特許第6491918号(P6491918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491918
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】地下構造物用蓋
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   E02D29/14 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-61331(P2015-61331)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180253(P2016-180253A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 義明
(72)【発明者】
【氏名】内尾 晃太
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0009243(KR,A)
【文献】 実開昭54−141768(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0036149(KR,A)
【文献】 特開2014−201972(JP,A)
【文献】 実開昭56−150249(JP,U)
【文献】 実開昭58−099338(JP,U)
【文献】 実開昭63−041645(JP,U)
【文献】 特開2012−233350(JP,A)
【文献】 特開2002−242212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/14
E02D 29/12
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体と、この蓋本体を内周部で開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、
前記蓋本体の外周縁部に、蓋開閉用バールの先端が挿入可能な切欠き部を形成するとともに、当該切欠き部の蓋本体中心側に、前記蓋開閉用バールにより前記受枠の内周部上端を支点として蓋本体を受枠から開蓋するときに作用点となる蓋本体係止部を形成し、
前記受枠の内周部には、蓋本体を受枠に閉蓋した際に前記切欠き部と相対する位置に、前記切欠き部に挿入した蓋開閉用バールの先端が係止可能で、かつ蓋本体を受枠に閉蓋した後に前記蓋開閉用バールにより前記切欠き部の上縁を作用点として蓋本体を受枠に食い込ませるときに支点となる受枠係止部を形成したことを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項2】
前記受枠係止部は、受枠の外方に凹む凹部、受枠の内方に突き出す突出部、またはこれらの組合せによって形成した請求項1に記載の地下構造物用蓋。
【請求項3】
前記切欠き部、前記蓋本体係止部および前記受枠係止部の組を複数箇所に形成した請求項1または2に記載の地下構造物用蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋本体と、この蓋本体を内周部で開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋に関する。
【0002】
なお、本願明細書でいう「地下構造物用蓋」とは、下水道における地下埋設物,地下構造施設等と地上とを通じる開口部を開閉可能に閉塞するマンホール蓋,大型鉄蓋,汚水桝蓋、雨水排水における雨水桝蓋、電力・通信における地下施設機器や地下ケーブル等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道やガス配管における路面下の埋設導管およびその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋等を総称する。
【背景技術】
【0003】
地下構造物用蓋としては、蓋本体の外周部に形成した勾配面を受枠の内周部に形成した勾配面に食い込ませることにより蓋本体を受枠に嵌合支持する勾配受構造のものが一般的である(例えば、特許文献1、2)。このような勾配受構造の地下構造物用蓋にあっては、車両の通行等による蓋本体のがたつき、振動、騒音(以下「蓋本体のがたつき等」という。)の発生を顕著に抑えることができるとともに、蓋本体のずり上がりをほとんど起こさないという効果を奏することができる。
【0004】
しかしながら、とくに勾配受構造の地下構造物用蓋においては、その効果を十分に発揮させるため、蓋本体を受枠に閉蓋する際に、蓋本体表面の複数箇所を蓋開閉用バールやショックレスハンマー等で叩くことにより、蓋本体を受枠に適度に食い込ませておく必要があるところ、叩き込む力が弱い場合、その後の車両の通行等によっても蓋本体が受枠に食い込まず、蓋本体のがたつき等が発生するおそれがある。また、叩く場所によって力に大きなばらつきが生じ、蓋本体が傾いたまま閉蓋した場合、蓋本体が受枠に対して均等に食い込んでいないことから、車両の通行等によって蓋本体のずり上がりが起こり、結果として、蓋本体のがたつき等が発生するおそれがある。このように、蓋本体を閉蓋する際に、蓋本体の受枠への適度な食い込み力が得られないと、蓋本体のがたつき等が発生するという問題が生じることがある。
【0005】
なお、このような問題は、勾配受構造の地下構造物用蓋に限らず、蓋本体を受枠の内周部で開閉可能に支持する構造の地下構造物用蓋においても同様に生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−72357号公報
