(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
射出成形用スクリュが回転可能に挿通され、かつ、中空円筒形状の内周面を有するシリンダが構成されたバレルの外面から前記シリンダの内周面に亘って貫通したベントポートと、
前記ベントポートの内側輪郭に沿った外側形状を有し、かつ、前記ベントポートに対して取り出し可能に組み込まれるベント部材と、
前記ベント部材に設けられた少なくとも1つの排気路構成部と、を備え、
前記排気路構成部は、前記ベント部材を前記ベントポートに組み込んだ状態において、前記バレルの外面から前記シリンダの内周面に亘って貫通することで、前記シリンダ内に発生した気体成分を排気するための中空の排気路として構成され、
前記ベントポートは、前記シリンダの内周面に対して内側から接する方向に沿って、かつ、前記射出成形用スクリュの回転方向とは逆方向に沿って延出し、
前記バレルの基端は、前記シリンダ内に原料を投入可能に構成され、
前記バレルの先端は、前記シリンダ内で可塑化された原料を射出可能に構成され、
前記射出成形用スクリュは、
投入された原料を定量的に移送する定量移送部と、
移送された原料を連続的に供給する供給部と、
供給された原料を可塑化する圧縮部と、
可塑化された原料を計量する計量部と、を有していると共に、
前記射出成形用スクリュには、前記バレルの基端から先端に向かって順に、前記定量移送部、前記供給部、前記圧縮部、前記計量部が並んでおり、
前記ベントポートは、前記供給部に対向した範囲の前記バレルに設けられている射出成形用ベント機構。
前記シリンダが重力方向に直交するように前記バレルを配置させた状態で、かつ、前記シリンダの内周面うち、重力方向に沿って最も高い位置を角度0°ないし角度360°と規定した場合において、
前記ベントポートは、角度0°〜135°の範囲、或いは、角度225°〜360°の範囲で、前記シリンダの内周面に対して内側から接するように配置されている請求項1に記載の射出成形用ベント機構。
前記排気路の延出方向と、前記シリンダの半径方向との成す角は、0°を含まずに、かつ、90°を含めて0°〜90°の範囲に設定されている請求項2に記載の射出成形用ベント機構。
前記排気路の延出方向は、前記ベントポートが前記シリンダの内周面に対して内側から接する方向で、かつ、前記射出成形用スクリュの回転方向とは逆方向に一致している請求項2に記載の射出成形用ベント機構。
前記ベントポートを設ける位置は、射出時に前記射出成形用スクリュを前記シリンダ内に沿って前記バレルの先端に移動させた状態において、前記供給部に対向した範囲の前記バレルのうち、前記バレルの基端に最も近接した部分に設定されている請求項1に記載の射出成形用ベント機構。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「一実施形態」
「射出成形システムの概要について」
図1〜
図3に示すように、射出成形システムは、射出成形機1と、吸引装置2と、エアパージ装置3と、ベント異常検知装置4と、を有している。なお、吸引装置2、エアパージ装置3、ベント異常検知装置4は、射出成形機1の構成要素となり得る。更に、射出成形機1は、射出成形用スクリュ5(以下、スクリュ5という)と、バレル6と、ベント機構7と、加熱装置8と、冷却装置9と、を備えている。
【0011】
バレル6には、中空円筒形状の内周面10sを有するシリンダ10が構成されている。シリンダ10は、バレル6に沿って真っ直ぐに延びている。バレル6の基端には、ホッパ11が接続された投入口12が設けられている。投入口12は、バレル6の外面6sからシリンダ10の内周面10sに亘って貫通して構成されている。投入口12は、後述する定量移送部5aに対向する位置に設けられている。
【0012】
かかる構成によれば、ホッパ11に供給された原料13は、投入口12を通って、シリンダ10内に投入可能となる。一方、バレル6の先端には、シリンダ10に連通されたノズル14が設けられている。ノズル14は、後述するスクリュ5によって、可塑化された原料を射出可能に構成されている。かかる構成によれば、可塑化原料は、ノズル14を通って、シリンダ10外(例えば、金型)に射出可能となる。
【0013】
シリンダ10には、スクリュ5が回転可能に挿通される。スクリュ5は、基端から先端に向かって真っ直ぐに延びている。スクリュ5の基端には、カップリング15が設けられている。カップリング15には、図示しない回転移動装置を連結させることができる。
かかる構成によれば、スクリュ5をシリンダ10に挿通させた状態において、回転移動装置によって、スクリュ5は、直線状の軸線16を中心に回転可能となると共に、軸線16に沿って移動可能となる。
【0014】
なお、スクリュ5をシリンダ10に挿通させた状態において、スクリュ5(後述するスクリュ本体33〜36)の基端は、バレル6の基端の側に位置付けられると共に、スクリュ5(スクリュ本体33〜36)の先端は、バレル6の先端の側に位置付けられる。この場合、スクリュ5の基端は、スクリュ本体33〜36の基端と一致すると共に、スクリュ5の先端は、スクリュ本体33〜36の先端と一致する。
【0015】
更に、スクリュ5(スクリュ本体33〜36)の回転方向(左回転、右回転)とは、スクリュ5及びバレル6の基端の側から見た場合の回転方向(左回転、右回転)である。同様に、フライトのねじれ方向(時計回り、逆時計回り)とは、スクリュ5及びバレル6の基端の側から見た場合のねじれ方向(時計回り、逆時計回り)である。
【0016】
