特許第6491885号(P6491885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491885
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】シールリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20190318BHJP
   F16J 15/46 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   F16J15/18 C
   F16J15/46
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-2344(P2015-2344)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-125644(P2016-125644A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】朴 南宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義幸
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/102250(WO,A1)
【文献】 特開2014−202221(JP,A)
【文献】 特開2002−295692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
F16J 15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に垂直な平面について対称に形成された外周面及び側面を具備し、
前記外周面は、
前記平面に沿って設けられた頂部と、
前記頂部から離れるにつれて小径になり、前記中心軸に対して第1の角度を成す第1テーパ面と、
前記第1テーパ面よりも前記側面側に設けられ、前記第1テーパ面から離れるにつれて小径になり、前記中心軸に対して前記第1の角度よりも大きい第2の角度を成す第2テーパ面と、
を有し、
前記中心軸の方向の寸法が前記第1テーパ面より前記第2テーパ面の方が大きい
シールリング。
【請求項2】
中心軸に垂直な平面について対称に形成された外周面及び側面と、前記外周面及び前記側面を接続するR面と、を具備し、
前記外周面は、
前記平面に沿って設けられた頂部と、
前記頂部から離れるにつれて小径になり、前記中心軸に対して第1の角度を成す第1テーパ面と、
前記第1テーパ面よりも前記側面側に設けられ、前記第1テーパ面から離れるにつれて小径になり、前記中心軸に対して前記第1の角度よりも大きい第2の角度を成す第2テーパ面と、
を有する
シールリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシールリングであって、
前記第1の角度は0.1°以上1.0°以下であり、前記第2の角度は1.0°以上5.0°以下である
シールリング。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載のシールリングであって、
前記側面は前記外周面から離れるにつれて前記平面に近接する
シールリング。
【請求項5】
請求項に記載のシールリングであって、
前記側面は、前記平面に対して前記第2の角度よりも大きい第3の角度を成す
シールリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器に利用可能なシールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の自動変速機などの油圧機器では、オイル漏れを防止するためにシールリングが用いられる。シールリングは、例えば、シャフトがハウジングに挿通される構成を有する油圧機器において、シャフトとハウジングとの間を封止する。この場合、シールリングは、ハウジングに挿通される前のシャフトの溝部に装着される。
【0003】
一般的なシールリングは矩形の断面を有する(特許文献1参照)。このようなシールリングでは、油圧が加わると、受圧側面とは反対側の側面がシャフトの溝部に接触するとともに、外周面がハウジングの内周面に接触する。このように、シールリングは、シャフト及びハウジングに接触することにより、シャフトとハウジングとの間を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−255495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シールリングに加わる油圧が高くなると、受圧側面及び内周面に加わる押圧力によって、シールリングがシャフト及びハウジングに対して傾く場合がある。このような場合、シールリングの外周面とハウジングの内周面との接触が不十分となり、シールリングによるシール性が低下してしまう。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、油圧の高さに関わらず優れたシール性が得られるシールリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るシールリングは、中心軸に垂直な平面について対称に形成された外周面及び側面を具備する。
上記外周面は、頂部と、第1テーパ面と、第2テーパ面と、を有する。
