(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491872
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】ロボットハンド及び多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20190318BHJP
B21D 5/02 20060101ALI20190318BHJP
B21D 43/04 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
B25J15/00 C
B21D5/02 U
B21D43/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-255291(P2014-255291)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112667(P2016-112667A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 一成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
(72)【発明者】
【氏名】塔鼻 理恵
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 浩基
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−254627(JP,A)
【文献】
特開平07−314044(JP,A)
【文献】
特開2014−046445(JP,A)
【文献】
実開平05−044489(JP,U)
【文献】
実開平06−039386(JP,U)
【文献】
特開2007−222971(JP,A)
【文献】
特開2014−208387(JP,A)
【文献】
米国特許第06722178(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02−43/04
B21J 13/10
B25J 13/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアームの先端部に回転可能に連結したリストを有しかつ曲げ加工機への素材の搬入、素材の曲げ加工の補助、及び前記曲げ加工機からの製品の搬出を行う多関節ロボットの先端部に装着され、素材又は製品を保持するロボットハンドにおいて、
前記多関節ロボットの先端部である前記リストに装着され、前記多関節ロボットの先端部の軸心の方向に平行に延びた取付部材を有したハンド本体と、
前記取付部材の先端部に固定された固定爪、及び前記取付部材に前記固定爪に対して接近離反する方向へ移動可能に設けられた可動爪を有し、素材又は製品の端部を把持するメカニカルグリッパと、
基端部が前記固定爪の先端部に揺動可能に連結された揺動リンクと、
前記揺動リンクの先端部に設けられ、素材又は製品の表面を吸着する吸着グリッパと、
前記固定爪と前記揺動リンクとの間に設けられ、前記揺動リンクを揺動させるための揺動アクチュエータと、
を具備し、
前記吸着グリッパは、前記揺動リンクの揺動によって、前記メカニカルグリッパの先端部よりも前記ハンド本体に対して離隔しかつ素材又は製品の表面を吸着するための吸着位置と、前記メカニカルグリッパの先端部よりも前記ハンド本体側に接近しかつ障害物及び素材との干渉を回避するための待避位置との間を移動できるように構成され、前記吸着グリッパを前記吸着位置に位置させたときに、前記吸着グリッパの軸心が前記リストの軸心に対して平行に偏心し、
素材エリアから素材を取出す際及び製品を製品エリアへ送出す際に、前記リストの軸心が鉛直になるように姿勢を保てることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記揺動アクチュエータは、一対の揺動エアシリンダであり、一対の前記揺動エアシリンダのシリンダ本体が一体的に接合され、一方の前記揺動エアシリンダにおける作動ロッドの先端部が前記揺動リンクに連結され、他方の前記揺動エアシリンダにおける作動ロッドの先端部が前記取付部材に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記吸着グリッパは、素材若しくは製品の表面をエアの吸引力によって吸着するバキュームパッド、又は磁性材料からなる素材若しくは製品の表面を磁力によって吸着する電磁石であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
