特許第6491910号(P6491910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491910
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】透明導電性シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20190318BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 181/00 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 125/18 20060101ALI20190318BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20190318BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20190318BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20190318BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20190318BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20190318BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   C09D201/00
   C09D183/04
   C09D181/00
   C09D125/18
   C09D7/61
   C09D7/20
   C09D5/24
   B32B7/02 103
   B32B7/02 104
   B32B27/18 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-48751(P2015-48751)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-170914(P2016-170914A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西本 智久
(72)【発明者】
【氏名】野村 涼
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀軽
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−023284(JP,A)
【文献】 特開2000−149661(JP,A)
【文献】 特開2013−191294(JP,A)
【文献】 特開2014−179234(JP,A)
【文献】 特開平10−087994(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/016194(WO,A1)
【文献】 特開2001−270999(JP,A)
【文献】 特開2007−324143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−1/24
5/00−5/16,13/00
C09D 1/00−201/10
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の主面に形成された透明導電性膜とを含む透明導電性シートであって、
前記透明導電性膜は、導電性高分子と、粒子状の無機系バインダとを含み、
前記導電性高分子は、前記無機系バインダの粒子の間に配置され、
前記無機系バインダは、ポリシロキサンを含むことを特徴とする透明導電性シート。
【請求項2】
前記導電性高分子は、ポリチオフェン系化合物とポリスチレンスルホン酸とを含む請求項1に記載の透明導電性シート。
【請求項3】
前記無機系バインダの粒子の長軸径が、10nm以上300nm以下である請求項1又は2に記載の透明導電性シート。
【請求項4】
前記導電性高分子と前記無機系バインダとの体積比が、1:99〜70:30である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性シート。
【請求項5】
前記透明導電性膜は、有機系バインダを更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電性シート。
【請求項6】
前記透明基材は、プラスチック、ゴム、ガラス又はセラミックスからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電性シート。
【請求項7】
前記透明導電性膜の表面抵抗値が、50〜1000Ω/スクエアである請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電性シート。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電性シートの製造方法であって、
導電性高分子と、シラン化合物と、溶媒と、酸触媒とを含む透明導電性膜形成用塗布液を作製する工程と、
