(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してポリマー材料の分野に関し、より具体的には、電子デバイスの製造において有用なアリールシクロブテン系ポリマーに関する。
【0002】
アリールシクロブテン系ポリマーは、マイクロエレクトロニクス実装及び相互接続用途などの様々な電子用途において誘電材料として使用される。アリールシクロブテン系ポリマーは、これらの用途に対して多くの望ましい特性を有する。しかしながら、これらのポリマーは、ある特定の電子用途におけるこれらのポリマーの使用を制限する、低破壊靱性、低伸度、及び乏しい引張強度などのある特定の機械的制限に悩まされている。
【0003】
アリールシクロブテン系ポリマーの機械的特性の改善への1つの取り組みは、米国特許第6,420,093号に開示されている。この特許は、改善された靱性を有するベンゾシクロブテン系ポリマーを提供する組成物を開示し、この組成物は、a)アリールシクロブテンモノマー、アリールシクロブテンオリゴマー、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの前駆化合物と、b)エチレン性不飽和(つまり、炭素−炭素二重結合(複数可))を含む骨格及び末端アクリレート基またはメタクリレート基を有するポリマーまたはオリゴマーとを含む。この特許に開示される強化添加剤は、ポリマー骨格においてかなりの量の炭素−炭素二重結合を有する。しかしながら、これらの組成物がある特定の光パターニング用途において使用される場合、ベンゾシクロブテンポリマーの改善された伸び靱性は、添加されたポリマーまたはオリゴマーの炭素−炭素二重結合を伴う競合反応によって失われる。加えて、添加されたポリマー骨格における残留炭素−炭素二重結合は、経時的な材料の黄変を引き起こし得、これはある特定の用途には有害であり得る。したがって、改善された機械的特性を有する、アリールシクロブテン系材料を提供することのできる代替の材料への必要性が未だ存在する。
【0004】
公開された欧州特許出願第EP527272 A1号は、改善された可撓性、強度、及び亀裂防止特性などの改善された特性を有するベンゾシクロブテン(BCB)樹脂を開示する。この特許出願におけるBCB樹脂は、ビス−ベンゾシクロブテン(ビス−BCB)モノマーと、ビス−BCBモノマー内の不飽和と比較してより高い親ジエン活性を有する不飽和化合物(親ジエンモノマー)とを反応させることによって調製される。親ジエンモノマーは、エチレン性またはアセチレン性の不飽和の単一サイトを有する。1つのかかる親ジエンモノマーは、無水マレイン酸である。親ジエンモノマーは、ビス−BCBモノマーと比較して比較的少ない量(0.001〜0.2mol/molビス−BCB)で使用され、ビス−BCBモノマーの重合の度合いを制御するように機能する。基本的に、親ジエンモノマーは、その単一親ジエン部分によって、成長するポリマー鎖を終端させるように機能し、それによってポリマー鎖の分子量を低減する。これらのポリマーのある特定の特性が改善され得る一方、従来のBCB樹脂と比較して低下した耐薬品性を有することなどの他の特性が、この手法による問題を抱え得る。特に、これらの従来のポリマーが光誘電材料内で使用されるとき、より低い分子量のポリマーが露光された領域と未露光の領域との間の対比(または溶解率の差異)を低減し、不十分な分解能及び未露光の領域におけるフィルム厚の比較的大きな損失をもたらす。
【0005】
日本国公開特許出願第JP2004/224817号は、ベンゾシクロブテン樹脂及びプリプレグ材料内での使用のための、ある特定のアリル置換ビスマレイミド誘導体を含有する樹脂組成物を開示する。ビスマレイミド誘導体は、ビス−マレイミド化合物と2モルのアリル置換シクロペンタジエンとの、シクロペンタジエンがマレイミド部分内の炭素−炭素二重結合と反応するディールスアルダー反応の生成物である。様々な半導体処理及び実装作業の間に典型的に遭遇するような、比較的高い温度への曝露の際、この日本国公報に開示される樹脂は逆ディールスアルダー反応に供され、これが樹脂の亀裂をもたらす。
【0006】
本発明は、重合単位として、1つ以上のアリールシクロブテン第1モノマーと、2つ以上のアリル部分を有する1つ以上の第2モノマーとを含むポリマーであって、1つ以上の第2モノマーがアリールシクロブテン部分を含まず、1つ以上の第2モノマーがアリル置換ビスマレイミド誘導体ではない、ポリマーを提供する。好ましくは、第2モノマーはビスマレイミド部分を含まず、より好ましくは、第2モノマーはアリル置換シクロペンタジエン誘導体及びビスマレイミド化合物から形成されるビスマレイミド誘導体を含まない。
【0007】
上述のポリマー及び1つ以上の有機溶媒を含む組成物もまた、本発明によって提供される。
【0008】
本発明は、1つ以上のアリールシクロブテン第1モノマーと2つ以上のアリル部分を有する1つ以上の第2モノマーとを重合することを含む、上述のポリマーを形成する方法をさらに提供する。
【0009】
なおさらに、本発明は、基材を提供することと、基材の表面上に上述の組成物の層をコーティングすることと、コーティングを硬化させることと、を含む、基材上にフィルムを形成する方法をさらに提供する。
【0010】
上述の組成物から形成される硬化したフィルムを含む基材が、本発明によって追加で提供される。
【0011】
本明細書を通して使用される場合、以下の省略語は、文脈が別途明確に示さない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏度、min.=分、hr.=時間、g=グラム、L=リットル、μm=ミクロン=マイクロメートル、nm=ナノメートル、mm=ミリメートル、mL=ミリリットル、MPa=メガパスカル、M
w=重量平均分子量、M
n=数平均分子量、及びAMU=原子質量単位。別途述べられない限り、「重量%」は参照される組成物の合計重量に基づく重量%を指す。
【0012】
「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、及び環状アルキルを含む。同様に「アルケニル」は、直鎖、分岐鎖、及び環状アルケニルを指す。「アルキニル」という用語は、直鎖または分岐鎖アルキニルを指す。「アリール」は、芳香族炭素環及び芳香族ヘテロ環を指す。本明細書において使用する場合、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、及びアルキニル部分などの開鎖炭素含有部分を指し、これは直鎖または分岐鎖であり得る。また、本明細書において使用する場合、「脂環式」という用語は、環状脂肪族部分、例えば、シクロアルキル及びシクロアルケニルを指す。かかる脂環式部分は、芳香族ではないが、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含み得る。文脈が別途明確に示さない限り、「置換」アルキル、アルケニル、またはアルキニルは、アルキル、アルケニル、またはアルキニル上の1つ以上の水素がハロ、ヒドロキシ、C
1−10アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−C
1−10ヒドロカルビル置換アミノ、C
5−20アリール、及び置換C
5−20アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されることを意味する。文脈が別途明確に示さない限り、「置換」アリールは、アリール上の1つ以上の水素が、ハロ、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
2−10アルケニル、C
2−10アルキニル、C
1−10アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−C
1−10ヒドロカルビル置換アミノ、C
5−20アリール、及び置換C
5−20アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されることを意味する。「アルキル」はアルカンラジカルを指し、アルカンジラジカル(アルキレン)及びより高次のラジカルを含む。同様に、「アルケニル」、「アルキニル」及び「アリール」という用語は、それぞれアルケン、アルキン、及びアレーンの対応するモノ−、ジ−、またはより高次のラジカルを指す。「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を指し、同様に(メタ)アクリルアミドという用語は、メタクリルアミド及びアクリルアミドの両方を指す。
