(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(A)が、雲母、バーミキュライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、及びスティブンサイトから選ばれる層状珪酸塩化合物である、請求項1又は2に記載の粘土スラリー。
【背景技術】
【0002】
粘土は、増粘剤、粘結剤、レオロジー改質剤、無機バインダー、土木泥水、止水材、化粧品原料等、様々な分野で利用されている。
粘土は層状ケイ酸塩化合物であり、平板状の結晶構造が積層した構造を有している。例えば、代表的な層状ケイ酸塩化合物であるモンモリロナイトの一般的な結晶構造は、ケイ酸のネットワークが広がるケイ酸四面体シートがアルミナ八面体シートを挟んで存在する、2:1層構造の単位結晶層からなる。多くの場合、この結晶層中においてアルミナ八面体シートの中心原子であるアルミニウムの一部がマグネシウムに置換され、これにより結晶層は負に帯電し、この負電荷を中和する形で層間には陽イオンが取り込まれている。
【0003】
近年、層状ケイ酸塩化合物の板状の結晶形態、及びその自己積層性を活かし、層状ケイ酸塩化合物を用いてバリア機能を有した粘土膜を形成することが報告されている。例えば特許文献1には、積層している粘土膜内に、水可溶性高分子が分布していることを特徴とする水可溶性高分子複合自立粘土膜が記載されている。しかし、この粘土膜の材料は吸水性であり、耐水性の面からみると十分な性能を示すものではない。
【0004】
粘土膜の耐水性を高める方法として、結晶層間に存在する陽イオンをリチウムイオンに置き換えたLi型粘土を用いて粘土膜を形成する方法が知られている。このLi型粘土は、高温処理によって結晶層間に存在するLiイオンが結晶面に固定化され、吸水性を失う。したがって、Li型粘土を用いることにより耐水性ないし水蒸気バリア性の高い粘土膜を形成することができる(例えば非特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
しかし、Li型粘土を用いて耐水性の粘土膜を形成する場合、耐水性を付与するために200℃以上もの高温の熱処理を要し、製造設備ないしコスト面において制約がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[粘土スラリー]
本発明の粘土スラリーは、(A)層状珪酸塩化合物、(B)カルボキシ基含有樹脂、(C)カルボキシ基に対して反応性を示す官能基を有する架橋剤、及び(D)水を含有する。本発明の粘土スラリーを構成する各成分について順に説明する。
【0012】
<(A)層状珪酸塩化合物>
本発明には層状珪酸塩化合物として、天然粘土、合成粘土、又はこれらの混合物を用いることができる。より具体的には、雲母、バーミキュライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、及びスティブンサイトから選ばれる1種又は2種以上の層状珪酸塩化合物を用いることができる。また、層状珪酸塩化合物としては天然品、あるいは合成品を用いることができる。なかでもバリア性のより高い粘土膜を形成する観点からモンモリロナイトが好適である。
【0013】
本発明に用いる層状珪酸塩化合物は、スラリーの成膜性の観点から、Na型粘土及びLi型粘土、K型粘土、NH
4型粘土から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。また、スラリーを用いて形成した粘土膜の耐水性をより高める観点からは、Mg型粘土、Ca型粘土、Al型粘土、及びCu型粘土から選ばれる1種又は2種以上の多価陽イオン型粘土を用いることも好ましい。
ここで、Na型、Li型、K型、NH
4型、Mg型、Ca型、Al型、及びCu型の各粘土は、それぞれ、粘土の浸出陽イオン量(すなわち浸出陽イオンの総量、単位:meq/100g)に占めるNa
+、Li
+、K
+、NH
4+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+、及びCu
2+の量(単位:meq/100g)が70%以上である粘土を意味する。
本明細書において、粘土の浸出陽イオン量は、粘土の層間陽イオンを粘土0.5gに対して100mLの1M酢酸アンモニウム水溶液(Al型粘土については1M硫酸、NH
