(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記作動板は、上記本体の上記主壁部に接し上記制御口を形成してなる主板部と、この主板部と直交する副板部とを有し、この副板部に形成された切欠の端が上記バネ受け部として提供されることを特徴とする請求項2に記載の換気装置。
上記操作部材による上記作動板の上記閉じ位置を第1閉じ位置とし、上記バネによる上記作動板の閉じ位置を第2閉じ位置とし、上記作動板の上記開き位置から上記第1閉じ位置までの移動ストロークは、上記通気口の1ピッチより長く、上記作動板の上記開き位置から上記第2閉じ位置までの移動ストロークは、上記通気口の1ピッチより小さいことを特徴とする請求項2または3に記載の換気装置。
上記作動板の上記開き位置から上記第1閉じ位置までの移動ストロークが、上記通気口の1.5ピッチであり、上記作動板の上記開き位置から上記第2閉じ位置までの移動ストロークが、上記通気口の1.5ピッチであることを特徴とする請求項4に記載の換気装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3〜5に示す換気装置は、形状記憶合金製のバネを利用して火事の時に自動的に通気口を閉じ、延焼を防ぐことができるものの、手動による開閉操作を行うことができない。
特許文献3、4に示す換気装置は、火災発生の際に一時的に換気装置近傍の環境温度が低下するとバイアスバネの力で作動板は開き位置に戻ってしまう。そのため、新鮮な空気が室内に入り込み、高温で乾燥した室内で発火したり燃焼が激しくなる等の不都合が生じる。
特許文献5に示す換気装置は、ロック手段を装備しているため、防火ダンパは一旦閉じると開かないが、構成が複雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決したもので、ア.通気口が形成された主壁部を有する本体と、
イ.上記本体に、上記通気口を開く開き位置と上記通気口を閉じる閉じ位置との間で、スライド可能に支持された作動板と、ウ.上記本体の室内側に配置されて上記作動板をスライド操作する操作部材と、を備えた換気装置において、
さらに形状記憶合金製のバネを備え、このバネの一端が上記本体に固定された固定端となり、他端が自由端となっており、通常の環境温度では、上記バネの弾性力が上記作動板に作用せず、上記作動板は上記操作部材により選択された位置を維持され、火災により環境温度が異常レベルまで上昇した時には、上記バネが高温での記憶形状に戻ろうとして上記自由端が変位し、この自由端が上記開き位置にある上記作動板に直接または間接的に作用し、上記バネの弾性力により上記作動板を、上記操作部材の操作による閉じ位置またはこの閉じ位置とは異なる閉じ位置まで移動させ、上記通気口を閉じることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、簡単な構成でありながら、火事の際には形状記憶合金製のバネの弾性力により作動板を自動的に閉じ動作させることができ、通気口を介しての延焼を防止できる。また、バイアススプリングを用いないので、環境温度が一時的に低下した時でも一旦閉じた作動板が戻ることがなく、新鮮な空気流入による室内燃焼の激化等の不都合も防止できる。通常時は操作部材の手動操作により開閉調節を行うことができる。
【0011】
本発明の一態様では、上記本体および上記作動板が細長く形成され、上記作動板が上記長手方向にスライド可能であり、上記本体の主壁部には、上記通気口が長手方向に等間隔をおいて多数形成され、上記作動板には、多数の制御口が長手方向に上記通気口と同一ピッチで形成され、上記作動板は、上記主壁部に接しながらスライドし、上記開き位置では上記制御口が上記通気口と一致して上記通気口を開き、上記閉じ位置では上記制御口が上記通気口と不一致となって上記通気口を閉じ、上記作動板には、環境温度が異常レベルまで上昇した時に上記バネの自由端から上記バネの弾性力を受けるバネ受け部が設けられている。
【0012】
上記一態様において好ましくは、上記作動板は、上記本体の上記主壁部に接し上記制御口を形成してなる主板部と、この主板部と直交する副板部とを有し、この副板部に形成された切欠の端が上記バネ受け部として提供される。
この構成によれば、バネ受け部の構成を簡略化することができる。
【0013】
