(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の風向調整装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図7において、10は風向調整装置で、この風向調整装置10は、ルーバ装置あるいはベンチレータなどとも呼ばれ、例えば自動車の被取付部材であるインストルメントパネルなどに取り付けられ、空調装置に接続されて、車室内に風を吹き出し、空調を行う車両用空調装置を構成している。なお、以下、風が吹き出す下流側(風下側)すなわち乗員側を前側、風の上流側(風上側)を後側とし、左右方向及び上下方向については、上記の自動車に取り付けた状態を例として説明する。
【0029】
そして、この風向調整装置10は、
図1ないし
図7に示すように、外郭部15と、この外郭部15内に回動可能に収容されるルーバアッシ16とを備えている。
【0030】
外郭部15は、前側に位置する第1の外郭部としての前側外郭部21と、後側に位置する第2の外郭部としての後側外郭部22とを備え、これら外郭部21,22によってルーバアッシ16を前後から挟持している。
【0031】
前側外郭部21は、パネルとも呼ばれ、円筒状の外壁部24と、この外壁部24の内方に同心状に位置し後側外郭部22の前端部が係止される円筒状の第1の外郭部本体としての前側外郭部本体25とを一体的に有している。そして、この前側外郭部21は、前端部が風向調整装置10の最も風下に位置している。
【0032】
外壁部24は、例えばインストルメントパネルに露出して風向調整装置10の意匠面となるものであり、前端部から後端部へと、徐々に拡径しているとともに、下側から上側へと徐々に後方に突出するように形成されている。また、この外壁部24は、前端部に装飾を施した円筒状の装飾部材であるフィニッシャ26が取り付けられて吹出口27が形成されており、この吹出口27の内縁部に連続して、後側から前側へと徐々に拡開する円筒面であるガイド面28が形成されている。フィニッシャ26には、ガイド面28よりも外方の位置に、前側外郭部本体25と固定するための円筒状の固定部29が同軸状に突設されている。この固定部29には、前側外郭部本体25の前端側を係止する係止孔29aが開口されている。
【0033】
前側外郭部本体25は、第1の本体部である前側部31と、この前側部31の後端部に連続する第2の本体部である後側部32とを備えている。前側部31の内周部は、ガイド面28の後端部に連続し後側から前側へと徐々に縮径してルーバアッシ16の外周側が摺接する球面の一部をなす摺接面31aとなっている。また、この前側部31の外周部には、係止孔29aに挿入係止される爪部31bが突設されている。また、後側部32は、前側部31よりも大径の円筒状となっている。したがって、これら前側部31と後側部32とが連続する部分は、後側外郭部22の前端部を位置決めする段差状のストッパ部33となる。また、後側部32の内周側の左右両側には、前側外郭部21と後側外郭部22とを回り止めするための回り止め部32a(一方のみ図示)が切り欠き形成されている。さらに、この後側部32には、後側外郭部22を係止する複数の係止孔部32bが径方向に沿って開口されている。
【0034】
後側外郭部22は、ダクトとも呼ばれ、前側外郭部21の前側外郭部本体25の後側部32の内周に嵌合される円筒状の嵌合部35と、この嵌合部35の後端部に連続する湾曲部36と、この湾曲部36の後端部に連続する円筒状の風路部37とを備えている。そして、この後側外郭部22の内部は、風が通過する流路となっている。
【0035】
嵌合部35の左右両側には、各回り止め部32aに挿入嵌合される回り止め凸部35a,35aが突設されている。また、この嵌合部35の外周部には、各係止孔部32bにそれぞれ挿入係止される係止爪部35bが突設されている。湾曲部36の内周部は、後方から前方へと徐々に拡開し摺接面31aと同一の球面の一部をなす摺接面36aとなっている。また、風路部37は、直線円筒状に形成されており、中心軸部に、アッシ軸支部38が形成され、このアッシ軸支部38が放射状の複数のリブ39によって風路部37の内周部に連結されている。また、この風路部37の後端部は、風が導入される導入口40となっている。そして、この風路部37の前端部と湾曲部36の摺接面36aの後端部とが連続する部分には、ルーバアッシ16と当接してこのルーバアッシ16の回動角度を規制するための回動規制部41が突設されている。
【0036】
アッシ軸支部38は、互いに平行に対向する左右両側面38a,38aが風路部37の中心軸位置まで前方に延び、これら両側面38a,38aの前端近傍に、ルーバアッシ16を軸支するための円孔状の軸支孔38b,38bが左右方向に沿ってそれぞれ開口されている。したがって、これら軸支孔38b,38bにより、ルーバアッシ16が外郭部15に対して一の往復方向である上下方向に回動可能に軸支されている。
【0037】
ルーバアッシ16は、ハウジング部45と、このハウジング部45に取り付けられた連結部46と、これらハウジング部45と連結部46との間に位置する複数、例えば4つのルーバ47とを備えている。そして、このルーバアッシ16は、連結部46によって各ルーバ47を連動させることで、風を所定方向に集中させる集中モード(通常モード)と風を拡散させる拡散モードとを連続的に切り換えることが可能となっている。
【0038】
ハウジング部45は、円筒状の第1のハウジング部としての前側ハウジング51と、この前側ハウジング51と別体で円筒状の第2のハウジング部としての後側ハウジング52とを備えている。そして、このハウジング部45の内部は、風が通過する流路となっている。
【0039】