4型粘土については10wt%塩化カリウム水溶液)を用いて4時間かけて浸出させ、得られた溶液中の各種陽イオンの濃度を、ICP発光分析や原子吸光分析、アンモニア電極等により測定し、算出される。
【0014】
層状珪酸塩化合物は市販品を用いることができる。層状珪酸塩化合物の市販品としては、例えば、クニピアF、クニピアM、スメクトンSA、スメクトンST(いずれも商品名、クニミネ工業社製)を挙げることができる。
【0015】
本発明の粘土スラリーの固形分中、層状珪酸塩化合物の含有量は45〜85質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、55〜80質量%がさらに好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。
【0016】
<(B)カルボキシ基含有樹脂>
本発明に用いるカルボキシ基含有樹脂は、本発明の粘土スラリーを用いて形成した粘土膜内の空隙を埋めると共に、後述する成分(C)と共に架橋ネットワークを形成する。これにより、本発明の粘土スラリーを用いて形成した粘土膜の耐水性及び強度を高めることができる。
本発明に用いるカルボキシ基含有樹脂は、水溶性の樹脂であるか、又はエマルジョン化された水分散性の樹脂であることが好ましい。例えば、有機溶媒中で溶液重合して得られたカルボキシ基含有樹脂のカルボキシ基を塩基性化合物で中和することによって水溶化又は水分散化した樹脂や、有機溶剤中で溶液重合して得られたカルボキシ基含有樹脂を水系媒体中に乳化分散させたもの、あるいは水性媒体中で乳化重合、または懸濁重合してエマルションあるいはディスパージョンとして得られた樹脂を挙げることができる。
【0017】
本発明に用いるカルボキシ基含有樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000、さらに好ましくは10,000〜30,000である。重量平均分子量を上記好ましい範囲内とすることにより、粘土スラリーの成膜性をより向上させることができ、また、当該スラリーを用いて形成した粘土膜の耐水性をより高めることができる。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0018】
アンモニアで中和されたカルボキシ基含有樹脂(すなわちアンモニウム塩)も、カルボキシ基含有樹脂として本発明に好適に用いることができる。アンモニアで中和されたカルボキシ基含有樹脂を用いることにより、架橋剤との反応性を成膜後の乾燥時まで抑えることができるため、スラリーの成膜性が向上しうる。
【0019】
本発明に用いるカルボキシ基含有樹脂は、その酸価が100〜180mgKOH/gが好ましく、140〜160mgKOH/gがより好ましい。酸価は、樹脂の乾燥試料を作製した後、JIS K 0070:1992の3.1の中和滴定法に準拠して測定される。
【0020】
本発明に用いる好ましいカルボキシ基含有樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基を有する重合性モノマーの単独重合体や共重合体、これらの重合性モノマーとエチレンとの共重合体が挙げられる。また、これらの重合体のアンモニウム塩も好適に用いることができる。
本発明には市販のカルボキシ基含有樹脂を用いてもよく、当該市販品として例えば、ザイクセン−A、ザイクセン−AC、ザイクセン−N,ザイクセン−L(いずれも商品名、住友精化株式会社製)、ハイテックS−3121、ハイテックS−3148K(いずれも商品名、東邦化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0021】
本発明の粘土スラリーの固形分中、カルボキシ基含有樹脂の含有量は、5〜30質量%が好ましく、7〜25質量%がより好ましく、8〜22質量%がさらに好ましい。
【0022】
<(C)カルボキシ基に対して反応性を示す官能基を有する架橋剤>
本発明に用いる成分(C)の架橋剤は、カルボキシ基に対して反応性を示す官能基を有する化合物である。本発明に用いる架橋剤は、その反応性官能基がカルボキシ基含有樹脂のカルボキシ基と反応することにより、本発明のスラリーを用いて形成した粘土膜に強固な架橋ネットワーク構造を形成することができる。これにより、粘土膜の空隙を効果的に封鎖し、粘土膜の耐水性を高めることができる。
