【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1に係る冷媒回収充填用オイルセパレータSは、
図1及び
図2に示すように、容器本体1の底部3にオイルを含有する冷媒ガスを導入する底部導入通路30aを備えている。
また、容器本体1の底部側面には、分離したオイルを排出するためのオイル排出部6を備えている。前記容器本体1の上部となる蓋部2には、オイル分離後の冷媒を導出するための導出通路50を備えている。容器本体1内には、中央筒体10と、該中央筒体の中央部を含んで設けられる第一オイル分離部s1、及び前記中央筒体の上方に設けられる第二オイル分離部s2を備えている。
【0028】
前記容器本体1は、底部3を構成する底部材30と、蓋部2を構成する蓋部材20との間に筒状の容器側壁1aを設けた構成である。容器側壁1aの下端は前記底部材30に形成されシール部材33が内装された容器嵌合溝31に差し込まれている。容器側壁1aの上端は前記蓋部材20に形成されシール部材23が内装された容器嵌合溝21に差し込まれている。
【0029】
前記蓋部材20は、中央に表裏面を貫通する蓋部材中央螺子穴22を有している。蓋部材中央螺子穴22には、オイルを分離した後の冷媒(以下、「処理済み冷媒」)を導出するための冷媒導出部材5を螺合し固着してある。
【0030】
冷媒導出部材5は、冷媒を導出するための開口を有する蓋部取付部材5aと、該蓋部取付部材5aと固着し容器本体1内から冷媒を導入する開口を有する連結部材5bと、当該蓋部取付部材5aの下部及び連結部材5bの上部を被覆して設けられるフィルタ部(第二フェルト12b)とを備える。
【0031】
蓋部取付部材5aは、下端から上端へ貫通する前記導出通路50を備えている。
また、蓋部取付部材5aの下端側には前記連結部材5bと固着するための雌螺子部を備え、上端には外部の配管と連結可能となる雄螺子部を備えている。また長手方向の中央部近傍には蓋部材20に当接可能な鍔部56を備えている。鍔部56に近接する基端側の周面にはシール保持溝51を設け、環状のシール部材52を取着してある。
【0032】
連結部材5bは、先端側に前記蓋部取付部材5aの雌螺子と螺合可能な雄螺子となる上端側連結部55を備え、長手方向中央位置を他の部分よりも大径となる大径部57を備える。
大径部57の下面は、前記中央筒部10の上端に対する保持面とする。また当該大径部57の側周面を後記のフィルタ部(第一フェルト12a)との当接面としている。そして連結部材5bは、処理済み冷媒を導入するための処理済み冷媒導出用通路58を有している。また連結部材5bの下端には、後述する金属製拡散部材11の上端を保持するための保持部54を備えている。
当該処理済み冷媒導出用通路58は、連結部材5bの長手中央の周面四方に形成された各側面穴53から軸中心に向けて連続し、当該連結部材5bの軸中心位置で連結し、当該連結位置から上端の開口へ連続している。
【0033】
底部材30の上面の中央には、表裏面を貫通する底板導入通路30aを備える。当該底板導入通路30aの内周面には、底部材中央螺子穴32を備える。また、当該底部材中央螺子穴32の周囲には排出前の分離したオイルを貯留するオイル貯留部34を備えている。
更にオイル貯留部34から連続して貯留したオイルを外部へ排出するための底部材オイル排出通路30bを備えている。底部材オイル排出通路30bの出口側となる内周面には雌螺子を形成し、オイル排出通路6aを有するオイル排出部6の雄螺子と螺合することで、底部3にオイル排出部6を取付けた構成としている。
【0034】
また、前記底部材中央螺子穴32のうち軸方向中央より下側までの位置には、被処理冷媒を当該オイルセパレータS内に導入するための固定部側導入通路40aを有する固定部材40を、取付板7の貫通穴に通した状態で、当該取付板7の上下から固定ナット41で挟持固定することで、固定部4を構成している。
