(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0016】
(1)人工マッチ型miRNA
本発明の人工マッチ型miRNAは、前述のように、
X領域とY領域とを有する一本鎖核酸であり、
前記X領域の3’末端と前記Y領域の5’末端とが、ピロリジン骨格およびピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造を介して連結し、
前記X領域は、hsa−miR−34の成熟miRNAのガイド鎖配列を含み、
前記Y領域は、前記X領域と完全に相補な配列を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の人工マッチ型miRNAは、hsa−miR−34の標的遺伝子の発現を抑制できる。発現抑制とは、例えば、前記標的遺伝子の翻訳の抑制、すなわち、前記標的遺伝子がコードするタンパク質の翻訳の抑制を意味し、より詳細には、前記標的遺伝子のmRNAからの前記タンパク質の翻訳の抑制を意味する。前記標的遺伝子の発現抑制は、例えば、前記標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、前記転写産物の活性の減少、前記標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または前記翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。前記タンパク質は、例えば、成熟タンパク質、または、プロセシングもしくは翻訳後修飾を受ける前の前駆体タンパク質があげられる。
【0018】
本発明の人工マッチ型miRNAは、一本鎖の核酸分子であるため、例えば、成熟miRNAのように二本の一本鎖をアニーリングする必要もなく、安価に製造できる。さらに、本発明の人工マッチ型miRNAは、一本鎖の核酸分子であるため、例えば、自己免疫に関与するTLR3、RIG-I、MDA5等に認識されることも回避できる。
【0019】
本発明の人工マッチ型miRNAにおける前記X領域および前記Y領域の配置関係の概略を、
図1に示す。なお、
図1は、概略であって、例えば、各領域の長さ、形状等は、制限されない。本発明の人工マッチ型miRNAは、
図1に示すように、5’側に前記X領域が配置され、3’側に前記Y領域が配置され、前記X領域の3’末端と前記Y領域の5’末端とが、ピロリジン骨格およびピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド構造(図において「P」で表す)を介して連結している。
【0020】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記Y領域は、前記X領域と完全に相補な配列を含むため、前記X領域と前記Y領域とは、例えば、分子内アニーリングする。分子内アニーリングとは、例えば、自己アニーリングともいう。本発明の人工マッチ型miRNAは、前記分子内アニーリングした領域において、二本鎖が形成されるともいう。
【0021】
本発明の人工マッチ型miRNAは、その5’末端と3’末端とが未連結である、線状一本鎖核酸分子ということもできる。本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、両末端の未結合の維持のため、5’末端が非リン酸基であることが好ましい。
【0022】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記X領域は、前述のように、hsa−miR−34の成熟miRNAのガイド鎖配列を含む。成熟miRNAのガイド鎖配列は、例えば、各種データベースに登録されている(例えば、http://www.mirbase.org/等)。したがって、例えば、これらの公知の成熟miRNAの情報に基づいて、前記X領域を設定できる。前記成熟miRNAのガイド鎖とは、RNA-induced silencing complex(RISC)のArgonaute(Ago)タンパク質に取り込まれ、ターゲットのmRNAに結合する鎖である。
【0023】
前記X領域は、例えば、前記ガイド鎖配列のみからなってもよいし、さらに付加配列を有してもよい。後者の場合、前記X領域は、例えば、前記ガイド鎖配列と前記付加配列とからなり、前記付加配列は、例えば、前記ガイド鎖配列の3’末端に連結している。
【0024】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記Y領域は、前記X領域と前記Y領域とをアライメントした際、前記X領域と完全に相補な配列を含む。前記Y領域は、例えば、前記X領域と完全に相補的な配列のみからなってもよいし、前記相補的な配列の他に、さらにオーバーハングを有してもよい。すなわち、本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、前記Y領域と前記X領域とをアライメントした際に、前記Y領域が、3’末端にオーバーハングを有してもよい。ここで、前記Y領域のオーバーハングとは、例えば、前記Y領域と前記X領域とをアライメントした場合に、前記Y領域が前記X領域よりも過剰に有する末端の塩基である。オーバーハングの長さ(O)は、例えば、下記式で表すことができる。
オーバーハングの長さ(O)=[Y領域の全長の塩基数(Y)]−[X領域の全長の塩基数(X)]
【0025】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、各領域の長さは、特に制限されない。以下に、条件を例示するが、本発明の人工マッチ型miRNAは、これらの記載には限定されない。また、本発明において、塩基の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0026】
前記X領域において、前記ガイド鎖配列の長さは、特に制限されず、例えば、報告されている成熟miRNAにおけるガイド鎖配列の長さが例示できる。具体例として、下限が、例えば、19塩基長、20塩基長であり、上限が、例えば、25塩基長、24塩基長であり、範囲が、例えば、19〜25塩基長、20〜24塩基長である。
