(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体式高周波発振器が出力する高周波の大きさに比例する信号に基づいて、前記半導体式高周波発振器が出力する高周波を増幅するフィードバック工程をさらに含む、請求項1に記載の医療用フィルターの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
実施の形態に係る医療用フィルターの製造方法で製造される医療用フィルターは、例えば血液又は血液製剤をろ過するためのフィルターであり、
図1、
図1のII方向から示した断面図である
図2、及び分解斜視図である
図3に示すように、非多孔質シート152、252、及び非多孔質シート152、252に挟まれたメインフィルター54を備える。なお、本開示において、「シート」とは「フィルム」も含む。また、医療用フィルターのろ過対象は、血液又は血液製剤に限定されず、種々の医療用溶液をろ過対象とすることが可能である。以下においては、ろ過対象が血液又は血液製剤である例を説明する。
【0019】
医療用フィルターは、メインフィルター54の上面に配置されたプレフィルター153、プレフィルター153の上面に配置されたフレームシート110、メインフィルター54の下面に配置されたポストフィルター253、及びポストフィルター253の下面に配置された流路確保シート107をさらに備えていてもよい。
【0020】
メインフィルター54の周縁四隅を含む位置の第1の溶着部56で、フレームシート110、プレフィルター153、メインフィルター54、ポストフィルター253、及び流路確保シート107が熱溶着されている。さらに、第1の溶着部56の外周における、プレフィルター153、メインフィルター54、及びポストフィルター253が存在しない部分を含む位置の第2の溶着部57で、非多孔質シート152、フレームシート110、流路確保シート107、及び非多孔質シート252が熱溶着されている。これにより、プレフィルター153、メインフィルター54、及びポストフィルター253が外部の空気に接触することが妨げられる。
【0021】
非多孔質シート152には、血液又は血液製剤の入口部材51が設けられている。入口部材51には、流路51aと開口51bが設けられている。また、非多孔質シート252には、血液又は血液製剤の出口部材55が設けられている。出口部材55には、流路55aと開口55bが設けられている。入口部材51から非多孔質シート152、252の間に送り込まれた血液又は血液製剤は、プレフィルター153、メインフィルター54、及びポストフィルター253でろ過され、出口部材55から排出される。
【0022】
熱可塑性シートである非多孔質シート152、252は、例えば、熱可塑性の軟質高分子からなる。熱可塑性の軟質高分子としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン;スチレン−ブタジエン−スチレンの共重合体若しくはその水添物;スチレン−イソプレン−スチレン共重合体若しくはその水添物等の熱可塑性エラストマー;並びにポリオレフィン、及びエチレン−エチルアクリレート等の軟化剤と熱可塑性エラストマーの混合物等が挙げられる。
【0023】
血液又は血液製剤をろ過するメインフィルター54は、例えば、連続する細孔を有するシート状の多孔構造体である。多孔構造体としては、例えば、不織布、織布、編布、及び繊維塊等の繊維状多孔質体;並びにスポンジ状多孔質体、多孔膜、及び粒子の焼結体等の三次元網目状連続細孔を有する非繊維状多孔質体が挙げられる。
【0024】
メインフィルター54が不織布の場合、その平均繊維直径は、例えば0.3μm以上3.0μm以下であり、好ましくは0.8μm以上2.5μm以下である。また、メインフィルター54がスポンジ状多孔質体である場合、その平均細孔径は、例えば1μm以上60μm以下であり、好ましくは2μm以上30μm以下であり、より好ましくは3μm以上20μm以下である。
【0025】
不織布及びスポンジ状多孔質体の材料としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ−4−メチルペンテン、セルロース、及びセルロールアセテート等を挙げられる。この中でも生産性の点及び入手のしやすさから、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリプロピレンは好ましい素材であり、特に不織布の場合には、ポリエステルが好ましい。ポリエステル系としては、特にポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0026】
第1の溶着部56で囲まれたメインフィルター54の有効濾過面積は、例えば15cm
2以上110cm
2以下である。メインフィルター54の形状は、例えば長方形であるが、特に限定されない。メインフィルター54が不織布からなる場合、不織布の有効利用の観点から長方形が好ましい。
