特許第6491948号(P6491948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491948
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】電気車位置検知システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20190318BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20190318BHJP
   G01S 13/74 20060101ALI20190318BHJP
   G01S 13/72 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B61L25/02 G
   B60L3/00 N
   G01S13/74
   G01S13/72
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-98396(P2015-98396)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-210381(P2016-210381A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝公
(72)【発明者】
【氏名】出口 典孝
(72)【発明者】
【氏名】平野 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 誠
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−240660(JP,A)
【文献】 特開2012−66756(JP,A)
【文献】 特開昭48−51185(JP,A)
【文献】 特開2013−136261(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1374350(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
B60L 3/00
G01S 13/72
G01S 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する複数の第1タグと、
前記線路に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する複数の第2タグと、
前記線路上を走行する電気車に搭載され、前記複数の第1タグの識別子および前記複数の第2タグの識別子を読み取り可能なリーダとを備え、
前記複数の第1タグは、前記リーダが識別子を読み取ることができる範囲として第1範囲を有し、
前記複数の第2タグは、前記リーダが識別子を読み取ることができる範囲として前記第1範囲と異なる第2範囲を有し、
前記複数の第1タグの設置間隔は、前記複数の第2タグの設置間隔と異なる、電気車位置検知システム。
【請求項2】
前記第2範囲は、前記第1範囲よりも狭く、
前記複数の第2タグの設置間隔は、前記複数の第1タグの設置間隔よりも狭い、請求項1に記載の電気車位置検知システム。
【請求項3】
前記第1タグと前記第2タグとの設置個数の比率は前記線路に沿ってほぼ一定である、請求項1または請求項2に記載の電気車位置検知システム。
【請求項4】
前記電気車が停車する駅および該駅周辺において、前記第1タグおよび前記第2タグの両方が前記線路に沿って配置されており、
前記駅および該駅周辺以外において、前記第1タグが前記線路に沿って配置されているが、前記第2タグは配置されていない、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気車位置検知システム。
【請求項5】
前記第1タグの設置間隔は、前記第1範囲より狭く、
前記第2タグの設置間隔は、前記第2範囲以上である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電気車位置検知システム。
【請求項6】
前記第1および第2タグの識別子と前記第1および第2タグの設置位置と関係を示すタグ位置情報を格納する記憶部をさらに備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気車位置検知システム。
【請求項7】
前記線路に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する複数の第3タグをさらに備え、
前記複数の第3タグは、前記リーダが識別子を読み取ることができる範囲として前記第1および第2範囲よりも狭い第3範囲を有し