前記透明導電性膜形成用塗布液を透明基材の上に塗布して加熱することにより、前記透明基材の上に透明導電性膜を形成する工程とを含み、
前記透明導電性膜形成用塗布液を作製する工程において、前記導電性高分子と前記溶媒とを混合、攪拌しながら、前記シラン化合物と前記酸触媒とをこの順で少量ずつ添加して10分間混合、攪拌し、その後30分〜300分静置することを特徴とする透明導電性シートの製造方法。
【請求項9】
前記溶媒は、プロトン性極性溶媒と、非プロトン性極性溶媒とを含む請求項に記載の透明導電性シートの製造方法。
【請求項10】
前記導電性高分子は、ポリチオフェン系化合物とポリスチレンスルホン酸とを含む請求項又はに記載の透明導電性シートの製造方法。
【請求項11】
前記シラン化合物は、アルコキシシランである請求項10のいずれか1項に記載の透明導電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チオフェン系やアニリン系の高分子は優れた安定性及び導電性を有することから、有機導電性材料としてその活用が期待されている。その活用の一つとして、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の各種デバイスに用いられる透明電極の形成に、上記高分子にドーパントを付加した導電性高分子を溶媒に分散させたコーティング組成物が用いられている。しかし、上記導電性高分子をコーティング組成物として使用し、このコーティング組成物を用いて基材上に導電性膜を形成した場合、導電性膜の硬さや導電性膜の基材への密着性が十分ではない。特に、基材がガラス等の非吸液性材料から形成されている場合、基材の透明性を損なわずに、十分な硬さの導電性膜を形成することは難しい。このような問題に対して、例えば、特許文献1、特許文献2では、透明導電性膜の硬度や透明導電性膜の基材への密着性を向上できるバインダが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−324143号公報
【特許文献2】特開2001−270999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA)や有機ケイ素化合物(アルコキシシラン)等を用いることで、導電性膜の硬度、基材への密着性を改善できることが記載されている。特許文献2では、バインダとしてシランカップリング剤を用いることで、基材への密着性の高い導電性高分子膜を提供できることが記載されている。しかし、得られた導電性膜の電気特性、光学特性、物理特性及び耐湿熱性は十分ではなく、未だ改良の余地がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、電気特性、光学特性、物理特性及び耐湿熱性に優れた透明導電性膜を有する透明導電性シート及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透明導電性シートは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の主面に形成された透明導電性膜とを含む透明導電性シートであって、前記透明導電性膜は、導電性高分子と、粒子状の無機系バインダとを含み、前記導電性高分子は、前記無機系バインダの粒子の間に配置され、前記無機系バインダは、ポリシロキサンを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の透明導電性シートの製造方法は、導電性高分子と、シラン化合物と、溶媒と、酸触媒とを含む透明導電性膜形成用塗布液を作製する工程と、前記透明導電性膜形成用塗布液を透明基材の上に塗布して加熱することにより、前記透明基材の上に透明導電性膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気特性、光学特性、物理特性及び耐湿熱性に優れた透明導電性膜を有する透明導電性シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の透明導電性シートの模式図である。
図2図2は、実施例1の透明導電性シートの断面の電界放射形走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の透明導電性シート)
本発明の透明導電性シートは、透明基材と、上記透明基材の少なくとも一方の主面に形成された透明導電性膜とを備え、上記透明導電性膜は、導電性高分子と、粒子状の無機系バインダとを含み、上記導電性高分子は、上記無機系バインダの粒子の間に配置され、上記無機系バインダは、ポリシロキサンを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の透明導電性シートの透明導電性膜は、導電性高分子が粒子状の無機系バインダの粒子の間に配置されているため、電気特性、光学特性、物理特性及び耐湿熱性に優れている。
【0012】
上記導電性高分子とは、Conductive Polymers(CPs)と呼ばれる高分子であり、ドーパントによるドーピングによって、ポリラジカルカチオニック塩又はポリラジカルアニオニック塩が形成された状態で、それ自体が導電性を発揮し得る高分子をいう。
【0013】