スクリュ5は、定量移送部5aと、供給部5bと、圧縮部5cと、計量部5dと、を有している。スクリュ5には、バレル6(スクリュ5)の基端から先端に向かって順に、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dが並んでいる。ここで、定量移送部5aは、投入口12から投入された原料13を定量的に移送可能に構成されている。供給部5bは、移送された原料13を連続的に供給可能に構成されている。圧縮部5cは、供給された原料13を可塑化可能に構成されている。計量部5dは、可塑化された原料13を計量可能に構成されている。なお、スクリュ5の詳細は後述する。
【0017】
バレル6には、当該バレル6を加熱する加熱装置8が設けられている。加熱装置8としては、例えばヒータ17を適用することができる。ヒータ17は、バレル6の外面6sに沿って配置されている。ヒータ17を発熱させることで、バレル6を加熱することができる。
【0018】
加熱装置8(ヒータ17)は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dのうち、定量移送部5aを除いた範囲において、バレル6に設けてもよいし、或いは、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dのうち、少なくとも定量移送部5aの範囲において、バレル6に設けてもよい。図面では一例として、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dに対向するバレル6に加熱装置8(ヒータ17)が設けられている。
【0019】
この場合、定量移送部5aの範囲の加熱装置8(ヒータ17)については、その動作及び停止のタイミングを自由に設定できるようにしてもよい。これにより、計量部5dに搬送されるまでに、全ての原料13を満遍無く可塑化させるように、加熱装置8(ヒータ17)を制御することが可能となる。
【0020】
バレル6には、当該バレル6を冷却する冷却装置9が設けられている。冷却装置9としては、例えば冷却水通路18を適用することができる。冷却水通路18は、シリンダ10の周囲に配管されている。冷却水通路18には、冷却水を流すことができる。冷却水通路18に沿って冷却水を流すことで、バレル6を冷却することができる。なお、冷却装置9は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dのうち、少なくとも定量移送部5aの範囲において、バレル6に設けることができる。図面では一例として、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dに対向するバレル6に冷却装置9が設けられている。
【0021】
かかる構成によれば、ヒータ17を制御してバレル6を設定温度まで加熱する。これにより、シリンダ10内を加熱することができる。ここで、バレル6が設定温度を越えた場合、冷却水通路18に冷却水を流してバレル6を冷却する。これにより、シリンダ10内を設定温度まで冷却することができる。
【0022】
更に、バレル6には、ベント機構7が設けられている。ベント機構7は、シリンダ10内に発生した気体成分(例えば、ガス、空気、その他の揮発成分など)を、シリンダ10外に排気可能に構成されている。なお、ベント機構7の詳細は後述する。
【0023】
ベント機構7には、吸引装置2、エアパージ(air purge)装置3、ベント異常検知装置4が接続されている。ベント機構7には、共用配管19の一端が接続されている。共用配管19の他端は、分岐管20に接続されている。分岐管20には、2つの専用配管(第1配管21、第2配管22)が接続されている。吸引装置2及びベント異常検知装置4は、第1配管21に設けられている。エアパージ装置3は、第2配管22に設けられている。
【0024】
第1配管21において、吸引装置2は、真空ポンプ23と、第1流量調整バルブ24と、第1電磁切換バルブ25と、第1ドレンセパレータ26と、を有している。ベント異常検知装置4は、流量計27と、圧力計28と、を有している。なお、第1配管21には、特に図示しないが、モノマー凝固装置や脱臭装置を配置させてもよい。
【0025】
第2配管22において、エアパージ装置3は、エア源29と、第2ドレンセパレータ30と、第2流量調整バルブ31と、第2電磁切換バルブ32と、を有している。なお、第1及び第2ドレンセパレータ26,30は、例えば、水などの異物が真空ポンプ23及びエア源29に浸入するのを防止可能に構成されている。
【0026】
かかる構成において、シリンダ10内を負圧に引く場合、例えば、エア源29の動作を停止させる。第2電磁切換バルブ32を閉じる。第1電磁切換バルブ25を開く。第1流量調整バルブ24を調整する。真空ポンプ23を動作させる。このとき、真空ポンプ23の吸引力は、第1配管21から共用配管19を通ってベント機構7に伝達される。これにより、シリンダ10内を負圧に引くことができる。この結果、シリンダ10内に発生した気体成分をベント機構7から排気させることができる。
【0027】
この間、例えば、流量計27及び圧力計28によって検知された流量値及び圧力値を、リアルタイムで外部モニタ(図示しない)上に表示させて監視する。そして、これらの値に異常があったとき(即ち、予め設定した許容値を外れたとき)、その旨を報知(警告)する。このとき、真空ポンプ(吸引装置2)の動作を停止させてもよい。これにより、シリンダ10内に対する真空引きの安定性及び信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、エアパージを行う場合、例えば、真空ポンプ23の動作を停止させる。第1電磁切換バルブ25を閉じる。第2電磁切換バルブ32を開く。第2流量調整バルブ31を調整する。エア源29を動作させる。このとき、エア源29の加圧力は、第2配管22から共用配管19を通ってベント機構7に伝達される。これにより、ベント機構7(後述する排気路)の目詰まりを、空気圧によって除去することができる。ここで、エアパージは、真空引きを停止させるタイミングに同期して行うことができる。例えば、射出成形機1のノズル14から可塑化原料を射出した後、成形品を脱型する際のタイミングに同期してエアパージを行うことができる。