本発明に用いる架橋剤の分子量は特に限定されず、低分子の架橋剤から高分子の架橋剤まで幅広く用いることができる。架橋点が離れている場合でも効率的に架橋構造を形成する観点からは、ある程度高分子ものを用いることも好ましく、その分子量は1,000以上が好ましい。
本発明に用いる架橋剤中、カルボキシ基に対して反応性を示す官能基のモル量は、0.5〜20mmol/g−架橋剤 が好ましく、1.0〜10mmol/g−架橋剤 がより好ましい。
また、本発明に用いる架橋剤は、粘土とカルボキシ基を有するポリマー双方への反応性、水系での取り扱いの容易さの観点から、カルボジイミド化合物及び/又はオキサゾリン化合物であることが好ましい。カルボジイミド基やオキサゾリン基は粘土端面の水酸基とも反応しうるため、カルボジイミド化合物及び/又はオキサゾリン化合物を用いることにより、強固で複雑な架橋ネットワークが形成され、粘土膜の耐水性をより向上させることができる。
【0023】
カルボジイミド化合物は市販品を用いることができ、例えば、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02(いずれも商品名、日清紡社製)等を挙げることができる。本発明に用いうるカルボジイミド化合物の分子量に特に制限はなく、通常は分子量1,000〜10,000であり、1,000〜5、000がより好ましく、1,000〜4,000がさらに好ましい。
【0024】
オキサゾリン化合物は市販品を用いることができ、例えば、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−2030E、エポクロスK−2020E(いずれも商品名、日本触媒社製)等を挙げることができる。本発明に用いうるオキサゾリン化合物の分子量に特に制限はないが、ポリマーであることが好ましく、その重量平均分子量は10,000〜100,000であることが好ましく、20,000〜90,000であることがより好ましい。
【0025】
本発明の粘土スラリー中、成分(B)のカルボキシ基含有水性樹脂と成分(C)の架橋剤の含有量の比は、質量比で、[カルボキシ基含有水性樹脂]/[架橋剤]=1/3〜3/1が好ましく、[カルボキシ基含有水性樹脂]/[架橋剤]=1/2〜2/1がより好ましい。カルボキシ基含有樹脂と架橋剤の含有量の比を上記好ましい範囲内とすることにより、得られる粘土膜の耐水性をより向上させることができる。
【0026】
本発明の粘土スラリーの固形分中、成分(C)の架橋剤の含有量は、5〜30質量%が好ましく、7〜25質量%がより好ましく、8〜22質量%がさらに好ましい。
【0027】
<(D)水>
本発明のスラリーは分散媒として水を含有する。本発明に用いる水に特に制限はなく、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水等を用いることができる。
本発明のスラリー中、水の含有量は70〜99質量%が好ましく、80〜98質量%がより好ましく、90〜97質量%がさらに好ましい。
【0028】
<その他の成分>
本発明の粘土スラリーは、本発明の効果を実質的に損なわない範囲で、さらにシランカップリング剤、有機高分子、シリカ、界面活性剤、無機ナノ粒子、極性有機溶媒、アンモニア等を含んでいてもよい。
【0029】
<本発明のスラリーの製造>
本発明の粘土スラリーの調製について説明する。
本発明の粘土スラリーの調製において、各成分の混合順に特に制限はないが、層状珪酸塩化合物を水中あるいは水系媒体中に分散させた分散液を調製し、この分散液と、カルボキシ基含有樹脂と、架橋剤とを混合して調製することが好ましい。層状珪酸塩化合物として多価陽イオン型粘土を用いる場合には、一般に水に難分散性であるが、水と、非共有電子対を有する化合物等(例えばアセトニトリルやアンモニア等)とを含む水系媒体を用いることで、多価陽イオン型粘土の水分散液を高めることができる。
【0030】
混合方法は一般的な羽根つき撹拌機、ホモミキサー、万能混合機、自転公転ミキサー、アイリッヒミキサーなどを用いることができる。なかでも、撹拌せん断力が強く、短時間での微分散スラリーを製造できる点において、ホモミキサーが好ましい。また、スラリー内における気泡の発生を抑えるという観点では万能混合機を用いることも好ましい。また、モンモリロナイト濃度が20質量%を超えるような高濃度スラリーを製造する場合には、効率的に混合できる自転公転ミキサーを好適に用いることができる。
各原料を混合してスラリーを調製する際の温度に特に制限はないが、通常は4〜30℃の温度下で行われる。
