特許第6491870号(P6491870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491870
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】アルミニウムクラッド材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20190318BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20190318BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20190318BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20190318BHJP
   B21B 1/38 20060101ALI20190318BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20190318BHJP
【FI】
   B23K20/04 D
   B23K20/04 F
   C22C21/00 E
   B23K35/28 310B
   C22F1/04 A
   B21B1/38 L
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 614
   !C22F1/00 622
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 630M
   !C22F1/00 630Z
   !C22F1/00 651A
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 686Z
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/00 630K
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-253702(P2014-253702)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-112591(P2016-112591A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】大橋 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰永
(72)【発明者】
【氏名】迫田 正一
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−255171(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/110110(WO,A1)
【文献】 米国特許第05316863(US,A)
【文献】 特開平02−034289(JP,A)
【文献】 特開平05−069163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/04
B21B 1/38
B23K 35/28
C22C 21/00
C22F 1/04
C22F 1/00
B32B 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl心材の片面若しくは両面に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl皮材を重ね合わせて積層せしめ、その得られた積層物を熱間圧延することにより、それらAl心材とAl皮材とが接合、一体化されてなるアルミニウムクラッド材を製造するに際して、
それらAl心材とAl皮材の重ね合わせ面に、深さが0.1〜5.0mmであり、開口部の大きさが0.1〜5.0mmである複数の凹所を、それらの開口部間の距離が25mm以内となるようにして、それぞれ配設すると共に、それら凹所の設けられたAl心材とAl皮材との重ね合わせ面間に、Mg含有量が0.7質量%以下である、純アルミニウム又はアルミニウム含有量が99.0質量%以上のアルミニウム材質からなる、厚さが0.02〜5.0mmのAlシートを介在せしめた形態において、前記積層物を構成し、かかる積層物に対して熱間圧延を実施するようにしたことを特徴とするアルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項2】
前記凹所が、少なくとも一方向に互いに平行に延びる複数条の溝にて構成され、かかる溝の溝幅が、前記開口部の大きさに相当するように構成されている請求項1に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項3】
前記凹所が、互いに独立して形成された複数個の穴にて構成され、かかる穴の円相当径が、前記開口部の大きさに相当するように構成されている請求項1に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項4】
前記複数条の溝が、前記熱間圧延の圧延方向に対して直交又は傾斜する方向に設けられている請求項2に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
【請求項5】
前記Al心材と前記Al皮材との間に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる板状のAl中間材が、更に介在せしめられると共に、該Al心材と該Al中間材とが重ね合わされる側のそれぞれの面及び該Al中間材と該Al皮材とが重ね合わされる側のそれぞれの面の少なくとも何れか一方の重ね合わされる側のそれぞれの面に、前記複数の凹所を設け、そしてその凹所が設けられた重ね合わせ面間に、前記Alシートを配置せしめてなる形態において、前記積層物が構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のアルミニウムクラッド材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムクラッド材の製造方法に係り、特に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl心材の片面若しくは両面に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl皮材を重ね合わせて積層せしめ、その得られた積層物を熱間圧延することにより、それらAl心材とAl皮材とが接合、一体化されてなるアルミニウムクラッド材を有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムクラッド材は、Al心材の片面或いは両面に、かかるAl心材とは材質の異なるAl皮材を重ね合わせ、或いは用途に応じて、それら心材と皮材との間に、それら心材や皮材とは材質の異なるアルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl中間材を介在させた形態において、重ね合わせて、多層構造の積層体(積層物)と為し、そしてそのような積層体を所定温度に加熱して、熱間圧延せしめ、更にその後、冷間圧延して、所定の板厚とすることによって、得られた板材である。