前側ハウジング51は、第1の外枠部としての円筒状(円環状)の前側外枠部54と、この前側外枠部54の中心軸位置に形成された円筒状(円環状)の軸受部55と、これら前側外枠部54と軸受部55とを連結補強する連結リブ56とを一体に備えている。
【0040】
前側外枠部54は、後側外郭部22の前端側に挿入される直線円筒状の挿入部58と、この挿入部58の前端部に段差状に連続する第1の摺接部としての前側摺接部59とを有している。
【0041】
挿入部58には、後方から嵌め込まれた後側ハウジング52との間で各ルーバ47を回動可能に軸支するための一のルーバ軸受部としての軸支開口部58aが上下左右にそれぞれ後端部から切り欠き形成されているとともに、後側ハウジング52を位置決め及び回り止めするための複数の位置決め開口58bがこれら軸支開口部58a間の位置に切り欠き形成されている。
【0042】
前側摺接部59の外周部は、外郭部15の内周側(摺接面31a)と摺接する球面の一部をなす摺接面部59aとなっている。
【0043】
軸受部55は、連結部46が取り付けられる部分であり、前側外枠部54(前側摺接部59)の中心軸側で円環状に形成され、好ましくは同軸状(同心状)の円環状に形成されている。すなわち、この軸受部55は、ハウジング部45(前側ハウジング51)の中心軸(軸芯)を囲んで形成されている。また、この軸受部55の内周部には、位置決め及び回り止め用の複数のリブ部55aが径方向に沿って中心軸側に向けて放射状に突設されている。
【0044】
連結リブ56は、放射状、及び、円環状に形成されて互いに連結されている。
【0045】
後側ハウジング52は、第2の外枠部としての円筒状(円環状)の後側外枠部61と、この後側外枠部61の内周部に突設された他のルーバ軸受部としての軸支凸部62、及び、位置決め凸部63とを一体に備えている。
【0046】
後側外枠部61は、外周部が外郭部15の内周側(摺接面31a)と摺接し摺接面部59aと同一の球面の一部をなす摺接面部61aとなっている。そして、この後側外枠部61の内周側に前側外枠部54が重ねられることで、円環状(円筒状)の外枠部65が構成されている。
【0047】
軸支凸部62は、後側外枠部61の内周部の上下左右にそれぞれ突設されており、軸方向に沿って平行に前後方向、すなわち後側ハウジング52の前側ハウジング51への取り付け方向に直線状に伸びている。そして、これら軸支凸部62は、前側ハウジング51の軸支開口部58aにそれぞれ後方から挿入されており、これら軸支凸部62の前端部と軸支開口部58aの前端部との間が、各ルーバ47の外側を回動可能に軸支するための外側軸支部としての円孔状の外側軸支孔67となっている。
【0048】
位置決め凸部63は、後側外枠部61の内周部の軸支凸部62間にそれぞれ突設されており、軸方向に沿って平行に前後方向、すなわち後側ハウジング52の前側ハウジング51への取り付け方向に直線状に伸びている。そして、これら位置決め凸部63は、前側ハウジング51の位置決め開口58bにそれぞれ後方から挿入され、後側ハウジング52を前側ハウジング51に対して位置決め及び回り止めしている。
【0049】
また、連結部46は、ハウジング部45(軸受部55)に対して回動可能な操作体であるノブ71と、このノブ71と別体でハウジング部45(軸受部55)に対して固定される固定体であるスペーサ72とを備えている。そして、この連結部46は、リンク体73を介して、外郭部15(後側外郭部22(アッシ軸支部38))に回動可能に軸支されている。
【0050】
ノブ71は、操作部としての操作ノブ75と、この操作ノブ75に後方から取り付けられてスペーサ72を挟持する作動部としてのノブ部76とを備えている。
【0051】
操作ノブ75は、使用者がノブ71を操作する際に摘むものであり、ハウジング部45(前側ハウジング51)に対して前方から取り付けられ、吹出口27よりも前方に突出して外部操作可能となっている。この操作ノブ75は、有蓋円筒状に形成されて軸受部55の前端部に当接される操作部本体としての操作ノブ本体75aと、この操作ノブ本体75aから同軸状に後方に突出して軸受部55に挿入される軸受挿入部75bとを備えている。そして、この操作ノブ75は、軸受部55(ハウジング部45(前側ハウジング51))に対して、周方向に回動可能に軸支されている。
【0052】
軸受挿入部75bには、ノブ部76を係止するための係止孔75cが中心軸に対して互いに対向する位置にそれぞれ開口されている。
【0053】
ノブ部76は、スペーサ72に後方から挿入されて操作ノブ75と連結され、スペーサ72を軸方向(前後方向)に挟持するとともに、操作ノブ75と一体的に回動するものである。このノブ部76は、操作ノブ75の軸受挿入部75bが挿入される円筒状の受け部76aと、この受け部76aの後端部から径方向にフランジ状に突出するフランジ部76bと、このフランジ部76bから後方に突設された複数の突起部76cとを一体に備え、スペーサ72の内径寸法よりも小さい外径寸法、及び、スペーサ72の軸寸法よりも小さい軸寸法を有して、このスペーサ72の内部に収容されている。
【0054】
受け部76aは、スペーサ72に回動可能に挿入される部分であり、内周部に、内部に挿入された軸受挿入部75bの各係止孔75cに係合する係合爪部76dがそれぞれ突設されている。したがって、これら係合爪部76d,76dと係止孔75c,75cとの係合によってノブ部76と操作ノブ75とが一体的に連結されている。
【0055】
