特許第6491873号(P6491873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491873
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20190318BHJP
【FI】
   G01N23/04
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-257021(P2014-257021)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118422(P2016-118422A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】505458108
【氏名又は名称】株式会社マーストーケンソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】田中 均
(72)【発明者】
【氏名】南 勝利
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 恒夫
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−078310(JP,A)
【文献】 特開昭60−260806(JP,A)
【文献】 特開2008−017965(JP,A)
【文献】 特開2003−297891(JP,A)
【文献】 特開2014−184340(JP,A)
【文献】 特開2009−025207(JP,A)
【文献】 特開2011−179936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14、
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光軸上のX線ビームを被検査物に照射するX線発生器と、
前記被検査物を載置し移動するステージと、
前記被検査物からのX線を検出するX線検出器と、
を備えたX線検査装置であって、
前記X線発生器は、前記X線ビームの形状を整形する絞りと、前記X線ビームの照射を開閉するX線照射開閉手段とを備え、
前記X線照射開閉手段が開としたときの前記X線ビームの前記被検査物への照射野を算出する照射野算出手段と、
前記X線ビームの前記被検査物への照射可否領域を設定する照射領域設定手段と、
前記照射野と前記照射可否領域の配置の関係に基づいて、前記X線ビームの照射の開閉を前記X線照射開閉手段に指示する照射判断手段と、
を備えることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記X線照射開閉手段は、
前記X線発生器のX線発生部で発生したX線を前記X線光軸に対し垂直方向にシャッタを摺動させ、前記X線ビームの照射を開閉することを特徴とする請求項1項に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線照射開閉手段は、
前記X線発生器の電子源から発生した電子ビームを制御し、前記X線ビームの照射を開閉することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記絞りは前記X線照射開閉手段を兼ねた構成であることを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記絞りの孔は円孔であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記絞りの孔は矩形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記照射野算出手段は、前記絞りの孔の形状及び前記X線発生器と前記絞りと前記被検査物の配置の関係とに基づいて、前記照射野を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記照射領域設定手段は、外観カメラで撮像した前記被検査物の外観像上で前記照射可否領域を設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記照射可否領域は前記X線ビームの照射を禁止する照射禁止領域を含み、前記照射判断手段は少なくとも前記照射野の一部もしくは全部が前記照射禁止領域に重複するとき、前記X線ビームの照射の閉を前記X線照射開閉手段に指示することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記照射可否領域は前記X線ビームの照射を許可する照射許可領域を含み、前記照射判断手段は前記照射野の全部が前記照射許可領域の内部にあるとき、前記X線ビームの照射の開を前記X線照射開閉手段に指示することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記X線検出器は、前記X線ビームが前記被検査物を透過したX線透過画像を検出することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項12】
前記X線検出器は、前記X線ビームが照射された前記被検査物の発する蛍光X線を検出することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の照射禁止の部位を有する被検査物のX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物試料、物性材料、電子部品等の研究、開発、及び解析調査等の目的で、試料の内部の状態や構造を、非破壊かつ高分解能で観察する装置として、投影拡大型のX線検査装置やX線CT装置等の検査装置(以下、単に「X線検査装置」と称する)が知られている。
【0003】
投影拡大型のX線検査装置は、X線源から発したX線ビームを試料に照射し、試料を透過したX線像を幾何学的に拡大し、X線検出器により検出し、試料のX線透視画像を得ている(例えば特開2004−138460号公報(特許文献1)参照)。
【0004】
X線CT装置は、上記の構成に加えて、X線ビームに対し試料を相対回転移動させながら、試料の異なる複数方向からの透視画像を得て、これら複数方向の透視画像を再構成処理し、試料内部の立体的な構造情報を得ている(例えばBruker MicroCT SkyScan2011 x-ray nanotomograph(非特許文献1)参照)。
【0005】
X線の大量照射による電子部品等の破損を防ぐ目的で使用される従来のX線検査装置の構成例を、図6に示して説明する。図6に示すように、互いに対向するX線発生装置131とX線検出器132の間に、被検査物Wを搭載する観察ステージ133が設けられたX線検査装置において、被検査物WとX線発生装置131との間に設けたフィルタ140により減衰させたX線を被検査部物Wに照射する構成となっている。また、電子部品等に照射される累積照射線量を逐次記録し、この累積照射線量が予め設定した限界量に到達した時点で、X線の照射を自動停止する構成が知られている(例えば特開2011−179936号公報(特許文献2))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−138460号公報