【特許文献2】実公昭60−19162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、蓋本体を受枠に閉蓋する際に、蓋本体の受枠への適度な食い込み力を発生させることができる地下構造物用蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地下構造物用蓋は、蓋本体と、この蓋本体を内周部で開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、前記蓋本体の外周縁部に、蓋開閉用バールの先端が挿入可能な切欠き部を形成するとともに、当該切欠き部の蓋本体中心側に、前記蓋開閉用バールにより前記受枠の内周部上端を支点として蓋本体を受枠から開蓋するときに作用点となる蓋本体係止部を形成し、前記受枠の内周部には、蓋本体を受枠に閉蓋した際に前記切欠き部と相対する位置に、前記切欠き部に挿入した蓋開閉用バールの先端が係止可能で、かつ蓋本体を受枠に閉蓋した後に前記蓋開閉用バールにより前記切欠き部の上縁を作用点として蓋本体を受枠に食い込ませるときに支点となる受枠係止部を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
このように、蓋本体の外周縁部に切欠き部、受枠の内周部に受枠係止部をそれぞれ形成したことで、蓋本体を受枠に閉蓋する際に、蓋本体の切欠き部に蓋開閉用バールを挿入して当該蓋開閉用バールの先端を受枠係止部に係止させ、受枠係止部を支点、蓋本体の切欠き部を作用点とする、てこの原理を利用して、受枠に対して蓋本体を押し込むことにより、蓋本体の受枠への適度な食い込み力を発生させることができる。これにより、蓋本体のがたつき等の発生を顕著に抑えることができる。また、蓋本体が受枠に斜めに傾いたまま食い込んでいた場合、水平になるように蓋本体の傾きを調整することも可能となる。
【0010】
本発明において前記受枠係止部は、受枠の外方に凹む凹部、受枠の内方に突き出す突出部、またはこれらの組合せによって形成することができる。凹部や突出部は比較的簡単に形成できるので、受枠の内周部の形状が過度に複雑になることがなく、低コストで実現できる。
【0011】
また、本発明において前記切欠き部、前記蓋本体係止部および前記受枠係止部の組は複数箇所に形成することができる。これにより、蓋本体の受枠への適度な食い込み力を、地下構造物用蓋の全周にわたってより均一に発生させることができ、また、蓋本体が受枠に斜めに傾いたまま食い込んでいた場合も、その蓋本体の傾きの調整をより簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋本体を受枠に閉蓋する際に、この蓋本体の開閉の際に使用する蓋開閉用バールを用いて、蓋本体の受枠への適度な食い込み力を発生させることができる。これにより、蓋本体のがたつき等の発生を顕著に抑えることができ、また、蓋本体の傾きを調整することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例による地下構造物用蓋の全体構成を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
図2図1の地下構造物用蓋の切欠き部(補助バール孔)近傍の具体的構成を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
図3図1の地下構造物用蓋おいて、蓋本体を受枠から開蓋する際の蓋開閉用バールの使用状態を示す。
図4図1の地下構造物用蓋において、蓋本体を受枠に食い込ませる際の蓋開閉用バールの使用状態を示す。
図5】本発明の地下構造物用蓋の受枠に形成する受枠係止部の他の例を示し、(a)は要部の平面図、(b)は(a)のC−C矢視図に蓋開閉用バールを加えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例による地下構造物用蓋の全体構成を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【0016】
図1に示す地下構造物用蓋は、円形(丸型)の蓋本体10と、この蓋本体10を内周部で開閉可能に支持する受枠20とを備え、具体的には図1(b)に示すように、蓋本体10の外周部に形成した勾配面11を受枠20の内周部に形成した勾配面21に食い込ませることにより蓋本体10を受枠20に嵌合支持する勾配受構造の地下構造物用蓋である。
【0017】
蓋本体10の外周縁部には、それぞれ蓋開閉用バールの先端が挿入可能な、長孔状の貫通孔からなる主バール孔12と、補助バール孔13とが形成されている。この補助バール孔13が本発明でいう「切欠き部」であり、以下、「切欠き部13」として説明する。本実施例において切欠き部13は、主バール孔12の中心と蓋本体10の中心とを通る中心線Lに対して線対称となる2箇所に形成されている。
【0018】
なお、蓋本体10は、主バール孔12が形成されている外周縁部位置とは反対側の外周縁部位置(中心線L上の位置)において、図示しない蝶番金物によって受枠20と開閉可能に連結されている。
【0019】
図2は、図1の地下構造物用蓋の切欠き部13近傍の具体的構成を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【0020】
蓋本体10の外周縁部に形成した切欠き部13は、本実施例では底を有する凹状に形成されている。また、受枠20の内周部には、蓋本体10を受枠20に閉蓋した際に切欠き部13と相対する位置に、受枠係止部22が形成されている。本実施例において受枠係止部22は、受枠20の半径方向に凹む凹部によって形成されている。詳しくは後で説明するが、この受枠係止部22には、蓋本体20を閉蓋する際に切欠き部13に挿入した蓋開閉用バールの先端が係止可能である。
【0021】