【0027】
前記X領域が前記付加配列を有する場合、前記付加配列の長さは、特に制限されず、下限が、例えば、0塩基長、1塩基長、2塩基長であり、上限が、例えば、5塩基長、4塩基長、3塩基長であり、範囲が、例えば、0〜5塩基長、1〜4塩基長、2〜3塩基長である。
【0028】
前記X領域の長さは、特に制限されず、下限が、例えば、19塩基長、21塩基長、23塩基長であり、上限が、例えば、33塩基長、30塩基長、28塩基長、26塩基長であり、範囲が、例えば、19〜33塩基長、19〜30塩基長、21〜28塩基長、23〜26塩基長である。
【0029】
前記Y領域が前記オーバーハングを有する場合、前記オーバーハングの長さは、特に制限されず、下限が、例えば、0塩基長、1塩基長であり、上限が、例えば、4塩基長、3塩基長であり、範囲が、例えば、0〜4塩基長、1〜3塩基長、2塩基長である。
【0030】
前記オーバーハングの配列は、特に制限されず、例えば、3’側から、UU、CU、GC、UA、AA、CC、UG、CG、AU、TT等が例示できる。前記オーバーハングは、例えば、TTとすることで、RNA分解酵素に対する耐性を付加できる。
【0031】
前記Y領域の長さは、特に制限されず、下限が、例えば、19塩基長、21塩基長、23塩基長であり、上限が、例えば、35塩基長、32塩基長、30塩基長、28塩基長であり、範囲が、例えば、19〜35塩基長、21〜35塩基長、19〜32塩基長、21〜30塩基長、23〜28塩基長である。
【0032】
本発明の人工マッチ型miRNAの全長(T)は、特に制限されず、下限が、例えば、38塩基長、42塩基長、46塩基長であり、上限が、例えば、62塩基長、58塩基長、54塩基長であり、範囲が、例えば、38〜62塩基長、42〜58塩基長、46〜54塩基長である。
【0033】
前記成熟miRNAとしては、例えば、hsa−miR−34としてhsa−miR−34a(配列番号1)の成熟miRNAでよい。
hsa−miR−34a(配列番号1)
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU
【0034】
miR−34aのガイド鎖は、例えば、AXL、MET、CDK4、CDK6、SIRT1、CCND1、SIRT1、BCL−2等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、がん(肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等)等の疾患を予防または治療できる。前記成熟miRNAが、hsa−miR−34aの場合、前記人工マッチ型miRNAのポリヌクレオチドは、例えば、配列番号5
(X領域)および
24(Y領域)、配列番号13
(X領域)および26(Y領域)、配列番号14(X領域)および27(Y領域)、配列番号15(X領域)および28(Y領域)、配列番号16(X領域)および29(Y領域)、配列番号17(X領域)および30(Y領域)、配列番号18(X領域)および31(Y領域)、配列番号19(X領域)および32(Y領域)、配列番号20(X領域)および33(Y領域)、配列番号21(X領域)および34(Y領域)、配列番号22(X領域)および35(Y領域)、ならびに配列番号23
(X領域)および36(Y領域)からなる群から選択された少なくとも一つの塩基配列があげられる。
【0035】
本発明の人工マッチ型miRNAの構成単位は、特に制限されず、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基が好ましい。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基および修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0036】
本発明の人工マッチ型miRNAが、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1個もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基であってもよい。本発明の人工マッチ型miRNAが、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。
【0037】
前記ヌクレオチド残基は、例えば、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)を有する。
【0038】
前記非修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一または実質的に同一であり、具体的には、例えば、人体において天然に存在するものと同一または実質的に同一である。
【0039】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。
【0040】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチドの代替物の残基であってもよい。前記代替物は、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられる。
【0041】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0042】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、下記式(I)で表わされる。
【化1】
【0043】
前記式(I)中、例えば、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、H
2、O、SまたはNHであり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSであり;
R
3は、環A上のC−3、C−4、C−5またはC−6に結合する水素原子または置換基であり、
L
1は、n個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されても置換されていなくてもよく、または、