【特許文献2】特開2011−179936号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bruker MicroCT SkyScan2011 x-ray nanotomograph [平成26年12月05日検索]、インターネット<URL:http://www.skyscan.be/products/2011.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
X線検査の対象となる被検査物が、低線量の放射線(X線を含む)の被曝によって、性能低下、変質、劣化、破壊等の影響を受ける、もしくは影響を受ける恐れのある部位(以下、「懸念領域」と称する)を有している場合がある。例えば、わずかな放射線照射で性能が劣化する光センサ部を備える光センサICがあり、その光センサ部に隣接した半導体パターンやボイド等を、X線検査する場合がある。或いは、放射線照射に鋭敏であるため、X線の照射を回避したい部位を有する生物試料をX線検査する場合がある。
【0009】
従来のX線検査装置では、フィルタにより照射線量を減衰させる構成や、逐次記録した累積照射線量に基づいて、一定線量を越えたときにX線の照射を停止する構成を用いて、被検査物への照射線量が一定の限界量を越えないように制御し、X線の大量照射による電子部品等の破損を防止している。しかしながら、これらの構成は、以下に示すように、放射線照射(X線照射を含む)に対する「懸念領域」を有する被検査物のX線検査には適用できないという問題がある。
【0010】
従来のX線検査では、モニタ画面に表示された被検査物のX線透視像をモニタ画面で見ながら、被検査物が載置されたステージを操作して観察位置の移動を行う。この操作において、上述のような懸念領域を有する被検査物を検査しようとすると、以下のような問題(1)〜(5)がある。
(1)モニタ画面に懸念領域が表示された時点で、懸念領域にはX線が照射されてしまっているから、モニタ画面のX線透視像により、懸念領域の配置を観察することができない。
(2)ステージの操作によって、被検査物を移動して透視拡大倍率を変更或いは被検査物を傾斜させ、被検査物におけるX線の照射領域の大きさや形が変化すると、その変化の様子を、操作者が操作中にリアルタイムで知ることは容易でない。
(3)操作者は、X線の照射領域の外延の境界を明確に知る術がないので、X線検査の対象領域が懸念領域にギリギリに隣接しているようなときは、懸念領域を回避して、検査の対象領域にX線を照射するというように、ステージ操作による照射位置の位置合わせが容易でない。
(4)高拡大倍率の検査では、被検査物とX線発生装置の間の間隔が狭く(数mm程度以下のことが多い)、この狭い間隔に検査の対象領域を撮像するための外観カメラを配置することは難しいので、懸念領域の配置を外観カメラによる外観像により、リアルタイムに確認することは容易でない。
(5)これらの困難があるため、被検査物を移動するステージの操作は、誤操作して懸念領域にX線照射してしまうという高い危険性を伴う。

上述のように、懸念領域を有する被検査物をX線検査する操作は、当該懸念領域にX線を誤照射してしまうという高い危険性を伴うため、被検査物の被曝に対する安全性が低下するという問題がある。また、このような危険性を回避するためのX線検査装置の操作は容易でないため、検査のスループット(作業能率)が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、放射線照射(X線照射を含む)による懸念領域を有する被検査物のX線検査において、当該懸念領域へのX線の誤照射を確実に防止する高い安全性と優れた操作性とを備え、高い検査のスループットを有するX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、X線光軸上のX線ビームを被検査物に照射するX線発生器と、前記被検査物を載置し移動するステージと、前記被検査物からのX線を検出するX線検出器とを備えたX線検査装置に関し、本発明の上記目的は、前記X線発生器は前記X線ビームの形状を整形する絞りと、前記X線ビームの照射を開閉するX線照射開閉手段とを備え、前記X線照射開閉手段が開としたときの前記X線ビームの前記被検査物への照射野を算出する照射野算出手段と、前記X線ビームの前記被検査物への照射可否領域を設定する照射領域設定手段と、前記照射野と前記照射可否領域の配置の関係に基づいて、前記X線ビームの照射の開閉を前記X線照射開閉手段に指示する照射判断手段とを備えることにより達成される。
【0013】
本発明の上記目的は、前記X線照射開閉手段は、前記X線発生器のX線発生部で発生したX線を前記X線光軸に対し垂直方向にシャッタを摺動させ、前記X線ビームの照射を開閉することにより、或いは前記X線照射開閉手段は、前記X線発生器の電子源から発生した電子ビームを制御し、前記X線ビームの照射を開閉することにより、或いは前記絞りは前記X線照射開閉手段を兼ねた構成であることにより、或いは前記絞りの孔は円孔であることにより、或いは前記絞りの孔は矩形であることにより、或いは前記照射野算出手段は、前記絞りの前記孔の形状及び前記X線発生部と前記絞りと前記被検査物の配置の関係に基づいて、前記照射野を算出することにより、或いは前記照射領域設定手段は、外観カメラで撮像した前記被検査物の外観像上で前記照射可否領域を設定することにより、或いは前記照射可否領域は前記X線ビームの照射を禁止する照射禁止領域を含み、前記照射判断手段は少なくとも前記照射野の一部もしくは全部が前記照射禁止領域に重複するとき、前記X線ビームの照射の閉を前記X線照射開閉手段に指示することにより、或いは前記照射可否領域は前記X線ビームの照射を許可する照射許可領域を含み、前記照射判断手段は前記照射野の全部が前記照射許可領域の内部にあるとき、前記X線ビームの照射の開を前記X線照射開閉手段に指示することにより、或いは前記X線検出器は、前記X線ビームが前記被検査物を透過したX線透過画像を検出することにより、或いは前記X線検出器は、前記X線ビームが照射された前記被検査物の発する蛍光X線を検出することにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、X線発生器は、X線ビームの形状を整形する絞りと、前記X線ビームの照射を開閉するX線照射開閉手段とを備え、前記X線照射開閉手段が開としたときの、前記X線ビームの被検査物への照射野を算出する照射野算出手段と、前記X線ビームの前記被検査物への照射可否領域を設定する照射領域設定手段と、前記照射野と前記照射可否領域の配置の関係に基づいて、前記X線ビームの照射の開閉を前記X線照射開閉手段に指示する照射判断手段とを備えた構成としている。この構成では、絞りで整形されたX線ビームの照射する被検査物の照射野を照射野算出手段が算出し、照射領域設定手段により設定された被検査物の照射可否領域と照射野の配置の関係に基づいて照射判断手段がX線ビームの開閉を判断し、X線照射開閉手段に指示し、照射可否領域の設定に基づいて被検査物へのX線ビームの照射の開閉をする。その結果、被検査物へのX線ビームの照射可否領域を設定に基づいてX線ビームの照射を開閉し、照射すべきでない領域へのX線ビームの誤照射を防ぐことができるから、被検査物の被曝に対する安全性が向上する。しかも照射野算出手段はステージに載置された被検査物の移動に連動して被検査物の照射野を算出するから、操作者はX線ビームの照射野を気にする必要なく被検査物の観察位置をステージで移動できることにより、ステージの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るX線検査装置の構成の一例を示す構成図である。
