(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492073
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】光シート顕微鏡検査用の装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/34 20060101AFI20190318BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B5/10 B
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-524791(P2016-524791)
(86)(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公表番号】特表2016-525229(P2016-525229A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014064551
(87)【国際公開番号】WO2015004108
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】102013107297.6
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジーベンモルゲン、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】カルクブレナー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リッペルト、ヘルムート
【審査官】
岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−072014(JP,A)
【文献】
特開2010−217473(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/069452(WO,A1)
【文献】
特開2009−042411(JP,A)
【文献】
特開2004−302421(JP,A)
【文献】
特開2013−054175(JP,A)
【文献】
特開2012−189792(JP,A)
【文献】
特開2011−180290(JP,A)
【文献】
特表2009−511998(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0134881(US,A1)
【文献】
特開2007−305973(JP,A)
【文献】
特開2014−202967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
G02B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光シート顕微鏡検査用の装置であって、
媒質(2)内に存在する試料(3)を収容するための試料容器(1)であって、該試料容器(1)は平坦な基準面を基準にして位置決めされている、前記試料容器(1)と、
該試料(3)を光シートにより照明するための照明対物レンズ(6)を備える照明光学系であって、該照明対物レンズ(6)の光軸(7)と該光シートとは、該基準面の法線とゼロ以外の照明角βを成す平面内にある、前記照明光学系と、
検出対物レンズ(8)を備える検出光学系であって、該検出対物レンズの光軸(9)は、該基準面の法線とゼロ以外の検出角δを成す、前記検出光学系とを備える光シート顕微鏡検査用の装置において、
所定の厚さを有し、かつ所定の材料から成る1つまたは複数の層を有する分離層システムであって、該試料(3)の存在する該媒質(2)を該照明対物レンズ(6)および該検出対物レンズ(8)から空間的に分離するための分離層システムを備え、
該分離層システムは、基準面に対して平行に位置決めされ、かつ照明および検出のための該照明対物レンズ(6)および該検出対物レンズ(8)に対して少なくとも接近できる領域内において該媒質(2)と接触する境界面(11)を有し、
前記照明対物レンズ(6)の開口数NABは、前記検出対物レンズ(8)の開口数NADよりも小さく、照明角βは検出角δよりも大きく、
前記照明対物レンズ(6)と前記検出対物レンズ(8)は前記試料容器(1)の上方に配置されており、前記試料容器(1)は、その深さを基準にして前記試料容器(1)の上方4分の1の箇所に前記試料(3)を位置決めするための手段を有することを特徴とする光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項2】
照明光学系および検出光学系のうちの少なくとも一方は、照明光および検出すべき光のうちの少なくとも一方が、前記分離層システムの境界面(11、13)を斜めに貫通することにより発生する収差を低減するための補正手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項3】
前記補正手段は、補正レンズおよび補正素子のうちの少なくとも一方を、前記照明対物レンズ(6)および前記検出対物レンズ(8)のうちの少なくとも一方内に含むことを特徴とする請求項2に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項4】