上記一態様において好ましくは、上記操作部材による上記作動板の上記閉じ位置を第1閉じ位置とし、上記バネによる上記作動板の閉じ位置を第2閉じ位置とし、上記作動板の上記開き位置から上記第1閉じ位置までの移動ストロークは、上記通気口の1ピッチより長く、上記作動板の上記開き位置から上記第2閉じ位置までの移動ストロークは、上記通気口の1ピッチより小さい。
この構成によれば、バネの小型化と手動による開閉操作時の操作感を両立させることができる。
【0014】
より好ましくは、上記作動板の上記開き位置から上記第1閉じ位置までの移動ストロークが、上記通気口の1.5ピッチであり、上記作動板の上記開き位置から上記第2閉じ位置までの移動ストロークが、上記通気口の1.5ピッチである。
【0015】
本発明の他の態様では、上記本体および上記作動板が細長く形成され、上記作動板は、上記本体に長手方向にスライド可能かつ回動可能に支持され、上記スライドの過程でカム部材により回動され、上記開き位置では上記主壁部に対して離間して上記通気口を開き、上記閉じ位置では上記壁に接近して上記通気口を閉じ、さらに、上記本体に長手方向にスライド可能に支持されたスライダを備え、このスライダは、上記作動板に対して軸方向相対移動不能であるが上記作動板の回動を許容するように連結され、上記スライダは、環境温度が異常レベルまで上昇した時に上記バネの自由端から上記バネの弾性力を受けるバネ受け部を有する。
【0016】
本発明のさらに他の態様では、ア.通気口が形成された主壁部を有する本体と、イ.上記本体に回動可能に支持された作動板と、ウ.上記本体の室内側に配置された操作部材と、エ.上記操作部材に連結され上記本体にスライド可能に支持されたスライダと、オ.上記スライダに支持されたカム部材と、を備え、上記操作部材の操作により上記スライダをスライドさせ、このスライド過程で上記カム部材のカム作用により上記作動板を回動し、上記通気口を開閉する換気装置において、
さらに形状記憶合金製のバネを備え、このバネの一端が上記本体に固定された固定端となり、他端が自由端となっており、通常の環境温度では、上記バネの弾性力が上記スライダに作用せず、上記作動板は上記操作部材により選択された位置を維持され、火災により環境温度が異常レベルまで上昇した時には、上記バネが高温での記憶形状に戻ろうとして上記自由端が変位し、この自由端が上記作動板の開き位置に対応した位置にある上記スライダに作用し、上記バネの弾性力により上記スライダを、上記作動板の閉じ位置に対応する位置までスライドさせることを特徴とする。
【0017】
本発明の全ての態様において、好ましくは、上記本体はバネ係止部を有し、環境温度が異常レベルまで上昇して上記バネの自由端が変位した時に、この自由端を上記バネ係止部で係止する。
この構成によれば、火災発生時にバネの弾性力により作動板を正確に設定された閉じ位置に移動させることができる。また、換気装置に損傷が無い場合には、作動板を開き位置に戻す過程でバネを初期形状に戻し、自由端を初期位置に戻すことができるので、再利用が可能となる。
【0018】
さらに好ましくは、上記バネはU字形をなし、上記本体は、その主要部とは別体をなして当該主要部に固定される取付部材を有し、上記取付部材は、上記バネの上記固定端が挿入される固定穴と、上記バネの自由端が挿入される切欠又はスリットを有し、上記切欠またはスリットにおける上記固定穴から離れた端が、上記バネ係止部として提供される。
この構成によれば、火災時の自動閉じ機能のための構成をより一層簡略化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成でありながら、通常の手動操作による開閉機能を確保しつつ、火災発生時の自動閉じ動作を行うことができ、しかもこの閉じ状態を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態をなす換気装置を、
図1〜
図6を参照しながら説明する。
本実施形態の換気装置は、左右に細長く形成されサッシ戸の上框として用いられる。
図1〜
図3に示すように、換気装置は、本体10と、作動板20と、操作部材30とを基本構成要素として備えている。
【0022】
本実施形態では、本体10は、それぞれアルミ型材からなる主部材11とレール受け部材17を有している。主部材11(主要部)は、室内側壁部12と、室外側壁部13(主壁部)と、これら室内側壁部12と室外側壁部13を連ねる水平壁部14と、上記室内側壁部12、室外側壁部13からそれぞれ下方に垂直に延びる垂直壁部15,16を有している。これら垂下壁部15、16により、ガラス板が嵌め込まれるガラス板受け溝10cが形成されている。
