【文献】
Jpn J Clin Immunol., 2008,, Vol.31 No.5, p.392−398
【文献】
J Biomed Mater Res Pt A., 2008, Vol.85 No.4, p.983−992
【文献】
J Biomed Mater Res Pt A., 2008, Vol.84 No.4, p.885−898
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)前記第1の集団と前記第2の集団とが同じ集団であり、および/または(b)前記方法が、前記対象を提供する工程または同定する工程をさらに含み、および/または(c)前記抗原が、治療用タンパク質、自己抗原もしくはアレルゲンであるか、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織拒絶反応、もしくは移植片対宿主病に関連し、および/または(d)前記方法が、前記組成物の投与前および/または投与後に前記対象における抗原特異的制御性B細胞の生成を評価する工程をさらに含み、および/または(e)前記対象が、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器もしくは組織拒絶反応、または移植片対宿主病を有するまたは有するリスクがあり、および/または(f)前記対象が、移植を受けるまたは受けることになり、および/または(g)前記対象が、前記対象に投与されているまたは投与されることになる治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答を有する、または有するリスクがあり、および/または(h)前記ポリマー合成ナノキャリアの第1の集団および第2の集団を含む前記組成物の1つ以上の維持量が前記対象に投与され、および/または(i)前記投与が、静脈内投与、腹腔内投与、経粘膜投与、経口投与、皮下投与、経肺投与、鼻腔内投与、皮内投与、または筋肉内投与により、および/または(l)前記ポリマー合成ナノキャリアの第2の集団がMHCクラスI拘束性エピトープにも結合している、請求項1に記載の組成物。
前記方法が生成された抗原特異的制御性B細胞を回収する工程をさらに含み、任意に、(a)前記回収された抗原特異的制御性B細胞を含む剤形を製造する工程、および/または(b)前記回収された抗原特異的制御性B細胞または剤形を対象に投与できるようにする工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が、具体的に例示される材料またはプロセスパラメータに限定されず、従って、当然ながら変化し得ることを理解されたい。本明細書に使用される専門用語が、本発明の特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を説明する別の専門用語の使用を限定するものであることは意図されていないことも理解されたい。
【0042】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上記または下記にかかわらず、あらゆる目的のために、全体が参照により本明細書に援用される。
【0043】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される際、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数の指示対象を含む。例えば、ポリマー(a polymer)」への言及は、2つ以上のこのような分子の混合物または異なる分子量の単一のポリマー種の混合物を含み、「合成ナノキャリア(a synthetic nanocarrier)」への言及は、2つ以上のこのような合成ナノキャリアまたは複数のこのような合成ナノキャリアの混合物を含み、「DNA分子(a DNA molecule)」への言及は、2つ以上のこのようなDNA分子または複数のこのようなDNA分子の混合物を含み、「免疫抑制剤(an immunosuppressant)」への言及は、2つ以上のこのような材料または複数の免疫抑制剤分子の混合物を含むなどである。
【0044】
本明細書において使用される際、「含む(comprise)」という用語或いは「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などのその変化形は、任意の記載される整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または制限)或いは整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または制限)の群の包含を示すように読まれるべきであるが、任意の他の整数または整数の群を除外するものではない。従って、本明細書において使用される際、「含む(comprising)」という用語は、包含的なものであり、追加の記載されていない整数または方法/プロセス工程を除外するものではない。
【0045】
本明細書に提供される組成物および方法の何れかの実施形態において、「含む(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」と置き換えられることがある。「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、本明細書において、規定の整数または工程並びに権利請求される発明の性質または機能に実質的に影響を与えない整数または工程を必要とするのに使用される。本明細書において使用される際、「からなる(consisting)」という用語は、記載される整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または制限)或いは整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または制限)の群のみの存在を示すのに使用される。
【0046】
A.序文
B細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープを含む合成ナノキャリア組成物で免疫抑制剤および抗原を目的の細胞、特に、APCの作用部位に、より直接的に送達することにより、制御性B細胞を刺激し、抗原に特異的な有益な寛容原性免疫応答を起こさせることができる。実施例に示すように、合成ナノキャリア組成物は、IL−10およびTGF−βを産生し、また抗原を認識する(これは応答の抗原特異的性質に言及する)CD24+B細胞を生成するのに有効であることが判明した。さらに、同合成ナノキャリア組成物はIgE産生を低下させることが判明したが、これは制御性B細胞の産生の下流結果を示唆する。特定の理論に拘泥するものではないが、提供される組成物は、制御性細胞の生成、B細胞の制御性表現型へのスイッチなどを引き起こし得る、エピトープの認識の結果として直接、寛容原性免疫効果を提供することができる。寛容原性免疫応答は、サイトカインの産生および/またはこのようなサイトカインにより刺激された他の制御性免疫細胞の産生の結果であってもよい。制御性B細胞の生成はまた、下流寛容原性効果ももたらし得る。例えば、制御性B細胞は、CD4+T細胞などのエフェクターT細胞の増殖能を低下させることができる、および/または制御性T細胞におけるFoxP3およびCTLA−4発現を向上させることができる。制御性B細胞はまた、制御性サイトカイン、IL−10を産生することもできる。複数の実施形態では、本明細書で提供される抗原特異的itDCは、例えば、対象に対してこれらの効果を及ぼし得る。
【0047】
このような制御性B細胞の生成は、抗原特異的寛容原性免疫応答を惹起する本発明の組成物の能力を証明し、それは様々な疾患、障害、または症状の治療または予防に有用性を有し得る。従って、本発明は、例えば、アレルギー、自己免疫疾患、炎症性疾患、臓器もしくは組織拒絶反応、または移植片対宿主病を有するまたは有するリスクがある対象の寛容原性免疫応答を促進するのに有用である。本発明はまた、移植を受けたまたは移植を受けることになる対象の寛容原性免疫応答を促進するのにも有用である。本発明はまた、望ましくない免疫応答を惹起するまたは惹起することが予想される治療用タンパク質を投与された、投与されている、または投与されることになる対象の寛容原性免疫応答を促進するのにも有用である。本発明は、幾つかの実施形態では、特定の治療処置の有益な効果を相殺し得る望ましくない免疫応答を予防または抑制する。
【0048】
本発明者らは、予想外に且つ驚くべきことに、本明細書に開示される本発明を実施することにより前述の問題および制限を克服できることを発見した。特に、本発明者らは、予想外に、制御性B細胞の数および/または活性の増加により、寛容原性免疫応答を誘導する合成ナノキャリア組成物および関連する方法を提供することが可能であることを発見した。本明細書に記載の方法は、(i)免疫抑制剤に結合した合成ナノキャリアの第1の集団と、(ii)抗原のB細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープに結合した合成ナノキャリアの第2の集団とを含む組成物を対象に投与する工程を含む。好ましくは、組成物は、対象の抗原特異的制御性B細胞の増殖および/または活性をもたらすのに有効な量で投与される。別の態様では、(i)免疫抑制剤に結合した合成ナノキャリアの第1の集団と、(ii)抗原のB細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープに結合した合成ナノキャリアの第2の集団とを含む組成物を投与することにより、対象の抗原特異的制御性B細胞を生成する工程を含む方法が提供される。別の態様では、1人以上の被験者で抗原特異的制御性B細胞を生成することが以前示されたプロトコルに従って対象に組成物を投与する工程を含む方法であって、組成物が(i)免疫抑制剤に結合した合成ナノキャリアの第1の集団と、(ii)抗原のB細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープに結合した合成ナノキャリアの第2の集団とを含む方法が提供される。
【0049】
移植可能な移植片、治療用タンパク質などを、本明細書で提供される対象に投与してもよい。このような組成物は、合成ナノキャリアの第1の集団および第2の集団の投与前に、投与と同時に、または投与後に、対象に投与されてもよい。このような追加の作用物質は、合成ナノキャリアの第1の集団もしくは第2の集団または別の合成ナノキャリアの集団に結合していてもまたは結合していなくてもよい。複数の実施形態では、提供される組成物はまた、1つ以上の維持量として対象に投与されてもよい。このような実施形態では、提供される組成物は、所望の免疫応答の惹起が維持されるように、または望ましくない免疫応答がある一定時間、低下するように投与される。このような時間の長さの例については、本明細書の他の箇所に記載する。
【0050】
別の態様では、提供される方法の何れかに従って製造される単離された抗原特異的制御性B細胞を含む組成物が提供される。さらに別の態様では、合成ナノキャリアの第1の集団および第2の集団とを含む組成物も提供される。複数の実施形態では、組成物は、合成ナノキャリアの第1の集団もしくは合成ナノキャリアの第2の集団または別の合成ナノキャリアの集団に結合していてもまたは結合していなくてもよい移植可能な移植片または治療用タンパク質をさらに含む。
【0051】
別の態様では、本明細書の組成物の何れかの剤形が提供される。このような剤形を、対象、例えば、抗原特異的制御性B細胞の生成を必要とする対象に投与することができる。
【0052】
さらに別の態様では、(i)免疫抑制剤に結合した合成ナノキャリアの第1の集団を製造する工程、および(ii)抗原のB細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープに結合した合成ナノキャリアの第2の集団を製造する工程からなる方法が提供される。一実施形態では、本方法は、合成ナノキャリアの第1の集団および第2の集団を含む剤形を製造する工程をさらに含む。別の実施形態では、本方法は、合成ナノキャリアの第2の集団が抗原のB細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープを含むことを確実にする工程をさらに含む。一実施形態では、B細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性の存在は、B細胞エピトープでは抗体産生またはB細胞の増殖および/または活性、およびMHCクラスII拘束性エピトープではCD4+T細胞免疫応答などの、このようなエピトープの免疫応答を刺激する能力により確認することができる。これらの活性を測定する方法は当業者に周知であるか、または本明細書の他の箇所に記載されている。さらにまた別の実施形態では、本方法は、合成ナノキャリアの第1の集団および第2の集団を含む組成物または剤形での制御性B細胞の生成を評価する工程をさらに含む。一実施形態では、この評価は、in vitroで行われる。別の実施形態では、この評価は、in vivoで、例えば、対象から得られた試料などで行われる。さらに別の実施形態では、本方法は、合成ナノキャリアの第1の集団および第2の集団を含む組成物または剤形を対象に投与できるようにする工程をさらに含む。
【0053】
別の態様では、本明細書で提供される方法の何れかにより製造される組成物または剤形も提供される。
【0055】
B.定義
「投与する(administering)」または「投与(administration)」は、薬理学的に有用な方法で被験体に材料を提供することを意味する。
【0056】
「アレルゲン」は、被験体における望ましくない(例えば、1型過敏)免疫応答(即ち、アレルギー応答または反応)を引き起こし得る任意の物質である。アレルゲンとしては、以下に限定はされないが、植物アレルゲン(例えば、花粉、ブタクサアレルゲン)、昆虫アレルゲン、昆虫刺傷アレルゲン(例えば、ハチ刺傷アレルゲン)、動物アレルゲン(例えば、動物の鱗屑またはネコFel d 1抗原などのペットアレルゲン)、ラテックスアレルゲン、カビアレルゲン、真菌アレルゲン、化粧品アレルゲン、薬物アレルゲン、食物アレルゲン、粉塵、昆虫毒、ウイルス、細菌などが挙げられる。食物アレルゲンとしては、以下に限定はされないが、牛乳アレルゲン、卵アレルゲン、ナッツアレルゲン(例えば、ピーナッツまたは木堅果アレルゲンなど(例えば、クルミ、カシューナッツなど))、魚アレルゲン、甲殻類アレルゲン、大豆アレルゲン、豆類アレルゲン、種子アレルゲンおよび小麦アレルゲンが挙げられる。昆虫刺傷アレルゲンとしては、ハチ刺傷、カリバチ刺傷、ホーネット(hornet)刺傷、イエロージャケット(yellow jacket)刺傷などであるかこれらに関連するアレルゲンが挙げられる。昆虫アレルゲンとしては、イエダニアレルゲン(例えば、Der P1抗原)およびゴキブリアレルゲンも挙げられる。薬物アレルゲンとしては、抗生物質、NSAID、麻酔剤などであるかこれらに関連するアレルゲンが挙げられる。花粉アレルゲンとしては、草アレルゲン、樹木アレルゲン、雑草アレルゲン、花アレルゲンなどが挙げられる。本明細書に提供されるアレルゲンの何れかに対する望ましくない免疫応答を生じるかまたは生じるリスクがある被験体は、本明細書に提供される組成物および方法の何れかで治療され得る。提供される組成物および方法の何れかで治療され得る被験体は、提供されるアレルゲンの何れかに対するアレルギーを有するかまたは有するリスクがある被験体も含む。
【0057】
「アレルギー」は、本明細書において「アレルギー状態」とも呼ばれ、ある物質に対する望ましくない(例えば、1型過敏)免疫応答(即ち、アレルギー応答または反応)がある任意の状態である。このような物質は、本明細書においてアレルゲンと呼ばれる。アレルギーまたはアレルギー状態としては、以下に限定はされないが、アレルギー性喘息、花粉症、じんま疹、湿疹、植物アレルギー、ハチ刺傷アレルギー、ペットアレルギー、ラテックスアレルギー、カビアレルギー、化粧品アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎または鼻風邪、局所的アレルギー反応、アナフィラキシー、アトピー性皮膚炎、過敏性反応および他のアレルギー状態が挙げられる。アレルギー反応は、何らかのアレルゲンに対する免疫反応の結果であり得る。ある実施形態において、アレルギーは、食物アレルギーである。食物アレルギーとしては、以下に限定はされないが、牛乳アレルギー、卵アレルギー、ナッツアレルギー、魚アレルギー、甲殻類アレルギー、大豆アレルギーまたは小麦アレルギーが挙げられる。
【0058】
対象に投与される組成物または剤形に関する「有効量」とは、対象に1つ以上の所望の寛免疫応答、例えば、制御性B細胞の生成などを生じさせる組成物または剤形の量を指す。従って、幾つかの実施形態では、有効量は、このような所望の免疫応答を引き起こす、本明細書で提供される組成物の任意の量である。この量は、in vitroの目的であっても、またはin vivoの目的であってもよい。in vivoの目的では、有効量は、抗原特異的寛容化を必要とする対象に臨床効果があると臨床医が考える量であってもよい。このような対象としては、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器もしくは組織拒絶反応、または移植片対宿主病を有するまたは有するリスクがある人が挙げられる。このような対象としてはまた、移植を受けたまたは移植を受けることになる人も挙げられる。このような対象としてはさらに、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答を起こした、起こしている、または起こすと予想される人も挙げられる。他の対象としては、本明細書の他の箇所に記載の人が挙げられる。
【0059】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルの低下しか含なくてもよいが、幾つかの実施形態では、有効量は望ましくない免疫応答の完全な予防を含む。有効量は、望ましくない免疫応答の発生の遅延を含んでもよい。有効量は、所望の免疫応答の惹起を含んでもよい。有効な量は、所望の治療エンドポイントまたは所望の治療結果をもたらす本明細書で提供される組成物の量であってもよい。有効量により、好ましくは、抗原に対する対象の寛容原性免疫応答が起こる。好ましくは、有効量により、制御性B細胞の増殖および/または活性の増加が起こる。前述の何れかの達成を常法で監視することができる。
【0060】
提供される組成物および方法の何れかのある実施形態において、有効量は、望ましい免疫応答が、被験体において、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも5年間、またはそれ以上持続する量である。提供される組成物および方法の何れかの他の実施形態において、有効量は、測定可能な望ましい免疫応答、例えば、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも5年間、またはそれ以上にわたる、免疫応答(例えば、特定の抗原に対する)の測定可能な減少をもたらす量である。
【0061】
有効量は、当然ながら、治療される特定の被験体;病態、疾病または疾患の重症度;年齢、健康状態、サイズおよび体重を含む個々の患者パラメータ;治療の持続期間;併用療法(もしあれば)の性質;特定の投与経路並びに医療関係者の知識および専門技術の範囲内の同様の要因に左右されるであろう。これらの要因は、当業者に周知であり、単なる日常的な実験で対処され得る。最大投与量、即ち、妥当な医学的判断に従って安全な最高投与量が使用されることが一般に好ましい。しかしながら、患者が、医療上の理由、心理的な理由または実質的にあらゆる他の理由のために、より少ない投与量または耐量を要求し得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0062】
一般に、本発明の組成物中の免疫抑制剤および/または抗原の投与量は、約10μg/kg〜約100,000μg/kgの範囲であり得る。ある実施形態において、投与量は、約0.1mg/kg〜約100mg/kgの範囲であり得る。更に他の実施形態において、投与量は、約0.1mg/kg〜約25mg/kg、約25mg/kg〜約50mg/kg、約50mg/kg〜約75mg/kgまたは約75mg/kg〜約100mg/kgの範囲であり得る。或いは、投与量は、所望の量の免疫抑制剤および/または抗原が得られる合成ナノキャリアの数に基づいて投与され得る。例えば、有用な投与量は、投与量当たり10
6、10
7、10
8、10
9または10
10個を超える合成ナノキャリアを含む。有用な投与量の他の例は、投与量当たり約1×10
6〜約1×10
10個、約1×10
7〜約1×10
9個または約1×10
8〜約1×10
9個の合成ナノキャリアを含む。
【0063】
「抗原」は、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原のタイプ」は、同じか、または実質的に同じ抗原的特徴を共有する分子を意味する。ある実施形態において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖類であり得るか或いは細胞中に含まれるかまたは細胞中で発現される。抗原が明確に規定または特徴付けされていない場合などのある実施形態において、抗原は、細胞または組織標本、細胞残屑、細胞エキソソーム、馴化培地などの中に含まれていてもよい。抗原は、被験体が曝される望ましくない免疫応答を引き起こす形態と同じ形態で合成ナノキャリアと組み合わされ得るが、その断片または誘導体であってもよい。しかしながら、断片または誘導体の場合、このような被験体が曝される形態に対する望ましい免疫応答が、提供される組成物および方法による好ましい結果である。好ましくは、抗原は、本明細書で提供される組成物で制御性B細胞が生成する、動員される、または活性化されるようなエピトープを含む。これが起こるか否かは、通常の方法を使用したサイトカイン産生(例えば、IL−10)および/または制御性B細胞の増殖の測定により、確認することができる。
【0064】
「抗原特異的な」は、抗原、またはその部分の存在から得られるか、或いは抗原を特異的に認識または結合する分子を生成する任意の免疫応答を指す。例えば、免疫応答が、抗原特異的な抗体産生である場合、抗原を特異的に結合する抗体が産生される。別の例として、免疫応答が、抗原特異的なB細胞増殖および/または活性である場合、増殖および/または活性は、B細胞などによる、抗原、またはその部分のみの認識或いはMHC分子と複合した抗原、またはその部分の認識から得られる。
【0065】
本明細書に提供される疾病、疾患または病態と「関連する抗原」は、疾病、疾患または病態に対する、その結果としての、またはそれに伴う望ましくない免疫応答;疾病、疾患または病態(またはその症状または作用)の原因を生成し得るか;および/または疾病、疾患または病態の症状、結果または作用である望ましくない免疫応答を生成し得る抗原である。好ましくは、ある実施形態において、本明細書に提供される組成物および方法における、疾病、疾患または病態などと関連する抗原の使用は、抗原および/または抗原が上でまたは中で発現される細胞に対する寛容原性免疫応答をもたらす。抗原は、疾病、疾患または病態に罹患した被験体において発現されるのと同じ形態であり得るが、その断片または誘導体であってもよい。しかしながら、断片または誘導体の場合、このような被験体において発現される形態に対する望ましい免疫応答が、提供される組成物および方法による好ましい結果である。
【0066】
一実施形態において、抗原は、炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器若しくは組織拒絶反応または移植片対宿主病と関連する抗原である。このような抗原としては、ミエリン塩基性タンパク質、コラーゲン(例えば、11型コラーゲン)、ヒト軟骨gp 39、クロモグラニンA、gp130−RAPS、プロテオリピドタンパク質、フィブリラリン、核タンパク質、核小体タンパク質(例えば、小核小体タンパク質)、甲状腺刺激因子受容体、ヒストン、糖タンパク質gp 70、リボソームタンパク質、ピルビン酸デヒドロゲナーゼジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ、毛包抗原、ヒトトロポミオシンアイソフォーム5、ミトコンドリアタンパク質、膵臓β細胞タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、グルテン、およびそれらの断片または誘導体などの自己抗原が挙げられる。他の自己抗原が、以下の表1に示される。
【0067】
抗原は、臓器若しくは組織拒絶反応と関連する抗原も含む。このような抗原の例としては、以下に限定はされないが、同種異系細胞からの抗原、例えば、同種異系細胞抽出物からの抗原および内皮細胞抗原などの、他の細胞からの抗原が挙げられる。
【0068】
抗原は、アレルギーと関連する抗原も含む。このような抗原は、本明細書のどこかに記載されるアレルゲンを含む。
【0069】
抗原は、移植可能な移植片と関連する抗原も含む。このような抗原は、移植可能な移植片、またはレシピエントへの移植可能な移植片の導入の結果として生成される、移植可能な移植片のレシピエントにおける望ましくない免疫応答に関連し、免疫系の細胞による認識について提示され得、望ましくない免疫応答を生成し得る。移植抗原は、臓器若しくは組織拒絶反応または移植片対宿主病と関連するものを含む。移植抗原は、生体材料の細胞または移植可能な移植片に関連する情報から得られ、またはそれらに由来し得る。移植抗原は、一般に、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチドを含み、或いは細胞中に含まれるかまたは細胞中で発現される。移植可能な移植片に関連する情報は、移植抗原を得るまたは取り出すのに使用され得る移植可能な移植片についての任意の情報である。このような情報は、例えば、抗原の配列情報、タイプまたはクラスおよび/またはそれらのMHCクラスI、MHCクラスIIまたはB細胞の提示の拘束性(restriction)などの、移植可能な移植片の細胞中または細胞上に存在することが予測され得る抗原についての情報を含む。このような情報は、移植可能な移植片のタイプ(例えば、自家移植片、同種移植片、異種移植片)、移植片の分子および細胞組成、移植片が由来する身体部位または移植片が移植されることになる身体部位(例えば、全臓器または部分臓器、皮膚、骨、神経、腱、ニューロン、血管、脂肪、角膜など)についての情報も含み得る。
【0070】
抗原は、免疫系の細胞による認識について提示され得、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答を生成し得る、治療用タンパク質に関連する抗原も含む。治療用タンパク質抗原は、一般に、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質を含み、或いは細胞中に、細胞によってまたは細胞上に含まれるかまたは発現される。
【0071】
抗原は、十分に規定または特徴付けされた抗原であり得る。しかしながら、ある実施形態において、抗原は、十分に規定または特徴付けされていない。従って、抗原は、細胞または組織標本、細胞残屑、細胞エキソソームまたは馴化培地の中に含まれ、ある実施形態において、このような形態で送達され得る抗原も含む。
【0072】
「免疫応答の評価」は、インビトロまたは生体内の免疫応答のレベル、存在または非存在、減少、増加などの任意の測定または判定を指す。このような測定または判定は、被験体から得られる1つ以上の試料において行われ得る。このような評価は、本明細書に提供される方法または当該技術分野において公知の他の方法の何れかを用いて行われ得る。
