特許第6491886号(P6491886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491886
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/12 20060101AFI20190318BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20190318BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01F38/12 P
   H01F38/12 G
   H01F38/12 J
   F02P13/00 303B
   F02P15/00 303E
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-3984(P2015-3984)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-131175(P2016-131175A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109093
【氏名又は名称】ダイヤモンド電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山根 伸也
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 修司
(72)【発明者】
【氏名】山村 慎太郎
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−214198(JP,A)
【文献】 特開2001−352012(JP,A)
【文献】 特開2011−171659(JP,A)
【文献】 特開2009−094167(JP,A)
【文献】 特開2010−199108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 13/00
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルアセンブリの出力電圧が印加される高圧端子と、
第1の樹脂材料から成る構造体へ前記高圧端子を収容させた高圧側構造体と、
前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料により前記コイルアセンブリ及び前記高圧側構造体の少なくとも一部周囲をオーバーモールドすることで形成されたコイル側構造体と、
前記高圧側構造体に取付けられ前記高圧端子へ連絡する連通孔が形成されたプラグブーツと、を備え、
前記高圧側構造体と前記コイル側構造体との境界が現れる構造体表面は、前記プラグブーツに接触してシールされることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記境界は、前記コイルアセンブリと前記高圧端子との間で、前記プラグブーツに接触してシールされることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記境界は、プラグホールの内部に収容されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
前記高圧側構造体又は前記コイル側構造体の何れかの構造体と前記プラグブーツとの境界が外部に現れる当接境界部位は、前記プラグホールの外部に配置されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項5】
前記第2の樹脂材料は、ポリアミド製樹脂から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の内燃機関用点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用点火コイルに関し、特に、2種類の樹脂構造によって構造体表面が形成される際に好適のものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等に用いられる内燃機関では、ケースレス化させた点火コイルの外表構造の製法が検討されている(特開2009−182137号公報)。かかる製法では、金型内のキャビティ―へコイルアセンブリ等のパーツを配置させ、オーバーモールド製法によって外表構造を形成させる。このため、コイルアセンブリの周囲に形成される樹脂構造及び高圧端子の周囲に形成される樹脂構造は、一の構造体としてこれらの表面が形成されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−182137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、金型キャビティ―の内部へ部品を装着しなければならず、部品装着時の作業が煩雑化するとのの問題が生じる。従来装着時の作業に着目するならば、外表構造としてコイルケースを設け、これにコイルアセンブリ等を装着する作業の方が容易とされる。
【0005】