本発明では、上記導電性高分子として、ポリチオフェン系化合物とドーパントとを含むものを用いる。本発明における導電性高分子としては、ポリチオフェン系化合物としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸とを含む混合物(PEDOT/PSSともいう。)を用いることができる。
【0014】
上記無機系バインダとしては、透明性が高く、粒子状の無機系バインダを構成できるポリシロキサンを含むバインダを用いる。上記無機系バインダを粒子状に形成し、上記導電性高分子を上記無機系バインダの粒子の間に配置することにより、本発明の透明導電性シートの透明導電性膜の電気特性を向上できる。
【0015】
ここで上記透明導電性膜の電気特性が向上する理由について図1を用いて説明する。図1は、本発明の透明導電性シートの模式図である。図1において、本発明の透明導電性シート10は、透明基材11と、透明基材11の上に形成された透明導電性膜12とを備えている。また、透明導電膜12は、粒子状の無機系バインダ12aと導電性高分子12bから形成され、導電性高分子12bが粒子状の無機系バインダ12aの粒子の間に配置されている。これにより、粒子状の無機系バインダ12aの粒子の間に配置された導電性高分子12bにより、図1に示すように3次元的な導電パス13を形成することができ、透明導電性シート10の導電性を向上できると考えられる。
【0016】
上記無機系バインダに含まれるポリシロキサンとしては、シラノール基を含むポリシロキサンを用いることができる。上記シラノール基を含むポリシロキサンの具体例としては、コルコート社製の“コルコートPX”、“コルコートN−103X”(商品名)等が挙げられる。
【0017】
また、上記無機系バインダとしては、アルコール溶媒を用いたシリケート加水分解液から形成することもできる。上記シリケート加水分解液の具体例としては、コルコート社製の“HAS−10”、“HAS−6”、“HAS−1”(商品名)等が挙げられる。
【0018】
また、上記無機系バインダの粒子の長軸径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下がより好ましい。上記無機系バインダの粒子の長軸径が上記範囲内にあれば、上記導電性高分子による導電パスを緻密に形成できるからである。
【0019】
本発明において上記無機系バインダの粒子の長軸径は、上記透明導電性膜の断面を走査電子顕微鏡で観察して、少なくとも100個のバインダ粒子の長軸径を求めて、それらの長軸径の算術平均値として求めるものとする。
【0020】
また、上記導電性高分子と上記無機系バインダとの体積比は、1:99〜70:30とすることができる。上記導電性高分子と上記無機系バインダとの体積比が上記範囲内であれば、上記透明導電性膜の電気特性、光学特性、物理特性及び耐湿熱性を向上できる。特に、本発明の透明導電性シートを用いた透明電極の形成において、上記導電性高分子と上記無機系バインダとのより好ましい体積比は、5:95〜35:65である。
【0021】
上記透明導電性膜は、有機系バインダを更に含んでいてもよい。上記透明導電性膜が有機系バインダを含むことにより、上記透明導電性膜と上記透明基材との密着性を向上できる。特に、上記透明基材としてプラスチックフィルム等のフレキシブル基材を用いる場合に、上記透明導電性膜が有機系バインダを含むことは、上記透明導電性膜と上記透明基材との密着性や追従性の観点で好ましい。
【0022】
上記有機系バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、多糖類、その他の光重合性樹脂等が挙げられる。また、上記有機系バインダの使用形態としては、溶媒溶解型又はエマルジョン型が使用できる。
【0023】
上記有機系バインダの含有量が多すぎると上記無機系バインダの効果が減少するため、上記有機系バインダの含有量は、上記無機系バインダと上記有機系バインダの合計体積量に対して、30体積%以下とすることが好ましい。
【0024】
上記透明導電性膜の表面抵抗値は、50Ω/スクエア以上1000Ω/スクエア以下であることが好ましい。表面抵抗値が小さいほど良好な電気特性を示す。
【0025】
上記透明導電性膜の全光線透過率は、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。全光線透過率が高いほど良好な光学特性を示す。上記全光線透過率は、分光光度計、例えば、日本分光社製の“V−570”により測定可能である。
【0026】
上記透明導電性膜の膜厚は、用途に応じて適宜設定されるものであるが、通常、0.01〜10μm程度である。膜厚が薄すぎても厚すぎても、均一な透明導電性膜を形成することが困難となる。上記導電性高分子の割合にもよるが、膜厚が薄いと、表面抵抗値が増加する傾向にあり、膜厚が厚すぎると、全光線透過率が低下する傾向にある。
【0027】
上記透明基材としては、例えば、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミックス等の種々のものが使用できる。
【0028】
(本発明の透明導電性シートの製造方法)
