特許第6492020号(P6492020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ビルシステムの特許一覧

特許6492020エレベーター制御装置及びエレベーター制御システム
<>
  • 特許6492020-エレベーター制御装置及びエレベーター制御システム 図000002
  • 特許6492020-エレベーター制御装置及びエレベーター制御システム 図000003
  • 特許6492020-エレベーター制御装置及びエレベーター制御システム 図000004
  • 特許6492020-エレベーター制御装置及びエレベーター制御システム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492020
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】エレベーター制御装置及びエレベーター制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20190318BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-50920(P2016-50920)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-165527(P2017-165527A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 政和
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−073050(JP,A)
【文献】 特開2014−234255(JP,A)
【文献】 特開2014−148382(JP,A)
【文献】 特開平11−335046(JP,A)
【文献】 特開2013−224192(JP,A)
【文献】 特開2008−150139(JP,A)
【文献】 特開2016−044054(JP,A)
【文献】 特開2017−019607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 3/00 − 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内に乗客が閉じ込められた閉じ込め故障の発生の有無を判定する閉じ込め故障判定部と、
前記かご内の乗客の種別及び人数を判別する乗客判定部と、
前記閉じ込め故障判定部が前記閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、当該判定から予め設定された所定時間が経過したとき、管制センターに通報を行う通報処理制御部と、
前記閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、前記乗客判定部が判別した前記かご内の乗客の種別及び人数が、予め設定された特定の条件を満たすとき、前記所定時間を短く変更する通報開始時限変更部と、を備え、
前記乗客判定部が判別した特定の条件の少なくとも1つとして、前記かご内の全ての乗客の身長が所定の身長未満である場合を含む
エレベーター制御装置。
【請求項2】
さらに、前記乗客判定部が判定する特定の条件として、前記かご内の全ての乗客が車椅子利用者である場合を含む
請求項1に記載のエレベーター制御装置。
【請求項3】
さらに前記乗客判定部が判定する特定の条件として、前記かご内の乗客の人数が所定の人数未満である場合を含む
請求項1又は2に記載のエレベーター制御装置。
【請求項4】
かご内に乗客が閉じ込められた閉じ込め故障の発生の有無を判定する閉じ込め故障判定部と、
前記かご内の乗客の種別及び人数を判別する乗客判定部と、
前記閉じ込め故障判定部が前記閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、当該判定から予め設定された所定時間が経過したとき、管制センターに通報を行う通報処理制御部と、
前記閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、前記乗客判定部が判別した前記かご内の乗客の種別及び人数が、予め設定された特定の条件を満たすとき、前記所定時間を短く変更する通報開始時限変更部と、を備え、
前記乗客判定部が判別した特定の条件として、前記かご内の乗客の身長の情報と、前記かご内の乗客が車椅子利用者であるか否かの情報と、前記かご内の乗客が所定の器具を所持しているか否かの情報と、前記かご内の乗客の人数の情報との、少なくとも2つの前記情報の組み合わせに基づいて定められ
レベーター制御装置。
【請求項5】
エレベーター制御装置と管制センターから構成されるエレベーター制御システムであって、
前記エレベーター制御装置は、
かご内の状況を判定する監視装置と、
前記かご内に乗客が閉じ込められた閉じ込め故障の発生の有無を判定する閉じ込め故障判定部と、
前記監視装置での判定状況に基づいて、前記かご内の乗客の種別及び人数を判別する乗客判定部と、