【0035】
そして、前記連結部材5bと底部材30との間には、前記中央筒部10を設けている。
当該中央筒部10は、その下端側に、前記底部材30の底部材中央螺子穴32における軸方向中央より上側までの位置に対して螺合可能な雄螺子部を備えている。
また、当該中央筒部10の内部のうち軸中央より下端位置までは前記固定部4の固定部側導入通路40aと同一の内径を有する筒部導入通路10aを備えている。
当該中央筒部10の内部のうち軸中央位置から上方へ当該導筒部入通路10aよりも拡径した第一拡散空間10bを形成し、当該箇所に以下に示す第一オイル分離部s1を備えた構成としている。
【0036】
特に
図2に示すように、第一オイル分離部s1は、多孔質焼結金属で形成される金属製拡散部材11と、該金属製拡散部材11の外側に当該中央筒部10の周壁を貫通する吐出部となる複数の傾斜穴10cと、当該中央筒部10の外周側に複数回捲回される帯状の前記第一フェルト12aと、該第一フェルト12aを固定するための固定用線材14と、スペーサ19を備える。
前記中央筒部10の上部内周には雌螺子を形成してある。また中央筒部10の上部外周には、第二オイル分離部s2を構成するための上端側止輪59aを設けてある。
また、第一フェルト12aは不織布によって構成されており、被処理冷媒中のミスト状オイルを含浸吸着するフィルタ部として機能するものである。
金属製拡散部材11は、前記中央筒部内に格納され、当該金属製拡散部材11の内側には第一拡散空間10bが位置し、当該金属製拡散部材11の外面と当該第一拡散空間10bを構成する中央筒部10の内面(即ち、傾斜穴10cの内側開口が形成される面)との間には、筒状の第二拡散空間16が形成される。
【0037】
前記金属製拡散部材11は、金属製粒子の焼結体によって筒体として構成されている。
本実施例における焼結体を構成する金属製粒子は黄銅としている。当該金属製粒子間には不規則に多数の孔が形成されている。当該金属製拡散部材11は前記連結部材5bの保持部54とスペーサ19によって挟持固定される。
【0038】
前記第一フェルト12aと固定用線材14の位置ずれを防止するために、当該第一フェルト12a及び固定用線材14の下端側の下方、上端側の上方の夫々に金属製の止輪15を設けてある。
上端側の止輪15の上方に隣接して鍔部13を設けてある。鍔部13の上部には更に金属製の止輪13aを設けてある。鍔部13はこれらの止輪15、13aによって挟持固定される。
【0039】
吐出部として機能する前記複数の傾斜穴10cは、中央筒部10の周壁の内側に上方となる開口、外側に下方となる開口を形成し、当該周壁を貫通する傾斜した貫通穴として構成している。当該複数の傾斜穴10cと前記筒状の第二拡散空間16とは連続した空間を形成する。
【0040】
第二オイル分離部s2は、上端側止輪59a上に輪状輪郭の載置板59bを載置し、その上に配置した前記第二フェルト12bにより、前記蓋部取付部材5aの下部及び連結部材5bの上部を捲回被覆し、当該第二フェルト12bの外側から固定用線材14を捲回し、連結部材5bの上部に固定してなる。前記第二フェルト12bの上端は、蓋体の下面に当接してある。第二オイル分離部は、第一オイル分離部を通過した後に、未だ除去できていないオイルを含有する被処理冷媒を、第二フェルト12bの外側から内側へ通過させ、当該含有されたオイルを吸着させ、オイル分離後の処理済み冷媒を、前記連結部材5bの処理済み冷媒導出用通路58へ導出するものである。
【0041】
以上の構成により、本実施例1に係るオイルセパレータSは以下に示すように機能する。
先ず、コンプレッサから高温高圧の被処理冷媒が圧送され、固定部4の固定部側導入通路40aを介して本実施例1に係るオイルセパレータSの下部に配置される底部導入通路30aから導入される。
【0042】