【0013】
「硬化」という用語は、材料または組成物の分子量を増加させる、重合または縮合などの任意のプロセスを意味する。「硬化性」とは、ある特定の条件下で硬化されることが可能な任意の材料を指す。「ポリマー」という用語は、オリゴマーも含む。「オリゴマー」という用語は、さらなる硬化が可能である、Bステージ材料を含む、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体などの比較的低い分子量材料を指す。本明細書において使用する場合、「芳香族有機残基」はフェニルなどの、芳香族の性質のみを有する有機残基、及び芳香族と脂肪族部分との組み合わせを含む有機残基を包含する。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、単数形及び複数形を指す。別途述べられない限り、全ての量は重量パーセントであり、全ての比はモル比である。全ての数的範囲は、かかる数的範囲がやむを得ず合計100%になることが明らかである場合を除き、端点を含み、かつ任意の順序で組み合わせ可能である。
【0014】
本発明は、重合単位として、1つ以上の第1アリールシクロブテンモノマーと、1つ以上の第2モノマーであって、2つ以上のアリル部分を有する第2モノマーとを含む、ある特定のアリールシクロブテンポリマーを提供する。かかるアリールシクロブテンポリマーは、従来のアリールシクロブテン系ポリマーと比較して改善された引張強度及び/または伸度を有する。好ましくは、本アリールシクロブテンポリマーはオリゴマーである。より好ましくは、1つ以上の第2モノマーはベンゾシクロブテン部分を含まず、さらにより好ましくはアリールシクロブテン部分を含まない。
【0015】
本アリールシクロブテンポリマーの調製において有用であるアリールシクロブテン第1モノマーとしては、式(1)を有するものが挙げられるが、これらに限定されず、
【0016】
【化1】
【0017】
式中、B
1はn価の連結基であり、Arは多価アリール基であり、シクロブテン環の炭素原子はArの同じ芳香族環上の隣接する炭素原子と結合し、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数であり、R
1及びR
2の各々は独立して、一価の基であり、2つのR
1部分が、それらが結合する炭素と一緒になって、カルボニルまたはチオカルボニルを形成し得、2つのR
2部分が、それらが結合する炭素と一緒になって、カルボニルまたはチオカルボニルを形成し得る。好ましくは、多価アリール基、Arは、1〜3つの芳香族炭素環またはヘテロ芳香族環で構成され得る。Arは、単一の芳香族環、より好ましくはフェニル環を含むことが好ましい。Arがフェニル環であるとき、モノマーはベンゾシクロブテン(BCB)モノマーである。Arは、C
1−6アルキル、トリ−C
1−6−アルキルシリル、C
1−6アルコキシ、ハロ、及びカルボキシルから選択される1〜3個の基で、好ましくはC
1−6アルキル、トリ−C
1−3−アルキルシリル、C
1−3アルコキシ、クロロ、及びカルボキシルのうちの1つ以上で、ならびにより好ましくはC
1−3アルキル、トリ−C
1−3−アルキルシリル、C
1−3アルコキシ、及びカルボキシルのうちの1つ以上で、随意に置換される。Arは、非置換であるか、またはカルボキシルで置換されていることが好ましい。n=1または2であり、より好ましくはn=1であることが好ましい。m=1〜4であり、より好ましくはm=2〜4であり、さらにより好ましくはm=2であることが好ましい。好ましくは、各R
1及びR
2は独立して、H、C
1−6アルキル、C
1−6アルケニル、C
1−6アルコキシ、カルボキシ、C
2−6カルボキシ含有部分、C
2−6ケト含有部分、C
1−6アミド含有部分、C
2−6アルコキシアルカノール、C
2−6アルコキシエステル、及びハロから、ならびにより好ましくはH、C
1−3アルキル、C
1−3アルコキシ、及びハロから選択される。好適な単一の価のB
1基は、好ましくは式−[C(R
3)
2−C(R
4)
2]
×Z
1または−[C(R
3)=CR
4]
×Z
1を有し、式中、各R
3及びR
4は独立して、水素、C
1−6アルキル、及びアリールから選択され、Zは、水素、C
1−6アルキル、C
6−10アリール、シロキサリール、−CO
2R
5から選択され、各R
5は独立して、H、C
1−6アルキル、C
1−6ヒドロキシアルキル、C
6−10アリール、C
6−10ヒドロキシアリール、C
7−20アラルキル、C
7−20ヒドロキシアラルキル、及びC
7−20アルカリールから選択され、x=1または2である。好ましくは、R
3及びR
4は独立して、H、C
1−3アルキル、アリール、ならびにより好ましくはH及びC
1−3アルキルから選択される。R
5は、H、C
1−3アルキル、C
1−6ヒドロキシアルキル、C
6−10アリール、C
6−10ヒドロキシアリール、及びC
7−20ヒドロキシアラルキルであることが好ましい。Z
1は、好ましくはシロキシルまたは−CO
2R
5である。好ましいシロキシル基は、式−[Si(R
6)
2−O]p−Si(R
6)
2−を有し、式中、各R
6は独立して、H、C
1−6アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリールから選択され、pは1以上の整数である。R
6は、C
1−3アルキル、C
6−10アリール、及びC
7−20アラルキルから選択されることが好ましい。好適なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、及びフェニルプロピルが挙げられる。好ましくは、B
1は1つ以上の炭素−炭素二重結合(エチレン性不飽和)を含む。
【0018】
好ましくは、アリールシクロブテンポリマーは、重合単位として、式(2)の1つ以上のビス−ベンゾシクロブテンモノマーを含み、
【0019】
【化2】
【0020】
式中、各R
7及びR
8は独立して、H、C
1−6アルキル、C
1−6アルケニル、C
1−6アルコキシ、ハロ、カルボキシ、C
2−6カルボキシ含有部分、C
2−6ケト含有部分、C
1−6アミド含有部分、C
2−6アルコキシアルカノール、C
2−6アルコキシエステル、−O−C
1−20アルキル、−(C=O)−C
1−20アルキル、−O−(C=O)−C
1−20アルキル、−(C=O)−O−C
1−20アルキル、−O−C
6−20アリール、−C(O)−C
6−20アリール、−O−C(O)−C
6−20アリール、及び−C(O)−O−C
6−20アリールから、ならびに好ましくはH、C
1−3アルキル、C
1−3アルコキシ及びハロから選択され、2つのR
7部分が、それらが結合する炭素と一緒になって、カルボニルまたはチオカルボニルを形成し得、2つのR
8部分が、それらが結合する炭素と一緒になって、カルボニルまたはチオカルボニルを形成し得、各R
9は独立して、C
1−6アルキル、トリ−C
1−6−アルキルシリル、C
1−6アルコキシ、及びハロから選択され、各R
10は独立して、飽和またはエチレン性不飽和であり得る二価の有機基であり、各R
11は独立して、H、C
1−6アルキル、C
7−20アラルキル及びフェニルから選択され、pは1以上の整数であり、qは0〜3の整数である。各R
7及びR
8は好ましくは独立して、H、C
1−3アルキル、及びC
1−3アルコキシから選択され、ならびにより好ましくは、各R
7及びR
8はHである。各R
9は独立して、C
1−6アルキル、トリ−C
1−3−アルキルシリル、C
1−3アルコキシ、及びクロロから、ならびにより好ましくはC
1−3アルキル、トリ−C
1−3−アルキルシリル、及びC
1−
3アルコキシから選択されることが好ましい。好ましくは、各R
10は独立して、C
2−6アルキル、C
2−6アルケニル、及びC
2−6アルキニルから選択され、ならびにより好ましくは、各R
10は独立して、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、及び−C≡C−から選択される。各R
11は、好ましくはC
1−3アルキルから選択され、及びより好ましくは、各R