【0073】
「リスクがある」被験体は、本明細書に提供される疾病、疾患または病態に罹患する可能性を有すると医療関係者が考える被験体、または本明細書に提供される望ましくない免疫応答を起こす可能性があると医療関係者が考える被験体である。
【0074】
「自己免疫疾患」は、免疫系が自身(例えば、1つ以上の自己抗原)に対する望ましくない免疫応答を行う任意の疾病である。ある実施形態において、自己免疫疾患は、自己標的化免疫応答の一環としての身体の細胞の異常な破壊を含む。ある実施形態において、自己の破壊は、臓器、例えば、結腸または膵臓の機能不全に現れる。自己免疫疾患の例が、本明細書のどこかに記載されている。更なる自己免疫疾患が、当業者に公知であり、本発明は、これに関して限定されない。
【0075】
本明細書において使用される際の「平均」は、特に断りのない限り、算術平均を指す。
【0076】
「B細胞抗原」は、B細胞における免疫応答を引き起こす任意の抗原(例えば、B細胞またはその上の受容体によって特に認識される抗原)を意味する。ある実施形態において、T細胞抗原である抗原は、B細胞抗原でもある。他の実施形態において、T細胞抗原はまた、B細胞抗原ではない。B細胞抗原としては、以下に限定はされないが、タンパク質、ペプチド、小分子、および炭水化物が挙げられる。ある実施形態において、B細胞抗原は、非タンパク質抗原を含む(即ち、タンパク質またはペプチド抗原を含まない)。ある実施形態において、B細胞抗原は、自己抗原を含む。他の実施形態において、B細胞抗原は、アレルゲン、自己抗原、治療用タンパク質、または移植可能な移植片から得られるかまたはこれらに由来する。
【0077】
「同時に」は、時間的に相関される、好ましくは、免疫応答の調節を与えるのに十分に時間的に相関されるように、2種以上の物質を被験体に投与することを意味する。実施形態において、同時投与は、同じ剤形における2種以上の物質の投与によって行われ得る。他の実施形態において、同時投与は、異なる剤形における2種以上の物質の投与(但し、規定の期間内、好ましくは1ヶ月以内、より好ましくは1週間以内、更により好ましくは1日以内、更により好ましくは1時間以内の投与)を包含し得る。
【0078】
「結合」または「結合された」または「結合する」(など)は、物質(例えば部分)を互いに化学的に結合することを意味する。ある実施形態において、結合は、共有であり、これは、結合が、2つの物質間の共有結合が存在する状況で起こることを意味する。非共有の実施形態において、非共有結合には、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない非共有相互作用が介在する。実施形態において、封入が、結合の形態である。
【0079】
「誘導された(derived)」は、ある材料またはある材料に関する情報から製造されたことを意味するが、その材料から「得られた」のではない。このような材料は、生物材料から直接採取される材料の実質的に修飾されたまたは処理された形態であってもよい。このような材料としては、生物材料に関する情報から製造された材料も挙げられる。
【0080】
「剤形」は、被験体への投与に好適な、媒体、キャリア、ビヒクル、またはデバイス中の薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料を意味する。
【0081】
「封入する」は、物質の少なくとも一部を合成ナノキャリア中に入れることを意味する。ある実施形態において、物質が、合成ナノキャリア中に完全に入れられる。他の実施形態において、封入される物質の殆どまたは全てが、合成ナノキャリアの外部の局所環境に曝されない。他の実施形態において、50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)以下が、局所環境に曝される。封入は、合成ナノキャリアの表面に物質の殆どまたは全てを配置し、物質を合成ナノキャリアの外部の局所環境に曝されたままにする吸収とは異なる。
【0082】
抗原決定基としても知られている「エピトープ」は、免疫系によって、特に、例えば、抗体、B細胞、またはT細胞によって認識される抗原の部分である。本明細書において使用される際、「MHCクラスI拘束性エピトープ」は、有核細胞において見られるMHCクラスI分子によって免疫細胞に提示されるエピトープである。「MHCクラスII拘束性エピトープ」は、抗原提示細胞(APC)において、例えば、マクロファージ、B細胞、および樹枝状細胞などのプロフェッショナル抗原提示免疫細胞において、または肝細胞などの非造血細胞において見られるMHCクラスII分子によって免疫細胞に提示されるエピトープである。「B細胞エピトープ」は、抗体またはB細胞によって認識される分子構造である。ある実施形態において、エピトープ自体が抗原である。
【0083】
幾つかのエピトープが、当業者に公知であり、本発明の幾つかの態様に係る好適な例示的なエピトープとしては、以下に限定はされないが、Immune Epitope Databaseに列挙されるものが挙げられる(www.immuneepitope.org,Vita R,Zarebski L,Greenbaum JA,Emami H,Hoof I,Salimi N,Damle R,Sette A,Peters B.The immune epitope database 2.0.Nucleic Acids Res.2010 Jan;38(Database issue):D854−62;これらの内容全体並びにIEDB第2.4版(2011年8月)の全てのデータベースエントリ、具体的には、その中に開示される全てのエピトープが、参照により本明細書に援用される)。エピトープは、公表されているアルゴリズム、例えば、Wang P,Sidney J,Kim Y,Sette A,Lund O,Nielsen M,Peters B.2010.peptide binding predictions for HLA DR,DP and DQ molecules.BMC Bioinformatics 2010,11:568;Wang P,Sidney J,Dow C,Mothe B,Sette A,Peters B.2008.A systematic assessment of MHC class II peptide binding predictions and evaluation of a consensus approach.PLoS Comput Biol.4(4):e1000048;Nielsen M,Lund O.2009.NN−align.An artificial neural network−based alignment algorithm for MHC class II peptide binding prediction.BMC Bioinformatics.10:296;Nielsen M,Lundegaard C,Lund O.2007.Prediction of MHC class II binding affinity using SMM−align,a novel stabilization matrix alignment method.BMC Bioinformatics.8:238;Bui HH,Sidney J,Peters B,Sathiamurthy M,Sinichi A,Purton KA,Mothe BR,Chisari FV,Watkins DI,Sette A.2005.Immunogenetics.57:304−314;Sturniolo T,Bono E,Ding J,Raddrizzani L,Tuereci O,Sahin U,Braxenthaler M,Gallazzi F,Protti MP,Sinigaglia F,Hammer J.1999.Generation of tissue−specific and promiscuous HLA ligand databases using DNA microarrays and virtual HLA class II matrices.Nat Biotechnol.17(6):555−561;Nielsen M,Lundegaard C,Worning P,Lauemoller SL,Lamberth K,Buus S,Brunak S,Lund O.2003.Reliable prediction of T−cell epitopes using neural networks with novel sequence representations.Protein Sci 12:1007−1017;Bui HH,Sidney J,Peters B,Sathiamurthy M,Sinichi A,Purton KA,Mothe BR,Chisari FV,Watkins DI,Sette A.2005.Automated generation and evaluation of specific MHC binding predictive tools:ARB matrix applications.Immunogenetics 57:304−314;Peters B,Sette A.2005.Generating quantitative models describing the sequence specificity of biological processes with the stabilized matrix method.BMC Bioinformatics 6:132;Chou PY,Fasman GD.1978.Prediction of the secondary structure of proteins from their amino acid sequence.Adv Enzymol Relat Areas Mol Biol 47:45−148;Emini EA,Hughes JV,Perlow DS,Boger J.1985.Induction of hepatitis A virus−neutralizing antibody by a virus−specific synthetic peptide.J Virol 55:836−839;Karplus PA,Schulz GE.1985.Prediction of chain flexibility in proteins.Naturwissenschaften 72:212−213;Kolaskar AS,Tongaonkar PC.1990.A semi−empirical method for prediction of antigenic determinants on protein antigens.FEBS Lett276:172−174;Parker JM,Guo D,Hodges RS.1986.New hydrophilicity scale derived from high−performance liquid chromatography peptide retention data:correlation of predicted surface residues with antigenicity and X−ray−derived accessible sites.Biochemistry 25:5425−5432;Larsen JE,Lund O,Nielsen M.2006.Improved method for predicting linear B−cell epitopes.Immunome Res 2:2;Ponomarenko JV,Bourne PE.2007.Antibody−protein interactions:benchmark datasets and prediction tools evaluation.BMC Struct Biol 7:64;Haste Andersen P,Nielsen M,Lund O.2006.Prediction of residues in discontinuous B−cell epitopes using protein 3D structures.Protein Sci 15:2558−2567;Ponomarenko JV,Bui H,Li W,Fusseder N,Bourne PE,Sette A,Peters B.2008.ElliPro:a new structure−based tool for the prediction of antibody epitopes.BMC Bioinformatics 9:514;Nielsen M,Lundegaard C,Blicher T,Peters B,Sette A,Justesen S,Buus S,and Lund O.2008.PLoS Comput Biol.4(7)e1000107.Quantitative predictions of peptide binding to any HLA−DR molecule of known sequence:NetMHCIIpanに記載されているアルゴリズムによって同定することもでき;これらのそれぞれの内容全体が、エピトープの同定のための方法およびアルゴリズムの開示のために、参照により本明細書に援用される。
【0084】
エピトープの他の例としては、配列番号:1〜943として記載される、MHCクラスI拘束性エピトープ、MHCクラスII拘束性エピトープおよびB細胞エピトープの何れかが挙げられる。いかなる特定の理論にも制約されることを望むものではないが、MHCクラスI拘束性エピトープは、配列番号1〜186に記載されるものを含み、MHCクラスII拘束性エピトープは、配列番号187〜537に記載されるものを含み、B細胞エピトープは、配列番号538〜943に記載されるものを含む。これらのエピトープは、アレルゲンのMHCクラスI拘束性自己抗原、MHCクラスII拘束性エピトープ並びに自己抗原およびアレルゲンのB細胞エピトープを含む。
【0085】
「生成」は、自分自身で直接、または、限定はされないが、人の言動に対する信頼によって行動を取る無関係な第三者などによって間接的に、免疫応答(例えば、寛容原性免疫応答)などの作用を起こさせることを意味する。
【0086】
「同定」は、臨床医が、被験体を、本明細書に提供される方法および組成物から利益を得られる被験体として認識するのを可能にする任意の行動または一連の行動である。好ましくは、同定される被験体は、本明細書に提供される寛容原性免疫応答を必要とする被験体である。行動または一連の行動は、自分自身で直接、または、限定はされないが、人の言動に対する信頼によって行動を取る無関係な第三者などによって間接的に行われるものであり得る。
【0087】
「免疫抑制剤」は、APCが免疫抑制(例えば、寛容原性効果)を有するようにする化合物を意味する。免疫抑制効果とは、一般に、望ましくない免疫応答を低下、抑制または予防するAPCによるサイトカインまたは他の因子の産生または発現を指すが、所望の免疫応答を増加、刺激、または促進するAPCによるサイトカインまたは他の因子の産生または発現も含み得る。APCが、APCによって提示される抗原を認識する免疫細胞に対する免疫抑制効果を生じる場合、この免疫抑制効果は、提示される抗原に特異的であると称される。このような効果は、本明細書では寛容原性効果とも称される。特定の理論に拘泥するものではないが、免疫抑制効果または寛容原性効果は、免疫抑制剤がAPCに、好ましくは抗原(例えば、投与される抗原またはin vivoに既に存在している抗原)の存在下で送達される結果であると考えられる。従って、免疫抑制剤としては、同じ組成物または異なる組成物中に提供されてもまたは提供されなくてもよい抗原に対する寛容原性免疫応答を提供する化合物が含まれる。一実施形態では、免疫抑制剤は、APCが1個以上の免疫エフェクター細胞で制御性表現型を促進するようにさせるものである。例えば、制御性表現型は、Treg細胞の産生、誘導、刺激または動員などを特徴とし得る。これは、B細胞の制御性表現型への変換の結果であってもよい。これはまた、制御性B細胞の刺激、動員などの結果であってもよい。これはまた、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果であってもよい。一実施形態では、免疫抑制剤は、APCが抗原を処理した後、APCの応答に影響を及ぼすものである。別の実施形態では、免疫抑制剤は、抗原の処理を妨げるものではない。別の実施形態では、免疫抑制剤は、アポトーシスシグナル伝達分子ではない。別の実施形態では、免疫抑制剤は、リン脂質ではない。
【0088】
免疫抑制剤としては、以下に限定はされないが、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などのmTOR阻害剤;TGF−βシグナル伝達剤;TGF−β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼ阻害剤;コルチコステロイド;ロテノンなどの、ミトコンドリア機能の阻害剤;P38阻害剤;6Bio、デキサメタゾン、TCPA−1、IKK VIIなどのNF−κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4)などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;TGX−221などのPI3KB阻害剤;3−メチルアデニンなどの自食作用阻害剤;アリール炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);およびP2X受容体遮断薬などの酸化ATPが挙げられる。免疫抑制剤としては、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6−メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン(6−TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルム酸、エストリオールおよびトリプトリドも挙げられる。実施形態において、免疫抑制剤は、本明細書に提供される薬剤の何れかを含み得る。
【0089】
免疫抑制剤は、APCに対する免疫抑制(例えば、寛容原性)効果を直接与える化合物であり得るか、または免疫抑制(例えば、寛容原性)効果を間接的に(即ち、投与後に何らかの方法で処理された後)与える化合物であり得る。従って、免疫抑制剤は、本明細書に提供される化合物の何れかのプロドラッグ形態を含む。
【0090】
免疫抑制剤は、免疫抑制(例えば、寛容原性)免疫応答をもたらす、本明細書に提供されるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸も含む。従って、実施形態において、免疫抑制剤は、免疫抑制(例えば、寛容原性)免疫応答をもたらすペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸であり、合成ナノキャリアに結合される核酸である。
【0091】
核酸は、DNA、またはmRNAなどのRNAであり得る。実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に提供される核酸の何れかの全長補体などの補体、または変質組織(遺伝子コードの変質による)を含む。実施形態において、核酸は、細胞株へとトランスフェクトされるときに転写され得る発現ベクターである。実施形態において、発現ベクターは、特に、プラスミド、レトロウイルス、またはアデノウイルスを含み得る。核酸は、標準的な分子生物学的手法を用いて、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、核酸断片を産生し、次にそれを精製し、発現ベクターへとクローニングすることによって、単離または合成され得る。本発明の実施に有用な更なる技術が、John Wiley and Sons,Inc.によるCurrent Protocols in Molecular Biology 2007;Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Third Edition)Joseph Sambrook,Peter MacCallum Cancer Institute,Melbourne,Australia;David Russell,University of Texas Southwestern Medical Center,Dallas,Cold Spring Harborに見出され得る。
【0092】
実施形態において、本明細書に提供される免疫抑制剤は、合成ナノキャリアに結合される。好ましい実施形態において、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアの構造を構成する材料に加えられる要素である。例えば、一実施形態において、合成ナノキャリアが、1つ以上のポリマーで構成される場合、免疫抑制剤は、1つ以上のポリマーに加えられ、結合される化合物である。別の例として、一実施形態において、合成ナノキャリアが、1つ以上の脂質で構成される場合、免疫抑制剤は、同様に、1つ以上の脂質に加えられ、結合される。合成ナノキャリアの材料が免疫抑制(例えば、寛容原性)効果ももたらす場合などの実施形態において、免疫抑制剤は、免疫抑制(例えば、寛容原性)効果をもたらす合成ナノキャリアの材料に加えて存在する要素である。
【0093】
他の例示的な免疫抑制剤としては、以下に限定はされないが、小分子薬剤、天然産物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬剤、炭水化物ベースの薬剤、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)などが挙げられる。更なる免疫抑制剤が、当業者に公知であり、本発明は、これに関して限定されない。
【0094】
「炎症性疾患」は、望ましくない炎症が起こる任意の疾病、疾患または病態を意味する。
【0095】
免疫抑制剤または抗原の「負荷」は、全合成ナノキャリア中の材料の総重量(重量/重量)を基準にした、合成ナノキャリアに結合される免疫抑制剤または抗原の量である。一般に、負荷は、合成ナノキャリアの集団全体の平均として計算される。一実施形態において、免疫抑制剤の負荷は、合成ナノキャリアの第1の集団全体を平均して、0.0001%〜50%である。別の実施形態において、抗原の負荷は、合成ナノキャリアの第1および/または第2の集団全体を平均して、0.0001%〜50%である。更に別の実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原の負荷は、0.01%〜20%である。更なる実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原の負荷は、0.1%〜10%である。更に他の実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原の負荷は、1%〜10%である。更に別の実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原の負荷は、合成ナノキャリアの集団全体を平均して、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%または少なくとも20%である。更に他の実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原の負荷は、合成ナノキャリアの集団全体を平均して、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%である。上記の実施形態のある実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原の負荷は、合成ナノキャリアの集団全体を平均して、25%以下である。実施形態において、負荷は、実施例に記載されるように計算される。
【0096】
提供される組成物および方法の何れかの実施形態において、負荷は以下のように計算される:約3mgの合成ナノキャリアを収集し、遠心分離して上清を合成ナノキャリアペレットから分離する。アセトニトリルをペレットに加え、試料を超音波で分解し、遠心分離して、あらゆる不溶性材料を除去する。上清およびペレットをRP−HPLCに注入し、吸光度を278nmで読み取る。ペレット中に見られたμgを用いて、取り込み%(負荷)を計算し、上清およびペレット中のμgを用いて、回収された合計μgを計算する。
【0097】
「維持投与量」は、望ましい免疫抑制(例えば、寛容原性)応答を持続するために、初期投与量が被験体における免疫抑制(例えば、寛容原性)応答をもたらした後、被験体に投与される投与量を指す。維持投与量は、例えば、初期投与量の後に得られる寛容原性効果を維持し、被験体における望ましくない免疫応答を防止し、または被験体が、免疫応答の望ましくないレベルを含む望ましくない免疫応答を起こすリスクがある被験体になることを防止する投与量であり得る。ある実施形態において、維持投与量は、望ましい免疫応答の適切なレベルを持続するのに十分な投与量である。幾つかの実施形態では、維持量は、寛容原性免疫応答を維持するまたは望ましくない免疫応答を起こす作用物質での攻撃から防御するのに必要な適切な抗体価または制御性B細胞数および/または活性のレベルを維持するのに十分な用量である。
【0098】
「合成ナノキャリアの最大寸法」は、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定されるナノキャリアの最大寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」は、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定される合成ナノキャリアの最小寸法を意味する。例えば、球状合成ナノキャリアでは、合成ナノキャリアの最大および最小寸法は、実質的に同一であり、その直径のサイズであろう。同様に、立方体状合成ナノキャリアでは、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さのうち最小である一方、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さのうち最大であろう。一実施形態において、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法が、100nm以上である。一実施形態において、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法が、5μm以下である。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法が、110nm超、より好ましくは120nm超、より好ましくは130nm超、更により好ましくは150nm超である。本発明の合成ナノキャリアの最大および最小寸法のアスペクト比は、実施形態に応じて変化し得る。例えば、合成ナノキャリアの最小寸法に対する最大寸法のアスペクト比は、1:1〜1,000,000:1、好ましくは1:1〜100,000:1、より好ましくは1:1〜10,000:1、より好ましくは1:1〜1000:1、更により好ましくは1:1〜100:1、なおより好ましくは1:1〜10:1で変化し得る。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法が、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、更により好ましくは500nm以下である。好ましい実施形態において、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法が、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、更により好ましくは150nm以上である。合成ナノキャリア寸法(例えば、直径)の測定は、合成ナノキャリアを液体(通常、水性)媒体中に懸濁させ、動的光散乱(DLS)を使用する(例えば、Brookhaven ZetaPALS機器を使用する)ことによって得られる。例えば、合成ナノキャリアの懸濁液が、水性緩衝液から精製水中へと希釈されて、約0.01〜0.1mg/mLの最終的な合成ナノキャリア懸濁液濃度が得られる。希釈された懸濁液は、直接中で調製されても、またはDLS分析のために好適なキュベットに移されてもよい。次に、キュベットを、DLS中に入れ、制御された温度へと平衡化してから、十分な時間にわたって走査して、媒体の粘度および試料の屈折率についての適切な入力に基づいて安定した再現可能な分布を得る。次に、有効直径、または分布の平均が報告される。合成ナノキャリアの「寸法」または「サイズ」または「直径」は、動的光散乱を用いて得られる粒度分布の平均を意味する。