【0023】
上記レール受け部材17は、断面U字形状をなし、図示しない窓枠の上レールを受けるレール受け溝10bを有し、その室内側上縁部および室外側上縁部が、上記室内側壁部12および室外側壁部13に形成された嵌合部に嵌っている。上記室内側壁部12と、室外側壁部13と、水平壁14と、レール受け部材17により、本体10の内部空間10aが構成されている。
【0024】
上記室内側壁部12には、縦長の通気口12aが左右方向(長手方向)に等ピッチで形成されており、室外側壁部13にも縦長の通気口13a(通気口)が左右方向に等ピッチで形成されている。これら通気口12a,13aと上記内部空間10aにより、通気路10xが構成されている。
【0025】
本実施形態では、室内側壁部12の一端部(室内側から見て右端部)を除く領域には、フィルタ18とフィルタ押さえ19が配されている。このフィルタ押さえ19は、左右方向に間隔をおいて形成された多数の縦長の通気口19aを有し、その上下縁は、室内側壁部12に上下に対向して形成された係合溝12b、12cに嵌められている。
【0026】
上記作動板20もアルミ型材からなり、
図3に示すように垂直をなす主板部21と、主板部21の上、下縁から室内方向に向かって突出する幅の狭い副板部22、23とを有している。
上記作動板20は、主板部21が本体10の室外側壁部13に接し、下側の副板部23が水平壁部14に接した状態で、本体10に左右方向(長手方向)にスライド可能に支持されている。
【0027】
図5に示すように、上記作動板20には、間隔をおいて2,3カ所に樹脂製の付勢部材50が取り付けられている。この付勢部材50は、本体10の内部空間10aの底部に配置され、上記制御口21aに嵌る係合部51を有し、室内側に円弧状の弾性部52を有している。この弾性部52が弾性変形した状態で水平壁部14の隆起部14aに当たることにより、作動板20の主板部21が室外側壁部13に押し当てられるようになっている。
【0028】
上記作動板20の主板部21には、縦長の制御口21aが長手方向に等ピッチで形成されている。この制御口21aは、上記室外側壁部13の通気口13aとピッチが等しく、好ましくは同形状をなしている。
【0029】
上記作動板20は、上記操作部材30の手動操作により上記開き位置と上記閉じ位置(第1閉じ位置)との間でスライドされる。
作動板20が開き位置にある時、制御口21aが通気口13aと一致し、通気口13a(ひいては通気路10x)が開かれる。また、作動板20が閉じ位置にある時、制御口21aが通気口13aと不一致となり、通気口13a(ひいては通気路10x)が閉じられる。
【0030】
図1、
図5に示すように、操作部材30は、枠部材40を介して本体10の室内側壁部12の右端部に、左右方向にスライド可能に支持されている。以下、具体的に説明する。
上記室内側壁部12の右端部には、左右方向に延びてその右端に達する切欠12dが形成されている。この切欠12dの上下方向の寸法は、通気口12aとほぼ同程度である。上記枠部材40は、この切欠12dを塞ぐようにして室内側壁部12に取り付けられている。枠部材40の上下縁は、上記係合溝12b、12cに嵌められている。枠部材40には、左右に細長い操作口41が形成されている。
【0031】
上記操作部材30は、上記枠体40の操作口41より面積の大きく枠体40の裏側に配置される裏板部31と、この裏板部31の室内側の面から突出するつまみ部32と、裏板部31の下端から室外方向に向かって水平に延びる延出部33と、この延出部33からさらに室外方向に突出する係合凸部34とを有している。
【0032】
上記操作部材30は、そのつまみ部32を上記枠体40の操作口41に挿入することにより、左右方向にスライド可能に支持されている。上記係合凸部34が上記作動板20の
制御口21a(係合穴として機能する)に嵌め込まれることにより、操作部材30と作動板20が連結され、操作部材30のスライドに伴い、作動板20が一緒にスライドするようになっている。操作部材30は、作動板20が上記開き位置にある時に操作口41の右端41a(操作部材係止部)に当たり、作動板20が閉じ位置にある時に操作口41の左端41b(操作部材係止部)に当たる。これにより、作動板20を開き位置と閉じ位置で正確に位置決めすることができる。
