(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記放電状態判断部(4)は、上記点火回路(3)から上記点火プラグ(2)へ供給される高周波電力の出力電流と出力電圧との位相差に基づいて、上記絶縁状態と上記通電状態とを判別するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用の点火装置(1)。
上記電源制御部(33)は、上記位相差が小さくなるほど上記一次電圧の平均値を小さくするように、上記高周波電源部(31)を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用の点火装置(1)。
上記放電状態判断部(4)は、上記位相差が所定の基準値を超えるとき、上記絶縁状態と判断し、上記位相差が所定の基準値以下のとき、上記通電状態と判断するよう構成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関用の点火装置(1)。
上記電源制御部(33)は、上記放電状態判断部(4)が上記絶縁状態と判断したときよりも、上記通電状態と判断したときの方が、上記一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比が小さくなるよう構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関用の点火装置(1)。
上記放電状態判断部(4)は、上記高周波電源部(31)から上記昇圧回路部(32)へ出力される一次電流の電流RMS値が、所定の基準値よりも大きいとき、上記絶縁状態と判断し、上記電流RMS値が所定の基準値よりも小さいとき、上記通電状態と判断するよう構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関用の点火装置(1)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(
参考形態1)
内燃機関用の点火装置の
参考形態につき、
図1〜
図6を用いて説明する。
本形態の内燃機関用の点火装置1は、
図1に示すごとく、点火プラグ2と、点火回路3と、放電状態判断部4とを有する。
【0013】
点火プラグ2は、中心電極21に高周波電圧を印加することによって中心電極21と接地電極22との間にプラズマ放電を生じるよう構成されている。
点火回路3は、点火プラグ2に高周波電力を供給する。
放電状態判断部4は、高周波電圧が印加された中心電極21と接地電極22との間が、電気的に絶縁された絶縁状態か、放電によって電気的に導通した導通状態かを判断する。
【0014】
点火回路3は、高周波電力を生じる高周波電源部31と、高周波電源部31が出力する高周波の一次電圧を昇圧して二次電圧を点火プラグ2に印加する昇圧回路部32と、高周波電源部31を制御する電源制御部33と、を有する。
【0015】
電源制御部33は、放電状態判断部4が絶縁状態と判断したときと通電状態と判断したときとで、高周波電源部31の制御条件を変更する。
そして、通電状態と判断されたとき、電源制御部33による制御条件を絶縁状態における制御条件と変更しない場合に比べて、高周波電源部31から昇圧回路部32へ出力される一次電圧の平均値が小さくなるように制御条件を設定するよう構成されている。
【0016】
本形態において、
図2(b)、
図3(b)に示すごとく、電源制御部33は、放電状態判断部4が絶縁状態と判断したときよりも、通電状態と判断したときの方が、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比が小さくなるよう構成されている。これにより、通電状態において、高周波電源部31から昇圧回路部32へ出力される一次電圧の平均値を、制御条件を絶縁状態における制御条件と変更しない場合に比べて小さくすることができる。ここで、一次電圧の平均値とは、後述する共通電位12を基準(0V)とした一次電圧の絶対値の時間平均の値を意味する。また、一次電圧の正側のデューティ比とは、高周波の一次電圧の1周期中における正電圧印加時間の割合を意味し、一次電圧の負側のデューティ比とは、高周波の一次電圧の1周期中における負電圧印加時間の割合を意味する。
【0017】
点火プラグ2は、例えば、
図6に示すごとく、中心電極21と、中心電極21の外周側に設けた絶縁碍子23と、該絶縁碍子23の外周側に設けた接地電極22とを有する。そして、中心電極21に高周波高電圧を印加することにより、絶縁碍子23の表面を這うストリーマ放電を発生、進展させ、このストリーマ放電を放電経路として、中心電極21と接地電極22との間の放電部に交流グロー放電又はアーク放電を生ぜしめるよう構成されている。
点火装置1は、例えば、自動車エンジン等の車両用内燃機関に搭載して用いることができる。
【0018】
高周波電源部31は、