【0099】
「MHC」は、細胞表面における加工タンパク質の断片またはエピトープを示すMHC分子をコードする、殆どの脊椎動物に見られる、主要組織適合性複合体、大きいゲノム領域または遺伝子ファミリーを指す。細胞表面におけるMHC:ペプチドの提示は、免疫細胞、通常、T細胞による監視を可能にする。MHC分子の2つの一般的なクラス、即ちクラスIおよびクラスIIがある。一般に、クラスI MHC分子は、有核細胞に見られ、ペプチドを細胞毒性T細胞に提示する。クラスII MHC分子は、特定の免疫細胞、主に、総称してプロフェッショナルAPCとして知られているマクロファージ、B細胞および樹枝状細胞に見られる。MHC領域中の最もよく知られている遺伝子は、細胞表面における抗原提示タンパク質をコードするサブセットである。ヒトにおいて、これらの遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と呼ばれる。
【0100】
「非メトキシ末端ポリマー」は、メトキシ以外の部分で終端する少なくとも1つの末端を有するポリマーを意味する。ある実施形態において、ポリマーは、メトキシ以外の部分で終端する少なくとも2つの末端を有する。他の実施形態において、ポリマーは、メトキシで終端する末端を有さない。「非メトキシ末端プルロニック(pluronic)ポリマー」は、両方の末端にメトキシを有する直鎖状のプルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書に提供されるポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端ポリマーまたは非メトキシ末端プルロニックポリマーを含み得る。
【0101】
「得られる」は、ある材料から直接採取され、修飾および/または処理を実質的に行わずに使用されることを意味する。
【0102】
「薬学的に許容できる賦形剤」は、本発明の組成物を製剤化するために、記載される合成ナノキャリアと一緒に使用される薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容できる賦形剤は、糖類(グルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの保存剤、再構成助剤、着色剤、生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水など)、および緩衝液を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の様々な材料を含む。
【0103】
「プロトコル」は、被験体への1種以上の物質の任意の投与計画を指す。投与計画は、投与の量、頻度および/または形態を含み得る。ある実施形態において、このようなプロトコルは、本発明の1つ以上の組成物を一人以上の被験体に投与するのに使用され得る。次に、これらの被験体における免疫応答は、プロトコルが望ましくない免疫応答の減少または望ましい免疫応答の生成(例えば、寛容原性効果の促進)に有効であったか否かを判定するために評価され得る。任意の他の治療および/または予防効果も、上記の免疫応答の代わりにまたはそれに加えて評価され得る。プロトコルが所望の効果を有していたか否かは、本明細書に提供されるか或いは当該技術分野において公知の方法の何れかを用いて判定され得る。特定の免疫細胞、サイトカイン、抗体などが減少、生成、活性化されたか否かなどを判定するために、例えば、細胞の集団が、本明細書に提供される組成物が特定のプロトコルに従って投与された被験体から取得され得る。免疫細胞の存在および/または数を検出するための有用な方法としては、以下に限定はされないが、フローサイトメトリー法(例えば、FACS)および免疫組織化学法が挙げられる。免疫細胞マーカーの特定の染色のための抗体および他の結合剤が市販されている。このようなキットは、通常、不均一な細胞集団からの所望の細胞集団のFACSに基づいた検出、分離および/または定量を可能にする複数の抗原のための染色試薬を含む。
【0104】
「被験体の提供」は、臨床医に被験体と接触させ、本明細書に提供される組成物を被験体に投与させるかまたは本明細書に提供される方法を被験体に対して行わせる任意の行動または一連の行動である。好ましくは、被験体は、本明細書に提供される寛容原性免疫応答を必要とする被験体である。行動または一連の行動は、自分自身で直接、または、限定はされないが、人の言動に対する信頼によって行動を取る無関係な第三者などによって間接的に、行われ得る。
【0105】
「制御性B細胞」は、当該技術分野で認識されており、寛容原性B細胞の1種または抑制的な制御機能を有するものを指す。制御性B細胞に特徴的な表面マーカーおよびケモカインプロファイルならびに制御性B細胞のサブセット(例えば、IL−10産生Breg)が、当業者に公知である(例えば、DiLillo et al.,B10 cells and regulatory B cells balance immune response during inflammation,autoimmunity,and cancer,Ann N.Y.Acad.Sci.1183(2010)38−57,ISSN 0077−8923に記載されており;その内容全体が参照により本明細書に援用される)。制御性B細胞の存在は、フローサイトメトリーでIL−10を検出するために細胞内染色を行うことにより測定することができる。例えば、処理後に、表面マーカーを検出するためにB細胞を染色した後、固定し、透過化処理し、細胞内IL−10を検出するために染色し、フローサイトメトリーで解析することができる。
【0106】
「被験体」は、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの、家庭用の動物または家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚類;は虫類;動物園の動物および野生動物などを含む動物を意味する。
【0107】
「MHCクラスI拘束性エピトープを実質的に含まない」とは、MHCクラスI拘束性エピトープが、アレルゲンに関して、単独で、キャリアと共にまたは本発明の組成物と共に、クラスIに関して提示されるエピトープに特異的な免疫応答の実質的な活性化を刺激する量で存在しないことを指す。複数の実施形態では、MHC I拘束性エピトープを実質的に含まない組成物は、測定可能な量の抗原のMHCクラスI拘束性エピトープを含有しない。他の実施形態では、このような組成物は、測定可能な量の抗原のMHCクラスI拘束性エピトープを含み得るが、前記量は、(抗原に関して、単独で、キャリアと共にまたは本発明の組成物と共に)測定可能な細胞障害性T細胞免疫応答を惹起するのに有効ではない、または(抗原に関して、単独で、キャリアと共にまたは本発明の組成物と共に)測定可能な著しい細胞障害性T細胞免疫応答を惹起するのに有効ではない。幾つかの実施形態では、測定可能な著しい細胞障害性T細胞免疫応答は、対象における有害な臨床結果をもたらすまたはもたらすことが予想される応答である。他の実施形態では、測定可能な著しい細胞障害性T細胞免疫応答は、対照抗原(例えば、MHCクラスI拘束性エピトープを含まないまたは細胞障害性T細胞免疫応答を刺激しないことが知られているもの)により起こる同じ種類の免疫応答のレベルより大きい応答である。
【0108】
複数の実施形態では、組成物は、(抗原に関して、単独で、キャリアと共にまたは本発明の組成物と共に)抗原特異的細胞障害性T細胞免疫応答またはその望ましくないレベルを惹起するMHCクラスI拘束性エピトープを含まない。幾つかの実施形態では、組成物がこのようなエピトープを含まないことを確実にするために、抗原は、それらが本明細書で提供される合成ナノキャリアに結合するMHCクラスI拘束性エピトープを含まないように選択される。他の実施形態では、組成物がこのようなエピトープを含まないことを確実にするために、抗原に結合した合成ナノキャリアを製造し、その細胞障害性T細胞免疫応答を試験する。その後、適切な合成ナノキャリアを選択することができる。
【0109】
「合成ナノキャリア」は、自然界に見られず、サイズが5μm以下の少なくとも1つの寸法を有する個別の物体を意味する。アルブミンナノ粒子は、一般に、合成ナノキャリアとして含まれるが、特定の実施形態において、合成ナノキャリアは、アルブミンナノ粒子を含まない。実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、キトサンを含まない。他の実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子ではない。更なる実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、リン脂質を含まない。
【0110】
合成ナノキャリアは、以下に限定はされないが、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子(本明細書において脂質ナノ粒子とも呼ばれる、即ち、構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子(即ち、主にウイルス構造タンパク質から構成されるが、感染性でないかまたは低い感染性を有する粒子)、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(本明細書においてタンパク質粒子とも呼ばれる、即ち、構造を構成する材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質−ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組合せを用いて形成されるナノ粒子であり得る。合成ナノキャリアは、球状、立方体状、錐体、楕円形(oblong)、円筒形、ドーナツ形などを含むがこれらに限定されない様々な異なる形状であり得る。本発明に係る合成ナノキャリアは、1つ以上の表面を含む。本発明の実施に使用するために適合され得る例示的な合成ナノキャリアは:(1)Gref et al.に付与された米国特許第5,543,158号明細書に開示される生分解性ナノ粒子、(2)Saltzman et al.への米国特許出願公開第20060002852号明細書のポリマーナノ粒子、(3)DeSimone et al.への米国特許出願公開第20090028910号明細書のリソグラフィー的に(lithographically)構成されたナノ粒子、(4)von Andrian et al.への国際公開第2009/051837号パンフレットの開示内容、(5)Penades et al.への米国特許出願公開第2008/0145441号明細書に開示されるナノ粒子、(6)de los Rios et al.への米国特許出願公開第20090226525号明細書に開示されるタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbel et al.への米国特許出願公開第20060222652号明細書に開示されるウイルス様粒子、(8)Bachmann et al.への米国特許出願公開第20060251677号明細書に開示される核酸結合ウイルス様粒子、(9)国際公開第2010047839A1号パンフレットまたは国際公開第2009106999A2号パンフレットに開示されるウイルス様粒子、(10)P.Paolicelli et al.,“Surface−modified PLGA−based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus−like Particles” Nanomedicine.5(6):843−853(2010)に開示されるナノ析出された(nanoprecipitated)ナノ粒子、または(11)米国特許出願公開第2002/0086049号明細書に開示されるアポトーシス細胞、アポトーシス小体または合成若しくは半合成類似体を含む。実施形態において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7を超える、または1:10を超えるアスペクト比を有し得る。
【0111】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に係る合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まず、または代わりに補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分から本質的になる表面を含む。好ましい実施形態において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に係る合成ナノキャリアは、補体を実質的に活性化する表面を含まないかまたは代わりに補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。より好ましい実施形態において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に係る合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないかまたは代わりに補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。実施形態において、合成ナノキャリアは、ウイルス様粒子を除外する。実施形態において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7を超える、または1:10を超えるアスペクト比を有し得る。
【0112】
「T細胞抗原」は、CD4+T細胞抗原またはCD8+細胞抗原を意味する。「CD4+T細胞抗原」は、CD4+T細胞における免疫応答によって認識され、それを引き起こす任意の抗原、例えば、クラスII主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC)に結合された抗原またはその部分の提示によって、CD4+T細胞におけるT細胞受容体によって特に認識される抗原を意味する。「CD8+T細胞抗原」は、CD8+T細胞における免疫応答によって認識され、それを引き起こす任意の抗原、例えば、クラスI主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC)に結合された抗原またはその部分の提示によって、CD8+T細胞におけるT細胞受容体によって特に認識される抗原を意味する。幾つかの実施形態では、T細胞抗原である抗原はまたB細胞抗原でもある。他の実施形態では、T細胞抗原はまたB細胞抗原ではない。T細胞抗原は一般にタンパク質またはペプチドである。
【0113】
「治療用タンパク質」は、被験体に投与され、治療効果を有し得る任意のタンパク質またはタンパク質に基づいた療法を指す。このような療法は、タンパク質補充療法およびタンパク質添加療法を含む。このような療法は、外因性または異種タンパク質の投与、抗体療法、および細胞療法または細胞に基づいた療法も含む。治療用タンパク質は、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む。他の治療用タンパク質の例が、本明細書のどこかに提供される。治療用タンパク質は、細胞中で、細胞上でまたは細胞によって産生されてもよく、このような細胞から得られるかまたはこのような細胞の形態で投与され得る。実施形態において、治療用タンパク質は、哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、トランスジェニック動物細胞、トランスジェニック植物細胞などの中で、その上で、またはそれによって産生される。治療用タンパク質は、このような細胞中で組み換え技術によって産生され得る。治療用タンパク質は、ウイルス的に形質転換された(virally transformed)細胞中で、その上でまたはそれによって産生され得る。治療用タンパク質はまた、それを発現するようにトランスフェクトされたか、形質導入されたかまたは他の方法で操作された自己細胞中で、その上で、またはそれによって産生され得る。或いは、治療用タンパク質は、核酸としてまたは核酸を、ウイルス、VLP、リポソームなどに導入することによって投与され得る。或いは、治療用タンパク質は、このような形態から得られ、治療用タンパク質自体として投与され得る。従って、被験体は、上記のものの何れかを投与されたか、投与されているかまたは投与される予定である任意の被験体を含む。このような被験体は、遺伝子治療;治療用タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現するようにトランスフェクトされたか、形質導入されたかまたは他の方法で操作された自己細胞;或いは治療用タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現する細胞を投与されたか、投与されているかまたは投与される予定である被験体を含む。
【0114】
「治療用タンパク質抗原」は、治療用タンパク質と関連する抗原を意味し、このような抗原またはその一部は、免疫系の細胞による認識について提示され得、治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答(例えば、治療用タンパク質に特異的な抗体の促進)を生成し得る。治療用タンパク質抗原は、一般に、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質を含み、或いは細胞中に、細胞上にまたは細胞によって含まれるかまたは発現される。
【0115】
「寛容原性免疫応答」は、抗原またはこのような抗原を発現する細胞、組織、臓器などに特異的な免疫抑制をもたらし得る任意の免疫応答を意味する。このような免疫応答は、抗原またはこのような抗原を発現する細胞、組織、臓器などに特異的な望ましくない免疫応答の任意の減少、遅延または阻害を含む。このような免疫応答は、抗原またはこのような抗原を発現する細胞、組織、臓器などに特異的な望ましい免疫応答の任意の刺激、生成、誘導、促進または動員も含む。従って、寛容原性免疫応答は、抗原反応性細胞によって媒介され得る抗原に対する望ましくない免疫応答の非存在または減少並びに抑制細胞の存在または促進を含む。本明細書に提供される寛容原性免疫応答は、免疫寛容を含む。「寛容原性免疫応答を生成する」は、抗原またはこのような抗原を発現する細胞、組織、臓器などに特異的な上記の免疫応答の何れかの生成を指す。寛容原性免疫応答は、MHCクラスI拘束性提示および/またはMHCクラスII拘束性提示および/またはB細胞提示および/またはCD1dによる提示などの結果であり得る。複数の実施形態では、組成物が所望のエピトープを含むことを確実にするために、抗原は、それらが本明細書で提供される合成ナノキャリアに結合するこのようなエピトープを含むように選択される。他の実施形態では、組成物がこのようなエピトープを含むことを確実にするために、抗原に結合した合成ナノキャリアを製造し、その制御性B細胞免疫応答、例えば、活性化または惹起を試験する。その後、適切な合成ナノキャリアを選択することができる。
【0116】
寛容原性免疫応答は、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはB細胞増殖および/または活性の任意の減少、遅延または阻害を含む。寛容原性免疫応答は、抗原特異的な抗体産生の減少も含む。寛容原性免疫応答は、CD4+Treg細胞、CD8+Treg細胞、Breg細胞などの制御性細胞の刺激、誘導、産生または動員をもたらす任意の応答も含み得る。ある実施形態において、寛容原性免疫応答は、制御性細胞の産生、誘導、刺激または動員によって特徴付けられる制御性表現型への変換をもたらすものである。
【0117】
寛容原性免疫応答は、CD4+Treg細胞および/またはCD8+Treg細胞の刺激、産生または動員をもたらす任意の応答も含む。CD4+Treg細胞は、転写因子FoxP3を発現し、炎症反応および自己免疫炎症性疾患を阻害し得る(Human regulatory T cells in autoimmune diseases.Cvetanovich GL,Hafler DA.Curr Opin Immunol.2010 Dec;22(6):753−60.Regulatory T cells and autoimmunity.Vila J,Isaacs JD,Anderson AE.Curr Opin Hematol.2009 Jul;16(4):274−9)。このような細胞はまた、T細胞がB細胞を助けるのを抑制し、自己抗原および外来抗原の両方に対する寛容を誘導する(Therapeutic approaches to allergy and autoimmunity based on FoxP3+ regulatory T−cell activation and expansion.Miyara M,Wing K,Sakaguchi S.J Allergy Clin Immunol.2009 Apr;123(4):749−55)。CD4+Treg細胞は、APCにおけるクラスIIタンパク質によって提示されるときに抗原を認識する。クラスI(およびQa−1)によって提示される抗原を認識するCD8+Treg細胞はまた、T細胞がB細胞を助けるのを抑制し、自己抗原および外来抗原の両方に対する寛容を誘導する抗原特異的な抑制の活性化をもたらし得る。CD8+Treg細胞とのQa−1の相互作用の破壊は、免疫応答を調節不全にすることが示されており、自己抗体の形成および自己免疫を破壊する全身性エリテマトーデスの発生をもたらす(Kim et al.,Nature.2010 Sep 16,467(7313):328−32)。CD8+Treg細胞は、関節リウマチおよび大腸炎を含む自己免疫炎症性疾患のモデルを阻害することも示されている(CD4+CD25+ regulatory T cells in autoimmune arthritis.Oh S,Rankin AL,Caton AJ.Immunol Rev.2010 Jan;233(1):97−111.Regulatory T cells in inflammatory bowel disease.Boden EK,Snapper SB.Curr Opin Gastroenterol.2008 Nov;24(6):733−41)。ある実施形態において、提供される組成物は、両方のタイプの応答を有効にもたらし得る(CD4+TregおよびCD8+Treg)。他の実施形態において、FoxP3は、マクロファージ、iNKT細胞などの他の免疫細胞中で誘導され得、本明細書に提供される組成物は、同様にこれらの応答の1つ以上をもたらし得る。
【0118】
寛容原性免疫応答としては、以下に限定はされないが、Tregサイトカインなどの制御性サイトカインの誘導;抑制性サイトカインの誘導;炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−1b、IL−5、TNF−α、IL−6、GM−CSF、IFN−γ、IL−2、IL−9、IL−12、IL−17、IL−18、IL−21、IL−22、IL−23、M−CSF、C反応性タンパク質、急性期タンパク質、ケモカイン(例えば、MCP−1、RANTES、MIP−1α、MIP−1β、MIG、ITACまたはIP−10)の阻害、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−13、IL−10など)、ケモカイン(例えば、CCL−2、CXCL8)、プロテアーゼ(例えば、MMP−3、MMP−9)、ロイコトリエン(例えば、CysLT−1、CysLT−2)、プロスタグランジン(例えば、PGE2)またはヒスタミンの産生;Th17、Th1またはTh2免疫応答への偏り(polarization)の阻害;エフェクター細胞特異的サイトカイン:Th17(例えば、IL−17、IL−25)、Th1(IFN−γ)、Th2(例えば、IL−4、IL−13)の阻害;Th1−、Th2−またはTH17−特異的転写因子の阻害;エフェクターT細胞の増殖の阻害;エフェクターT細胞のアポトーシスの阻害;寛容原性樹枝状細胞特異的遺伝子の誘導、FoxP3発現の誘導、IgE誘導またはIgE媒介性の免疫応答の阻害;抗体応答(例えば、抗原特異的な抗体産生)の阻害;Tヘルパー細胞応答の阻害;TGF−βおよび/またはIL−10の産生;自己抗体のエフェクター機能の阻害(例えば、細胞の枯渇、細胞若しくは組織の損傷または補体活性化の阻害)なども挙げられる。
【0119】
上記のいずれも、1つ以上の動物モデルにおいて生体内で測定されてもまたはインビトロで測定されてもよい。当業者には、このような生体内またはインビトロの測定が周知である。望ましくない免疫応答または寛容原性免疫応答が、例えば、免疫細胞の数および/または機能を評価する方法、四量体分析、ELISPOT、サイトカイン発現、サイトカイン分泌、サイトカイン発現プロファイリング、遺伝子発現プロファイリング、タンパク質発現プロファイリングのフローサイトメトリーに基づいた分析、細胞表面マーカーの分析、免疫細胞受容体遺伝子使用のPCRに基づいた検出などを用いて監視され得る(T.Clay et al.,“Assays for Monitoring Cellular Immune Response to Active Immunotherapy of Cancer” Clinical Cancer Research 7:1127−1135(2001)を参照されたい)。望ましくない免疫応答または寛容原性免疫応答はまた、例えば、血漿または血清中のタンパク質レベルを評価する方法、免疫細胞増殖および/または機能アッセイなどを用いて監視され得る。ある実施形態において、寛容原性免疫応答は、FoxP3の誘導を評価することによって監視され得る。更に、具体的な方法が、実施例により詳細に記載されている。
【0120】