11はメチルである。好ましくは、p=1〜5であり、より好ましくはp=1〜3であり、さらにより好ましくはp=1である。q=0であることが好ましい。式(2)の、特に好ましいアリールシクロブテンモノマーは、式(3)を有する、1,3−ビス(2−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル−エテニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(DVS−ビスBCB)である。
【0021】
【化3】
【0022】
本アリールシクロブテンポリマーは、好ましくは重合単位として、式(4)の1つ以上のベンゾシクロブテンモノマーを含み、
【0023】
【化4】
【0024】
式中、各R
12及びR
13は独立して、H、C
1−6アルキル、C
1−6アルケニル、C
1−6アルコキシ、ハロ、カルボキシ、C
2−6カルボキシ含有部分、C
2−6ケト含有部分、C
1−6アミド含有部分、C
2−6アルコキシアルカノール、C
2−6アルコキシエステル、−O−C
1−20アルキル、−(C=O)−C
1−20アルキル、−O−(C=O)−C
1−20アルキル、−(C=O)−O−C
1−20アルキル、−O−C
6−20アリール、−(C=O)−C
6−20アリール、−O−(C=O)−C
6−20アリール、及び−(C=O)−O−C
6−20アリールから、ならびに好ましくはH、C
1−3アルキル、及びC
1−3アルコキシから選択され、2つのR
12部分が、それらが結合する炭素と一緒になって、カルボニルまたはチオカルボニルを形成し得、2つのR
13部分が、それらが結合する炭素と一緒になって、カルボニルまたはチオカルボニルを形成し得、各R
14は独立して、C
1−6アルキル、トリ−C
1−6−アルキルシリル、C
1−6アルコキシ、及びハロから選択され、Yは−SO
3R
15または3〜15個の炭素原子を有し、少なくとも1つの−OH部分または保護カルボキシル部分を有する一価のラジカルであり、R
15はHまたは1〜20の炭素原子を有する一価のラジカルであり、fは0〜2の整数である。「C
1−6アミド含有部分」という用語は、1〜6個の炭素原子を有し、XがHまたはヒドロカルビル部分であり得る−C(O)−NX2部分を有する任意の部分を指す。各R
12及びR
13は好ましくは独立して、H、C
1−3アルキル、C
1−3アルコキシ及びハロから選択され、ならびにより好ましくは、各R
12及びR
13はHである。好ましくは、各R
14は独立して、C
1−6アルキル、トリ−C
1−3−アルキルシリル、C
1−3アルコキシ、及びクロロから、ならびにより好ましくはC
1−3アルキル、トリ−C
1−3−アルキルシリル、及びC
1−
3アルコキシから選択される。Yの一価のラジカルは、脂肪族及び/または芳香族であり得る。典型的に、Yは、1〜5つの−OH部分、好ましくは1〜3つ、より好ましくは1または2つ、さらにより好ましくは1つの−OH部分を有する。Yは、3〜15個の炭素原子を有し、少なくとも1つの−OH部分を有する、飽和または不飽和の一価のラジカルであり得、好ましくはエチレン性不飽和である。より好ましくは、Yの少なくとも1つの−OH部分は、−CO
2Hまたは−SO
3Hである。R
15はH、C
1−10アルキル、C
7−16アラルキル、またはC
6−12アリールであることが好ましい。式(4)の好ましい化合物は、式中、Yが−CH=CHC(=O)OR
16、−CH=CH−CH
2OH、−CH
2−CH=CHC
6H
4OH、及び−CH=CHCH
2C
6H
4OHから選択され、式中、R
16がH、C
2−8ヒドロキシアルキル、及びカルボキシル部分の酸素に直接結合する1つ以上の第四級炭素を有するC
4−8アルキルから選択されるものである。より好ましいものは、式(4)の化合物が、式中、Yが−CH=CHC(=O)OR
16、さらにより好ましくは−CH=CHC(=O)OHであるものである。f=0であることが好ましい。
【0025】
本発明のポリマーは、重合単位として、1つのアリールシクロブテン第1モノマー、または2つ以上の異なるアリールシクロブテン第1モノマーの混合物を含み得る。好ましくは、本ポリマーは、2つの異なるアリールシクロブテンモノマーを含む。2つの異なるアリールシクロブテンモノマーが使用されるとき、第1の異なるアリールシクロブテンモノマーと第2の異なるアリールシクロブテンモノマーとのモル比は、1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5、及びより好ましくは25:75〜75:25である。本ポリマーが、重合単位として、カルボン酸、保護カルボン酸、及びスルホン酸から選択される1つ以上の部分を含む、1つ以上のアリールシクロブテンモノマーを含むことが、さらに好ましい。本ポリマーが、重合単位として、上述の式(2)の1つ以上のアリールシクロブテンモノマーを含むことも、また好ましい。さらにより好ましくは、本ポリマーは、重合単位として、上述の式(2)の1つ以上のアリールシクロブテンモノマーならびにカルボン酸、保護カルボン酸、及びスルホン酸から選択される1つ以上の部分を含む1つ以上のアリールシクロブテンモノマーを含む。
【0026】
アリールシクロブテン部分を含まない、2つ以上のアリル部分を有する、任意のモノマーであって、本アリールシクロブテンポリマーを形成するために、1つ以上のアリールシクロブテン第1モノマーと共重合する任意のモノマーは、本発明において第2モノマーとして好適に使用され得るが、但し、1つ以上の第2モノマーがアリル置換ビスマレイミド誘導体ではないことを条件とする。第2モノマーとして有用である化合物は、モノマー化合物またはオリゴマー化合物であり得る。第2モノマーは、2つ以上のアリル部分を有し、2〜20のアリル部分を有し得る。好ましくは、第2モノマーは、2〜10、より好ましくは2〜6つ、及びさらにより好ましくは2〜4つのアリル部分を有する。好適なアリル部分は、アリルエーテル部分、アリルエステル部分、アリルアミン部分、アリルアミド部分、アリルケトン部分、及びアリルアリール部分、ならびに好ましくはアリルエーテル部分、アリルエステル部分、及びアリルアリール部分から選択される。1つの好ましい実施形態において、第2モノマーは、好ましくはカルボン酸、保護カルボン酸、及びスルホン酸部分を含まない。
【0027】
好ましくは、1つ以上の第2モノマーが式(5)の化合物から選択され、
【0028】
【化5】
【0029】
式中、各R
17は独立して、H及びC
1−30一価ヒドロカルビル残基から選択され、Eは、O、S、S−S、N(R
18)、C(O)、−O−C(O)−O−、−N(R
18)−C(O)−、−N(R
18)−C(O)−N(R
18)−、S(O)
2、C
6−20アリール、置換C
6−20アリール、及び−O−G
1−O−から選択され、各R
18は独立して、H、C
1−12アルキル、C
2−12アルケニル、C
6−10アリール、及び置換C
6−10アリールから選択され、G
1は、n+1価の有機残基であり、nは1〜5の整数である。好ましくは、n=1〜3、及びより好ましくはn=1または2である。各R
17は独立して、H、C
1−30アルキル、置換C
1−30アルキル、C
2−30アルケニル、置換C
2−30アルケニル、C
2−30アルキニル、置換C
2−30アルキニル、C
5−30アリール、及び置換C
5−30アリールから、より好ましくはH、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、置換C
2−20アルケニル、C
6−20アリール、及び置換C
6−20アリールから選択され、ならびにさらにより好ましくは、各R
17はHであることが好ましい。好ましくは、EはO、S、N(R
18)、C(O)、−O−C(O)−O−、−N(R
18)−C(O)−N(R
18)−、S(O)
2、C
6−20アリール、置換C
6−20アリール、及び−O−G
1−O−から、ならびにより好ましくはO、C(O)、−O−C(O)−O−、C
6−20アリール、置換C
6−20アリール、及び−O−G
1−O−から選択される。各R
18は独立して、H、C
1−10アルキル、C
2−10アルケニル、C
6−10アリール、及び置換C
6−10アリールから選択されることが好ましい。
【0030】
式(5)において、G
1は、好ましくは、1〜100個の炭素原子、より好ましくは1〜80個、さらにより好ましくは1〜60個、及びさらにより好ましくは1〜50個の炭素原子を有する、n+1価の有機残基である。G
1の有機残基は、酸素、窒素、及び硫黄、好ましくは酸素及び窒素、ならびにより好ましくは酸素から選択される、1個以上のヘテロ原子を含有し得る。G