上記頂部は、上記平面に沿って設けられている。
上記第1テーパ面は、上記頂部から離れるにつれて小径になり、上記中心軸に対して第1の角度を成す。
上記第2テーパ面は、上記第1テーパ面よりも上記側面側に設けられ、上記第1テーパ面から離れるにつれて小径になり、上記中心軸に対して上記第1の角度よりも大きい第2の角度を成す。
【0008】
この構成のシールリングでは、油圧が低い場合に第1テーパ面がハウジングの内周面に面接触し、油圧が高い場合に第2テーパ面がハウジングの内周面に面接触する。つまり、上記シールリングでは、油圧の高さに関わらずハウジングの内周面に面接触するため、高いシール性が得られる。
【0009】
上記第1の角度は0.1°以上1.0°以下であり、上記第2の角度は1.0°以上5.0°以下であってもよい。
この構成のシールリングでは、第1テーパ面及び第2テーパ面がより的確にハウジングの内周面に面接触するようになるため、特に高いシール性が得られる。
【0010】
上記中心軸の方向の寸法が上記第1テーパ面より上記第2テーパ面の方が大きくてもよい。
この構成のシールリングでは、第2テーパ面の面積が大きく、つまり第2テーパ面とハウジングの内周面との接触面の面積が大きくなるため、油圧が高い場合においてより安定したシール性が得られる。
【0011】
上記シールリングは、上記外周面と上記側面とを接続するR面を更に具備してもよい。
この構成により、上記シールリングがシャフトやハウジングに対してスムーズに摺動可能となる。
【0012】
上記側面は上記外周面から離れるにつれて上記平面に近接してもよい。
上記側面は、上記平面に対して上記第2の角度よりも大きい第3の角度を成していてもよい。
この構成により、上記シールリングの側面が溝部の側面に面接触しにくくなる。このため、上記シールリングでは、シャフトの溝部に対する摺動抵抗が小さくなるため、シャフトの溝部との間におけるフリクションロスが低減される。
【発明の効果】
【0013】
油圧の高さに関わらず優れたシール性が得られるシールリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るシールリングの側面図である。
図2A】上記シールリングの図1のA−A'線に沿った断面図である。
図2B】上記シールリングの図2の一点鎖線で囲んだ領域を拡大して示す部分断面図である。
図3】上記シールリングのシャフト及びハウジングに組み込まれた状態を示す断面図である。
図4A】上記シールリングの低い油圧が加わっている状態を示す断面図である。
図4B】上記シールリングの図4Aの一点鎖線で囲んだ領域を拡大して示す部分断面図である。
図5A】上記シールリングの高い油圧が加わっている状態を示す断面図である。
図5B】上記シールリングの図5Aの一点鎖線で囲んだ領域を拡大して示す部分断面図である。
図6】上記実施形態のデザイン例に係るシールリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
[シールリング1の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るシールリング1の側面図である。本実施形態に係るシールリング1は、油圧式の自動車用自動変速機など、種々の油圧機器に適用可能である。シールリング1は、中心軸Cを中心とする環状に形成され、外周面10と、内周面20と、2つの側面30a,30bと、を有する。
【0017】
シールリング1には、その周方向の一部に合口40が設けられている。シールリング1に力が加わっていないシールリング1の自由状態では合口40がやや開いている。シールリング1の径は、合口40を広げることにより大きくなり、合口40を狭めることにより小さくなる。
【0018】
合口40の形状は、特に限定されず、公知の形状を採用可能である。合口40としては、例えば、直角(ストレート)合口、斜め(アングル)合口、段付き(ステップ)合口、ダブルアングル合口、ダブルカット合口、トリプルステップ合口などを採用可能である。
【0019】
また、合口40は、合口40におけるオイル漏れが抑制されるように、相互に係合可能な構成とされていることが好ましい。この観点から、合口40は、例えば、段付き合口、ダブルアングル合口、ダブルカット合口、トリプルステップ合口などであることが特に好ましい。
【0020】
シールリング1を形成する材料は、駆動環境などにより適宜決定可能である。シールリング1のフリクションロス(摩擦損失)を低減するためには、シールリング1を形成する材料は摺動特性に優れることが好ましい。また、シールリング1を形成する材料は耐熱性に優れることが好ましい。
【0021】
シールリング1に利用可能な樹脂材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが挙げられる。
【0022】
図2Aは、シールリング1の図1のA−A'線に沿った断面図である。図2Bは、シールリング1の図2Aの一点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す部分断面図である。
【0023】
シールリング1は、中心軸Cに垂直な平面である中央面Dについて対称な形状を有する。このため、シールリング1によるシール性は、シールリング1の向きに依存しない。したがって、シールリング1では、その向きを考慮することなく、シャフトSの溝部Gへの装着を行うことが可能となる。
【0024】