曲げ加工機への素材の搬入、素材の曲げ加工の補助、及び前記曲げ加工機からの製品の搬出を行う多関節ロボットにおいて、
先端部に請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のロボットハンドが装着されていることを特徴とする多関節曲げロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工機への素材の搬入及び素材の曲げ加工の補助等を行う多関節ロボットの先端部に装着されかつ素材又は製品を保持するロボットハンド等に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボットの一部であるロボットハンドについて種々の開発がなされており、ロボットハンドの先行技術として特許文献1に示すものがある。そして、その先行技術に係るロボットハンドの具体的な構成は、次のようになる。
【0003】
多関節ロボットの先端部には、ハンド本体が装着されており、このハンド本体には、素材(板材)又は製品(曲げ加工済みの板材)の端部を把持するメカニカルグリッパが設けられている。また、メカニカルグリッパは、ハンド本体に固定された固定爪(第1把持部材)と、ハンド本体に固定爪に対して接近離反する方向へ揺動可能に設けられた可動爪(第2把持部材)とを備えている。そして、固定爪には、素材又は製品の表面を吸着する吸着グリッパが設けられており、この吸着グリッパの軸心(吸着グリッパの吸着面に直交する仮想線)は、多関節ロボットの先端部の軸心に対して傾斜している。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1の他に、特許文献2及び特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−254627号公報
【特許文献2】特開2014−46445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、素材エリア(素材をストックするエリア)にランダムに載置(積載)された複数の素材を曲げ加工機に搬入する場合には、素材エリア側に素材の取出箇所が複数存在することになる。また、多関節ロボットによって素材エリアから素材を取出す際には、吸着グリッパの軸心が鉛直(垂直)になるようにロボットハンドを適正な姿勢に保つ必要がある。そのため、素材エリア側に素材の取出し箇所が複数存在すると、素材エリア周辺において、多関節ロボットに複雑な動作を強いることになり、多関節ロボットと障害物との干渉を招き易くなって、多関節ロボットによる素材の搬入に支障が生じるという問題がある。
【0007】
同様に、曲げ加工機から搬出された製品を製品エリア(製品をストックするエリア)に仕分けして載置する場合にも、製品エリア側に製品の送出箇所が複数存在することになり、前述と同様に、製品エリア周辺において、多関節ロボットと障害物との干渉を招き易くなって、多関節ロボットによる製品の搬出に支障が生じるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のロボットハンド等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴は、
複数のアームの先端部に回転可能に連結したリストを有しかつ曲げ加工機への素材(板材)の搬入、素材の曲げ加工の補助、及び前記曲げ加工機からの製品(曲げ加工済みの板材)の搬出を行う多関節ロボットの先端部に装着され、素材又は製品を保持するロボットハンドにおいて、前記多関節ロボットの先端部
である前記リストに装着され
、前記多関節ロボットの先端部の軸心の方向に平行に延びた取付部材を有したハンド本体と、
前記取付部材の先端部に固定された固定爪、及び前記取付部材に前記固定爪に対して接近離反する方向へ移動可能に設けられた可動爪を有し、素材又は製品の端部を把持するメカニカルグリッパと、
基端部が前記固定爪の先端部に揺動可能に連結された揺動リンクと、前記揺動リンクの先端部に設けられ、素材又は製品の表面を吸着する吸着グリッパと、
前記固定爪と前記揺動リンクとの間に設けられ、前記揺動リンクを揺動させるための揺動アクチュエータと、を具備し、前記吸着グリッパは、
前記揺動リンクの揺動によって、前記メカニカルグリッパの先端部よりも前記ハンド本体に対して離隔しかつ素材又は製品の表面を吸着するための吸着位置と、前記メカニカルグリッパの先端部よりも前記ハンド本体側に接近しかつ障害物及び素材との干渉を回避するための待避位置(干渉回避位置)との間を移動できるように構成され、前記吸着グリッパを前記吸着位置に位置させたときに、前記吸着グリッパの軸心(前記吸着グリッパの吸着面に直交する仮想線)が