図2】本発明に係るX線照射開閉手段の他の実施例を示す模式図であり、図2(a)はフィラメントによる制御、図2(b)はウェーネルト電極による制御、図2(c)は電子ビームの偏向による制御、図2(d)はX線照射開閉手段を兼ねる絞りによる制御を示している。
図3】本発明に係る絞りの孔の照射野を示す模式図であり、図3(a)は照射野(矩形)と照射許可領域の配置の関係を示す模式図、図3(b)は照射野(丸形)と照射許可領域の配置の関係を示す模式図、図3(c)は照射野(丸形)と照射禁止領域の配置の関係を示す模式図である。
図4】本発明に係る照射禁止領域を用いたX線検査を説明する図であり、図4(a)は検査経路を示す模式図、図4(b)は検査のタイミングチャートである。
図5】本発明に係る照射許可領域用いたX線検査を説明する図であり、図5(a)は検査経路を示す模式図、図5(b)は検査のタイミングチャートである。
図6】従来のX線検査装置の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1はX線検査装置1の構成図であり、機械的構成を示す模式図とシステム構成を示すブロック図を併記している。
【0018】
図1に示すX線検査装置1は、被検査物17の内部の状態や構造を高分解能で観察する機能を有し、X線発生器2のX線発生部8から発したX線は、絞り13で整形され、X線ビーム16となり、X線光軸15上をX線検出器23に向けて照射される。X線発生器2とX線検出器23の間に配置されたステージ22に被検査物17が載置され、X線ビーム16は被検査物17を透過し、生じたX線透過像は幾何学的に投影拡大されX線検出器23に入射し、X線検出器23からX線透過像の信号が得られる。なお、ステージ22の移動により、載置された被検査物17におけるX線ビーム16の照射位置、すなわち検査位置が移動する。
【0019】
外観カメラ25はステージ22に対向配置され、被検査物17の外観を撮像する。X線発生器2は、電子源4から発する電子ビーム5をX線ターゲット7に照射し、X線ターゲット7のX線発生部8からX線を発生する。X線発生器2はX線制御部33から電力と制御信号を受けて動作する。
【0020】
図1の実施形態は、X線の照射の向きが、電子ビーム5の進行方向と同方向の透過ターゲットタイプのX線発生器2の構成を示しているが、X線の照射の向きが、電子ビーム5の進行方向と異なる反射ターゲットタイプのX線発生器2にも適用できる。
【0021】
X線発生器2には、X線発生部8のX線焦点の大きさにより、ナノフォーカスX線管(0.4μm程度、或いは0.4μm以下)、マイクロフォーカスX線管(10μm程度)、ミニフォーカスX線管(0.3mm程度)等と呼ばれるX線管があるが、いずれのX線管も適用できる。なお、通常のX線検査装置1で使用するX線のエネルギー帯は20kV〜200kV程度であるが、本発明に係るX線のエネルギー帯はこの範囲を含み、この範囲内に限られるものではない。
【0022】
X線発生器2から発するX線ビーム16の照射を断続する手段として、電子ビーム5の段階でX線の発生を断続して制御する構成と、X線ターゲット7で発生したX線を断続して制御する構成とがある。本発明はいずれの構成も適用できる。
【0023】
前者の構成としては、1)フィラメント3の電源をON/OFFし、電子源4からの電子ビーム5の発生を制御する構成(図2(a))、2)電子源4の電子ビーム5の出射部に近接するウェーネルト電極6(グリッド電極)等を制御し、電子ビーム5の出射を制御する構成(図2(b))、3)発生した電子ビーム5を偏向電極(図示せず)若しくは偏向レンズ(図示せず)から成る偏向手段10によって偏向させ、X線ターゲット7への電子ビーム5の照射を回避する構成(図2(c))等がある。これらの構成ではいずれも、電子ビーム5をX線ターゲット7の位置に照射するか、しないかを制御し、X線ターゲット7のX線発生部8でのX線の発生を断続(開閉)する。この構成では、後述のシャッタ12が要らないので、シャッタ12の占める空間が不要となる。その結果、シャッタ12の占める厚さだけ絞り13と被検査物17をX線発生部8の方へ配置できるので、より高拡大倍率の撮像ができ、X線検査装置の性能が向上するメリットがある。
【0024】
後者の断続構成は、X線発生部8で発生したX線を、シャッタ12によって阻止するものであり、図1の実施形態はX線照射開閉手段9がシャッタ12である構成を示している。
【0025】
以下、X線照射開閉手段9によって、X線発生器2の外部へX線ビーム16が照射している状態を「開」と称し、X線発生器2の外部へのX線ビーム16の照射が阻止された状態を「閉」と称する。照射判断手段31からの信号に基づいて、X線照射開閉手段9はX線発生器2からのX線ビーム16の照射を「開」或いは「閉」に制御する。シャッタ12はX線ターゲット7の下流に位置し、X線ビーム16の照射を開閉する。
【0026】
上述したX線発生器2の内部の電子ビーム5を制御し、X線ビーム16の照射を開閉する構成は、X線ビーム16の照射の開閉の切り替えで、X線発生器2の内部の状態(例えば温度分布等)が変化しやすく(ドリフト)、X線の出力の安定性に影響が生じやすい。一方、X線照射開閉手段9にシャッタ12を用いた構成では、X線発生器2は常時一定のX線を発生して動作するので、X線ビーム16の開閉に伴うX線発生器2の内部の状態の変化(ドリフト)は少なく、X線の出力が安定し、安定したX線ビーム16の照射が得られるメリットがある。シャッタ12は、X線発生部8からのX線の進行を遮断する位置で被検査物17へのX線ビーム16の照射を「閉」にし、遮断しない位置で被検査物17へのX線ビーム16の照射を「開」にする。
【0027】