【0029】
なお、バレル6の基端において、スクリュ5の基端とシリンダ10の内周面10sとの間は、シール(密閉)してもよいし、或いは、シール(密閉)しなくてもよい。図面には一例として、シール(密閉)しない構成が示されている。シール(密閉)する場合には、例えば、スクリュ5の基端とシリンダ10の内周面10sとの隙間を覆うように、シール構造体(図示しない)を配置すればよい。ここで、シール(密閉)する場合、シリンダ10内に対する真空引きの際、上記したホッパ11から投入口12を通ってシリンダ10内に外気が流入する。一方、シール(密閉)しない場合、ホッパ11(投入口12)、及び、スクリュ5の基端とシリンダ10の内周面10sとの隙間を通ってシリンダ10内に外気が流入する。
【0030】
「射出成形システムの動作について」
ベント機構7を通してシリンダ10内を負圧に引いた状態において、スクリュ5を回転させる。このとき、スクリュ5は、その先端をノズル14に近接させた状態で回転する。ここで、ホッパ11に原料13(例えば、ペレット)を供給すると、当該原料13は、投入口12を通ってシリンダ10内に投入される。
【0031】
投入された原料13は、定量移送部5aによって定量的に移送される。移送された原料13は、供給部5bによって連続的に供給される。供給された原料13は、圧縮部5cによって可塑化される。即ち、圧縮部5cにおいて、当該原料13は、ヒータ17により加熱されつつ圧縮されることで、溶融された原料13(可塑化原料)となる。続いて、可塑化原料は、計量部5dを通ってスクリュ5の先端に搬送される。
【0032】
このとき、スクリュ5の先端に搬送された可塑化原料13sに押されて、スクリュ5が後退する(
図2参照)。この間、当該スクリュ5には、背圧(back pressure)がかけられている。そして、スクリュ5が計量完了位置まで後退したとき、スクリュ5の回転を停止させる。このとき、1個の成形品を作るのに必要な可塑化原料13sがシリンダ10内に蓄えられたことになる(
図2参照)。なお、計量完了位置は、射出成形の目的や用途に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。このとき、サックバック(suck back)が行われる。即ち、計量完了後、スクリュ5を若干後退させる。これにより、ノズル14からの原料漏れを防止することができる。
【0033】
次に、非回転状態のスクリュ5をノズル14に向けて前進させる。この結果、シリンダ10内に蓄えられた可塑化原料13sをシリンダ10外(例えば、金型)に射出させることができる。続いて、金型を冷却する。この後、脱型により目的の成形品を得ることができる。
なお、射出に際し、スクリュ5を、ノズル14に近接した位置(
図1参照)から計量完了位置(
図2参照)まで後退させる距離について、以下、「ストローク長」と称する。
【0034】
「スクリュ5について」
図1、
図2、
図5に示すように、スクリュ5において、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dは、それぞれ、スクリュ本体33,34,35,36、及び、フライト37,38,39,40によって構成されている。フライト37,38,39,40は、スクリュ本体33,34,35,36の外周面33s,34s,35s,36sに沿って螺旋状にねじれて構成されている。なお、フライト37,38,39,40の詳細は後述する。
【0035】
「スクリュ本体33〜36の構成」
スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、その基端に、上記した回転移動装置が連結されるように構成されている。スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、当該基端から先端に亘って、上記した直線状の軸線16に沿って真っ直ぐに延出している。スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、軸線16を中心に同心円状に構成されている。スクリュ本体33〜36(スクリュ5)の基端から先端に向かって順に、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dが並んで構成されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、回転移動装置によって、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、軸線16を中心に回転可能となると共に、軸線16に沿って移動可能となる。
【0036】
具体的に説明すると、スクリュ本体33〜36は、定量移送部5aにおける第1スクリュ本体33と、供給部5bにおける第2スクリュ本体34と、圧縮部5cにおける第3スクリュ本体35と、計量部5dにおける第4スクリュ本体36と、を備えて構成されている。第1スクリュ本体33、第2スクリュ本体34、及び、第4スクリュ本体36は、円筒形状の外周面33s,34s,36sを有している。第3スクリュ本体35は、第2スクリュ本体34から第4スクリュ本体36に向かって末広がり形状の外周面35sを有している。即ち、第3スクリュ本体35の外周面35sは、円錐台形状を有している。
【0037】