前記リストの先端部の軸心に対して平行に偏心
し、素材エリアから素材を取出す際及び製品を製品エリアへ送出す際に、前記リストの軸心が鉛直になるように姿勢を保てることを要旨とする。
【0010】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、「保持」とは、把持及び吸着を含む意であって、「把持」とは、強固に把持することの他に、軽く挟むように支えることを含む意である。また、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。更に、「多関節ロボットの先端部の軸心」とは、多関節ロボットの先端部
の回転軸心(回転の中心線)のことをいう。
【0011】
本発明の第1の特徴によると、前述のように、前記ロボットハンドにおいては、前記吸着グリッパを前記吸着位置に位置させたときに、前記吸着グリッパの軸心が前記多関節ロボットの先端部の軸心に対して平行に偏心するようになっている。そのため、素材エリア側に素材の取出箇所が複数存在しても、素材エリア周辺において、前記多関節ロボットの先端部の軸心周りの回転動作又は前記多関節ロボットの先端部の上方向への移動動作等、前記多関節ロボットに簡単な動作をさせるだけで、前記吸着グリッパの軸心が鉛直になるように前記ロボットハンドを適正な姿勢に保った状態で、前記素材エリアから素材を取出すことができる。
【0012】
同じ理由により、製品エリア側に製品の送出箇所が複数存在しても、製品エリア付近において、前記多関節ロボットの先端部の軸心周りの回転動作等、前記多関節ロボットに簡単な動作をさせるだけで、前記吸着グリッパの軸心が鉛直になるように前記ロボットハンドを適正な姿勢に保った状態で、製品を前記製品エリアへ送出すことができる。
【0013】
素材の曲げ加工の前に、前記吸着グリッパを前記待避位置へ移動させておくことにより、素材の曲げ加工中に、前記吸着グリッパと跳ね上がった素材との干渉を回避することができる。
【0014】
本発明の第2の特徴は、曲げ加工機への素材の搬入、素材の曲げ加工の補助、及び前記曲げ加工機からの製品の搬出を行う多関節ロボットにおいて、本発明の第1の特徴からなるロボットハンドが装着されていることを要旨とする。
【0015】
本発明の第2の特徴によると、前記多関節ロボットの動作を制御することにより、前記多関節ロボットの先端部を素材エリア(素材をストックするエリア)に接近させると共に、前記多関節ロボットの先端部の軸心を鉛直(垂直)にする。また、前記吸着グリッパを前記待避位置から前記吸着位置へ移動させて、前記吸着グリッパの軸心を鉛直にする。次に、前記吸着グリッパによって素材エリアに載置(積載)した素材の表面を吸着する。更に、前記多関節ロボットの動作を制御して前記多関節ロボットの先端部(前記ロボットハンド)を上方向へ移動させることにより、前記吸着グリッパの軸心が鉛直になるように前記ロボットハンドを適正な姿勢を保った状態で、素材エリアから素材を取出す。そして、前記多関節ロボットの動作を制御することにより、前記多関節ロボットの先端部を前記曲げ加工機に接近させる。これにより、素材を前記曲げ加工機に搬入することができる。
【0016】
素材を前記曲げ加工機に搬入した後に、前記吸着グリッパと前記メカニカルグリッパとの間で素材の保持換えを行うと共に、前記吸着グリッパを前記吸着位置から前記待避位置へ移動させる。そして、前記曲げ加工機によって素材に対して曲げ加工を行うことにより、素材から製品に仕上げることができる。このとき、前記メカニカルグリッパによって素材の端部を把持した状態で、前記多関節ロボットの動作を制御することにより、素材の曲げ加工の補助を行う。
【0017】
製品を仕上げた後に、前記吸着グリッパを前記待避位置から前記吸着位置へ移動させると共に、前記メカニカルグリッパと前記吸着グリッパと間で製品の保持換えを行う。そして、前記多関節ロボットの動作を制御することにより、前記多関節ロボットの先端部を製品エリア(製品をストックするエリア)に接近させると共に、前記多関節ロボットの軸心、換言すれば、前記吸着グリッパの軸心を鉛直にする。更に、前記吸着グリッパの軸心が鉛直になるように前記ロボットハンドを適正な姿勢を保った状態で、前記吸着グリッパの吸着状態を解除する。これにより、製品を前記曲げ加工機から搬出して製品エリアに送出すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、素材エリア側に素材の取出箇所が複数存在しても、素材エリア付近において、前記多関節ロボットに簡単な動作をさせるだけで、前記素材エリアから素材を取出すことができるため、例えば、素材エリアにランダムに載置(積載)された複数の素材を前記曲げ加工機に適宜に搬入することができ、前記多関節ロボットによる素材の搬入の自由度を拡大することができる。