前記補正レンズは、シリンダレンズとして、または光軸(7、9)に対して傾斜したレンズおよび軸上に配置されていないレンズ(14、15)のうちの少なくとも一方として構成されており、前記補正素子は、非球面またはフリーフォーム面を備える素子として構成されていることを特徴とする請求項3に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項5】
前記補正手段は、照明光および検出光のうちの少なくとも一方の位相面を操作するための、照明ビームパスおよび検出ビームパスのうちの少なくとも一方に配置された適合型光学素子を含むことを特徴とする請求項2に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項6】
光シート顕微鏡検査用の装置であって、
媒質(2)内に存在する試料(3)を収容するための試料容器(1)であって、該試料容器(1)は平坦な基準面を基準にして位置決めされている、前記試料容器(1)と、
該試料(3)を光シートにより照明するための照明対物レンズ(6)を備える照明光学系であって、該照明対物レンズ(6)の光軸(7)と該光シートとは、該基準面の法線とゼロ以外の照明角βを成す平面内にある、前記照明光学系と、
検出対物レンズ(8)を備える検出光学系であって、該検出対物レンズの光軸(9)は、該基準面の法線とゼロ以外の検出角δを成す、前記検出光学系とを備える光シート顕微鏡検査用の装置において、
所定の厚さを有し、かつ所定の材料から成る1つまたは複数の層を有する分離層システムであって、該試料(3)の存在する該媒質(2)を該照明対物レンズ(6)および該検出対物レンズ(8)から空間的に分離するための分離層システムを備え、
該分離層システムは、基準面に対して平行に位置決めされ、かつ照明および検出のための該照明対物レンズ(6)および該検出対物レンズ(8)に対して少なくとも接近できる領域内において該媒質(2)と接触する境界面(11)を有し、
前記照明対物レンズ(6)の開口数NABは、前記検出対物レンズ(8)の開口数NADよりも小さく、照明角βは検出角δよりも大きく、
前記分離層システムは、所定の材料から作製され、かつ所定の厚さを有し、前記試料容器(1)を閉鎖するプレート状またはフォイル状のカバー(12)を備え、
該プレート状またはフォイル状のカバー(12)の第1の大きな面は前記媒質(2)と、照明および検出のための前記照明対物レンズ(6)および前記検出対物レンズ(8)に少なくとも接近できる領域内ではほぼ完全に接触しており、
該カバーの第2の大きな面は、ガス、または分離層システムのさらなるコンポーネントとしての浸漬媒質と、照明および検出のための前記照明対物レンズ(6)および前記検出対物レンズ(8)に少なくとも接近できる領域内で接触しており、
前記カバー(12)のための材料は、前記試料(3)の存在する前記媒質(2)の屈折率から5%未満だけ異なる屈折率を有することを特徴とする光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項7】
前記試料(3)の存在する前記媒質(2)は水であり、前記カバー(12)のための材料は、PTFE、CYTOP(登録商標)、FEP、Teflon(登録商標)AFまたは過フルオロジオキソラン・ポリマーである、請求項6に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項8】
前記カバー(12)はアモルファスポリマーから成り、該アモルファスポリマーのガラス転移温度は、冷えた状態ではポリマーが前記試料(3)の存在する前記媒質(2)の屈折率を有するように調整されている、ことを特徴とする請求項6または7に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項9】
前記カバー(12)のための材料は、第1の成分(22)と第2の成分(23)とから成るナノ構造化された材料であり、
該第1の成分(22)の屈折率は前記媒質(2)の屈折率よりも小さく、該第2の成分(23)の屈折率は前記媒質(2)の屈折率よりも大きく、
該第1の成分(22)から成る領域の平均構造サイズは、照明に使用され検出すべき光の光波長よりも小さい平均直径を有することを特徴とする請求項6に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項10】
前記照明対物レンズ(6)と前記検出対物レンズ(8)は前記試料容器(1)の下方に配置されている、請求項6から9のいずれか1項に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項11】
照明角βと検出角δの和は、90°であることを特徴とする請求項1に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項12】
前記適合型光学素子は、変形可能なミラー(16、17)、空間的光変調器、または位相プレートを含むことを特徴とする請求項5に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【請求項13】
前記ガスは、空気であることを特徴とする請求項6に記載の光シート顕微鏡検査用の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光シート顕微鏡検査用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、媒質中に存在する試料を収容するための試料容器を含み、この試料容器は平坦な基準面を基準にして位置合わせされている。この装置はさらに、試料を光シートにより照明するための照明対物レンズを備える照明光学系を含み、照明対物レンズの光軸と光シートとは、基準面の法線とゼロ以外の照明角βを成す平面内に位置している。さらに、この装置は、検出対物レンズを備える検出光学系を含み、この検出対物レンズの光軸は基準面の法線と、ゼロ以外の検出角δを成す。ここで照明対物レンズと検出対物レンズは、いわゆる二重対物レンズとして構成することもでき、これは例えば、特許文献1に記載されている。そして2つの対物レンズは1つの共通の構成ユニット内にまとめられており、それぞれの光学系(すなわち、対物レンズと所属のビームパスおよびその中に配置された光学素子)は、いくつかの素子を共有している。