フランジ部76bの前面部には、抜止部76e,76eが互いに中心軸に対して反対側の位置に、径方向に沿ってリブ状に突設されている。そして、これら抜止部76e,76eがスペーサ72に対して当接することで、ノブ部76を前方向に抜け止めしている。したがって、ノブ71は、操作ノブ75の操作ノブ本体75aが軸受部55の前端部に当接され、ノブ部76の抜止部76e,76eがスペーサ72に後方から当接されることで、ハウジング部45(前側ハウジング51)に対する軸方向(前後方向)の位置が固定されている。
【0056】
突起部76cは、ルーバ47の数と同数設定されている。したがって、本実施の形態では、突起部76cは4つ設定されている。これら突起部76cは、例えばフランジ部76bの外周近傍の位置に周方向に沿って湾曲した円弧状に形成されており、周方向に略等角度(略等間隔)に配置されて互いに離間されている。そして、これら突起部76cは、ノブ部76と操作ノブ75とが一体的に連結されていることにより、ノブ71(操作ノブ75)の周方向の回動操作に追従して周方向に回動するようになっている。
【0057】
スペーサ72は、円筒状の接続部78と、この接続部78の後端部に連続する固定体本体としての円筒状のスペーサ本体79と、このスペーサ本体79の後端部に後方へ向けて突設されリンク体73を回動可能に軸支する軸支片部80,80とを一体に備えている。なお、このスペーサ72は、ハウジング部45(前側ハウジング51)の軸受部55と一体に形成されていてもよい。
【0058】
接続部78は、軸受部55に対して後方から挿入されてこの軸受部55よりも前方に前端部が位置してノブ71の操作ノブ75の操作ノブ本体75a内に挿入されるものである。この接続部78の外周部には、軸受部55の一のリブ部55aが間に挿入される回り止めリブ部78a,78aが軸方向に平行に突設されている。また、この接続部78の外周面には、軸受部55の他のリブ部55aがそれぞれ挿入される複数の回り止め開口78bが周方向に互いに離間されて開口されている。したがって、スペーサ72は、接続部78の回り止めリブ部78a,78a間に軸受部55のリブ部55aが挿入されるとともに、各回り止め開口78bに軸受部55のリブ部55aがそれぞれ係合されることで、ハウジング部45(前側ハウジング51(軸受部55))に対して周方向に回り止め固定されている。
【0059】
スペーサ本体79は、接続部78よりも外径寸法が大きく形成されている。したがって、このスペーサ本体79と接続部78とが連続する部分は、段差状に拡開する固定体係止部としてのスペーサストッパ部83となっている。また、このスペーサ本体79の外周面には、各ルーバ47の内側を回動可能に軸支するための内側軸支部としての円孔状の内側軸支孔84と、各ルーバ47を回動させるための長孔状の操作開口85とがそれぞれ開口されている。
【0060】
スペーサストッパ部83は、軸受部55の後面に当接することでハウジング部45(前側ハウジング51(軸受部55))に対するスペーサ72の軸方向(前後方向)の位置を設定している。
【0061】
各内側軸支孔84は、ルーバ47の数と同数、すなわち本実施の形態では4つ、スペーサ本体79の前端部近傍の位置に開口されている。また、各内側軸支孔84は、スペーサ72(スペーサ本体79)の周方向に互いに略等角度(略等間隔)に離間されて配置されている。さらに、各内側軸支孔84は、各外側軸支孔67と、ハウジング部45の径方向(中心軸に対して交差(直交)する方向)に沿う仮想的な同一直線上に位置している。
【0062】
各操作開口85は、ルーバ47の数と同数、すなわち本実施の形態では4つ、スペーサ本体79の各内側軸支孔84の後方にそれぞれ離間された位置に開口されている。また、各操作開口85は、各内側軸支孔84(各内側軸支孔84の中心)を中心とする円弧に沿って湾曲状に形成されており、スペーサ72(スペーサ本体79)の周方向に沿って長手状で、かつ、このスペーサ72(スペーサ本体79)を径方向に貫通して形成されている。すなわち、各操作開口85によりスペーサ72(スペーサ本体79)の内周側と外周側とが連通している。また、各操作開口85は、ノブ71の各突起部76cに対応する位置に配置されている。
【0063】
軸支片部80,80は、スペーサ72の中心軸に対して互いに反対側に位置しており、本実施の形態では、互いに対向する操作開口85,85の後方の位置に突設されている。これら軸支片部80,80には、リンク体73を軸支する円孔状の軸支孔部80a,80aが開口されている。
【0064】
リンク体73は、外郭部15(後側外郭部22のアッシ軸支部38の軸支孔38b,38b)に回動可能に軸支される第1のリンク軸支部87,87を左右両側に備えるとともに、ルーバアッシ16(スペーサ72の軸支孔部80a,80a)に回動可能に挿入されてこのルーバアッシ16(スペーサ72の軸支孔部80a,80a)を軸支する第2のリンク軸支部88,88を上下両端に備え、十字状に形成されている。すなわち、リンク体73は、外郭部15に対して上下方向に回動可能であるとともに、ルーバアッシ16(スペーサ72)をこの上下方向と交差(直交)する左右方向に回動可能に軸支している。したがって、このリンク体73によって、ルーバアッシ16全体(スペーサ72)が外郭部15に対して上下左右の任意方向に回動可能となっている。
【0065】
そして、各ルーバ47は、フィンなどとも呼ばれ、風向を制御する板状のルーバ本体91と、このルーバ本体91から突設されたピン状の外側回動軸92、内側回動軸93及び作動軸94とをそれぞれ備えている。
【0066】
ルーバ本体91は、ハウジング部45の内方、すなわちハウジング部45の外枠部65とスペーサ72との間の流路に位置し、回動軸92,93を前端側として風上側である後方へと延びている。また、このルーバ本体91の後端部は、外枠部65側からスペーサ72側へと、前方に徐々に傾斜する傾斜部91aとなっている。なお、このルーバ本体91は、前後幅を長くするほど拡散モードでの拡散範囲を拡大でき、前後幅を短くするほど拡散モードでの通気抵抗を抑制できるため、必要な拡散範囲及び通気抵抗に応じて前後幅を設定する。