本発明の透明導電性シートの製造方法は、導電性高分子と、シラン化合物と、溶媒と、酸触媒とを含む透明導電性膜形成用塗布液を作製する工程と、上記透明導電性膜形成用塗布液を透明基材の上に塗布して加熱することにより、上記透明基材の上に透明導電性膜を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明の透明導電性シートの製造方法によれば、電気特性、光学特性、物理特性及び耐湿熱性に優れた透明導電性膜を備えた透明導電性シートを製造できる。
【0030】
<透明導電性膜形成用塗布液>
上記導電性高分子としては、前述のポリチオフェン系化合物としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸とを含む混合物(PEDOT/PSS)を用いることができる。
【0031】
上記透明導電性膜形成用塗布液における上記導電性高分子の含有量は、上記透明導電性膜形成用塗布液に含まれる全固形成分の質量に対して0.7質量%以上70.0質量%以下であることが好ましい。上記導電性高分子の含有量が、上記透明導電性膜形成用塗布液に含まれる全固形成分の質量に対して0.7質量%を下回ると透明導電性膜の導電性が低下し、70.0質量%を超えると透明導電性膜の物理特性や耐湿熱性が低下する傾向にある。
【0032】
上記シラン化合物は、アルコキシシランであることが好ましい。また、上記アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びアルコキシオリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能アルコキシシランを含むものであることが好ましい。
【0033】
上記テトラアルコキシシランの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラiso−プロポキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等の炭素数1〜4のアルコキシ基でテトラ置換されたシランが挙げられる。具体例としては、信越化学社製の“KBE−04”(商品名)等が挙げられる。
【0034】
上記トリアルコキシシランの例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリiso−プロポキシシラン、トリL−ブトキシシラン等の炭素数1〜4のアルコキシ基でトリ置換されたシランが挙げられる。
【0035】
上記ジアルコキシシランの例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
上記アルコキシオリゴマーは、有機基とアルコキシシリル基を併せ持つ比較的低分子のレジンである。具体例としては、信越化学社製の“X−40−2308”、“X−40−9225”、“X−40−9226”、“X−40−9238”、“X−40−9247”、“X−40−9250”、“KC−89S”、“KR−401N”、“KR−500”、“KR−510”、“KR−9218”(商品名)、コルコート社製の“エチルシリケート40”、“エチルシリケート48”、“メチルシリケート51”、“メチルシリケート53A”、“EMS−485”、“SS101”(商品名)等が挙げられる。
【0037】
また、上記アルコキシシランとしては、ビニルメトキシシラン、p−スチリルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフロロプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシランモノマーも用いることができる。
【0038】
上記アルコキシシランの具体例のうち、より高い硬度の透明導電性膜を形成するためには、テトラアルコキシランが好ましく、より安定した状態で再現性良く、良質の透明導電性膜を形成するためには、テトラアルコキシシラン及びトリアルコキシシランを併用することが好ましい。
【0039】
上記アルコキシシランとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとを併用する場合は、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとのモル比は9:1〜5:5であることが好ましく、より好ましくは8:2〜6:4である。このモル比関係が好ましい理由は、透明導電性膜の硬度の低下を防止しつつ、経時変化によって透明導電性膜に亀裂が発生する危険性をより一層なくし、且つ透明基材との密着性をより高めることができるからである。上記テトラアルコキシシランは、高い膜硬度の発現に作用し、上記トリアルコキシシランは、透明導電性膜の亀裂発生防止、透明基材との密着性に作用すると考えられる。
【0040】
上記アルコキシシランの含有量は、上記透明導電性膜形成用塗布液に含まれる全固形成分の質量に対して30.0質量%以上99.3質量%以下が好ましく、より好ましくは65.0質量%以上95.0質量%以下である。上記アルコキシシランの含有量が少なすぎると、十分な硬度を有する透明導電性膜が得られにくい傾向にあり、アルコキシシランの含有量が多すぎると、透明導電性膜が白濁化し、光学特性が悪化する傾向にある。
【0041】