このような事情から、コイルアセンブリ等を所定の樹脂構造へ搭載させてから、その全体を金型キャビティ―へ装着し、これをオーバーモールドさせることも考えられる。しかし、この場合、コイルアセンブリを事前に搭載させた樹脂構造とオーバーモールドにより形成された樹脂構造との間に境界部が現れ、此処を介して水又は多湿雰囲気が構造体表面から構造体内部へ浸入する恐れが生じる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、異なる構造体表面の境界が形成される場合であっても、其処でのシール機能を万全とさせ得る内燃機関用点火コイルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では次のような内燃機関用点火コイルの構成とする。即ち、コイルアセンブリの出力電圧が印加される高圧端子と、第1の樹脂材料から成る構造体へ前記高圧端子を収容させた高圧側構造体と、前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料により前記コイルアセンブリ及び前記高圧側構造体の少なくとも一部周囲をオーバーモールドすることで形成されたコイル側構造体と、前記高圧側構造体に取付けられ前記高圧端子へ連絡する連通孔が形成されたプラグブーツとを備え、
前記高圧側構造体と前記コイル側構造体との境界が現れる構造体表面は、前記プラグブーツに接触してシールされることとする。
【0008】
好ましくは、前記境界は、前記コイルアセンブリと前記高圧端子との間で、前記プラグブーツに接触してシールされることとする。
【0009】
好ましくは、前記境界は、プラグホールの内部に収容されることとする。
【0010】
好ましくは、前記高圧側構造体又は前記コイル側構造体の何れかの構造体と前記プラグブーツとの境界が外部に現れる当接境界部位は、前記プラグホールの外部に配置されることとする。
【0011】
好ましくは、前記第2の樹脂材料は、ポリアミド製樹脂から成るものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内燃機関用点火コイルによると、プラグブーツが装着された際、構造体表面の境界を含む領域が当該プラグブーツによってシールされる。このため、当該点火コイルは、境界Yを介して水等が浸入してくることから免れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る内燃機関用点火コイルの内部構成を示す図。
図2】実施の形態に係る内燃機関用点火コイルの外観を示す図。
図3】実施の形態に係る内燃機関用点火コイルの高圧ターミナルを詳説する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施の形態に係る内燃機関用点火コイルの内部構成が示されている。尚、同図では、内燃機関用点火コイル(以下、点火コイルと呼ぶ)の斜視図を(a)に示し、同点火コイルの正面図を(b)に示し、同点火コイルの側面図を(c)に示している。これらについては、以後の説明に応じて適宜参照されたい。
【0015】
図示の如く、点火コイルの内部構造は、コイルアセンブリと高圧側構造体131とから構成される。このうち、高圧側構造体131は、PBT(Polybutylene Terephthalate)又はPPS(Poly Phenylene Sulfide)といった第1の樹脂材料が用いられ、これによって構造体が形成されている。但し、ここに挙げた樹脂は、代表例に過ぎず、これに限られることはない。
【0016】
高圧側構造体131は、コイル搭載部と高圧端子収容部とが一体的に形成されている。このうち、コイル搭載部は、其の表面にコイルアセンブリを搭載させている。高圧端子収容部は、其の内部が筒状体とされ、当該筒状体の内端に高圧端子(図示なし)が設けられている。この高圧端子は、筒状体へ挿入された導体物(スプリング等)を介して、内燃機関の点火プラグへ電気的に接続される。
【0017】
コイルアセンブリは、二次コイル120と一次コイル(図示なし)とが組合わされ、これらのコイルが内部のI字鉄芯(図示なし)に対し同軸的に配置される。そして、これらの部品群の外周には、外周鉄芯132及び133がこれを囲うように配置される。このように、双方コイルの周囲には、自身の内外を囲むような閉字路が形成されることとなる。
【0018】
また、本実施の形態では、コイルアセンブリにイグナイタ137が設けられ、このイグナイタ137を把持するホルダーには、複数の端子が配列されている。これら複数の端子は、其の一つはバッテリー電源に接続され、別の一つは駆動信号が入力され、更に別の一つはGND電位に一致するよう配線される。更に、これらの端子は、イグナイタ137の端子,一次コイルの通電端子等へ適宜に接続される。一方、二次コイルは、一端が高圧端子へ電気的に接続されて、他端がGND側へ電気的に接続されている。
【0019】
かかる構成とされたコイルアセンブリは、点火信号を受けると一次電流の上昇が始まり、同点火信号の遮断に応じて、負の高電圧を発生させる。従って、当該負の高電圧は、高圧端子に印加され、点火プラグのプラグギャップを放電させる。
【0020】