【0067】
外側回動軸92は、ルーバ本体91の前端部の外側、すなわち外枠部65に対向する位置に、このルーバ本体91の厚み方向に対して交差(直交)する方向に突設され、各外側軸支孔67に回動可能に軸支されている。
【0068】
内側回動軸93は、ルーバ本体91の前端部の内側、すなわちスペーサ72に対向する位置に、このルーバ本体91の厚み方向に対して交差(直交)する方向に突設され、各内側軸支孔84に回動可能に軸支されている。また、この内側回動軸93は外側回動軸92と同軸上に位置し、ルーバ本体91の前端部に配置されている。したがって、各ルーバ47(ルーバ本体91)は、外側回動軸92及び内側回動軸93の位置で、ハウジング部45の径方向に沿って放射状となっている。
【0069】
作動軸94は、ルーバ本体91のスペーサ72の外周面に対向し、かつ、この内側回動軸93よりも後方に離間された位置に、このルーバ本体91の厚み方向に対して交差(直交)する方向に、すなわち内側回動軸93に対して略平行に突設されている。換言すれば、内側回動軸93が作動軸94よりも前方(風下側)に位置している。また、作動軸94は、各操作開口85に遊嵌されており、この操作開口85に沿って移動可能となっているとともに、各操作開口85からスペーサ72の内部へと突出し、ノブ71の突起部76c,76c間に挿入されて位置し、突起部76c,76cによって挟持されている。したがって、ノブ71の回動操作により回動した突起部76cによって作動軸94が押されることで、回動軸92,93を中心としてルーバ47のルーバ本体91の後側が周方向に傾斜するように回動可能となっている。
【0070】
そして、上記の風向調整装置10を組み立てる際には、まず、スペーサ72の後方からノブ部76を挿入するとともに、このスペーサ72に対して、各内側軸支孔84及び各操作開口85に各内側回動軸93及び各作動軸94を差し込んで各ルーバ47を取り付ける。この状態で、各作動軸94は、スペーサ72の内方で突起部76c,76c間に挿入挟持される。
【0071】
次いで、これらスペーサ72、ノブ部76及び各ルーバ47を、ハウジング51,52により前後から挟み込む。すなわち、スペーサ72の接続部78を前側ハウジング51の軸受部55に後方から挿入するとともに、前側ハウジング51の各軸支開口部58a及び各位置決め開口58bに対して、後側ハウジング52の軸支凸部62及び位置決め凸部63を後方から嵌合させてハウジング51,52を互いに連結してハウジング部45を構成する。この状態で、スペーサ72は、回り止めリブ部78a,78a間に軸受部55のリブ部55aが挿入されるとともに、各回り止め開口78bに軸受部55のリブ部55aがそれぞれ係合されて軸受部55に固定される。また、ハウジング部45の各軸支開口部58aと各軸支凸部62との間の外側軸支孔67に各ルーバ47の外側回動軸92が回動可能に軸支される。
【0072】
さらに、前側ハウジング51の軸受部55に対して操作ノブ75を前方から組み付けてノブ部76と接続し、ルーバアッシ16を構成するとともに、スペーサ72の軸支片部80,80の軸支孔部80a,80aに対してリンク体73の第2のリンク軸支部88,88を組み付ける。この状態で、操作ノブ75は、軸受挿入部75bがノブ部76の受け部76aに挿入され、係止孔75c,75cに係合爪部76d,76dが係合されてノブ部76と一体的に連結される。
【0073】
そして、リンク体73の第1のリンク軸支部87,87を後側外郭部22のアッシ軸支部38の軸支孔38b,38bに組み付けてルーバアッシ16を後側外郭部22に上下方向に回動可能に軸支した後、この後側外郭部22の回り止め凸部35a,35a及び各係止爪部35bが、前側外郭部21の回り止め部32a,32a及び各係止孔部32bに挿入するように組み付けて外郭部15を構成し、さらにフィニッシャ26を外郭部15の外壁部24に対して前方から取り付けて、風向調整装置10を完成する。
【0074】
このように組み立てた風向調整装置10は、吹出口27から露出するノブ71の操作ノブ75を摘んで上下左右に回動させることで、ルーバアッシ16(ハウジング部45)が外郭部15に対して上下左右に任意に回動するとともに、このノブ71の操作ノブ75を周方向に時計回り、または反時計回りに回動させることによって、各ルーバ47を動作させ、
図2(a)及び
図2(b)に示すように風を集中させる集中モードと、
図3(a)及び
図3(b)に示すように風を拡散させる拡散モードとに切り換える。
【0075】
集中モード時には、一方向に回動されたノブ71の操作ノブ75に連結されたノブ部76に突設された各突起部76cがノブ71(操作ノブ75)の回動方向に同期して回動し、突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸94が各操作開口85に沿ってこの操作開口85の一方向へとそれぞれ押されて移動し、この作動軸94の位置が回動軸92,93の後部に対向してルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)全体がハウジング部45の径方向に沿って放射状となるように退避することで、空調装置のブロワを介して導入口40から流路に導入された風の方向を各ルーバ本体91が基本的に変えることなくルーバアッシ16(ハウジング部45)の軸方向に沿って直進させて、風を吹出口27から前方に吹き出す。
【0076】