被検査物17の透過X線像をX線検出器23の入力面に高倍率で拡大投影するX線透視の検査においては、被検査物17をX線発生部8の位置に極力近づけることが強く望まれる。そのため、被検査物17とX線発生部8の間に配置されるシャッタ12は、薄い板状としX線発生部8の近くに配置する。X線を効率良く遮断するために、シャッタ12の材料は線減弱係数が大きく、遮蔽能力の高い材料が必要である。鉛シートは、遮蔽能力は高いが柔らかいので、鉛シートを剛性のある板材に付着させたり挟んだりしてシャッタ12とする。この構成のシャッタ12は、使用する板材の厚みだけ厚くなる。タングステン板材は遮蔽能力が高く、しかも剛性も優れているので、薄いシャッタ12を実現できる。厚み1mmのタングステン板材1枚でも十分な遮断性能を得られるので、好適なシャッタ12を実現できる。なお、シャッタ12は、図1の実施形態ではX線発生部8と絞り13の間に配置しているが、絞り13の後方に配置(図示せず)しても良く、同様の効果を得ることができる。
【0028】
シャッタ12を駆動する機構には、1)開口部を有する回転円板を回転させ、開口部でX線を通過させ、開口部以外の部分でX線を遮断するもの、2)カムや回転リンクの機構、シリンダの往復運動等によりシャッタ12を水平方向に往復移動するものがあり、いずれの機構も実施可能である。照射判断手段31からの信号に基づいてシャッタ12を駆動する機構がシャッタ12を移動し、X線ビーム16を「開」又は「閉」する。
【0029】
絞り13は、絞りの孔14を有する板であって、X線発生部8で発生したX線のうち、絞りの孔14へのX線を被検査物17に照射するX線ビーム16として通過させ、絞りの孔14以外の部分へのX線を阻止する。絞り13によって、被検査物17のX線照射の禁止領域にX線ビーム16が照射されないようにする。絞りの孔14の形状(特に断らない限り、絞りの孔の「形状」には、絞りの孔の形状と孔の大きさを含むものとする)は、X線により被検査物17の上に拡大投影されるので、検査の対象領域の形状などに合わせて丸や矩形等の形状を適宜選択する。円孔の絞り13を選択すると、X線ビーム16の照射野21が点対称の円形となるので、照射野21の方向依存性の少ないX線検査に適する。また、絞り13の円孔は、小さい孔を高い加工精度で加工できるので、加工性に優れている。絞りの孔14として、矩形の形状を選択すると、矩形の照射野21が得られ、検査領域18が矩形領域の場合に、むらなく効率良くX線ビーム16を照射できる。
【0030】
矩形の絞りを用いた実施例を図3(a)に示す。被検査物17の検査の対象とする検査領域18をカバーする矩形の照射許可領域20(後述)を設定する。絞りの孔14に矩形の形状を選択すれば、矩形の照射野21が得られるので、図3(a)に示すマス目(6×3)に合わせて照射野17を移動することにより、むらなく効率良くX線ビーム16を被検査物17に照射することができる。絞り13の板材には、シャッタ12と同様に、線減弱係数の大きな遮蔽能力の高い材料が必要である。タングステン板材は遮蔽能力が高く剛性にも優れているので、薄い絞り13を実現できる。厚み1mmのタングステン板材1枚でも十分な遮断性能を得られるので好適である。
【0031】
被検査物17のX線ビーム16の照射領域が複数あって、各照射領域の大きさや形状が異なる場合は、大きな照射領域には大きな孔を、小さな照射領域には小さな孔の絞り13を、切り替えて使用することにより、効率良くX線ビーム16を照射できる。同様に、異なる形状の孔の絞り13を、照射領域に応じて切り替えて使用する。孔の大きさや形状の異なった複数の孔を1枚の板材に設けた絞り13を用いて、検査の対象や目的に応じて、絞りの孔14を切り替えることにより、X線検査を効率的に実施することができる。
【0032】
シャッタ12に絞りの孔14を設け、シャッタ12が上述のX線ビーム16の「開」の位置において、絞りの孔14の中心位置がX線光軸15に一致する配置とし、この絞り13はX線照射開閉手段9を兼ねた機能を備えた構成とする。この構成では、X線発生部8からのX線は絞りの孔14で整形され、X線発生器2の外部に錐状に照射されるX線ビーム16となる。絞り13(シャッタ12)がX線ビーム16の「開」の位置から移動し、絞りの孔14がX線光軸15から大きく離間した配置において、シャッタ12はX線発生部8からのX線の進行を遮断し、被検査物17へのX線ビーム16の照射は「閉」となる。
【0033】
この構成によれば、シャッタ12と絞り13を1枚の板で実現でき、別々に構成する場合に比べて厚さを薄くできる。従って、薄くできた分だけ、被検査物17をX線発生部8の方へ配置できるので、より高拡大倍率の撮像が可能であり、X線検査装置の性能が向上するメリットがある。
【0034】
X線ビーム16の「開」において、シャッタ12の絞りの孔14の位置がX線光軸15からずれると、絞りの孔14が拡大投影されて生じる照射野21は、X線光軸15から大きく離間するので、X線検査の支障となる。絞り13(シャッタ12)の反復移動の動作において、絞りの孔14の中心位置のX線光軸15の位置への位置決めには、高い精度と再現性が要求される。
【0035】
錐状のX線ビーム16は被検査物17に照射され、被検査物17の照射される面に照射野21を形成する。以下、X線ビーム16の形状について説明する。簡単化のために、絞りの孔14が円孔の場合について説明する。絞り13を通ったX線は整形され、X線発生部8を頂点とする円錐状のX線ビーム16となり、被検査物17に照射される。高倍率で拡大投影する場合のX線検査では、X線発生部8の焦点サイズの大きさが照射野21に半影を作り、この半影の大きさだけ照射野21が拡大することが知られている。投影による絞り13の照射野21への拡大倍率M、X線発生部8の焦点サイズs、絞りの孔14の径d、照射野21の大きさの径D、半影の大きさSとしたとき、以下数1及び数2の関係がある。
(数1)
D=M×d

(数2)
S=(M−1)×s

ここで、高拡大倍率の検査装置の例を示す。例えば絞り13の照射野21への拡大倍率M=10、焦点サイズs=0.4μm、絞りの孔14の径d=0.5mmφとすると、照射野21の大きさD=10×0.5mm=5mmφ、半影の大きさS=(M−1)×s=(10−1)×0.4μm=3.6μm=0.0036mmとなる。照射野5mmφにおいて、半影0.0036mmの大きさは実質的に無視できる大きさである。従って、この場合は、X線ビーム16の半影は、照射野21の大きさに対して実用上無視できる。
【0036】
上述の例は、焦点サイズが0.4μmと極小のナノフォーカスX線管の場合であるが、焦点サイズ10μmφ程度のマイクロフォーカスX線管や、焦点径が0.3mmφ程度のミニフォーカスX線管においても、照射野21の大きさに対して半影の大きさが実質的に無視できる使用条件では、本発明に係るX線検査装置1のX線発生器2として使用できる。
【0037】
なお、円孔でない孔を通ったX線ビーム16の照射野21については、その絞りの孔14の形状を微小な円孔の集合と見なすことによって、上述の円孔の場合の作用効果を類推適用できる。また、X線ビーム16が被検査物17に照射されると、X線ビーム16が環境気体等に作用して発生する散乱X線や、X線ビーム16が被検査物17に照射されて発生する2次X線、他に回折の成分等も発生する。これらの散乱X線、2次X線及び回折の成分等は、被検査物17への影響が小さいものと考えて、本発明のX線ビーム16には含めない。