1の有機残基は、ヒドロキシル、第一級、第二級、または第三級アミノ、ケト、エステル、エーテル、スルフィド、ジスルフィド、及びスルホニルから選択される1つ以上の部分をさらに含有し得る。より好ましくは、G
1は、−C(O)−R
19−C(O)−、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、置換C
2−20アルケニル、C
2−20アルキニル、置換C
2−20アルキニル、(C
2−8アルキレンオキシ)
y1、C
6−30アリール、置換C
6−30アリール、及び−Ar
1−G
2−Ar
2−から選択され、式中、R
19は、化学結合、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、置換C
2−20アルケニル、C
2−20アルキニル、置換C
2−20アルキニル、C
6−20アリール、及び置換C
6−20アリールから選択され、y1は、1〜100の整数であり、Ar
1及びAr
2は独立して、C
6−20アリールまたは置換C
6−20アリールであり、G
2は、化学結合、C(O)、S(O)
2、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、及び−(CR
20R
21−Ar
3)
y2CR
20R
21−から選択され、R
20及びR
21の各々は独立して、H、OH、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、及びC
6−20アリールから選択され、各Ar
3は独立して、C
6−20アリール及び置換C
6−20アリールから選択され、y2は1〜50の整数である。G
1は、より好ましくは−C(O)−R
19−C(O)−、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、(C
2−8アルキレンオキシ)
y1、C
6−30アリール、置換C
6−30アリール、及び−Ar
1−G
2−Ar
2−から、ならびにさらにより好ましくは−C(O)−R
19−C(O)−、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、(C
2−4アルキレンオキシ)
y1、C
6−30アリール、置換C
6−30アリール、及び−Ar
1−G
2−Ar
2−から選択される。R
19は、C
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、置換C
2−20アルケニル、C
2−20アルキニル、置換C
2−20アルキニル、C
6−20アリール、及び置換C
6−20アリールから、ならびにより好ましくはC
1−20アルキル、置換C
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、置換C
2−20アルケニル、C
6−20アリール、及び置換C
6−20アリールから選択されることが好ましい。好ましくは、y1は、1〜75、より好ましくは1〜50の整数である。y2は1〜30の整数であることが好ましい。Ar
1及びAr
2は独立して、フェニル、置換フェニル、ナフチル、及び置換ナフチルから選択されることが好ましい。G
2は、好ましくは化学結合、C(O)、S(O)
2、C
1−15アルキル、ハロC
1−15アルキル、及び(CR
20R
21−Ar
3)
y2CR
20R
21から選択される。R
20及びR
21の各々は独立して、H、C
1−10アルキル、及びC
6−20アリールから選択されることが好ましい。各Ar
3は独立して、フェニル、置換フェニル、ナフチル、及び置換ナフチルから選択される。
【0031】
式(5)の好ましいモノマーは、EがO、N(R
18)、C(O)、−O−C(O)−O−、−N(R
18)−C(O)−N(R
18)−、C
6−20アリール、置換C
6−20アリール、及び−O−G
1−O−、ならびに式(6)〜(8)のモノマーから選択されるものであり、
【0032】
【化6】
【0033】
式中、各A
1は独立して、化学結合、−CH
2−、O、及び−C(O)O−から選択され、Ar
4は、C
6−10アリール及び置換C
6−10アリールから選択され、t1=1〜2であり、
【0034】
【化7】
【0035】
式中、各A
2は独立して、化学結合、−CH
2−、O、及び−C(O)O−から選択され、各Ar
5は、C
6−10アリール及び置換C
6−10アリールから選択され、G
3は、化学結合、O、S、S(O)
2、C(O)、C
1−10アルキル、ハロ置換C
1−10アルキル、及び(CR
22R
23−Ar
5)
y3CR
22R
23から選択され、R
22及びR
23の各々は独立して、H、C
1−10アルキル、及びC
6−20アリールから選択され、Ar
5は独立して、C
6−20アリール及び置換C
6−20アリールから選択され、y3は1〜50の整数であり、t2=1〜2であり、t3=1〜2であり、
【0036】
【化8】
【0037】
式中、各A
3は独立して、化学結合、−CH
2−、O、及び−C(O)O−から選択され、G
4は、C
1−20アルキル、ヒドロキシC
1−20アルキル、C
2−20アルケニル、(C
2−6アルキレンオキシ)
y4、C
6−20アリール−置換C
1−20アルキル、及びヘテロ原子含有C
2−20アルケニルであり、y4は、1〜50の整数であり、t4=1〜3であり、式中、R
16及びG
1は上述の通りである。Ar
4は、好ましくはフェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、ならびにより好ましくはフェニル及びナフチルである。各Ar
5は、好ましくは独立して、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、ならびにより好ましくはフェニル及びナフチルから選択される。好ましくは、G
3は、化学結合、O、S(O)
2、C(O)、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、及び(CR
22R
23−Ar
5)
y3CR
22R
23から選択される。好ましくは、R
22及びR
23の各々は独立して、H、C
1−10アルキル、フェニル、置換フェニル、ナフチル、及び置換ナフチルから選択される。各Ar
5は独立して、フェニル、置換フェニル、ナフチル、及び置換ナフチルから選択されることが好ましい。G
4は、C
1−16アルキル、ヒドロキシC
1−16アルキル、C
2−16アルケニル、(C
2−4アルキレンオキシ)
y4、C
6−20アリール−置換C
1−16アルキル、及び酸素含有C
2−16アルケニルであることが好ましい。
【0038】
式(5)の例示的な第2モノマーとしては、ジアリルエーテル;ジアリルスルフィド;ジアリルジスルフィド;ジアリルアミン;トリアリルアミン;ジアリルメチルアミン;ジアリルエチルアミン;ジアリルプロピルアミン;N,N−ジアリルアニリン;ジアリルケトン;ジアリルカーボネート;N,N’−ジアリル尿素;ジアリルスルホン;o−、m−、及びp−ジアリルベンゼン;1,3,5−トリアリルベンゼン;ジアリルアニソール;ジアリルナフタレン;1,5−ジアリルナフタレン−2,6−ジオール;4,4’−ジアリルオキシビフェニル及び2,2’−ジアリルオキシビフェニルなどのジアリルオキシビフェニル;ビスフェノールAジアリルエーテル;ビスフェノールSジアリルエーテル;ビスフェノールFジアリルエーテル;ビスフェノールAFジアリルエーテル;1,2−ジアリルオキシナフタレン、1,5−ジアリルオキシナフタレン、1,8−ジアリルオキシナフタレン、2,7−ジアリルオキシナフタレン及び2,3−ジアリルオキシナフタレンなどのジアリルオキシナフタレン;ジアリルオキシビナフタレン;1,3−ジアリルオキシベンゼン;1,2−ジアリルオキシベンゼン;1,4−ジアリルオキシベンゼン;1,3,5−トリアリルオキシベンゼン;1,2,3−トリアリルオキシベンゼン;1,2,4−トリアリルオキシベンゼン;1,3−ジアリルオキシ−5−ヒドロキシベンゼン;トリメチロールプロパンジアリルエーテル;トリメチロールプロパントリアリルエーテル;ペンタエリスリトールジアリルエーテル;ペンタエリスリトールトリアリルエーテル;ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル;2,2−ジメチルプロパン−1−3−ジアリルエーテル;エチレングリコールジアリルエーテル;ジエチレングリコールジアリルエーテル;プロピレングリコールジアリルエーテル;ジプロピレングリコールジアリルエーテル;トリプロピレングリコールジアリルエーテル;1,4−ブタンジアリルエーテル;ジアリルフタレート;ジアリルイソフタレート;ジアリルテレフタレート;トリアリルトリメサート;ジアリルシュウ酸;ジアリルマロン酸;ジアリルコハク酸;ジアリルマレイン酸;ジアリルグルタル酸;ジアリルアジピン酸;ジアリルhex−3−エンジカルボキシレート(endicarboxylate);ジアリルチオフェンジカルボキシレート;ジアリルフランジカルボキシレート;ジアリルビピリジンジカルボキシレート;ジアリルピリジンジカルボキシレート;2,5−ビス((アリルオキシ)メチル)テトラヒドロフラン;及び9,9−ビス((アリルオキシ)メチル)フルオレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明において、第2モノマーとして有用な化合物は、一般的に市販されているか、または当業界で既知の様々な方法によって調製され得る。