導入された被処理冷媒は、上方へ向けて中央筒部10の筒部導入通路10aを通り、第一拡散空間10bへ移動する。第一拡散空間へ導入された被処理冷媒は拡散し、当該被処理冷媒の圧力が下がることで移動速度が減少する。この移動速度の減少に伴って、バブリック現象が阻止される。また、併せて騒音が低減されることとなる。
第一拡散空間10bにおいて被処理冷媒は金属製拡散部材11に接触し、外側へ移動する。
【0043】
圧送された被処理冷媒は金属製拡散部材11との接触によって、当該金属製拡散部材11は加温される。被処理冷媒は連続的に導入されるため、金属製拡散部材11の温度は昇温若しくは保温状態が保たれる。当該昇温若しくは保温の効果により冷媒の凝縮が抑制される。
【0044】
ここで金属製拡散部材11は金属製粒子間には不規則に多数の空隙が形成された多孔性を備えていることから、被処理冷媒は不整流となり、更に拡散される。この際に、金属製拡散部材11の多数の空隙に対して不整流が拡散して通過することで、個々の空隙に対して被処理冷媒が円滑に流れることとなり、全体として、当該被処理冷媒と当該金属製粒子との接触を良好とすることができる。
【0045】
そして当該金属製粒子に対して被処理冷媒中のオイルが吸着することで、フィルタ部への導入前にも被処理冷媒から一部のオイルを分離できる。
【0046】
金属製拡散部材11を通過した被処理冷媒は前記筒状の第二拡散空間16に導入される。
被処理冷媒は当該第二拡散空間16に導入されることによって、被処理冷媒は更に拡散し、当該被処理冷媒の圧力が下がることで、その移動速度が減少する。
【0047】
そして、被処理冷媒は中央筒部10の内面と接触する。当該内面への接触によって付着したオイルは複数の傾斜穴10cへ流出される。これによって、オイルの分離性能を向上させる。このようにして当該空間内へ流出させたオイルは第一フェルト12aに含浸されることとなる。
また、前記第二拡散空間16から連続する前記傾斜穴10cは周壁を貫通する傾斜穴として構成しているので、当該傾斜穴10c内の表面積及び空間を大きくして前記金属製拡散部材11から放出される冷媒との接触面積を増加させるとともに、当該接触によって付着したオイルを下方へ案内する。
【0048】
第一フェルト12aに含浸したオイルによって、その後に圧送される冷媒中のオイル分子は、先に当該第一フェルト12aに捕捉されオイルとともに凝集して容易に液化し、当該中央筒部10を伝ってオイル貯留部34へ流入する。
【0049】
また第一フェルト12aを通過した冷媒には、当該第一フェルト12aでは捕捉できなかったオイルが混在している。第一フェルト12aを通過した冷媒が鍔部13に接触することにより、当該冷媒中に混在するオイルが付着、凝縮し、当該鍔部13の下端から落下し、オイル貯留部34へ流入する。
また、従来のオイルセパレータと同様に、一部のミスト状となったオイルは冷媒ガスとの比重の差によって、オイルセパレータS内の各部に付着したオイルは落下する作用も併せて得られる。
【0050】
前記処理中の冷媒のうち容器側壁1aの内面と当該鍔部13との間隙を通過した冷媒は、第二オイル分離部s2へ導入される。この時点における冷媒には、一旦捕集されたオイルであって被処理冷媒の圧力によって再度処理済み冷媒中に飛散したものが若干ながら含まれている。第二オイル分離部s2は、当該オイル分子を吸着することによって、除去する。
【0051】
当該第二オイル分離部s2の第二フェルト12bにオイル分子が含浸し、更にその後に圧送されるオイル分子は、第一オイル分離部s1と同様に、先に第二フェルト12bに捕捉されオイルとともに容易に凝縮し、当該中央筒部10若しくは鍔部13を伝ってオイル貯留部34へ流入する。
【0052】
冷媒は、第二オイル分離部s2によって更にそのオイル含有率が低下し、導出通路50を介して冷媒導出部材5から導出される。以上の処理によって、本実施例1に係るオイルセパレータSにより被処理冷媒からオイルを分離することができる。