上記アルコキシシランは、有機官能基を有するアルコキシシランを含み、その割合は、全アルコキシシラン中、80モル%以下が好ましい。有機官能基を有するアクコキシシランを含むことで、後述する導電パターン形成工程において透明導電性膜のレジスト膜への密着性を良好なものとすることができる。即ち、後述の不活性化剤を用いる工程で、透明導電性膜とレジスト膜との間に不活性化剤が浸入するのを防ぎ、導電パターンを精度よく形成できる。但し、有機官能基を有するアクコキシシランの割合が大きくなりすぎると、透明導電性膜のレジスト膜への密着性が強くなり、その後のレジスト膜を剥離する工程で、レジスト膜の剥離が困難になるため、上記有機官能基を有するアルコキシシランの割合は、全アルコキシシラン中、80モル%以下が好ましい。
【0042】
上記有機官能基としては、有機物や無機物と反応しない安定且つ疏水性のある官能基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、脂肪族系の長鎖アルキル基等が挙げられるが、導電性高分子との相溶性を考慮すると、メチル基及びエチル基がより好ましい。
【0043】
また、上記アルコキシシランは、その全てが有機官能基を有するアルコキシシランとした場合、十分な強度(硬度、耐溶剤性)の透明導電性膜が得られにくい傾向にあるため、有機官能基を有するアルコキシシランと、有機官能基を有さないアルコキシシランとを併用することが好ましい。上記有機官能基を有するアルコキシシランの割合は、全アルコキシシラン中、1モル%以上60モル%以下が、より好ましい。
【0044】
上記溶媒は、プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを含むことが好ましい。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを併用することにより、比較的低い乾燥温度で透明性に優れた透明導電性膜を得ることができる。
【0045】
上記プロトン性極性溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸等が挙げられ、上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0046】
上記非プロトン性極性溶媒の含有量は、上記溶媒の全質量に対して1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。上記非プロトン性極性溶媒の含有量が、上記溶媒の全質量に対して1.0質量%を下回ると透明導電性膜の光学特性が低下し、50.0質量%を超えると透明導電性膜の耐湿熱性が低下する。
【0047】
上記溶媒の含有量は特に限定されないが、上記透明導電性膜形成用塗布液の全質量に対して、50.0質量%以上99.5質量%以下とすればよい。また、上記溶媒には、無極性溶媒を含んでいてもよい。
【0048】
上記酸触媒としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。また、水溶液中で酸性である導電性高分子も酸触媒として機能する。
【0049】
上記透明導電性膜形成用塗布液は、上記導電性高分子、上記シラン化合物、上記溶媒及び上記酸触媒を公知の手法により適宜混合することにより製造できる。例えば、上記各成分を、ボールミル、サンドミル、ピコミル、ペイントコンディショナー等のメディアを介在させた機械的処理により、又は超音波分散機、ホモジナイザー、ディスパー、ジェットミル等のメディアレス処理により、混合、分散することができる。
【0050】
また、上記各成分の添加順序も特に限定されず、例えば、導電性高分子と溶媒とからなる溶液に、シラン化合物と酸触媒とを加えてもよいし、導電性高分子と溶媒からなる溶液と、シラン化合物と酸触媒と溶媒とからなる溶液とを、別々に作製した後に、各溶液を混合してもよい。
【0051】
<透明導電性膜の形成>
上記透明導電性膜形成用塗布液を透明基材の上に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、リバース法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、ディッピング法、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法等の公知の塗布方法を用いることができる。
【0052】
上記塗布後の加熱は、上記透明導電性膜形成用塗布液の溶媒成分が蒸発する条件であればよく、100〜150℃で5〜60分間行うことが好ましい。溶媒が透明導電性膜に残っていると強度が劣る傾向にある。加熱方法としては、例えば、熱風乾燥法、加熱乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥等により行うことができる。また、必要に応じて、塗膜にUV光やEB光を照射して塗膜を硬化させたりして、透明導電性膜を形成してもよい。
【0053】
次に、上記加熱により、上記アルコキシシラン(シラン化合物)は、脱水縮合反応によりポリシロキサンを含む粒子状の無機系バインダとなり、上記無機系バインダの粒子の間に上記導電性高分子が配置され、透明導電性膜の中に3次元的な導電パスが形成される。この3次元的な導電パスにより透明導電性膜の導電性(電気特性)が向上する。また、上記無機系バインダは、大きな硬度を有するため、透明導電性膜の硬度(物理特性)が向上する。
【0054】