例えば、無水フタル酸または無水コハク酸などのカルボン酸無水物は、アリル臭化マグネシウムの2つの等価物と好適な溶媒中で反応し、ジアリルフタレート及びジアリルコハク酸などの対応するジアリルエステルをそれぞれ供給し得る。
【0040】
本アリールシクロブテンポリマーは、随意に、重合単位として、1つ以上のジエンまたは親ジエン
(ジエノフィルともいう)部分を含む1つ以上の第3モノマーを、さらに含み得る。かかる第3モノマーは、第1及び第2モノマーと異なる。1つの親ジエン部分を含む第3モノマーは、成長するアリールシクロブテンポリマー鎖をキャップするために使用され得、かかる第3モノマーの非存在下で調製されるアリールシクロブテンポリマーに対する分子量を効果的に低減する。2つ以上の親ジエン部分を含む第3モノマーは、アリールシクロブテンポリマーに他の性質を加えるために使用され得る。かかる第3モノマーの選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0041】
アリールシクロブテン第1モノマーの合計のモルと、本ポリマーを形成するために使用される第2モノマーの合計のモルとの比率は、99:1〜1:99、好ましくは99:1〜50:50、及びより好ましくは90:10〜60:40で変化し得る。随意の第3モノマーは、本アリールシクロブテンポリマーを形成するために使用されるモノマーの合計のモルに基づいて、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%、及びより好ましくは1〜15モル%の量で使用され得る。典型的に、本アリールシクロブテンポリマーは、1,000〜50,000AMU、及び好ましくは1,500〜35,000AMU、ならびにより好ましくは2,500〜25,000の重量平均分子量(M
w)を有する。
【0042】
本発明のアリールシクロブテンポリマーは、米国特許第4,812,588号、同第5,136,069号、同第5,138,081号、及び国際特許出願第WO94/25903号に記載されるものなどの、任意の好適な手段によって調製され得る。一般的に、本ポリマーは、本アリールシクロブテン第1モノマー及び1つ以上の第2モノマー、ならびにあらゆる随意の第3モノマーのうちの1つ以上を、典型的には好適な溶媒中で、使用される特定のモノマー(複数可)の重合開始温度まで加熱することによって調製される。理論によって制約されることを望むものではないが、これらのモノマーは、ディールスアルダー付加環化によって重合するために、重合を起こすのに触媒開始剤または硬化剤は必要でないと考えられる。典型的に、これらのモノマーの重合は、≧150℃、好ましくは≧170℃の温度で開始するが、より低い温度またはより高い温度が、選択された特定のモノマー(複数可)に応じて使用され得る。本モノマーが重合を起こす温度は、シクロブテン環上の任意の置換基によって影響を受ける。一般的に、シクロブテン環が非置換であるときは、重合は≧170℃で開始する。シクロブテン環上の電子供与性置換基または電子求引性置換基は、一般的に重合開始温度を下げる。好適な重合溶媒は、1つ以上のモノマーを溶解し、モノマーの重合温度を超える沸騰点を有する任意の有機溶媒である。例示的な有機溶媒としては、アミド及びスルホンなどの極性非プロトン性溶媒が挙げられる。重合時間は、典型的に1〜60時間である。ある特定の用途について、オリゴマーの段階で重合を止めることが望ましい場合がある。本発明の1つ以上のモノマーで構成される、かかるオリゴマーは、二量体、トリマー、四量体等で主に構成され得、次いでさらに重合され得る。本明細書において使用する場合、「本発明のモノマー」及び「本モノマー」という用語は、本明細書に記載される個別の化合物、ならびに次いでさらに重合されるそれらの二量体、トリマー、及び四量体を含むことが意図される。本ポリマーは、そのままで使用され得るか、または水もしくはメタノールなどの非溶媒を添加して溶液からポリマーを沈殿させ、その後、有機溶媒を除去することにより単離され得る。
【0043】
本ポリマーの組成物は、本発明の1つ以上のアリールシクロブテンポリマー及び1つ以上の有機溶媒を典型的に含む。好適な有機溶媒は、本ポリマーが可溶のものである。特に有用な有機溶媒は、アリールシクロブテンポリマーの製造または形成に有用な任意の溶媒である。例示的な有機溶媒としては、トルエン、キシレン、及びメシチレンなどの芳香族炭化水素;2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、及びメチルイソブチルカルビノールなどのアルコール;乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メチル2−ヒドロキシイソブチレート、メチル3−メトキシプロピオネート、及び3−メトキシ−1−ブチルアセテートなどのエステル;ガンマ−ブチロラクトンなどのラクトン;N−メチルピロリジノンなどのラクタム;プロピレングリコールメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体(The Dow Chemical CompanyからP
ROGLYDE(商標)DMMとして市販されている)などのエーテル;シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンなどのケトン;ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本架橋性組成物に有用な好適な随意の添加剤としては、硬化剤、界面活性剤、本モノマーとは異なる二次架橋剤、非架橋モノマー、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、接着促進剤、金属不動態化材料等の各々のうちの1つ以上、及び前述のもののうちの任意のものの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な界面活性剤は、当業者に周知であり、非イオン界面活性剤が好ましい。かかる界面活性剤は、0〜10g/L、好ましくは0〜5g/Lの量で存在し得る。任意の好適な無機充填剤が、随意に本組成物に使用され得、当業者に周知である。例示的な無機充填剤としては、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、炭化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコニア等、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。無機充填剤は、粉末、ロッド、球体の形態、または任意の他の好適な形状であり得る。かかる無機充填剤は、任意の好適な寸法を有し得る。無機充填剤は、組成物の合計重量に基づいて、0〜80重量%の量で使用され得る。本発明のモノマーとは異なる任意の架橋モノマーが架橋剤として使用され得るが、但し、これらが、本組成物を硬化させるのに使用される条件の下、組成物中のアリールシクロブテンポリマーと架橋することを条件とする。好適な架橋剤としては、ポリアミン、ポリチオール、エポキシ樹脂、及び(メタ)アクリレート含有架橋剤が挙げられるが、これらに限定されない。かかる架橋剤の選択は、当業者の能力の範囲内である。かかる架橋剤は、組成物中の重合可能な構成成分の合計重量に基づいて、0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の量で典型的に使用される。1つ以上の非架橋モノマーもまた本組成物に添加され得、組成物中の重合可能な構成成分の合計重量に基づいて、0〜20重量%の量で典型的に存在する。かかる非架橋モノマーは、本組成物中のベンゾシクロブテン系構成成分と重合し得る1つまたは2つの重合可能な部分を含有する。好ましくは、金属不動態化材料は、銅不動態化剤である。好適な銅不動態化剤は、当業界で周知であり、イミダゾール及びベンゾチアゾールを含む。