【0027】
メインフィルター54としては、高誘電率多孔質体を30重量%以上含むものを用いることが好ましい。高誘電率多孔質体が30重量%より少ない場合、メインフィルター54における高誘電率多孔質体が寄与する割合が減り、医療用フィルターを製造する際に、高周波によるメインフィルター54の溶融が不十分となり、溶着された医療用フィルター装置の耐破裂性の低下、あるいは耐破裂性のバラツキが大きくなる、といった不具合が懸念される。メインフィルター54の高誘電率多孔質体が占める割合は、55重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましく、全てが高誘電率多孔質体であることがより更に好ましい。なお、高誘電率多孔質体とは、比誘電率が1.3以上の多孔質体をいう。
【0028】
血液又は血液製剤中の凝集物等を除去するプレフィルター153、及びポストフィルター253は、例えば、不織布、織布、編布、及び繊維塊等の繊維状多孔質体である。繊維状多孔質体の平均繊維直径は、例えば3μm以上50μm以下であり、好ましくは8μm以上36μm以下であり、より好ましくは10μm以上28μm以下である。例えば、プレフィルター153、ポストフィルター253が有する孔の直径は、メインフィルター54が有する孔の直径よりも大きい。
【0029】
繊維状多孔質体の材料としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ−4−メチルペンテン、セルロース、及びセルロールアセテート等が挙げられる。この中でも生産性の点及び入手のしやすさから、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリプロピレンは好ましい素材であり、特に不織布の場合には、ポリエステルが好ましい。ポリエステル系としては、特にポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
メインフィルター54、及びプレフィルター153、ポストフィルター253が、フィルター部材を構成している。
【0031】
熱可塑性シートであるフレームシート110は、矩形シート状であり、入口部材51の下方を挟んで対向配置された一対のリブ110aを有している。一対のリブ110aの内側にはスリット110bが形成されており、一対のリブ110aの外側には2つの開口部110cが形成されている。例えば、フレームシート110は、後述する流路確保シート107と同一形状である。フレームシート110の材料は、非多孔質シート152、252と同様である。
【0032】
熱可塑性シートである流路確保シート107は、矩形シート状であり、出口部材55の上方を挟んで対向配置された一対のリブ107aを有している。一対のリブ107aの内側にはスリット107bが形成されており、一対のリブ107aの外側には2つの開口部107cが形成されている。
【0033】
出口部材55の開口55bの幅L1に対して、流路確保シート107の一対のリブ107aは、スリット107bの幅L2が開口55bの幅L1の0.1倍〜2倍となるように形成されている。スリット107bの幅L2は、例えば0.5mm〜10mmであり、好ましくは1〜5mmである。また、流路確保シート107の開口部107cは、幅L5で形成されている。
【0034】
第1の溶着部56で囲まれたメインフィルター54の有効濾過面積に対するスリット107b及び2つの開口部107cの総面積の割合は、例えば30%〜97%であり、好ましくは50%〜96%であり、より好ましくは60%〜94%であり、さらに好ましくは80%〜91%である。この割合が30%未満の場合、血液又は血液製剤の回収率が損なわれる傾向にある。また、97%を超えると流路を確保するというリブ107aの機能が損なわれ、また、製造が困難になる傾向にある。
【0035】
流路確保シート107の厚さtは、例えば、非多孔質シート152の厚さと同程度である。流路確保シート107の厚さtが厚い程、スリット107bのスリット幅L2が同じであっても、より大きな流路を確保することになり、また、出口部材55の撓みによる閉塞の懸念が少なくなる。一方で、流路確保シート107の厚さtが厚い程、スリット107b内部の空間の増加により血液又は血液製剤のろ過後の内部残留量が増加する傾向がある。このため、流路確保シート107の厚さtは、例えば0.1mm〜3mmであり、好ましくは0.2mm〜2mmであり、より好ましくは0.2mm〜1.5mmである。
【0036】
流路確保シート107の材料は、非多孔質シート152、252と同様である。
【0037】
流路確保シート107がない場合、血液又は血液製剤をろ過する際に、入口側の陽圧と出口側の陰圧とによって可撓性の医療用フィルターに二重の力が作用し、例えばポストフィルター253と出口部材55が設けられた非多孔質シート252とが密着し、血液又は血液製剤の流れが阻害されて十分な流速が得られない場合がある。