【0038】
ステージ22は、載置した被検査物17を安定的に保持すると共に、X線光軸15(X線発生部8からX線検出器23に向かうX線ビーム16の軸)に対して相対移動させ、被検査物17の検査対象の部位の位置や方向を設定する。X線検査装置1に使用されるステージ22の一例として、5軸ステージを説明する。ステージ22の3軸移動方向を直交座標系(X、Y、Z)によって表示し、X線光軸15上のX線発生部8に向かう方向をZ軸にとると、XY方向の移動は検査対象部位の水平移動に対応する。Z方向の移動は、被検査物17の拡大倍率を変化させる。さらに、ステージ22により被検査物17をX線ビーム16に平行な軸周りに相対回転移動(回転1軸)させ、或いは傾斜(傾斜1軸)させることにより、被検査物17の異なる複数方向からの透視画像を得て検査する。ステージ22は5軸ステージに限らず、検査の必要に応じてステージ22の移動の軸数を増減できる。例えば被検査物17の回転、傾斜、及びZ方向への移動が必要でない用途、すなわち一定の拡大倍率で水平移動だけで検査するX線検査装置1では、そのステージ22はXYの2軸で構成できる。
【0039】
ステージ22は、手動モード及び自動モードを有するステージ制御部36によって制御される。手動モードでは、操作者が手動でステージ制御部36を介してステージ22を操作する。また、自動モードでは、手順を組み込んだプログラム等によって、被検査物17の移動、X線透視像の撮像、検査処理部による検査処理(検査の判断処理、検査結果の出力等)を行い、被検査物17を自動的に検査する。また、ステージ制御部36は、逐次ステージ22の上に載置された被検査物17の位置情報を照射判断部に送る。照射判断部は、逐次この被検査物17の位置情報に基づいて、X線ビーム16の照射野21と、被検査物17に対して設定されているX線の照射可否領域との配置関係を認識し、X線ビーム16の照射の開閉を判断する。
【0040】
X線ビーム16を照射して被検査物17に生じる照射野21は、X線発生部8、絞り13及び被検査物17の各配置の関係と、絞りの孔14の形状(特に断らない限り、絞りの孔の形状には、絞りの孔の形状と孔の大きさを含むものとする)とに基づいて算出する。なお、X線ビーム16の照射が「閉」のときは、X線ビーム16はX線発生器2の外部に照射されないので、被検査物17にX線ビーム16の照射による物理的な照射野は生じない。しかし、本発明では、X線ビーム16の照射の「開」、「閉」の状態に拘わらず、「開」の状態における上述のX線発生部8、絞り13、及び被検査物17の各配置の関係と、絞りの孔14の形状とに基づいて算出したものを「照射野」と称する。簡単のために絞りの孔14を円孔としたときは、以下のようになる。
【0041】
図1において、X線発生部8と絞り13との距離をA、X線発生部8と被検査物17の照射される面との距離をBとすると、絞りの孔14の被検査物17に投影される拡大倍率はM=B/Aとなる。絞りの孔14の径をs、照射野21の径をSとすると、S=M×sで算出できる。距離Bはステージ22のZ軸方向の移動量と、X線光軸15上に位置する被検査物17のZ軸方向の厚さとを基に算出することができる。被検査物17が均一な厚みのときは、XY方向に水平移動しても距離Bは一定であるから、照射野21の径Sも一定である。被検査物17がZ軸方向に移動するときは、移動に合わせて距離Bが変化し拡大倍率Mも変化するので、照射野21の径Sも変化する。被検査物17がX線光軸15と平行な軸の周りに角度θだけ回転するときは、照射野21の径Sは一定であり、変化しない。被検査物17がX線光軸15に対して水平位置から角度φだけ傾斜したときは、被検査物17における照射野21の大きさは1/cosφ倍に広がる。以上のように、ステージ22に載置された被検査物17の移動(XYZ移動、θ回転、φ傾斜)及び被検査物17の厚みの情報に基づいて、照射野21を算出する。
【0042】
以上の機能に基づいて、図1の実施形態を説明する。
【0043】
検査に先立って照射野算出手段29は、X線検査装置1の初期状態で予め設定されている初期情報(絞りの孔14の径s、X線発生部8と絞り13の距離A,X線発生部8と被検査物17の照射される面との距離B、X線ビーム光軸15と外観カメラ25の光軸との距離、被検査物17の厚み情報t等)をパラメータ設定手段32から取得し、ステージ22の5軸移動量(XYZ、θ、φ)をステージ制御部36から取得し、初期の照射野情報(被検査物17の照射野21の位置、照射野の大きさS)を算出しておく。ステージ制御部36からステージ22の5軸移動量(XYZ、θ、φ)を逐次取得して、被検査物17の移動に伴う照射野21の照射野情報(被検査物17の照射野21の位置、照射野の大きさS)を算出し直す。同時に、照射野算出手段29は逐次照射野情報(被検査物17の照射野21の位置、照射野の大きさS)を照射判断手段31に送る。その結果、ステージ22に載置された被検査物17の移動に伴う照射野21をステージの移動に連動して算出するので、操作者が被検査物17の照射野21を確認する必要がなくなり、操作性が向上する。
【0044】
なお、絞りの孔14が円孔でない場合のX線ビーム16の照射野21については、その絞りの孔14の形状を微小な円孔の集合と見なすことによって、上述の円孔の場合の作用効果を類推適用できる。
【0045】
外観カメラ25は、被検査物17の外観像を可視光により撮像するカラーのデジタルカメラである。カラーの外観画像が必要ないときは、白黒デジタルカメラであっても良い。X線透視画像の撮像に支障をきたさないような位置で、かつステージ22に対向配置され、被検査物17の外観を撮像できるように配置する。外観カメラ25は被検査物17の外観像を撮像し、外観像の信号を外観画像処理部26に送る。撮像した外観画像は、1)被検査物17に印された被検査物17の基準マーク等を認識してステージ22の上の被検査物17の配置(位置、向き)の計測の処理、2)照射可否領域(照射禁止領域19、照射許可領域20)の設定の操作、に使用する。
【0046】
次に、外観カメラ25を用いた処理や設定の操作について説明する。本説明では、被検査物17には、被検査物17の配置(位置、向き)を識別するために、既定の1つ以上の基準マークがあるものとする。さらに、被検査物17は傾斜せず、水平に(すなわち、外観カメラの光軸に垂直に)ステージ22に載置されているものとする。
【0047】
先ず、ステージ22に載置される被検査物17の配置(位置、向き)を計測する方法について説明する。
【0048】