【0045】
様々な硬化剤が本組成物に使用され得る。好適な硬化剤は、ベンゾシクロブテン系材料の硬化を助け得、熱または光によって活性化され得る。例示的な硬化剤としては、熱生成開始剤及び光活性化合物(光生成開始剤)が挙げられるが、これらに限定されない。かかる硬化剤の選択は、当業者の能力の範囲内である。好ましい熱生成開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンゾイルペルオキシド、及びジクミルパーオキサイドなどのフリーラジカル開始剤であるが、これらに限定されない。好ましい光活性硬化剤は、Irgacureの銘柄でBASFから入手可なフリーラジカル光開始剤能及びDNQ化合物のスルホン酸エステルを含むジアゾナフトキノン(DNQ)化合物である。例示的なフリーラジカル光開始剤は、Iracure 379(2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−ワン)及びIrgacure 907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン)である。好適なDNQ化合物は、DNQスルホン酸エステル部分などのDNQ部分を有し、本組成物中で光活性化合物として機能する任意の化合物であり、つまりこれらは、適切な放射に露出されると溶解抑制剤として機能する。好適なDNQ化合物は、米国特許第7,198,878号及び同第8,143,360号に開示される。光活性化合物の量は、アリールシクロブテンポリマーの合計重量に基づいて、0〜30重量%に変化する。存在するとき、光活性構成成分は、ベンゾシクロブテン系構成成分の合計重量に基づいて、5〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜25重量%の量で典型的に使用される。
【0046】
任意の好適な接着促進剤が本組成物に使用され得、かかる接着促進剤の選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。好ましい接着促進剤はシラン含有材料、及びより好ましくはトリアルコキシシラン含有材料である。例示的な接着促進剤としては、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンなどのビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルマレインアミド酸、トリエトキシシリルプロピルマレインアミド酸、及びフェニルアミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキルトリアルコキシシラン;ならびに他のシランカップリング剤、ひいては前述のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に好適な接着促進剤としては、Dow Electronic Materials(Marlborough,Massachusetts)から入手可能な、AP 3000、AP 8000、及びAP 9000Sが挙げられる。本架橋性組成物は、組成物の合計重量に基づいて、0〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは2〜10重量%の接着促進剤を典型的に含有する。
【0047】
本組成物は、1つ以上の本ポリマーと、1つ以上のオリゴマーと、あらゆる随意の有機溶媒または追加の構成成分とを、任意の順序で合わせることによって調製される。本組成物が光活性化合物などの硬化剤を含有するとき、まず硬化剤を好適な有機溶媒に溶解し、次いで1つ以上の本ポリマーとあらゆる随意の界面活性剤と合わせ、次いであらゆる随意の接着促進剤と合わせることが好ましい。
【0048】
本組成物のうちの任意のものは、基材上に、改善された引張強度及び伸度を有するアリールシクロブテンポリマーの層を形成する際に有用である。かかるアリールシクロブテンポリマー層は、誘電層、永久接合剤、応力緩衝層等として好適である。本組成物は、任意の好適な方法によって基材上にコーティングされ得る。本組成物を配置するための好適な方法としては、他の方法の中でも、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、蒸着、及び真空積層などの積層が挙げられるが、これらに限定されない。半導体製造産業では、スピンコーティングが、既存の器具及びプロセスを活用するために、好ましい方法である。スピンコーティングでは、組成物の固体分は回転速度と共に調整され得、それが適用される表面上の組成物の所望の厚さを達成する。典型的に、本組成物は400〜4000rpmの回転速度でスピンコーティングされる。ウエハまたは基材上に分配される本組成物の量は、組成物内の合計固体分、結果として得られる層の所望の厚さ、及び当業者に周知の他の要因に依存する。本組成物のフィルムまたは層がスピンコーティングなどによって流延されると、溶媒のほとんど(または全て)がフィルムの堆積中に蒸発する。好ましくは、組成物は、表面上に配置された後、加熱(ベーク)され、残りのいかなる溶媒をも除去する。典型的なベーク温度は90〜160℃であるが、他の温度が好適に使用され得る。残留溶媒を除去するためのかかるベークは、典型的に約2分間行われるが、より長いかまたはより短い時間が好適に使用され得る。アリールシクロブテンオリゴマーは、ある時間加熱することによって典型的に硬化される。好適な硬化温度は、180〜250℃以上の範囲である。典型的に、硬化時間は1〜600分間の範囲である。
【0049】
代替の好ましい方法では、本組成物は、乾燥フィルムとして形成され得、積層により基材の表面上に配置される。真空積層技術を含む様々な好適な積層技術が使用され得、これらは当業者に周知である。乾燥フィルムを形成することにおいて、本組成物は、最初に、ポリエステルシート、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)シート、またはK
APTON(商標)ポリイミドなどのポリイミドシートのような、好適なフィルム支持シートの前面に、スロットダイコーティング、グラビア印刷、または別の適切な方法を使用して、コーティングされるなどして配置される。組成物は、次いで好適な温度、例えば90〜140℃で、適切な時間、例えば1〜30分間ソフトベークされ、いかなる溶媒をも除去する。次いで、ポリエチレンなどのポリマーフィルム被覆シートが、室温で乾燥組成物上にロール積層され、保存及び操作中に組成物を保護する。最初に被覆シートが除去され、基材上に乾燥組成物を配置する。次いで、支持シート上の乾燥組成物は、ロール積層または真空積層を使用して、基材表面に積層される。積層温度は、20〜120℃の範囲であり得る。次いで、支持シートは除去(剥離)され、その表面上に乾燥組成物を残す。
【0050】
幅広い様々な電子デバイス基材が、本発明において用いられ得る。電子デバイス基材は、任意の電子デバイスの製造における使用のための任意の基材である。例示的な電子デバイス基材としては、半導体ウエハ、ガラス、サファイア、ケイ酸材料、窒化ケイ素材料、炭化ケイ素材料、ディスプレイデバイス基材、エポキシ成形化合物ウエハ、回路基板基材、及び熱安定性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用する場合、「半導体ウエハ」という用語は、半導体基材、半導体デバイス、及び単一チップウエハ、複数チップウエハ、様々なレベル用のパッケージ、発光ダイオード(LED)用の基材、またははんだ接続を必要とする他のアセンブリを含む、様々なレベルの相互接続用の様々なパッケージを包含することが意図される。ケイ素ウエハ、ガリウムヒ素ウエハ、及びケイ素ゲルマニウムウエハなどの半導体ウエハは、パターン化されてもパターン化されなくてもよい。本明細書において使用する場合、「半導体基材」という用語は、半導体デバイスの有効または動作可能部分を含む、1つ以上の半導体層または構造を有する、任意の基材を含む。「半導体基材」という用語は、半導体デバイスなどの、半導体材料を含む任意の構成を意味するように定義される。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロエレクトロニクスデバイスが製作されたかまたはされている、半導体基材を指す。熱安定性ポリマーとしては、ポリイミド(例えば、DuPont,Wilmington,Delawareから入手可能なK