【0003】
このような装置は、とりわけ生物試料の検査に用いられる。この検査では試料の照明が光シートによって行われ、光シートの平面は検出の光軸と、ゼロ以外の角度で交差する。ここで、光シートは、通常は検出対物レンズの光軸に相当する検出方向とは直角を成している。SPIM(Selective Plane Illumination Microscopy:選択的平面照明顕微鏡検査法)とも称されるこの技術により、厚い試料でも比較的短時間で空間的な撮影画像が作成される。光学的断面像を断面像に対して垂直の方向への相対運動との組み合わせることで、試料を空間的に拡張して画像表示することができる。
【0004】
SPIM技術は好ましくは、LSFM(Light Sheet Fluorescence Microscopy:光シート蛍光顕微鏡検査法)とも称される蛍光顕微鏡検査法で使用される。共焦点レーザ走査顕微鏡検査法または2光子顕微鏡検査法のような他の確立された方法と比較して、LSFM技術は多くの利点を有する。なぜなら、検出を広視野で行うことができるので、比較的に大きな試料領域が検出されるからである。確かに解像度は共焦点レーザ走査顕微鏡検査法の場合よりもやや低いが、LSFM技術により比較的に厚い試料を分析することができる。なぜなら侵入深度が比較的に大きいからである。さらに、試料の光負荷がこの方法では最小であり、このことは、とりわけ試料の褪色の怖れが低減される。なぜなら試料は、薄い光シートによってだけ検出方向に対してゼロ以外の角度で照明されるからである。
【0005】
ここでは、例えばシリンダレンズによって形成される静的光シートを使用することも、準静的光シートを使用することもできる。準静的光シートは、試料を光ビームにより高速に走査することによって形成することができる。光シート状の照明は、観察すべき試料に対して光ビームを非常に高速に相対運動させ、その際に時間的に順次連続してこの光ビームを何回も並べることにより発生される。その際に、カメラのセンサ上に試料が最終的に結像される当該カメラの積分時間は、走査がこの積分時間内に終了するように選択される。2次元アレイを備えるカメラの代わりに、ラインセンサを検出光学系での再走査(リスキャン)との組み合わせで使用することもできる。さらに検出は共焦点で行うこともできる。
【0006】
SPIM技術は、最近、文献に多く記載されており、例えば特許文献2およびそれに基づく特許文献3、または非特許文献1に記載されている。
光シート顕微鏡検査法の主適用例の1つは、数100μmから数mmまでのサイズを有する中程度の大きさの生体の画像形成であり、通常、これらの生体はアガロースゲルに埋め込まれ、このアガロースゲルはさらにガラス毛細管内に存在する。ガラス毛細管は上方または下方から水の満たされた試料室に入れられ、試料は毛細管からその一部が押し出される。アガロース内の試料は光シートにより照明され、光シートに対して垂直であり、したがって光シート光学系に対しても垂直である検出対物レンズにより蛍光がカメラに結像される。この光シート顕微鏡検査法は3つの大きな欠点を有する。第1に、被検試料が比較的大きく、試料が発生生物学から由来することである。さらに試料プレパラートと試料室の寸法のため、光シートが比較的厚く、そのため達成可能な軸方向の解像度が制限されていることである。加えて、試料プレパラートの調整が面倒であり、蛍光顕微鏡検査法で個別の細胞を検査する際に通常であるような標準的試料プレパラートおよび標準的試料ホルダに対して互換性がないことである。
【0007】
この制限を少なくとも部分的に回避できるようにするため、最近、照明対物レンズと検出対物レンズとが互いに垂直であり、それぞれ上方から45°の角度で試料に向けられているSPIM構造が実現された。基準面として例えば試料ホルダが横たわるテーブルの平面、または他の水平の平面を使用する場合、照明角βと検出角δはそれぞれ45°となる。このような構造は例えば、特許文献4および特許文献5に記載されている。
【0008】
このような構造において、試料は、例えばペトリシャーレの底部の上に存在する。ペトリシャーレには水が満たされており、照明対物レンズと検出対物レンズは液体に浸漬され、水が浸漬媒体の機能も引き受ける。このアプローチは、軸方向での比較的に高い解像度の利点を提供する。なぜなら比較的に薄い光シートを形成することができるからである。そして解像度が比較的に高いことに基づき比較的に小さな試料を検査することができる。試料プレパラートの調整も格段に簡素化された。それでもなお、試料プレパラートと試料ホルダは、蛍光顕微鏡検査法での個々の細胞において現在有効である標準仕様には相変わらず対応しない。シャーレの縁部に突き当たることなく2つの対物レンズをシャーレに浸漬できるようにするため、ペトリシャーレは比較的大きくなければならない。生物学の多くの分野で標準であり、特に個々の細胞の蛍光顕微鏡分析でも使用される、マルチウェルプレートとも称されるマイクロタイタープレートをこの方法により使用することはできない。なぜなら対物レンズを、プレート上にラスタ状に配置されている非常に小さな凹部に浸漬することができないからである。さらなる欠点は、この構造によっては多数の試料を短時間(ハイスループットスクリーニング)で簡単に分析することができないことである。なぜなら、種々の試料の汚染を回避するために、試料の交換の際に対物レンズをクリーニングしなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0866993号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10257423号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/053558号