【0053】
以上に示した本発明の実施例1に係るオイルセパレータにおいては、圧縮機から吐出された高温高圧の被処理冷媒を下部の入口から導入することで、当該高温高圧ガスの熱によって、オイルセパレータ内部の底部が一番温度は高くなり、温度は上部へ上がるため、内部温度はムラなく概ね均等に高い状態とすることができる。また、被処理冷媒からの伝熱によって底部の温度を高くすることで、ヒーター等を用いないものとすることができ、稼働コストの低廉化に資することができる。また、ヒーターを用いない状態においても、回収時間を早めることができ、回収効率を高めることができる。
【実施例2】
【0054】
次に本発明の実施例2に係るオイルセパレータSについて説明する。
本実施例2に係るオイルセパレータSは、主として、前記実施例1に係るオイルセパレータSが第一オイル分離部s1、第二オイル分離部s2を備えているのに対して、第一オイル分離部s1を備えるものの第二オイル分離部s2を備えない点において相違する。
【0055】
本実施例2に係るオイルセパレータSは、主として、実施例1に係るオイルセパレータSが底部3側からコンプレッサによって圧送された冷媒を導入する被処理冷媒導入部(実施例1における固定部4)を有するのに対して、蓋部2側からコンプレッサによって圧送された冷媒を導入する被処理冷媒導入部(実施例2における固定部4)を有する点において相違する。
【0056】
このため、本実施例2に係るオイルセパレータSは、前記したように第二オイル分離部s2を備えないものの、蓋部2側からコンプレッサによって圧送された高温高圧の冷媒を導入することで、特に中央筒部の上部側の加温性が良好となる。この結果、当該中央筒部を通過する際のオイルの液化若しくはミスト化が低減され、被処理冷媒の流れの抵抗が小さくなり、オイルの除去効率が良好となる。
尚、金属製拡散部の種類、形状、吐出部の大きさ、傾斜角度、設置数、その他各部の形状等によって、本実施例2に係る第一オイル分離部s1のオイル分離効率を高めることができる。
【0057】
本実施例2に係るオイルセパレータSの容器本体1は、
図1及び
図2に示すように、底部3を構成する底部材30と、蓋部2を構成する蓋部材20との間に筒状の容器側壁1aを設けた構成である。容器側壁1aの下端は前記底部材30に形成されシール部材33が内装された容器嵌合溝31に差し込まれている。容器側壁1aの上端は前記蓋部材20に形成されシール部材23が内装された容器嵌合溝21に差し込まれている。
【0058】
蓋部材20は、上下方向へ貫通する蓋部材中央螺子穴22を中央に有している。蓋部材中央螺子穴22は被処理冷媒を導入する蓋側導入通路20bを構成する。また、蓋部材20の下面から側面に通じる導出通路20cを備えている。当該導出通路20cは、オイル分離後の冷媒を導出するためのものである。導出通路20cには雌螺子穴を設けてあり、冷媒導出部材5を螺合接続した構成としてある。
【0059】
被処理冷媒導入部となる固定部4の固定部側導入通路40aは、外周面に雄螺子を形成してある。被処理冷媒導入部を取付板7の貫通穴に通した状態で、当該取付板7の上下から固定ナット41で挟持固定することで、被処理冷媒導入部を取付板7に固定した構成としている。
固定部4の下端の雄螺子と蓋部材20の前記蓋部材中央螺子穴22を螺合させることで、蓋部材20と固定部4が連結される。
【0060】
また、容器本体1の底部材30の底面には分離したオイルを排出するためのオイル排出部6を備えている。底部材30の上面には分離後のオイルを排出部6のオイル排出通路6aへ導入するための凹部6bを形成してある。
【0061】
底部3側の前記オイル排出部6と蓋部材20における雌螺子穴との間に中央筒部10が配置される。
本実施例2における中央筒部10はその内部上方側に筒部導入通路10aを有している。筒部導入通路10aの下方に連続して拡径した第一拡散空間10bを設けてある。