好ましくは、寛容原性免疫応答は、本明細書に記載される疾病、疾患または病態の発症、進行または病状(pathology)の阻害をもたらす。本発明の組成物が、本明細書に記載される疾病、疾患または病態の発症、進行または病状の阻害をもたらし得るか否かが、このような疾病、疾患または病態の動物モデルを用いて測定され得る。ある実施形態において、望ましくない免疫応答の減少または寛容原性免疫応答の生成は、臨床的エンドポイント、臨床的有効性、臨床症状、疾病のバイオマーカーおよび/または臨床スコアを測定することによって評価され得る。望ましくない免疫応答または寛容原性免疫応答はまた、本明細書に提供される疾病、疾患または病態の存在または非存在を評価するための診断試験を用いて評価され得る。望ましくないまたは望ましい免疫応答は、被験体における治療用タンパク質レベルおよび/または機能を測定する方法によって更に評価され得る。実施形態において、望ましくないアレルギー応答を監視または評価するための方法は、皮膚反応および/またはアレルゲン特異的抗体産生による被験体におけるアレルギー応答を評価することを含む。
【0121】
ある実施形態において、被験体における望ましくない免疫応答または寛容原性免疫応答の生成の監視または評価は、本明細書に提供される合成ナノキャリアの組成物の投与の前および/または移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の前であり得る。他の実施形態において、望ましくない免疫応答または寛容原性免疫応答の生成の評価は、本明細書に提供される合成ナノキャリアの組成物の投与の後および/または移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の後であり得る。ある実施形態において、評価は、合成ナノキャリアの組成物の投与の後であるが、移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の前に行われる。他の実施形態において、評価は、移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の後であるが、組成物の投与の前に行われる。更に他の実施形態において、評価は、合成ナノキャリアの投与および移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の両方の前に行われる一方、更に他の実施形態において、評価は、合成ナノキャリアの投与および移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の両方の後に行われる。更なる実施形態において、評価は、合成ナノキャリアの投与および/または移植可能な移植片若しくは治療用タンパク質の投与またはアレルゲンへの曝露の前および後の両方に行われる。更に他の実施形態において、望ましい免疫状態が、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器若しくは組織拒絶反応または移植片対宿主病に罹患しているかまたは罹患するリスクがある被験体などの被験体において維持されていることを判定するために、評価は、被験体につき2回以上行われる。他の被験体は、移植を行ったかまたは移植を行う予定である被験体並びに望ましくない免疫応答を起こしたか、起こしているかまたは起こすことが予測される治療用タンパク質を投与されたか、投与されているかまたは投与される予定である被験体を含む。
【0122】
抗体応答は、1つ以上の抗体力価を測定することによって評価され得る。「抗体力価」は、抗体産生の測定可能なレベルを意味する。抗体力価を測定するための方法が、当該技術分野において公知であり、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を含む。実施形態において、抗体応答は、例えば、抗体の数、抗体の濃度または力価として定量化され得る。値は、絶対値であってもまたは相対値であってもよい。抗体応答を定量化するためのアッセイとしては、抗体捕捉アッセイ、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、阻害液相吸着アッセイ(ILPAA)、ロケット免疫電気泳動(RIE)アッセイおよび直線免疫電気泳動(LIE)アッセイが挙げられる。抗体応答が、別の抗体応答と比較されるとき、同じタイプの定量値(例えば、力価)および測定方法(例えば、ELISA)が、比較を行うのに好ましくは使用される。
【0123】
抗体力価を測定するためのELISA法、例えば、典型的なサンドイッチELISAは、以下の工程(i)対象とする抗体標的が基質ポリマーまたは他の好適な材料に結合されるようにELISAプレートコーティング材料を調製する工程、(ii)コーティング材料を水溶液(PBSなど)中で調製し、コーティングをマルチウェルプレート上に一晩付着させるために、コーティング材料溶液を、マルチウェルプレートのウェルに送達する工程、(iii)洗浄緩衝液(PBS中0.05%のTween−20など)でマルチウェルプレートを十分に洗浄して、過剰なコーティング材料を除去する工程、(iv)希釈剤溶液(PBS中10%のウシ胎仔血清など)を塗布することによって、非特異的結合用のプレートをブロッキングする工程、(v)プレートからのブロッキング/希釈剤溶液を、洗浄緩衝液で洗浄する工程、(vi)抗体および適切な標準物質(陽性対照)を含有する血清試料を、必要に応じて希釈剤で希釈して、ELISA応答を好適に満たす濃度を得る工程、(vii)ELISA応答曲線を生成するのに好適な濃度の範囲をカバーするように、マルチウェルプレートにおける血漿試料を連続希釈する工程、(viii)抗体−標的結合を得るようにプレートをインキュベートする工程、(ix)プレートを洗浄緩衝液で洗浄して、抗原に結合されていない抗体を除去する工程、(x)一次抗体を結合することが可能なビオチン結合検出抗体などの二次検出抗体を同じ希釈剤中に適切な濃度で加える工程、(xi)プレートを、塗布された検出抗体とともにインキュベートした後、洗浄緩衝液で洗浄する工程、(xii)ビオチン化抗体に見られる、ビオチンに結合し得るストレプトアビジン−HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)などの酵素を加え、インキュベートする工程、(xiii)マルチウェルプレートを洗浄する工程、(xiv)基質(TMB溶液など)をプレートに加える工程、(xv)発色が完了したら停止液(2Nの硫酸など)を適用する工程、(xvi)基質の特定の波長でプレートウェルの光学密度を読み取る工程(450nmでの読み取り値から570nmでの読み取り値を差し引く)、(xvi)好適な多重パラメータ曲線適合をデータに適用し、プレートの標準についてのODの最大値の半値が得られる曲線における濃度として半数効果濃度(EC50)を定義する工程からなり得る。
【0124】
「移植可能な移植片」は、被験体に投与され得る、細胞、組織および臓器(全臓器または部分臓器)などの生体材料を指す。移植可能な移植片は、例えば、臓器、組織、皮膚、骨、神経、腱、ニューロン、血管、脂肪、角膜、多能性細胞、分化した細胞などの生体材料(生体内またはインビトロで得られるかまたは由来する)などの、自家移植片、同種移植片、または異種移植片であり得る。ある実施形態において、移植可能な移植片が、例えば、軟骨、骨、細胞外基質、またはコラーゲン基質から形成される。移植可能な移植片はまた、移植され得る、単一細胞、細胞並びに組織および臓器中の細胞の懸濁液であってもよい。移植可能な細胞は、通常、治療機能、例えば、レシピエント被験体において欠如しているかまたは低下された機能を有する。移植可能な細胞の幾つかの非限定的な例は、β細胞、肝細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、ニューロン、グリア細胞、またはミエリン形成細胞である。移植可能な細胞は、未修飾の細胞、例えば、ドナー被験体から得られ、いかなる遺伝子組み換えまたは後成的修飾も伴わずに移植に使用可能な細胞であり得る。他の実施形態において、移植可能な細胞は、改変細胞、例えば、遺伝的欠陥が補正された、遺伝的欠陥を有する被験体から得られる細胞または再プログラム化された細胞に由来する細胞、例えば、被験体から得られる細胞に由来する分化した細胞であり得る。
【0125】
「移植」は、移植可能な移植片を、(例えば、ドナー被験体から、インビトロの供給源(例えば、分化した自己細胞または異種の体内細胞または誘導された多能性細胞)から)レシピエント被験体へと、および/または同じ被験体の1つの身体部位から別の身体部位へと移す(移動する)プロセスを指す。
【0126】
「望ましくない免疫応答」は、抗原への曝露から生じ、本明細書に提供される疾病、疾患または病態(またはその症状)を促進または悪化させるか、或いは本明細書に提供される疾病、疾患または病態の兆候を示す任意の望ましくない免疫応答を指す。このような免疫応答は、一般に、被験体の健康に悪影響を与えるかまたは被験体の健康に対する悪影響の兆候を示す。
【0127】
C.本発明の組成物
制御性B細胞を生成する方法および組成物が本明細書で提供される。例えば、制御性B細胞からのIL−10放出は大部分の造血細胞に抗炎症効果および免疫抑制効果を及ぼすため、制御性B細胞は免疫応答を調節すると考えられている。IL−10はまた、単球およびマクロファージによる炎症誘導性サイトカインの産生ならびに抗原特異的CD4+T細胞の増殖を抑制する。特定の理論に拘泥することを望むものではないが、本明細書で提供される組成物は、例えば、ナイーブB細胞または制御性B細胞前駆体と相互作用し、その結果、制御性B細胞の成熟を誘導するまたは制御性B細胞の増殖および/または活性を増加させることにより、in vitroおよび/またはin vivoで制御性B細胞の数および/または活性に影響を及ぼすことができると考えられる。制御性B細胞の数および/または活性に対する効果は、例えば、制御性T細胞の産生および/または活性化などによる、他の制御性細胞の生成または寛容原性免疫応答の惹起の結果であってもよい。
【0128】
免疫抑制剤と抗原のB細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープとを含む合成ナノキャリア組成物の投与を含む免疫寛容の誘導方法および関連する組成物が本明細書で提供される。このような方法および組成物は、制御性B細胞を生成、刺激または動員し、寛容原性免疫応答の惹起を促進するのに有用である。提供される方法は、投与治療用タンパク質および/または移植可能な移植片も含み得る。従って、提供される組成物はまた、治療用タンパク質および/または移植可能な移植片も含み得る。組成物は、寛容原性免疫応答が所望される対象に投与されてもよい。このような対象としては、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器もしくは組織拒絶反応、または移植片対宿主病を有するまたは有するリスクがある人が挙げられる。このような対象としてはまた、対象が望ましくない免疫応答を起こしたまたは起こすことが予想される治療用タンパク質を投与された、投与されている、または投与されることになる人も挙げられる。このような対象としてはまた、移植を受けたまたは移植を受けることになる人も挙げられる。
【0129】
好ましくは、本発明の組成物により、制御性B細胞の生成、動員または活性化が起こる。制御性B細胞の特徴の1つは、IL−10を産生し、分泌する能力である。幾つかの制御性B細胞は、CD1d+またはCD1dhighである。幾つかの制御性B細胞は、CD5+および/またはCD19+である。例えば、幾つかの制御性B細胞は、CD1dhighCD5+CD19+である。幾つかの制御性B細胞は、CD24+またはCD24high;および/またはCD38+またはCD38highである。例えば、幾つかの制御性B細胞は、CD19+CD24highCD38highである。幾つかの制御性B細胞は、IL−10を産生し、分泌する。制御性B細胞の同定に使用できる追加の表面マーカーおよびケモカイン分泌特性は、当業者に公知である。様々な制御性B細胞集団の同定に有用な表面マーカー知見に基づき、当業者は、異質の細胞集団中の、例えば、培養物の細胞集団中または対象から得られた細胞集団中の制御性B細胞を同定し、計数することができる。
【0130】
前述のように、合成ナノキャリアは、B細胞エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープおよび/または免疫抑制剤を含むように設計される。様々な合成ナノキャリアが、本発明に従って使用され得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、球体または回転楕円体である。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、平坦または板状である。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、立方体または立方体状である。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、楕円形または長円形である。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、円筒形、円錐形、または角錐形である。
【0131】
ある実施形態において、各合成ナノキャリアが類似の特性を有するようにサイズ、形状、および/または組成に関して比較的均一な合成ナノキャリアの集団を使用するのが望ましい。例えば、合成ナノキャリアの総数を基準にして、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の合成ナノキャリアが、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%、または20%の範囲内の最小寸法または最大寸法を有し得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアの集団は、サイズ、形状、および/または組成に関して不均一であってもよい。
【0132】
合成ナノキャリアは、中実または中空であり得、1つ以上の層を含み得る。ある実施形態において、各層は、他の層と比べて独自の組成および独自の特性を有する。一例に過ぎないが、合成ナノキャリアは、コア/シェル構造を有してもよく、ここで、コアは1つの層(例えば、高分子コア)であり、シェルは第2の層(例えば、脂質二重層または単層)である。合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含み得る。
【0133】
ある実施形態において、合成ナノキャリアは、任意に1つ以上の脂質を含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、リポソームを含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、脂質二重層を含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、脂質単層を含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、ミセルを含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれるポリマーマトリクスを含むコアを含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれた非高分子コア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含み得る。
【0134】
他の実施形態において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含み得る。ある実施形態において、非高分子合成ナノキャリアは、金属原子(例えば、金原子)の集合体などの、非高分子成分の集合体である。
【0135】
幾つかの実施形態では、合成ナノキャリアは、任意選択により1種以上の両親媒性成分を含んでもよい。幾つかの実施形態では、両親媒性成分は、安定性が向上した、均一性が改善された、または粘度が増加した合成ナノキャリアの製造を促進することができる。幾つかの実施形態では、両親媒性成分は、脂質膜の内面(例えば、脂質二分子膜、脂質単分子膜など)と結合することができる。当該技術分野で公知の多くの両親媒性成分は、本発明に従って合成ナノキャリアの製造に使用するのに好適である。このような両親媒性成分としては、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン類;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールコハク酸エステル;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);モノステアリン酸ポリオキシエチレン;サーファクチン;ポロキソマー;ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル−アミン;パルミチン酸アセチル;リシノール酸グリセロール;ステアリン酸ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000−ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400−モノステアレート;リン脂質;高い界面活性特性を有する合成および/または天然の洗剤;デオキシコール酸塩;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオンペア試薬;およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。両親媒性成分は、異なる両親媒性成分の混合物であってもよい。当業者には、これが界面活性を有する物質の例を列挙するものであって包括的に示すものではないことが分かるであろう。本発明に従って使用される合成ナノキャリアの製造に任意の両親媒性成分を使用することができる。
【0136】
幾つかの実施形態では、合成ナノキャリアは、1種類以上の炭水化物を任意選択により含んでもよい。炭水化物は、天然であってもまたは合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然炭水化物であってもよい。特定の実施形態では、炭水化物には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸を含むがこれに限定されるものではない単糖類または二糖類が含まれる。特定の実施形態では、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシルメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、およびキサンタンを含むがこれらに限定されるものではない多糖類である。複数の実施形態では、本発明の合成ナノキャリアは、多糖類などの炭水化物を含まない(または明確に排除する)。特定の実施形態では、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、およびラクチトールを含むがこれらに限定されるものではない糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでもよい。
【0137】
ある実施形態において、合成ナノキャリアは、1つ以上のポリマーを含み得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端プルロニックポリマーである1つ以上のポリマーを含むことができる。ある実施形態において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)が、非メトキシ末端プルロニックポリマーである。ある実施形態において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端プルロニックポリマーである。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端ポリマーである1つ以上のポリマーを含む。ある実施形態において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)が、非メトキシ末端ポリマーである。ある実施形態において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端ポリマーである。ある実施形態において、合成ナノキャリアは、プルロニックポリマーを含まない1つ以上のポリマーを含む。ある実施形態において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)が、プルロニックポリマーを含まない。ある実施形態において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、プルロニックポリマーを含まない。ある実施形態において、このようなポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)によって囲まれ得る。ある実施形態において、合成ナノキャリアの様々な要素が、ポリマーと結合され得る。
【0138】
免疫抑制剤および/または抗原は、幾つかの方法の何れかによって合成ナノキャリアに結合され得る。一般に、結合は、免疫抑制剤および/または抗原と合成ナノキャリアとの結合の結果であり得る。この結合により、免疫抑制剤および/または抗原が、合成ナノキャリアの表面に結合されるか、および/または合成ナノキャリア中に含まれ(封入され)得る。しかしながら、ある実施形態において、免疫抑制剤および/または抗原は、合成ナノキャリアへの結合ではなく、合成ナノキャリアの構造の結果として、合成ナノキャリアによって封入される。好ましい実施形態において、合成ナノキャリアは、本明細書に提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤および/または抗原は、ポリマーに結合される。
【0139】
結合が、免疫抑制剤および/または抗原と合成ナノキャリアとの結合の結果として起こる場合、結合は、結合部分を介して起こり得る。結合部分は、免疫抑制剤および/または抗原が合成ナノキャリアに結合された任意の部分であり得る。このような部分は、アミド結合またはエステル結合などの共有結合、並びに免疫抑制剤および/または抗原を合成ナノキャリアに(共有または非共有)結合する別個の分子を含む。このような分子は、リンカーまたはポリマーまたはその単位を含む。例えば、結合部分は、免疫抑制剤および/または抗原が静電的に結合する荷電ポリマーを含み得る。別の例として、結合部分は、それが共有結合されるポリマーまたはその単位を含み得る。
【0140】
好ましい実施形態において、合成ナノキャリアは、本明細書に提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノキャリアは、完全にポリマーであり得るかまたはポリマーと他の材料との混合物であり得る。
【0141】
ある実施形態において、合成ナノキャリアのポリマーは、ポリマーマトリクスを形成するために結合する。これらの実施形態の幾つかにおいて、免疫抑制剤または抗原などの成分が、ポリマーマトリクスの1つ以上のポリマーと共有結合され得る。ある実施形態において、共有結合は、リンカーを介して行われ得る。ある実施形態において、成分は、ポリマーマトリクスの1つ以上のポリマーと非共有結合され得る。例えば、ある実施形態において、成分は、ポリマーマトリクス中に封入されるか、それによって囲まれるか、および/またはその全体にわたって分散され得る。その代わりにまたはそれに加えて、成分は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファン・デル・ワールス力などによって、ポリマーマトリクスの1つ以上のポリマーと結合され得る。ポリマーマトリクスを形成するための様々なポリマーおよび方法が、従来から知られている。
【0142】
ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであり得る。ポリマーは、2つ以上のモノマーを含むホモポリマーまたはコポリマーであり得る。配列に関して、コポリマーは、ランダム、ブロックであってもよく、またはランダム配列とブロック配列との組合せを含んでいてもよい。通常、本発明に係るポリマーは有機ポリマーである。
【0143】
ある実施形態において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはポリエーテル、或いはそれらの単位を含む。他の実施形態において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリカプロラクトン、或いはそれらの単位を含む。ある実施形態において、ポリマーは生分解性であるのが好ましい。従って、これらの実施形態において、ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールなどのポリエーテル或いはそれらの単位を含む場合、ポリマーは、ポリマーが生分解性であるように、ポリエーテルと生分解性ポリマーとのブロックコポリマーを含むのが好ましい。他の実施形態において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコール或いはそれらの単位などの、ポリエーテルまたはその単位のみを含まない。
【0144】
本発明に使用するのに好適なポリマーの他の例としては、以下に限定はされないが、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3−ジオキサン−2オン))、ポリ無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマレート、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(polyhydroxyacid)(例えばポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、およびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン−PEGコポリマー、およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)−PEGコポリマーが挙げられる。
【0145】
ある実施形態において、本発明に係るポリマーとしては、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3−ジオキサン−2オン));ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリレート;ポリアクリレート;およびポリシアノアクリレートを含むがこれらに限定されない、米国連邦規則21(21 C.F.R.)§ 177.2600の下で米国食品医薬品局(FDA)によってヒトへの使用が承認されたポリマーが挙げられる。
【0146】
ある実施形態において、ポリマーは、親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン性基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボン酸基);カチオン性基(例えば、第四級アミン基);または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。ある実施形態において、親水性ポリマーマトリクスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内に親水性環境を生成する。ある実施形態において、ポリマーは、疎水性であり得る。ある実施形態において、疎水性ポリマーマトリクスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内に疎水性環境を生成する。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノキャリア内に組み込まれる(例えば、結合される)材料の性質に影響を与え得る。