【0031】
本発明の粘土スラリーは、固形分濃度を2〜20質量%に調整することが好ましく、より好ましくは5〜10質量%に調整する。上記好ましい固形分濃度とすることにより、層状珪酸塩化合物がより均質に分散したスラリーが得られやすく、また、粘土膜を形成した際の乾燥時間も短くでき、さらに、分散液が適度な粘性を示し、成膜性が向上しうる。
【0032】
[本発明の粘土膜]
本発明の粘土スラリーを基板上に塗布し、所望のレベルまで乾燥させることで、架橋ネットワークが形成され、耐水性に優れた本発明の粘土膜を得ることができる。粘土膜の空隙をより少なくするために、真空引き、あるいは遠心などによって脱泡処理に付した粘土スラリーを用いて粘土膜を形成することが好ましい。粘土スラリーの塗布には、バーコーター、キャスティングナイフ、あるいはスプレー塗工などの方法を採用することができる。
上記基板に特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の樹脂製基板、ガラス基板、ステンレス基板等を挙げることができる。
【0033】
基板上に塗布した粘土スラリーの乾燥方法は特に制限はされず、強制送風式オーブン、あるいは連続式乾燥機中で、60〜130℃の温度条件下、好ましくは70〜100℃の温度条件下で、15分から3時間程度、好ましくは30分〜2時間程度乾燥することにより、架橋ネットワークが形成された本発明の粘土膜を得ることができる。上記好ましい乾燥温度とすることにより、気泡の発生を抑えながら、比較的短時間で、粘土膜を形成することができる。また、乾燥処理後、さらに熱処理に付してもよい。例えば、105〜150℃、好ましくは110〜130℃の温度条件下で、30分〜3時間程度追加の熱処理を施すことにより、膜内に残存した揮発成分を完全に除去することができ、且つ、架橋反応を十分に進行させることができる。
【0034】
本発明の粘土膜の厚さは、スラリー中の層状珪酸塩化合物の含有量を調整することで、用途に応じて適宜に調整される。本発明の粘土膜の厚さは、通常は1〜100μmであり、2〜80μmが好ましく、4〜60μmがより好ましく、5〜40μmがさらに好ましく、6〜20μmがさらに好ましい。
本発明の粘土膜は、水分と接触しても吸水しにくく耐水性に優れる。したがって、例えば、包装フィルム、電子基盤、難燃フィルム、水蒸気バリアフィルム、絶縁フィルム、コートフィルム等として好適に用いることができる。
【0035】
本発明の粘土膜は、吸水性の高い層状珪酸塩化合物を用いた場合であっても、優れた耐水性を示す。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
クニピアF(商品名、クニミネ工業社製、天然Na型モンモリロナイト)、及び蒸留水を万能混合機にて十分に混合することで粘土を10wt%含有する分散液(ペースト)を得た。
得られた分散液とザイクセンA(商品名、住友精化社製、カルボキシ基含有樹脂)とを、当該分散液の固形分(クニピアFの固形分)70質量部に対してザイクセンAの固形分が20質量部となるように混合した。この混合液に蒸留水を加え、自公転ミキサーを用いて混合した(2000rpm、10分間)。得られた混合液にカルボジライトV−02(商品名、日清紡社製、カルボジイミド化合物)を、クニピアFの固形分70質量部に対して10質量部となるように投入し、蒸留水を加え、上記と同様に自公転ミキサーを用いて混合した。なお、自公転ミキサーによる混合前の蒸留水の添加は、全固形分濃度が5.5wt%となるように添加した。また、自公転ミキサーによる混合時におけるスラリーの温度は、スラリーを冷却してから混合することで、30℃未満とした。
こうして得られたスラリーを脱泡処理(2200rpm、10分間)した後、PETフィルム(片面コロナ処理品、縦210mm×横297mm×厚さ50μm)のコロナ処理表面上に、キャスティングナイフを用いて、乾燥後のコート厚みが約10μmとなるように全面塗布した。これを70℃の乾燥機にて十分乾燥させた後、105℃で2時間乾燥させ、さらに130℃で2時間の熱処理に付し、粘土膜を得た。
【0038】
[実施例2]
クニピアFの固形分70質量部に対し、ザイクセンAの固形分が15質量部、カルボジライトV−02の固形分が15質量部となるように配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘土膜を得た。