【0062】
本実施例2における第一オイル分離部s1は、上記実施例1における第一オイル分離部s1と共通する。即ち、第一オイル分離部s1は、焼結黄銅で形成される金属製拡散部材11と、該金属製拡散部材11の外側に当該中央筒部10の周壁を貫通する複数の傾斜穴10cと、当該中央筒部10の外周側に捲回されるフェルト12cと、該フェルト12cを固定するための固定用線材14と、スペーサ19を備える。
フェルト12cはフィルタ部として機能する。また、実施例1と同様に、金属製拡散部材11の外面と中央筒部10の内面との間に筒状の第二拡散空間16を形成している。また、前記フェルト12cと固定用線材14の位置ずれを防止するために、当該フェルト12c及び固定用線材14の下端側の下方、上端側の上方の夫々に金属製の止輪15を設けてある。
【0063】
また本実施例2に係るオイルセパレータSの中央筒部10は、上下二箇所に鍔部13を有する。ここで、上側の鍔部13を上側鍔部13、下側の鍔部13を下側鍔部13とする。
下側鍔部13は中央筒部10の金属製拡散部材11の下端側に配置される。下側鍔部13の内側縁部をその上から前記止輪15、下から鍔部用止輪17によって挟持して固定する。
上側鍔部13は、当該中央筒部10の上端側に配置される。上端側の接続部18と鍔部用止輪17で上側鍔部13の基端を挟持固定する。
【0064】
以上の構成により、本実施例2に係るオイルセパレータSは以下に示すように機能する。
先ず、コンプレッサから高温高圧の被処理冷媒が圧送され、本実施例2に係るオイルセパレータSの固定部4の固定部側導入通路40aから蓋部導入通路20bへ導入される。
【0065】
導入された被処理冷媒は、上方から中央筒部10の筒部導入通路10aを通り、第一拡散空間10bへ移動する。この段階での処理は実施例1と共通する。即ち、第一拡散空間へ導入された被処理冷媒は拡散し、当該被処理冷媒の圧力が下がることで移動速度が減少する。実施例1と同様に、この移動速度の減少に伴って、バブリック現象が阻止され、併せて騒音が低減されることとなる。
【0066】
圧送された被処理冷媒は金属製拡散部材11との接触によって、当該金属製拡散部材11は加温される。被処理冷媒は連続的に導入されるため、金属製拡散部材11の温度は昇温若しくは保温状態が保たれる。当該昇温若しくは保温の効果により冷媒の液化が抑制される。
また、金属製拡散部材11内を被処理冷媒が通過することで、当該被処理冷媒は更に拡散され、その移動速度が減少する。
【0067】
そして、実施例1と同様に、金属製拡散部材11を通過した被処理冷媒は前記筒状の第二拡散空間16に導入され、更に拡散が進行する。筒状の第二拡散空間16を形成したことで、前記金属製拡散部材11から放出される冷媒が中央筒部10の内面と接触し、当該内面への接触によって付着したオイルを下方若しくは複数の傾斜穴10cへ流出させることでオイルを分離することで、当該オイルの分離性能を向上させることができる。
その後、被処理冷媒は中央筒部10の内面と接触する。当該内面への接触によって付着したオイルは複数の傾斜穴10cへ流出される。これによって、オイルの分離性能を向上させる。このようにして当該空間内へ流出させたオイルはフェルト12cに含浸される。
【0068】
圧送された被処理冷媒と金属製拡散部材11との接触によって、当該被処理冷媒中のオイルの一部が、当該金属製拡散部材11の外側から複数の前記傾斜穴10cを通り、フェルト12cに含浸される。
【0069】
また、前記傾斜穴10cは斜め下方へ向けて形成することで、当該傾斜穴10c内の表面積及び空間を大きくして前記金属製拡散部材11から放出される冷媒との接触面積を増加させるとともに、当該接触によって付着したオイルを下方へ案内する機能を有する。
【0070】