そして、この種のアルミニウムクラッド材については、従来から、各種の製造方法が提案されてきており、また実際に、航空機や自動車等の輸送機器用の熱交換器におけるブレージングシート等として用いられてきているが、従来のアルミニウムクラッド材の製造法には、未だ解決されるべき多くの問題が残されている。
【0003】
具体的には、上記した熱間クラッド圧延の施される積層体の界面の接合は、一般的に、圧接と呼称され、高温にて強い圧力を与えて接合することを意味しているが、その際、Al心材やAl皮材等の各積層材の表面は、酸化皮膜で覆われているところから、それらの接合には、かかる酸化皮膜を破壊する必要がある。しかして、熱間クラッド圧延により、接合面に対して垂直方向に強い圧力を加えるだけでは、酸化皮膜を有効に破壊することが出来ず、接合することが困難であるところから、当業者間においては、それら積層材の界面を摺動させて、酸化皮膜を破壊することが必要であることが、一般的には認識されているのである。
【0004】
実際に、皮材のクラッド率が高いクラッド材においては、心材と皮材の界面で摺動が発生し難く、それらの接合が困難となっているのである。一方、皮材のクラッド率が低いクラッド材にあっては、熱間クラッド圧延前に、皮材に温度低下が生じて、酸化皮膜が破壊され難くなると共に、かかる熱間圧延中に皮材が破れる等して、圧延不良を生じ易い問題がある。このため、そのような製造上の問題から、アルミニウムクラッド材のクラッド率は、一般に、5〜25%の範囲に制限されているのが実情である。さらに、マグネシウム(Mg)を多く含む、JIS呼称の2000系、5000系、6000系、或いは7000系のAl合金においては、その表面に、アルミニウム酸化物(Al23)の他に、マグネシウム酸化物(MgO)も形成されており、そのために酸化皮膜が強固なものとなるところから、そのようなアルミニウム材質の心材や皮材を用いたクラッド材の製造は、困難なものと考えられている。
【0005】
ところで、従来から、クラッドされる金属材料の界面の接合性を向上せしめるべく、特許文献1においては、硬質の金属板の圧着面に突起を形成させて、その上に軟質の金属板を重ね合わせた後、圧延することにより、強固な接合性を得ることが出来ることが、明らかにされている。また、特許文献2には、母材となる鋼板に凹凸を設け、その上に表面の酸化を防止するためにアルミニウムの溶射皮膜を形成した後、アルミニウム合金製の皮材を重ね合わせて、クラッド圧延することにより、界面の接合強度を高め、クラッドを確実に達成し得ることが、明らかにされている。
【0006】
しかしながら、それら従来の接合性向上技術について、本発明者らが種々検討したところ、特に、Mgを多く含むAl皮材やAl心材をクラッド圧延する場合においては、その接合界面が充分に接合され得ず、圧延途中において皮材と心材が剥離してしまう等の問題が、依然として内在し、それらの特許文献に示される効果が充分に得られず、アルミニウムクラッド製品として、実用上満足し得るものではないことが明らかとなったのである。加えて、そのようなクラッド圧延により、クラッド製品を得ることが出来た場合にあっても、そこで得られたクラッド材には、フクレの発生やクラッド率分布のばらつき等の問題が内在していることが、確認されたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−034289号公報
【特許文献2】特開平3−027884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、アルミニウムクラッド材の界面の接合性を向上させることが出来、その結果、クラッド材の品質向上を実現し、更には従来技術では製造が困難な材質の組合せからなるクラッド材の製造をも可能とするアルミニウムクラッド材の改良された製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、かかる課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、アルミニウムクラッド材の製造に際して、Al心材及びAl皮材の重ね合わせられる面に、多数の溝や穴の如き凹所を設けると共に、更に0.02〜5.0mmの厚さを有し、且つMg含有量が0.7質量%以下のアルミニウム材質のAlシートが、前記Al心材と前記Al皮材との接合界面に介在するようにして、クラッド圧延することにより、それらAl心材とAl皮材との界面の接合性を効果的に向上せしめることが出来、またクラッド材の品質向上に加えて、従来では製造が困難であった材質の組合せの材料からなるクラッド材にあっても、安定した製造が可能となることを見出したのである。
【0010】
そして、本発明にあっては、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl心材の片面若しくは両面に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるAl皮材を重ね合わせて積層せしめ、その得られた積層物を熱間圧延することにより、それらAl心材とAl皮材とが接合、一体化されてなるアルミニウムクラッド材を製造するに際して、それらAl心材とAl皮材の重ね合わせ面に、深さが0.1〜5.0mmであり、開口部の大きさが0.1〜5.0mmである複数の凹所を、それらの開口部間の距離が25mm以内となるようにして、それぞれ配設すると共に、それら凹所の設けられたAl心材とAl皮材との重ね合わせ面間に、Mg含有量が0.7質量%以下のアルミニウム材質からなる、厚さが0.02〜5.0mmのAlシートを介在せしめた形態において、前記積層物を構成し、かかる積層物に対して熱間圧延を実施するようにしたことを特徴とするアルミニウムクラッド材の製造方法にある。