【特許文献4】国際公開第2012/110488号
【特許文献5】国際公開第2012/122027号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ジェー ヒュースキン他(J.Huisken et al.)、総説「発生生物学における選択的平面照明顕微鏡検査技術(Selective Plane Illumination Microscopy Techniques in Developmental Biology」、2009年 デベロップメント誌(Development)、136巻、1963頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の光シート顕微鏡検査用の装置を、2つの試料の交換の際に相互汚染を効率的に阻止することによって、とりわけ多数の試料の分析が簡素化されるようにさらに改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、冒頭に述べた形式の光シート顕微鏡検査用の装置において、当該装置が、試料の存在する媒質を照明対物レンズおよび検出対物レンズから空間的に分離するために、所定の材料から作製され、かつ所定の厚さを有する1つまたは複数の層を備える分離層システムを含むことによって解決される。ここで分離層システムは、基準面に対して平行に位置決めされた境界面が、試料の照明および試料から到来する光の検出のための照明対物レンズおよび検出対物レンズに少なくとも接近できる領域内では、媒質と完全にまたは少なくともほぼ完全に接触している。照明角βと検出角δは、検出対物レンズの開口数NA
Dと、照明対物レンズの開口数NA
Bに基づいて設定されている。この設定は、既存の収差がさらなる措置がなくても最小であるようにコンポーネントが互いに配置されるようにして行われる。もちろん、結像品質が低下しても比較的に大きな収差を受け入れる場合には別の角度に調整することもできる。
【0013】
最も簡単な場合、分離層システムはただ1つの層からだけ成り、この層は空気層であっても良い。この場合、照明および検出対物レンズは乾燥対物レンズとして構成される。しかし、分離層システムは複数の層を含むこともでき、例えばフォイルまたはプレートとして試料容器を2つの対物レンズに対して覆うガラス層またはプラスチック層を含むことができる。このガラス層またはプラスチック層と対物レンズとの間には空気層、または2つの対物レンズが接触する浸漬液を備える層が存在する。しかし、分離層システムは、液体層が試料の存在する媒質と混合しないことが保証される場合には、ただ1つの液体層から成ることもできる。この場合、この液体は同様に浸漬媒質として用いることができる。
【0014】
分離層システムを導入することにより確実に汚染が効率的に阻止される。しかし、照明光および検出光が分離層システムの境界面を貫通して試料の存在する媒質まで達するため、0.3のように開口数がすでに小さい場合には球面収差やコマ収差(Koma)のような極端な結像エラーが発生する。斜めに貫通することにより、さらなる非対称の結像エラーが加わり、または他方がより強くなる。したがって、この結像エラーを最小にするため、照明角βと検出角δが、検出対物レンズまたは照明対物レンズの開口数NA
D、NA
Bに基づいて設定される。ここでは、通常は照明対物レンズである比較的に小さな開口数を備える対物レンズが、検出対物レンズよりも大きな角度の下で配置される。稀な場合には、検出対物レンズが照明対物レンズよりも大きな開口数を有することもできる。照明対物レンズと検出対物レンズが同じ構造であり、2つの対物レンズが法線と同じ角度を成す対称配置もしばしば使用される。照明角βと検出角δの和は、すべての場合で理想的には90°である。例えば2つの対物レンズを鋭角に配置することができるためこの角度とは異なる場合、すなわち和が90°未満である場合、検出対物レンズの光軸を基準にして対象面が今度は傾斜するので、シャインプルークの条件が満たされるように注意しなければならない。すなわち、この場合、カメラの画像センサも同様に対応して斜めに位置決めしなければならない。照明対物レンズと検出対物レンズが、冒頭に述べた二重対物レンズのように1つの光学モジュールに統合されている装置も考えられる。
【0015】
標準的対物レンズによって行うことのできる収差のこの形式の簡単な最小化が十分でないことが判明した場合、収差をさらに低減または完全に排除するためにさらなる措置が可能である。
【0016】
したがって、本発明の好ましい一形態では、照明光学系および検出光学系のうちの少なくとも一方が、収差、とりわけ照明光および検出すべき光のうちの少なくとも一方が分離層システムの境界面を斜めに貫通することにより発生する収差を低減するための補正手段を含む。
【0017】