原点位置にあるステージ22を操作して、被検査物17の基準マークを表示部27の外観モニタの所定位置へ移動させ、ステージ制御部36はその移動量を記憶する。残りの他の基準マークに対しても同様の操作により、各移動量を記憶する。ステージ制御部36は、以上の操作で得た各々の移動量と既定の基準マークの情報(後述の操作部11又はCAD情報入力手段28から得る)とに基づいて演算し、ステージ22に対する被検査物17の配置(位置、向き)の情報と、ステージ22の移動量に対する表示部27の外観モニタ表示の拡大倍率の情報とを得る。この拡大倍率の情報に基づいて、表示部27の外観モニタの外観像の上の距離をステージ22の移動量に換算できるので、操作部30のマウス等の指示デバイスを用いた外観画像上での被検査物17の位置指定ができる。すなわち、ステージ22の移動による基準マークの位置合わせの操作に代えて、外観画像上に表示された基準マークをマウス等の指示デバイスにより位置指定でき、操作が容易になる。
【0049】
次に、照射領域設定手段30による被検査物17の照射可否領域(照射禁止領域19、照射許可領域20)の設定の機能を説明する。
【0050】
ステージ22の移動量に対する表示部27の外観モニタ表示の拡大倍率が不明の場合は、照射可否領域の境界を示す各位置をステージ22の移動の操作によって、表示部27の外観モニタの所定位置へ移動し、その位置情報を領域設定手段30はステージ制御部36から得る。この操作を繰り返して、照射可否領域の境界の各位置の指定の操作が済んだら、照射領域設定手段30はステージ制御部36から得た位置情報に基づいて照射可否領域を確定して記憶すると共に、照射可否領域の情報を照射野判断手段31に送る。拡大倍率が既知の場合は、ステージ22の移動による位置合わせの操作に代えて、外観画像上に表示された基準マークをマウス等の指示デバイスにより位置指定でき、操作が容易になる。すなわち、照射領域設定手段30は、表示部27の外観モニタの外観画像上で操作者が操作部11のマウス等の指示デバイスで設定した照射可否領域の境界の各位置の情報を得、拡大倍率の情報に基づいてステージ22の上の被検査物17の位置に換算し、照射可否領域を確定すると共に、照射可否領域の情報を照射野判断手段31に送る。
【0051】
高分解能での透視検査では、被検査物17とX線発生器2の間隔が狭くなり、外観カメラ25の配置の制約が生じて、検査対象の位置であるX線ビーム16の照射野21をリアルタイムで撮像できないことがある。この場合は、X線検査に先立って、外観カメラ25で被検査物17を撮像して得た全体像を表示部27にモニタ表示し、被検査物17の移動に連動して照射野算出手段29が算出した照射野情報(被検査物17の照射野21の位置、照射野の大きさS)を得、その照射野21の位置を現在の検査位置(照射野21の位置)として全体像上に重ねて表示することにより検査位置を視認しやすくし、検査のスループット(作業能率)を向上できる。
【0052】
なお、被検査物17の外観画像を1回の撮像で得られないときは、被検査物の外観形状の全体を部分に分けて、ステージを移動させながら複数回撮像し、外観画像処理部26は、各部分の画像及びステージ制御部36から得たその撮像した位置を関連づけして記憶し、全体を貼り合わせて全体像を得ることができる。
【0053】
照射領域設定手段30は、X線ビーム16の照射を禁止すべき被検査物17の領域を照射禁止領域19として設定する。複数の照射禁止領域19を設定できる。この設定の操作により、当該領域へX線ビーム16の照射がされることはないから、被検査物17の被曝に対する安全性が向上する。被検査物17の一部にX線照射による被曝線量を一定値以下に規制すべき領域があるときも、当該領域を照射禁止領域19に設定することによって、当該部分へX線ビーム16が照射されなくなるので、被検査物17の当該領域の被曝を防止することができる(図3(c))。
【0054】
照射領域設定手段30は、X線ビーム16の照射を許可する被検査物17の領域を照射許可領域20として設定する。複数の照射許可領域20を設定できる。被検査物17にX線ビーム16の照射を許可する領域があるときは、当該領域を照射許可領域20に設定することにより、当該部分にX線の照射されるようにできる(図3(b))。
【0055】
なお、被検査物17への照射可否領域(照射禁止領域19、照射許可領域20)の設定の操作において、照射禁止領域19にも照射許可領域20にも属しない領域へのX線ビーム16の照射の可否は、検査目的、検査の種類、被検査物17の態様等に応じて適宜設定することができる。また、照射禁止領域19と照射許可領域20は両立しない相反関係にあるので、2つの領域が重なって設定されようとする場合は、重なる領域には、照射禁止領域19の設定を優先適用して照射禁止領域19に設定するようにしてもよい。
【0056】
次に、照射禁止領域19の設定について説明する。照射領域設定手段30は、ステージ22に載置された被検査物17を外観カメラ25で撮像し、撮像で得た外観画像を表示部27にモニタ表示するように制御する。また、操作者が外観画像の形態的特徴である形状、大きさ、或いは色彩等に基づいて、表示部27の外観モニタ上の外観画像上で、操作部11のマウス等の指示デバイス等によって指示した領域を照射禁止領域19として設定する。さらに、設定した照射禁止領域19の情報を照射判断手段31に送る。照射領域設定手段30は、必要に応じて、外観画像処理部26に指示して、外観画像の拡大、縮小、フィルタ処理、パターンマッチング処理及び画像認識等を処理させ、照射禁止領域19の設定の操作を容易にする。照射禁止領域19の形状は、被検査物17のX線照射を避けるべき領域の形状に応じて、矩形、円形、楕円形等の任意の領域の形状を設定できる。また、被検査物17がプリント基板、IC,ウェハ等の電子部品の工業用製品である場合は、照射領域設定手段30は、当該電子部品の設計情報や製造情報である電子部品情報をCAD情報入力手段28(外部記録媒体、外部通信回線)から得て、被検査物17の照射禁止領域19を電子部品情報に基づいて設定する。照射許可領域20の設定は、照射領域設定手段30によって、照射禁止領域19の設定と同様に手動設定や電子部品情報に基づいて設定する。図3(a)は、被検査物17において、検査領域18をカバーする照射許可領域20を設定した一例を示す。
【0057】
照射判断手段31は、照射野算出手段29から逐次得る被検査物17の照射野情報(被検査物17の照射野21の位置、照射野の大きさS)と照射領域設定手段30から得た照射可否領域(照射禁止領域19、照射許可領域20)の配置の関係に基づいて、逐次X線ビーム16の照射の開閉を判断し、X線照射開閉手段9にX線ビーム16の開閉を指示する。
【0058】
被検査物17に照射禁止領域19が設定されている場合の動作について説明する。ステージ22によって被検査物17が水平移動(XY移動)され、X線ビーム16の照射野21が照射禁止領域19に重複するとき、照射判断手段31がX線ビーム16の照射の「閉」を判断し、X線照射開閉手段9に「閉」を指示し、これに基づきX線照射開閉手段9はX線ビーム16の照射を停止させる。なお、「重複」とは、同一面上で2つの領域の少なくとも一部、又は全てが重なっている配置関係を称するものとする。さらに被検査物17が移動し、X線ビーム16の照射野21が照射禁止領域19に重複しなくなったとき、照射判断手段31がX線ビーム16の照射の「開」を判断し、X線照射開閉手段9に「開」を指示し、これに基づきX線照射開閉手段9はX線ビーム16の照射を再開させる。