L
1は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
L
2は、m個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されても置換れていなくてもよく、または、
L
2は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、置換基または保護基であり;
lは、1または2であり;
mは、0〜30の範囲の整数であり;
nは、0〜30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC−2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよく、
前記X領域および前記Y領域は、それぞれ、−OR
1−または−OR
2−を介して、前記非ヌクレオチド構造に結合し、
ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記構造(I)である。
【0044】
前記式(I)中、X
1およびX
2は、例えば、それぞれ独立して、H
2、O、SまたはNHである。前記式(I)中において、X
1がH
2であるとは、X
1が、X
1の結合する炭素原子とともに、CH
2(メチレン基)を形成することを意味する。X
2についても同様である。
【0045】
前記式(I)中、Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSである。
【0046】
前記式(I)中、環Aにおいて、lは、1または2である。l=1の場合、環Aは、5員環であり、例えば、前記ピロリジン骨格である。前記ピロリジン骨格は、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられ、これらの二価の構造が例示できる。l=2の場合、環Aは、6員環であり、例えば、前記ピペリジン骨格である。環Aは、環A上のC−2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。また、環Aは、環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。環Aは、例えば、L型およびD型のいずれでもよい。
【0047】
前記式(I)中、R
3は、環A上のC−3、C−4、C−5またはC−6に結合する水素原子または置換基である。R
3が前記置換基の場合、置換基R
3は、1でも複数でも、存在しなくてもよく、複数の場合、同一でも異なってもよい。
【0048】
置換基R
3は、例えば、ハロゲン、OH、OR
4、NH
2、NHR
4、NR
4R
5、SH、SR
4またはオキソ基(=O)等である。
【0049】
R
4およびR
5は、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基であり、同一でも異なってもよい。前記置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等があげられる。以下、同様である。置換基R
3は、これらの列挙する置換基であってもよい。
【0050】
前記保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等があげられる。前記保護基は、例えば、文献(J. F. W. McOmie, 「Protecting Groups in Organic Chemistry」 Prenum Press, London and New York, 1973)の記載を援用できる。前記保護基は、特に制限されず、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、ビス(2−アセトキシエチルオキシ)メチル基(ACE)、トリイソプロピルシリルオキシメチル基(TOM)、1−(2−シアノエトキシ)エチル基(CEE)、2−シアノエトキシメチル基(CEM)およびトリルスルフォニルエトキシメチル基(TEM)、ジメトキシトリチル基(DMTr)等があげられる。R
3がOR
4の場合、前記保護基は、特に制限されず、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基およびTEM基等があげられる。この他にも、シリル含有基もあげられる。以下、同様である。
【0051】
前記式(I)中、L
1は、n個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、L
1は、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。前記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、Y
1がOの場合、その酸素原子とL
1の酸素原子は隣接せず、OR
1の酸素原子とL
1の酸素原子は隣接しない。
【0052】
前記式(I)中、L
2は、m個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、L
2は、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、Y
2がOの場合、その酸素原子とL
2の酸素原子は隣接せず、OR
2の酸素原子とL
2の酸素原子は隣接しない。
【0053】
L
1のnおよびL
2のmは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。nおよびmは、例えば、前記非ヌクレオチド構造の所望の長さに応じて、適宜設定できる。nおよびmは、例えば、製造コストおよび収率等の点から、それぞれ、0〜30が好ましく、より好ましくは0〜20であり、さらに好ましくは0〜15である。nとmは、同じでもよいし(n=m)、異なってもよい。n+mは、例えば、0〜30であり、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜15である。
【0054】