図1に示すごとく、駆動電源11より供給される直流電力をスイッチング素子311、312のスイッチングによって交流の高周波電力に変換して、出力するよう構成されている。高周波電源部31においては、駆動電源11が接続された高電位配線313と、接地された低電位配線314との間に、互いに直列接続された2つの抵抗315と、互いに直列接続された2つのコンデンサ316と、互いに直列接続された2つのスイッチング素子311、312とが、接続されている。
2つの抵抗315の間と、2つのコンデンサ316との間とは、共通電位12に接続されている。
【0019】
また、2つのスイッチング素子311、312は、例えばMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の半導体素子からなる。そして、2つのスイッチング素子311、312の間に、高周波電源部31の出力端子317が設けられている。
このような構成によって、高周波電源部31は、高周波電力を正負均等に発振させて、出力端子317から出力することができ、昇圧回路部32における昇圧を効率よく行うことができるようにしている。
なお、抵抗315、コンデンサ316、スイッチング素子311、312は、必ずしも2個ずつである必要はなく、高電位側と低電位側とに対称に配置されていれば、その個数は特に限定されるものではない。
【0020】
昇圧回路部32は、互いに磁気的に結合された一次コイル321と二次コイル322とからなるトランスによって構成されている。点火プラグ2には、例えば、ピーク間電圧30kVpp以上の非常に高い電圧を印加するため、昇圧回路部32の昇圧倍率は、数十倍としている。また、昇圧回路部32の一次コイル321は、一端が高周波電源部31の出力端子317に接続され、他端が共通電位12に接続されている。また、二次コイル322の一端が点火プラグ2の中心電極21に接続され、他端が接地されている。
【0021】
また、電源制御部33は、スイッチング素子311、312をオンオフ制御するスイッチング駆動部331を有する。すなわち、スイッチング駆動部331は、スイッチング素子311、312のゲートに駆動信号を入力するよう構成されている。また、電源制御部33は、駆動信号を生成する信号生成部332と、駆動信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部333とを有する。
パルス幅制御部333は、放電状態判断部4からの信号に基づいて駆動信号のパルス幅を制御する。
【0022】
また、
本形態において、放電状態判断部4は、高周波電源部31から昇圧回路部32へ出力される一次電流の電流RMS値(
図4(c)の実線の曲線Lc参照)が、所定の基準値(同図の横方向の破線L0参照)よりも大きいとき、絶縁状態と判断し、電流RMS値が所定の基準値よりも小さいとき、通電状態と判断するよう構成されている。ここで、電流RMS値とは、1周期分で計算した瞬時の電流実効値である。
【0023】
図1に示すごとく、点火回路3は、高周波電源部31から昇圧回路部32へ出力される一次電流をモニタする一次電流センサ13を有する。放電状態判断部4は、
図4(c)、(d)に示すごとく、一次電流センサ13の出力信号に基づいて得られる一次電流の電流RMS値(曲線Lc)が、所定の基準値(破線L0)よりも大きいとき、絶縁状態と判断し、電流RMS値(曲線Lc)が所定の基準値(破線L0)よりも小さいとき、通電状態と判断するよう構成されている。
【0024】
また、放電状態判断部4は、一次電流センサ13が計測した一次電流の電流RMS値を、これに比例する直流電流値に変換するRMS/DCコンバータ42と、変換された直流電流値を基準の電流値と比較して、放電状態の信号を電源制御部33へ出力する比較出力部41とを有する。ただし、この放電状態判断部4の構成は一例であり、これに限らず種々の態様を採りうる。
なお、一次電流センサ13としては、センシングによる電力損失を防ぐため、例えば、ホールIC式、電流トランス(CT)式、ロゴスキーコイル式等の、磁界応用方式の電流センサを用いることが好ましい。
【0025】
次に、
本形態の点火装置1の動作につき、作用効果とともに説明する。
この説明に先立ち、
図4の説明を行う。
図4は、横軸が時間経過を示す。
図4(a)は、点火信号IGtのオン、オフを示す。
図4(b)は、電源制御部33による高周波電源部31の制御条件を変更しない場合において、点火プラグ2に流れる放電電流の電流値(瞬時値)の時間変化を示す。
図4(c)は、制御条件を変更しない場合における、一次電流の電流RMS値の時間変化を示す。同図の実線Lcが電流RMS値を示し、破線L0が基準値を示す。
【0026】
図4(d)は、放電状態判断部4における判断を示し、Sが絶縁状態(ストリーマ放電の状態)を示し、Gが通電状態(グロー放電等の状態)を示す。
図4(e)は、電源制御部33による高周波電源部31の制御条件を変更した場合において、点火プラグ2に流れる電流の電流値(瞬時値)の時間変化を示す。