【0059】
図3(c)により、照射野21と照射禁止領域19の配置の関係とX線ビーム16の照射の開閉の動作を説明する。図3(c)は、ステージによりXY方向に被検査物17を蛇行移動させたときの、被検査物17における照射野21(丸形)の移動の軌跡とX線ビーム16の照射の開閉の様子を示している。斜線付きの照射野21は照射の「開」を、斜線なしの照射野21は照射の「閉」を示している。照射野21b1〜21b7のうち、照射野21b1、21b2、21b6、21b7は、照射野21が照射禁止領域19に重複しないので、X線ビーム16の照射は「開」であることを示す。照射野21b3〜21b5は、照射野の一部、或いは全部が照射禁止領域19に重複するので、X線ビーム16の照射は「閉」である。
【0060】
被検査物17が水平移動(XY移動)に加え拡大倍率変更(Z移動)、回転、傾斜の移動を含む場合も同様に、X線ビーム16の照射野21と照射禁止領域19の配置の関係に基づいて、適切にX線ビーム16の照射が制御される。
【0061】
次に、被検査物17に照射許可領域20が設定されている場合の動作について説明する。ステージ22によって被検査物17が水平移動(XY移動)され、X線ビーム16の照射野21の一部、或いは全部が照射許可領域20の外側にはみ出るとき、照射判断手段31がX線ビーム16の照射の「閉」を判断し、X線照射開閉手段9に「閉」を指示し、これに基づきX線照射開閉手段9はX線ビーム16の照射を停止させる。さらに被検査物17が移動し、X線ビーム16の照射野21の全部が照射許可領域20に重複するとき、照射判断手段31がX線ビーム16の照射の「開」を判断し、X線照射開閉手段9に「開」を指示し、これに基づきX線照射開閉手段9はX線ビーム16の照射を再開させる。
【0062】
図3(b)により、照射野21と照射許可領域20の配置の関係とX線ビーム16の照射の開閉の動作を説明する。図3(b)は、ステージ22によりXY方向に被検査物17を蛇行移動させたときの、被検査物17における照射野21(丸形)の移動の軌跡とX線ビーム16の照射の開閉の様子を示している。斜線付きの照射野21は照射の「開」を、斜線なしの照射野21は照射の「閉」を示している。照射野21a1〜21a7のうち、照射野21a3〜21a5は、照射野21の全てが照射許可領域20の内部にあるので、X線ビーム16の照射が「開」である。照射野21a1、21a2、21a6、21a7は、その一部、或いは全部が照射許可領域20に重複するので、X線ビーム16の照射は「閉」である。
【0063】
被検査物17が水平移動(XY移動)に加え、拡大倍率変更(Z移動)、回転、傾斜の移動を含む場合も同様に、X線ビーム16の照射野21と照射禁止領域19の配置の関係に基づいて、適切にX線ビーム16の照射が制御される。
【0064】
次に、X線検出器23について説明する。被検査物17の透過X線の画像を得るためのX線検出器23としては、フラットパネル型の半導体検出器や光増倍管方式X線検出器(Image Intensifier)を使用する。フラットパネル型の半導体検出器は、幾何歪の少ない大面積の検出視野が必要な用途に適する。また、光増倍管方式X線検出器は高画質の画像を必要とする検査に適する。これらの透過画像を検出するX線検出器23を用いて被検査物17の透過X線画像の信号を得、被検査物17の内部構造の検査をする。
【0065】
X線ビーム16の照射により被検査物17で生じた蛍光X線(2次X線)を検出し、元素分析用の信号を得るX線検出器23としては、用途に応じて波長分散型の分光検出器やエネルギー分散型の半導体検出器を使用する。蛍光X線を検出するX線検出器23を用いて被検査物17の元素分析の検査を行うことができる。
【0066】
検査処理部35について説明する。検査処理部35は、被検査物17のX線検査の対象領域のX線透視画像に基づいて、被検査物17の検査を行う。例えば被検査物17の内部構造の観察、その寸法計測、欠陥や異物等の有無の検査、その他所定基準に基づいた合否判定をする。また、検査処理部35は、ステージ22に載置された被検査物17を、X線ビーム16に直交する軸に対して相対回転移動させながら、被検査物17の異なる複数方向からの透視画像をX線検出器23により得て、これらの検出された異なる複数方向からの画像信号を再構成処理することにより、被検査物17の内部の立体的な構造情報を得る(CT検査)。
【0067】
さらに、検査処理部35は、被検査物17へのX線の照射で生じた蛍光X線の信号を検出するX線検出器23を使用し、その信号を分析し、被検査物17の成分元素を分析する元素分析の検査をする。X線透視画像による検査、CT検査、或いは元素分析の検査の結果は、表示部27に表示し、検査装置の記録部に記録し、外部の出力装置に出力する。
【0068】
図4により、被検査物17にX線の照射禁止領域19を設定して、X線透視像により検査する実施例を説明する。
【0069】
X線ビーム16が照射された被検査物17の照射野21の透視画像が表示部27のモニタ表示されることは、従来のX線検査装置と同じである。図4(a)に示すように、被検査物17には照射禁止領域19のF1、F2と、検査位置T1〜T4が設定され、検査位置の始点はPs、終点はPeである。Ps〜T1において、検査位置(照射野21)が照射禁止領域19のF1を通過する間、X線ビーム16の照射は「閉」し、検査位置がF1を脱し、次のF2に重複するまで、X線ビーム16の照射は「開」する。検査位置T1、T2、T3,T4では、各々X線画像の撮像と検査処理部35により検査処理を行う(図4(b))。検査位置が照射禁止領域19のF2を通過する間、X線ビーム16の照射は「閉」し、検査位置がF2を脱したときにX線ビーム16の照射は「開」する。最後に検査の終点Peに達する。
【0070】
図4(a)の破線部b1、b2の経路は、本発明に係る照射禁止領域19の設定ができない場合、照射禁止領域19へのX線ビーム16の照射を回避するために、操作者が操作しなければならない検査経路の一例である。本発明に係る照射禁止領域の設定によって実現される機能により、照射禁止領域19を迂回する遠回りの検査経路が不要となり、検査経路が短縮できるので検査の時間を短くでき、検査のスループット(作業能率)が向上する。
【0071】
手動検査においては、操作者が照射禁止領域19を気にする必要なく被検査物17の観察位置を移動できるので、透視像の観察に専念できる。ステージ22の操作が容易となり、操作性が向上する。さらに、操作者が誤って照射禁止領域19にX線ビーム16を照射してしまう誤操作を確実に防止できるので、被検査物17の被曝に対する安全性が向上する。
【0072】
図5により、被検査物17にX線の照射許可領域20を設定して、当該照射許可領域20の領域にX線ビーム16を照射し、X線透視像により検査する実施例を説明する。
【0073】