前記閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、当該判定から予め設定された所定時間が経過したとき、前記管制センターに通報を行う通報処理制御部と、
前記閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、前記乗客判定部が判別した前記かご内の乗客の種別及び人数が、予め設定された特定の条件を満たすとき、前記所定時間を短く変更する通報開始時限変更部と、を備え、
前記管制センターは、
前記通報処理制御部からの通報があったとき、該当するエレベーターの異常を監視作業者に通知するものであり、
前記エレベーター制御装置の前記乗客判定部が判別した特定の条件の少なくとも1つとして、前記かご内の全ての乗客の身長が所定の身長未満である場合を含む
エレベーター制御システム。
【請求項6】
エレベーター制御装置と管制センターから構成されるエレベーター制御システムであって、
前記エレベーター制御装置は、
かご内の状況を判定する監視装置と、
前記かご内に乗客が閉じ込められた閉じ込め故障の発生の有無を判定する閉じ込め故障判定部と、
前記監視装置での判定状況に基づいて、前記かご内の乗客の種別及び人数を判別する乗客判定部と、
前記閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、当該判定から予め設定された所定時間が経過したとき、前記管制センターに通報を行う通報処理制御部と、
前記閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、前記乗客判定部が判別した前記かご内の乗客の種別及び人数が、予め設定された特定の条件を満たすとき、前記所定時間を短く変更する通報開始時限変更部と、を備え、
前記管制センターは、
前記通報処理制御部からの通報があったとき、該当するエレベーターの異常を監視作業者に通知するものであり、
前記エレベーター制御装置の前記乗客判定部が判別した特定の条件として、前記かご内の乗客の身長の情報と、前記かご内の乗客が車椅子利用者であるか否かの情報と、前記かご内の乗客が所定の器具を所持しているか否かの情報と、前記かご内の乗客の人数の情報との、少なくとも2つの前記情報の組み合わせに基づいて定められる
エレベーター制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター制御装置及びエレベーター制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかごには、通報ボタンやインターホンが取付けられ、閉じ込め故障などの緊急事態発生時に、通報ボタンを使用して管制センターに通報できると共に、インターホンを介して管制センターの監視員と通話が可能になっている。
閉じ込められた乗客と管制センターの監視員とが通話することにより、かご内の状況を確認できると共に、作業員が現場に到着するまで会話を行うことで、かご内の乗客の不安感を軽減させるなどの効果がある。
【0003】
通常、管制センターへの故障情報通報や通話の多発を防止する目的で、かご内の通報ボタンが押されてから、一定の時間(例えば数十秒)が経過した後に、エレベーターの制御装置が、管制センターに通報を行うようにしている。このように一定の時間連続して通報ボタンが押されたとき通報や通話を行うことで、乗客が誤って一時的にボタンが押された場合や、故障が一時的なもので直ぐに復旧した場合には、通報が行われることがなく、適切な通報や通話の管理を行うことができる。
【0004】
特許文献1には、乗客が乗りかごに閉じ込められたときには、乗りかご内の外部呼び出しスイッチが押された状態になり、自動的に管制センターに通報が行われるエレベーターの通報装置について開示されている。つまり、特許文献1には、乗客が乗りかごに閉じ込められたときに自動的に管制センターに通報がなされるため、乗客の操作が不要な自動通報装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−72348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、乗客が乗りかごに閉じ込められた状態を検知して、乗りかごが自動的に監視センターに通報を行うようにした場合であっても、状況によっては、管制センターで通報に応答するまでに時間がかかるケースが想定される。例えば、地震や停電などの発生で、ほぼ同時に多数のエレベーターで乗客が閉じ込められる事態が発生し、管制センターに同時に多数のエレベーターからの通話要請が届いたとする。このとき、管制センターの管制作業者は、管制状況を表示する画面を見ながら、通話要請があるエレベーターに順番に応答する作業を行うことになり、閉じ込められてから、最後に応答作業が行われるまでにそれなりの時間を要する場合が起こり得る。
【0007】