【0038】
これに対し、流路確保シート107がある場合、血液又は血液製剤をろ過する際に、入口側の陽圧と出口側の陰圧とによって可撓性の医療用フィルターに二重の力が作用したとしても、少なくとも流路確保シート107のスリット107b両端のリブ107aによって、ポストフィルター253と出口部材55が設けられた非多孔質シート252との密着を抑制することが可能となる。そのため、血液又は血液製剤の流路が確保され、十分な流速が得られる。
【0039】
フィルター部材の比誘電率は、例えば1.3以上2.0以下、好ましくは1.4以上1.9以下、1.5以上1.9以下、より好ましくは1.58以上1.86以下、さらに好ましくは1.59以上1.80以下、よりさらに好ましくは1.60以上1.70以下である。比誘電率を1.3以上2.0以下とすることにより、高周波溶着によって医療用フィルターを製造する際に、スパークが発生しにくくなり、かつ、耐破裂性に優れた医療用フィルターを製造することが可能となる。
【0040】
フィルター部材の比誘電率が1.3未満であると、医療用フィルターを製造する際に、高周波溶着が困難となり、製造される医療用フィルターの耐破裂性が低下する傾向にある。また、比誘電率が2.0より大きいと、フィルター部材の高周波応答性が高くなり、溶着時の電流、電圧、及び溶着時間のわずかな違いによって溶着状態に変化が生じ、製造安定性が低下する傾向にある。
【0041】
フィルター部材は、例えば、極性官能基を有するポリマーで表面改質されることにより、比誘電率を上記の範囲内とすることが可能である。
【0042】
極性官能基を有するポリマーとしては、例えば水酸基、あるいはアミノ基等の官能基を有する高周波応答性の高いポリマーを用いることが好ましい。特に、血液の流れ性改善や白血球との親和性向上を目的として、非イオン性親水基と塩基性含窒素官能基を有するポリマーを用いることが好ましい。この場合、非イオン性親水基としては水酸基、アミド基、及びポリエチレンオキシド鎖などを挙げることができる。
【0043】
非イオン性親水基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ビニルアルコール(酢酸ビニルを重合して得られた高分子を加水分解することにより調製したもの)、メタクリルアミド、及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。上記モノマーの中でも、入手の容易さ、重合時の取り扱い易さ、白血球含有液の処理性能などの観点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0044】
塩基性含窒素官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、及び4級アンモニウム基等、並びにピリジル基、及びイミダゾル基等の含窒素芳香環基等が挙げられる。塩基性含窒素官能基を有するモノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、及び3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリル酸の誘導体、アリルアミン、p−ビニルピリジン、及び4−ビニルイミダゾール等の含窒素芳香族化合物のビニル誘導体、並びに上記のビニル化合物をハロゲン化アルキル等と反応させることにより得られる4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
比誘電率は、例えばASTM規格のD150−95に準じて測定する。比誘電率を測定する装置としては、Solartron社製126096型誘電体インピーダンス測定システム一式が使用可能である。サンプルホルダはガードリング付円板電極であり、主電極サイズは直径20mmを選択するとよい。例えば、測定室温は26±1℃、湿度は40±3%とする。
【0046】
測定サンプルは、フィルター部材の材料を直径25〜30mmの円にカットし、重量を測定して、密度が0.60g/cm
3になるように、サンプル全体を均一に圧縮する。圧縮した際のサンプル厚みは1.5〜2.5mmとなるように、必要枚数カットし、重ね合わせて調整する。密度を0.60g/cm
3に圧縮することが困難な場合は、事前に圧縮試験機を用い、サンプルを目標とするサンプル厚み以上の厚みに圧縮加工したものを、測定時に電極で挟み込み、密度が0.60g/cm
3となる厚みに圧縮調整して測定してもよい。
【0047】