したがって、好ましい一形態では、補正手段は、補正レンズおよび補正素子のうちの少なくとも一方を照明対物レンズまたは検出対物レンズ内に有する。補正レンズは、例えばシリンダレンズとして、それぞれ光軸に対して傾斜したレンズとして、または軸上に配置されていないレンズ、すなわちレンズの対称軸が照明対物レンズまたは検出対物レンズの光軸上にないレンズとして構成することができる。補正素子は、例えば非球面またはフリーフォーム面を有する素子として構成することができる。1つの形式または種々の形式の種々の補正レンズまたは補正素子を、1つの対物レンズで組み合わせることもできる。
【0018】
そして、各分離層システムに対して、材料組成および分離層システムの厚さに依存して、照明対物レンズと検出対物レンズの専用のセットを形成することができる。しかし、このことは高いコスト出費と結び付いている。なぜなら、複数のセットを調達しなければならず、さらに分離層システムの交換の際に対物レンズの交換を伴うという作業労力の上昇とも結び付いているからである。
【0019】
したがって、代替的な一形態では、補正手段は、照明ビームパスおよび検出ビームパスのうちの少なくとも一方に配置された適合型光学素子(複数)を、照明光または検出光の位相面を操作するために有する。これらの光学素子は例えば、変形可能なミラー、位相プレートまたは空間的光変調器として構成することができる。これらの素子は好ましくは調整可能に構成され、したがって、多数の可能な分離層システムへの適合が、照明対物レンズおよび検出対物レンズの1つの同じ装置により可能となる。
【0020】
2つの代替的な形態の組み合わせも考えられる。すなわち例えば、固定的に組み込まれた補正レンズによって、最も頻繁に使用される分離層システムに対して、および場合により、標準的ガラスおよび標準的厚さのための顕微鏡対物レンズではしばしばそうであるように、垂直に貫通する場合の球面収差に対しても主要な基本的補正を行い、ビームパス中にある適合型光学素子を用いて、それぞれの分離層システムに個別に適合された微補正を行うのである。
【0021】
分離層システムは、好ましくは、すでに述べたように試料容器を閉鎖するプレート状またはフォイル状のカバーを含み、このカバーは所定の材料から作製され、所定の厚さを有する。ここで、このプレート状またはフォイル状のカバーの第1の大きな面は試料が存在する媒質と、照明および検出のための照明対物レンズと検出対物レンズに少なくとも接近できる領域内ではほぼ完全に接触している。カバーの第2の大きな面は、好ましくはガス、例えば空気、または分離層システムのさらなるコンポーネントとしての浸漬媒質と、照明および検出のための照明対物レンズと検出対物レンズに少なくとも接近できる領域内で接触している。対物レンズまたはビームパス中にある前記補正手段の代わりにまたはこれに加えて、収差を低減するために分離層システムも相応に適合することができる。分離層材料を相応に適合する場合には、対物レンズのさらなる補正を場合により省略することができ、またはこの補正をそれほど強く行う必要はない。
【0022】
したがって、本発明の好ましい一形態では、カバーのための材料は、試料の存在する媒質の屈折率よりも5%未満だけ異なる屈折率を有する。2つの材料が同じ屈折率を有する場合、媒質とカバーとの間の境界面における収差は完全に回避される。試料の存在する媒質として例えば波長λ
d=578.56nmにおいて屈折率n
d=1.33を有する水が使用される場合、カバーのための材料として例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、n
d=1.35)、CYTOP(登録商標)(n
d=1.34)またはFEP(パーフルオロエチレンプロピレン、n
d=1.34)が適する。屈折率が同様に通常は1.33と1.36の間である過フルオロジオキソラン・ポリマーも使用される。通常は屈折率n
d=1.32を有するTeflon(登録商標)AFも特に適切な材料である。この材料はアモルファスポリマーであり、ここではガラス転移温度を、冷えた状態では試料の存在する媒質の屈折率をポリマーが有するように調整することができる。調整可能なガラス転移温度を有する他のアモルファスポリマーももちろん使用できる。
【0023】
屈折率が正確に一致しない場合、僅かな大きさであってもさらなる収差が発生する。したがって、この収差をさらに低減するために、分離層またはカバーを可及的に薄く選択すべきであり、数百μmよりも厚くすべきではない。倒立型装置の場合のように、カバーが同時に試料容器の底部として用いられる場合、または横置型観察装置の場合に側壁として用いられる場合、試料の存在する媒質によって及ぼされる圧力に対して十分に安定であることにもちろん注意しなければならない。このことは、カバーが直立観察のための試料容器の蓋として用いられる場合には不要であり、この場合、材料をさらに格段に薄く、100μm未満の厚さで成形することができる。
【0024】