一方、拡散モード時には、他方向に回動されたノブ71の操作ノブ75に連結されたノブ部76に突設された各突起部76cがノブ71(操作ノブ75)の回動方向に同期して回動し、突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸94が各操作開口85に沿ってこの操作開口85の他方向へとそれぞれ押されて移動し、これら作動軸94の位置が回動軸92,93の後部に対向しない位置(回動軸92,93)である側方に位置して各ルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)がハウジング部45の軸方向である前後方向に対して傾斜する方向にそれぞれ同方向に回動(傾動)して進出することで、風がこれらルーバ47のルーバ本体91に沿って拡散されて吹出口27から吹き出す。
【0077】
上記のように、本実施の形態では、ルーバ本体91に突設した内側回動軸93を、ハウジング部45の内部が流路となる筒状(円筒状)の外枠部65の中心軸側に設けた軸受部55に固定されるスペーサ72に設けた内側軸支孔84に軸支するとともに、ルーバ本体91にて内側回動軸93に対して離間された位置に突設した作動軸94を、スペーサ72に設けた操作開口85に挿入して、軸受部55及びスペーサ72に対して回動可能なノブ71の外部操作による回動に伴う突起部76cの回動によってこの突起部76cで作動軸94を押すことでルーバ47を進退させる構成とした。この結果、ノブ71と各ルーバ47との連結に例えば歯車などの精密な部品を用いることなく、簡略な構成で複数のルーバ47を連動させることができ、ノブ71、スペーサ72及びルーバ47の連結構造を小型にできるので、部品の形成に手間が掛からず、組み付け(組み立て)が容易であるなど、製造コストを抑制できるとともに、風向調整装置10を容易に設計でき、かつ、通気抵抗の低減及び風向調整装置10としてのデザインやレイアウトの自由度を向上できる。
【0078】
また、ルーバ47のルーバ本体91に突設した外側回動軸92をハウジング部45の外枠部65に設けた外側軸支孔67に軸支することで、ルーバ47を外枠部65に対して、より確実に支持しつつ、ルーバ47をより円滑に回動させることができる。
【0079】
具体的に、ハウジング部45は、前側ハウジング51と後側ハウジング52とによって構成し、前側ハウジング51の各軸支開口部58aと後側ハウジング52の各軸支凸部62とで外側回動軸92を前後に挟み込んでこの外側回動軸92を各外側軸支孔67によって軸支することで、容易に組み付けできる。また、ノブ71は、操作ノブ75とノブ部76とによってスペーサ72を挟み込んで軸受部55に取り付けることで、容易に組み付けできる。
【0080】
また、各ルーバ47は、内側回動軸93を作動軸94よりも風下側(後側)に設けることで、例えば拡散モード時では各ルーバ47の風上側、すなわち吹出口27に対して離間された後側が流路内へと進出するように傾動するなど、各ルーバ47(ルーバ本体91)が乗員から目視されにくく、見栄えがより向上する。
【0081】
さらに、ハウジング部45を収容する外郭部15に対してリンク体73を所定の一の往復方向である上下方向に回動可能に軸支するとともに、スペーサ72をリンク体73に対して他の往復方向である左右方向に回動可能に軸支することで、スペーサ72及びこのスペーサ72が軸受部55に固定されたハウジング部45及びルーバアッシ16を任意の方向に振ることができ、ハウジング部45(ルーバアッシ16)の振り角を大きくとることができる。
【0082】
次に、第2の実施の形態を
図8ないし
図15を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0083】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態のスペーサ72のスペーサ本体79が角筒状に形成され、このスペーサ本体79の各面に開口された各内側軸支孔84の風下側である前側に、長孔状の操作開口85がスペーサ72の周方向に沿ってかつ内側軸支孔84と同心状に湾曲してそれぞれ開口されている。また、このスペーサ本体79の後端部の左右両側には、風の吹き抜けを防止する吹き抜け防止体としてのカバー101を取り付けるための受け部102がそれぞれ切り欠き形成されている。
【0084】
カバー101は、四角形板状の防止体本体としてのカバー本体104と、このカバー本体104の両側から突出して受け部102にそれぞれ嵌合固定される舌片状の被保持片部105(一方のみ図示)とを一体的に備えている。そして、このカバー101は、スペーサ72の後部に、リンク体73よりも前方の位置で固定されてカバー本体104がスペーサ本体79の後端部を閉塞し、このカバー本体104(カバー101)の内部の風の吹き抜けを防止している。
【0085】
また、ルーバ47は、ルーバ本体91が長手状に形成されており、このルーバ本体91の長手方向の略中央部に内側回動軸93が突設されているとともに、作動軸94に代えて、内側回動軸93よりも風下側すなわち前側に離間された位置にてルーバ本体91に突設された作動軸106を備えている。
【0086】
そして、ルーバ本体91は、互いに平面状に重ねられることでスペーサ72のスペーサ本体79の外方でかつハウジング部45内の流路を略隙間なく閉塞可能な形状となっている。すなわち、ルーバアッシ16は、連結部46によって各ルーバ47を連動させることで、風を所定方向に集中させる集中モード(中立モード)と風を拡散させる拡散モードとハウジング部45内を閉塞する遮断モード(シャットモード)とを連続的に切り換えることが可能となっている。
【0087】