【0011】
なお、かかる本発明に従うアルミニウムクラッド材の製造方法の好ましい態様の一つによれば、前記凹所が、少なくとも一方向に互いに平行に延びる複数条の溝にて構成され、かかる溝の溝幅が、前記開口部の大きさに相当するように構成されている。
【0012】
また、本発明に従うアルミニウムクラッド材の製造方法の好ましい態様の他の一つによれば、前記凹所が、互いに独立して形成された複数個の穴にて構成され、かかる穴の円相当径が、前記開口部の大きさに相当するように構成されている。
【0013】
さらに、本発明にあっては、有利には、前記Alシートが、純アルミニウム又はアルミニウム含有量が99.0質量%以上のアルミニウム材質にて構成されている。
【0014】
加えて、本発明に従うアルミニウムクラッド材の製造方法の別の望ましい態様の一つによれば、前記Al心材と前記Al皮材との間に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる板状のAl中間材が、更に介在せしめられると共に、該Al心材と該Al中間材とが重ね合わされる側のそれぞれの面及び該Al中間材と該Al皮材とが重ね合わされる側のそれぞれの面の少なくとも何れか一方の重ね合わされる側のそれぞれの面に、前記複数の凹所を設け、そしてその凹所が設けられた重ね合わせ面間に、前記Alシートを配置せしめてなる形態において、前記積層物が構成されている。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明に従うアルミニウムクラッド材の製造方法にあっては、Al心材及びAl皮材の重ね合わされる面に、それぞれ、所定の溝や穴の如き凹所を多数設け、そしてMg含有量が0.7質量%以下のAlシートがそれらAl心材とAl皮材との界面に介在せしめられてなる形態において、クラッド圧延が行われることとなるところから、それらAl心材とAl皮材に設けられた多数の溝や穴の如き凹所の存在とAlシートの機能に基づいて、Al心材とAl皮材とを機械的にグリップするようにすることにより、圧延途中でのAl皮材の剥離を効果的に防止しつつ、Alシートの機能によってAl心材とAl皮材との界面接合を有利に図り得ることとなったのである。
【0016】
すなわち、本発明において、Al心材及びAl皮材の重ね合わされる面にそれぞれ設けられる所定の凹所、例えば溝深さが0.1mm〜5.0mm、溝幅が0.1mm〜5.0mmの溝、或いは円相当径が0.1mm〜5.0mmとなる大きさにおいて開口する穴と、そのようなAl心材とAl皮材の間に配されるAlシートとは、クラッド圧延途中でのAl皮材の剥離を有利に抑制乃至は防ぐ機能を有し、加えてAlシートは、Al心材とAl皮材との界面接合を促進する機能を有しているのである。そして、このような本発明の構成によれば、Alシートに軟らかい材質を用いているために、クラッド圧延初期において、Alシートが、Al心材やAl皮材にそれぞれ設けた多数の凹所に容易に入り込むようになる。そのため、それら凹所に入り込んだAlシートが、Al心材とAl皮材とを機械的にグリップするようになるところから、クラッド圧延時に界面に加わるせん断力に効果的に耐えることが出来、特に界面の接合が充分でない圧延途中の段階におけるAl皮材の剥離を有利に防ぐことが出来ることとなる。そして、クラッド圧延が進展すると、Al心材やAl皮材及びAlシートの伸長に伴い、それぞれの表面の酸化皮膜の破壊が起こるようになるが、その際、Alシートに軟らかい材質を用いているため、上述した酸化皮膜の破壊により露出したAl皮材及びAl心材とAlシートの金属表面同士が直ちに強く押し当てられ、以て効果的に接合され得るのである。
【0017】
これに対して、従来の製造方法の如く、Al皮材やAl心材に溝や穴の如き凹所を設けず、単にAlシートを接合界面に敷いただけでは、Al皮材やAl心材をグリップして、クラッド圧延途中での界面の剥離を防ぐ効果は、充分に得られないが、本発明の如く、溝や穴の如き凹所を設けたAl心材とAl皮材との間にAlシートを介在せしめることで、上述した機能によって、従来技術では製造が困難なMg含有量が多い材質の材料でも、容易にクラッド圧延することが出来るようになったのである。しかも、それらAl心材やAl皮材に設けられた多数の溝や穴等の凹所にAlシートが食い込むことで、それら心材と皮材との界面での摺動が効果的に抑えられ、以て心材と皮材が一体となって伸長せしめられるようになるところから、クラッド率の分布が大きく改善される効果が、有利に得られることとなる。
【0018】
従って、本発明に係るアルミニウムクラッド材の製造方法の採用によって、アルミニウムクラッド材の各積層材間の界面の接合性を有利に向上させることが出来ることとなり、従来では製造が困難であった組合せのクラッド材質のクラッド材の製造が可能となったことに加え、フクレ発生の抑制やクラッド率分布の改善といったクラッド材の品質向上が、有利に達成され得たのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に従うアルミニウムクラッド材の製造方法に従って、Al心材とAlシートとAl皮材との積層物をクラッド圧延したときのAlシートの変化の形態を示す模式図の一つである。
図2図1とはAl心材及びAl皮材における凹所の配設形態の異なる積層物をクラッド圧延したときのAlシートの変形形態の他の一例を示す模式図である。
図3】本発明において用いられるAl心材(Al皮材)の重ね合わせ面の平面形態の一例を示す模式図である。
図4】本発明において用いられるAl心材(Al皮材)の重ね合わせ面の平面形態の他の一例を示す模式図である。
図5】本発明において用いられるAl心材(Al皮材)の重ね合わせ面の平面形態の更に他の例を示す模式図である。
図6】本発明において用いられるAl心材(Al皮材)の重ね合わせ面の平面形態の更に別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここにおいて、本発明は、クラッドされるべきAl心材とAl皮材の重ね合わされる面に、それぞれ、所定の凹所、例えば多数の溝或いは穴を設ける一方、それらAl心材とAl皮材との間に、Mg含有量が0.7質量%以下のアルミニウム材質からなるAlシートを介在させてなる形態において、クラッド圧延を行うところに、大きな特徴を有しているのである。
【0021】