従来、このような多数のエレベーターからの通報が同時にあったとしても、管制センターで応答を行う順序は、例えば通報を受信した順番などで単純に決まるため、即時に通話する必要がある閉じ込め乗客に対する対応が遅れるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、かかる課題に鑑み、エレベーターかご内に乗客が閉じ込められる事態が発生した際の通報が、迅速な通報が必要な乗客が乗ったかごで、待ち時間なく行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならは、かご内に乗客が閉じ込められた閉じ込め故障の発生の有無を判定する閉じ込め故障判定部と、かご内の乗客の種別及び人数を判別する乗客判定部と、閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した場合に、当該判定から予め設定された所定時間が経過したとき、管制センターに通報を行う通報処理制御部と、閉じ込め故障判定部が閉じ込め故障の発生有と判定した際に、乗客判定部が判別したかご内の乗客の種別及び人数が、予め設定された特定の条件を満たすとき、所定時間を短く変更する通報開始時限変更部とを備え、乗客判定部が判別した特定の条件の少なくとも1つとして、かご内の全ての乗客の身長が所定の身長未満である場合を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緊急度が高い乗客が乗ったかごに対して、優先的に通報処理が行われ、管制センターの管制作業員は、該当するかご内の乗客と優先的に通話などの対処ができるようになる。したがって、地震や停電などの発生で、閉じ込め故障が同時期に多発した場合でも、本発明によると、即時に通話しなければならない閉じ込め乗客に迅速に対処できるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態例によるシステム全体の構成例を示す構成図である。
図2】本発明の一実施の形態例によるエレベーターの故障発生時の制御処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施の形態例によるかご内の乗客の判断例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態例による監視センターでの監視画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態の例(以下、「本例」と称する。)を、図1図4を参照して説明する。
[1.システム全体の構成例]
図1は、エレベーター全体の構成を示す。
エレベーターのかご1は、乗客が乗降するドア2を備える。後述する閉じ込め故障が発生すると、かご1内に乗客が取り残された状態で、ドア2を開けることができない状況になる。
かご1内には、ステレオカメラ3とインターホン4とが配置されている。ステレオカメラ3は、かご1内の様子を撮影する2台のカメラを備え、立体画像の撮影を行う。インターホン4には、管制センター16を呼び出すための通報ボタンと、管制センター16と通話を行うためのマイクロホンやスピーカーが配置されている。
【0013】
ステレオカメラ3が撮影した画像は、画像監視装置5に伝送される。画像監視装置5は、乗客有無判定部6、乗客種別判定部7、及び同乗者有無判定部8を備える。この画像監視装置5は、ステレオカメラ3が撮影した画像を録画し、録画中の画像からかご1内の乗客についての判定処理を行う。
乗客有無判定部6は、ステレオカメラ3が撮影した画像から、かご1内の乗客の有無を判定する。
乗客種別判定部7は、ステレオカメラ3が撮影した画像から、かご1内の乗客の種別を判別する。ここでは乗客種別判定部7が、健常者(大人)、子供、車椅子利用者の3つの種別を判別する。健常者と子供は、例えばステレオカメラ3が撮影した立体画像から、乗客の身長が所定の閾値以上か、閾値未満かによって区別される。車椅子利用者は、例えば車椅子に相当する画像の認識処理で判別される。
同乗者有無判定部8は、ステレオカメラ3が撮影した画像から、かご1内の乗客が1人か複数かを判別する。
【0014】
画像監視装置5の各判定部6,7.8で判定した結果は、エレベーター制御装置9に伝送される。エレベーター制御装置9は、エレベーターのかご1の走行を制御する。また、エレベーター制御装置9は、エレベーターの故障状態の監視及び通報を制御する。このエレベーターの故障状態の監視及び通報の制御のために、エレベーター制御装置9は、エレベーター故障発生判定部10、閉じ込め故障判定部11、かご内乗客判定部12、通報処理制御部13、及び通報開始時限変更部14を備える。
【0015】
エレベーター故障発生判定部10は、エレベーターの各種信号から故障状態の発生を監視する。ここでの故障状態には、エレベーターの走行機構などの異常による故障状態の他、地震計が所定以上の揺れを検知して、エレベーター制御装置9が強制的にかご1の走行を停止させた場合や、停電によりかご1が停止した場合も含まれる。
【0016】
閉じ込め故障判定部11は、エレベーター故障発生判定部10が故障発生を判定したときに、かご内乗客判定部12での判定結果に基づいて、かご1内に乗客が閉じ込められた状態となる、いわゆる閉じ込め故障の発生の有無を判定する。
かご内乗客判定部12は、画像監視装置5の乗客有無判定部6での判定結果から、かご1内の乗客の有無の判定結果の情報を生成し、生成した乗客の有無の判定結果の情報を閉じ込め故障判定部11に送る。