第2スクリュ本体34の差渡し寸法(例えば、直径)は、第4スクリュ本体36の差渡し寸法(例えば、直径)よりも小さく設定されている。換言すると、第4スクリュ本体36の差渡し寸法(直径)は、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)よりも大きく設定されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第4スクリュ本体36の外周面36sとシリンダ10の内周面10sとの隙間は、第2スクリュ本体34の外周面34sとシリンダ10の内周面10sとの隙間よりも狭くなっている。
【0038】
第3スクリュ本体35の差渡し寸法(例えば、直径)は、第2スクリュ本体34から第4スクリュ本体36に向かう従って、連続的に大きくなるように設定されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第3スクリュ本体35の外周面35sとシリンダ10の内周面10sとの隙間は、第2スクリュ本体34から第4スクリュ本体36に向かう従って、連続的に狭くなっている。
【0039】
第1スクリュ本体33の差渡し寸法(例えば、直径)33dは、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)34dよりも大きく設定されている。換言すると、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)34dは、第1スクリュ本体33の差渡し寸法(直径)33dよりも小さく設定されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第1スクリュ本体33の外周面33sとシリンダ10の内周面10sとの隙間は、第2スクリュ本体34の外周面34sとシリンダ10の内周面10sとの隙間よりも狭くなっている(
図5参照)。
【0040】
第1スクリュ本体33の軸線16方向に沿った長さは、スクリュ5が上記した「ストローク長」だけ後退しても、定量移送部5aが投入口12に対向する位置から外れないように設定されている。換言すると、第1スクリュ本体33の軸線16方向に沿った長さは、スクリュ5が上記した「ストローク長」だけ後退しても、投入口12が供給部5bに入り込まないように設定されている。
【0041】
ここで、スクリュ5の差渡し寸法(直径)は、フライト37,38,39,40の最外径を含んだ径寸法として規定されている。スクリュ5の差渡し寸法(直径)は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dを含んだ全体に亘って、一定(同一)の径寸法に設定されている。この場合、スクリュ5の差渡し寸法(直径)をDとすると、第1スクリュ本体33の軸線16方向に沿った長さは、上記した「ストローク長」を下限とし、かつ、当該「ストローク長」に「0.5D〜2Dの範囲の値」を加えた長さに設定されていることが好ましい。
【0042】
かかる構成によれば、スクリュ5をノズル14に近接した位置(
図1参照)から計量完了位置(
図2参照)まで後退させる間、投入口12は、常に、定量移送部5aに対向する範囲に位置付けられる。これにより、ホッパ11から投入口12を通ってシリンダ10内に投入された原料13は、その全てが漏れなく定量移送部5aに供給される。この結果、投入された原料13を、定量的かつ安定的に供給部5bに移送することができる。
【0043】
「フライト37,38,39,40の構成」
フライト37,38,39,40は、シリンダ10内に投入された原料13を、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dの順に、連続的に搬送するように構成されている。フライト37〜40は、互いに同一方向に向かって螺旋状にねじれている。フライト37〜40のねじれ方向としては、例えば、右ねじと同様に時計回りに設定してもよいし、或いは、左ねじと同様に逆時計回りに設定してもよい。
【0044】
図面には一例として、時計回りにねじられたフライト37〜40が示されている。この場合、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)の回転方向は、軸線16を中心に逆時計回り(左回転)に設定すればよい。なお、フライト37〜40が逆時計回りにねじられている場合、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)の回転方向は、軸線16を中心に時計回り(右回転)に設定すればよい。
【0045】
具体的に説明すると、定量移送部5aにおいて、第1スクリュ本体33の外周面33sには、螺旋状にねじれた第1フライト37が設けられている。第1フライト37のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第1フライト37は、第1スクリュ本体33(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第1フライト37のねじれピッチ37pは、一定である。
【0046】
供給部5bにおいて、第2スクリュ本体34の外周面34sには、螺旋状にねじれた第2フライト38が設けられている。第2フライト38のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第2フライト38は、第2スクリュ本体34(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第2フライト38のねじれピッチ38pは、一定である。
【0047】
圧縮部5cにおいて、第3スクリュ本体35の外周面35sには、螺旋状にねじれた第3フライト39が設けられている。第3フライト39のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第3フライト39は、第3スクリュ本体35(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第3フライト39のねじれピッチは、一定である。