すなわち、図1図2に模式的に示されるように、Al心材2とAl皮材4との重ね合わせ面、換言すればそれらの接合面に、それぞれ、所定サイズの溝や穴の如き凹所8の複数を設け、更にそれらAl心材2とAl皮材4の接合界面に、所定のAlシート6を介在せしめて、積層体10を構成して、それをクラッド圧延することによって、そのようなクラッド圧延の初期段階において、圧下が加えられた際に、軟らかい材質であるAlシート6が、容易に変形し、それらAl心材2とAl皮材4の両方に設けた複数の凹所8の空間内に入り込み、そこを埋めるようになるのである。なお、図2に示される模式図においては、凹所8が大きな形状において形成され、圧延によって、一方の凹所8内に他方の凹所8,8間に位置する部位が入り込んで、図示の如くAl心材2とAl皮材4とが嵌合してなる形態において、接合せしめられる構造となっている。そして、このようなAlシート6の圧延時の圧下作用による変形乃至は流動によって、Al心材2とAl皮材4とがAlシート6によって機械的にグリップされるようになり、それらの界面の接合が進展していない圧延途中の段階においても、圧延時に界面に加わるせん断力に耐えることが可能となるのであり、以て皮材4が剥離することなく、圧延を進行せしめることが可能となるのである。しかも、そのようなAlシート6の存在によって、Al心材2とAl皮材4との間の界面接合が、効果的に促進せしめられることとなるのである。
【0022】
ところで、このような本発明において用いられるAl心材2やAl皮材4にそれぞれ設けられる複数の凹所8としては、公知の各種の形態のものを採用することが可能ではあるが、有利には、溝形状や穴形状において形成されることとなる。そこで、穴の形状としては、円形形状の他、三角形状、矩形形状等の多角形形状等が採用され得、また溝形状としては、その断面が三角形状や矩形形状、波形形状、U字形状を呈するものが採用されることとなる。更に、そのような凹所8のAl心材2やAl皮材4の重ね合わせ面(接合面)における配設形態にあっても、特に限定されるものではなく、その平面視において、規則的な配列形態の他、不規則な配列形態であっても、何等差し支えない。例えば、かかる凹所8として、所定深さの穴を設ける場合にあっては、Al心材2やAl皮材4の重ね合わせ面の平面視において格子状配置や千鳥状配置等の配置形態が採用され、また溝を設ける場合にあっては、同様な平面視において、少なくとも一方向に互いに平行に延びる複数条の溝の形態において設けられることとなる。そして、そのような複数条の溝は、具体的には、それぞれ一方向に延びる複数条の溝が互いに平行に所定間隔を隔てて設けられてなる形態の他、複数条の溝が異なる二方向に互いに所定の間隔を隔てて互いに平行に設けられることによって、直角に或いは傾斜して交差する形態において、またそれら複数条の溝がそれぞれ異なる方向に延びるように設けられて、不規則な配設形態において、設けられるようにすることも可能である。更には、それら穴と溝が混合して、凹所8として配設されてなる形態も採用可能である。
【0023】
なお、本発明に従うAl心材2とAl皮材4とに設けた複数の凹所8は、それらAl心材2とAl皮材4との間に配置したAlシート6がそこに入り込むことによって、それらAl心材2とAl皮材4をグリップする効果を発揮するものであって、そこで、Al心材2とAl皮材4の凹凸が重なり合うことは必ずしも必要では無いが、図2に示される如く、凹凸が重なるように凹所8を設けることで、Al心材2とAl皮材4のグリップ力を、より効果的に得ることが出来ることとなる。
【0024】
特に、本発明において、クラッド率分布の改善効果は、Al心材2とAl皮材4に設けられた凹所8の配設位置や、その配設形態等の影響を受け、例えば図3に示される如く、Al心材2やAl皮材4の幅と同じ長さの多数の溝12を、凹所8として、圧延方向に直角な方向に設けた場合においては、それら心材2と皮材4との界面での圧延方向での摺動が、効果的に抑えられ得ることとなって、圧延方向のクラッド率の分布が、良好に改善され得るようになる。なお、ここで、溝12は、理解を容易にするために、1本の線にて表されており、他の図においても、溝は1本の線にて表すこととする。また、図4に示されるように、Al心材2とAl皮材4の重ね合わせ面に、それぞれ、多数の穴(ここでは丸穴)14を設けた場合や、図5に示される如く、圧延方向及びそれと直交する方向の二方向に多数の溝12a,12bを凹所8としてそれぞれ、同方向の溝は互いに所定の間隔を隔てて設けて、網目構造とした場合、或いは図6に示される如く、圧延方向に対して傾斜して、例えば45°の方向に多数の溝16を互いに平行に設けた場合等においては、それら心材2と皮材4との界面での、圧延方向に加えて、幅方向の摺動が効果的に抑制され、以て圧延方向及び圧延方向と直交する方向におけるクラッド率の分布が、良好に改善されることとなるのである。
【0025】
また、本発明において用いられるAl心材2とAl皮材4の重ね合わせ面にそれぞれ形成される複数の凹所8は、その深さが0.1mm〜5.0mmであり、その開口部の大きさが0.1mm〜5.0mmであるサイズにおいて、構成されている。従って、そのような凹所8が穴である場合においては、その円相当径が、凹所8の幅に相当し、0.1mm〜5.0mmの大きさにおいて設けられることとなり、また溝である場合には、その溝幅が凹所8の開口部の大きさに相当するように、0.1mm〜5.0mmの大きさで構成されている。そして、かかる凹所8の深さが0.1mm未満となると、Alシート6が凹所8を埋めることで得られるAl心材2とAl皮材4のグリップ力が不足し、圧延時に界面に加わるせん断力に耐えられなくなって、Al皮材4が剥離する恐れを生じる。加えて、Al心材2とAl皮材4との間の摺動を抑えることが困難となって、クラッド率分布の改善効果を得ることも出来なくなる問題を生じる。また、凹所8の深さが5.0mmを超えるようになると、Al心材2とAl皮材4のグリップ力が飽和するようになることに加えて、Alシート6にて凹所8を完全に埋めることが出来なくなり、その結果、未接合部が発生して、一部でフクレが発生する問題を惹起する恐れがある。更に、凹所8の開口部の大きさが0.1mm未満となると、Al心材2とAl皮材4のグリップ力が不足し、圧延時に界面に加わるせん断力に耐えられず、Al皮材4が剥離する恐れがあることに加えて、Al心材2とAl皮材4の摺動を抑えることが出来ず、クラッド率分布の改善の効果を得ることが出来なくなる。一方、凹所8の開口部の大きさが5.0mmを超えるようになると、Al心材2とAl皮材4のグリップ力が不足し、圧延時に界面に加わるせん断力に耐えることが困難となって、Al皮材4が剥離する恐れがある。
【0026】