また、製品エリア側に製品の送出箇所が複数存在しても、製品エリア付近において、前記多関節ロボットに簡単な動作をさせることによって、製品を前記製品エリアへ送出すことができるため、例えば、前記曲げ加工機から搬出された製品を製品エリアに仕分けして載置することができ、前記多関節ロボットによる製品の搬出の自由度を拡大することができる。更に、素材の曲げ加工中に、前記吸着グリッパと跳ね上がった素材との干渉を回避できるため、前記多関節ロボットによる曲げ加工の補助の安定性を図ることができる。
【0019】
つまり、本発明によれば、前記多関節ロボットによる曲げ加工の補助の安定性を図った上で、前記多関節ロボットによる素材の搬入及び製品の搬出の自由度を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るロボットハンドの斜視図であって、バキュームグリッパが吸着位置に位置した状態を示している。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るロボットハンドの斜視図であって、バキュームグリッパが待避位置に位置した状態を示している。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るロボットハンドを示す図であって、バキュームグリッパが吸着位置に位置した状態を示している。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットの全体構成及び動作を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットの動作を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットの動作を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットの動作を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットの動作を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態の作用及び効果を説明する図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態の作用及び効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向をそれぞれ指している。
【0022】
図4に示すように、本発明の実施形態に係る多関節ロボット1は、プレスブレーキ3の前方に配設されており、プレスブレーキ3への素材Wの搬入、素材Wの曲げ加工の補助、及びプレスブレーキ3からの製品Mの搬出を行うものである。ここで、曲げ加工機の一例としてのプレスブレーキ3は、下部テーブル5と、下部テーブル5に上下に対向しかつ上下方向へ移動可能な上部テーブル7とを備えている。下部テーブル5の上側には、下部金型(ダイ金型)9が着脱可能に設けられており、上部テーブル7の下側には、下部金型9と協働して曲げ加工を行う上部金型(パンチ金型)11が着脱可能に設けられている。そして、本発明の実施形態に係る多関節ロボット1の具体的な構成は、以下のようになる。
【0023】
多関節ロボット1は、ベース台13を具備しており、6軸の制御軸を有している。また、ベース台13は、床面に敷設した一対のガイドレール15に左右方向へ移動可能に支持されており、ベース台13の適宜位置には、ベース台13を左右方向へ移動させるためのベース台用制御モータ(図示省略)が設けられている。
【0024】
ベース台13には、アーム支持部材17が鉛直(垂直)な第1制御軸S
1周りに旋回可能に設けられており、ベース台13の適宜位置には、アーム支持部材17を旋回させるためのロボット用第1制御モータ(図示省略)が設けられている。また、アーム支持部材17には、下部アーム19の基端部が水平な第2制御軸S
2周りに揺動可能に連結されており、アーム支持部材17の適宜位置には、下部アーム19を揺動させるロボット用第2制御モータ(図示省略)が設けられている。
【0025】
下部アーム19の先端部には、第1上部アーム21の基端部が水平な第3制御軸S
3周りに揺動可能に連結されており、下部アーム19の先端部の適宜位置には、第1上部アーム21を揺動させるロボット用第3制御モータ(図示省略)が設けられている。また、第1上部アーム21の先端部には、第2上部アーム23の基端部が第3制御軸S3に直交する第4制御軸S