【0033】
次に、本発明の特徴について詳述する。換気装置は
図4に示す形状記憶合金製のバネ60を備えている。このバネ60は、通常温度ではU字形をなしているが、火災時に熱を受けて異常高温(例えば80°以上)になると一直線になるように形状記憶処理されている。
【0034】
バネ60の一端61は取付部材65の一端近傍の固定孔65aに挿入されて固定端となっている。バネ60の他端62は取付部材65の他端近傍の切欠65b内に配置されているが、取付部材65に拘束されず、自由端となっている。後述するように、切欠65bの左側の端65xはバネ係止部として提供される。
取付部材65は、本体10の右端部において水平壁部14の隆起部14aにねじ等で固定されており、本体10の一部を構成している。この取付部材65の固定状態において、バネ60の固定端61と自由端62は、本体10の長手方向に離れている。また、バネ60は、室外側壁部13とほぼ平行をなして起立している。
【0035】
図5に示すように、上記作動板20の下側の副板部23の右端部には切欠23aが形成されている。この切欠23a内に、上記バネ60の自由端60bが入り込んでいる。後述するように、作動板20の切欠23aの左側の端23xはバネ受け部として提供される。
【0036】
上記構成をなす換気装置において、通常使用状態では、操作部材30により作動板20を左右方向にスライドさせて、通気路10xを開閉する。以下、簡単に説明する。
図5(A)に示すように、操作部材30を枠部材40の操作口41の右端41aに当たるまで右方向に移動させると、作動板20は開き位置に達し、作動板20の制御口21aと室外側壁部13の通気口13aとが一致し、通気路10xが開く。その結果、室内外の換気が行われる。
上記作動板20が開き位置にある時、
図5(A)、
図6(A)に示すように、バネ60の自由端62は取付部材65の切欠65bの右端に接するかその近傍に位置しており、作動板20のバネ受け部23xは、自由端62から若干離れているか、接していてもバネ60の力を受けない。
【0037】
図5(B)に示すように、操作部材30を枠部材40の操作口41の左端41bに当たるまで左方向に移動させると、作動板20は第1閉じ位置に達し、作動板20の制御口21aと室外側壁部13の通気口13aが不一致となる。その結果、通気路10xが閉じられ、室内外の空気が遮断される。
上記第1閉じ位置では、
図5(B)、
図6(B)に示すように、作動板20の切欠23aの左端すなわちバネ受け部23xがバネ60の自由端62からさらに離間する。
【0038】
本実施形態では、
図5(B)、
図6(B)に示すように、上記作動板20の開き位置から第1閉じ位置までの移動ストロークSaは、通気口13aのピッチより大きく、そのピッチの1.5倍である。したがって、作動板20が開き位置から第1閉じ位置まで移動する過程で、通気口13aは開、閉、開、を順に経て閉となる。
【0039】
上記作動板20が開き位置にある状態で火事が発生し、換気装置の環境温度が異常なレベル(例えば80°C)に達すると、
図5(C)、
図6(C)に示すように、バネ60が高温の記憶形状(真直形状)に戻ろうとし、U字形の曲率半径が増大し、自由端62が左方向に移動する。その結果、自由端62が作動板20のバネ受け部23xに当たり、バネ60の弾性により作動板20が左方向に移動する。やがてバネ60の自由端62が取付部材65のバネ係止部65xに当たるため、それ以上作動板20を左方向に移動できなくなり、作動板20は第2閉じ位置で停止する。この停止状態で、作動板20のバネ受け部23xがバネ係止部65xと一致する。
【0040】
図5(C)、
図6(C)に示すように、上記作動板20の開き位置から第2閉じ位置までの移動ストロークSbは、通気口13a,21aのピッチより小さく、そのピッチの0.5倍である。この第2閉じ位置でも第1閉じ位置と同様に、作動板20の制御口21aと室外側壁部13の通気口13aが不一致となり通気路10xが閉じ、室内外の空気が遮断される。その結果、延焼や、室内への新鮮な空気の流入による室内の燃焼激化を防止することができる。
【0041】
作動板20にはバイアスバネが連結されておらず、上記形状記憶合金製のバネ60は異常高温で一旦延びると元に復帰しないので、一時的に換気装置の環境温度が一時的に低下しても、上記作動板20は第2閉じ位置のまま維持される。その結果、環境温度が一時低下しても作動板20が開き位置に戻ることはなく、新鮮な空気が室内に流入して室内の燃焼激化を招くことはない。