さらに、本発明において用いられるAl心材2やAl皮材4の重ね合わせ面にそれぞれ設けられる複数の凹所8の間隔、例えば、溝12,12a,12b,16の間隔や、穴14の間隔は、主としてAl皮材4や後述するAl中間材の積層時の厚さやそれらの材質、更には凹所(溝12,12a,12b,16や穴14等)のサイズに応じて、適宜に決定されることとなるが、本発明にあっては、重ね合わせ面の平面視において、25mm以下の間隔において、凹所8(溝12,12a,12b,16や穴14)が設けられることとなる。なお、この凹所8の間隔が25mmを超えるようになると、Alシート6が、そのような凹所8を埋めることによって得られるAl心材2とAl皮材4のグリップ力が不足し、圧延時に界面に加わるせん断力に耐えられなくなり、皮材4が剥離する恐れがある。また、かかる凹所8の間隔の下限は、そのような凹所8の形状やサイズによって適宜に選定されるところであって、例えば、凹所8として、横断面形状が三角形や波形である溝(12,12a,12b,16)を設ける場合にあっては、その間隔を0とすることも可能である。
【0027】
なお、かくの如き本発明に従う、溝や穴の如き凹所8を、Al心材2やAl皮材4の重ね合わせ面にそれぞれ形成するには、公知の各種の手法が適宜に採用され得るところであって、例えばフライス加工やエンドミル加工、ドリル加工、シェーパー加工等と称される切削加工や、プレス加工等によって、目的とする凹所8が、常法に従って設けられることとなる。
【0028】
また、本発明に従って、上述の如き凹所8を設けたAl心材2とAl皮材4との重ね合わせ面間に介在せしめられるAlシート6は、Mg含有量が0.7質量%以下であるアルミニウム材質にて構成されている必要がある。これに反して、このAlシート6におけるMg含有量が、0.7質量%を超えるようになると、Alシート6の強度が高くなり、Al心材2やAl皮材4に設けた凹所8を完全に埋めることが出来なくなって、未接合部が発生する恐れがあることに加えて、Alシート6の酸化皮膜が強固となり、接合の妨げとなる。なお、このAlシート6を与えるアルミニウム材質のその他の成分としては特に限定されるものではないが、強度が低い材質の方が、前述の如く、Al皮材4やAl心材2に対して、直ちに強く押し当てられて、接合されるようになるところから、純アルミニウムやアルミニウム含有量が99.0質量%以上のアルミニウム材質にて構成されていることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明において用いられるAlシート6の厚さは、クラッド構成材の中でも、特にAl皮材やAl中間材の積層時の厚さや凹所の形状等に応じて、適宜に決定されることとなるが、それらに関係なく、本発明にあっては、0.02〜5.0mmの厚さが採用されることとなる。なお、かかる厚さが0.02mm未満であると、クラッド圧延の初期に、Alシート6がAl心材2やAl皮材4に設けた凹所8に食い込んだ際に破れてしまい、それらAl心材2やAl皮材4をグリップする効果が得られず、圧延途中で皮材が剥離する恐れがあるからである。また、かかる厚さが5.0mmを超えるようになると、圧延時に生じるせん断力によって、Alシート6が優先して伸張するようになり、その結果、Al心材2とAl皮材4が一体となって伸張することが出来ず、クラッド率分布の改善効果が得られなくなる。更に、Al心材2とAl皮材4に設けた凹所8による凹凸が重なり合わない形態の場合(図1参照)においては、Alシート6の厚みは、Al心材2とAl皮材4に設けた凹所8の深さ以上であることがより好ましく、一方Al心材2とAl皮材4に設けた凹所8による凹凸が重なる形態(図2参照)においては、所定の範囲内において、Alシート6の厚みを薄くすることも可能である。
【0030】
そして、かくの如きAl心材2及びAl皮材4に設けた凹所8やAlシート6の機能をより一層向上させるには、Al皮材4、Al心材2及びAl中間材やAlシート6における酸化皮膜を、熱間クラッド圧延に先立って、酸溶液又はアルカリ溶液によって化学的に破壊、除去しておくことが有効である。この酸溶液又はアルカリ溶液による酸化皮膜の破壊・除去は、一般的に、エッチング処理と呼ばれているが、本発明におけるAl皮材4、Al心材2及びAl中間材やAlシート6等のエッチング処理には、フッ酸、硫酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の酸やアルカリの水溶液の中から、材質に応じて適切なものが選択され、またエッチングによって生ずるスマット除去のために、硝酸等も用いられる場合もある。そして、このエッチング処理によって、酸化皮膜が破壊、除去されたAl皮材4、Al心材2及びAl中間材やAlシート6等の表面には、そのようなエッチング処理後に、直ちに、自然酸化皮膜が形成されるようになるが、素材製造時に形成された酸化皮膜に比べて、薄く、脆いために、熱間クラッド圧延時の圧下力によって破壊され易く、それ故に、エッチング処理を施していないものに比べて、Al心材2やAl皮材4及びAlシート6との接合性を向上せしめることが可能となる。また、このようなエッチング処理の要否は、クラッド圧延されるべき材料の材質や状態によって適宜に決定され、例えば、アルミニウム含有量が99.0質量%以上のアルミニウム材質からなる材料の場合の他、一般的に面削が施されるAl心材2や面削が施されたAl皮材4及びAl中間材においては、エッチング処理を不要とすることも出来る。
【0031】
ところで、かかる本発明に従って、所定の凹所8が配設され、またAlシート6を重ね合わせ面に介在せしめて、熱間クラッド圧延されるAl心材2やAl皮材4は、何れも、公知のアルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状形態の材料であって、例えば、JIS呼称の1000系アルミニウムや2000系〜8000系の各種のアルミニウム合金を、その材質とするものであるが、特に、本発明にあっては、従来からクラッド材の製造が困難とされていたJIS呼称の2000系、5000系、6000系、或いは7000系のアルミニウム合金からなる心材や皮材を用いて、クラッド材を製造することが可能となるのである。そして、このようなアルミニウム材質において、Al皮材4及びAl心材2には、異なる材質が選択されることとなる。また、それら心材や皮材の材質として採用されるアルミニウム又はアルミニウム合金は、目的とするアルミニウムクラッド材の用途に応じて適宜に選定されるところであって、例えば、熱交換器等に用いられるブレージングシートにあっては、Al−Si系アルミニウム合金からなるろう材にて構成されるAl皮材が用いられ、これに、Al−Mn系アルミニウム合金等からなるAl心材が組み合わされて、クラッド圧延されることとなる。