APTON(商標)ポリイミド)などの、アリールシクロブテン材料を硬化させるために使用される温度に安定性である任意のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
接着促進剤を含有しない本発明の組成物が使用されるとき、本組成物でコーティングされる基材の表面は、随意に最初に好適な接着促進剤に接触させられ得るか、または蒸気処理され得る。かかる処理は、本アリールシクロブテンポリマーの基材表面への接着を改善する。スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ロールコーティング、蒸着などの任意の好適な方法が、基材表面を接着促進剤と接触させるために使用され得る。スピンコーティングは、基材表面を接着促進剤と接触させるための、好ましい方法である。任意の好適な接着促進剤が使用され得、かかる接着促進剤の選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。好ましい接着促進剤はシラン含有材料、及びより好ましくはトリアルコキシシラン含有材料である。基材表面の前処理に有用な例示的な接着促進剤は、上述のものである。プラズマ処理などの、当業界で既知の様々な蒸気処理は、本発明のアリールシクロブテンポリマーの基材表面への接着を増加させるために使用され得る。ある特定の用途では、表面を本組成物でコーティングする前に、基材表面を処理するために接着促進剤を使用することが好ましい場合がある。
【0052】
本アリールシクロブテン系ポリマーは、従来のベンゾシクロブテン系ポリマーから調製されたコーティングと比較して改善された引張強度、伸度及び/または低減した残留応力を有するアリールシクロブテン系コーティングの形成する際に有用である。
【0053】
実施例1:窒素パージした反応容器内で、3−メトキシブチルアセテート(41g)中の、ベンゾシクロブテンアクリル酸(BCB−AA、14.63g、84.00mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(12.66g、32.40mmol)と、第2モノマーとしてのジアリルフタレート(0.887g、3.60mmol)との混合物を、24時間、175℃まで加熱した。次いで、温度を165℃まで低下させ、少量の試料を周期的に除去し、ポリスチレン標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィーによって結果として得られるポリマーのM
wを測定することによって分子量の増大を監視しながら反応させ続けた。観察したM
wが4800〜6500AMUになったとき、反応器を80℃まで冷却し、混合物を熱いまま1μmのポリプロピレンフィルターを通し濾過して、ポリマー1を得た。
【0054】
実施例2:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(41g)中の、BCB−AA(14.63g、84.00mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(11.25g、28.80mmol)と、第2モノマーとしてのジアリルフタレート(1.773g、7.20mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー2を得た。
【0055】
実施例3:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(41g)中の、BCB−AA(14.63g、84.00mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(9.845g、25.20mmol)と、第2モノマーとしてのジアリルフタレート(2.660g、10.80mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー3を得た。
【0056】
実施例4:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(50g)中の、BCB−AA(17.68g、101.5mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(15.29g、39.15mmol)と、第2モノマーとしてのジアリルイソフタレート(1.07g、4.35mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー4を得た。
【0057】
実施例5:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(51g)中の、BCB−AA(18.29g、105mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(14.06g、36mmol)と、第2モノマーとしてのジアリルイソフタレート(2.22g、9.00mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー5を得た。
【0058】
実施例6:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(50g)中の、BCB−AA(18.29g、105mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(12.31g、31.5mmol)と、第2モノマーとしてのジアリルイソフタレート(3.32g、13.5mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー6を得た。
【0059】
実施例7:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(51g)中の、BCB−AA(18.29g、105mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(15.82g、40.5mmol)と、第2モノマーとしての4,4’−ビス−A−ジフェノール−ジアリルエーテル(1.388g、4.50mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー7を得た。
【0060】
実施例8:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(50g)中の、BCB−AA(18.29g、105mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(14.06g、36.0mmol)と、第2モノマーとしての4,4’−ビス−A−ジフェノール−ジアリルエーテル(2.776g、9.00mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー8を得た。
【0061】
実施例9:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:3−メトキシブチルアセテート(52g)中の、BCB−AA(18.9g、108.5mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(12.72g、32.55mmol)と、第2モノマーとしての4,4’−ビス−A−ジフェノール−ジアリルエーテル(4.302g、13.95mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー9を得た。
【0062】