比誘電率の測定は、周波数100kHzで行う。ただし、振動等で測定値がばらつく可能性があるので、100kHzを含む1MHzから10kHzまでの範囲で、異なる周波数毎に5点以上、より正確には10点以上測定してもよい。測定後、100kHzにおけるサンプルのキャパシタンス(C値)を読み取り、またその前後周波数のキャパシタンス曲線を確認し、100kHzにおけるC値に外部環境によるノイズが入っていないことを確認する。ノイズが入っており100kHzのC値が前後周波数のキャパシタンス曲線から外れていた場合はそのまま再測定する。サンプルのキャパシタンスC値を測定後、サンプルホルダからサンプルを取り出し、同じ電極間距離において空気のキャパシタンス(C
0値)を同様に測定する。100kHzにおける空気のC
0値に対するサンプルのC値から比誘電率を算出する。このような測定を、同一材料から少なくとも3サンプル、より確度を高めるためには5サンプルを作製し、各々1回測定し、その平均値を比誘電率とする。
【0048】
また、フィルター部材の誘電力率が0.0002以上であると好ましい。
【0049】
なお、断面図である
図4及び分解断面図である
図5に示すように、流路確保シート107及びフレームシート110は省略されてもよい。また、用途によっては、プレフィルター153、及びポストフィルター253も省略されてもよい。
【0050】
実施の形態に係る医療用フィルターの製造方法に用いられる高周波溶着装置は、例えば
図6に示すように、溶着される複数の熱可塑性シートを挟持する電極71、72を含む負荷回路300と、電極71に高周波電流を供給する電源回路100と、電源回路100と電極71、72を含む負荷回路の間のインピーダンスを整合する整合回路200と、を備える。
【0051】
対向する電極71、72のうち、電極72は、整合回路200を介して電源回路100に接続されている電源電極である。また、電極71は、アース電極である。
【0052】
電源回路100は、例えば、高周波電力を供給する半導体式高周波発振器1、高周波電力を増幅する増幅装置3、及び増幅装置3で増幅された高周波電力を検出する、電源回路100の出力側に設けられた高周波検出器4を備える。高周波検出器4は、半導体式高周波発振器1が出力する高周波電力の大きさに比例する信号を出力する。さらに、電源回路100は、高周波検出器4が出力した信号の値と、所定の閾値と、の差分に相当する強さを有する変調信号を生成する変調信号生成回路8と、半導体式高周波発振器1が供給する高周波電流と、変調信号生成回路8が生成した変調信号を掛け合わせ、増幅装置3に出力するミキサ2と、を備える。
【0053】
増幅装置3、高周波検出器4、変調信号生成回路8、及びミキサ2は、変調信号の大きさに応じて、半導体式高周波発振器1から出力される高周波電流を増幅するフィードバック回路として機能する。
【0054】
半導体式高周波発振器1を含む電源回路100は、10kW以下の高周波を一定時間出力することができる。なお、高周波検出器4は、電極71、72を含む負荷回路300からの反射波を検出することも可能である。
【0055】
整合回路200は、電源回路100から出力された高周波電力のインピーダンス及び位相を検出する整合用検出器5と、電源回路100から出力された高周波電流のインピーダンス及び位相を調整する整合器6と、を備える。整合器6は、例えば可変コンデンサを備える。整合器6には、整合器6を駆動する整合器駆動装置10が接続されている。また、整合器駆動装置10には、整合用検出器5が検出したインピーダンス及び位相に基づき、整合器駆動装置10を制御する整合器制御回路9が接続されている。
【0056】
整合回路200により、電源回路100の出力インピーダンスと、負荷回路300の入力インピーダンスと、が整合させて、反射波を抑制させる。
【0057】
実施の形態に係る医療用フィルターの製造方法は、例えば
図5に示したメインフィルター54、プレフィルター153、及びポストフィルター253を備えるフィルター部材を挟んだ2枚の熱可塑性シートである非多孔質シート152、252を、
図6に示した対向する電極71、72によって挟持し、電極71、72に半導体式高周波発振器1による高周波電圧を印加することによって、非多孔質シート152、252を溶着する工程を含む。ここで、半導体式高周波発振器1を含む電源回路100が、10kW以下の高周波を一定時間出力する。一定時間とは、例えば1.0秒以上10.0秒以下、好ましくは3.0秒以上6.0秒以下である。
【0058】
医療用フィルターの製造する際には、まず、例えば、
図5に示したようなプレフィルター153、及びポストフィルター253の材料、並びにメインフィルター54の材料を90mm以上145mm以下×75mm以上115mm以下の長方形に切断し、これらを積層した積層物をフィルター部材として作製する。次に、90mm以上145mm以下×75mm以上115mm以下の大きさにカットした、血液又は血液製剤の入口部材51及び出口部材55を有する非多孔質シート152、252を、フィルター部材を挟み込むように配置する。
【0059】
さらに、