図4(f)は、制御条件を変更しない場合における、一次電流の電流RMS値の時間変化を示す。同図の実線Lfが電流RMS値を示し、破線L0が基準値を示す。
【0027】
まず、点火信号IGt(
図4(a)参照)が点火回路3における電源制御部33に送られたとき、電源制御部33がスイッチング素子311、312に駆動信号を出力する。ここで出力される駆動信号は、
図2(a)に示すごとく、高周波のパルス信号であり、ハイサイド側のスイッチング素子311とローサイド側のスイッチング素子312とのそれぞれのゲートに、所定のタイミングで入力される。
【0028】
図2(a)に示すごとく、一対のスイッチング素子311、312には、互いに位相がπ(ラジアン)ずれた状態で、高周波のパルス状の駆動信号が入力される。同図において、実線の矩形波Saが、ハイサイド側のスイッチング素子311へ入力される駆動信号を示し、破線の矩形波Sbが、ローサイド側のスイッチング素子312へ入力される駆動信号を示す。
この駆動信号のスイッチング素子311への入力により、高周波電源部31の出力端子317から昇圧回路部32の一次コイル321へ、
図2(b)に示すごとく、高周波の一次電圧V1が出力される。
【0029】
この高周波電力の一次電圧V1が、昇圧回路部32において昇圧されて、
図2(c)に示すごとく、二次コイル322側において高電圧、高周波の二次電圧V2が生成され、点火プラグ2の中心電極21に印加される。これにより、点火プラグ2の放電ギャップにおいてプラズマ放電が生じる。プラズマ放電は、初期の段階ではストリーマ放電であり、その後グロー放電等に移行する。
【0030】
ストリーマ放電は、接地電極22から絶縁碍子23の表面を這うようにして、中心電極21へ向かって延びるように生じる。ただし、この段階では、接地電極22と中心電極21との間の放電経路はつながっていない。それゆえ、電極間(放電部)における放電電流は、変位電流ということなる。このときの変位電流の電流波形は、
図4(b)におけるBs、もしくは
図4(e)におけるEs、のように、一次的に振幅が大きくなる。そして、中心電極21と接地電極22との間の放電経路がつながると、電極間(放電部)にグロー放電等が形成され、電極間に実電流が流れることとなる。
【0031】
このように、ストリーマ放電の間は、中心電極21と接地電極22との間が絶縁状態となっており、グロー放電等に移行した後は中心電極21と接地電極22との間が導通状態となる。そして、導通状態においては、放電部のインピーダンスが変化(低下)する。これに伴い、高周波電源部31の出力端子317から点火プラグ2までの回路における共振のQ値が変化(低下)し、
図4(c)に示すごとく、一次電流の電流RMS値(Lc)が低下する。
【0032】
そこで、
本形態においては、一次電流センサ13によって、高周波電源部31の出力端子317から昇圧回路部32の一次コイル321へ流れる一次電流をモニタしている。そして、一次電流センサ13によって得られる一次電流の電流RMS値(Lc)が所定の基準値(L0)以下に低下したとき、
図4(d)に示すごとく、放電状態判断部4によって、放電部の放電状態が、絶縁状態(S:ストリーマ放電)から導通状態(G:グロー放電等)に移行したと判断する。
【0033】
そして、このとき、導通状態であることを示す信号が、放電状態判断部4から電源制御部33へ送られ、電源制御部33が、高周波電源部31の制御条件を変更する。
本形態において、制御条件は、高周波電源部31から出力される一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比であり、スイッチング素子311、312を駆動する駆動信号のパルス幅である。
【0034】
すなわち、絶縁状態においては、
図2(a)に示すごとく、駆動信号のパルス幅は大きく、そのデューティ比を例えば約50%とし、通電状態においては、
図3(a)に示すごとく、駆動信号のパルス幅を小さくし、そのデューティ比を例えば30%とする。これにより、絶縁状態から導通状態に移行したとき、一次電圧V1の正側のデューティ比及び負側のデューティ比が低下して、一次電圧V1の平均値を低下させることができる。正側のデューティ比と負側のデューティ比とは、通常は互いに同等である。
【0035】
なお、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比を、上記のように、例えば50%から30%へ低下させたとき、高周波電源部31が昇圧回路部32へ出力しようとする一次電圧の平均値は、約6割に低減される。しかし、実際には、高周波電源部31の出力端子317から点火プラグ2までの回路のインピーダンスが、絶縁状態と通電状態とでは異なるため、一次電圧の振幅も低下することとなり、一次電圧の平均値は6割未満に下がることとなる。
【0036】