【0048】
計量部5dにおいて、第4スクリュ本体36の外周面36sには、螺旋状にねじれた第4フライト40が設けられている。第4フライト40のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第4フライト40は、第4スクリュ本体36(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第4フライト40のねじれピッチは、一定である。
【0049】
上記した第1〜第4フライト37〜40のねじれピッチは、互いに同一に設定することが好ましい。この場合、供給部5bにおいて、第2フライト38のピッチ間に沿ってサブフライト38aを設けてもよい。これにより、供給部5bにおけるフライト38a,38のねじれピッチを、例えば、他のフライト37,39,40のねじれピッチの半分(1/2)に設定することができる(
図1、
図2、
図5参照)。
【0050】
更に、第1〜第4フライト37〜40は、軸線16に沿った方向のフライト幅を有している。フライト幅とは、第1〜第4フライト37〜40の軸線16方向に沿った厚さを指している。この場合、第1〜第4フライト37〜40のフライト幅(厚さ)を、互いに同一に設定してもよいし、互いに相違させてもよい。図面では一例として、第1フライト37のフライト幅(厚さ)37wは、第2フライト38のフライト幅(厚さ)38wよりも大きく設定されている(
図5参照)。
【0051】
「スクリュ5の効果について」
本実施形態のスクリュ5によれば、第1仕様として、第1スクリュ本体33の差渡し寸法(直径)33dを、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)34dよりも大きく設定する。又は、第2仕様として、第1フライト37のフライト幅(厚さ)37wを、第2フライト38のフライト幅(厚さ)38wよりも大きく設定する。そして、第3仕様として、上記した第1仕様と第2仕様の双方を同時に適用する。これにより、シリンダ10内に投入された原料13を、定量移送部5aによって、定量的かつ安定的に供給部5bに移送することができる。この結果、原料供給装置を別途備えることなく、一定量の原料に対する射出成形が可能となる。
【0052】
更に、本実施形態のスクリュ5によれば、原料供給装置としての機能を有する定量移送部5aを、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dと共に、1本のスクリュ5に一体化させることができる。この場合、当該スクリュ5を回転させるだけで、定量移送部5aにおいて、原料供給装置と同様の効果が発揮される。これにより、原料供給装置が不要となった分だけ、低消費電力化を実現することができると共に、射出成形機1回りのコンパクト化を実現することができる。
【0053】
「スクリュ5の他の構成について」
スクリュ本体33〜36は、互いに連続した一体物として構成してもよいし、複数に分割された組立体として構成してもよい。
図4には一例として、組立体に係るスクリュ本体33〜36が示されている。即ち、スクリュ本体33〜36は、軸線16を横断する方向に2分割された第1本体及び第2本体を有している。分割部分は、定量移送部5aと供給部5bと間に設定されている。
【0054】
第1本体は、定量移送部5a(第1スクリュ本体33、第1フライト37)を有して構成されている。第1本体の分割部分には、第1スクリュ本体33の端面33fが構成されている。一方、第2本体は、供給部5b(第2スクリュ本体34、第2フライト38)、圧縮部5c(第3スクリュ本体35、第3フライト39)、計量部5d(第4スクリュ本体36、第4フライト40)を有して構成されている。第2本体の分割部分には、第2スクリュ本体34の端面34fが構成されている。
【0055】
第1本体及び第2本体の分割部分には、第1本体及び第2本体を分割可能に連結させる連結機構が設けられている。即ち、第2本体の分割部分(端面34f)には、連結凸部41が設けられている。連結凸部41には、ストッパ42が設けられている。ストッパ42は、連結凸部41に対して突没可能に構成されている。一方、第1本体の分割部分(端面33f)には、連結凸部41が挿入可能な連結凹部43が設けられている。連結凹部43には、係合領域(図示しない)が設けられている。係合領域は、連結凸部41を連結凹部43に挿入したときに、ストッパ42が係合可能に構成されている。
【0056】
かかる構成によれば、第1本体の連結凸部41を第2本体の連結凹部43に挿入する。挿入の際に、ストッパ42は、連結凸部41の内部に引っ込む。連結凸部41が連結凹部43に完全に挿入されたとき、自身の付勢力(弾性力)によりストッパ42が係合領域に係合する。このとき、連結凸部41と連結凹部43とは、回り止めされた状態で連結される。これにより、第1本体及び第2本体は、回り止めされた状態で一体化される。この結果、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dが連立した1つのスクリュ5が構成される。
【0057】
また、第1本体と第2本体とを分割する場合には、外部からストッパ42を押圧し、連結凸部41内に引っ込める。これにより、連結凸部41を連結凹部43から引き抜くことができる。この結果、第1本体と第2本体とを分割することができる。
【0058】
このような分割タイプのスクリュ5によれば、第1本体(定量移送部5a)の構成のみを変更するだけで、例えば、定量移送部5aの第1フライト37のフライト幅(厚さ)37wを変更するだけで、定量移送部5aから供給部5bに定量的に移送すべき原料の送り量を自由に変更することができる。
【0059】