【0017】
通報処理制御部13は、かご1内のインターホン4に配置された通報ボタンが押された場合又は自動的に通報を行う条件を満たした場合に、管制センター16への通報処理を行う。この通報処理制御部13による通報は、通報が必要な状況が発生してから、一定時間(例えば30秒)が経過するまで待機し、一定時間が経過した後に行われる。また、通報処理制御部13は、管制センター16での通報の応答に基づいて、インターホン4と管制センター16とによる通話の制御を行う。但し、ここでの通報には、管制センター16側の作業者との通話を要求する通報と、単に故障状態を管制センター16に通報するだけの通報の2種類の通報がある。通報処理制御部13が通報処理を行う場合には、かご1内の状況(乗客種別など)や故障状況などの情報を同時に送信してもよい。
【0018】
通報開始時限変更部14は、通報処理制御部13での通報が必要な状況が発生したときの条件を判断して、特定の条件を満たす場合には、即時に通報する処理を行う。即時に通報する特定の条件については後述するが、ここで「即時」とは、従来、一定時間が経過するまで待機して通報を行っていたのに対し、この待機する一定時間を短縮して即時に通報する処理を行うことを意味する。
【0019】
エレベーターの運行を監視する管制センター16は、一般公衆回線15を介してエレベーター制御装置9と接続されている。管制センター16は、管制状況を表示するディスプレイ(不図示)を備え、管制作業を行う者がそのディスプレイでの表示内容を確認して、エレベーターの状況を確認する。ここで、エレベーター制御装置9の通報処理制御部13から異常時の通報があった場合には、管制作業を行う者がその通報に応答する操作を行うことで、該当するエレベーターのかご1内のインターホン4と管制センター16との通話を行うことが可能な状態になる。
【0020】
[2.制御処理例]
図2は、本例のエレベーター制御装置9によるエレベーターの故障発生時の制御処理例を示すフローチャートである。
まず、エレベーター制御装置9は、エレベーター故障発生判定部10が故障の発生を判定したか否かを判断する(ステップS1)。ここで、故障の発生を判定しない場合には、処理を終了する。ステップS1で、エレベーター故障発生判定部10が故障の発生を判定した場合、かご内乗客判定部12は、画像監視装置5での監視状況に基づいて、かご1内の乗客のチェックを実施する(ステップS2)。
【0021】
そして、エレベーター制御装置9は、ステップS2でのチェック結果が、子供が単独で、または車椅子利用者が単独でかご1に乗っている状況であるか否かを判断する(ステップS3)。
ステップS3の判断で、子供または車椅子利用者が単独でかご1に乗っている状況であるとき、エレベーター制御装置9は、閉じ込め故障判定部11での判定に基づいて、現在の故障が閉じ込め故障であるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、閉じ込め故障であると判断したときには、通報開始時限変更部14が通報までの待ち時間を変更して、通報処理制御部13が即時に管制センター16に通報処理を実行する(ステップS5)。ここでの通報処理は、通話を要求する通報である。
【0022】
また、ステップS4で、故障内容が閉じ込め故障でないと判断した場合、エレベーター制御装置9は、故障の検知を開始してから一定時間(例えば30秒)が経過して故障状態が継続しているか否かを判断する(ステップS6)。なお、ステップS4で「故障内容が閉じ込め故障でないと判断するケース」としては、例えば、エレベーターがいずれかの停止階に止まってドア2が開いた状態になっていることなどが考えられる。
【0023】
ステップS6で故障状態が継続していないと判断したときには、エレベーター制御装置9は、通報処理を行わずに、故障に関する処理を終了する。
そして、ステップS6で故障状態が継続していると判断したときには、通報処理制御部13が管制センター16に通報処理を実行する(ステップS7)。このときの通報処理についても、通話を要求する通報である。
【0024】
また、ステップS3で、子供または車椅子利用者が単独でかご1に乗っている状況でないと判断された場合には、エレベーター制御装置9は、閉じ込め故障判定部11での判定に基づいて、現在の故障が閉じ込め故障であるか否かを判断する(ステップS8)。ここで、「子供または車椅子利用者が単独でかご1に乗っている状況でない場合」とは、車椅子利用者でない大人がかご1に乗っている場合の他、子供や車椅子利用者がかご1に乗っている場合でも、単独利用でない場合などが考えられる。
【0025】
ステップS8で、故障内容が閉じ込め故障であると判断された場合には、エレベーター制御装置9は、故障の検知を開始してから一定時間(例えば30秒)が経過して故障状態が継続しているか否かを判断する(ステップS9)。ステップS9で故障状態が継続していないと判断したときには、エレベーター制御装置9は、通報処理を行わずに、ここでの故障に関する処理を終了する。