【0042】
バネ60の自由端62は取付部材65のバネ係止部65xに係止され、作動板20のバネ係止部23xの移動経路に位置しているので、火災によって換気装置が破損していない場合には、操作部材30を操作して作動板20を開き位置に戻し、その過程でバネ受け部23xによって自由端62を押し戻すことにより、バネ60を初期形状に戻すことができ、自由端62を初期位置に戻すことができる。その結果、換気装置を再利用することができる。
【0043】
なお、低温時にバネ60が元の形状に戻るようにしてもよい。この場合、火災発生後に一時的に環境温度が低下しても自由端62が作動板20のバネ受け部23xから離れるだけであり、作動板20の閉じ状態を維持することができる。
【0044】
上記実施形態では、換気口13aのピッチを、一般的な換気装置より短くし(例えば10mm程度)、火災発生時にバネ60の力で作動板20を閉じる時の移動ストロークを短くした。これにより、比較的小型のバネ60で、作動板20の閉じ動作を実行することができる。手動操作の場合には、移動ストロークが短いとユーザーが開閉操作した時に確実に開き動作または閉じ動作をしたか不安に感じるので、バネ60による閉じ動作ストロークより長くした。
【0045】
なお、換気口13aのピッチを、一般的な換気装置と同程度にし、バネ60による閉じ動作ストロークと操作部材30による開閉動作時のストロークを、ともに上記ピッチの0.5倍としてもよい。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において先行する実施形態に対応する構成部については、同番号または類似番号を付してその詳細な説明を省略する。
図7〜
図11に示す第2実施形態では、作動板20’が本体10’に対してスライド可能かつ回動可能に支持されている。以下、詳述する。
【0047】
図7に示すように、本体10’は、2つのアルミ型材10h、10iと樹脂型材10jにより細長く形成され、中間部に内部空間10aを有し、上部にレール受け溝10bを有し、下部にガラス板受け溝10cを有している。
【0048】
通気路10xは、内部空間10aと、中間の型材10hの壁部12’(主壁部)の通気口12a’と、室外側型材10iの壁部13’の通気口13a’と、室内側型材10jの壁部12”の通気口12a”により構成されている。
【0049】
作動板20’は、細長く形成されて上記本体10内に収容され、その上縁部が本体10の壁部12’の上端部に、長手方向スライド可能かつ回動可能に支持されている。
図8、
図9に示すように、作動板20’は、室外側から見て左端部において操作部材30’に連結されている。操作部材30’は係合凸部39を有し、この係合凸部39が作動板20’の係合穴29に上下方向の遊びを有して入り込むことにより、操作部材30’と作動板20’は、長手方向に相対移動不能、かつ作動板20’の回動を許容するように連結されている。
【0050】
操作部材30’により作動板20’は開き位置と閉じ位置との間でスライド操作される。操作部材30のつまみ部32が枠部材40の操作口の両端に当たることにより上記作動板20’の開き位置と閉じ位置が定まる点は、第1実施形態と同様である。
【0051】
作動板20’は、上記スライドの過程で
図10に示すカム部材70により、上記壁部12’に対して接近、離間するように回動する。カム部材70は、例えば本体10’の長手方向に離れて2つ配置されて水平壁部14’に固定されている。カム部材70は各壁部12’に対して傾斜する傾斜面71,72を有している。他方、作動板20’は、その下縁に対をなす突起25,26を有している。
【0052】
室外側から見て操作部材30’が操作口の左端に当たっている時、
図7〜
図9、
図10(A)に示すように、作動板20’が壁部12’から離れており、換気口12a’は開かれている。
【0053】
操作部材30を操作口の右端に当たるまで操作することにより、作動板20’を
図10(A)に示す開き位置から右方向に閉じ位置に向かってスライドすると、突起25が傾斜面71に案内されることにより、
図8中想像線で示すとともに
図10(B)に示すように、作動板20’が壁部12’に接近して通気口12a’を塞ぐ。これとは逆に操作部材30’の操作により、作動板20’が