実施例10:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(36.6g)中の、BCB−AA(12.72g、73.0mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(10.19g、26.1mmol)と、第2モノマーとしてのトリメチロールプロパンジアリルエーテル(1.08g、5.04mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー10を得た。
【0063】
実施例11:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(36.0g)中の、BCB−AA(13.2g、75.8mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(8.54g、21.8mmol)と、第2モノマーとしてのトリメチロールプロパンジアリルエーテル(2.37g、11.0mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー11を得た。
【0064】
実施例12:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(40g)中の、BCB−AA(13.8g、79mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(6.76g、17.3mmol)と、第2モノマーとしてのトリメチロールプロパンジアリルエーテル(3.76g、17.5mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー12を得た。
【0065】
実施例13:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(37g)中の、BCB−AA(14.4g、82.7mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(4.63g、11.6mmol)と、第2モノマーとしてのトリメチロールプロパンジアリルエーテル(5.2g、24.4mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー13を得た。
【0066】
実施例14:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(36g)中の、BCB−AA(12.6g、72.6mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(10.2g、26.1mmol)と、第2モノマーとしてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(1.36g、5.3mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー14を得た。
【0067】
実施例15:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(37g)中の、BCB−AA(13.0g、74.9mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(8.35g、21.4mmol)と、第2モノマーとしてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(2.80g、10.9mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー15を得た。
【0068】
実施例16:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(32g)中の、BCB−AA(13.5g、77.5mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(6.47g、16.6mmol)と、第2モノマーとしてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(4.33g、16.9mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー16を得た。
【0069】
実施例17:実施例1の手順を、モノマーの量が以下の通りであることを除いて繰り返した:Proglyde DMM(36g)中の、BCB−AA(13.3g、76.3mmol)と、第1モノマーとしてのDVS−ビスBCB(4.54g、11.6mmol)と、第2モノマーとしてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(5.71g、22.3mmol)とを、前の通りにBステージ化して、ポリマー17を得た。
【0070】
実施例18:実施例1の手順を、モノマーの量が変化され、第2モノマーが表1に示されるように変化されたことを除いて繰り返し、それは表1に示されるポリマーが得られると予想される。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例19:コーティング組成物を、2.930gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)中の3.216gのジアゾナフトキノン(DNQ)光活性化合物(PAC)、1.604gの3−メトキシブチルアセテート、1.755gのアニソール、及び0.62gのDCT L−7604界面活性剤を瓶内のPGMEA溶媒中に溶解させることによって調製した。PACは、平均で65モル%のエステル化フェノールを有する、4,4’−((2−ヒドロキシフェニル)メチレン)ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)の2,1,5−DNQスルホン酸エステルである。次に、PGMEA中の、4.679gの50重量%溶液N−540エポキシ架橋剤溶液を、接着促進剤として、12.504gの実施例1からのポリマー1(3−メトキシブチルアセテート中の41重量%)及び0.288gのトリエトキシシリルプロピルマレインアミド酸(PGMEA中の50重量%)と共に添加した。瓶を12時間回転させて、均質な溶液を形成した。消泡後、この溶液を、使用前に0.45μmのナイロンフィルターを通して濾過して、コーティング組成物1を得た。
【0073】
実施例20:実施例19の手順を、実施例2及び3からのポリマー2及び3を使用してそれぞれ繰り返して、コーティング組成物2及び3をそれぞれ得た。
【0074】
比較実施例1:実施例19の手順を、ポリマー1を比較ポリマー1と置き換えたことを除いて繰り返して、比較コーティング組成物1を得た。比較ポリマー1は、重合単位として、70:30のモル比の、BCB−AA及びDVS−ビス−BCBのみで構成される、市販されているアリールシクロブテンポリマーである。
【0075】
実施例21:コーティング組成物1〜3の各々、及び比較コーティング組成物1を、Site Trac TT5−XPコーティング機を使用して、1735rpmで30秒間、200mm最高等級の銅コーティングされたケイ素ウエハ上にスパッタリングし、続いて90℃で90秒間、ソフトベークして、溶媒をさらに除去した。各コーティングのフィルム厚は約5.5μmであった。次いで、コーティングされたウエハを、Blue M Ultra−Tempオーブン(IGF−6680F−4型)中で、窒素下250℃で60分間固く硬化させた。各コーティングの最終フィルム厚は約5μmであり、ウエハを10mm×90mmの試料に切断した。ウエハ試料を、過硫酸アンモニウムの10%溶液に供して、ポリマーフィルムをウエハ試料から剥離させた。フィルムを水で慎重にすすぎ、完全に乾かした。一旦乾燥したら、試料を25.4mmのゲージ長を有する伸度テンプレート上に、透明テープを使用して取り付けた。伸度測定を、Instron 33R4464モデルの計器上で、5mm/秒のクロスヘッド速度及びInstron Bluehill2ソフトウェアを使用して行った。引張強度値を、破断点荷重を元の最小横断面積で除算することによって計算した。各試料の平均引張強度及び伸度%を、本発明の試料と比較試料との間の引張強度及び伸度%の差異と共に表2に報告する。これらの結果から分かるように、本発明のアリールシクロブテンポリマーから形成したフィルムは、従来のアリールシクロブテンポリマーから形成したフィルムと比較して改善した伸度及び引張強度を有する。
【0076】
【表2】