本発明のさらなる一形態では、カバーのための材料は、第1および第2の成分から複合されたナノ構造化材料であり、ここで試料を収容するための媒質の屈折率よりも第1の成分の屈折率は小さく、第2の成分の屈折率は大きい。第2の成分が第1の成分の関与により相応にナノ構造化されている場合、あるいは2つの成分の割合混合だけによる適切な材料である場合でも、有効な屈折率を有する材料が生成され、この屈折率は、試料を収容するための媒質の屈折率の前記5%の範囲内にある。しかし、ここでナノ構造化の場合、第1の成分の材料から成る領域の平均構造サイズが、照明に使用され検出すべき光の光波長よりも小さい直径を有することが前提条件である。なぜなら、その場合だけ、媒質、例えば水の屈折率の5%の範囲内で有効屈折率を調整することができるからである。ここでは、例えば種々のポリマーが使用され、そのポリマーの混合特性または分離特性が、材料が混合されない場合に利用される。あるいは、ナノ多孔性二酸化ケイ素も使用される。後者の場合、第1の成分は空気であり、第2の成分が二酸化ケイ素である。このような形式のナノ構造化された材料は、例えばジェー.−キュー.キシ他(J.−Q.Xi et al.)による2007年のNature Photonics,第1巻、176〜179項に掲載された記事「フレネル反射を広範に除去するための低屈折率光学薄膜材料(Optical thin−film materials with low refractive index for broadband elimination of Fresnel reflection)」に、反射防止膜の製造と関連して記載されている。ここでも、カバーの厚さは可及的に薄く選択すべきであり、すでに上に述べたのと同じ周辺条件が当てはまる。
【0025】
分離層システムはカバーを含めて、例えば通常のマイクロタイタープレートのための容器蓋を有することができ、この場合は、光シート顕微鏡の公知の直立構造が使用される。ここでは、試料容器の深さを基準にして試料容器の上方4分の1の箇所に、または容器蓋に、試料を位置決めするための相応の位置決め手段によって、試料が顕微鏡構造に接近できることが保証される。
【0026】
しかし、光シート顕微鏡検査用の装置は、照明および検出対物レンズが試料容器の下方に配置されている倒立型光シート顕微鏡を含むこともできる。この場合、カバーは分離層システムの一部として試料容器の容器底部を形成する。したがって、特別な試料容器として、または透明な容器底部を有する標準的マルチウェルプレートとして提供しなければならない。
【0027】
さらに、照明および検出対物レンズの光軸が水平面にある横置型構成も可能である。この場合および直立観察の場合に対して試料容器は有利には、照明対物レンズおよび検出対物レンズの作業間隔内で試料容器の側方または上方領域に試料を位置決めするための手段を有する。
【0028】
前記および後でさらに説明する特徴は、記載の組み合わせだけではなく、本発明の範囲を逸脱することなく他の組み合わせまたは単独でも使用可能であることが理解される。
以下、本発明を、例えば本発明の特徴も開示する添付図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】直立観察を行う光シート顕微鏡検査用の第1の装置を示す図。
【
図2】
図1と同様であるが倒立観察を行う光シート顕微鏡検査用の装置を示す図。
【
図3】ビームパス中に配置された補正手段を有する光シート顕微鏡検査用のさらなる装置を示す図。
【
図4】結像エラーを補償するための補正手段をビームパス中に有する代替的な装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず
図1は、直立観察に適した光シート顕微鏡検査用の装置を示す。この装置は、媒質2内に存在する試料3を収容するための試料容器1を含む。試料容器1は、ここでは試料テーブル4により規定される平坦な基準面を基準にして位置決めされている。この装置は、光源5と、試料3を光シートにより照明するための照明対物レンズ6とを備える照明光学系を含み、ここで照明対物レンズ6の光軸7と光シートとは、基準面の法線とゼロ以外の照明角βを成す平面内にある。装置はさらに、検出対物レンズ8を備える検出光学系を含み、この検出対物レンズの光軸9は基準面の法線とゼロ以外の検出角δを成す。試料3から発する光は検出器10に導かれ、そこで記録される。記録された信号は、画面上でのさらなる処理および表示のうちの少なくとも一方のために利用される。
【0031】
装置はさらに、試料3の存在する媒質2を照明対物レンズ6および検出対物レンズ8から空間的に分離するために、所定の厚さを有し所定の材料から成る1つの層または複数の層を備える分離層システムを含む。この分離層システムは、基準面に対して平行に位置決めされた境界面11を有し、この境界面は、照明および検出のための照明対物レンズ6および検出対物レンズ8に対して少なくとも接近できる領域内において、媒質2と完全にまたは少なくともほぼ完全に接触している。ここで照明角βおよび検出角δは、検出対物レンズ8または照明対物レンズ6の開口数NA
DおよびNA
Bに基づいて設定されている。
【0032】
媒質2として例えば水を使用することができる。しかし他の液体またはゲルさえも使用が可能である。
照明対物レンズ6と検出対物レンズ8は、もはや媒質2と直接接触していないから、異なる試料を有する2つの試料容器の交換の際にもはや汚染は発生し得ない。しかし最も簡単な場合には、1つの層、すなわち空気から成ることのできる分離層システムによって、光が境界面を貫通するため、収差、とりわけ球面収差とコマ収差が発生する。斜めに光が貫通する場合には主に非点収差とコマ収差であり、より小さいが比較的に高次にもあるこの収差を低減または完全に回避するために、種々の措置が可能である。
【0033】
必ずしも必要ではないが第1の措置は、照明角βと検出角δを、照明対物レンズ6と検出対物レンズ8の開口数に基づいて設定することである。これが同様に
図1に示されている。照明対物レンズ6の開口数NA
Bは、検出対物レンズ8の開口数NA