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基である。前記置換基および前記保護基は、例えば、前述と同様である。
【0055】
前記式(I)において、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、FおよびI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0056】
前記X領域および前記Y領域は、例えば、それぞれ、−OR
1−または−OR
2−を介して、前記非ヌクレオチド構造に結合する。ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよい。R
1およびR
2が存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記式(I)の構造である。R
1および/またはR
2が前記ヌクレオチド残基の場合、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、ヌクレオチド残基R
1および/またはR
2を除く前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基と、前記ヌクレオチド残基とから形成される。R
1および/またはR
2が前記式(I)の構造の場合、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基が、2つ以上連結された構造となる。前記式(I)の構造は、例えば、1個、2個、3個または4個含んでもよい。このように、前記構造を複数含む場合、前記(I)の構造は、例えば、直接連結されてもよいし、前記ヌクレオチド残基を介して結合してもよい。他方、R
1およびR
2が存在しない場合、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基のみから形成される。
【0057】
前記X領域および前記Y領域と、−OR
1−および−OR
2−との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記X領域は、−OR
2−を介して、前記Y領域は、−OR
1−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(2)
前記X領域は、−OR
1−を介して、前記Y領域は、−OR
2−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
【0058】
前記式(I)の構造は、例えば、下記式(I−1)〜式(I−9)が例示でき、下記式において、nおよびmは、前記式(I)と同じである。下記式において、qは、0〜10の整数である。
【化2】
【0059】
前記式(I−1)〜(I−9)において、n、mおよびqは、特に制限されず、前述の通りである。具体例として、前記式(I−1)において、n=8、前記式(I−2)において、n=3、前記式(I−3)において、n=4または8、前記式(I−4)において、n=7または8、前記式(I−5)において、n=3およびm=4、前記式(I−6)において、n=8およびm=4、前記式(I−7)において、n=8およびm=4、前記式(I−8)において、n=5およびm=4、前記式(I−9)において、q=1およびm=4があげられる。前記式(I−4)の一例(n=8)を、下記式(I−4a)に、前記式(I−8)の一例(n=5、m=4)を、下記式(I−8a)に示す。
【化3】
【0060】
本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、標識物質を含み、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、
2H、
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
34Sおよび
36Sがあげられる。
【0061】
本発明の人工マッチ型miRNAは、前述のように、前記標的遺伝子の発現抑制ができる。このため、本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、遺伝子が原因となる疾患の治療剤として使用できる。本発明の人工マッチ型miRNAが、例えば、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖配列を有する場合、例えば、前記標的遺伝子の発現抑制により、前記疾患を治療できる。本発明において、「治療」は、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。前記疾患は、特に制限されず、例えば、目的の疾患に応じて前記発現抑制配列を適宜設定できる。前記疾患としては、例えば、がん(乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、肝がん)があげられる。
【0062】
本発明の人工マッチ型miRNAの使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記人工マッチ型miRNAを投与すればよい。
【0063】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、NCI−H1299細胞、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0064】
本発明において、発現抑制の対象となる前記標的遺伝子は、特に制限されず、所望の遺伝子を設定できる。
【0065】
本発明の人工マッチ型miRNAの使用に関しては、後述する本発明の組成物、発現抑制方法および治療方法等の記載を参照できる。
【0066】
本発明の人工マッチ型miRNAは、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制可能であることから、例えば、医薬品、診断薬および農薬、ならびに、農学、医学、生命科学等の研究ツールとして有用である。
【0067】