いずれにしても、絶縁状態と通電状態とで、高周波電源部31の制御条件を変更しない場合に比べて、通電状態における高周波電源部31の制御条件を変更した場合には、一次電圧の平均値が低減される。これに伴い、
図2(c)、
図3(c)に示すごとく、通電状態においては、制御条件を変更しない場合に比べて、二次電圧V2が低下し、
図4(b)の符号Bg、
図4(e)の符号Egに示すごとく、二次電流が低下する。
図4(e)において、一点鎖線Bt、Bbは、それぞれ制御条件を変更しない場合における二次電流(
図4(b)の符号Bg)の最大瞬時値を示す。
【0037】
その結果、グロー放電等によって放電部に流れる実電流の電流値が抑制される。
なお、制御条件を上記のように変更したとき、一次電流の電流RMS値も、
図4(f)に示すように、制御条件を変更しない場合(
図4(c))とは異なることとなる。
【0038】
なお、
図5に示すごとく、一次電圧のデューティ比(正側のデューティ比及び負側のデューティ比)と二次電流の大きさとの関係は、概略比例関係にある。それゆえ、一次電圧のデューティ比を小さくすることにより、これに比例して、二次電流の大きさを小さくできる。しかし、二次電流の大きさは、グロー放電等を持続させるために必要な電流値I0を下回らないようにする必要がある。したがって、一次電圧のデューティ比(パルス幅)の縮小割合r1は、制御条件を変更しない場合に流れる二次電流の大きさと、グロー放電等を持続するために必要最小限の電流値I0との比率r2を考慮する必要がある。すなわち、その比率r2以上という制約のもと、なるべく上記デューティ比の縮小割合r1を大きくすることが望ましい。
【0039】
上述のように、上記点火装置1においては、通電状態にある中心電極21と接地電極22との間の放電部に流れる実電流の電流値を抑制することができる。その結果、大きな実電流が流れることによる中心電極21及び接地電極22の消耗等を抑制することができ、点火プラグ2の耐久性を向上させることができる。
【0040】
また、
本形態においては、電源制御部33は、絶縁状態よりも通電状態において、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比が小さくなるように構成してある。これにより、容易に一次電圧の平均値を小さくして、放電部に流れる実電流の電流値を抑制すことができ、効果的に、点火プラグ2の耐久性を向上させることができる。
【0041】
また、放電状態判断部4は、一次電流の電流RMS値によって、絶縁状態と通電状態とを判別するよう構成されている。これにより、容易かつ正確に、絶縁状態と通電状態との判別を行うことができ、効果的に点火プラグ2の耐久性を向上させることができる。
【0042】
以上のごとく、
本形態によれば、点火プラグの耐久性を向上させることができる、内燃機関用の点火装置を提供することができる。
【0043】
(
実施形態1)
本実施形態は、
図7に示すごとく、放電状態判断部4はタイマ制御部43を有し、絶縁状態と通電状態との判別を、経過時間を基準にして行うものである。
すなわち、放電状態判断部4は、点火回路3から点火プラグ2への電力供給を開始してから所定時間が経過した時点よりも前を絶縁状態と判断し、当該時点以後を通電状態と判断するよう構成されている。
【0044】
具体的には、放電状態判断部4は、点火信号IGtがオンとなった開始時点t0から所定時間Tが経過する時点t1までの間を、絶縁状態と判断(推定)する。そして、時点t1以降の放電状態を、通電状態と判断(推定)する。ここで、絶縁状態(ストリーマ放電)から通電状態(グロー放電等)に移行するタイミングは、例えば、エンジン回転数や負荷等の諸条件に基づいて推定することが可能であり、これら諸条件に基づき、所定時間Tを設定することができる。それゆえ、例えば、所定時間Tをエンジン回転数や負荷等の諸条件と共にマッピングしておき、これらの諸条件から、所定時間Tが設定されるよう構成しておくことができる。
その他は、
参考形態1と同様である。なお、
本形態以降において用いた符号のうち、
参考形態1における符号と同じ符号は、同一の構成要素等を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
本実施形態においては、点火回路3から点火プラグ2への電力供給を開始してからの経過時間によって、絶縁状態と通電状態との判別を行うため、電流センサ等を配設する必要がなく、簡易な構成にて、点火装置1を構成することができる。
その他、
参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0046】
(
参考形態2)
本形態の点火装置1は、
図8に示すごとく、放電状態判断部4は、点火回路3から点火プラグ2へ供給される高周波電力の出力電流と出力電圧との位相差に基づいて、絶縁状態と通電状態とを判別するよう構成されている。
【0047】