そして、ステップS9で故障状態が継続していると判断したときには、通報処理制御部13が管制センター16に通報処理を実行する(ステップS10)。この通報処理も、通話を要求する通報である。
【0026】
また、ステップS8で、故障内容が閉じ込め故障でないと判断された場合には、エレベーター制御装置9は、故障の検知を開始してから一定時間(例えば30秒)が経過して故障状態が継続しているか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11で故障状態が継続していないと判断したときには、エレベーター制御装置9は、通報処理を行わずに、ここでの故障に関する処理を終了する。
一方、ステップS11で故障状態が継続していると判断したときには、通報処理制御部13が管制センター16に通報処理を実行する(ステップS10)。この通報処理は、通話を要求しない通報処理である。
【0027】
そして、ステップS5,S7,S10,S12での通報処理が行われることで、管制センター16に通報の情報が伝送され、管制センター16のディスプレイに該当するエレベーターからの通報要求があることが表示される。
ステップS5,S7,S10の場合には、通話処理を求める通報であるため、管制センター16での管制作業員による操作が行われることで、かご1のインターホン4と管制センター16側との通話が開始される。ステップS5のケースとステップS9のケースでは、閉じ込め故障であって、かご1内に乗客がいるため、乗客の様子を確認するための通話が必要である。
【0028】
また、ステップS7のケースでは、閉じ込め故障ではないが、子供又は車椅子利用者の単独乗車であるため、故障が発生した際に、そのままかご1に乗ったままである可能性があり、通話が行われる。
一方、ステップS12の場合には、通話を求めない通報であるため、管制センター16では、管制作業員が該当するかご1が故障したことを確認して、復旧作業員の派遣などのその後の対処に移る。
【0029】
図3は、エレベーターのかご1内の様子の例を示す。かご1内には、2台のカメラ3L,3Rを備えたステレオカメラ3が配置され、ステレオカメラ3がかご1の内部を撮影した立体画像を画像監視装置5が画像解析することで、乗客種別が判定される。すなわち、乗客種別判定部7は、立体画像の解析から、かご1内の乗客P1の身長h1を判断することができる。ここで、画像監視装置5の乗客種別判定部7は、身長h1の値が、予め設定された閾値以上か、閾値未満かによって、大人か子供かを区別する。例えば身長h1が140cm以上か否かで大人か子供かを区別する。
【0030】
また、かご1内の乗客P2が、車椅子Wの利用者である場合には、画像監視装置5の乗客種別判定部7が、ステレオカメラ3がかご1の内部を撮影した立体画像から、車椅子Wの形状を認識することで、車椅子利用者を検知することができる。この車椅子Wを画像認識する処理は、立体画像である必要はなく、ステレオカメラ3のいずれか一方のカメラ3L,3Rが撮影した画像から認識してもよい。
【0031】
なお、図3はそれぞれの種別の乗客を判別する様子を示す図で、図2のフローチャートのステップS5での即時通報が行われる例を示すものではない。すなわち、図2のフローチャートのステップS5での即時通報が行われる例は、子供の乗客P1だけがかご1に乗っている場合か、または車椅子利用者の乗客P2だけがかご1に乗っている場合である。具体的には、例えば図3に示すように子供の乗客P1と車椅子利用者の乗客P2の二人が同時にかご1内に乗っている場合は、エレベーター制御装置9は、図2のフローチャートのステップS3で単独利用でないと判断し、ステップS5の処理には移行しない。但し、後述する変形例で説明するように、子供の乗客P1と車椅子利用者の乗客P2の二人が同時にかご1内に乗っている場合に、図2のフローチャートのステップS5の処理に移行するようにしてもよい。
【0032】
また、図3の例では、かご1内のドア2から離れた壁の上部にステレオカメラ3を配置する例としたが、そのかご1内のその他の箇所にステレオカメラ3を配置してもよい。
【0033】
図4は、管制センター16で、いずれかのエレベーターから通報があった際の画面の概要を示す。図4の例では、「1.通報発生」、「2.通報発生」、・・・と、複数台のエレベーターからの通報が多数あった場合を示すが、通報が管制センター16に届いた順に上から順番に表示される。画面では、それぞれの通報発生の項目毎に、ビル番号や号機番号などの詳細が表示され、管制作業員が該当するエレベーターのかご内と通話するための「応答」のボタンが、各通報発生の項目毎に表示される。管制作業員が「応答」のボタンを選択してクリックすることで、管制センター16は、該当するエレベーターのかご内のインターホン4との通話状態に移行する。
【0034】
本例の場合、例えば子供が単独利用中に閉じ込め故障があったエレベーターの通報は、図4に示すように、一番上の「1.通報発生」として表示されるように制御される。例えば地震が発生して複数台のエレベーターでほぼ同時に閉じ込め故障が発生したとしても、子供が単独で乗ったかご1の場合には、エレベーター制御装置9は、予め設定された一定時間待機することなく、即時の通報処理が実行されるように制御する。これに対して、子供の単独利用又は車椅子利用者の単独利用でない場合には、予め設定された一定時間(例えば30秒)が経過するまで通報が行われず、子供単独利用又は車椅子単独利用中のエレベーターよりも下位に表示されることになる。