前記複数の第3タグの設置間隔は、前記複数の第1タグの設置間隔および前記複数の第2タグの設置間隔よりも狭い、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電気車位置検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、電気車位置検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車が安全に走行および停止するために、自動列車停止装置(ATS(Automatic Train Stop))、自動列車制御装置(ATC(Automatic Train Control))、自動運転装置(ATO(Automatic Train Operation))、定位置停止装置(TASC(Train Automatic Stop-position Controller))、列車制御システム(CBTC(Communication Based Train Control))等の保安装置または運転支援装置が開発されている。これらの保安装置または運転支援装置には、トランスポンダまたは軌道回路のような列車の位置を特定するための装置が必要となる。しかし、トランスポンダや軌道回路は、機器コストおよび設置コストが高いという問題があった。また、列車の位置を特定するためにGPS(Global Positioning System)を用いた場合、GPSの電波の届く範囲が限定され、かつ、位置精度の信頼性に問題がある。
【0003】
そこで、RFID(Radio Frequency Identifier)を用いることが考えられている。RFIDの信号処理時間を考慮すると、列車が高速走行している場合には、タグのID読取り可能範囲は広い方が好ましい。即ち、タグは高感度であることが好ましい。これにより、列車が高速走行していても、リーダがタグのIDを確実に読み取ることができる。
【0004】
一方、列車が駅で停止しようとするときに低速走行する場合、列車の位置を正確に検知する必要がある。しかし、タグのID読取り可能範囲が広いと、列車がその広い範囲内のどこに位置するのか不明となってしまう。従って、列車が低速走行している場合には、タグのID読取り可能範囲は狭い方が好ましい。即ち、タグは、低感度であることが好ましい。
【0005】
このように、RFIDを用いた場合、列車の速度によって、適切なID読取り可能範囲についてトレードオフの関係が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−149216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
列車の速度に依らず、列車の位置を正確かつ低コストで検知することができる電気車位置検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態による電気車位置検知システムは、複数の第1タグと、複数の第2タグと、リーダとを備える。複数の第1タグは、線路に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する。複数の第2タグは、線路に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する。リーダは、線路上を走行する電気車に搭載され、複数の第1タグの識別子および複数の第2タグの識別子を読み取り可能である。複数の第1タグは、リーダが識別子を読み取ることができる範囲として第1範囲を有する。複数の第2タグは、リーダが識別子を読み取ることができる範囲として第1範囲と異なる第2範囲を有する。複数の第1タグの設置間隔は、複数の第2タグの設置間隔と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態による電気車位置検知システムの構成の一例を示す図。
図2】電気車10の構成の一例を示す図。
図3】タグ位置情報の一例を示すテーブル。
図4】第2の実施形態による電気車位置検知システムの構成の一例を示す図。
図5】第3の実施形態による電気車位置検知システムの構成の一例を示す図。
図6】ID読み取り可能範囲を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による電気車位置検知システムの構成の一例を示す図である。第1の実施形態による電気車位置検知システムは、複数の第1タグT1と、複数の第2タグT2と、リーダ11、12(図2参照)と、データベース13(図2参照)とを備えている。複数の第1タグT1は、互いに同一の構成を有するタグである。複数の第2タグは、互いに同一の構成を有するタグである。一方、第1タグT1と第2タグT2とは互いに異なる構成を有する。
【0012】
第1および第2タグT1、T2は、例えば、RFIDのタグであり、アクティブタグまたはパッシブタグのいずれでもよい。ただし、システムのコストおよび設置コスト等を考慮すると、第1および第2タグT1、T2は、電源を必要としないパッシブタグであることが好ましい。
【0013】
複数の第1タグT1は、線路1に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する。複数の第2タグT2も、線路1に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する。即ち、複数の第1および第2タグT1、T2は、それぞれ固有の識別子を有しており、その識別子を読み取ることによってタグを特定することができる。