作動軸106は、ルーバ本体91の側部からこのルーバ本体91の厚み方向(側方)へと突出する突出部106aと、この突出部106aの先端に略直角状に屈曲して連続する連結部106bと、この連結部106bの先端部にこの連結部106bに対して鈍角状に屈曲して連続する挿入軸部106cとを一体に備える略コ字状に形成されている。また、この作動軸106は、突出部106a、連結部106b及び挿入軸部106cがルーバ本体91の厚み方向(
図12の矢印A方向)に見て、上下方向に沿って略一直線上に配置されている。
【0088】
突出部106aは、ルーバ本体91に対して略垂直状に突出しており、例えばルーバ本体91の板厚よりも大きく突出している。
【0089】
連結部106bは、突出部106aに対してノブ71(ノブ部76)側であるハウジング部45の中心軸側へと、換言すればルーバ本体91に対してハウジング部45の内方へと直線状に延びている。すなわち、この連結部106bは、内側回動軸93に対して略平行に形成されている。
【0090】
挿入軸部106cは、連結部106bの先端部からルーバ本体91の厚み方向に折り返すように、ノブ71(ノブ部76)側に向けて屈曲しており、操作開口85からノブ部76の突起部76c,76c間に挿入され、これら突起部76c,76cにより略隙間なく挟持されている。したがって、この挿入軸部106cは、突起部76c,76c間に、ノブ71(ノブ部76)の径方向にほぼ沿って挿入されている。
【0091】
そして、風向調整装置10は、吹出口27から露出するノブ71の操作ノブ75を周方向に時計回り、または反時計回りに回動させることによって、各ルーバ47を動作させ、
図9(a)及び
図9(b)に示すように風を集中させる集中モードと、
図10(a)及び
図10(b)に示すように風を拡散させる拡散モードと、
図11(a)及び
図11(b)に示すように風を遮断する遮断モードとに切り換える。
【0092】
図9(a)及び
図9(b)に示す集中モード時には、一方向に回動されたノブ71の操作ノブ75に連結されたノブ部76に突設された各突起部76cがノブ71(操作ノブ75)の回動方向に同期して回動し、突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸106の挿入軸部106cが各操作開口85に沿ってこの操作開口85の一方向へとそれぞれ押されて移動し、前後方向に見て作動軸106が各ルーバ47の一側方に略コ字状に突出する位置関係となって、各ルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)全体がハウジング部45の径方向に沿って放射状となるように退避することで、導入口40から流路に導入された風の方向を各ルーバ本体91が基本的に変えることなくルーバアッシ16(ハウジング部45)の軸方向に沿って直進させて、風を吹出口27から前方に吹き出す。
【0093】
また、
図10(a)及び
図10(b)に示す拡散モード時には、他方向に回動されたノブ71の操作ノブ75に連結されたノブ部76に突設された各突起部76cがノブ71(操作ノブ75)の回動方向に同期して回動し、突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸106の挿入軸部106cが各操作開口85に沿ってこの操作開口85の他方向へとそれぞれ押されて移動し、各ルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)がハウジング部45の軸方向である前後方向に対して傾斜する方向にそれぞれ同方向に回動(傾動)することで、風がこれらルーバ47のルーバ本体91に沿って拡散されて吹出口27から吹き出す。
【0094】
さらに、
図11(a)及び
図11(b)に示す遮断モード時には、
図10(a)及び
図10(b)に示す拡散モードからさらに他方向に回動されたノブ71の突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸106の挿入軸部106cが各操作開口85に沿ってこの操作開口85の他端へとそれぞれ押されて移動し、作動軸106と回動軸92,93とが左右(ハウジング部45の周方向)の位置関係となるまで、換言すれば、前後方向に見て作動軸106が回動軸92,93の他側方に上下方向に沿って一直線状となるように位置するまで、各ルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)がハウジング部45の軸方向である前後方向に対して略直交する方向にそれぞれ同方向に回動(傾動)することで、全てのルーバ47がハウジング部45の軸方向と略直交する平面に沿って互いに重ねられてハウジング部45内の流路が閉塞され、風が遮断されて吹出口27から吹き出さない。
【0095】
このように、本実施の形態では、ノブ71と各ルーバ47との連結に例えば歯車などの精密な部品を用いることなく、簡略な構成で複数のルーバ47を連動させることができ、ノブ71、スペーサ72及びルーバ47の連結構造を小型にできるので、部品の形成に手間が掛からず、組み付け(組み立て)が容易であるなど、製造コストを抑制できるとともに、風向調整装置10を容易に設計でき、かつ、通気抵抗の低減及び風向調整装置10としてのデザインやレイアウトの自由度を向上できるなど、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
また、各ルーバ47は、内側回動軸93を作動軸106よりも風上側(前側)に設けることで、ルーバ47及びルーバ本体91の回動範囲をより大きくすることができ、ルーバ47及びルーバ本体91によってハウジング部45内の流路を全閉(遮断)することが可能になる。
【0097】