上記透明導電性膜形成用塗布液に、アルコキシシランと酸触媒とを含めることにより、アルコキシシランはそのアルコキシ基が酸性水中で加水分解してシラノール化反応が起こり、その後の脱水縮合反応により3次元構造を有する粒子状のポリシロキサンを含む無機系バインダを確実に形成できる。
【0055】
即ち、上記透明導電性膜形成用塗布液を作製する過程でシラノール化反応の時間制御を行うことにより、無機系バインダの粒子の長軸径を10nm以上300nm以下に調整することができる。上記調整方法の例を挙げると、最初に導電性高分子と溶媒とをディスパーで混合、攪拌しながら、アルコキシシラン(シラン化合物)、酸触媒の順で少量ずつ添加し、10分ほど混合、攪拌する。その後、30分から300分ほど静置することにより、アルコキシシランのシラノール化を促進させることができ、長軸径が10nm以上300nm以下の無機系バインダ粒子を形成することができる。上記シラノール化反応の時間制御工程は、従来にはない新規な工程である。
【0056】
<導電パターンの形成工程>
本発明の透明導電性シートの製造方法は、上記透明導電性膜上の導電パターンを形成する位置にレジスト膜を形成する工程と、導電性を失活させる不活性剤を用いて、上記レジスト膜をマスクとして、上記透明導電性膜の露出部の導電性を失活させる工程とを更に備えることができる。これにより、簡単且つ安価に高精度の導電パターンを透明基材の上に形成できる。
【0057】
上記レジスト膜は、例えば、レジスト剤を上記透明導電性膜上にスクリーン印刷することにより形成できる。上記レジスト剤は特に限定されず、適宜選択できる。
【0058】
上記不活性剤としては、上記導電性高分子を失活できるものであればよく、例えば、酸化性化合物、塩基性化合物が挙げられる。
【0059】
上記酸化性化合物としては、例えば、過酸化水素系化合物、過塩素酸系化合物、次亜塩素酸系化合物、過酢酸系化合物、メタクロロ安息香酸系化合物、亜硫酸系化合物等が挙げられる。
【0060】
また、上記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−メチルピリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に述べる。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0062】
(実施例1)
<透明導電性膜形成用塗布液の調製>
先ず、以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用塗布液を調製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):15.58部
(2)シラン化合物:アルコキシシラン(信越化学工業社製、商品名“X−40−2308”):1.45部
(3)酸触媒(リン酸):0.06部
(4)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):12.50部
(5)プロトン性極性溶媒(エチルアルコール):70.41部
【0063】
<透明導電性シートの形成>
次に、厚さ0.7mmの10cm角の無アルカリガラス(全光線透過率:91.2%)を基板として用い、基板の一方の主面の全面に上記透明導電性膜形成用塗布液をスピンコーティング法により塗布し、その後120℃で1時間加熱した。これにより、一方の主面に透明導電膜性膜が形成された実施例1の透明導電性シートを作製した。上記透明導電性膜の膜厚は、290nmであった。
【0064】
<透明導電性膜の断面構造の観察>
作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を次にようにして行った。先ず、作製した透明導電性シートの透明導電性膜の上にエポキシ樹脂を塗布して包埋して、そのエポキシ樹脂面を機械研磨法にて整面した。その後、日本電子社製の断面試料作製装置“SM−09010”(商品名)を用いてイオンポリッシングにより断面を作製し、フラットミリング処理して断面観察用試料を得た。その断面観察用試料を日立製作所製の電界放射形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、加速電圧:2.0kV、倍率:100000倍で観察して、二次・反射電子混成像を得た。その観察像を図2に示す。
【0065】
図2から、透明導電性シート20において、ガラス基板21の上には、透明導電性膜22が形成され、透明導電性膜22の上には、エポキシ樹脂層23が形成されていることが分かる。また、透明導電性膜22は、粒子状のバインダ粒子22aと、バインダ粒子22aの間に配置された導電性高分子(PEDOT−PSS)22bから形成されていることが確認できる。また、図2から、前述の方法で算出したバインダ粒子22aの長軸径は、150nmであった。
【0066】
(実施例2)
以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用塗布液を調製し、その透明導電性膜形成用塗布液を用い、透明導電性膜の膜厚を180nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の透明導電性シートを作製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):46.67部