【0014】
複数の第1タグT1は、それぞれ、後述する電気車10に搭載されたリーダ11、12が識別子(以下、IDともいう)を読み取ることができる範囲(以下、ID読取り可能範囲ともいう)を有する。第1タグT1のID読取り可能範囲は、第1範囲D1である。例えば、第1範囲D1は、線路1に沿って約2メートルのID読取り可能範囲を有する。従って、リーダ11、12は、第1タグT1の中心から線路1に沿って前後約1メートルずつの範囲内で第1タグT1のIDを読み取ることができる。換言すると、リーダ11、12は、線路1に沿って第1タグT1の中心より約1メートル手前から、第1タグT1の中心より約1メートル先まで第1タグT1のIDを読み取ることが可能である。
【0015】
複数の第2タグT2も、それぞれID読取り可能範囲を有する。第2タグT2のID読取り可能範囲は、第2範囲D2である。第2範囲D2は、第1範囲D1と異なり、第1範囲D1よりも狭い。例えば、第2範囲D2は、線路1に沿って約0.5メートルのID読取り可能範囲を有する。従って、リーダ11、12は、第2タグT2の中心から線路1に沿って前後約0.25メートルずつの範囲内で第2タグT2のIDを読み取ることができる。換言すると、リーダ11、12は、線路1に沿って第2タグT2の中心より約0.25メートル手前から、第2タグT2の中心より約0.25メートル先まで第2タグT2のIDを読み取ることが可能である。
【0016】
第1および第2タグT1、T2は、電気車10が停車する駅および該駅周辺(以下、まとめて駅STともいう)において、線路1に沿って配置されている。第1タグT1は、第1設置間隔DST1で配置されており、第2タグT2は、第2設置間隔DST2で配置されている。即ち、隣接する2つの第1タグT1の中心間の間隔は第1設置間隔DST1であり、隣接する2つの第2タグT2の中心間の間隔は第2設置間隔DST2となる。
【0017】
第2設置間隔DST2は、第1設置間隔DST1と異なり、第1設置間隔DST1よりも狭い。従って、図1に示すように、複数の第2タグT2が、隣接する2つの第1タグT1間に配置され得る。本実施形態では、3つの第2タグT2が、隣接する2つの第1タグT1間に配置されている。
【0018】
例えば、第1設置間隔DST1は、約1.8メートルであり、第2設置間隔DST2は、約0.5メートルである。この場合、第1設置間隔DST1は、第1範囲D1よりも狭い。従って、図1に示すように、隣接する2つの第1タグT1のID読取り可能範囲は、その2つの第1タグT1の間において重複している。また、第2設置間隔DST2は、第2範囲D2とほぼ等しい。従って、図1に示すように、隣接する2つの第2タグT2のID読取り可能範囲は、その2つの第2タグT2の間においてほぼ接している。
【0019】
本実施形態では、第1タグT1に対して3つの第2タグT2が配置されている。即ち、第1タグT1と第2タグT2との設置個数の比率は1対3である。この比率は、駅STにおいて線路1に沿ってほぼ一定である。例えば、第2タグT2は、隣接する第1タグT1間においてほぼ均等に配置されていてもよい。
【0020】
さらに、第1タグT1と第2タグT2とは、線路1の延伸方向に対して垂直方向に互いにずれて配置されていてもよい。この場合、第2タグT2は、第1タグT1の設置位置を考慮すること無く、設置間隔DST2で線路1の全体にわたってほぼ均等に配置され得る。即ち、線路1の側方から見たときに、第2タグT2は、第1タグT1と重複した位置に設置されてもよい。
【0021】
以上のように、本実施形態による電気車位置検知システムは、駅STにおいて、第1および第2タグT1、T2の両方を備えている。ここで、電気車10は、駅STにおいて低速で走行または停止するだけでなく、駅STを高速で通過する場合もある。例えば、駅STにおいて電気車10が停止する場合、電気車10は低速で走行するので、リーダ11、12は、比較的感度の低い(ID読取り可能範囲の比較的狭い)第2タグT2のIDを読み取ることによって、電気車10の位置を正確に検知することができる。一方、電気車が駅STを高速で通過する場合、電気車10に設けられたリーダ11、12は、比較的感度の低い第2タグT2のIDを検知することが困難であり、第2タグT2では電気車の位置を正確に検知することができない。従って、本実施形態による電気車位置検知システムでは、駅STにおいて、第2タグT2だけでなく、第1タグT1も備えている。これにより、電気車10が駅STを高速で通過する場合、リーダ11、12は、比較的感度の高い(ID読取り可能範囲の比較的広い)第1タグT1のIDを読み取ることによって電気車10の位置を正確に検知することができる。このように、駅STにおいて、電気車位置検知システムは、第1および第2タグT1、T2の両方を備えることによって、電気車10が低速で走行しても、高速で走行しても、電気車10の位置を検知することができる。
【0022】