【0035】
なお、図4の例では、一番上の「1.通報発生」の詳細情報として、「子供単独利用中」と表示するようにした。通報時にエレベーター制御装置9がこのような「子供単独利用中」又は「車椅子単独利用中」の情報を通報時に送信した場合には、管制センター16がこのような状態が判る表示を行うようにしてもよい。
【0036】
以上説明したように本例のエレベーター制御装置9を備えたシステムによると、通常時は管制センターへの通報が一定時間待機してから行われ、特定の条件を満たした場合(子供や車椅子利用者の単独利用時)には即時に通報が行われるようになる。したがって、管制センターで該当するエレベーターについては優先的に応答できるようになり、緊急通報が同時期に多発した場合でも、即時に通話応答が必要な閉じ込め利用者に迅速に対応できるようになる。
【0037】
また、本例によると、エレベーター制御装置9が通報を行う処理として、図2のフローチャートのステップS5,S7,S10については通報と同時に通話を求めるようしたが、ステップS12での通報時には、通話を求めない通報を行うようにした。これは、ステップS12での通報が、子供や車椅子利用者の単独利用でなく、かつ閉じ込め故障でない場合であり、そのままでもかご1から乗客は外に出ることが可能なため、管制センター16では不要な通話応答の発生を適切に阻止できるようになる。
【0038】
一方、ステップS7での通報時には、子供や車椅子利用者の単独利用時であるため、閉じ込め故障でない場合でも、かご1内に利用者が留まっている可能性があり、通報処理と同時に通話処理が行われることで、かご1内との通話で状況を確認できるようになる。
このように本例の場合には、自動的な通報時の通話の可否が適切に選択されるようになる。但し、ステップS12での通報時に通話処理を行わない通報を行う点や、ステップS7での通報時に通話処理を行う点は一例であり、これらの処理時に通話処理の可否を変更してもよい。
【0039】
[3.変形例]
なお、本発明は上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0040】
また、上述した実施の形態例では、通常の通報時に待機する時間を30秒とし、特定の条件を満たしたとき即時に通報するようしたが、これらの時間は一例であり、その他の時間を設定してもよい。すなわち、特定の条件を満たしたとき、通常の通報時に待機する時間よりも短い待機時間を設定するようにすれば、上述した実施の形態例と同様に管制センター側で優先的に応答できる。
また、図3で説明した利用者が子供であると判断する身長の値についても一例であり、その他の身長で子供と判断するようにしてもよいし、複数の閾値を設け、例えば利用者の種別を小学生低学年以下、小学生高学年、中学生以上、のように細かく判別してもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態例では、子供や車椅子利用者が単独でかご1に乗っている場合に、即時に通報を行うようにしたが、子供や車椅子利用者が複数人でかご1に乗っている場合にも、同様の即時通報を行うようにしてもよい。例えば、かご1内の利用者が、子供や車椅子利用者で、かつ2人までのとき即時通報を行い、3人以上のときには即時通報しないようにしてもよい。
あるいはまた、利用者が何人であっても子供だけの場合や、車椅子利用者だけの場合には、同様の即時通報を行うようにしてもよい。あるいは、子供と車椅子利用者が同乗している場合などについても、即時通報を行うようにしてもよい。このように、利用者の身長情報、車椅子利用者情報、利用者人数情報などを組み合わせて判定することにより、エレベーター保有者や管理者の細かなニーズに合わせた即時通報を実現することができる。
【0042】
また、上述した実施の形態例では、子供と車椅子利用者を識別するようにした。これに対して、例えば病院,リハビリテーション施設,高齢者施設などで使用される歩行を補助する器具(歩行器など)を持った利用者をカメラ画像などから検出したとき、エレベーター制御装置9は、車椅子利用者と同等に扱い、即時通報するようにしてもよい。
【0043】
さらに、子供や車椅子利用者を認識する手段として、カメラ(ステレオカメラ)を利用するようにしたが、その他の検知装置を利用してもよい。例えば、かご1内の乗車人数を検知するために、赤外線センサなどの各種検知装置を設けるようにしてもよい。
【0044】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…かご、2…ドア、3…ステレオカメラ、4…インターホン、5…画像監視装置、6…乗客有無判定部、7…乗客種別判定部、8…同乗者有無判定部、9…エレベーター制御装置、10…エレベーター故障発生判定部、11…閉じ込め故障判定部、12…かご内乗客判定部、13…通報処理制御部、14…通報開始時限変更部、15…一般公衆回線、16…管制センター
図1
図2
図3
図4