【0147】
ある実施形態において、ポリマーは、1つ以上の部分および/または官能基で変性され得る。様々な部分または官能基が、本発明に従って使用され得る。ある実施形態において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、炭水化物、および/または多糖類に由来するアクリルポリアセタールで変性され得る(Papisov,2001,ACS Symposium Series,786:301)。特定の実施形態は、Gref et al.に付与された米国特許第5543158号明細書、またはVon Andrian et al.による国際公開公報の国際公開第2009/051837号パンフレットの一般的な教示を用いて作製され得る。
【0148】
ある実施形態において、ポリマーは、脂質または脂肪酸基で変性され得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1つ以上であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1つ以上であり得る。
【0149】
ある実施形態において、ポリマーは、本明細書において「PLGA」と総称される、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;並びに本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位と、本明細書において「PLA」と総称される、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドなどの乳酸単位とを含むホモポリマーを含むポリエステルであり得る。ある実施形態において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA−PEGコポリマー、PGA−PEGコポリマー、PLGA−PEGコポリマー、およびそれらの誘導体が挙げられる。ある実施形態において、ポリエステルとしては、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)−PEGコポリマー、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0150】
ある実施形態において、ポリマーは、PLGAであり得る。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性および生分解性コポリマーであり、様々な形態のPLGAが、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸であり得る。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸の比率を変更することによって調整され得る。幾つかの実施形態では、本発明に従って使用されるPLGAは、乳酸:グリコール酸比が約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75または約15:85であることを特徴とする。
【0151】
ある実施形態において、ポリマーは、1つ以上のアクリルポリマーであり得る。特定の実施形態において、アクリルポリマーとしては、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(無水メタクリル酸)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記のポリマーのうちの1つ以上を含む組合せが挙げられる。アクリルポリマーは、低い含量の第四級アンモニウム基を有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全重合したコポリマーを含み得る。
【0152】
ある実施形態において、ポリマーは、カチオン性ポリマーであり得る。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸(例えばDNA、またはその誘導体)の負に帯電した鎖を縮合および/または保護することができる。ポリ(リジン)などのアミン含有ポリマー(Zauner et al.,1998,Adv.Drug Del.Rev.,30:97;およびKabanov et al.,1995,Bioconjugate Chem.,6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussif et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,1995,92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska−Latallo et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,93:4897;Tang et al.,1996,Bioconjugate Chem.,7:703;およびHaensler et al.,1993,Bioconjugate Chem.,4:372)は、生理的pHで正に帯電しており、核酸とイオン対を形成し、様々な細胞株におけるトランスフェクションを媒介する。実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、カチオン性ポリマーを含まなくてもよい(即ち除外し得る)。
【0153】
ある実施形態において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルであり得る(Putnam et al.,1999,Macromolecules,32:3658;Barrera et al.,1993、J.Am.Chem.Soc.,115:11010;Kwon et al.,1989,Macromolecules,22:3250;Lim et al.,1999,J.Am.Chem.Soc.,121:5633;およびZhou et al.,1990,Macromolecules,23:3399)。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)(Barrera et al.,1993,J.Am.Chem.Soc.,115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al.,1990,Macromolecules,23:3399)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnam et al.,1999,Macromolecules,32:3658;およびLim et al.,1999,J.Am.Chem.Soc.,121:5633)、およびポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnam et al.,1999,Macromolecules,32:3658;およびLim et al.,1999,J.Am.Chem.Soc.,121:5633)が挙げられる。
【0154】
これらのおよび他のポリマーの特性並びにそれらのポリマーを調製するための方法が、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号明細書;同第5,804,178号明細書;同第5,770,417号明細書;同第5,736,372号明細書;同第5,716,404号明細書;同第6,095,148号明細書;同第5,837,752号明細書;同第5,902,599号明細書;同第5,696,175号明細書;同第5,514,378号明細書;同第5,512,600号明細書;同第5,399,665号明細書;同第5,019,379号明細書;同第5,010,167号明細書;同第4,806,621号明細書;同第4,638,045号明細書;および同第4,946,929号明細書;Wang et al.,2001,J.Am.Chem.Soc.,123:9480;Lim et al.,2001,J.Am.Chem.Soc.,123:2460;Langer,2000,Acc.Chem.Res.,33:94;Langer,1999,J.Control.Release,62:7;およびUhrich et al.,1999,Chem.Rev.,99:3181を参照されたい)。より一般に、特定の好適なポリマーを合成するための様々な方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,Ed.by Goethals,Pergamon Press,1980;Principles of Polymerization by Odian,John Wiley & Sons,Fourth Edition,2004;Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al.,Prentice−Hall,1981;Deming et al.,1997,Nature,390:386;並びに米国特許第6,506,577号明細書、同第6,632,922号明細書、同第6,686,446号明細書、および同第6,818,732号明細書に記載されている。
【0155】
ある実施形態において、ポリマーは、直鎖状または分枝鎖状ポリマーであり得る。ある実施形態において、ポリマーは、デンドリマーであり得る。ある実施形態において、ポリマーは、互いに実質的に架橋された状態であり得る。ある実施形態において、ポリマーは、実質的に架橋がなくてもよい。ある実施形態において、ポリマーは、架橋工程を行わずに本発明に従って使用され得る。本発明の合成ナノキャリアが、上記のおよび他のポリマーの何れかのブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物、および/または付加物を含み得ることが更に理解されるべきである。当業者は、本明細書に挙げられるポリマーが、本発明に従って使用され得るポリマーの包括的ではなく例示的な一覧を表すことを認識するであろう。
【0156】
本発明に係る組成物は、保存剤、緩衝液、生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて、合成ナノキャリアを含む。組成物は、有用な剤形に達するために従来の薬剤製造および配合技術を用いて作製され得る。一実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、保存剤とともに注射するために滅菌生理食塩溶液中に懸濁される。
【0157】
実施形態において、キャリアとしての合成ナノキャリアを調製する場合、成分を合成ナノキャリアに結合するための方法が有用であり得る。成分が小分子である場合、合成ナノキャリアの組み立ての前に成分をポリマーに結合するのが有利であり得る。実施形態において、成分をポリマーに結合してから、このポリマー複合体を合成ナノキャリアの構成に使用するのではなく、表面基(これらの表面基の使用によって成分を合成ナノキャリアに結合するのに使用される)を有する合成ナノキャリアを調製するのも有利であり得る。
【0158】
特定の実施形態において、結合は、共有結合リンカーであり得る。実施形態において、本発明に係るペプチドは、ナノキャリアの表面上のアジド基と、アルキン基を含有する抗原または免疫抑制剤との1,3−双極性環状付加反応によって、またはナノキャリアの表面上のアルキンと、アジド基を含有する成分との1,3−双極性環状付加反応によって形成される1,2,3−トリアゾールリンカーを介して外面に共有結合され得る。このような環状付加反応は、好ましくは、好適なCu(I)リガンドおよびCu(II)化合物を触媒活性Cu(I)化合物へと還元するための還元剤とともに、Cu(I)触媒の存在下で行われる。このCu(I)触媒によるアジド−アルキン環状付加(CuAAC)は、クリック反応とも呼ばれることもある。
【0159】
更に、共有結合は、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、尿素またはチオ尿素リンカー、アミジンリンカー、アミンリンカー、およびスルホンアミドリンカーを含む共有結合リンカーを含み得る。
【0160】
アミドリンカーは、1つの成分上のアミンと、ナノキャリアなどの第2の成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカーにおけるアミド結合は、好適に保護されたアミノ酸または成分および活性化カルボン酸(N−ヒドロキシスクシンイミドで活性化されたエステルなど)との従来のアミド結合形成反応の何れかを用いて作製され得る。
【0161】
ジスルフィドリンカーは、例えば、R1−S−S−R2の形態の2個の硫黄原子間のジスルフィド(S−S)結合の形成によって作製される。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(−SH)を含有する成分の、ポリマーまたはナノキャリアにおける別の活性化チオール基とのチオール交換、またはチオール/メルカプタン基を含有するナノキャリアの、活性化チオール基を含有する成分とのチオール交換によって形成され得る。
【0162】
トリアゾールリンカー、特に、以下の形態の1,2,3−トリアゾール
【化1】
(式中、R1およびR2が、任意の化学物質であってもよい)は、ナノキャリアなどの第1の成分に結合されたアジドと、免疫抑制剤または抗原などの第2の成分に結合された末端アルキンとの1,3−双極性環状付加反応によって作製される。1,3−双極性環状付加反応は、触媒を用いてまたは用いずに、好ましくは、1,2,3−トリアゾール官能基によって2つの成分を結合するCu(I)触媒を用いて行われる。この化学作用は、Sharpless et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41(14),2596,(2002)およびMeldal,et al,Chem.Rev.,2008,108(8),2952−3015に詳細に記載され、「クリック」反応またはCuAACと呼ばれることが多い。
【0163】
実施形態において、ポリマー鎖の末端にアジド基またはアルキン基を含有するポリマーが調製される。次に、このポリマーは、複数のアルキン基またはアジド基が該当するナノキャリアの表面上に配置されるように合成ナノキャリアを調製するのに使用される。或いは、合成ナノキャリアは、別の経路によって調製され、その後、アルキンまたはアジド基で官能化され得る。成分は、アルキン基(ポリマーがアジド基を含有する場合)またはアジド基(ポリマーがアルキン基を含有する場合)の何れかの存在によって調製される。次に、成分は、1,4−二置換1,2,3−トリアゾールリンカーによって成分を粒子に共有結合する触媒を用いてまたは用いずに、1,3−双極性環状付加反応によってナノキャリアと反応される。
【0164】
チオエーテルリンカーは、例えば、R1−S−R2の形態の硫黄−炭素(チオエーテル)結合の形成によって作製される。チオエーテルは、1つの成分におけるチオール/メルカプタン(−SH)基の、ナノキャリアなどの第2の成分におけるハロゲン化物またはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化の何れかによって作製され得る。チオエーテルリンカーはまた、1つの成分におけるチオール/メルカプタン基の、マイケル受容体としてマレイミド基またはビニルスルホン基を含有するポリマーなどの第2の成分における電子不足アルケン基へのマイケル付加によって形成され得る。別の方法では、チオエーテルリンカーは、1つの成分におけるチオール/メルカプタン基と、ポリマーまたはナノキャリアなどの第2の成分におけるアルケン基とのラジカルチオール−エン反応によって調製され得る。
【0165】
ヒドラゾンリンカーは、1つの成分におけるヒドラジド基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるアルデヒド/ケトン基との反応によって作製される。
【0166】
ヒドラジドリンカーは、1つの成分におけるヒドラジン基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるカルボン酸基との反応によって形成される。このような反応は、一般に、カルボン酸が活性化試薬で活性化されるアミド結合の形成と同様の化学作用を用いて行われる。
【0167】
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの成分におけるアミンまたはN−アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるアルデヒドまたはケトン基との反応によって形成される。
【0168】
尿素またはチオ尿素リンカーは、1つの成分におけるアミン基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるイソシアネートまたはチオイソシアネート基との反応によって調製される。
【0169】
アミジンリンカーは、1つの成分におけるアミン基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるイミドエステル基との反応によって調製される。
【0170】
アミンリンカーは、1つの成分におけるアミン基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるハロゲン化物、エポキシド、またはスルホン酸エステル基などのアルキル化基とのアルキル化反応によって作製される。或いは、アミンリンカーはまた、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬を用いた、1つの成分におけるアミン基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるアルデヒドまたはケトン基との還元的アミノ化によって作製され得る。
【0171】
スルホンアミドリンカーは、1つの成分におけるアミン基と、ナノキャリアなどの第2の成分におけるハロゲン化スルホニル基(塩化スルホニルなど)との反応によって作製される。
【0172】
スルホンリンカーは、ビニルスルホンへの求核試薬のマイケル付加によって作製される。ビニルスルホンまたは求核試薬の何れかが、ナノキャリアの表面にあるかまたは成分に結合され得る。
【0173】
成分はまた、非共有結合方法によってナノキャリアに結合され得る。例えば、負に帯電した抗原または免疫抑制剤が、静電吸着によって正に帯電したナノキャリアに結合され得る。金属リガンドを含有する成分はまた、金属リガンド錯体を介して、金属錯体を含有するナノキャリアに結合され得る。
【0174】
実施形態において、成分は、合成ナノキャリアの組立の前に、ポリマー、例えばポリ乳酸−ブロック−ポリエチレングリコールに結合され得るか、または合成ナノキャリアは、その表面における反応性または活性化可能な基を用いて形成され得る。後者の場合、成分は、合成ナノキャリアの表面によって提示される結合化学作用と適合する基を用いて調製され得る。他の実施形態において、ペプチド成分が、好適なリンカーを用いてVLPまたはリポソームに結合され得る。リンカーは、2個の分子を一緒に結合することが可能な化合物または試薬である。一実施形態において、リンカーは、Hermanson 2008に記載されるように、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性の試薬であり得る。例えば、表面にカルボン酸基を含有するVLPまたはリポソーム合成ナノキャリアが、EDCの存在下で、ホモ二官能性リンカー、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処理されて、ADHリンカーによって対応する合成ナノキャリアが形成され得る。次に、得られるADH結合合成ナノキャリアは、NCにおけるADHリンカーの他端を介して酸性基を含有するペプチド成分と結合されて、対応するVLPまたはリポソームペプチド複合体が生成される。
【0175】
利用可能な結合方法の詳細な説明については、Hermanson G T “Bioconjugate Techniques”,2nd Edition Published by Academic Press,Inc.,2008を参照されたい。共有結合に加えて、成分は、予め形成された合成ナノキャリアへの吸着によって結合され得るかまたは成分は、合成ナノキャリアの形成中の封入によって結合され得る。
【0176】
本明細書に提供される任意の免疫抑制剤は、合成ナノキャリアに結合され得る。免疫抑制剤としては、以下に限定はされないが、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などのmTOR阻害剤;TGF−βシグナル伝達剤;TGF−β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能の阻害剤;P38阻害剤;NF−κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4阻害剤などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤、および酸化ATPが挙げられる。免疫抑制剤としては、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アスピリン、ニフルム酸、エストリオール、トリプトリド、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−10)、シクロスポリンA、siRNA標的化サイトカインまたはサイトカイン受容体なども挙げられる。
【0177】
スタチンの例としては、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))、およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
【0178】
mTOR阻害剤の例としては、ラパマイシンおよびその類似体(例えば、CCL−779、RAD001、AP23573、C20−メタアリルラパマイシン(C20−Marap)、C16−(S)−ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16−BSrap)、C16−(S)−3−メチルインドールラパマイシン(C16−iRap)(Bayle et al.Chemistry & Biology 2006,13:99−107))、AZD8055、BEZ235(NVP−BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK−8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU−0063794、PI−103、PP242、テムシロリムス、およびWYE−354(Selleck(Houston,TX,USA)から入手可能)が挙げられる。
【0179】
TGF−βシグナル伝達剤の例としては、TGF−βリガンド(例えば、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形態形成タンパク質、nodal、TGF−βs)およびそれらの受容体(例えば、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R−SMADS/コ−SMADS(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)、およびリガンド阻害剤(例えば、ホリスタチン、ノギン、コーディン、DAN、lefty、LTBP1、THBS1、デコリン(Decorin))が挙げられる。
【0180】
ミトコンドリア機能の阻害剤の例としては、アトラクチロシド(二カリウム塩)、ボンクレキン酸(三アンモニウム塩)、カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン、カルボキシアトラクチロシド(例えば、アトラクチリス・グミフェラ(Atractylis gummifera)由来)、CGP−37157、(−)−デグエリン(例えば、ムンドゥレア・セリセア(Mundulea sericea)由来)、F16、ヘキソキナーゼII VDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1、およびバリノマイシン(例えば、ストレプトマイセス・フルビシムス(Streptomyces fulvissimus)由来)(EMD4Biosciences,USA)が挙げられる。
【0181】
P38阻害剤の例としては、SB−203580(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)1H−イミダゾール)、SB−239063(トランス−1−(4ヒドロキシシクロヘキシル)−4−(フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−ピリミジン−4−イル)イミダゾール)、SB−220025(5−(2アミノ−4−ピリミジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジニル)イミダゾール))、およびARRY−797が挙げられる。
【0182】
NF(例えば、NK−κβ)阻害剤の例としては、IFRD1、2−(1,8−ナフチリジン−2−イル)−フェノール、5−アミノサリチル酸、BAY 11−7082、BAY 11−7085、CAPE(コーヒー酸フェネチルエステル)、マレイン酸ジエチル、IKK−2阻害剤IV、IMD 0354、ラクタシスチン、MG−132[Z−Leu−Leu−Leu−CHO]、NFκB活性化阻害剤III、NF−κB活性化阻害剤II、JSH−23、パルテノリド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM−18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO 106−9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)−MG−132、サリチル酸ナトリウム、トリプトリド(PG490)、ウェデロラクトンが挙げられる。
【0183】
アデノシン受容体アゴニストの例としては、CGS−21680およびATL−146eが挙げられる。
【0184】
プロスタグランジンE2アゴニストの例としては、E−プロスタノイド2およびE−プロスタノイド4が挙げられる。
【0185】
ホスホジエステラーゼ阻害剤(非選択的および選択的阻害剤)の例としては、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリトロ−9−(2−ヒドロキシ−3−ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFANTM)、ミルリノン、レボシメンダン、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXASTM、DALIRESPTM)、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン、4−メチルピペラジン、およびピラゾロピリミジン−7−1が挙げられる。
【0186】
プロテアソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン−3−ガラート、およびサリノスポラミドAが挙げられる。