一方、駅およびその周辺以外において、第1タグT1は、線路1に沿って配置されているものの、第2タグT2は配置されていない。駅およびその周辺以外では、電気車10は高速で走行するため、低感度の第2タグT2の設置は不要であるからである。尚、第1タグT1は、駅STにおける第1タグT1と同様に第1設置間隔DST1ごとに配置されている。
【0023】
図2は、電気車10の構成の一例を示す図である。電気車10は、アンテナANT1、ANT2と、リーダ11、12と、データベース13と、比較部14、15と、演算部16と、制御部17とを備えている。
【0024】
2つのアンテナANT1、ANT2は、IDの読み取り用のアンテナであり、それぞれリーダ11、12に接続されている。アンテナANT1、ANT2は、ほぼ同等の利得特性を有する。
【0025】
リーダ11、12は、それぞれアンテナANT1、ANT2を介してタグT1またはT2からのIDを取得するように構成されている。リーダ11、12は、同じ構成を有する。
【0026】
データベース13は、第1および第2タグT1、T2のIDと第1および第2タグT1、T2の設置位置と関係を示すタグ位置情報を格納する。第1および第2タグT1、T2のIDは、各タグについて固有のものであり、第1および第2タグT1、T2のそれぞれの設置位置と一対一に対応する。従って、アンテナANT1、ANT2を介して検出されたIDとタグ位置情報とを照合すれば、電気車10の位置が判明する。また、データベース13は、さらにタグIDを駅STの番線情報等の他の情報と関連付けて格納してもよい。
【0027】
例えば、図3は、タグ位置情報の一例を示すテーブルである。タグ位置情報では、各タグのIDがそのタグの位置および駅STの番線情報と関連付けられている。IDは、数値、文字、記号等で表せばよい。タグの位置は、緯度および経度等で表せばよい。駅STの番線は、数値等で表せばよい。
【0028】
図2に示す比較部14、15は、それぞれリーダ11、12に接続されており、かつ、データベース13に接続されている。比較部14は、リーダ11からのIDをデータベース13からのタグ位置情報と比較する。これにより、比較部14は、IDとタグ位置情報とを照合し、そのIDを有するタグの位置を特定する。比較部15は、比較部14とは別に、リーダ12からのIDをデータベース13からのタグ位置情報と比較する。これにより、比較部15は、IDとタグ位置情報とを照合し、そのIDを有するタグの位置を特定する。
【0029】
演算部16は、比較部14での比較・照合結果と、比較部15での比較・照合結果とを論理演算する。例えば、演算部16は、AND演算回路であり、比較部14および15からの比較・照合結果の論理積を演算する。演算部16は、比較部14からの比較・照合結果と比較部15からの比較・照合結果とが一致する場合、制御部17にタグの位置情報(緯度、経度)を出力する。一方、演算部16は、比較部14からの比較・照合結果と比較部15からの比較・照合結果とが一致しない場合、制御部17にタグの位置(緯度、経度)を出力しないか、あるいは、エラー信号を出力する。
【0030】
制御部17は、演算部16からの位置情報に基づいて様々な制御信号を出力する。例えば、制御部17は、電気車10の速度情報、ブレーキ情報(ノッチ段数)等とともに演算部16からの位置情報を用いて、電気車10が停止していることを示す制御信号を出力することができる。このとき、電気車10は、電気車10の車両のドアの開扉を許可してもよい。あるいは、駅ST側において、ホームドアの開扉を許可してもよい。勿論、制御部17からの制御信号は、電気車10の他の動作制御に用いられてもよい。
【0031】
このように、複数のリーダ11、12が、それぞれ個別にアンテナANT1、ANT2を介してタグのIDを読み取り、演算部16がその論理積を演算することによって、タグIDおよびタグの位置の信頼性を高めることができる。
【0032】
次に、図1を再度参照し、第1タグT1および第2タグT2の配置について考察する。図1に示す配置では、第1タグT1の設置間隔DST1(例えば、1.8m)は、第1範囲D1(例えば、2メートル)未満である。従って、ID読取り可能範囲は、隣接する2つの第1タグT1において重複している。これにより、リーダ11、12は、走行中あるいは停車中において、いずれかの第1タグT1のIDを読み取ることができる。
【0033】
第2タグT2の設置間隔DST2(例えば、0.5m)は、第2範囲D2(例えば、0.5メートル)に等しい。ただし、第2タグT2は、第1タグT1の設置位置には設けられていない。従って、隣接する2つの第2タグT2のID読取り可能範囲は、隣接する2つの第1タグT1間において接するように設定されている。これにより、リーダ11、12は、隣接する2つの第1タグT1間において第2タグT2のIDを読み取ることができる。リーダ11、12は、第2タグT2のIDを読み取ることによって、リーダ11、12が隣接する2つの第1タグT1間のいずれの位置にいるかを検知することができる。このように、第2タグT2が第1タグT1間のスペースを補間することによって、リーダ11、12は、電気車10の位置を正確に検知することができる。
【0034】