図10(B)に示す閉じ位置から、左方向に開き位置に向かってスライドすると、突起26が傾斜面72に案内されることにより、
図10(A)に示す開き位置に戻る。
【0054】
図11に示すように、本実施形態の換気装置は、第1実施形態と同様の形状記憶合金製のバネ60と、本体10’の一部を構成する取付部材80と、スライダ90とを備えている。
【0055】
取付部材80は、左側の低い第1部分81と、右側の高い第2部分82とを有している。第1部分81に形成された固定穴81aにバネ60の固定端61が挿入され、第2部分82に形成された左右方向に延びるスリット83に、バネ60の自由端62が挿入されている。スリット83の右側の端83xはバネ係止部として提供される。
取付部材80の第1部分81を本体10’の水平壁14’の室外側部分にねじで固定することにより、バネ60が本体10’に設置される。
【0056】
上記スライダ90は、室内外方向に細長いスライド部91と、このスライド部91の中間位置から起立する起立部92と、この起立部92の上縁から室内方向に向かって延びる支持板部93とを有している。上記スライド部91は、その室外側の部位を上記取付部材80の第2部分82と水平壁部14’との間の隙間に入り込ませた状態で、左右方向(本体10’の長手方向)にスライドするようになっている。このスライド部91の室外側の部位の側面91xは後述するバネ受け部として提供される。
【0057】
上記支持板部93には、室内外方向に延びる係合穴93aが形成されており、この係合穴93aには、
図9、
図10に示すように、作動板20’の下縁の左端近傍に形成された突起27が入り込んでいる。これにより、作動板20’とスライダ90は、長手方向相対移動不能かつ作動板20’の回動を許容するように連結されている。
【0058】
上記構成の換気装置において、通常使用状態では、
図10(A),(B)に示すように、バネ60の自由端62は、取付部材80のスリット83の左端またはその近傍に位置している。
上述したように、操作部材30の手動操作により、作動板20を左右方向にスライドさせ、カム部材70のカム作用を利用して通気口12a’(通気路10x)を開閉する。
【0059】
上記スライダ90は、上記作動板20’に追随して左右方向にスライドする。作動板20’が開き位置にある時には、
図9、
図10(A)に示すように、スライダ90のバネ受け部91xは、バネ60の自由端62に接するかその近傍に位置している。バネ60の力はスライダ90に作用していない。
作動板20’が閉じ位置にある時には、
図10(B)に示すように、スライダ90はバネ60の自由端62から離れる。
【0060】
上記作動板20’が開き位置にある状態で火事が発生し、換気装置の環境温度が異常なレベル(例えば80°C)に達すると、バネ60が高温の記憶形状(真直形状)に戻ろうとし、U字形の曲率半径が増大し、自由端62が右方向に移動する。バネ60の自由端62がスライダ90のバネ受け部91xを押すため、
図10(C)に示すように、スライダ90が右方向にスライドし、これに追随して作動板20’が右方向に移動する。その結果、操作部材30’の手動操作による閉じ動作と同様に、作動板20’はカム部材70の作用で回動して通気口12a’を閉じる。
【0061】
上記異常高温時に、バネ60の自由端62はスリット83のバネ係止部83xに係止される。なお、上記スライダ90のスライドに伴い、作動板20’がスライドするとともに、操作部材30’も枠部材40に対してスライドする。作動板20’の閉じ位置では、バネ60の自由端62がバネ係止部83xに係止されると同時に、操作部材30’が枠部材40の操作口の右端に係止される。
【0062】
作動板20’にはバイアスバネが連結されておらず、上記形状記憶合金製のバネ60は異常高温で一旦延びると元に復帰しないので、一時的に換気装置の環境温度が一時的に低下しても、上記作動板20’の閉じ位置はそのまま維持される。その結果、環境温度が一時低下した時に作動板20が開き位置に戻ることはなく、新鮮な空気が室内に流入して室内の燃焼が激化するような不都合を防止できる。
【0063】
上述したように、バネ60の自由端62がバネ係止部83xに係止され、スライダ90のバネ受け部91xの移動経路にあるため、火災によって換気装置が破損していない場合には、操作部材30’を操作して作動板20を開き位置に戻し、その過程でスライダ90のバネ受け部91xにより自由端62を押し戻すことにより、バネ60を初期形状に戻すことができ、自由端62を初期位置に戻すことができる。その結果、換気装置を再利用することができる。