シールリング1では、外周面10と2つの側面30a,30bとがそれぞれ第1R面15により接続され、内周面20と2つの側面30a,30bとがそれぞれ第2R面21により接続されている。R面15,21は凸状の曲面として構成される。このように、シールリング1では、4隅がR面15,21とされることにより角部が排除されているため、シャフトSやハウジングHに対してスムーズに摺動可能である。
【0025】
シールリング1の外周面10には、その周方向に沿って、頂部13と、第1テーパ面11と、第2テーパ面12と、が設けられている。
【0026】
頂部13は、中央面Dに沿って設けられ、外周面10において最も大きい径を有する。第1テーパ面11は、頂部13から、中央面Dと側面13a,13bとの中間位置にある各境界部14まで延びている。第2テーパ面12は、各境界部14からR面15まで延びている。頂部13及び境界部14は、各平面が交差する角部として構成されていても、R面などの曲面を含む構成であってもよい。
【0027】
図2Bには、中心軸Cに平行な軸C'が一点鎖線で示されている。第1テーパ面11は中心軸Cに対して第1の角度θを成し、第2テーパ面12は中心軸Cに対して第2の角度θを成す。第2テーパ面12に係る第2の角度θは、第1テーパ面11に係る第1の角度θよりも大きい。つまり、外周面10は、頂部13から側面30a,30bに向けて下向きに傾斜し、境界部14において勾配が急になるように構成されている。
【0028】
第1テーパ面11に係る第1の角度θ、及び第2テーパ面12に係る第2の角度θは、シールリング1に加わる油圧の高さなどによって決定される。例えば、一般的な油圧機器に用いられるシールリング1では、第1の角度θが0.1°以上1.0°以下であることが好ましく、第2の角度θが1.0°以上5.0°以下であることが好ましい。
【0029】
また、第1テーパ面11の中心軸C方向における第1の寸法はLであり、第2テーパ面12の中心軸C方向における第2の寸法はLである。第1テーパ面11に係る第1の寸法L、及び第2テーパ面12に係る第2の寸法Lは、適宜決定可能である。
【0030】
しかし、高い油圧でより安定したシール性を担保するためには、第2テーパ面12に係る第2の寸法Lが、第1テーパ面11に係る第1の寸法Lよりも大きいことが好ましい。具体的に、第2の寸法Lは、第1の寸法Lの1.2倍以上1.5倍以下であることが好ましい。
【0031】
シールリング1の2つの側面30a,30bは、外周面10側から内周面20側に向けて幅が狭まるテーパ状に形成されている。本実施形態では、側面30aがシャフトSの溝部Gの上端部に接触するシール側面30aとして構成され、側面30bが主に油圧を受ける受圧側面30bとして構成される。
【0032】
図2Bには中央面Dに平行な平面D'が一点鎖線で示されている。各側面30a,30bは、中央面Dに対して第3の角度θを成す平面として構成される。各側面30a,30bに係る第3の角度θは、上記の第2テーパ面12に係る第2の角度θよりも大きいことが好ましい。
【0033】
図3は、油圧機器に組み込まれたシールリング1を模式的に示す断面図である。図3に示す構成では、シールリング1が油圧機器のシャフトSの溝部Gに装着され、シャフトSがシールリング1とともにハウジングHに挿通されている。
【0034】
油圧機器に組み込まれたシールリング1の径は、自由状態よりもやや小さくなっている。つまり、シールリング1は、自由状態に戻ろうとする弾性力によって、外周面10によりハウジングHの内周面H1を押圧している。
【0035】
図3は、ハウジングHとシャフトSとの間にオイルが流入しておらず、シールリング1に油圧が加わっていない無油圧時の状態を示している。無油圧時には、シールリング1の外周面10が頂部13においてハウジングHの内周面H1に対して線接触している。
【0036】
図4A及び図4Bは、ハウジングHとシャフトSとの間にオイルが流入し、シールリング1に低い油圧が加わっている低油圧時の状態を示している。低油圧時における油圧は、シールリング1の使用条件などにより設定可能な第1の範囲にあるものとする。
【0037】
ハウジングHとシャフトSとの間にオイルが流入すると、主に、受圧側面30b及び内周面20に油圧が加わる。つまり、受圧側面30bではシール側面30aよりもオイルから加わる押圧力が大きい。このため、油圧を加えられたシールリング1は、その全周にわたって頂部13を中心としてシール側面30a側に傾くように弾性変形する。
【0038】
低油圧時におけるシールリング1は、第1テーパ面11がハウジングHの内周面H1に面接触するまで傾き、第1テーパ面11がハウジングHの内周面H1に面接触する第1安定状態となる。つまり、シールリング1に油圧が加わると、シールリング1によるハウジングHの内周面H1に対する接触態様が、図3に示す線接触から、図4A及び図4Bに示す面接触に変化する。
【0039】
第1安定状態にあるシールリング1では、第1テーパ面11がハウジングHの内周面H1に面接触しており、つまりハウジングHの内周面H1によって第1テーパ面11が押さえ付けられている。したがって、第1安定状態にあるシールリング1は、その形状がハウジングHの内周面H1によって規制されるため、変形しにくい。
【0040】
更に、第1安定状態にあるシールリング1には、弾性変形したシールリング1が元の形状に戻ろうとする弾性力が働いている。この弾性力はオイルによる押圧力とは反対方向に働く。このため、第1安定状態にあるシールリング1は、油圧を受けても、更なる弾性変形を生じにくい。