すなわち、回動軸92,93に対して作動軸106を離間するほど、各ルーバ47(ルーバ本体91)の回動範囲が大きくなるものの、連結部46は、風上側にリンク体73が位置しているため、回動軸92,93を作動軸106に対して風下側に位置させると、作動軸106を回動軸92,93から離間するスペースを充分に取ることが容易でなく、仮にスペースを取ると、リンク体73の位置をさらに風上側へとずらす必要があり、連結部46(スペーサ72)及びハウジング部45が前後方向に大きくなり、リンク体73を中心として回動するハウジング部45を収容する外郭部15も大きさが大きくなってしまう。そこで、内側回動軸93を作動軸106よりも風上側とすることで、リンク体73の位置を変えることなく作動軸106と内側回動軸93とを離間するスペースを確保できるので、連結部46(スペーサ72)、ハウジング部45及び外郭部15の大きさ、すなわち風向調整装置10の大きさを大きくすることなく、ルーバ47及びルーバ本体91の回動範囲を増加させることができる。
【0098】
さらに、作動軸106を、ルーバ本体91から厚み方向に突出する突出部106aと、この突出部106aからノブ71(ノブ部76)側へと屈曲する連結部106bと、この連結部106bの先端部からルーバ本体91の厚み方向に折り返すようにノブ71(ノブ部76)側に向けて屈曲する挿入軸部106cとにより構成することで、ルーバ47の回動に伴う突起部76c,76c間への挿入軸部106cの挿入角度の変化が抑制され、突起部76c,76c間の距離Dを小さく設定できるので、ノブ71(ノブ部76)の大きさを抑制でき、風向調整装置10をより小型化できる。
【0099】
すなわち、
図13(a2)及び
図13(b2)に示す直線状の作動軸108a、あるいは、
図13(a3)及び
図13(b3)に示す直角状の作動軸108bでは、集中モード時と拡散モード(遮断モード)時とのいずれかの場合に、突起部76c1,76c1間及び突起部76c2,76c2間に対して作動軸108a,108bが径方向と交差する方向に沿って傾斜状に挿入されることとなるなど、ルーバ47の回動に伴う突起部76c1,76c1間及び突起部76c2,76c2間への作動軸108a,108bの挿入角度が大きく変化してしまうため、突起部76c1,76c1間及び突起部76c2,76c2間の距離Da,Dbを作動軸108a,108bの太さに対して大きく取る必要があり、ルーバ47(ノブ71(ノブ部76))の回動角度によって、作動軸108a,108bと突起部76c1,76c1間及び突起部76c2,76c2間との間に隙間Gが生じる(
図13(a2)及び
図13(b3))とともに、距離Da,Dbを大きくするために、ノブ71(ノブ部76)の大きさが大きくなる。これに対して、本実施の形態では、作動軸106の先端側をさらに屈曲させて挿入軸部106cを形成することで、
図13(a1)に示す集中モードであっても、
図13(b1)に示す拡散モードまたは遮断モードであっても、ルーバ47の回動によって挿入軸部106cが突起部76c,76c間に略径方向に沿って挿入される状態を維持することとなる。したがって、突起部76c,76cの間の距離Dを、挿入軸部106cの太さと略等しく設定でき、いずれのモードであっても隙間なく、すなわちがたつきなく挟持することができ、操作性及び品質を向上できるとともに、ノブ71(ノブ部76)の大きさも大きくせずに済み、風向調整装置10をより小型に形成できる。
【0100】
次に、第3の実施の形態を
図16ないし
図23を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0101】
この第3の実施の形態は、上記の第2の実施の形態の各ルーバ47(ルーバ本体91)にそれぞれ通気開口110が形成されているものである。
【0102】
各通気開口110は、ベントなどとも呼ばれるもので、
図20及び
図22に示すように、ルーバ47(ルーバ本体91)を厚み方向に貫通して設けられている。この通気開口110は、例えば内側回動軸93寄りの位置、換言すれば中心軸側の位置に開口され、ルーバ47(ルーバ本体91)の外形に沿って略菱形状となっている。
【0103】
したがって、ルーバアッシ16は、連結部46によって各ルーバ47を連動させることで、風向を変えることなく通気させる通常の集中モードである通常モードと通気開口110によって風をさらに集中させる凝縮モードとを連続的に切り換えることが可能となっている。
【0104】
また、ルーバ47の内側回動軸93は、外側回動軸92よりも風下側の位置で内側軸支孔84に軸支されており、これら回動軸92,93が、ルーバアッシ16(ハウジング部45)の径方向に対して風上側に傾斜した状態で保持されている。このため、ルーバ47のルーバ本体91の傾斜部91aが、ルーバアッシ16(ハウジング部45)中心軸に対して略平行な状態となっている。
【0105】
また、
図20及び
図21に示すように、ノブ部76には、操作ノブ75に挿入連結される連結部76fが受け部76aに突設されている。また、このノブ部76は、フランジ部76bの周縁部から風上側に向かって各突起部76cが突設されている。
【0106】
そして、風向調整装置10は、吹出口27から露出するノブ71の操作ノブ75を周方向に時計回り、または反時計回りに回動させることによって、各ルーバ47を動作させ、
図16及び
図18に示すように風を中心軸近辺に集中させる凝縮モードと、
図17及び
図19に示すように風を直線状に通気させる通常モードとに切り換える。なお、本実施の形態では、各ルーバ47に通気開口110が形成されているため、風を遮断する遮断モード、及び風を拡散させる拡散モードは備えていない。
【0107】
図16及び