【0187】
キナーゼ阻害剤の例としては、ベバシズマブ、BIBW 2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブ、ムブリチニブが挙げられる。
【0188】
糖質コルチコイドの例としては、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)、およびアルドステロンが挙げられる。
【0189】
レチノイドの例としては、レチノール、レチナール、トレチノイン(トレチノイン酸、RETIN−A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝産物であるアシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))が挙げられる。
【0190】
サイトカイン阻害薬の例としては、IL1ra、IL1受容体拮抗薬、IGFBP、TNF−BF、ウロモジュリン、α−2−マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジン、およびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))が挙げられる。
【0191】
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニストの例としては、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335、T0070907(EMD4Biosciences,USA)が挙げられる。
【0192】
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニストの例としては、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブラート、GW1929、GW7647、L−165,041、LY 171883、PPARγ活性化因子、Fmoc−Leu、トログリタゾン、およびWY−14643(EMD4Biosciences,USA)が挙げられる。
【0193】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の例としては、トリコスタチンAなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサメート)、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチド、ベンズアミド、求電子性ケトン、フェニルブチレートおよびバルプロ酸などの脂肪族酸化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS−275)、CI994、およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、および2−ヒドロキシナフタルアルデヒドが挙げられる。
【0194】
カルシニューリン阻害剤の例としては、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリン、およびタクロリムスが挙げられる。
【0195】
ホスファターゼ阻害剤の例としては、BN82002塩酸塩、CP−91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、シペルメトリン、エチル−3,4−デフォスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル−3,4−デフォスタチン、NSC 95397、ノルカンタリジン、プロロセントラム・コンカバム(prorocentrum concavum)に由来するオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、様々なホスファターゼ阻害剤混合物、タンパク質ホスファターゼ1C、タンパク質ホスファターゼ2A阻害剤タンパク質、タンパク質ホスファターゼ2A1、タンパク質ホスファターゼ2A2、オルトバナジウム酸ナトリウムが挙げられる。
【0196】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の抗原も合成ナノキャリアに結合している。幾つかの実施形態では、抗原は、免疫抑制剤が結合しているのと同じまたは異なる合成ナノキャリアに結合している。他の実施形態では、抗原は、どの合成ナノキャリアにも結合していない。抗原としては、本明細書で提供される抗原、またはその断片もしくは誘導体の何れかが挙げられ、このような抗原は、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器もしくは組織拒絶反応、移植片対宿主病、移植抗原および治療用タンパク質抗原に関連する。エピトープ、またはエピトープを含むタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドは、提供されるまたはさもなければ当該技術分野で公知の抗原の何れかから得られたものであっても、または誘導されたものであってもよい。
【0197】
治療用タンパク質の例としては、以下に限定はされないが、不融性治療用タンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、増殖因子、モノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体(例えば、補充療法として被験体に投与されるもの)、およびポンペ病に関連するタンパク質(例えば、アルグルコシダーゼアルファ、rhGAA(例えば、MyozymeおよびLumizyme(Genzyme))が挙げられる。治療用タンパク質は、血液凝固カスケードに関与するタンパク質も含む。治療用タンパク質の例としては、以下に限定はされないが、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、第V因子、フォン・ヴィレブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子(von Heldebrant Factor)、組織プラスミノーゲン活性化因子、インスリン、成長ホルモン、エリスロポエチンα、VEGF、トロンボポエチン、リゾチーム、抗トロンビンなどが挙げられる。治療用タンパク質は、レプチンおよびアディポネクチンなどのアディポカインも含む。治療用タンパク質の他の例は、以下および本明細書のどこかに記載されているとおりである。抗原として提供される治療用タンパク質の何れかの断片または誘導体も含まれる。
【0198】
リソソーム貯蔵障害に罹患した被験体の酵素補充療法に使用される治療用タンパク質の例としては、以下に限定はされないが、ゴーシェ病の治療のためのイミグルセラーゼ(例えば、CEREZYME(商標))、ファブリー病の治療のためのa−ガラクトシダーゼA(a−gal A)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、ポンペ病の治療のための酸性a−グルコシダーゼ(GAA)(例えば、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、ムコ多糖症の治療のためのアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))が挙げられる。
【0199】
酵素の例としては、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、およびリガーゼが挙げられる。
【0200】
ホルモンの例としては、メラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)、セロトニン、チロキシン(またはテトラヨードチロニン)(甲状腺ホルモン)、トリヨードチロニン(甲状腺ホルモン)、エピネフリン(またはアドレナリン)、ノルエピネフリン(またはノルアドレナリン)、ドパミン(またはプロラクチン抑制ホルモン)、抗ミュラー管ホルモン(またはミュラー管抑制因子またはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(またはコルチコトロピン)、アンギオテンシノーゲンおよびアンジオテンシン、抗利尿ホルモン(またはバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GIP、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(またはソマトメジン)、レプチン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オレキシン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レラキシン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはサイロトロピン)、サイロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール(1,25−ジヒドロキシビタミンD3)、カルシジオール(25−ヒドロキシビタミンD3)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、神経ペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵臓ポリペプチド、レニン、およびエンケファリンが挙げられる。
【0201】
血液および血液凝固因子の例としては、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子、プロコンバーチン)、第VIII因子(抗血友病グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン成分)、第X因子(スチュアート・プロワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子量キニノーゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、α2−抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2(PAI2)、癌由来凝血促進因子、およびエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
【0202】
サイトカインの例としては、リンホカイン、インターロイキン、およびケモカイン、IFN−γ、TGF−βなどの1型サイトカイン、並びにIL−4、IL−10、およびIL−13などの2型サイトカインが挙げられる。
【0203】
増殖因子の例としては、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型運動因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、増殖分化因子−9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞癌由来増殖因子(HDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、遊走刺激因子、ミオスタチン(GDF−8)、神経成長因子(NGF)および他の神経栄養因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、形質転換成長因子α(TGF−α)、形質転換成長因子β(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、血管内皮成長因子(VEGF)、Wntシグナル経路、胎盤増殖因子(PlGF)、[(ウシ胎仔ソマトトロピン)](FBS)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−7が挙げられる。
【0204】
モノクローナル抗体の例としては、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴール、ALD、アレムツズマブ、ペンテト酸アルツモマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ(トシリズマブ)、アトロリムマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドルリキシズマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エンリモマブペゴール、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィギツムマブ、フォントリズマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、GC1008、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ、イムシロマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツズマブ、マスリモマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、ムロモナブ−CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オクレリズマブ、オズリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パスコリズマブ、ペムツモマブ、パーツズマブ、ペキセリズマブ、ピンツモマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サツモマブペンデチド、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、ソラネズマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、チシリムマブ(トレメリムマブ)、ティガツズマブ、トシリズマブ(アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ、およびゾリモマブアリトクスが挙げられる。
【0205】
注入療法または注射用の治療用タンパク質の例としては、例えば、トシリズマブ(Roche/Actemra(登録商標))、α−1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、Hematide(登録商標)(Affymaxおよび武田薬品(Takeda)、合成ペプチド)、アルブインターフェロンα−2b(Novartis/Zalbin(商標))、Rhucin(登録商標)(Pharming Group、C1阻害剤補充療法)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムマブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ベラグルセラーゼアルファ(Shire)が挙げられる。
【0206】
本発明の態様に従って有用な更なる治療用タンパク質は、当業者に明らかであり、本発明は、これに関して限定されない。
【0207】
ある実施形態において、抗原または免疫抑制剤などの成分が、単離され得る。「単離される」は、要素が、その天然の環境から分離され、その同定または使用を可能にするのに十分な量で存在することを指す。これは、例えば、要素が、(i)発現クローニングによって選択的に生成され得るかまたは(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって精製され得ることを意味する。単離された要素は、実質的に純粋であり得るが、実質的に純粋である必要はない。単離された要素は、医薬製剤中で薬学的に許容できる賦形剤と混合され得るため、要素は、製剤のほんのわずかな重量パーセントを占め得る。それにもかかわらず、要素は、生物系中でそれと関連し得る物質から分離されたという点で単離される、即ち、他の脂質またはタンパク質から単離される。本明細書で提供される要素の何れかを単離された形態で組成物中に含んでもよい。
【0208】
D.本発明の組成物を作製および使用するための方法並びに関連する方法
合成ナノキャリアは、当該技術分野において公知の様々な方法を用いて調製され得る。例えば、合成ナノキャリアは、ナノ析出(nanoprecipitation)、流体チャネルを用いたフローフォーカシング(flow focusing)、噴霧乾燥、単一および二重乳化溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルジョン法、マイクロ加工、ナノ加工(nanofabrication)、犠牲層、単純コアセルベーションおよび複合コアセルベーション、並びに当業者に周知の他の方法のような方法によって形成され得る。その代わりにまたはそれに加えて、単分散半導体ナノ材料、伝導性ナノ材料、磁性ナノ材料、有機ナノ材料、および他のナノ材料のための水性および有機溶媒合成が、記載されている(Pellegrino et al.,2005,Small,1:48;Murray et al.,2000,Ann.Rev.Mat.Sci.,30:545;およびTrindade et al.,2001,Chem.Mat.,13:3843)。更なる方法が、文献に記載されている(例えば、Doubrow,Ed.,“Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,” CRC Press,Boca Raton,1992;Mathiowitz et al.,1987,J.Control.Release,5:13;Mathiowitz et al.,1987,Reactive Polymers,6:275;およびMathiowitz et al.,1988,J.Appl.Polymer Sci.,35:755;米国特許第5578325号明細書および同第6007845号明細書;P.Paolicelli et al.,“Surface−modified PLGA−based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus−like Particles” Nanomedicine.5(6):843−853(2010)を参照されたい)。
【0209】
様々な材料が、C.Astete et al.,“Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles” J.Biomater.Sci.Polymer Edn,Vol.17,No.3,pp.247−289(2006);K.Avgoustakis “Pegylated Poly(Lactide)and Poly(Lactide−Co−Glycolide)Nanoparticles:Preparation,Properties and Possible Applications in Drug Delivery” Current Drug Delivery 1:321−333(2004);C.Reis et al.,“Nanoencapsulation I.Methods for preparation of drug−loaded polymeric nanoparticles” Nanomedicine 2:8−21(2006);P.Paolicelli et al.,“Surface−modified PLGA−based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus−like Particles” Nanomedicine.5(6):843−853(2010)を含むがこれらに限定されない様々な方法を用いて、所望により合成ナノキャリアへと封入され得る。2003年10月14日にUngerに付与された米国特許第6,632,671号明細書に開示される方法を含むがこれに限定されない、材料を合成ナノキャリア中に封入するのに好適な他の方法が使用され得る。
【0210】
特定の実施形態において、合成ナノキャリアは、ナノ析出プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。合成ナノキャリアを調製するのに使用される条件は、所望のサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外的形態、「粘着性」、形状など)の粒子を得るために変更され得る。合成ナノキャリアを調製する方法および使用される条件(例えば、溶媒、温度、濃度、空気流量など)は、合成ナノキャリアに結合される材料および/またはポリマーマトリクスの組成に左右され得る。
【0211】
上記の方法の何れかによって調製される粒子が、所望の範囲を外れたサイズ範囲を有する場合、粒子は、例えば、ふるいを用いてサイズ分けされ得る。
【0212】
本発明の合成ナノキャリアの要素(即ち、成分)(免疫特徴表面を構成する部分、標的部分、ポリマーマトリクス、抗原、免疫抑制剤など)が、合成ナノキャリア全体に、例えば、1つ以上の共有結合によって結合されてもよく、または1つ以上のリンカーによって結合されてもよい。合成ナノキャリアを官能化する更なる方法が、Saltzman et al.への米国特許出願公開第2006/0002852号明細書、DeSimone et al.への米国特許出願公開第2009/0028910号明細書、またはMurthy et al.の公開された国際特許出願の国際公開第/2008/127532 A1号パンフレットから適合され得る。
【0213】
その代わりにまたはそれに加えて、合成ナノキャリアは、成分に、直接または非共有相互作用を介して間接的に結合され得る。非共有の実施形態において、非共有結合には、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない非共有相互作用が介在する。このような結合は、本発明の合成ナノキャリアの外面または内面にあるように配置され得る。実施形態において、封入および/または吸収が、結合の形態である。実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、同じビヒクルまたは送達系中で混合することによって、抗原と組み合わされ得る。
【0214】
合成ナノキャリアの集団は、従来の薬剤混合方法を用いて、本発明に係る医薬剤形を形成するように組み合わされ得る。これらには、ナノキャリアの1つ以上のサブセットをそれぞれが含有する2つ以上の懸濁液が直接組み合わされるかまたは希釈剤を含む1つ以上の容器によって合わされる液−液混合が含まれる。また、合成ナノキャリアが、粉末形態で製造または貯蔵され得る際、2つ以上の粉末の再懸濁が共通の媒体中で行われ得るように粉末同士の乾式混合が行われ得る。ナノキャリアの特性およびそれらの相互作用ポテンシャルに応じて、1つまたは別の混合経路に与えられる利点があり得る。
【0215】
合成ナノキャリアを含む典型的な本発明の組成物は、無機または有機緩衝液(例えば、リン酸の、炭酸の、酢酸の、またはクエン酸のナトリウム塩またはカリウム塩)およびpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、クエン酸のまたは酢酸の塩、アミノ酸およびその塩)酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、α−トコフェロール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9−10ノニルフェノール、デソキシコール酸ナトリウム)、溶液および/または冷凍/溶解安定剤(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調整剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、保存剤(例えば、チメロサール、2−フェノキシエタノール、EDTA)、ポリマー安定剤および粘度調整剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)および共溶媒(例えば、グリセリロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含み得る。
【0216】
本発明に係る組成物は、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて、本発明の合成ナノキャリアを含む。組成物は、有用な剤形に達するために従来の薬剤製造および配合技術を用いて作製され得る。本発明を実施する際に使用するのに好適な技術は、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice,Edited by Edward L.Paul,Victor A.Atiemo−Obeng,and Suzanne M.Kresta,2004 John Wiley & Sons,Inc.;およびPharmaceutics:The Science of Dosage Form Design,2nd Ed.Edited by M.E.Auten,2001,Churchill Livingstoneに見出され得る。一実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、保存剤とともに注射するために滅菌生理食塩溶液中に懸濁される。
【0217】
本発明の組成物は、任意の好適な方法で作製され得、本発明は、本明細書に記載される方法を用いて製造され得る組成物に決して限定されないことを理解されたい。適切な方法の選択は、関連する特定の部分の特性に配慮することを必要とし得る。
【0218】
ある実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、滅菌条件下で製造されるかまたは最終的に滅菌される。これにより、得られる組成物を確実に無菌かつ非感染性にすることができるため、非無菌組成物と比較した際に安全性が向上される。これは、特に、合成ナノキャリアを投与される被験体が、免疫不全を有するか、感染症に罹患しているか、および/または感染症に罹患しやすい場合、有益な安全対策を提供する。ある実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、活性を失うことなく、長期間にわたって、製剤化手法に応じて懸濁液中にまたは凍結乾燥粉末として、凍結乾燥され、貯蔵され得る。
【0219】
本発明の組成物は、皮下、鼻腔内、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経粘膜、経粘膜、舌下、直腸、点眼、経肺、皮内、経真皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)または皮内を含むがこれらに限定されない様々な経路によって或いはこれらの経路の組合せによって投与され得る。投与経路は、吸入または経肺エアゾールによる投与も含む。エアゾール送達系を調製するための技術が、当業者に周知である(例えば、参照により援用される、Sciarra and Cutie,“Aerosols,” in Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,1990,pp.1694−1712を参照されたい)。
【0220】