フェルト12cに含浸したオイルによって、その後に圧送される冷媒中のオイル分子は、先にフェルト12cに捕捉されオイルとともに凝集して容易に液化し、当該中央筒部10を伝って凹部6bへ流入する。
【0071】
またフェルト12cを通過した冷媒には、当該フェルト12cにより捕捉できなかったオイルが混在している。フェルト12cを通過した冷媒が鍔部13に接触することにより、当該冷媒中に混在するオイルが付着、凝集し、当該鍔部13の下端から落下し、凹部6bへ流入する。
凹部6bに流入し分離されたオイルは、オイル排出通路6aから排出される。
以上の処理によって、本実施例2に係るオイルセパレータSにより、被処理冷媒からオイルを分離することができる。
【0072】
以上に本発明の実施例1、2について夫々示したが、本発明は上記実施例1、2に示した構成に限定されるものではなく、例えば、鍔部13は必須ではなく設けない構成であってもよいし、上記実施例よりも増加させることもできる。
【0073】
また、本実施例1、2においては、いずれも第一拡散空間10b、多孔質焼結金属からなる金属製拡散部材11、第二拡散空間16を備えているが、本発明は少なくとも多孔質焼結金属からなる金属製拡散部を備えていればよく、必ずしも第二拡散空間を有しないものとすることもできる。
一方で、当該金属製拡散部材11に加えて第二拡散空間16を更に備えることによっては、当該金属製拡散部11を通過した被処理冷媒が当該第二拡散空間16に導出されるため、当該被処理冷媒の拡散をより進行させ、被処理冷媒が吐出部へ送られる前に、その移動速度を更に緩和できるため、フェルト12cへの衝突速度を低減させてオイルの再飛散を低減し、併せてオイルの捕獲効果を高め、当該オイルの分離性能を向上させることができる。
【0074】
また実施例1において、第二オイル分離部s2はフィルタ部として第二フェルト12bを備えた構成としているが、本発明は当該構成に限定するものではなく、第二フェルト12bに加え、又は当該第二フェルト12bに代えて、第一オイル分離部s1に用いた金属製拡散部材11等を備えた構成とすることもできる。
また本発明においては、上記した各フェルトに限らず、フィルタ部として種々の公知のフィルタ部材を用いることもできる。
【0075】
また本発明における金属製拡散部材11は、焼結黄銅を用いたものとしているが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、焼結アルミニウム等とすることもできる。高温の被処理冷媒による加温ができる金属製のものであれば、焼結金属に限らず用いることができる。また、金属製拡散部材11は、その焼結金属粒子の大きさ、間隔を自由に設定することができる。更に、金属製拡散部材の厚みを当該オイルセパレータS内で相対的に大きくとることで、金属製粒子の表面積を増加させ、当該被処理冷媒との接触面積を増加させ、オイルの分離効率を高めることができる。
【0076】
尚、上記実施例1に示した構成においては、実施例2に示した被処理冷媒を上方から導入する構成と比較して、下方から被処理冷媒を導入することで、高温高圧の被処理冷媒による伝熱によって温度分布が下方から上方へ移動することによって、当該オイルセパレータSは、全体として均一的な加温効果を得ることができる。
【0077】
また上記実施例1、2はいずれも固定部4を被処理冷媒導入部としているが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、固定部4を冷媒導出側、オイル排出側とすることができる。即ち、当該オイルセパレータSの設置に際して固定する箇所は、被処理冷媒導入部に限るものではなく、本発明は設計事項の範囲で認められる種々の変形例にも及ぶものである。
【0078】
また上記実施例1、2の各部の構成については、上記実施例に開示した構成に限定されるものではなく、本発明は設計事項の範囲で認められる種々の変形例にも及ぶものである。