【0032】
また、本発明に従って、アルミニウムクラッド材を製造するに際して、熱間クラッド圧延の施される積層物を構成するAl皮材4やAl心材2に凹所形成加工を施す前の形態としては、一般に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる所定厚さの板状材料が用いられ、例えば、Al心材2としては、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるアルミニウムスラブ(厚肉の板状ブロック)に面削等の加工を施して、所定厚さとしたものが用いられ、またAl皮材4にあっては、上記のアルミニウムスラブを熱間圧延して得られた板材が用いられることとなる。
【0033】
さらに、本発明において用いられるAl皮材4の他の形態としては、アルミニウムスラブから切り出した厚板で形成されていることである。更には、その接合界面を機械加工によって平滑化してもよい。
【0034】
更にまた、本発明にあっては、Al心材2とAl皮材4に凹所8を設け、そしてそれらの重ね合わせ面間に、Alシート6を介在させて得られる積層物10を用いて、熱間クラッド圧延が行われる他、Al皮材4とAl心材2との間に、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなり、それら皮材4や心材2とは材質の異なる板状のAl中間材を少なくとも一つを介装せしめてなる積層物に対しても、本発明を適用することが可能である。例えば、熱交換器用アルミニウムクラッド材においては、Al皮材4とAl心材2との間に耐食性を向上させる目的で、犠牲陽極層を与えるAl−Zn系アルミニウム合金からなる板状のAl中間材が介在せしめられているのであるが、そのような構成のアルミニウムクラッド材においても、本発明が、有利に適用されることとなる。このようなAl皮材4、Al中間材、Al心材2で構成されるアルミニウムクラッド材においては、それら皮材4と中間材とが重ね合わされる面及び中間材と心材2とが重ね合わされる面に、本発明に従う溝或いは穴の如き凹所8を設け、それら界面にAlシートを介在せしめて、熱間クラッド圧延されることにより、本発明に従う効果が有利に発揮され得るのである。
【0035】
そして、本発明に従って、目的とするアルミニウムクラッド材を製造するに際しては、上述の如きAl心材2とAlシート6とAl皮材4との積層物、或いはAl心材2とAlシート6とAl中間材とAlシート6とAl皮材4との積層物に対して、従来と同様にしてクラッド圧延が施されることとなるのであるが、その際、かかる積層物は、その外周部において、部分的に固定された後、或いは固定されることなく、熱間クラッド圧延が施されることとなる。
【0036】
そこにおいて、例えば、そのような積層物を構成するAl皮材、Alシート、Al中間材及びAl心材を、それらの外周部において部分的に固定するための手段としては、一般に、溶接が有利に採用されるところであるが、これに限られるものではなく、ろう付けやFSW(摩擦撹拌接合)による固定(接合)方式や、アルミ製金具による締結方式等も、適宜に採用可能である。また、そのような外周部における部分的な固定は、Al皮材とAl心材の接合界面にAlシートやAl中間材を介在せしめた状態下、それらの外周部の一部において接合界面の周縁部が位置する部位を少なくとも含む部分に対して実施され、これによって接合界面は、かかる固定部位を除いて外部の大気中に連通されてなる形態とされている。更に、このような外周部における部分的な固定は、所定のAl中間材が、Al皮材とAl心材との間に介在せしめられる場合においても同様に、Al皮材とAlシートとAl中間材との間や、Al中間材とAlシートとAl心材との間に対して適用され、それぞれの接合界面が外部の大気中に連通せしめられてなる形態において、クラッド圧延が実施される。
【0037】
なお、本発明にあっては、上述の如き積層物における部分的な固定に代えて、例えば、かかる積層物を構成するAl皮材、Alシート、Al心材(又は、Al皮材、Alシート、及びAl中間材、或いはAl中間材、Alシート、及びAl心材)を相互に固定することなく、それらの接合界面を大気に連通せしめてなる形態下において、積層物をクラッド圧延に供することも可能である。尤も、積層物を構成する各積層材料がバラバラの状態では、加熱工程等での取り扱い性に問題を生じるようになることから、例えば、積層物を適当な締結バンドにて固定してなる形態において加熱を行い、そしてクラッド圧延の直前に、締結バンドを取り外して、無固定の状態において圧延ロールにセットして、クラッド圧延を開始するようにすることも可能である。
【0038】
このように、本発明に従って、重ね合わされてクラッドせしめられるAl皮材とAl心材の接合界面たる重ね合わせ面に溝或いは穴の如き凹所の複数を設けると共に、それらAl皮材とAl心材との重ね合わせ面間に、所定のAlシートを配してなる形態において、クラッド圧延することにより、圧延時に接合界面に加わるせん断力によって起きる皮材の剥離を抑制し、且つ圧延時の心材と皮材の界面の接合性が効果的に向上せしめられることとなるのであり、これによって、従来では製造が困難であったクラッド材の製造も可能となり、以て、強度、成形性、耐食性等、両立し難い特性を併せ持った材料の設計が可能となったのである。また、クラッド率分布の精度向上といった品質改善効果も得られることから、クラッドせしめられる材料の歩留まり向上が有利に実現され得て、製造コストを低下せしめることが可能となったのである。そして、本発明に従って得られるクラッド材は、上述の如き特性が付与されていることにより、輸送機器の構体や駆動系及び制御系部品、電子機器用多機能材料、熱交換器用高性能材料等、多分野において、幅広い活用が期待されるものである。
【0039】
以上、本発明に従うアルミニウムクラッド材の製造方法の実施形態について、種々説明してきたが、本発明が、そのような例示の具体的な態様に係る詳細な記述によって何等限定的に解釈されるものでは決してなく、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが理解されるべきである。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことも、また、理解されるべきである。
【0041】
−実施例1−