また、第1タグT1は、駅STおよび駅ST以外の領域において第1設置間隔DST1で配置されているため、リーダ11、12は、駅STを通過する電気車や駅ST以外の領域を高速走行する電気車の位置も検知することができる。
【0035】
このように、本実施形態では、リーダ11、12は、駅STおよび駅ST以外の領域において高速走行する電気車の位置を正確に検知し、並びに、駅STにおいて低速走行する電気車の位置の両方を正確に検知することができる。
【0036】
電気車10が高速走行している場合には、リーダ11、12は、第1範囲D1(例えば、2メートル)の精度、即ち、±D1×1/2の誤差(例えば、±1メートルの誤差)で電気車の位置を特定することができる。一方、電気車10が低速走行している場合には、リーダ11、12は、第2範囲D2(例えば、0.5メートル)の精度、即ち、±D2×1/2の誤差(例えば、±0.25メートルの誤差)で電気車の位置を特定することができる。
【0037】
このように、本実施形態による電気車位置検知システムは、電気車の速度に依らず、電気車の位置を正確で検知することができる。また、本実施形態による電気車位置検知システムは、RFID(パッシブタグ等)を採用しているので、設置コストを比較的低く抑えることができる。
【0038】
リーダ11、12は、第1タグT1または第2タグT2の両方またはいずれか一方のIDを常に検出可能である。従って、本実施形態による電気車位置検知システムは、線路1を走行している期間中、上記のような精度で電気車10の位置を継続的に検知し続けることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態による電気車位置検知システムの構成の一例を示す図である。第2の実施形態では、第2タグT2の設置間隔DST2が第1の実施形態のそれよりも広い。例えば、第2タグT2の設置間隔DST2は、約1メートルである。第2の実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0040】
第2タグT2の設置間隔DST2を広く設定することよって、図4に示すように、隣接する2つの第2タグT2のID読み取り可能範囲は互いに離間している。従って、隣接する2つの第1タグT1間において、隣接する2つの第2タグT2のID読み取り可能範囲の間には、スペース領域SPが生じる。スペース領域SPは、隣接する2つの第1タグT1間において、第2タグT2のIDを読み取ることができない範囲である。
【0041】
リーダ11、12は、スペース領域SPにおいて第2タグT2のIDを読み取ることはできない。しかし、この場合、電気車位置検知システムは、リーダ11、12がスペース領域SPにあることが分かる。例えば、リーダ11、12が或る第2タグT2_1のIDを検知した後、該第2タグT2_1に隣接する第2タグT2_2のIDを検出しなかった場合、リーダ11、12は、その2つの第2タグT2_1とT2_2との間にあるスペース領域SPにあることがわかる。即ち、リーダ11、12は、最後に検出したIDに対応する第2タグT2_1とそれに隣接しまだIDを検出していない第2タグT2_2との間のスペース領域SPにあることが分かる。
【0042】
従って、第2の実施形態による電気車位置検知システムは、隣接する第2タグT2のID読み取り可能範囲間にスペース領域SPがあるにもかかわらず、第1の実施形態と同程度の精度で電気車10の位置を検知することができる。即ち、第2の実施形態のように第2タグT2の設置個数を低減させても、電気車10の位置の検知精度を維持することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態による電気車位置検知システムの構成の一例を示す図である。第3の実施形態による電気車位置検知システムは、駅ST内の線路1に沿って設置され、互いに異なるIDを有する複数の第3タグT3をさらに備えている。
【0044】
第3タグT3は、例えば、RFIDのタグであり、アクティブタグまたはパッシブタグのいずれでもよい。ただし、システムのコストおよび設置コスト等を考慮すると、第3タグT3も、第1および第2タグT1、T2と同様に、電源を必要としないパッシブタグであることが好ましい。
【0045】
複数の第3タグT3は、線路1に沿って設置され、互いに異なる識別子を有する。即ち、複数の第3タグT3は、それぞれ固有の識別子を有しており、その識別子を読み取ることによってタグを特定することができる。
【0046】
第3タグT3は、ID読み取り可能範囲として第3範囲D3を有する。第3範囲D3は、第1および第2範囲D1、D2よりも狭い範囲である。即ち、第3タグT3は、第1および第2タグT1、T2よりも低感度のタグである。例えば、第3タグT3は、線路1に沿って約0.25メートルのID読取り可能範囲を有する。従って、リーダ11、12は、第3タグT3の中心から線路1に沿って前後約0.125メートルずつの範囲内で第3タグT3のIDを読み取ることができる。換言すると、リーダ11、12は、線路1に沿って第3タグT3の中心より約0.125メートル手前から、第3タグT3の中心より約0.125メートル先まで第3タグT3のIDを読み取ることが可能である。