図1にて説明したコイルアセンブリ及び高圧側構造体131は、金型のキャビティ―へ装着させる前段階にアセンブルされた中間アセンブリと呼ばれるものである。この中間アセンブリは、金型のキャビティ―内へセットされた後、第2の樹脂材料がオーバーモールドされることで点火コイルのコイル側構造体140が形成されることとなる。このように、本実施の形態では、金型キャビティ―にコイルアセンブリ部品を直接装着させる煩雑さを回避させる為、事前に中間アセンブリを製作した上でこれを金型キャビティ―へ装着させる手順を踏む。
【0021】
図2に示す如く、コイル側構造体140は、コイルアセンブリの一部周囲を直接的に覆う被覆部141、高圧側構造体の一部を覆う形態とされた外層部142(詳しくは、高圧構造体の皿状体を外部から覆う部位)、ホルダー端子を内部に収容させた殻状部143、その他、金属ブッシュが埋設されたフランジ部144、等が一体的に形成される。また、第2の樹脂材料から成る構造体(コイル側構造体)は、高圧側構造体の一部を包囲するものであるところ、高圧構造体の一部を露出させこれが表面部位(以下、構造体表面と呼ぶ)とされる。
【0022】
この構造体表面とは、プラグブーツ150が取付けられる前の状態において、各構造体に表面が形成される部位を指す。従って、本実施の形態によれば、高圧側構造体もコイル側構造体も、各々が構造体表面を有することとなる。
【0023】
図3(a)に示す如く、高圧側構造体とコイル側構造体とが隣接する構造体表面Xの領域では、其の領域に両構造体が当接する境界Yを形成させることとなる。特に、本実施の形態に係る点火コイル100では、第1の樹脂材料と第2の樹脂材料とが異なる材料とされる。ここでの「異なる」とは、双方の物性の差異又は双方の組成の差異といった物理的・化学的差異が認められ、境界Yにおける樹脂間の剥離を生じさせ得る原因が認められればこれに含まれる。例えば、双方の樹脂を比較した場合、熱膨張率が異なればこれをもって境界Yでの剥離の原因とされ(物性の差異)、組成の差異によって双方の結合力の低下が認められればこれをもって境界Yでの剥離の原因とされる(組成の差異)。
【0024】
具体的には、本実施の形態で用いられる第2の樹脂材料として、ポリアミド製樹脂(PA6等)を用いるが考えられる。かかるポリアミド樹脂(Polyamide resin)は、PBT及びPPS等と比較して鉄芯周囲でのクラック発生が少なく、当該鉄芯周りの緩衝材を省略できる点で有利とされる。その一方、本実施の形態では、高圧側構造体131がPBT等によって組成されるので、この組成の違いにより、境界Yで剥離の危険が高まることとなる。
【0025】
そこで、本実施の形態に係る点火コイルでは、図3(b)に示す如く、高圧側構造体を成す筒状体にプラグブーツ150が装着され、プラグブーツ150の内壁が境界Yの構造体表面に押圧されることで、其の境界Yが全周に亘りプラグブーツの内壁に接触してシールされることとなる。このプラグブーツ150は、高圧端子へ連絡する連通孔151が設けられ、これが装着されると、連通孔151が高圧端子へ連通可能とされる。本実施の形態では、プラグブーツ150の内壁に括れ部が設けられ、此処が境界Yへ当接されてシール機能が万全なものとされる。
【0026】
上述の如く、本実施の形態に係る点火コイル100によると、プラグブーツ150が装着された際、構造体表面の境界Yを含む領域が当該プラグブーツ150によってシールされる。このため、当該点火コイル100は、境界Yを介して水等が浸入してくることから免れる。
【0027】
特に、本実施の形態では、シールされる構造体表面が、コイルアセンブリと高圧端子との間に設けられる。即ち、この形態によると、プラグブーツ150の内壁に境界Yが収容されるので、境界Yをシールさせるに好都合であるからである。また、かかる点火コイル100では、プラグブーツ150の端面から境界Yまでの距離が十分確保され、プラグブーツ150の内壁にシール構造を容易に設けることが可能となる。この意味において、境界Yは、内燃機関のプラグホール内部へ配置されるのが好ましい。
【0028】
また、プラグブーツ150の端面とコイル側構造体の所定面とが当接する境界部位Zは、プラグホールの外部に配置されるのが好ましい。これによれば、先に説明した境界Yと其の上方の境界部位Zの距離が十分確保されるので、先と同様、シール構造を形成する寸法的余裕が与えられる。特に、このような設計を行う場合、当該境界部位Zは、十分高い位置とされることで、水等の浸入危険を低下させる効果も併せて奏し得る。尚、ここでは、境界部位Zについて、プラグブーツ150の端面とコイル側構造体の所定面とが当接する部位としている。しかし、プラグブーツ150の端面と高圧側構造体の所定面とが当接する部位が境界Yの他に形成される構造であれば、これを境界部位Zとしても良い。
【符号の説明】
【0029】
100 内燃機関用点火コイル, 120 二次コイル, 131 高圧側構造体132 第1の外周鉄芯
, 133 第2の外周鉄芯, 137 イグナイタ, 140 コイル側構造体, 141 被覆部, 142 外層部, 143 殻状体, 144 フランジ, 150 プラグブーツ, 151 連通孔, X 構造体表面, Y 境界。
図1
図2
図3