この場合、構成の異なる複数の第1本体(定量移送部5a)を用意しておくことが好ましい。これにより、目的や用途に応じて第1本体を選択して第2の本体と組み合わせるだけで、原料の送り量を簡単かつ短時間に変更することができる。更に、供給部5bの第2フライト38の構成とは別個独立して、第1本体(定量移送部5a)の設計や製造及び管理を行うことができる。これにより、第2本体に対する第1本体の組み合わせの自由度を向上させることができる。
【0060】
なお、特に図示しないが、定量移送部5aと供給部5bと間に分割部分を設定する代わりに、分割部分を供給部5bの範囲内に設定してもよい。更に、図面には一例として、2分割されたスクリュ5の構成が示されているが、これに代えて、スクリュ5を3つ以上に分割してもよい。
【0061】
また、上記した連結機構として、連結凸部41及び連結凹部43に代えて、例えば、雄ねじ部及び雌ねじ部を適用してもよい。雄ねじ部は、シャフト(図示しない)の外周に雄ねじが切られて構成されている。シャフトは、第2本体の分割部分(端面34f)に設けられている。雄ねじは、スクリュ5の回転方向とは逆方向に切られている。一方、雌ねじ部は、穴(図示しない)の内周に雌ねじが切られて構成されている。穴は、第1本体の分割部分(端面33f)に設けられている。雌ねじは、スクリュ5の回転方向とは逆方向に切られている。
【0062】
このような連結機構において、雄ねじ部を雌ねじ部にねじ込むことで、第1本体及び第2本体を回り止めさせた状態で一体化させることができる。この結果、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dが連立した1つのスクリュ5を構成することができる。かかる構成によれば、スクリュ5を回転させた際に、連結機構に負荷が掛かった場合でも、逆ねじ構造の雄ねじ部と雌ねじ部とが相互に緩むことはない。なお、第1本体と第2本体とを分割させる場合、雄ねじ部と雌ねじ部とを相対的に逆回転させればよい。
【0063】
「ベント機構7の配置について」
図1〜
図3に示すように、ベント機構7の配置は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dに対向するバレル6のうち、供給部5bに対向した範囲のバレル6に設けるように設定することが好ましい。具体的には、ベント機構7を設ける位置は、射出時にスクリュ5を軸線16に沿ってバレル6の先端に移動させた状態において、供給部5bに対向した範囲のバレル6のうち、バレル6の基端に最も近接した部分に設定することが好ましい。なお、供給部5bのうち、バレル6の先端寄りの部分は、原料13の可塑化が始まっている。このため、当該部分にベント機構7を設けた場合、ベントアップ現象を生じ易い。
【0064】
ここで、上記したように、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第1スクリュ本体33の外周面33sとシリンダ10の内周面10sとの隙間(以下、第1隙間という)は、第2スクリュ本体34の外周面34sとシリンダ10の内周面10sとの隙間(以下、第2隙間という)よりも狭くなっている。換言すると、供給部5bの第2隙間は、定量移送部5aの第1隙間よりも広くなっている。
【0065】
かかる構成によれば、定量移送部5aによって第1隙間を定量的に移送された原料13は、供給部5bに導入される際に、第1隙間よりも広い第2隙間に広がっていく。このとき、原料13は、供給部5bの第2隙間の全体に亘って分散する。換言すると、当該第2隙間には、原料13の存在しない空間的な隙間が形成される。この場合、少なくともベント機構7が設けられた位置に対向するバレル6のシリンダ10内に、原料13の存在しない空間的な隙間が構成される。これにより、ベントアップ現象を発生させること無く、シリンダ10内に発生した気体成分のみを、ベント機構7を通して、効率よく、シリンダ10外に排気させることができる。この結果、排気性能を長期に亘って一定に維持することができる。
【0066】
「ベント機構7の内部構成について」
図1、
図6〜
図10に示すように、ベント機構7は、カバー部材44によって覆われている。カバー部材44には、通路45が貫通して構成されている。通路45には、上記した共用配管19の一端が接続されている。この場合、共用配管19の一端を、後述する支持部材50に形成された通路54にダイレクトに接続させてもよい。更に、ベント機構7は、ベントポート47と、ベント部材48と、排気路構成部49と、を備えている。
【0067】
「ベントポート47の構成」
ベントポート47は、上記したベント機構7の配置に対応して、供給部5bに対向した範囲のバレル6に設けられている。具体的には、ベントポート47を設ける位置は、射出時にスクリュ5をシリンダ10内に沿ってバレル6の先端に移動させた状態において、供給部5bに対向した範囲のバレル6のうち、バレル6の基端に最も近接した部分に設定されている。
【0068】
ベントポート47は、バレル6の外面6sからシリンダ10の内周面10sに亘って貫通して構成されている。ベントポート47の内側輪郭としては、例えば、矩形(四角形、長方形、台形など)、長楕円形、三角形、円形などを適用することができる。図面には一例として、長方形の内側輪郭を有するベントポート47が示されている。
【0069】
ベントポート47は、シリンダ10の内周面10sに対して、内側から接する方向に沿って平行に延出している。具体的には、シリンダ10が重力方向46gに直交するようにバレル6を配置させる。かかる状態において、シリンダ10の内周面10sうち、重力方向46gに沿って最も高い位置を角度0°ないし角度360°と規定する。この場合、ベントポート47は、角度0°〜135°の範囲、或いは、角度225°〜360°の範囲で、シリンダ10の内周面10sに対して内側から接するように配置されている(