4周りに回転可能に連結されており、第1上部アーム21の基端部の適宜位置には、第2上部アーム23を回転させるロボット用第4制御モータ(図示省略)が設けられている。
【0026】
第2上部アーム23の先端部には、第1リスト25の基端部が第4制御軸S4に直交する第5制御軸S
5周りに揺動可能に連結されており、第1上部アーム21の基端部の適宜位置には、第1リスト25を揺動させるロボット用第5制御モータ(図示省略)が設けられている。また、第1リスト25の先端部には、第2リスト27が第5制御軸S
5に直交する第6制御軸S
6周りに回転可能に連結されており、第1上部アーム21の基端部の適宜位置には、第2リスト27を回転させるロボット用第6制御モータ(図示省略)が設けられている。ここで、第6制御軸S
6は、第2リスト27の軸心27cと同心状に位置している。更に、多関節ロボット1の先端部である第2リスト27には、素材W又は製品Mを保持するロボットハンド29が装着されている。
【0027】
なお、多関節ロボット1は、前述のように6軸の制御軸を有しているが、ベース台用制御モータによってベース台13が左右方向へ移動することによって実質的に7軸の制御軸を有することになる。また、多関節ロボット1が6軸の制御軸(実質的に7軸の制御軸)を有する代わりに、5軸以下の制御軸又は7軸以上の制御軸(実質的に8軸以上の制御軸)を有するようにしても構わない。
【0028】
続いて、本発明の実施形態に係るロボットハンド29の構成の詳細について説明する。
【0029】
図1から
図4に示すように、ロボットハンド29は、第2リスト27に同心状(同軸状)に装着されるハンド本体31を具備しており、このハンド本体31は、ハンド本体31の軸心方向(軸心31cの方向)へ延びた取付部材33を有している。なお、ハンド本体31の軸心31cが第2リスト27の軸心27cと同心状にする代わりに、第2リスト27の軸心27cに対して平行に偏心するようにしても構わない。
【0030】
取付部材33には、素材W又は製品Mの端部を把持するメカニカルグリッパ35が設けられている。具体的には、取付部材33の先端部には、ハンド本体31の軸心方向へ延びた固定爪(第1把持部材)37が固定されており、この固定爪37は、ウレタン等の弾性体からなる複数の把持パッド(把持部)39を有している。また、取付部材33の基端部には、ハンド本体31の軸心31cに対して直交する方向へ延びたガイドバー41が設けられている。ガイドバー41には、ハンド本体31の軸心方向へ延びた可動爪(第2把持部材)43が固定爪37に対して接近離反する方向(ハンド本体31の軸心31cに対して直交する方向)へ移動可能に設けられている。換言すれば、取付部材33の基端部には、可動爪43が固定爪37に対して接近離反する方向へ移動可能にガイドバー41を介して設けられている。可動爪43は、ウレタン等の弾性体からなる複数の把持パッド(把持部)45を有しており、各把持パッド45は、対応する把持パッド39に整合する位置に位置している。更に、可動爪43には、ハンド本体31の軸心31cに対して直交する方向へ延びた一対のスライドバー47が一体的に設けられており、各スライドバー47は、取付部材33に移動可能に支持されている。そして、取付部材33には、可動爪43を固定爪37に対して接近離反する方向へ移動させるための把持エアシリンダ(把持アクチュエータの一例)49が設けられており、この把持エアシリンダ49における作動ロッド51の先端部は、可動爪43に連結されている。
【0031】
固定爪37の先端部には、揺動リンク(揺動アーム)53の基端部が揺動可能に連結されており、揺動リンク53の先端部には、素材W又は製品Mの表面をエアの吸引力によって吸着する複数のバキュームグリッパ(吸着グリッパの一例)55が設けられている。換言すれば、固定爪37の先端部には、複数のバキュームグリッパ55が揺動リンク53を介して設けられている。また、各バキュームグリッパ55は、揺動リンク53の揺動によって吸着位置と待避位置(干渉回避位置)との間を移動できるように構成されている。ここで、吸着位置とは、メカニカルグリッパ35の先端部(固定爪37の先端部及び可動爪43の先端部)よりもハンド本体31に対して離隔しかつ素材W又は製品Mの表面を吸着するための位置のことをいう(
図1参照)。待避位置とは、メカニカルグリッパ35の先端部よりもハンド本体31側に接近しかつ障害物及び素材Wとの干渉を回避するための位置のことをいう(
図2及び