本発明の細胞に基づいた療法として提供される移植可能な移植片または治療用タンパク質は、非経口、動脈内、鼻腔内または静脈内投与によって、或いはリンパ節または前眼房への注射によって、或いは対象とする臓器または組織への局所投与によって投与され得る。投与は、皮下、髄腔内、脳室内、筋肉内、腹腔内、冠動脈内、膵臓内、肝臓内または気管支内注射によって行われ得る。
【0221】
本発明の組成物は、本明細書のどこかに記載される有効量などの、有効量で投与され得る。剤形の投与量は、本発明に係る、様々な量の合成ナノキャリアの集団および/または様々な量の、免疫抑制剤および/または抗原を含有する。本発明の剤形中に存在する合成ナノキャリアおよび/または免疫抑制剤および/または抗原の量は、抗原の性質、達成される治療効果、および他のこのようなパラメータに応じて変更され得る。実施形態において、投与量決定試験が、合成ナノキャリアの集団の最適な治療量並びに剤形中に存在する免疫抑制剤および/または抗原の量を確定するために行われ得る。実施形態において、合成ナノキャリアおよび/または免疫抑制剤および/または抗原は、被験体への投与の際に、抗原に対する寛容原性免疫応答を生成するのに有効な量で剤形中に存在する。被験体における従来の投与量決定試験および技術を用いて寛容原性免疫応答を生成するのに有効な免疫抑制剤および/または抗原の量を決定することが可能であり得る。本発明の剤形は、様々な頻度で投与され得る。好ましい実施形態において、剤形の少なくとも1回の投与が、薬理学的に関連する応答を生成するのに十分である。より好ましい実施形態において、剤形の少なくとも2回の投与、少なくとも3回の投与、または少なくとも4回の投与が、薬理学的に関連する応答を確実にするのに用いられる。
【0222】
本発明の組成物の予防的投与が、疾病、疾患または病態の発症の前に開始され得、または治療的投与が、疾患、疾患または病態が定着した後に開始され得る。
【0223】
ある実施形態において、合成ナノキャリアの投与は、例えば、治療用タンパク質または移植可能な移植片の投与またはアレルゲンへの曝露の前に行われる。例示的実施形態において、合成ナノキャリアは、以下に限定されないが、治療用タンパク質または移植可能な移植片の投与またはアレルゲンへの投与の30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0日前などに、1回以上投与される。それに加えてまたはその代わりに、合成ナノキャリアは、治療用タンパク質または移植可能な移植片の投与またはアレルゲンへの曝露の後、被験体に投与され得る。例示的実施形態において、合成ナノキャリアは、以下に限定はされないが、治療用タンパク質または移植可能な移植片の投与またはアレルゲンへの曝露の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30日後などに、1回以上投与される。
【0224】
ある実施形態において、(例えば、本明細書に提供される合成ナノキャリアの)維持投与量は、例えば、初期投与量の後に得られる寛容原性効果を維持するために、被験体における望ましくない免疫反応を防止するために、または被験体が、望ましくない免疫応答または望ましくないレベルの免疫応答を起こすリスクがある被験体になるのを防止するために、初期投与が被験体における寛容原性応答をもたらした後に被験体に投与される。ある実施形態において、維持投与量は、被験体に投与された初期投与量と同じ投与量である。ある実施形態において、維持投与量は、初期投与量より低い投与量である。例えば、ある実施形態において、維持投与量は、初期投与量の約3/4、約2/3、約1/2、約1/3、約1/4、約1/8、約1/10、約1/20、約1/25、約1/50、約1/100、約1/1,000、約1/10,000、約1/100,000、または約1/1,000,000(重量/重量)である。
【0225】
本明細書に記載される組成物および方法は、寛容原性免疫応答を誘導または促進し、および/または免疫抑制のために望ましくない免疫応答を抑制し、調節し、指向し(direct)または指向し直す(redirect)ために使用され得る。本明細書に記載される組成物および方法は、免疫抑制(例えば、寛容原性免疫応答)が治療効果を与えるであろう疾病、疾患または病態の診断、予防および/または治療に使用され得る。このような疾病、疾患または病態は、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器若しくは組織拒絶反応および移植片対宿主病を含む。本明細書に記載される組成物および方法は、移植を行ったかまたは移植を行う予定である被験体にも使用され得る。本明細書に記載される組成物および方法は、被験体が望ましくない免疫応答を生成したかまたは生成することが予測される治療用タンパク質を投与されたか、投与されているかまたは投与される予定である被験体にも使用され得る。
【0226】
自己免疫疾患としては、以下に限定はされないが、関節リウマチ、多発性硬化症、免疫介在性または1型糖尿病、炎症性腸疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、全身性エリテマトーデス、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、円形脱毛症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、セリアック病、シェーグレン症候群、リウマチ熱、胃炎、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、膵島炎、卵巣炎、精巣炎、ブドウ膜炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、重症筋無力症、原発性粘液水腫、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、アジソン病、強皮症、グッドパスチャー症候群、腎炎、例えば、糸球体腎炎、乾癬、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、特発性血小板減少性紫斑病、特発性白血球減少症、ウェゲナー肉芽腫および多発性/皮膚筋炎が挙げられる。
【0227】
本発明における使用が想定される、幾つかの更なる例示的な自己免疫疾患、関連する自己抗原、および自己抗体が、以下の表1に記載されている:
【0231】
炎症性疾患としては、以下に限定はされないが、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、ベーチェット病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、クローン病、大腸炎、嚢胞性線維症、皮膚炎、憩室炎、肝炎、過敏性腸症候群(IBS)、エリテマトーデス、筋ジストロフィー、腎炎、パーキンソン病、帯状疱疹および潰瘍性大腸炎が挙げられる。炎症性疾患としては、例えば、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、慢性胆嚢炎、結核、橋本甲状腺炎、敗血症、サルコイドーシス、珪肺症および他の塵肺症、並びに創傷に埋め込まれた異物も挙げられるが、そのように限定されない。本明細書において使用される際、「敗血症」という用語は、微生物侵入に対する宿主の全身性炎症反応に関連するよく認識された臨床症候群を指す。本明細書において使用される際の「敗血症」という用語は、発熱または体温低下、頻拍、および頻呼吸によって通常示される病態を指し、重篤な例では、血圧低下、臓器機能不全、更には死に至ることさえある。
【0232】
ある実施形態において、炎症性疾患は、非自己免疫性炎症性腸疾患、術後癒着、冠動脈疾患、肝線維症、急性呼吸窮迫症候群、急性炎症性膵炎、内視鏡的逆行性胆道膵管造影によって誘発される膵炎、熱傷、冠動脈、大脳動脈および末梢動脈のアテローム発生、虫垂炎、胆嚢炎、憩室炎、内臓線維性障害(visceral fibrotic disorder)、創傷治癒、皮膚瘢痕障害(skin scarring disorder)(ケロイド、汗腺膿瘍)、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変)、喘息、壊疽性膿皮症、スイート症候群、ベーチェット病、原発性硬化性胆管炎または膿瘍である。ある好ましい実施形態において、炎症性疾患は、炎症性腸疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)である。
【0233】
他の実施形態において、炎症性疾患は、自己免疫疾患である。自己免疫疾患は、ある実施形態において、関節リウマチ、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、糖尿病、若年性糖尿病、自然発症自己免疫性糖尿病、胃炎、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、膵島炎、卵巣炎、精巣炎、ブドウ膜炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、多発性硬化症、重症筋無力症、原発性粘液水腫、甲状腺機能亢進症、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、アジソン病、強直性脊椎炎、サルコイドーシス、強皮症、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、グレーブス病、糸球体腎炎、乾癬、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、血液脱出、水疱性類天疱瘡、交感性眼炎、特発性血小板減少性紫斑病、特発性白血球減少症、シェーグレン症候群、全身性硬化症、ウェゲナー肉芽腫、多発性/皮膚筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ループスまたは全身性エリテマトーデスである。
【0234】
移植片対宿主病(GVHD)は、新たに移植された物質が移植レシピエントの身体を攻撃する、多能性細胞(例えば、幹細胞)または骨髄の移植の後に起こり得る合併症である。場合によっては、GVHDは、輸血後に起こる。移植片対宿主病は、急性型および慢性型に分類され得る。この疾病の急性型または劇症型(aGVHD)は、通常、移植後最初の100日以内に観察され、それに伴う疾病率および死亡率のために、移植の大きな課題である。移植片対宿主病の慢性型(cGVHD)は、通常、100日以降に起こる。cGVHDの中等度から重度の症例の発現は、長期生存に悪影響を与える。
【実施例】
【0235】
実施例1:卵白アルブミンペプチド(323〜339)を含むおよび含まないラパマイシンが結合した合成ナノキャリアの免疫応答
材料
卵白アルブミンタンパク質のT細胞エピトープおよびB細胞エピトープであることが知られているアミノ酸17個からなるペプチドである、卵白アルブミンペプチド323〜339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505;品番4065609)から購入した。ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street,Framingham,MA 01702;製品カタログ番号R1017)から購入した。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive,Birmingham,AL 35211;製品コード7525 DLG 7A)から購入した。ポリビニルアルコール(85〜89%加水分解)は、EMD Chemicals(製品番号1.41350.1001)から購入した。
【0236】
溶液1:卵白アルブミンペプチド323〜339を希塩酸水溶液に溶解した溶液(20mg/mL)。この溶液は、卵白アルブミンペプチドを0.13M塩酸溶液に室温で溶解することにより調製した。
【0237】
溶液2:ラパマイシンの塩化メチレン溶液(50mg/mL)。この溶液は、ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。
【0238】
溶液3:PLGAの塩化メチレン溶液(100mg/mL)。この溶液は、PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。
【0239】
溶液4:ポリビニルアルコールを100mMのpH8リン酸緩衝液に溶解した溶液(50mg/mL)。
【0240】
ラパマイシンおよび卵白アルブミン(323〜339)を含有する合成ナノキャリアの製造方法
まず、一次油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.2mL)、および溶液3(1.0mL)を小さい圧力管内で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%の振幅で40秒間音波処理することにより、W1/O1を調製した。次いで、溶液4(3.0mL)を一次W1/O1エマルションと混合し、10秒間ボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%の振幅で60秒間音波処理することにより二次エマルション(W1/O1/W2)を調製した。
【0241】
W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8リン酸緩衝溶液(30mL)の入ったビーカーに添加し、室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させて合成ナノキャリアを形成した。合成ナノキャリア懸濁液を遠心管に移し、21,000×gおよび4℃で1時間遠心分離し、上清を除去して、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁することにより、合成ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁して約10mg/mLの最終合成ナノキャリア分散液を得た。
【0242】
合成ナノキャリア中のペプチドとラパマイシンの量はHPLC分析で測定した。懸濁液1mL当たりの全乾燥合成ナノキャリア質量は、重量法で測定した。
【0243】
ラパマイシンを含有する合成ナノキャリアの製造方法
まず、一次油中水型エマルションを調製した。0.13M塩酸溶液(0.2mL)、溶液2(0.2mL)、および溶液3(1.0mL)を小さい圧力管内で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%の振幅で40秒間音波処理することにより、W1/O1を調製した。次いで、溶液4(3.0mL)を一次W1/O1エマルションと混合し、10秒間ボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%の振幅で60秒間音波処理することにより、二次エマルション(W1/O1/W2)を調製した。
【0244】
W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8リン酸緩衝溶液(30mL)の入ったビーカーに添加し、室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させて合成ナノキャリアを形成した。合成ナノキャリア懸濁液を遠心管に移し、21,000×gおよび4℃で1時間遠心分離し、上清を除去して、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁することにより、合成ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁して約10mg/mLの最終合成ナノキャリア分散液を得た。
【0245】
合成ナノキャリア中のラパマイシンの量は、HPLC分析で測定した。懸濁液1mL当たりの全乾燥合成ナノキャリア質量は、重量法で測定した。
【0246】
ラパマイシン負荷の測定方法
合成ナノキャリア約3mgを回収し、遠心分離して合成ナノキャリアペレットから上清を分離した。アセトニトリルをペレットに添加し、試料を音波処理し、遠心分離して不溶性物質を除去した。上清とペレットをRP−HPLCに注入し、278nmで吸光度を読み取った。ペレット中の実測μgを使用して、封入%(負荷)を算出し、上清およびペレット中のμgを使用して、全回収μgを算出した。
【0247】
卵白アルブミン(323〜339)負荷の測定方法
合成ナノキャリア約3mgを回収し、遠心分離して合成ナノキャリアペレットから上清を分離した。トリフルオロエタノールをペレットに添加し、試料を音波処理してポリマーを溶解し、0.2%トリフルオロ酢酸を添加し、試料を音波処理した後、遠心分離して不溶性物質を除去した。上清とペレットをRP−HPLCに注入し、215nmで吸光度を読み取った。ペレット中の実測μgを使用して、封入%(負荷)を算出し、上清およびペレット中のμgを使用して、全回収μgを算出した。
【0248】
Treg細胞の発生に対する抗原特異的寛容原性樹状細胞(Tdc)の活性
本アッセイは、免疫優性卵白アルブミン(323〜339)に特異的なトランスジェニックT細胞受容体を有するOTIIマウスの使用を含んだ。抗原特異的tDCを作製するために、CD11c+脾細胞を単離し、1μg/mlの卵白アルブミン(323〜339)ペプチドをin vitroで添加したまたは抗原を添加しなかった。次いで、可溶性またはナノキャリア封入ラパマイシンをDCに2時間添加し、次いで、それを十分に洗浄して、培養物から遊離ラパマイシンを除去した。精製されたレスポンダーCD4+CD25−細胞をOTIIマウスから単離し、tDCに10:1のT対DC比で添加した。次いで、tDCとOTII T細胞の混合物を4〜5日間培養し、
図1に示すようにフローサイトメトリーでTreg細胞(CD4+CD25highFoxP3+)の頻度を解析した。領域は、アイソタイプ対照に基づいて選択した。
【0249】
実施例2:イブプロフェンが結合されたメソ多孔質シリカナノ粒子(理論実験例)
メソ多孔質SiO2ナノ粒子コアを、ゾル・ゲル法によって生成する。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(0.5g)を、脱イオン水(500mL)に溶解させ、次に、2MのNaOH水溶液(3.5mL)を、CTAB溶液に加える。溶液を30分間撹拌し、次に、テトラエトキシシラン(TEOS)(2.5mL)を溶液に加える。得られたゲルを、80℃の温度で3時間撹拌する。生じる白色の沈殿物を、ろ過によって捕捉した後、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させる。次に、残っている界面活性剤を、HClのエタノール溶液中で一晩懸濁させることによって粒子から抽出する。粒子を、エタノールで洗浄し、遠心分離し、超音波処理により再分散させる。この洗浄手順を更に2回繰り返す。
【0250】
次に、SiO2ナノ粒子を、(3−アミノプロピル)−トリエトキシシラン(APTMS)を用いてアミノ基で官能化する。これを行うために、粒子をエタノール(30mL)に懸濁させ、APTMS(50μL)を懸濁液に加える。懸濁液を室温で2時間静置し、次に、4時間沸騰させて、エタノールを定期的に加えることによって体積を一定に保つ。残っている反応剤を、遠心分離による洗浄および純粋エタノール中への再分散の5回のサイクルによって除去する。
【0251】
分離反応において、直径1〜4nmの金シードが生成される。この反応に使用される全ての水を、まず脱イオン化し、次に、ガラスから蒸留する。水(45.5mL)を、100mLの丸底フラスコに加える。撹拌しながら、0.2MのNaOH水溶液(1.5mL)を加えた後、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(THPC)の1%の水溶液(1.0mL)を加える。THPC溶液の添加の2分後、少なくとも15分間熟成させたクロロ金酸の10mg/mLの水溶液(2mL)を加える。金シードを水に対する透析によって精製する。
【0252】
コア−シェルナノキャリアを形成するために、上で形成されたアミノ官能化SiO2ナノ粒子を、まず、室温で2時間、金シードと混合する。金で装飾されたSiO2粒子を、遠心分離によって収集し、クロロ金酸および炭酸水素カリウムの水溶液と混合して、金シェルを形成する。次に、粒子を、遠心分離によって洗浄し、水に再分散させる。ナトリウムイブプロフェン(1mg/L)の溶液中で粒子を72時間懸濁させることによって、イブプロフェンを充填する。次に、遊離イブプロフェンを、遠心分離によって粒子から洗浄し、水に再分散させる。
【0253】
実施例3:シクロスポリンAを含有するリポソーム(理論実験例)
リポソームを、薄膜水和(thin film hydration)を用いて形成する。1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)(32μmol)、コレステロール(32μmol)、およびシクロスポリンA(6.4μmol)を、純粋なクロロホルム(3mL)に溶解させる。この脂質溶液を、50mLの丸底フラスコに加え、溶媒を、60℃の温度でロータリーエバポレータにおいて蒸発させる。次に、フラスコを、窒素ガスでフラッシュして、残りの溶媒を除去する。リン酸緩衝生理食塩水(2mL)および5つのガラスビーズをフラスコに加え、60℃で1時間振とうすることによって脂質膜を水和して、懸濁液を形成する。懸濁液を小型の圧力管に移し、各パルス間に30秒の遅延を伴う30秒のパルスの4回のサイクルにわたって、60℃で、超音波で分解する。次に、懸濁液を室温で2時間そのままにしておき、完全に水和させる。リポソームを、遠心分離によって洗浄した後、新鮮なリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させる。
【0254】
実施例4:ポリマー−ラパマイシンコンジュゲートを含有するポリマーナノキャリア(理論実験例)
PLGA−ラパマイシンコンジュゲートの調製:
酸性末端基を有するPLGAポリマー(7525 DLG1A、酸価0.46mmol/g、Lakeshore Biomaterials;5g、2.3mmol、1.0当量)を、30mLのジクロロメタン(DCM)に溶解させる。N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.2当量、2.8mmol、0.57g)を加えた後、ラパマイシン(1.0当量、2.3mmol、2.1g)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.0当量、4.6mmol、0.56g)を加える。混合物を室温で2日間撹拌する。次に、混合物をろ過して、不溶性ジシクロヘキシル尿素を除去する。ろ液を、約10mLの体積に濃縮し、100mLのイソプロピルアルコール(IPA)に加えて、PLGA−ラパマイシンコンジュゲートを析出させる。IPA層を除去し、次に、ポリマーを、50mLのIPAおよび50mLのメチルt−ブチルエーテル(MTBE)で洗浄する。次に、ポリマーを、35Cで2日間、真空下で乾燥させて、白色の固体としてPLGA−ラパマイシン(約6.5g)を得る。
【0255】
PLGA−ラパマイシンコンジュゲートおよびオボアルブミンペプチド(323−339)を含有するナノキャリアの調製:
PLGA−ラパマイシンを含有するナノキャリアを、実施例1に記載される手順に従って、以下のとおりに調製する:
ナノキャリア形成のための溶液を以下のとおりに調製する:
溶液1:希塩酸水溶液中20mg/mLのオボアルブミンペプチド323−339。オボアルブミンペプチドを0.13Mの塩酸溶液に室温で溶解させることによって溶液を調製する。溶液2:塩化メチレン中100mg/mLのPLGA−ラパマイシン。LGA−ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製する。溶液3:塩化メチレン中100mg/mLのPLA−PEG。PLA−PEGを純粋な塩化メチレンに溶解させることによって溶液を調製する。溶液4:100mMのpH8のリン酸緩衝液中50mg/mLのポリビニルアルコール。
【0256】
第1の油中水型エマルジョンをまず調製する。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、および溶液3(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を用いて、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製する。次に、溶液4(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルジョンと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を用いて、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルジョン(W1/O1/W2)を調製する。W1/O1/W2エマルジョンを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させる。ナノキャリア懸濁液を遠心分離管に移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させることによって、ナノキャリアの一部を洗浄する。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終的なナノキャリア分散体のために、ペレットを、リン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させる。
【0257】
実施例5:ラパマイシンを含有する金ナノキャリア(AuNC)の調製(理論実験例)
HS−PEG−ラパマイシンの調製:
乾燥DMF中のPEG酸ジスルフィド(1.0当量)、ラパマイシン(2.0〜2.5当量)、DCC(2.5当量)およびDMAP(3.0当量)の溶液を、室温で一晩撹拌する。不溶性ジシクロヘキシル尿素を、ろ過によって除去し、ろ液をイソプロピルアルコール(IPA)に加えて、PEG−ジスルフィド−ジ−ラパマイシンエステルを析出させ、IPAで洗浄し、乾燥させる。次に、ポリマーを、DMF中のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩で処理して、PEGジスルフィドを還元して、チオールPEGラパマイシンエステル(HS−PEG−ラパマイシン)にする。得られたポリマーを、IPAからの沈殿によって回収し、上述されるように乾燥させ、H NMRおよびGPCによって分析する。
【0258】
金NC(AuNC)の形成:
500mLの1mMのHAuCl4の水溶液を、凝縮器を備えた1Lの丸底フラスコ中で激しく撹拌しながら、10分間加熱還流させる。次に、50mLの40mMのクエン酸三ナトリウムの溶液を、撹拌溶液に素早く加える。得られた濃いワインレッドの溶液を、25〜30分間還流状態に保ち、熱を取り除いて、溶液を室温に冷ます。次に、溶液を、0.8μmの薄膜フィルタを通してろ過して、AuNC溶液を得る。AuNCを、可視分光法および透過電子顕微鏡法を用いて特性評価する。AuNCは、直径が約20nmであり、クエン酸塩でキャッピングされ、520nmでピーク吸収を有する。
【0259】
HS−PEG−ラパマイシンとのAuNCコンジュゲート:
150μlのHS−PEG−ラパマイシン(10mMのpH9.0の炭酸緩衝液中10μΜ)の溶液を、1mLの20nmの直径のクエン酸塩でキャッピングされた金ナノキャリア(1.16nM)に加えて、2500:1のチオール対金のモル比を得る。混合物を、アルゴン下で、室温で1時間撹拌して、金ナノキャリア上でチオールとクエン酸塩との完全な交換を可能にする。次に、表面におけるPEG−ラパマイシンと複合したAuNCを、12,000gで30分間の遠心分離によって精製する。上清をデカントし、次に、AuNC−S−PEG−ラパマイシンを含有するペレットを、1×PBS緩衝液で洗浄する。次に、精製された金−PEG−ラパマイシンナノキャリアを、更なる分析およびバイオアッセイのために、好適な緩衝液に再懸濁させる。
【0260】
実施例6:オボアルブミンを含有するメソ多孔質シリカ−金コア−シェルナノキャリア(理論実験例)
メソ多孔質SiO2ナノ粒子コアを、ゾル・ゲル法によって生成する。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(0.5g)を、脱イオン水(500mL)に溶解させ、次に、2MのNaOH水溶液(3.5mL)を、CTAB溶液に加える。溶液を30分間撹拌し、次に、テトラエトキシシラン(TEOS)(2.5mL)を溶液に加える。得られたゲルを、80℃の温度で3時間撹拌する。生じる白色の沈殿物を、ろ過によって捕捉した後、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させる。次に、残っている界面活性剤を、HClのエタノール溶液中で一晩懸濁させることによって粒子から抽出する。粒子を、エタノールで洗浄し、遠心分離し、超音波処理により再分散させる。この洗浄手順を更に2回繰り返す。
【0261】
次に、SiO2ナノ粒子を、(3−アミノプロピル)−トリエトキシシラン(APTMS)を用いてアミノ基で官能化する。これを行うために、粒子をエタノール(30mL)に懸濁させ、APTMS(50μL)を懸濁液に加える。懸濁液を室温で2時間静置し、次に、4時間沸騰させて、エタノールを定期的に加えることによって体積を一定に保つ。残っている反応剤を、遠心分離による洗浄および純粋エタノール中への再分散の5回のサイクルによって除去する。
【0262】
分離反応において、直径1〜4nmの金シードが生成される。この反応に使用される全ての水を、まず脱イオン化し、次に、ガラスから蒸留する。水(45.5mL)を、100mLの丸底フラスコに加える。撹拌しながら、0.2MのNaOH水溶液(1.5mL)を加えた後、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(THPC)の1%の水溶液(1.0mL)を加える。THPC溶液の添加の2分後、少なくとも15分間熟成させたクロロ金酸の10mg/mLの水溶液(2mL)を加える。金シードを水に対する透析によって精製する。
【0263】
コア−シェルナノキャリアを形成するために、上で形成されたアミノ官能化SiO2ナノ粒子を、まず、室温で2時間、金シードと混合する。金で装飾されたSiO2粒子を、遠心分離によって収集し、クロロ金酸および炭酸水素カリウムの水溶液と混合して、金シェルを形成する。次に、粒子を、遠心分離によって洗浄し、水に再分散させる。チオール化オボアルブミン(オボアルブミンを2−イミノチオラン塩酸塩で処理することによって作製される)を、粒子をチオール化オボアルブミン(1mg/L)の溶液に72時間懸濁させることによって充填する。次に、粒子を、1×PBS(pH7.4)でペレット洗浄して、遊離タンパク質を除去する。次に、オボアルブミンを含有する得られたシリカ−金コア−シェルナノキャリアを、更なる分析およびアッセイのために、1×PBSに再懸濁させる。
【0264】
実施例7:ラパマイシンおよびオボアルブミンを含有するリポソーム(理論実験例)
リポソームを、薄膜水和によって形成する。1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)(32μmol)、コレステロール(32μmol)、およびラパマイシン(6.4μmol)を、純粋なクロロホルム(3mL)に溶解させる。この脂質溶液を、10mLのガラス管に加え、溶媒を窒素ガス流下で除去し、真空下で6時間乾燥させる。過剰量のオボアルブミンを含有する2.0mlの25mMのMOPS緩衝液(pH8.5)による薄膜の水和によって、多重膜ベシクルを得る。脂質薄膜が管表面から剥がれるまで、管をボルテックスする。多重膜ベシクルを単層膜へと分解するために、10回のサイクルの凍結(液体窒素)および解凍(30℃の水浴)を行う。次に、試料を25mMのMOPS緩衝液(pH8.5)中で1mlまで希釈する。200nmの細孔のポリカーボネートフィルタに試料を10回通すことによって、得られたリポソームのサイズを、押出しによって均一にする。次に、得られたリポソームを、更なる分析およびバイオアッセイのために使用する。
【0265】
実施例8:表面共役オボアルブミンで修飾されたポリアミノ酸から構成されたポリマーナノキャリア(理論実験例)
工程1。L−フェニルアラニンエチルエステル(L−PAE)で修飾されたポリ(γ−グルタミン酸)(γ−PGA)の調製:4.7mmol単位のγ−PGA(Mn=300kD)を、0.3NのNaHCO3水溶液(50mL)に溶解させる。L−PAE(4.7mmol)およびEDC.HCl(4.7mmol)を溶液に加え、4Cで30分間撹拌する。次に、溶液を24時間撹拌しながら室温に維持する。低分子量の化学物質を、50kDのMWCOを有する透析膜を用いて透析によって除去する。得られたγ−PGA−グラフト−L−PAEは、凍結乾燥によって得られる。
【0266】
工程2。γ−PGA−グラフト−L−PAEポリマーからのナノ粒子の調製:γ−PGA−グラフト−L−PAEから構成されるナノ粒子を、沈殿および透析方法によって調製する。γ−PGA−グラフト−L−PAE(20mg)を、2mlのDMSOに溶解させた後、2mLの水を加えて、半透明の溶液を形成した。次に、溶液を、セルロース膜管(50,000MWCO)を用いて蒸留水に対して透析して、ナノ粒子を形成し、室温で72時間有機溶媒を除去する。蒸留水を、12時間の間隔で交換する。次に、得られたナノ粒子溶液(水中10mg/mL)を、抗原の共役に使用する。
【0267】
工程3。γ−PGAナノ粒子へのオボアルブミン共役:γ−PGAナノ粒子(10mg/ml)の表面カルボン酸基を、周囲温度で2時間、EDCおよびNHS(リン酸緩衝液中それぞれ10mg/mL、pH5.8)によってまず活性化する。過剰なEDC/NHSを除去するためのペレット洗浄の後、活性化されたナノ粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中の1mLのオボアルブミン(10mg/ml)と混合し、混合物を4〜8Cで24時間インキュベートする。得られたオボアルブミン共役γ−PGAナノ粒子を、PBSで2回洗浄し、更なる分析およびバイオアッセイのために、PBS中5mg/mLで再懸濁させる。
【0268】
実施例9:エリスロポエチン(EPO)封入γ−PGAナノ粒子(理論実験例)
EPO封入γ−PGAナノ粒子を調製するために、0.25〜4mgのEPOを、1mLのPBS(pH7.4)に溶解させ、1mLのγ−PGA−グラフト−L−PAE(DMSO中10mg/mL)をEPO溶液に加える。得られた溶液を、14,000×gで15分間遠心分離し、PBSで繰り返しすすぐ。次に、得られたEPO封入γ−PGAナノ粒子を、更なる分析およびバイオアッセイのためにPBS(5mg/mL)に再懸濁させる。
【0269】
実施例10:オボアルブミンを含有する金ナノキャリア(AuNC)の調製(理論実験例)
工程1。金NC(AuNC)の形成:500mLの1mMのHAuCl4の水溶液を、凝縮器を備えた1Lの丸底フラスコ中で激しく撹拌しながら、10分間加熱還流させる。次に、50mLの40mMのクエン酸三ナトリウムの溶液を、撹拌溶液に素早く加える。得られた濃いワインレッドの溶液を、25〜30分間還流状態に保ち、熱を取り除いて、溶液を室温に冷ます。次に、溶液を、0.8μmの薄膜フィルタを通してろ過して、AuNC溶液を得る。AuNCを、可視分光法および透過電子顕微鏡法を用いて特性評価する。AuNCは、直径が約20nmであり、クエン酸塩でキャッピングされ、520nmでピーク吸収を有する。
【0270】
工程2。AuNCへのオボアルブミンの共役:150μlのチオール化オボアルブミン(10mMのpH9.0の炭酸緩衝液中10μΜ)の溶液を、1mLの20nmの直径のクエン塩でキャッピングされた金ナノキャリア(1.16nM)に加えて、2500:1のチオール対金のモル比を生成する。混合物を、アルゴン下で、室温で1時間撹拌して、金ナノキャリア上でチオールとクエン酸塩との完全な交換を可能にする。次に、表面におけるオボアルブミンとAuNCを、12,000gで30分間にわたる遠心分離によって精製する。上清をデカントし、次に、AuNC−オボアルブミンを含有するペレットを、1×PBS緩衝液でペレット洗浄する。次に、精製された金−オボアルブミンナノキャリアを、更なる分析およびバイオアッセイのために、好適な緩衝液に再懸濁させる。
【0271】
実施例11:In Vivoにおける抗原に対する寛容原性免疫応答の評価(予測的)
Balb/cマウスを不完全フロイントアジュバント中の抗原で免疫化して、制御性B細胞の増殖レベルを評価する。その後、本発明の組成物を用量依存的に皮下投与する。次いで、同じマウスを抗原に再度暴露し、制御性B細胞の増殖レベルを再度評価する。次いで、制御性B細胞の増殖の変化を監視するが、後で抗原で攻撃した時の増加は、寛容原性免疫応答を示す。
【0272】
実施例12:In Vitroにおける制御性B細胞の誘導の評価(予測的)
制御性B細胞または制御性B細胞前駆体を含む細胞集団を、本明細書で提供される組成物とin vitroで接触させる。組成物が細胞集団中の制御性B細胞または制御性B細胞前駆体と相互作用するのに十分な時間経過した後、制御性B細胞数の増加が予想される。細胞集団中の制御性B細胞数の増加に十分な時間は、ある実施形態では、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である。幾つかの実施形態では、制御性B細胞数は、その時間経過した後、例えば、集団中の制御性B細胞の元の総数または相対数と比較して、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約1,000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約100,000倍、または少なくとも約1,000,000倍まで増加する。幾つかの実施形態では、制御性B細胞数は、その時間経過した後、例えば、集団中の全細胞のまたは細胞集団中のリンパ球の約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約75%、約90%、または約95%まで増加する。幾つかの実施形態では、制御性B細胞は、接触前には細胞集団に存在しないが、接触後は存在する。
【0273】
幾つかの実施形態では、集団中の制御性B細胞のベースライン数を定めるために、細胞集団を本明細書で提供される組成物と接触させる前に集団中の制御性B細胞の総数および/または相対数を測定する。幾つかの実施形態では、細胞集団を本明細書で提供される組成物と1回接触させる。幾つかの実施形態では、細胞集団を本明細書で提供される組成物と繰り返し接触させる。
【0274】
接触後にも細胞集団中の制御性B細胞の数および/または存在を測定する。幾つかの実施形態では、例えば、後で複数の制御性B細胞検出アッセイを行うことにより、ある一定時間にわたり制御性B細胞の数および/または存在を監視する。幾つかの実施形態では、細胞集団中の制御性B細胞の数および/または存在は、細胞集団を代表する細胞集団から試料を採取し、その試料中に含有される細胞を、制御性B細胞マーカーを特異的に検出する抗体または染色剤で染色し、試料中の制御性B細胞マーカーを発現する細胞を、例えば、FACSまたは免疫組織化学で検出することにより測定される。幾つかの実施形態では、制御性B細胞を定量する。幾つかの実施形態では、接触後に測定された制御性B細胞の量を接触前の制御性B細胞の量と、例えば、制御性B細胞のベースライン数と比較し、接触後、細胞集団中の制御性B細胞数がベースライン数より多い場合、組成物に対する寛容原性免疫応答が起こったと判定される。
【0275】
実施例13:In Vivoにおける制御性B細胞の誘導の評価(予測的)
制御性B細胞または制御性B細胞前駆体を含む細胞集団を、本明細書で提供される組成物とin vivoで接触させる。幾つかの実施形態では、制御性B細胞または制御性B細胞前駆体を含む細胞集団を有する対象に組成物を投与する。組成物が対象の制御性B細胞または制御性B細胞前駆体と相互作用するのに十分な時間経過した後、制御性B細胞数の増加が予想される。細胞集団中の制御性B細胞数の増加に十分な時間は、ある実施形態では、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、または約4週間である。幾つかの実施形態では、制御性B細胞数の増加をもたらすのに十分な時間は、4週間より長い。幾つかの実施形態では、制御性B細胞数は、その時間経過した後、対象の制御性B細胞の元の総数または相対数と比較して、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約1,000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約100,000倍、または少なくとも約1,000,000倍まで増加する。幾つかの実施形態では、制御性B細胞数は、その時間経過した後、例えば、対象の全細胞のまたは対象のリンパ球集団の約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約75%、約90%、または約95%まで増加する。幾つかの実施形態では、制御性B細胞は、投与前には対象に存在しないが、投与後は存在する。
【0276】
幾つかの実施形態では、対象の制御性B細胞のベースライン数を確定するために、本明細書で提供される組成物を対象に投与する前に対象の制御性B細胞の総数および/または相対数を測定する。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される組成物を対象に1回投与する。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される組成物を対象に複数回、例えば、対象に制御性B細胞の所望の増加または存在量が認められるまで投与する。
【0277】
投与後に対象の制御性B細胞の数および/または存在を測定する。幾つかの実施形態では、例えば、後で複数の制御性B細胞検出アッセイを行うことにより、ある一定時間にわたり制御性B細胞の数および/または存在を監視する。幾つかの実施形態では、対象の制御性B細胞の数および/または存在は、対象から試料を、例えば、対象のリンパ球集団を代表する末梢血試料またはリンパ液試料を採取し、その試料中に含有される細胞を、制御性B細胞マーカーを特異的に検出する抗体または染色剤で染色し、例えば、FACSまたは免疫組織化学で試料中の制御性B細胞マーカーを発現する細胞を検出することにより測定される。幾つかの実施形態では、制御性B細胞を定量する。幾つかの実施形態では、投与後に測定される制御性B細胞の量を投与前の制御性B細胞の量と、例えば、制御性B細胞のベースライン数と比較し、投与後、対象の制御性B細胞数がベースライン数より多い場合、組成物に対する寛容原性免疫応答が起こったと判定される。
【0278】
実施例14:In Vivoにおける移植可能な骨髄細胞に対する所望の免疫応答の誘導の評価(予測的)
対象が骨髄移植を受ける4週間前に、免疫抑制剤と骨髄細胞から得られたまたは誘導された抗原とを含む少なくとも10
6個の合成ナノキャリアの集団を対象に皮下投与する。対象が移植を受けた後、対象における所望の免疫応答の惹起を、移植を受けた後最初の1週間は毎日1回、その後、次の3週間は毎週1回、その後、次の11ヶ月間は毎月1回評価する。評価の一部として、制御性B細胞数を計数し、骨髄移植体または合成ナノキャリアを対象に投与する前に計数した制御性B細胞数と比較する。最初の1年間、維持量の合成ナノキャリアを1ヶ月おきに対象に投与する。対象は、より高レベルまたは所望のレベルの、骨髄移植体に特異的な制御性B細胞を示すことが予想される。
【0279】
実施例15:抗原と免疫抑制剤とを含むナノキャリアの効果の評価
ナノキャリア
卵白アルブミンタンパク質のT細胞エピトープおよびB細胞エピトープであることが知られているアミノ酸17個からなるペプチドである、卵白アルブミンペプチド323〜339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505;品番4065609)から購入した。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive,Birmingham,AL 35211;製品コード7525 DLG 7A)から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとを有するPLA−PEGブロック共重合体は合成した。ポリビニルアルコール(85〜89%加水分解)は、EMD Chemicals(製品番号1.41350.1001)から購入した。
【0280】
溶液は次のように調製した:溶液1:卵白アルブミンペプチド323〜339を希塩酸水溶液に溶解した溶液(20mg/mL)。この溶液は、卵白アルブミンペプチドを0.13M塩酸溶液に室温で溶解することにより調製した。溶液2:PLGAの塩化メチレン溶液(100mg/mL)。この溶液は、PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。溶液3:PLA−PEGの塩化メチレン溶液(100mg/mL)。この溶液は、PLA−PEGを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。溶液4:ポリビニルアルコールを100mMのpH8リン酸緩衝液に溶解した溶液(50mg/mL)。まず、一次油中水型エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、および溶液3(0.25mL)を小さい圧力管内で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%の振幅で40秒間音波処理することにより、W1/O1を調製した。次いで、溶液4(3.0mL)を一次W1/O1エマルションと混合し、10秒間ボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%の振幅で60秒間音波処理することにより、二次エマルション(W1/O1/W2)を調製した。
【0281】
W1/O1/W2エマルジョンを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリア懸濁液を遠心分離管に移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させることによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終的なナノキャリア分散体のために、ペレットを、リン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させた。
【0282】
ナノキャリアのサイズを、動的光散乱によって測定した。ナノキャリア中のペプチドの量を、HPLC分析によって測定した。懸濁液のmL当たりの、乾燥したナノキャリアの総質量を、重量法によって測定した。
【0283】
【表2】
【0284】
オボアルブミンタンパク質のTおよびB細胞エピトープであることが知られている17アミノ酸のペプチドであるオボアルブミンペプチド323−339を、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505;パーツ番号4065609)から購入した。ラパマイシンを、TSZ CHEM(185 Wilson Street,Framingham,MA 01702;製品カタログ番号R1017)から購入した。3:1のラクチド:グリコリド比および0.75dL/gの固有粘度を有するPLGAを、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive,Birmingham,AL 35211;製品コード7525 DLG 7A)から購入した。約5,000DaのPEGブロックと約20,000DaのPLAブロックとのPLA−PEGブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコール(85〜89%加水分解されたもの)を、EMD Chemicals(製品番号1.41350.1001)から購入した。
【0285】
溶液は次のように調製した:溶液1:卵白アルブミンペプチド323〜339を希塩酸水溶液に溶解した溶液(20mg/mL)。この溶液は、卵白アルブミンペプチドを0.13M塩酸溶液に室温で溶解することにより調製した。溶液2:ラパマイシンの塩化メチレン溶液(50mg/mL)。この溶液は、ラパマイシンを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。溶液3:PLGAの塩化メチレン溶液(100mg/mL)。この溶液は、PLGAを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。溶液4:PLA−PEGの塩化メチレン溶液(100mg/mL)。この溶液は、PLA−PEGを純粋な塩化メチレンに溶解することにより調製した。溶液5:ポリビニルアルコールを100mMのpH8リン酸緩衝液に溶解した溶液(50mg/mL)。
【0286】
第1の油中水型エマルジョンをまず調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.2mL)、溶液3(0.75mL)、および溶液4(0.25mL)を、小型の圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を用いて、50%の振幅で40秒間、超音波で分解することによって、W1/O1を調製した。次に、溶液5(3.0mL)を、第1のW1/O1エマルジョンと組み合わせて、10秒間ボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を用いて、30%の振幅で60秒間、超音波で分解することによって、第2のエマルジョン(W1/O1/W2)を調製した。
【0287】
W1/O1/W2エマルジョンを、70mMのpH8のリン酸緩衝液(30mL)を含むビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、塩化メチレンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリア懸濁液を遠心分離管に移し、21,000×gおよび4℃で45分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させることによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終的なナノキャリア分散体のために、ペレットを、リン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させた。
【0288】
ナノキャリアサイズは動的光散乱で測定した。ナノキャリア中のペプチドとラパマイシンの量は、HPLC分析で測定した。懸濁液1mL当たりの全乾燥ナノキャリア質量は、重量法で測定した。
【0289】
【表3】
【0290】
合成ナノキャリア寸法の測定は、動的光散乱(DLS)で得た。合成ナノキャリアの懸濁液を純水で希釈し、最終合成ナノキャリア懸濁液濃度約0.01〜0.1mg/mLを達成した。希釈懸濁液は、DLS分析に好適なキュベット内で直接調製した。次いで、キュベットをBrookhaven Instruments Corp.ZetaPALSに入れ、25℃で平衡化させた後、媒体の粘度および試料の屈折率に適切な入力に基づき安定で再現性のある分布を取得するのに十分な時間走査した。その後、有効径、または分布の平均を報告した。
【0291】
免疫化
ナノキャリアを解凍し、平衡化させた。初期希釈物は10×原液であり、これをさらに希釈してOVA
323〜339中100μg/mlの濃度または1×溶液にした。この1×溶液をi.v.注射1回当たり200μlで注射に使用した。動物をOVAタンパク質(OVA)で免疫化し、OVA
323〜339ペプチドで処置した。免疫経路は次の通りであった:免疫学的にナイーブの雌性Balb/Cマウス各1匹当たり400μl中OVA10μg+アラム4mgを腹腔内投与。実験群はそれぞれ動物5匹からなった。脾臓細胞を、CFSEまたはCTOを使用して抗原で再刺激し、Ag特異的増殖の量を測定した。
【0292】
制御性B細胞の測定
卵白アルブミン反応性IL−10分泌B細胞の頻度をフローサイトメトリーで算出した。実験動物の脾細胞を、長期細胞標識に好適なチオール反応性蛍光プローブであるCFSEで染色し、完全培地中、37℃、5%CO2で、卵白アルブミンタンパク質と共に3日間培養した。3日目に、標準的方法およびキットを使用する細胞内染色で、異なるサイトカインを分泌する細胞の能力を評価した。簡潔に言えば、細胞を酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)およびイオノマイシンで2時間再刺激し、タンパク質輸送をさらに4時間遮断した。抗体の非特異的結合を抗CD16/32抗体で遮断した後、B細胞を特異的に認識する特異的な標識抗体(CD45R(B220)およびCD19)で染色した。パラホルムアルデヒドで固定した後、細胞を透過化処理し、モノクローナル抗体を細胞内に透過させ、細胞内エピトープ(サイトカイン)を標識した。示差CFSE染色を比較することによりB220+CD19+である脾細胞の増殖を評価し、IL−10分泌細胞の割合を求めた。
【0293】
IgE抗体の測定
MDBioproductsにより提供されるMouse OVA−IgE ELISAキット(カタログ番号M036005)を使用し、製造業者の指示に従ってIgE抗体を測定した。
【0294】
結果
図2は、OVA
323〜339と免疫抑制剤とを含む合成ナノキャリアで処置した動物対象からの洗浄液試料中での制御性B細胞の生成におけるナノキャリアの有効性を実証する。図は、本発明の合成ナノキャリアで処置した結果、抗原特異的CD24+B細胞によりIL−10およびTGF−βが産生したことを実証する。
図3は、本発明の合成ナノキャリアでIgEの産生が低下することを示す。
【0295】
実施例16:本発明の合成ナノキャリアを投与した後の対象からの制御性B細胞(Breg)細胞の単離(予測的)
対象に本明細書に記載の合成ナノキャリア組成物を投与した後、対象から得られた生物試料から、例えば、末梢血からBregを単離する。通常、生物試料は、投与されたitDCがBregを誘導するのに十分な時間が経過した後、対象から得られる。Bregは、生物試料から、例えば、白血球から、ネガティブセレクションおよび/またはポジティブセレクションにより単離される。例えば、遠心分離により全血の細胞分画を得、赤血球溶解バッファを使用して赤血球を溶解する。溶解後、末梢血単核球からCD4+細胞およびCD8+T細胞を除去する。その後、本明細書の他の箇所に記載されるまたはさもなければ当該技術分野で公知のマーカーのポジティブセレクションによりBregを高濃度化する。幾つかの実施形態では、制御性B細胞の単離は、これらのマーカーの1種以上を認識するためのビオチン化抗体と抗ビオチン磁気ビーズのカクテルで行われる。