図19参照)。
【0070】
ここで、ベントポート47は、スクリュ5の回転方向とは逆方向に沿って延出するように構成することが好ましい。従って、
図19に示された複数のベントポート47のうち、角度225°〜360°の範囲に例示された2つのベントポート47は、スクリュ5の回転方向と同方向に沿って延出している。よって、これらのベントポート47は、ベント機構7の内部構成には不適格なものとなる。ただし、これら2つのベントポート47の向きを、スクリュ5の回転方向とは逆方向に反転させれば、ベント機構7の内部構成として適格なものとなる。なお、
図19には、ベントポート47に組み込まれたベント部材48の配置が示されている。
【0071】
「ベント部材48の構成」
ベント部材48は、ベントポート47の内側輪郭に沿った外側形状を有している。上記した長方形の内部輪郭を有するベントポート47の場合、ベント部材48は、長方形の外側形状を有している。ベント部材48は、互いに対向する一端面48aと他端面48bとを有している。ベント部材48の一端面48aは、平坦面形状を有している。ベント部材48の他端面48bは、シリンダ10の内周面10sの曲率に一致した曲面形状を有している。
【0072】
ベント部材48は、ベントポート47に対して取り出し可能に組み込まれるように構成されている。かかる構成によれば、ベント部材48をベントポート47に組み込んだ状態において、ベント部材48の一端面48aは、支持部材50によって支持される。支持部材50は、例えばボルトやネジなどの固定部材51によってバレル6の外面6sに固定される。このとき、ベント部材48の一端面48aは、バレル6の外面6sと同一平面上に位置付けられる。同時に、ベント部材48の他端面48bは、シリンダ10の内周面10sと同一曲面上に位置付けられる。
【0073】
この場合、ベントポート47とベント部材48の双方に、位置合わせ用のマーク52を付加することが好ましい。図面では一例として、ベントポート47近傍の外面6sと、ベント部材48の一端面48aとにマーク52が付加されている。かかる構成によれば、双方のマーク52を対向させるように、ベント部材48をベントポート47に組み込む。これにより、簡単かつ正確に、ベント部材48の他端面48bを、シリンダ10の内周面10sと同一曲面上に位置付けることができる。この結果、ベント部材48と、シリンダ10内に挿通されたスクリュ5とが干渉するのを防止することができる。
【0074】
なお、ベントポート47に対するベント部材48の組込み方向を間違えた場合、ベント部材48の他端面48bがシリンダ10の内周面10sから突出する。これにより、当該突出したベント部材48と、シリンダ10内に挿通されたスクリュ5とが干渉する。この結果、ベント部材48及びスクリュ5の一方或いは双方が損傷してしまう。
【0075】
「排気路構成部49の構成」
排気路構成部49は、ベント部材48に少なくとも1つ設けられている。図面には一例として、複数の排気路構成部49を有するベント部材48が示されている。排気路構成部49は、ベント部材48をベントポート47に組み込んだ状態において、バレル6の外面6sからシリンダ10の内周面10sに亘って貫通して構成される。このとき、排気路構成部49は、シリンダ10内に発生した気体成分を排気するための中空の排気路53として構成される。かかる構成において、排気路53は、上記した支持部材50に形成された通路54を通って外部に連通可能となる。
【0076】
排気路構成部49は、ベント部材48の側面或いは内部に設けることができる。この場合、ベント部材48の側面を一部窪ませることで、当該ベント部材48の側面に排気路構成部49を設けることができる。側面を一部窪ませる方法としては、例えば、当該側面を切り欠いたり、削り取るなどの方法を適用することができる。また、ベント部材48を貫通させて孔を形成することで、当該ベント部材48の内部に排気路構成部49を設けることができる。孔を形成する方法としては、例えば、ドリルでベント部材48を穿孔する方法を適用することができる。
【0077】
図6には、ベント部材48の一方側面に沿って構成された排気路構成部49が示されている。一方側面は、シリンダ10(内周面10s)の接平面に沿って配置されている。
図8には、上記した一方側面に対向する他方側面に沿って構成された排気路構成部49が示されている。
図7には、ベント部材48の内部を貫通して構成された排気路構成部49が示されている。
【0078】
かかる構成において、ベント部材48の側面に設けられた排気路構成部49によれば、ベント部材48をベントポート47に組み込んだ状態において、ベントポート47の内側面と排気路構成部49とで囲まれた範囲に沿って、中空の排気路53を構成することができる。なお、ベント部材48の内部の排気路構成部49は、そのまま中空の排気路53として構成することができる。
【0079】
この場合、排気路53としての中空孔の差渡し寸法(即ち、孔径)は、1.0〜2.0mmの範囲に設定することが好ましい。これにより、排気路53の孔径を、シリンダ10内の原料13よりも小さく設定することができる。この結果、ベント機構7を通してシリンダ10内を負圧に引く際に、シリンダ10内に発生した気体成分と共に、原料13が排気されるのを防止することができる。なお、排気路53の個数は、使用目的に応じた排気量に基づいて設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0080】
「排気路53の延出方向」
排気路53の延出方向と、シリンダ10の半径方向との成す角は、0°を含まずに、かつ、90°を含めて0°〜90°の範囲に設定することが好ましい。この場合、排気路53の延出方向は、重力方向46gに直交する方向、或いは、重力方向46gとは逆方向に設定することが好ましい。最も好ましい仕様として、排気路53の延出方向は、ベントポート47がシリンダ10の内周面10sに対して内側から接する方向で、かつ、スクリュ5の回転方向5Rとは逆方向に一致させることが好ましい。