本発明の人工マッチ型miRNAの合成方法は、特に制限されず、従来公知の核酸の製造方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法およびH−ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’−O−TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイトおよびTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。
【0068】
(2)組成物
本発明の発現抑制用組成物は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物であって、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の発現抑制用組成物は、例えば、発現抑制用試薬ということもできる。
【0069】
本発明によれば、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に投与することで、前記標的遺伝子の発現抑制を行うことができる。
【0070】
また、本発明の薬学的組成物は、前述のように、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことが特徴であり、その他の構成は何ら制限されない。本発明の薬学的組成物は、例えば、医薬品ということもできる。
【0071】
本発明によれば、例えば、遺伝子が原因となる疾患の患者に投与することで、前記遺伝子の発現を抑制し、前記疾患を治療することができる。本発明において、「治療」は、前述のように、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0072】
本発明において、治療の対象となる疾患は、特に制限されず、例えば、hsa−miR−34の成熟miRNAの標的遺伝子の発現が原因となる疾患があげられる。前記疾患の種類に応じて、その疾患の原因となる遺伝子を前記標的遺伝子に設定し、さらに、前記標的遺伝子に応じて、hsa−miR−34の前記成熟miRNAのガイド鎖配列を選択すればよい。
【0073】
本発明の発現抑制用組成物および薬学的組成物(以下、組成物という)は、その使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記人工マッチ型miRNAを投与すればよい。
【0074】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、NCI−H1299細胞、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0075】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与対象が培養細胞の場合、例えば、トランスフェクション試薬を使用する方法、エレクトロポレーション法等があげられる。
【0076】
本発明の組成物は、例えば、本発明の人工マッチ型miRNAのみを含んでもよいし、さらにその他の添加物を含んでもよい。前記添加物は、特に制限されず、例えば、薬学的に許容された添加物が好ましい。前記添加物の種類は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0077】
本発明の組成物において、前記人工マッチ型miRNAは、例えば、前記添加物と複合体を形成してもよい。前記添加物は、例えば、複合化剤ということもできる。前記複合体形成により、例えば、前記人工マッチ型miRNAを効率よくデリバリーすることができる。
【0078】
前記複合化剤は、特に制限されず、ポリマー、シクロデキストリン、アダマンチン等があげられる。前記シクロデキストリンは、例えば、線状シクロデキストリンコポリマー、線状酸化シクロデキストリンコポリマー等があげられる。
【0079】
前記添加剤は、この他に、例えば、担体、標的細胞への結合物質、縮合剤、融合剤、賦形剤等があげられる。
【0080】
(3)発現抑制方法
本発明の発現抑制方法は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制する方法であって、前記本発明の人工マッチ型miRNAを使用することを特徴とする。本発明の発現抑制方法は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0081】
本発明の発現抑制方法において、前記標的遺伝子の発現抑制のメカニズムは、特に制限されず、例えば、成熟miRNAによる発現抑制があげられる。
【0082】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に、前記人工マッチ型miRNAを投与する工程を含む。前記投与工程により、例えば、前記投与対象に前記人工マッチ型miRNAを接触させる。前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。
【0083】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記人工マッチ型miRNAを単独で投与してもよいし、前記人工マッチ型miRNAを含む前記本発明の組成物を投与してもよい。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0084】
(4)治療方法
本発明の疾患の治療方法は、前述のように、前記本発明の人工マッチ型miRNAを、患者に投与する工程を含み、前記疾患が、hsa−miR−34の成熟miRNAの標的遺伝子が関与する疾患であることを特徴とする。本発明の治療方法は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0085】
本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の発現抑制方法等を援用できる。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、経口投与および非経口投与のいずれでもよい。