【0064】
図12に示す第3実施形態では、作動板20’が本体10’に対してスライド不能で回動のみ可能に支持されている。その代わりに、カム部材70が本体10’の長手方向に移動するようになっている。以下、詳述する。
【0065】
本体10’には、その長手方向にスライド可能にスライダ100が支持されている。このスライダ100は、長手方向に沿って延びる第1スライダ部95と、この第1スライダ部95の左端に固定され室内外方向に延びる第2スライダ部90”とを有している。
第1スライダ部95にはカム部材70が固定されている。第2スライダ部90”の構成は第2実施形態のスライダ90と同様であるので、詳細な説明を省略する。ただし、第2実施形態のような係合穴93aは形成されていない。
【0066】
上記第2スライダ部90”には連結部96を介して操作部材30”が連結されている。
図12において操作部材30”は簡単な形状で示されている。操作部材30”の基本形状は第1、第2実施形態と同様であるが、作動板20’に連結されていない。
本実施形態でも、第2実施形態と同様の形状記憶合金製のバネ60と取付部材80が用いられる。カム部材70も第2実施形態と同様であるが、傾斜面71,72の向きが逆になっている。
【0067】
上記構成において、
図12(A)に示す開き状態から、操作部材30”を右方向に移動させると、スライダ100およびカム部材70が同方向にスライドする。この過程で、カム部材70の傾斜面71が突起25に当たり、突起25を傾斜面71に沿って案内することにより、
図12(B)に示すように、作動板20’が壁部12’に接近して通気口12a’を塞ぐ。
これとは逆に操作部材30”を左方向に移動させると、スライダ100およびカム部材70が同方向にスライドする。この過程で、カム部材70の傾斜面72が突起26に当たり、突起26を傾斜面72に沿って案内することにより、
図12(A)に示すように、作動板20’が壁部12’から離れて通気口12a’を開く。
【0068】
上記作動板20’が開き位置にある状態で火事が発生し、換気装置の環境温度が異常なレベルに達すると、バネ60の自由端62が右方向に移動し、この自由端62がスライダ100のバネ受け部91xを押すため、
図10(C)に示すように、スライダ100が右方向にスライドし、これに追随してカム部材70が右方向に移動する。その結果、操作部材30”の手動操作による閉じ動作と同様に、作動板20’はカム部材70の作用で回動して通気口12a’を閉じる。
他の作用は第2実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0069】
図13は、形状記憶合金製のバネ60の変形例を示す。このバネ60はU字形の中央に巻き部分65を有し、環境温度が異常レベルまで上昇した時の弾性力を高めている。
【0070】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。
上記実施形態の換気装置はサッシ戸の上框として機能するいわゆる框一体型であるが、框と別体をなし框に沿って設置される換気装置であってもよい。
さらに本発明は、内部空間を有さない換気装置にも適用することができる。
上記実施形態では、形状記憶合金製のバネは線状のU字形をなしていて、異常高温時に延びて作動板またはスライダを押すことにより閉じ動作を行ったが、異常高温時に縮んで(曲率半径が小さくなって)作動板またはスライダを引き寄せることにより、閉じ動作を行ってもよい。さらにバネ形状は、板バネ状であってもよいし、コイルスプリング形状であってもよい。
【0071】
上記実施形態において、本体内に発泡剤を収容してもよい。この発泡剤は火事の際に加熱発泡して本体の内部空間を満たすので、形状記憶合金製のバネによる作動板の閉じ動作と相まって、防炎効果を高めることができる。この発泡剤の発泡温度は、形状記憶合金製のバネの閉じ動作温度(例えば80°C)より高く、例えば200°Cとするのが好ましい。このようにすれば、火事の時にバネによる作動板の閉じ動作が実行された後で発泡剤が発泡するので、作動板の動作を妨げることがない。また、バネによる作動板の閉じ動作が実行されても環境温度が200°Cに達せず発泡剤が発泡しない場合には、換気装置の再利用が可能である。