先ず、下記表1に示される各種のアルミニウム材質(A〜G)からなるAl鋳塊を、それぞれ、連続鋳造法により、従来と同様にして作製した後、その得られたAl鋳塊を用いて、Al心材、Al中間材及びAl皮材を、それぞれ準備した。そこで、Al心材は、かかる連続鋳造法により造塊されたAl鋳塊(スラブ)を、従来方法と同様に面削して、厚さ:120〜190mm×幅:200mm×長さ:300mmのサイズにおいて製造し、またAl皮材やAl中間材については、それぞれのアルミニウム材質からなるAl鋳塊の鋳造後において、厚さ:10〜40mmまで熱間圧延せしめ、そして、幅:200mm×長さ:300mmの寸法に切断することにより、製造した。
【0042】
次いで、それら準備されたAl心材、Al中間材及びAl皮材のそれぞれ重ね合わされる面(Al中間材はその両面)に対して、マシニングセンタを用いてフライス加工を行い、圧延方向に対して90°又は45°方向に延びる、表2又は表3に記載の如き溝深さ:0.06〜5.5mm、溝幅:0.06mm〜6.0mmを有する、断面形状が三角形状の多数の溝を、0mm〜28.0mmの等間隔に設けた。
【0043】
また、Alシートについては、下記表1に示される各種アルミニウム材質(H〜K)のAl鋳塊を、連続鋳造法により作製し、その得られた鋳塊の表面を面削した後、厚さ:3mmまで熱間圧延し、そして端部の耳割れ部を削除することにより、幅:250mmの熱延板を作製した。次いで、冷間圧延、中間焼鈍を行い、表2又は表3に記載の如き厚さ:0.3mm〜2.5mmまで、冷間圧延を実施した。また、0.3mm未満の厚さのAlシートについては、前記の0.3mmの厚さまで冷間圧延したものを、更に、表2又は表3に記載の厚さ:0.01mm〜0.1mmまで箔圧延し、更にその後、焼鈍してから、それぞれの厚さの箔について、幅:200mm、長さ:300mmに切断して、目的とするAlシートを作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
そして、上記で得られたAl皮材については、必要に応じて、表面処理を、次のようにして実施した。即ち、Al皮材の接合面については、熱間圧延のまま(但し、アセトンによる脱脂処理と穴及び溝加工を実施)、5%水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリエッチング処理を施した。
【0046】
次いで、かくの如き各種のAl皮材、Al心材、Alシート及びAl中間材を用いて、表2又は表3に示される組合せにて積層し、その得られた積層物の各角部における幅方向及び長さ方向のそれぞれ長さ30mmずつの部分を溶接して、各積層材料を相互に固定せしめた。なお、この部分的な溶接固定により、各積層材料の接合界面は、それぞれ大気に連通せしめられてなる状態とされている。その後、かかる積層物を、480℃に加熱して、圧延ロール間を複数回パスさせることからなる熱間クラッド圧延を実施した。なお、この熱間クラッド圧延における圧下率は、積層物の厚みに対して0.5%の比率から開始して、圧下量を順次増大させながら、10回目のパスにおいて、圧下率が10%となるようにして実施した。また、圧延は、1パス毎に圧延方向を反転させるリバース圧延方式にて実施した。何れの材料においても、厚さ:3mmまでの熱間圧延を行い、端部の耳割れ部を削除してなる幅:150mmの熱間圧延板を、更に冷間圧延機にて、厚さ:1mmまで冷間圧延を行い、更にその後、400℃×2時間の軟化処理を施すことにより、目的とするクラッド材の製造を行った。なお、このクラッド材の製造過程において、熱間圧延操作の途中で顕著な皮剥がれを生じたものや、接合界面の未接合によって継続不能となったものにあっては、熱間圧延操作を途中で中止した。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
そして、このようにして得られた各種のアルミニウムクラッド材について、それぞれ、その外観を検査し、皮剥がれやフクレの発生状況を評価し、また皮材のクラッド率を測定し、更に総合評価を行って、それらの結果を下記表4〜表5に示した。また、クラッド材の幅方向中央の断面を圧延方向に沿って10点観察し、皮材と中間材の厚み及びクラッド材の厚みの測定結果から、クラッド率を計算した。そして、クラッド率分布の判定は、10点のクラッド率のばらつき(クラッド率の最大値−最小値)が、目標としたクラッド率の5%以下のものを「◎」とし、5%を超えて10%以下のものを「○」、10%を超えるものを「×」とした。更に、総合評価としては、圧延時の皮材剥離の有無とフクレ及びクラッド率分布の全ての点で問題がないものを「○」とし、一つでも問題があったものは「×」とした。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
かかる表2〜表3及び表4〜表5の結果より明らかな如く、本発明に従って得られたアルミニウムクラッド材No.1〜14においては、クラッド率の如何に拘わらず、厚さ1mmに至るまで良好にクラッド圧延することが出来ると共に、何れも、皮剥がれやフクレの発生は認められず、またクラッド率分布において優れていることが認められた。
【0053】
これに対して、本発明に従う凹所としての溝がAl皮材やAl心材に設けられておらず、且つAlシートをAl皮材とAl心材との間に敷いていないアルミニウムクラッド材No.15の場合にあっては、Al皮材とAl心材との接合が十分でなく、フクレの発生が確認された。加えて、皮材と心材の界面での摺動を抑えることが出来ず、クラッド率が大きくばらつくことを認めた。また、本発明に従うAlシートをAl皮材とAl心材との間に敷いていないアルミニウムクラッド材No.16の場合にあっては、Al皮材とAl心材との接合が充分でなく、フクレの発生が確認された。加えて、Al皮材とAl心材へのグリップ力が充分でなく、Al皮材とAl心材の界面での摺動を抑えることが出来ず、クラッド率が大きくばらつくことを認めた。また、Al皮材とAl心材に溝を設けず、界面にAlシートを敷いただけのアルミニウムクラッド材No.17の場合にあっては、それらAl皮材とAl心材をグリップする効果が弱く、更に接合性が悪い材質の組合せであるために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で大きく剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。
【0054】