図18に示す凝縮モード時には、ノブ71の突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸106の挿入軸部106cが各操作開口85に沿ってこの操作開口85の他端へとそれぞれ押されて移動し、作動軸106と回動軸92,93とが左右(ハウジング部45の周方向)の位置関係となるまで、換言すれば、前後方向に見て作動軸106が回動軸92,93の他側方に上下方向に沿って一直線状となるように位置するまで、各ルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)がハウジング部45の軸方向である前後方向に対して略直交する方向にそれぞれ同方向に回動(傾動)することで、全てのルーバ47がルーバアッシ16(ハウジング部45)の軸方向に対して外側が風上側に傾斜するように、換言すれば外側から内側に向けて徐々に風下側に傾斜するように位置し、導入口40から流路に導入された風をルーバ本体91に沿ってルーバアッシ16(ハウジング部45)の中心軸側へと集中させつつ通気開口110に通過させ、ルーバアッシ16(ハウジング部45)の軸方向に沿って吹出口27の中心付近に直進させて、風を吹出口27から集中的に前方に吹き出す。
【0108】
また、
図17及び
図19に示す通常モード時には、一方向に回動されたノブ71の操作ノブ75に連結されたノブ部76に突設された各突起部76cがノブ71(操作ノブ75)の回動方向に同期して回動し、突起部76c,76c間に挟持された各ルーバ47の作動軸106の挿入軸部106cが各操作開口85に沿ってこの操作開口85の一方向へとそれぞれ押されて移動し、前後方向に見て作動軸106が各ルーバ47の一側方に略コ字状に突出する位置関係となって、各ルーバ47のルーバ本体91(ルーバ本体91の両側面)全体がハウジング部45の径方向に沿って放射状となるように退避することで、通気開口110の開口方向が風の方向に対して略直交する方向となって風の方向に影響せず、導入口40から流路に導入された風の方向を各ルーバ本体91が基本的に変えることなくルーバアッシ16(ハウジング部45)の軸方向に沿って直進させて、風を吹出口27から前方に吹き出す。
【0109】
このように、本実施の形態では、ノブ71と各ルーバ47との連結に例えば歯車などの精密な部品を用いることなく、簡略な構成で複数のルーバ47を連動させることができ、ノブ71、スペーサ72及びルーバ47の連結構造を小型にできるので、部品の形成に手間が掛からず、組み付け(組み立て)が容易であるなど、製造コストを抑制できるとともに、風向調整装置10を容易に設計でき、かつ、通気抵抗の低減及び風向調整装置10としてのデザインやレイアウトの自由度を向上できるなど、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
また、各ルーバ47のルーバ本体91を厚み方向に貫通して通気開口110を開口することで、各ルーバ47を進出させるように、すなわちルーバアッシ16(ハウジング部45)の軸方向に対して交差する方向回動させた状態で通気開口110により風を吹出口27の中央側に集中させ、簡単な構成で風の流速を速めるこができる。
【0111】
さらに、通気開口110は、ルーバ本体91の内側回動軸93寄りの位置に開口することで、より効果的に風を吹出口27の中央側に集中させることができる。
【0112】
しかも、各ルーバ47は、内側回動軸93を外側回動軸92よりも風下側の位置で内側軸支孔84に軸支して回動軸92,93をルーバアッシ16(ハウジング部45)の径方向に対して風上側に傾斜させることで、各ルーバ47を進出させるように回動させたときにルーバ本体91に沿って風をルーバアッシ16(ハウジング部45)の中心軸側へと集中させることができ、通気抵抗を抑制しつつ、より効果的に吹出口27の中央側に風を集中させることができる。
【0113】
具体的に、
図16及び
図18に示す凝縮モード時に対応する状態と、
図17及び
図19に示す通常モード時に対応する状態とでの所定の入力流量(例えば1.0m
3/min)に対する前席乗員位置での風速断面を、
図23(a)及び
図23(b)に示す。この
図23(a)には、等速線(等圧線)を示しており、風速(圧力)S1〜S7は、風速S1から風速S7へと順次大きくなるように図示されている。そして、
図23(a)に示す凝縮モード時には、
図23(b)に示す通常モード時よりも、風の範囲が狭く、かつ、中央部分の風速が大きくなっていることが分かる。
【0114】
そして、例えば夏場の空調として、涼しい風を浴びたい、車内温度を早く下げたいなどの要望があるが、従来例では、単に空調装置のブロワの性能によって対応するのみであったのに対して、本実施の形態では、ノブ71の回動操作により容易に集中風を作り出し、個々の通気開口110で自在に流速を可変することができる。したがって、空調装置のブロワからの風の温度を変更することなく体感温度を下げることができ、ブロワ性能の最大値を上回る涼しい風を供給できる。このため、空調装置の温度設定の下げ幅を抑制でき、消費電力を抑制できるので、特に電気自動車に有効に適用できる。また、風速を上げているので、後部座席に素早く涼しい風を送ることが可能となる(サーキュレーション機能)。この結果、風向調整装置10によって、低コストで簡易的な独立温調機能を付加することができる。
【0115】
なお、上記の第3の実施の形態の通気開口110は、上記の第1の実施の形態に適用してもよい。
【0116】
また、上記の各実施の形態において、車両用空調装置の一部としてだけでなく、任意の空調装置の一部として用いることができる。
【0117】
さらに、外枠部65は、円筒状に限定されず、例えば角筒状、あるいは多角形筒状などでもよい
。