【0086】
(5)人工マッチ型miRNAの使用
本発明の使用は、前記標的遺伝子の発現抑制のための、前記本発明の人工マッチ型miRNAの使用である。
【0087】
本発明の一本鎖核酸は、疾患の治療に使用するための一本鎖核酸であって、前記一本鎖核酸は、前記本発明の人工マッチ型miRNAであり、前記疾患が、hsa−miR−34の成熟miRNAの標的遺伝子が関与する疾患であることを特徴とする。
【0088】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
成熟miR−34aのガイド鎖に基づいて、本発明の人工マッチ型miRNAを合成し、H1299細胞の増殖の抑制を確認した。
【0090】
(1)miRNAの合成
ポジティブコントロールのmiRNAとして、以下に示すガイド鎖(配列番号1)およびパッセンジャー鎖(配列番号2)からなるヒト成熟miR−34aを合成した。また、ネガティブコントロールとして、前記ガイド鎖の塩基組成をスクランブルにしたガイド鎖スクランブル(配列番号3)とそれに対するパッセンジャー鎖(配列番号4)とからなる成熟miR−34aスクランブルを合成した。
【0091】
実施例の人工マッチ型miRNAとして、前記ガイド鎖(配列番号1)と付加配列とからなるX領域と、前記X領域に完全に相補的な配列とオーバーハングとからなるY領域とが、下記式のプロリン誘導体の非ヌクレオチド構造(配列において[P]で表す)を介して連結しているマッチ型miR−34aを合成した。下記配列において、下線部が、前記ガイド鎖に対応する。前記マッチ型miRNAにおける前記非ヌクレオチド構造は、下記式で表され、前記マッチ型miRNAの合成において、L−プロリンジアミドアミダイト(WO2012/017919参照)を使用することにより導入した。また、人工マッチ型miRNAに対するネガティブコントロールとして、前記ガイド鎖の塩基組成をスクランブルにしたガイド鎖とそれに対応するパッセンジャー鎖とからなるマッチ型miR−34aスクランブルを合成した。
【0092】
【化4】
【0093】
これらのmiRNAの配列及び構造を、以下に示す。下記において、下線部で示す配列が、ガイド鎖に相当する。
成熟miR−34a
ガイド鎖(配列番号1)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-3’
パッセンジャー鎖(配列番号2)
5’-CAAUCAGCAAGUAUACUGCCCU-3’
成熟miR−34aスクランブル
ガイド鎖(配列番号3)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCGGUUG-3’
パッセンジャー鎖(配列番号4)
5’-CAACCGACCCGAUAACGAUACA-3’
マッチ型miR−34a(
X領域は配列番号5
、Y領域は配列番号24)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[P]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCAUA-3’
マッチ型miR−34aスクランブル(
X領域は配列番号6
、Y領域は配列番号25)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCGGUUGUCC-[P]-GGACAACCGACCCGAUAACGAUACAUA-3’
【0094】
【化5】
【0095】
(2)肺がん由来細胞に対する人工マッチ型miRNAの影響
前記人工マッチ型miRNAを、ヒト非小細胞性肺がん細胞株(NCI−H1299)に導入し、前記細胞への影響を確認した。
【0096】
(2−1)トランスフェクション
前記miRNAを、注射用蒸留水(大塚製薬、以下同様)で溶解し、100μmol/LのmiRNA溶液を調製した。培地は、10%FBSを含むRPMI−1640(Invitrogen)を使用し、培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0097】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、500μLずつ、1×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、前記miRNAをトランスフェクション試薬RNAi MAX Transfection Reagent(商品名、Life Technologies社)を用い、添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。トランスフェクションは、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定した。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(商品名、Invitrogen)であり、(C)は、前記RNA溶液であり、両者をあわせて49μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記miRNAの最終濃度は、100nmol/Lとした。トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を3日間培養した。そして、前記3日間の培養後、培養細胞について、以下に示す確認を行った。
【0098】
【表1】
【0099】
(2−2)細胞数のカウント
培養後の培養細胞について、ウェルあたりの細胞数をカウントした。この結果を、
図2に示す。
図2は、ウェルあたりの細胞数を示すグラフである。
図2において、「Normal」は、未処理の細胞、「Mock」は、トランスフェクション試薬のみを導入した細胞、「Scramble」は、ネガティブコントロールのmiR−34aスクランブル、「miR-34a」は、ポジティブコントロールの成熟miR−34a、「Scramble match」は、ネガティブコントロールのマッチ型miR−34aスクランブル、「miR-34a match」は、実施例のマッチ型miR−34aの結果を示す(以下、同様)。