また、AlシートのMg含有量が0.8質量%となるアルミニウムクラッド材No.18の場合にあっては、Alシートの強度が高く、Al皮材とAl心材に設けた溝にAlシートが充分に入り込まず、Al皮材とAl心材へのグリップ力が充分でなく、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。そして、アルミニウムクラッド材No.19の場合にあっては、Al皮材やAl心材に設けた溝の最大深さが5.5mmもあるために、Alシートが溝或いは穴を完全に埋めることが出来ず、フクレが一部に発生した。一方、Al皮材やAl心材に設けた溝の最大深さが0.06mmである、アルミニウムクラッド材No.20の場合にあっては、Al皮材とAl心材に設けた溝に入り込んだAlシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。
【0055】
そして、Al皮材やAl心材に設けた溝の幅が0.06mmである、アルミニウムクラッド材No.21の場合にあっては、Alシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。一方、Al皮材やAl心材に設けた溝の圧延方向の幅が6.0mmである、アルミニウムクラッド材No.22の場合にあっては、Alシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。また、Al皮材やAL心材に設けた溝の圧延方向の間隔が28.0mmである、アルミニウムクラッド材No.23の場合にあっては、Alシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。
【0056】
さらに、0.01mmの厚さのAlシートを用いたアルミニウムクラッド材No.24の場合にあっては、Al皮材とAl心材へのグリップ力が充分でなく、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で大きく剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。これに対して、厚さが5.5mmであるAlシートを用いたアルミニウムクラッド材No.25の場合にあっては、圧延時にAlシートが優先して変形し、Al皮材とAl心材とが一体となって伸長出来ず、その結果、クラッド率が大きくばらつくことを認めた。
【0057】
−実施例2−
先ず、前記表1に示される各種のアルミニウム材質(A〜G)からなるAl鋳塊を、それぞれ、連続鋳造法により、従来方法と同様にして製作した後、その得られたAl鋳塊を用いて、Al心材、Al中間材及びAl皮材を、実施例1と同様にして、それぞれ、準備した。
【0058】
次いで、それらAl心材、Al中間材及びAl皮材のそれぞれ重ね合わされる面に、下記表6又は表7に記載の如き穴深さ:0.06mm〜5.5mm、穴直径:0.06mm〜6.0mmを有する平底の丸穴を、通常の穴開け加工により、格子状に、1.0mm〜28.0mmの等間隔で設けた。そして、それら得られたものの中で、Al皮材については、必要に応じて、実施例1と同様の表面処理を実施した。
【0059】
また、Alシートについては、前記表1に示される各種のアルミニウム材質(H〜K)のAl鋳塊を、連続鋳造法により作製し、実施例1と同様の手順で、目的とするAlシートを作製した。
【0060】
そして、かくの如き各種のAl皮材、Al心材、Alシート及びAl中間材を用いて、表6又は表7に示される組合せにて積層し、実施例1と同様の方法で、溶接により各積層材料を相互に固定せしめ、圧延を実施した。
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
その後、このようにして得られた各種のアルミニウムクラッド材について、それぞれ、実施例1と同様にして、その外観を検査し、皮剥がれやフクレの発生状況を評価し、また皮材及び中間材のクラッド率を測定し、更に総合評価を行って、それらの結果を、下記表8〜表9に示した。
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
かかる表6〜表7及び表8〜表9の結果より明らかな如く、本発明に従って得られたアルミニウムクラッド材No.26〜33においては、クラッド率の如何に拘わらず、その厚さが1mmに至るまで、良好にクラッド圧延することが出来ると共に、何れも、皮剥がれやフクレ等の問題の発生は認められず、またクラッド率分布においても、優れていることが認められた。
【0067】
これに対して、本発明に従うAlシートをAl皮材とAl心材との間に敷いていないアルミニウムクラッド材No.34の場合にあっては、Al皮材とAl心材の接合が充分でなく、フクレの発生が確認された。加えて、Al皮材とAl心材へのグリップ力が充分でなく、Al皮材とAl心材の界面での摺動を抑えることが出来ず、クラッド率が大きくばらつくことを認めた。
【0068】
また、アルミニウムクラッド材No.35の場合にあっては、Al皮材やAl心材に設けた穴の深さが5.5mmもあるため、Alシートが穴を完全に埋めることが出来ず、フクレが一部に発生した。一方、Al皮材やAl心材に設けた穴の深さが0.06mmである、アルミニウムクラッド材No.36の場合にあっては、Al皮材とAl心材に設けた穴に入り込んだAlシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。また、Al皮材やAl心材に設けた穴の直径が0.06mmである、アルミニウムクラッド材No.37の場合にあっては、Alシートが穴に入り込むことによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。一方、Al皮材やAl心材に設けた穴の直径が6.0mmである、アルミニウムクラッド材No.38の場合にあっては、Alシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。また、Al皮材やAl心材に設けた穴の間隔が28.0mmである、アルミニウムクラッド材No.39の場合にあっては、Alシートによるグリップ力が充分でなく、そのために、Al皮材とAl心材の界面に生じるせん断力に耐えることが出来ず、熱間圧延の途中で剥がれが生じ、最後まで圧延することが出来なかった。
【符号の説明】
【0069】
2 Al心材 4 Al皮材
6 Alシート 8 凹所
10 積層体 12,12a,12b 溝
14 穴 16 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6