壊の状態を目視し、積層シート用接着剤の耐加水分解性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:被着体の剥離が0.5cm未満で材料破壊が発生
○:被着体の剥離が0.5cm以上、1.5cm未満で材料破壊が発生
△:被着体の剥離が1.5cm以上、3cm未満で材料破壊が発生
×:被着体の剥離が3cm以上でも材料破壊なし
【0113】
表3〜5に示されるように、実施例1〜19の積層シート用接着剤は、成分(A)〜(C)を含むので、上記評価1〜6のバランスに優れ、積層シート用接着剤として好適である。
【0114】
これに対し、比較例1〜7の積層シート用接着剤は、評価1〜6のいずれかが×である。比較例1、6及び7の積層シート用接着剤は成分(B)を含まず、比較例2〜5の積層シート用接着剤は成分(A)を含まない。成分(A)及び成分(B)のいずれかを含まないウレタン樹脂は、積層シート用接着剤として有効でないことが立証された。
【0115】
特に、比較例1は、アクリル酸を重合性単量体として合成した(A14)アクリルポリオールを使用し、成分(A14)がカルボキシル基を含むが、耐加水分解性、フィルムへの初期密着性、積層フィルムの外観の3項目が劣る。これらの結果より、(A)アクリルポリオール中にカルボキシル基を導入するのではなく、(A)アクリルポリオール、(B)カルボン酸およびカルボン酸無水物から選ばれた少なくとも1種、ならびに(C)イソシアネート化合物を配合して得られたウレタン樹脂が積層シート用接着剤として優れることが確認された。