図6〜
図8には、かかる最も好ましい仕様が示されている。
【0081】
「ベント機構7の内部構成に伴う効果について」
上記したベント機構7によれば、スクリュ5の回転中に、その回転運動を、排気路53に入り込んだ原料13を当該排気路53から掻き出す方向に働かせることができる。これにより、シリンダ10内が負圧に引かれている間に、原料13によって排気路53が目詰まりするのを防止することができる。この結果、排気性能を長期に亘って一定に維持することができる。
【0082】
更に、上記したベント機構7によれば、排気路53の差渡し寸法(孔径)を、シリンダ10内の原料13よりも小さく設定することができる。この結果、ベント機構7を通してシリンダ10内を負圧に引く際に、シリンダ10内に発生した気体成分と共に、原料13が排気されるのを防止することができる。
【0083】
更に、上記したベント機構7によれば、ベント部材48に排気路構成部49を設けたことで、排気路53の清掃やメンテナンスを容易に行うことができる。即ち、ベントポート47からベント部材47を取り出すことで、排気路構成部49を外部に露出させることができる。露出した部分の清掃やメンテナンスは、極めて容易に行うことができる。
【0084】
更に、上記したベント機構7によれば、ベント部材48に排気路構成部49を設けたことで、当該ベント部材48をベントポート47に組み込むだけで、簡単かつ短時間に中空の排気路53を構成することができる。かかる構成において、排気路53以外の部分は、ベント部材48とベントポート47との嵌め合いにより、密閉が保たれる。これにより、シリンダ10内を効率よく負圧に引くことができる。
【0085】
「第1の変形例に係るベント機構7について」
上記した一実施形態において、ベント部材48をベントポート47に挿入する構成を適用したが、これに代えて、
図11〜
図13に示すように、ベント部材48を、バレル6と固定ブロック55との間に挟み込むように構成してもよい。この場合、固定ブロック55は、バレル6の一部を切り取って構成することができる。図面には一例として、排気路構成部49と同寸法の固定ブロック55が示されている。
【0086】
第1の変形例によれば、バレル6(シリンダ10の内周面10s)に対するベント部材48の向きや配置を確認しつつ、ベント部材48をベントポート47に組み込むことができる。なお、ベントポート47は、固定ブロック55とバレル6との間に構成することができる。その他の構成及び効果は、上記した一実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0087】
「第2の変形例に係るベント機構7について」
上記した一実施形態において、ベント部材48(他端面48b)の先端を、シリンダ10の内周面10sの曲率に沿って先細り形状にした構成を適用したが、これに代えて、
図14に示すように、ベント部材48の他端面48bの先端を途中でカットする構成にしてもよい。
【0088】
第2の変形例によれば、ベント部材48において、脆弱な部分を少なくすることができる。これにより、ベント部材48の耐久性を向上させることができる。その他の構成及び効果は、上記した一実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0089】
「第3の変形例に係るベント機構7について」
上記した一実施形態において、ベント部材48(他端面48b)の先端を、シリンダ10の内周面10sの曲率に沿って先細り形状にした構成を適用したが、これに代えて、
図15〜
図16に示すように、ベント部材48を直方体形状に構成してもよい。
【0090】
第3の変形例によれば、ベント部材48の他端面48bは、その全体がシリンダ10の内周面10sから突出することはない。これにより、ベントポート47に対するベント部材48の組込み方向の制限を無くすることができる。その他の構成及び効果は、上記した一実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0091】
「第4の変形例に係るベント機構7について」
上記した一実施形態において、ベント部材48の一方側面の排気路構成部49によって構成された排気路53について説明したが、これに代えて、
図17に示すように、ベント部材48の両側面に沿って排気路構成部49を構成してもよい。
【0092】
第4の変形例によれば、ベント部材48をベントポート47に組み込むことで、当該ベント部材48の両側に複数の排気路53を並列させることができる。これにより、排気性能を向上させることができる。その他の構成及び効果は、上記した一実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0093】
「第5の変形例に係るベント機構7について」
上記した一実施形態において、長方形の輪郭を有するベントポート47及びベント部材48を適用したが、これに代えて、
図18に示すように、円形の輪郭を有するベントポート47及びベント部材48を適用してもよい。この場合、ベントポート47は、中空の円筒形状を有している。ベント部材48は、ベントポート47に挿入可能な円筒形状を有している。排気路構成部49は、ベント部材48の周面に沿って間隔を存して設けられている。
【0094】
第5の変形例によれば、ベント部材48をベントポート47に対して360°どの方向からでも挿入することができる。これにより、周方向に沿って複数の排気路を構成することができる。その他の構成及び効果は、上記した一実施形態と同様であるため、その説明は省略する。