図2に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは最も細胞数を減少できた。
【0100】
(2−3)MTTアッセイ
培養後の培養細胞について、市販の試薬キット(商品名 Cell Count Reagent SF、ナカライテスク社)を用いてMTTアッセイを行い、細胞増殖を評価した。細胞増殖の評価は、Normal(無処置)の結果を1として、相対値により表した。この結果を、
図3に示す。
図3は、細胞増殖の相対値を示すグラフである。
図3に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは最も細胞数を減少できた。
【0101】
(2−4)アポトーシス
培養後の培養細胞について、市販の試薬キット(商品名Annexin V:PE Apoptosis Detection Kit、BD Biosciences社)を用いてアポトーシスの検出を行った。この結果を、
図4に示す。
図4は、早期アポトーシス(%)と後期アポトーシス(%)とを示すグラフである。
図4に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは最もアポトーシスを亢進できた。
【0102】
(2−5)mRNAの発現抑制
培養後の培養細胞について、ISOGEN reagent(商品名、ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。
【0103】
次に、逆転写酵素(商品名M−MLV reverse transcriptase、Invitrogen)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、合成した前記cDNAを鋳型として定量PCRを行い、AXL cDNAの量およびMET cDNAの量を測定した。また、GAPDH cDNAを内部コントロールとし、そのcDNAの量をあわせて測定した。
【0104】
前記定量PCRは、試薬として、FastStart Universal SYBR Green Master(商品名、Roche)、サーモサイクラーとしてMX3000P(商品名、Stratagene)、解析機器としてMxPro(商品名、Stratagene)を用いた(以下、同様)。前記AXL cDNA、前記MET cDNAおよび前記GAPDH cDNAの増幅には、それぞれ、下記プライマーセットを使用した。反応液の全量は25μLとして、それぞれ3回測定した。
【0105】
AXL プライマーセット
5’-CTCAACCAGGACGACTCCAT-3’ (配列番号7)
5’-AGACCGCTTCACTCAGGAAA-3’ (配列番号8)
MET プライマーセット
5’-CAGGCAGTGCAGCATGTAGT-3’ (配列番号9)
5’-TGTCCAACAAAGTCCCATGA-3’ (配列番号10)
GAPDH プライマーセット
5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’ (配列番号11)
5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’ (配列番号12)
【0106】
そして、miRNA未添加のコントールにおけるAXL mRNAまたはMET mRNAを1とした場合における、各トランスフェクション細胞でのAXL mRNAおよびMET mRNAの相対値を算出した。これらの結果を、
図5に示す。
図5(A)は、AXL mRNAの結果、
図5(B)は、MET mRNAの結果である。
【0107】
図5に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは、ポジティブコントロールの成熟miR−34aと同程度に、AXL mRNAの量が減少した。また、実施例のマッチ型miR−34aは最もMET mRNAの量が減少した。このため、前記人工マッチ型miRNAにより、AXL mRNAおよびMET mRNAがそれぞれコードするタンパク質の転写も、抑制されているといえる。
【0108】
これらの結果から、実施例のマッチ型miR−34aは、AXL mRNAおよびMET mRNA等の発現を抑制し、H1299細胞の増殖の抑制およびアポトーシスの亢進を可能とすることがわかった。
【0109】
前記人工マッチ型miRNAは、二本鎖の成熟miR−34aとは異なり、一本鎖の核酸分子であるため、使用時に各一本鎖をアニーリングする必要がなく、また、自然免疫に関与するTLR3等に認識されることも回避できる。
【0110】
(実施例2)
実施例1のマッチ型miR−34aについて、X領域の付加配列およびY領域のオーバーハングの短縮化を行った。
【0111】
(1)miRNAの合成
以下に示すように、マッチ型miR−34aは、X領域の3’側に四角で囲んだ3塩基長の付加配列(J)を有し、Y領域の5’側に四角で囲んだ2塩基長のオーバーハング(O)を有している。そこで、前記付加配列を3’側から1塩基ずつ欠失させ且つそれに対応するY領域側の配列を5’側から1塩基ずつ欠失させた分子、オーバーハングを3’側から1塩基ずつ欠失させた分子、および、前記付加配列とオーバーハングとを1塩基ずつ欠失させた分子を合成し、前記実施例1と同様にして、AXL mRNAおよびMET mRNAの発現抑制を確認した。下記配列において、[P]の5’側領域がX領域であり、前記X領域において、下線部は前記ガイド鎖配列であり、その他が、前記付加配列であり、[P]の3’側領域がY領域であり、前記Y領域において、四角で囲んだ領域がオーバーハングである。
【0112】
【化6】
【0113】
【化7】
【0114】
これらの結果を、
図6および
図7に示す。
図6は、AXL mRNAの結果であり、
図7は、MET mRNAの結果である。
図6および
図7に示すように、前記X領域における付加配列および前記Y領域におけるオーバーハングを短縮させても、発現抑制の効果は維持された。
【0115】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。