Dよりも小さい。NAの大きな対物レンズでは収差がより強く知覚されるから、このような対物レンズに対してはその光軸が基準面の法線に可及的に接近して配置される。すなわち法線に対して特に小さい角度が有利である。なぜなら、光入射が斜めであればあるほど、対物レンズの光軸が基準面の法線と成す角度よりも大きくなり、収差も大きくなるからである。一方、照明に対しては開口数の比較的に小さな対物レンズを使用することができる。なぜなら光シートを形成するためには通常、0.5未満の開口数で十分であるのに対し、検出のためには高解像度に基づき、1.0またはそれ以上の可及的に大きな開口数が必要だからである。
図1に示された状況において、これは、照明対物レンズ6の開口数NA
Bが検出対物レンズ8の開口数NA
Dよりも小さい場合である。したがって、照明角βは、検出角δよりも大きく選択することができる。ここで好ましくは
図1にも示すように、照明角βと検出角δの和は90°である。これとは異なる角度の場合、いわゆるシャインプルークの条件が満たされるように、検出器10を相応に斜めに設置しなければならない。
【0034】
ここで分離層システムは、試料容器を閉鎖する、所定の材料から作製され所定の厚さを有するプレート状のカバー12を有する。ここでは境界面11と一致するプレート状のカバー12の第1の大きな面は、照明および検出のための照明対物レンズ6と検出対物レンズ8に少なくとも接近できる領域内において媒質2とほぼ完全に接触している。カバー12の第2の大きな面13はここではガス、例えば空気と接触しており、さらなる境界面を形成する。ガスの代わりに浸漬媒質を分離層システムのさらなるコンポーネントとして使用することもできる。この浸漬媒質はカバーの第2の大きな面13と、同様に照明および検出のための照明対物レンズ6と検出対物レンズ8に少なくとも接近できる領域内で接触している。第2の大きな面13も同様に境界面として作用し、以下では時折、そのようなものとして称する。
【0035】
照明対物レンズ6と検出対物レンズ8を、基準面の法線に対するそれらの角度を基準にして位置決めすることにより、とりわけ光が境界面を斜めに貫通することにより発生する収差を、確かにある程度まで最小にすることができる。しかし、とりわけ検出における開口数が大きい場合に、収差は、詳細な記録のためにさらなる補正が必要である程には相変わらず大きい。したがって、照明光学系および検出光学系のうちの少なくとも一方は、照明光および検出すべき光のうちの少なくとも一方が分離層システムの境界面11、13を斜めに貫通することにより発生する収差を低減するための補正手段を含む。
【0036】
この補正手段は、例えば補正レンズおよび補正素子のうちの少なくとも一方を、照明対物レンズ6および検出対物レンズのうちの少なくとも一方内に含むことができる。例えば補正レンズは、シリンダレンズとして、光軸に対して傾斜したレンズおよび軸上に配置されていないレンズのうちの少なくとも一方として、および非球面またはフリーフォーム面を備える補正素子として構成されたもののうちの少なくとも一方として設けることができる。
図1は例として、照明対物レンズ6内で軸上に配置されていないレンズ14、および検出対物レンズ8内で軸の外に配置されているレンズ15を示す。
【0037】
図2には光シート顕微鏡検査用の装置が示されており、この装置のコンポーネントは
図1と同様に構成され配置されている。相違点は、ここでは照明対物レンズ6と検出対物レンズ8が試料容器1の下方に配置されており、したがって倒立型光シート顕微鏡検査のための装置であることである。カバー12はこの場合、試料容器1の底部によって形成される。このような倒立型装置は、とりわけマイクロタイタープレートでの試料の分析にも適する。なぜなら試料は通常、重力のため容器底部に位置決めされており、したがって、直立構造よりも倒立構造の方が試料に容易に接近することができるからである。というのも、凹部は非常に密に構成されており、観察の上方からは接近するのが困難だからである。したがって、照明対物レンズ6と検出対物レンズ8が試料容器1の上方に配置されている場合、好ましくは試料3の位置決めのための手段を試料容器1の上方領域に有する試料容器1が使用され、これにより試料3には上方からも接近される。
【0038】
図3と
図4に図示された光シート顕微鏡検査用の装置のさらなる構成では、装置は、照明ビームパスおよび検出ビームパスのうちの少なくとも一方に配置された補正手段を含み、これらの補正手段は、照明光または検出光の位相面を操作するための適合型光学素子である。好ましくは適合型光学素子として変形可能なミラー、空間的光変調器または位相プレートが使用される。これらの補正手段は、もちろん、
図1と
図2にも示した対物レンズと組み合わせて補正を行うことができる。
図3と
図4には、光シート顕微鏡検査用の装置の倒立構造だけが図示されているが、
図1および2と同じように照明対物レンズ6と検出対物レンズ8が試料容器1の上方に配置されている構造も簡単に構築することができる。照明対物レンズ6の光軸7と検出対物レンズ8の光軸9が水平面にあり、基準面が垂直に配向めされている横置型装置も実現可能である。原則として傾斜した装置も考えられる。
【0039】
図3には
図2の構造に差し当たり類似する装置が示されている。試料3は、試料テーブル4の上に配置された試料容器1内に保存されている。試料は媒質2の中、例えば水の中に存在する。簡単にするため、単なる例として照明対物レンズ6と検出対物レンズ8はここでは同じに構成されている。したがって、これらは基準面の法線に対してそれぞれ45°の角度で配置することができる。照明ビームパスには変形可能なミラー16が配置されており、検出ビームパスには変形可能なミラー17が配置されており、このミラーにはレンズ18を介して検出器10に結像される前に検出すべき光が当たる。これらの位置において空間的光変調器または位相プレートによって置換することのできる変形可能なミラー16と17は、制御可能であり、したがって、種々の照明角βおよび検出角δにも、種々の対物レンズ構成および種々の分離層システムにも、とりわけ種々のカバー12にも適合させることが可能である。このようにして収差をほぼ完全に補正することができる。さらに変形可能なミラーと空間的光変調器は、試料に起因する収差を補正するために付加的に使用される。