【0047】
第3タグT3は、駅STにおいて、線路1に沿って配置されている。第3タグT3は、第3設置間隔DST3で配置されている。即ち、隣接する2つの第3タグT3の中心間の間隔は第3設置間隔DST3である。第3設置間隔DST3は、第1タグT1の設置間隔DST1および第2タグT2の設置間隔DST2よりも狭い。図5に示すように、複数の第3タグT3が、隣接する2つの第2タグT2間に配置され得る。本実施形態では、2つの第3タグT3が、隣接する2つの第2タグT2間に配置されている。
【0048】
例えば、第1設置間隔DST1が約1.8メートルであり、第2設置間隔DST2が約0.5メートルである場合、第3設置間隔DST3は、例えば、約0.25メートルとして、その中心を第1および第2設置間隔DST1、DST2の中心にほぼ一致させるように設定してもよい。即ち、第3タグT3は、隣接する第2タグT2間においてほぼ均等に配置させていてもよい。
【0049】
さらに、第3タグT3は、第1および第2タグT1、T2と、線路1の延伸方向に対して垂直方向に互いにずれて配置されていてもよい。この場合、第3タグT3は、第1および第2タグT1、T2の設置位置を考慮すること無く、設置間隔DST3で線路1の全体にわたってほぼ均等に配置され得る。即ち、線路1の側方から見たときに、第3タグT3は、第1および第2タグT1、T2と重複した位置に設置されてもよい。
【0050】
このように、第3の実施形態による電気車位置検知システムは、ID読み取り可能範囲として第1および第2範囲よりも狭い第3範囲を有する第3タグT3を備える。第3タグT3の設置間隔DST3は、第1タグT1の設置間隔DST1および第2タグT2の設置間隔DSR2よりも狭い。これにより、電気車10が低速走行している場合に、リーダ11、12は、第3範囲D3(例えば、0.25メートル)の精度、即ち、±D3×1/2の誤差(例えば、±0.125メートルの誤差)で電気車の位置を特定することができる。その結果、第3の実施形態は、駅STにおいて低速走行する電気車の位置を、より正確に検知することができる。第3の実施形態のその他の構成は、第1または第2の実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第3の実施形態は、第1または第2の実施形態の効果も得ることができる。
【0051】
尚、電気車位置検知システムは、第3範囲D3よりもID読み取り可能範囲の狭いタグ(図示せず)をさらに備えてもよい。これにより、電気車位置検知システムは、電気車10の位置をさらに精度良く検知することができる。あるいは、電気車位置検知システムは、第1範囲D1よりもID読み取り可能範囲の広いタグをさらに備えてもよい。これにより、電気車位置検知システムは、さらに高速で走行する電気車10においてリーダ11、12がタグのIDを読み取ることができる。
【0052】
次に、ID読み取り可能範囲について説明する。
【0053】
図6は、ID読み取り可能範囲を示す図である。以下に説明するID読み取り可能範囲は、第1〜第3範囲D1〜D3のいずれでもよい。以下、第1タグT1のID読み取り可能範囲(第1範囲D1)について説明する。
【0054】
リーダ11、12の読み取り電力Vreadは、第1タグT1の中心をピークとしてほぼ山なりとなっており、第1タグT1の中心から離れるに従って小さくなっている。リーダ11、12が情報を読み取ることができる閾値電圧をVthとすると、リーダ11、12が確実に第1タグT1からIDを読み取ることができる範囲は、Vreadが確実にVthを超える第1範囲D1となる。
【0055】
第1範囲D1の範囲外においても電波の反射や屈折によって電力Vreadが閾値電圧Vthを超える場合がある。しかし、リーダ11、12が確実に第1タグT1からIDを読み取ることができる範囲は、第1範囲D1と設定されることが好ましい。尚、第1範囲D1は、電気車10の速度と関連するので、第1範囲D1は電気車10の速度も考慮して設定される。
【0056】
このように設定された第1範囲D1において、受信電圧Vrcvは、確実にハイレベルとなる。従って、電気車位置検知システムは、第1範囲D1において、受信信号Srcvを確実に受け取ることができる。このように、第1範囲D1は、受信信号Srcvを確実に受け取ることができる範囲に設定される。
【0057】
以上の実施形態では、リーダ11、12は、線路1においてタグT1〜T3のいずれかのIDを継続的に受信している。従って、電気車10の位置は、タグT1〜T3のいずれか精度で継続的に検知している。その結果、電気車位置検知システムは、信頼性の高い位置情報を提供することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
T1・・・第1タグ、T2・・・第2タグ、10・・・電気車、11、12・・・リーダ、13・・・データベース14、15・・・比較部、16・・・演算部、17・・・制御部、ANT1、ANT2・・・アンテナ、ST・・・駅
図1
図2
図3
図4
図5
図6