そのために、点火装置1は、点火回路3から点火プラグ2への出力配線において、二次電流センサ14及び二次電圧センサ15を設けてある。なお、二次電圧そのものは、非常に高い電圧であるため、昇圧回路部32の二次コイル322に並列接続した抵抗によって分圧回路部151を構成し、該分圧回路部151に二次電圧センサ15を設けて、二次電圧を間接的に検出している。
【0048】
放電状態判断部4は、上記位相差が所定の基準値を超えるとき、絶縁状態と判断し、上記位相差が所定の基準値以下のとき、通電状態と判断するよう構成されている。
【0049】
すなわち、放電状態判断部4は、出力電流の位相と出力電圧の位相との差を算出する位相差算出部44と、該位相差算出部44によって得られた位相差を基準値と比較する比較出力部45とを有する。そして、比較出力部45において、上記位相差が基準値を超えているか否かにより、絶縁状態か通電状態かを判断して、その判定信号を電源制御部33へ送るよう構成されている。位相差算出部44は、例えば、積算器とLPF(ローパスフィルタ)とによって構成することができる。
【0050】
高周波電圧が印加された中心電極21と接地電極22との間の放電部が絶縁状態にあるときは、放電部に流れる電流は変位電流である。そのため、点火回路3から点火プラグ2へ供給される高周波電力の出力電流と出力電圧とは、互いの位相差が約π/2となる。一方、中心電極21と接地電極22との間の放電部が通電状態となり、放電部の放電(グロー放電等)が実電流となると、上記位相差はほとんどなくなる。このような放電状態と位相差との関係に基づき、上記位相差から、絶縁状態か通電状態かを推定することができる。
【0051】
本形態においては、上記位相差の所定の基準値をπ/4としている。そして、放電状態判断部4は、位相差がπ/4を超えている場合には絶縁状態であると判断し、位相差がπ/4以下の場合には通電状態であると判断するよう構成されている。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0052】
本形態においては、点火回路3から点火プラグ2へ供給される高周波電力の出力電流と出力電圧との位相差に基づいて、絶縁状態と通電状態とを判別するため、放電状態をより正確に判断することができる。
また、放電状態判断部4は、上記位相差がπ/4を超えているか否かによって、絶縁状態であるか、通電状態であるかを判断する。そのため、絶縁状態と通電状態とを、容易に区別することができる。
その他、
参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(
実施形態2)
本実施形態の点火装置1は、
図9に示すごとく、点火回路3から点火プラグ2へ供給される高周波電力の出力電流と出力電圧との位相差の大きさに応じて、一次電圧の平均値を調整するよう構成されている。
すなわち、本実施形態において、電源制御部33は、位相差が小さくなるほど一次電圧の平均値を小さくするように、高周波電源部31を制御する。
【0054】
また、本実施形態においては、
図9に示すごとく、電源制御部33は、位相差が小さくなるほど、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比を小さくするよう構成されている。例えば、位相差がπ/2のとき、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比をそれぞれ50%とし、位相差が0のとき、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比をそれぞれ30%とし、そして、位相差がπ/4のとき、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比をそれぞれ40%とする。このようにして、位相差が小さくなるほど、一次電圧の正側のデューティ比及び負側のデューティ比が徐々に小さくなるように、制御する。
【0055】
これにより、位相差が小さくなるほど、二次電流の大きさが徐々に小さくなる。逆に、位相差が大きくなるほど、二次電流の大きさが徐々に大きくなる。
なお、上記位相差は、上記
参考形態2と同様の手段によって検出することができる。
上述のように、本実施形態においては、同じ絶縁状態の中でも、或いは同じ通電状態の中でも、点火プラグ2へ出力される高周波電力の出力電流と出力電圧との位相差に応じて、一次電圧の平均値(正側のデューティ比及び負側のデューティ比)を変化させる。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0056】
本実施形態においては、グロー放電等を継続しやすい。すなわち、正常なグロー放電等が生じている間は、放電部に実電流が充分に流れ、位相差が0に近い状態が維持されているが、位相差がずれ始めると、実電流が小さくなり、放電が切れやすくなり始める。ここで、上述のように、位相差が大きくなるほど、一次電圧の平均値を大きくする(デューティ比を大きくする)ことにより、二次電流(実電流)を大きくして、グロー放電等を維持しやすくすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0057】