【0040】
照明対物レンズ6と検出対物レンズ8が同一に構成され、照明角βと検出角δも同様に同じであり、しかし変形可能な1つのミラー19を使用するだけで十分なやや簡単な構造が
図4に示されている。さらに光源5よりも前方にビームスプリッタ20が配置されており、このビームスプリッタは、照明波長領域に対して透過性であり、検出すべき蛍光光の波長に対して反射性に構成されている。検出器10よりも前方にもビームスプリッタ21が配置されており、このビームスプリッタは、検出すべき検出波長領域に対しては透過性であるが、照明波長領域に対しては反射性に構成されている。変形可能なミラーを省略することにより、装置をより安価に製造することができる。
【0041】
収差を低減または回避するための、ビームパスまたは対物レンズ内にあるすでに述べた補正手段の可能性と組み合わせることのできるさらなる可能性は、カバー12に対して、試料3が埋め込まれた媒質2の屈折率から5%未満だけ異なる屈折率を有する材料を選択することである。これによって収差はすでに大きく低減され、したがって、補正手段は、このような措置がない場合のようにビームパスに大きく介入する必要がない。このことは、例えばフリーフォーム面の代わりに非球面レンズも使用することができることにより、製造を簡素化し、より安価となる。例えば水が試料3の存在する媒質2として使用される場合、カバー12のための材料として、例えばPTFE、CYTOP(登録商標)、FEP、Teflon(登録商標)AF、または過フルオロジオキソラン・ポリマーを使用することができる。例えばTeflon(登録商標)AFのようなアモルファスポリマーが使用される場合、そのガラス転移温度は、好ましくは、冷えた状態ではポリマーが試料3の存在する媒質2の屈折率を有するように調整される。
【0042】
付加的に水が浸漬媒質としてカバー12の他方の側でもさらに使用される場合、屈折率が同じであれば、またはパーミル領域でしか異なっていなければ、境界面を光が貫通する際の収差の発生を完全に回避することができる。
【0043】
最後に、収差の発生を低減または回避するための他の可能性は、カバー12のための材料として、第1の成分22と第2の成分23から成るナノ構造化された材料を使用することである。第1の成分22の屈折率は、試料を収容するための媒質2の屈折率よりも小さく、第2の成分23の屈折率は、試料3を収容するための媒質2の屈折率よりも大きい。これら2つの成分22と23からナノ構造化された材料が作製され、この材料は、媒質2の屈折率から5%未満だけ異なる有効屈折率を有する。そのための前提条件は、ナノ構造化された材料において第1の成分22から成る領域の平均構造サイズまたは平均直径が、照明に使用され検出すべき光の光波長よりも小さいことである。最も単純な近似で、有効屈折率は2つの成分の容積比から得られる。試料3を収容するための媒質2として屈折率n
d=1.33を有する水が使用される場合、第1の成分22として特に空気が適する。このことはナノ多孔性材料の使用を可能にする。
【0044】
このようなナノ構造化された材料の1例が
図5に示されており、これはナノ構造化された二酸化ケイ素である。そこには、例えば容器底部または容器蓋を形成することのできるカバー12の大きく拡大された断面が示されている。第2の成分23として例えば二酸化ケイ素を選択することができ、第1の成分22として、この場合は空気が使用される。水の屈折率は、2つの成分の屈折率の間である。第2の成分23としての二酸化ケイ素は、第1の成分22として空気が使用される場合、例えばシリンダ状の開口部を有しており、それらの直径は使用される光波長よりも小さい。この図は理解のためにだけ用いるものであり、実際には開口部は、よりランダムな例えばエッチングにより形成された形状を有することができる。重要なのは容積比であり、かつ平均開口部直径が、使用される光または検出すべき光の波長よりも小さいことが保証されていることである。
【0045】
ナノ構造化された材料の代わりに、2つの成分から混合された材料または脱混合された材料を使用することもできる。
さらに収差を可及的に小さく維持するために、カバー12の厚さを、いずれの場合でも可及的に薄く選択すると有利であり、ここでは容器底部として構成されたカバー12に対しては数百μmの厚さで十分であり、試料容器1に対する蓋として用いられ、フォイルとして構成されたカバー12に対しては数μmで十分である。
【0046】
光シート顕微鏡検査用の前記装置により、試料交換の際の汚染の発生が、とりわけ、高いスループットが望まれる方法の過程で回避される。とりわけ照明対物レンズ6と検出対物レンズ8が試料容器1の下方に配置されている装置の場合、平坦な容器底部と多数の凹部を備える相応のマイクロタイタープレートも使用される。
【符号の説明】
【0047】
1 試料容器
2 媒質
3 試料
4 試料テーブル
5 光源
6 照明対物レンズ
7 光軸
8 検出対物レンズ
9 光軸
10 検出器
11 境界面/第1の大きな面
12 カバー
13 境界面/第2の大きな面
14、15 軸上にないレンズ
16、17 変形可能なミラー
18 レンズ
19 変形可能なミラー
20、21 ビームスプリッタ
22 第1の成分
23 第2の成分