X線ビーム16が照射された被検査物17の照射野21の透視画像が表示部27のモニタ表示されることは、従来のX線検査装置と同じである。図5(a)に示すように、被検査物17は照射許可領域20のA1、A2と、検査位置T1〜T4が設定され、検査位置の始点はPs、終点はPeである。検査は始点Psからスタートする。検査位置(照射野21)が照射許可領域20のA1にある間、X線ビーム16の照射は「開」する。検査位置T1、T2、T3,T4では、各々X線画像の撮像と検査処理を行う(図5(b))。検査位置が照射許可A1を脱してA2に入るまでは、X線ビーム16の照射は「閉」する。検査位置がA2にある間、X線ビーム16の照射は「開」する。検査位置がA2を脱したときに、X線ビーム16の照射は「閉」する。最後に検査の終点Peに達する。
【0074】
手動検査においては、操作者が照射許可領域20を設定することにより、照射許可領域20の外部の領域へのX線ビーム16の照射について気にする必要なく被検査物17の観察位置を移動でき、透視像の観察に専念できる。ステージ22の操作が容易となり、操作性が向上する。さらに、操作者が誤って照射許可領域20の外部にX線ビーム16を照射してしまう誤操作を確実に防止できるので、被検査物17の被曝に対する安全性が向上する。
【0075】
主制御部37は各々の機能を統括して制御する。
【0076】
X線照射開閉手段9を、X線発生器2のX線発生部8で発生したX線をX線光軸15に対し垂直方向にシャッタ12を摺動させることにより、X線ビーム16の照射を開閉する構成とした場合、X線発生器2は常時一定のX線を発生して動作するので、X線発生器2の内部の状態の変化が少なく、安定したX線ビーム16の出力を得ることができる。
【0077】
また、X線照射開閉手段9を、X線発生器2の電子源4から発生した電子ビーム5を制御し、X線ビーム16の照射を開閉する構成とした場合はシャッタ12が不要であるので、シャッタ12の厚みに相当するスペースが空き、被検査物17をX線発生部8の位置にそのスペースの厚み相当分だけ近づけられる。その結果、より高拡大倍率の透視検査ができ、X線検査装置1の性能が向上する。
【0078】
絞り13を、X線照射開閉手段9を兼ねる構成とし、X線発生器2のX線発生部8で発生したX線を絞り13でX線ビーム16の形状を絞ると共に、X線光軸15に対し垂直方向に絞り13を摺動させ、X線ビーム16の照射を開閉する構成とした場合、絞り13とシャッタ12とを1枚の板で実現でき、別々に構成する場合に比べて、これらが占める厚みを薄くできる。X線検査の位置でシャッタ12の厚みに相当するスペースが空き、被検査物17をX線発生部8の位置にその厚み相当分だけ近づけることができる。その結果、より高拡大倍率の透視検査ができ、X線検査装置1の性能が向上する。
【0079】
絞りの孔14を円孔とする構成とした場合には、X線ビーム16の照射野21が点対称の円形となるので、方向依存性の少ないX線検査に適する。また絞り13の円孔は小さい孔を高い加工精度で加工できるので、加工性にも優れる。絞りの孔14を矩形とする構成とした場合には、絞りの孔14が矩形であるので、X線ビーム16の照射野21も矩形となり、検査の対象領域が矩形である場合に、検査の対象領域をむらなく効率よくX線ビーム16を照射できる。
【0080】
また、照射野算出手段29を、絞りの孔14の形状及びX線発生部8と絞り13と被検査物17の配置の関係とに基づいて照射野21を算出する構成とした場合、ステージに載置された被検査物17の照射野21の大きさ及び形状をステージの移動に連動して逐次算出するので、操作者が被検査物17の照射野21の位置、大きさ及び形状を気にする必要がなく、検査に専念できる。従って、検査のスループットと操作性が向上する。
【0081】
更に、照射領域設定手段30を、外観カメラ25で撮像した被検査物17の外観像上で照射可否領域を設定する構成とした場合、ステージ22に載置された被検査物17の外観画像を用いて照射可否領域を設定するので、被検査物17の外観の形態的特徴である形状、大きさ、或いは色彩等に基づいて、照射可否領域を設定できる。従って、被検査物17の外観の形態的特徴に基づいて、柔軟かつ容易に照射可否領域の設定ができ、操作性が向上する。
【0082】
更にまた、照射可否領域を、X線ビーム16の照射を禁止する照射禁止領域19を含み、照射判断手段31は少なくとも照射野21の一部若しくは全部が照射禁止領域19に重複するとき、X線ビーム16の照射の閉をX線照射開閉手段9に指示する構成とした場合、被検査物17の照射禁止領域19を設定できるので、X線ビーム16の照射野21が被検査物17の照射禁止領域19に重複するときはX線ビーム16が閉となって、照射禁止領域19へのX線ビーム16の照射を禁止できる。従って、X線照射を禁止すべき当該領域へのX線ビーム16の照射を確実に禁止できる。その結果、被検査物17の被曝に対する安全性が向上する。
【0083】
照射可否領域を、X線ビーム16の照射を許可する照射許可領域20を含み、照射判断手段31は照射野21の全部が照射許可領域20の内部にあるとき、X線ビーム16の照射の開をX線照射開閉手段9に指示する構成とした場合、被検査物17にX線照射を許可する領域があるとき、当該領域を照射許可領域20に設定することにより、当該領域の設定に基づいてX線ビーム16の照射ができるので、被検査物17の被曝に対する安全性が向上する。
【0084】
また、X線検出器23を、X線ビーム16が被検査物17を透過したX線透過画像を検出する構成とした場合、X線検出器23が検出した被検査物17の透過X線画像の信号に基づいて、被検査物17の検査ができる。X線検出器23を、X線ビーム16が照射された被検査物17の発する蛍光X線を検出する構成とした場合には、X線ビーム16の照射を受けた被検査物17が発する蛍光X線の信号に基づいて、被検査物17の元素分析の検査ができる。
【0085】
なお、上述の説明では、照射判断手段31は照射野21と照射可否領域(照射禁止領域19、照射許可領域20)の配置の関係に基づいて、逐次X線ビーム16の照射の開閉を判断し、X線照射開閉手段9にX線ビーム16の開閉を指示するとしているが、X線ビーム16の照射の開閉の制御はこれらの機能に加えて、操作者の安全やX線装置自体の保護等の目的のフェールセーフ動作(X線装置の非常停止動作、安全保護のためのインターロック動作等)等と、さらに組み合わせて制御する構成としても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 X線検査装置
2 X線発生器
7 X線ターゲット
8 X線発生部
9 X線照射開閉手段
10 偏向手段
11 操作部
16 X線ビーム
17 被検査物
22 ステージ
23 X線検出器
24 X線画像処理部
25 外観カメラ
26 外観画像処理部
27 表示部
28 CAD情報入力手段
29 照射野算出手段
30 照射領域設定手段
31 照射判断手段
32 パラメータ設定手段
33 X線制御部
35 検査処理部
36 ステージ制御手段
37 主制御部


図1
図2
図3
図4
図5
図6