図3参照)。そして、各バキュームグリッパ55を吸着位置に位置させたときに、各バキュームグリッパ55の軸心(各バキュームグリッパ55の吸着面に直交する仮想線)55cは、ハンド本体31の軸心31c、換言すれば、第2リスト27の軸心27cに対して平行に偏心するようになっている。更に、固定爪37と揺動リンク53の間には、揺動リンク53を揺動させるための一対の揺動エアシリンダ(揺動アクチュエータの一例)57が配設されており、一対の揺動エアシリンダ57のシリンダ本体59は、一体的に接合されている。一方の揺動エアシリンダ57における作動ロッド61の先端部は、揺動リンク53に連結されており、他方の揺動エアシリンダ57における作動ロッド61の先端部は、取付部材33に連結されている。なお、揺動リンク53の先端部に複数のバキュームグリッパ55が設けられる代わりに、素材W又は製品Mの表面を磁力によって吸着する複数の電磁石(図示省略)が設けられるようにしてもいい。
【0032】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
図4に示すように、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御することにより、第2リスト27を素材エリア(素材Wをストックするエリア)A1に接近させると共に、第2リスト27の軸心27cを鉛直(垂直)にする。また、一対の揺動エアシリンダ57の駆動により揺動リンク53を一方向へ揺動させることにより、各バキュームグリッパ55を待避位置から吸着位置へ移動させて、各バキュームグリッパ55の軸心55cを鉛直にする。次に、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御して第2リスト27(ロボットハンド29)を下方向へ移動させて、各バキュームグリッパ55によって素材エリアA1(素材エリアA1の素材パレットP1)に載置(積載)した素材Wの表面を吸着する。更に、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御して第2リスト27(ロボットハンド29)を上方向へ移動させることにより、各バキュームグリッパ55の軸心55cが鉛直になるようにロボットハンド29を適正な姿勢を保った状態で、素材エリアA1(素材エリアA1の素材パレットP1)から素材Wを取出す。そして、ロボットハンド29を適正な姿勢に保った状態で、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御することにより、第2リスト27をプレスブレーキ3に接近させる。これにより、素材Wをプレスブレーキ3に搬入することができる。
【0034】
素材Wをプレスブレーキ3に搬入した後に、
図5に示すように、上部テーブル7を下方向へ移動させて、上部金型11と下部金型9の協働により素材Wを一旦軽く把持する。次に、各バキュームグリッパ55の吸着状態を解除して、一対の揺動エアシリンダ57の駆動により揺動リンク53を他方向へ揺動させることにより、各バキュームグリッパ55を吸着位置から待避位置へ移動させる。そして、
図6に示すように、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御して第2リスト27の軸心27cを水平にする。更に、把持エアシリンダ49の駆動により可動爪43を固定爪37に対して接近する方向へ移動させることにより、可動爪43と固定爪37の協働により素材Wの端部を把持する。これにより、各バキュームグリッパ55とメカニカルグリッパ35との間で素材Wの保持換えを行うことができる。
【0035】
素材Wの保持換えを行った後に、
図7に示すように、上部テーブル7を上下方向(下方向と上方向)へ複数回移動させて、上部金型11と下部金型9の協働によって素材Wに対して複数回の曲げ加工を行うことにより、素材Wから製品Mに成形することができる。このとき、メカニカルグリッパ35によって素材Wの端部を把持した状態で、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御することにより、素材Wの曲げ加工の補助を行う。
【0036】
製品Mを成形した後に、
図7に示すように、把持エアシリンダ49の駆動により可動爪43を固定爪37に対して離反する方向へ移動させることにより、メカニカルグリッパ35の把持状態を解除する。次に、制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御することにより、第2リスト27の軸心27cを製品Mの表面(表面の被吸着部)に対して直交させる。また、一対の揺動エアシリンダ57の駆動により揺動リンク53を一方向へ揺動させることにより、各バキュームグリッパ55を待避位置から吸着位置へ移動させる。そして、各バキュームグリッパ55によって製品Mの表面を吸着する。これにより、メカニカルグリッパ35と各バキュームグリッパ55との間で製品Mの保持換えを行うことができる。