次に、蓋開閉用バールを用いて、蓋本体10を開蓋および閉蓋する方法について説明する。蓋本体10を開蓋および閉蓋する際は、図1(a)に示した主バール孔12と補助バール孔である各切欠き部13のそれぞれに適宜、蓋開閉用バールの先端を挿入して作業を行うが、以下では、補助バール孔である各切欠き部13に蓋開閉用バールの先端を挿入して行う作業について説明する。
【0022】
図3は、蓋本体10を受枠20から開蓋する際の蓋開閉用バール30の使用状態を示す。同図に示すように開蓋の際は、蓋本体10の切欠き部13に蓋開閉用バール30の先端を挿入して、その蓋開閉用バール30の先端を蓋本体係止部14に係止させる。そして、受枠20の内周部上端を支点、蓋本体係止部14を作用点とする、てこの原理を利用して、蓋本体10を上方に押し上げる。すなわち、この作業は、蓋開閉用バール30による「こじり作業」である。なお、この「こじり作業」については、後述する「逆こじり作業」によって蓋本体10が受枠20に斜めに傾いたまま食い込んだ場合に、蓋本体10の傾きを修正する手段としても実施可能である。
【0023】
図4は、蓋本体10を受枠20に閉蓋した後の蓋開閉用バール30により蓋本体を食い込ませる際の使用状態を示す。同図に示すように閉蓋の際は、蓋本体10の切欠き部13に蓋開閉用バール30の先端を挿入して、その蓋開閉用バール30の先端を受枠係止部22に係止させる。そして、受枠20の受枠係止部22を支点、蓋本体10の切欠き部13の上縁を作用点とする、てこの原理を利用して、蓋本体10を下方に押し込む。
【0024】
この図4の作業は、図3の「こじり作業」に対して「逆こじり作業」といえるもので、「こじり作業」に加えて「逆こじり作業」も行えることが本発明の特徴である。そして、本発明では、「逆こじり作業」を行えることで、蓋本体10の受枠20への適度な食い込み力を発生させることができ、蓋本体10のがたつき等の発生を顕著に抑えることができる。また、蓋本体10が受枠20に斜めに傾いたまま食い込んでいた場合、他の切欠き部13において「逆こじり作業」を行うことにより、水平になるように蓋本体10の傾きを調整することも可能となる。
【0025】
また、本実施例では、「逆こじり作業」を行うための、切欠き部13およびこれに対応する受枠係止部22の組を2箇所(複数箇所)に形成しているので、蓋本体10の受枠20への適度な食い込み力を、地下構造物用蓋の全周にわたってより均一に発生させることができ、また、蓋本体10が受枠20に斜めに傾いたまま食い込んでいた場合も、その蓋本体10の傾きの調整をより簡単に行うことができる。さらに、本実施例では、切欠き部13およびこれに対応する受枠係止部22の組を、中心線Lに対して線対称となる2箇所に形成しているので、「逆こじり作業」をより均一にバランス良く行うことができる。
【0026】
図5は、受枠20に形成する受枠係止部の他の例を示し、(a)は要部の平面図、(b)は(a)のC−C矢視図に蓋開閉用バール30を加えた図である。
【0027】
先の例では受枠係止部22を受枠20の外方(半径方向)に凹む凹部によって形成したが、図5の例は、受枠係止部23を受枠20の内方(中心方向)に突き出す突出部によって形成したものである。突出部によって形成した受枠係止部23によっても、図5(b)に示すように閉蓋の際は、蓋本体10の切欠き部13に蓋開閉用バール30の先端を挿入して、その蓋開閉用バール30の先端を受枠係止部23に係止させ、受枠20の受枠係止部23を支点、蓋本体10の表面を作用点とする、てこの原理を利用して、蓋本体10を下方に押し込む「逆こじり作業」を行うことができる。なお、この図5の例においても、図3で説明したような「こじり作業」を行えることは明らかである。
【0028】
このように本発明でいう「受枠係止部」は、受枠20の外方に凹む凹部、または受枠20の内方に突き出す突出部によって形成でき、また、これら(凹部および突出部)の組合せによって形成することも可能である。なお、「受枠係止部」を図5の例のように突出部で形成した場合、蓋開閉用バール30による「逆こじり作業」を円滑に行えるようにするため、「受枠係止部」を凹部で形成した場合(図4参照)に比べ、切欠き部13を蓋本体10の中心側に向けて若干伸長させることとなる。したがって、切欠き部13を長くしたくない場合には、「受枠係止部」は凹部で形成することが好ましい。ただし、「受枠係止部」は、凹部や突出部以外によっても形成することができ、要するに、切欠き部13に挿入した蓋開閉用バール30の先端が係止可能なものであれば良い。
【0029】
なお、以上の実施例では、切欠き部13は底を有する凹状に形成したが、底のない貫通孔とすることもできる。
【0030】
また、以上の実施例では、蓋本体10の外周部に形成した勾配面11を受枠20の内周部に形成した勾配面21に食い込ませることにより蓋本体10を受枠20に嵌合支持する勾配受構造の地下構造物用蓋について説明したが、本発明は勾配受構造以外の構造の地下構造物用蓋にも適用可能である。例えば、本願出願人が先に国際公開第2014/126239号で開示した構造の地下構造物用蓋にも本発明は問題なく適用可能である。また、実施例では蓋本体10が円形(丸型)である丸型の地下構造物用蓋について説明したが、本発明は蓋本体が矩形(角型)である角型の地下構造物用蓋にも適用可能である。すなわち本発明は、蓋本体と、この蓋本体を内周部で開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋であれば、いずれの地下構造物用蓋にも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 蓋本体
11 勾配面
12 主バール孔
13 切欠き部(補助バール孔)
14 蓋本体係止部
20 受枠
21 勾配面
22 受枠係止部(凹部)
23 受枠係止部(突出部)
30 蓋開閉用バール
図1
図2
図3
図4
図5