図6に示したような半導体式高周波溶着装置を用意する。高周波溶着装置の最大高周波出力は例えば10kW以下、発振周波数は例えば40.46MHzである。また、高周波溶着装置は、例えば、温調機として高周波溶着電極71、72を取り付けている定盤内に20℃の冷却水を循環させる冷却水循環装置を備える。
【0060】
高周波溶着電極71、72は、長方形のフィルターが製造できる金型である。高周波溶着電極71、72の形状は、長方形であり、例えば、長辺の内周長さが70mm以上120mm以下、短辺の内周長さが55mm以上90mm以下であり、シール幅が3.0mm以上5.0mm以下であり、そのシール幅のうち平面部3.0mm以上5.0mm以下で、その内周側に曲率半径0.5mm以上1.0mm以下の丸み、外周側に曲率半径0.5mm以上1.0mm以下の丸みを有する形状である。
【0061】
次に、
図5に示したようなメインフィルター54、プレフィルター153、及びポストフィルター253を備えるフィルター部材を挟み込んだ非多孔質シート152、252を
図6に示したような高周波溶着電極71、72に挟み、高周波を印加する。この際、半導体式高周波発振器1が出力する高周波の大きさに比例する信号に基づいて、半導体式高周波発振器1が出力する高周波を増幅するフィードバック制御を行う。これにより、高周波出力を所望の値にすることが可能となる。
【0062】
さらに、半導体式高周波発振器1を含む電源回路100の出力側に設けられた高周波検出器4により、電極71、72を含む負荷回路300からの反射波を検出し、整合回路200により、電源回路100の出力インピーダンスと、負荷回路300の入力インピーダンスと、を整合させて、反射波を例えば100W以下に抑制させ、反射損失を抑制させる。
【0063】
またさらに、高周波印加時はサーボモータを用いて電極71、72間の距離を検知しながら2つの電極71、72の間隔を狭めてメインフィルター54、プレフィルター153、及びポストフィルター253を備えるフィルター部材を挟み込んだ非多孔質シート152、252を押圧することにより、製造される医療フィルターの厚みのばらつきが抑制される。間隔とは、例えば0.2mm以上10mm以下、好ましくは0.2mm以上4.0mm以下である。
【0064】
その後、高周波の印加を停止し、フィルター部材を挟み込んだ非多孔質シート152、252をそのまま電極71、72に挟んだ状態で冷却する。冷却後、溶着された医療用フィルターを電極71、72から取り出す。
【0065】
以上示した実施の形態に係る医療用フィルターの製造方法によれば、半導体式高周波発振器1を備える高周波溶着装置を用いることによって、耐圧性に優れた医療用フィルターを製造することが可能となる。また、実施の形態に係る医療用フィルターの製造方法によれば、半導体式高周波発振器1を備える高周波溶着装置を用いることによって、長期間にわたって個体差が少ない医療用フィルターを製造することが可能となる。
【実施例】
【0066】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0067】
(医療用フィルターの製造例)
プレフィルター、メインフィルター、ポストフィルターを104mm×84mm以下の長方形に切断し、これらを積層した積層物をフィルター部材として作製した。次に、104mm以下×84mm以下の大きさにカットした、血液又は血液製剤の入口及び出口を有する熱可塑性シートを、フィルター部材を挟み込むように配置した。
【0068】
次に、最大高周波出力3kW、発振周波数40.46MHz、また温調機として高周波溶着電極を取り付けている定盤内に20℃の冷却水を循環させる冷却水循環装置を備えた高周波溶着装置を用意した。高周波溶着電極は、長方形のフィルターが製造できる金型であった。高周波溶着電極の形状は、長方形であり、長辺の内周長さが85mm、短辺の内周長さが65mm以下であり、シール幅が3.5mmであり、そのシール幅のうち平面部2.5mm以下で、その内周側に曲率半径0.5mmの丸み、外周側に曲率半径0.5mmの丸みを有する形状であった。
【0069】
次に、フィルター部材を挟み込んだ熱可塑性シートを高周波溶着電極に挟み、高周波を印加した。高周波印加時はサーボモータを用いて2つの電極間の距離を検知しながら間隔を狭めた。その後、高周波の印加を停止し、フィルター部材を挟み込んだ熱可塑性シートをそのまま電極に挟んだ状態で3秒間冷却した。冷却後、溶着された医療用フィルターを電極から取り出した。
【0070】
(医療用フィルターの耐圧時間測定例)
医療用フィルターに一定圧力をかけ、破裂するまでの時間を測定することによって、医療用フィルターの耐圧性を評価した。まず、製造時にスパークが発生していない医療用フィルターの入口部材に軟質ポリ塩化ビニル製チューブを溶剤で接着した。さらに、軟質ポリ塩化ビニル製チューブに金属導管を接続し、この金属導管に圧気ラインを接続した。一方、出口部材には片止めした軟質ポリ塩化ビニル製チューブを接着させて密封した。