(2)シラン化合物:メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名“KBM−13”):0.18部
(3)シラン化合物:テトラエトキシシラン(コルコート社製、商品名“エチルシリケート18”):1.06部
(4)酸触媒(0.35%塩酸):0.59部
(5)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):4.20部
(6)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):26.13部
(7)プロトン性極性溶媒(水):21.17部
【0067】
また、作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、図2と同様の観察像を得て、その観察像から前述の方法で算出したバインダ粒子の長軸径は、100nmであった。
【0068】
(実施例3)
以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用塗布液を調製し、その透明導電性膜形成用塗布液を用い、透明導電性膜の膜厚を180nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の透明導電性シートを作製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):46.47部
(2)シラン化合物:メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名“KBM−13”):0.18部
(3)シラン化合物:テトラエトキシシラン(コルコート社製、商品名“エチルシリケート18”):1.00部
(4)有機系バインダ(ポリエチレングリコール、分子量:500万):0.06部
(5)酸触媒(0.35%塩酸):0.59部
(6)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):4.20部
(7)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):26.13部
(8)プロトン性極性溶媒(水):21.17部
【0069】
また、作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、図2と同様の観察像を得て、その観察像から前述の方法で算出したバインダ粒子の長軸径は、90nmであった。
【0070】
(比較例1)
以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用塗布液を調製し、その透明導電性膜形成用塗布液を用い、透明導電性膜の膜厚を389nmとした以外は、実施例1と同様にして比較例1の透明導電性シートを作製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):15.58部
(2)有機系バインダ(ポリエチレングリコール):0.44部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):12.50部
(4)プロトン性極性溶媒(エチルアルコール):71.48部
【0071】
また、作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、透明導電性膜の断面構造は均一な単層構造であることを確認し、粒子状のバインダ粒子は確認できなかった。
【0072】
(比較例2)
以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用塗布液を調製し、その透明導電性膜形成用塗布液を用い、透明導電性膜の膜厚を389nmとした以外は、実施例1と同様にして比較例2の透明導電性シートを作製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):15.58部
(2)コロイダルシリカ(日産化学工業社製、商品名“スノーテックO"、粒子径:15nm、固形分濃度:20質量%、溶媒:水):2.20部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):12.50部
(4)プロトン性極性溶媒(エチルアルコール):69.72部
【0073】
また、作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、透明導電性膜の断面構造は、コロイダルシリカ由来の粒子径15nmのシリカ粒子と導電性高分子とが混ざり合った均一な単層構造であることを確認した。
【0074】
次に、上記で得られた透明導電性シートについて、下記に示す各評価を行った。
【0075】
<電気特性>
透明導電性シートの電気特性は、下記のように透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を測定することで評価した。
【0076】
透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Loresta−GP”(MCP−T610型)とLSPプローブを用いて測定した。