【0041】
このように、低油圧時におけるシールリング1では、第1テーパ面11がハウジングHの内周面H1に対して面接触する第1安定状態が維持されるため、優れたシール性が得られる。
【0042】
図5A及び図5Bは、図4A及び図4Bに示す状態からハウジングHとシャフトSとの間に更にオイルが流入しようとし、シールリング1に高い油圧が加わっている高油圧時の状態を示している。
【0043】
高油圧時における油圧は、シールリング1の使用条件などにより設定可能な第2の範囲にあるものとする。但し、高油圧時における油圧の第2の範囲は、上記の低油圧時における油圧の第1の範囲よりも高い。
【0044】
シールリング1に加わる油圧が第1の範囲から第2の範囲まで上昇すると、シールリング1は、上記の第1安定状態を保持することができなくなり、その全周にわたって頂部13を中心としてシール側面30a側に更に傾くように弾性変形する。
【0045】
高油圧時におけるシールリング1は、第2テーパ面12がハウジングHの内周面H1に面接触するまで傾き、第2テーパ面12がハウジングHの内周面H1に面接触する第2安定状態となる。つまり、シールリング1に加わる油圧が第1の範囲から第2の範囲に上昇しても、シールリング1によるハウジングHの内周面H1に対する面接触が維持される。
【0046】
なお、本実施形態では、図2Bに示すシール側面30aに係る第3の角度θが第2テーパ面12に係る第2の角度θよりも大きいため、第2安定状態にあるシールリング1では、シール側面30aとシャフトSの溝部Gの側面とが面接触することなく離間している。これにより、シールリング1では、シャフトSの溝部Gに対する摺動抵抗が小さく保たれるため、シャフトSとの間におけるフリクションロスが低減される。
【0047】
第2安定状態にあるシールリング1では、第2テーパ面12がハウジングHの内周面H1に面接触しており、つまりハウジングHの内周面H1によって第2テーパ面12が押さえ付けられている。したがって、第2安定状態にあるシールリング1は、その形状がハウジングHの内周面H1によって規制されるため、変形しにくい。
【0048】
ハウジングHの内周面H1によってシールリング1の形状が規制される作用は、第2テーパ面12の面積が大きく、つまり第2テーパ面12とハウジングHの内周面H1との接触面の面積が大きいほど、効果的に得られる。したがって、図2Bに示す第2テーパ面12に係る第2の寸法Lを第1テーパ面11に係る第1の寸法Lよりも大きくすることにより、シールリング1がより変形しにくくなる。
【0049】
更に、第2安定状態にあるシールリング1では、弾性変形したシールリング1が元の形状に戻ろうとする弾性力が、上記の第1安定状態よりも大きくなる。このため、第2安定状態にあるシールリング1は、高い油圧を受けても、更なる弾性変形を生じにくい。
【0050】
このように、高油圧時におけるシールリング1では、第2テーパ面12がハウジングHの内周面H1に対して面接触する第2安定状態が維持されるため、優れたシール性が得られる。
【0051】
以上述べたとおり、シールリング1は、低油圧時に第1安定状態となり、高油圧時に第2安定状態となることにより、低油圧時にも高油圧時にも優れたシール性を発揮することができる。つまり、シールリング1では、油圧の高さに関わらず優れたシール性が得られる。
【0052】
[シールリング1のデザイン例]
シールリング1では上記実施形態とは異なるデザインを採用することが可能である。
【0053】
図6は、本実施形態に係るシールリング1のデザインの一例を示す断面図である。図6に示すデザイン例に係るシールリング1a,1b,1cは、側面30a,30bの構成のみ、本実施形態に係るシールリング1と異なる。
【0054】
図6(a)に示すシールリング1aでは、側面30a,30bが凸状の曲面として構成されている。この構成では、シール側面30aがシャフトSの溝部Gの側面に対して面接触することを防止することができる。このため、シールリング1aでは、シャフトSとの間におけるフリクションロスを低減することができる。
【0055】
図6(b)に示すシールリング1bでは、側面30a,30bの中央面Dに対する角度が一定ではなく、内周面20側で大きくなっている。この構成では、内周面20側においてシール側面30a側に回り込むオイルの量が多くなるため、シール側面30aにオイルから加わる押圧力が大きくなる。これにより、シール側面30aとシャフトSの溝部Gとの接触圧力が抑制されるため、シールリング1bとシャフトSとの間におけるフリクションロスを低減することができる。
【0056】
図6(c)に示すシールリング1cでは、側面30a,30bの内周面20側に凹状のポケットPa,Pbが設けられている。この構成では、シール側面30a側のポケットPaにオイルが流入することにより、シール側面30aにオイルから加わる押圧力が大きくなる。これにより、シール側面30aとシャフトSの溝部Gとの接触圧力が抑制されるため、シールリング1cとシャフトSとの間におけるフリクションロスを低減することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1…シールリング
10…外周面
11…第1テーパ面
12…第2テーパ面
13…頂部
14…境界部
15…R面
20…内周面
30a,30b…側面
C…中心軸
D…中央面
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6