【0037】
製品Mの保持換えを行った後に、
図8に示すように、ロボットハンド29を適正な姿勢に保った状態で、複数の制御モータの駆動により多関節ロボット1の動作を制御することにより、第2リスト27を製品エリア(製品Mをストックするエリア)A2に接近させると共に、第2リスト27の軸心27c、換言すれば、各バキュームグリッパ55の軸心55cを鉛直にする。そして、各バキュームグリッパ55の軸心55cが鉛直になるようにロボットハンド29を適正な姿勢を保った状態で、各バキュームグリッパ55の吸着状態を解除する。これにより、製品Mをプレスブレーキ3から搬出して製品エリアA2(製品エリアA2の製品パレットP2)に送出すことができる。なお、製品エリアA2は、素材エリアA1に対して左右方向に離隔してある。
【0038】
要するに、前述のように、ロボットハンド29においては、各バキュームグリッパ55を吸着位置に位置させたときに、各バキュームグリッパ55の軸心55cが第2リスト27の軸心27cに対して平行に偏心するようになっている。そのため、素材エリアA1側に素材Wの取出箇所が複数存在しても、素材エリアA1周辺において、第2リスト27の軸心周りの回転動作又は第2リスト27の上方向への移動動作等、多関節ロボット1に簡単な動作をさせるだけで、各バキュームグリッパ55の軸心55cが鉛直になるようにロボットハンド29を適正な姿勢に保った状態で、素材エリアA1から素材Wを取出すことができる。
【0039】
同じ理由により、製品エリアA2側に製品Mの送出箇所が複数存在しても、製品エリアA2付近において、第2リスト27の軸心周りの回転動作等、多関節ロボット1に簡単な動作をさせるだけで、各バキュームグリッパ55の軸心55cが鉛直になるようにロボットハンド29を適正な姿勢に保った状態で、製品Mを製品エリアA2へ送出すことができる。
【0040】
素材Wの曲げ加工の前に、各バキュームグリッパ55を待避位置へ移動させておくことにより、素材Wの曲げ加工中に、各バキュームグリッパ55と跳ね上がった素材Wとの干渉を回避することができる。
【0041】
従って、本発明の実施形態によれば、素材エリアA1側に素材Wの取出箇所が複数存在しても、素材エリアA1付近において、多関節ロボット1に簡単な動作をさせるだけで、素材エリアA1から素材Wを取出すことができるため、例えば、
図9に示すように、素材エリアA1の素材パレットP1にランダムに載置(積載)された複数の素材Wをプレスブレーキ3に適宜に搬入することができ、多関節ロボット1による素材Wの搬入の自由度を拡大することができる。また、製品エリアA2側に製品Mの送出箇所が複数存在しても、製品エリアA2付近において、多関節ロボット1に簡単な動作をさせるだけで、製品Mを製品エリアA2へ送出すことができるため、例えば、
図10に示すように、プレスブレーキ3から搬出された製品Mを製品エリアA2の製品パレットP2に仕分けして載置することができ、多関節ロボット1による製品Mの搬出の自由度を拡大することができる。更に、素材Wの曲げ加工中に、各バキュームグリッパ55と跳ね上がった素材Wとの干渉を回避できるため、多関節ロボット1による曲げ加工の補助の安定性を図ることができる。
【0042】
つまり、本発明の実施形態によれば、多関節ロボット1による曲げ加工の補助の安定性を図った上で、多関節ロボット1による素材Wの搬入及び製品Mの搬出の自由度を拡大することができる。
【0043】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0044】
W 素材
M 製品
A1 素材エリア
A2 製品エリア
P1 素材パレット
P2 製品パレット
S
1 第1制御軸
S
2 第2制御軸
S
3 第3制御軸
S
4 第4制御軸
S
5 第5制御軸
S
6 第6制御軸
1 多関節ロボット
3 プレスブレーキ
5 下部テーブル
7 上部テーブル
9 下部金型
11 上部金型
13 ベース台
15 ガイドレール
17 アーム支持部材
19 下部アーム
21 第1上部アーム
23 第2上部アーム
25 第1リスト
27 第2リスト
27c 第2リストの軸心(多関節ロボットの先端部の軸心)
29 ロボットハンド
31 ハンド本体
31c ハンド本体の軸心
33 取付部材
35 メカニカルグリッパ
37 固定爪
41 ガイドバー
43 可動爪
47 スライドバー
49 把持エアシリンダ
53 揺動リンク
55 バキュームグリッパ(吸着グリッパ)
55c バキュームグリッパの軸心
57 揺動エアシリンダ