【0077】
上記測定の結果、表面抵抗値が500Ω/スクエア以下の場合、電気特性は良好と判断し、表面抵抗値が500Ω/スクエアより大きい場合、電気特性は不良と判断した。
【0078】
<光学特性>
透明導電性シートの光学特性は、下記のように透明導電性シートの全光線透過率を測定することで評価した。
【0079】
透明導電性シートの全光線透過率は、日本電色工業社製のヘイズメータ"NDH2000"を用いて測定した。
【0080】
上記測定の結果、全光線透過率が90%以上の場合、光学特性は良好と判断し、全光線透過率が90%を下回った場合、光学特性は不良と判断した。
【0081】
<物理特性>
透明導電性シートの物理特性は、下記のように透明導電性シートの透明導電性膜の鉛筆硬度を測定することで評価した。
【0082】
透明導電性シートの透明導電性膜の鉛筆硬度は、日本工業規格(JIS)K5400に規定された鉛筆硬度の測定方法に基づき、新東科学社製の表面性試験機“HEIDON−14DR”を用いて測定した。
【0083】
<耐湿熱性>
透明導電性シートの耐湿熱性は、下記のように透明導電性シートの保存試験を行うことで評価した。
【0084】
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜の初期の表面抵抗値を前述の電気特性の評価と同様にして測定した。次に、透明導電性シートを恒温恒湿槽に入れて65℃、相対湿度90%で500時間保存した。続いて、保存後の透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を上記と同様にして測定した。最後に、下記式(1)により表面抵抗値の変化度を算出した。
表面抵抗値の変化度=保存後の表面抵抗値/初期の表面抵抗値 (1)
【0085】
上記測定の結果、表面抵抗値の変化度が1.2以下の場合、耐湿熱性は良好と判断し、表面抵抗値の変化度が1.2を上回った場合、耐湿熱性は不良と判断した。
【0086】
上記評価の結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から、本発明の実施例1〜3の透明導電性シートは、電気特性、光学特性及び耐湿熱性の全てで良好との評価を得ることができ、更に物理特性である鉛筆硬度も全てB以上を得たことが分かる。
【0089】
一方、比較例1〜2では光学特性及び耐湿熱性が劣り、鉛筆硬度も2B以下となり物理特性も劣ることが分かる。
【0090】
続いて、上記で得られた透明導電性シートについて、下記とおりパターニング適性の評価を行った。
【0091】
<レジスト膜の形成>
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜側の主面の中央部に5cm角の面積にスクリーン印刷法によりレジスト剤(ヘレウス社製、商品名“Clvious SET S”)を印刷し、その後100℃で5分間加熱した。これにより、透明導電性膜上にレジスト膜を形成した。
【0092】
<導電性の低下>
次に、透明導電性膜上にレジスト膜が形成された透明導電性シートを、塩素系不活性剤(ヘレウス社製、商品名“Clvious Etch”)を10%水溶液に調製した溶液に20分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、100℃で5分間加熱した。これにより、透明導電性膜の露出部の導電性を低下させた。
【0093】
<レジスト膜の剥離>
次に、上記透明導電性シートをトルエンに3分間浸漬し、レジスト膜を剥離した後、蒸留水で洗浄し、100℃で5分間乾燥した。
【0094】
次に、得られた透明導電性シートの電気特性を評価した。評価方法については以下に説明する。
【0095】
<電気特性>
先ず、透明導電性シートの導電パターン形成面において、導電パターンが形成されている導電部の表面抵抗値を、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定計“Loresta−GP”(MCP−T610型)とLSPプローブを用いて測定した。また、透明導電性シートの導電パターン形成面において、導電パターンが形成されていない非導電部の表面抵抗値を、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定計“Hiresta−UP”(MCP−HT450型)とURSプローブを用いて測定した。ここでは、導電部と非導電部の表面抵抗値の差が、1×106Ω/スクエア以上である場合は、良好な電気的コントラストが得られていると評価する。
【0096】
その結果、実施例1〜3の透明導電性シートでは、良好な電気的コントラストが得られていたことが分かった。中でも、実施例2〜3では特に良好な電気的コントラストが得られており、導電部と非導電部の表面抵抗値の差は1×108Ω/スクエア以上であった。一方、比較例1〜2の透明導電性シートでは、良好な電気的コントラストが得られていないことが分かった。
【符号の説明】
【0097】
10、20 透明導電性シート
11 透明基材
21 ガラス基板
12、22 透明導電性膜
12a、22a バインダ粒子
12b、22b 導電性高分子
23 エポキシ樹脂層
図1
図2