【0039】
[実施例3]
クニピアFの固形分70質量部に対し、ザイクセンAの固形分が10質量部、カルボジライトV−02の固形分が20質量部となるように配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘土膜を得た。
【0040】
[実施例4]
カルボジライトV−02に代えてカルボジライトV−02−L2を用いたこと以外は実施例3と同様にして粘土膜を得た。
【0041】
[実施例5]
カルボジライトV−02に代えてエポクロスWS−700を用い、さらにスラリー中の全固形分濃度を7.0wt%としたこと以外は、実施例2と同様にして粘土膜を得た。
【0042】
[実施例6]
ザイクセンAに代えてハイテックS−3121を用いたこと以外は実施例2と同様にして粘土膜を得た。
【0043】
[実施例7]
カルボジライトV−02に代えてエポクロスWS−700を用い、さらにスラリー中の全固形分濃度を7.0wt%としたこと以外は、実施例6と同様にして粘土膜を得た。
【0044】
[比較例1]
クニピアFの固形分70質量部に対し、ザイクセンAの固形分が30質量部となるようにザイクセンAを添加し、またカルボジライトV−02は添加せず、さらにスラリー中の全固形分濃度を7.0wt%としたこと以外は、実施例1と同様にして粘土膜を得た。
【0045】
[比較例2]
ザイクセンAに代えてハイテックS−3121を用いたこと以外は比較例1と同様にして粘土膜を得た。
【0046】
[比較例3]
ザイクセンAを添加せず。またクニピアFの固形分70質量部に対し、カルボジライトV−02の固形分が30質量部となるようにカルボジライトV‐02を添加したこと以外は、実施例1と同様にして粘土膜を得た。
【0047】
[比較例4]
カルボジライトV−02に代えてカルボジライトV‐02‐L2を用いたこと以外は比較例3と同様にして粘土膜を得た。
【0048】
[比較例5]
カルボジライトV−02に代えてエポクロスWS−700を用いたこと以外は比較例3と同様にして粘土膜を得た。
【0049】
上記ザイクセンAの酸価は151mgKOH/gであり、ハイテックS−3121の酸価は、154mgKOH/gであった。
また、上記カルボジライトV−02のカルボジイミド基の含有量は1.67mmol/g−固形分、カルボジライトV−02−L2のカルボジイミド基の含有量は2.6mmol/g−固形分、エポクロスWS−700のオキサゾリン基の含有量は4.5mmol/g−固形分である。
【0050】
[試験例1] 成膜性の評価
上記各実施例及び比較例で得られた粘土膜を目視観察し、下記評価基準により評価した。結果を下記表1に示す。
<成膜性評価基準>
A:粘土膜に割れが生じていない。
B:粘土膜に割れが生じている。
【0051】
[試験例2] 膜厚の評価
上記各実施例及び比較例で得られた粘土膜について、マイクロメーターを用いて無作為に5点の膜厚を測定し、得られた各値の平均値からPETフィルムの膜厚を差し引いた値を粘土膜の膜厚とした。結果を下記表1に示す。
【0052】
[試験例3] 耐水性の評価
上記各実施例及び比較例で得られた粘土膜を、PETフィルムごと蒸留水に浸漬し、24時間後に取り出して目視観察し、下記評価基準により評価した。
<耐水性評価基準>
A:浸漬前後で粘土膜の状態に変化が認められない。
B:粘土膜が水中で崩壊、あるいは膨潤し、PETフィルムから粘土膜が剥がれている。
【0053】
【表1】
【0054】
上記表1に示されるように、カルボキシ基含有樹脂及び架橋剤のいずれか一方を含有しないスラリーを用いて形成した粘土膜は、吸水性が高く水中で崩壊してしまい、耐水性に劣る結果となった(比較例1〜5)。
これに対し、本発明の粘土スラリーを用いると、成膜性が良好で、得られる粘土膜は、水膨潤性の粘土を用いているにもかかわらず、優れた耐水性を示した。
【0055】
[試験例4] 酸素ガスバリア性の評価
上記各実施例及び比較例で得られた粘土膜の酸素ガス透過度を、OX−TRAN2/21(モコン社製)を用いて、23℃、Dry条件下にて測定した(JIS K7126−2付属書Aに準拠)。また、PET基板のみの酸素ガス透過度も参考として測定した。結果を下記表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示されるように、上記実施例で作製した粘土膜が、耐水性に加えて、優れた酸素ガスバリア性をも兼ね備えることがわかった。