(
参考形態3)
本形態の点火装置1は、
図10、
図11に示すごとく、通電状態と判断されたとき、電源制御部33による制御条件を絶縁状態における制御条件と変更しない場合に比べて、一次電圧の大きさ(ピーク値)が大きくなるよう構成したものである。
【0058】
図10に示すごとく、
本形態の点火装置1における点火回路3は、高周波電源部31にDC−DCコンバータ34を設けている。DC−DCコンバータ34は、駆動電源11の直流電圧を昇圧して、高電位配線313と低電位配線314との間に供給する。そして、DC−DCコンバータ34は、昇圧比を変化させることができるよう構成されており、高電位配線313と低電位配線314との間に供給される直流電圧を変化させることができる。
【0059】
本形態においては、DC−DCコンバータ34は、ブーストアップDC−DCコンバータ34からなり、
図10に示すごとく、コイル341とスイッチング素子342とダイオード343とコンデンサ344とによって構成されている。スイッチング素子342としては、例えばMOSFET、IGBT等の半導体素子を用いることができる。なお、DC−DCコンバータ34は、ブーストアップDC−DCコンバータに限らず、例えば、絶縁型フライバック式など、種々のDC−DCコンバータを用いることができる。
【0060】
電源制御部33は、DC−DCコンバータ34のスイッチング素子342を駆動する駆動信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部334を有する。そして、パルス幅制御部334によって駆動信号のパルス幅(デューティ比)を変化させることにより、コイル341に蓄えるエネルギを調整し、DC−DCコンバータ34からの出力電圧を調整することができる。すなわち、高電位配線313と低電位配線314との間(一対のスイッチング素子311、312の間)に供給される直流電圧を変化させることができる。
【0061】
そして、放電状態判断部4が絶縁状態と判断したときと、通電状態と判断したときとで、パルス幅制御部334によって制御されるDC−DCコンバータ34におけるスイッチング素子342の駆動信号のパルス幅(デューティ比)を変える。具体的には、絶縁状態と判断されたときよりも、通電状態と判断されたときの方が、パルス幅(デューティ比)が小さくなるようにする。これにより、絶縁状態よりも通電状態の方が、DC−DCコンバータ34によって出力される直流電圧が大きくなる。
【0062】
これに伴い、
図11(b)に示すごとく、高周波電源部31から出力される一次電圧V1の大きさ(ピーク値)を、通電状態における制御条件を絶縁状態における制御条件に対して変更しない場合(
図2(b)に比べて、小さくすることができる。なお、
本形態においては、
図11(a)に示すごとく、一対のスイッチング素子311、312のスイッチング制御(駆動信号のデューティ比)は、変化させないが、上記のように、一次電圧V1のピーク値を小さくすることで、一次電圧V1の平均値が小さくなる。その結果、通電状態においては、制御条件を変更しない場合に比べて、
図11(c)に示すごとく二次電圧V2が低下し、二次電流が低下する。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0063】
本形態においても、通電状態にある中心電極21と接地電極22との間の放電部に流れる実電流の電流値を抑制することができる。その結果、大きな実電流が流れることによる中心電極21及び接地電極22の消耗等を抑制することができ、点火プラグ2の耐久性を向上させることができる。
その他、
参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0064】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、
参考形態1と
実施形態1とを組み合わせた思想の実施形態とすることもできる。
【0065】
例えば、
参考形態1の点火装置における放電状態判断部と、
実施形態1の点火装置における放電状態判断部との双方を備えた点火装置とすることができる。この場合、例えば、双方の放電状態判断部の判断が互いに異なる場面が想定されるが、例えば、双方の放電状態判断部のいずれもが、通電状態であると判断したときに、全体として、通電状態と判断して、少なくとも一方の放電状態判断部が絶縁状態であると判断したときに、全体として、絶縁状態と判断するよう構成することが考えられる。
【0066】
同様に、上記複数の実施形態を適宜組み合わせた実施態様を採用することもできる。組み合わせに当たっては、当業者が容易に想到できる範囲で、構成等において必要な変更を加えることができる。