【0071】
次に、医療用フィルターを水温30℃の水中に沈め、医療用フィルターが水面上に出ないように水面に網状固定板を取り付け1分間待機した。その後、医療用フィルターを水中に沈めたままの状態で、導管から80kPaの空気を医療用フィルターに注入し、医療用フィルターの第1の溶着部から空気が漏れるまでの時間を測定した。時間は秒単位とし、その対数値を評価値とした。同様の操作を6回行い、評価値の平均値を耐圧時間Log秒とした。
【0072】
(実施例1)
1年間、医療用フィルターの製造用に稼働された半導体式高周波溶着装置によって、上記医療用フィルターの製造例に従って製造された医療用フィルターの各ロットから10個の個体をランダムに抽出した。次にロットごとの耐圧時間Log秒の平均値を計測した。その結果、表1に示すように、第1のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は2.36であり、第2のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.87であった。また、ロット間の耐圧時間Log秒の平均値のばらつき(標準偏差)は0.09であり、後述する真空管式高周波溶着装置を用いた比較例1よりも小さかった。したがって、真空管式高周波溶着装置と比較して、半導体式高周波溶着装置の方が安定して医療用フィルターを製造できることが示された。
【表1】
【0073】
(比較例1)
1年間、医療用フィルターの製造用に稼働された真空管式高周波溶着装置によって、上記医療用フィルターの製造例に従って製造された医療用フィルターの各ロットから10個の個体をランダムに抽出した。次にロットごとの耐圧時間Log秒の平均値を計測した。その結果、表2に示すように、第1のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は2.65であり、第2のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.69であった。また、ロット間の耐圧時間Log秒の平均値のばらつき(標準偏差)は0.14であり、半導体式高周波溶着装置を用いた実施例1よりも大きかった。
【表2】
【0074】
(参考例1)
1年間、同量の医療用フィルターの製造用に稼働された真空管の劣化が同程度の第1及び第2の真空管式高周波溶着装置のそれぞれによって、上記医療用フィルターの製造例に従って製造された医療用フィルターの各ロットから10個の個体をランダムに抽出した。次にロットごとの耐圧時間Log秒の平均値を計測した。その結果、表3に示すように、第1の真空管式高周波溶着装置で製造された第1のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.95であり、第2のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.92であった。また、第2の真空管式高周波溶着装置で製造された第1のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.80であり、第2のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.80であった。
【表3】
【0075】
(参考例2)
1年間、同量の医療用フィルターの製造用に稼働された第1及び第2の真空管式高周波溶着装置のそれぞれによって、上記医療用フィルターの製造例に従って製造された医療用フィルターの各ロットから10個の個体をランダムに抽出した。なお、1年前の時点において、第1の真空管式高周波溶着装置の方が、第2の真空管式高周波溶着装置よりも真空管が劣化していた。次にロットごとの耐圧時間Log秒の平均値を計測した。その結果、表4に示すように、第1の真空管式高周波溶着装置で製造された第1のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.75であり、第2のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.55であった。また、第2の真空管式高周波溶着装置で製造された第1のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は2.17であり、第2のロットにおける耐圧時間Log秒の平均値は1.94であった。
【表4】
【0076】
参考例2により、同期間、同量の医療用フィルターを製造しても、当初から真空管が劣化していた第2の真空管式高周波溶着装置で製造された医療用フィルターのほうが、耐圧時間Log秒が短くなる傾向にあることが示された。これに対し、半導体式高周波溶着装置は、真空管式と比較して半導体が劣化することはほとんどなく、耐圧時間Log秒が半導体式高周波溶着装置の劣化により短縮することはほとんどない。