特許第6492078号(P6492078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492078
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】反射材用樹脂組成物およびそれを含む反射板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20190318BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20190318BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20190318BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20190318BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20190318BHJP
【FI】
   G02B5/08 A
   G02B5/08 C
   C08L67/02
   C08L77/06
   C08K5/13
   H01L33/60
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-531105(P2016-531105)
(86)(22)【出願日】2015年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2015003259
(87)【国際公開番号】WO2016002192
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-134749(P2014-134749)
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】大清水 薫
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 英人
(72)【発明者】
【氏名】江端 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】濱 隆司
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−507990(JP,A)
【文献】 特開2013−067786(JP,A)
【文献】 特開2004−317818(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069760(WO,A1)
【文献】 特開2013−155230(JP,A)
【文献】 米国特許第04355080(US,A)
【文献】 米国特許第3206431(US,A)
【文献】 国際公開第2013/018360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂(A1)を45〜80質量%と、
白色顔料(B)を17〜54.99質量%と、
下記一般式(1)で表される化合物(C)の少なくとも一種を0.01〜3質量%とを含む(ただし、(A)、(B)、および(C)の合計は100質量%である)、反射材用樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)のXは、有機基を示す)
【請求項2】
前記化合物(C)の有機基Xが、炭素原子数1〜20の置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のシクロヘキシル基、あるいは炭素原子数6〜20の置換または未置換のアリール基であり、
前記アルキル基、前記シクロヘキシル基、および前記アリール基が有する置換基は、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基、およびオキサジアゾール基からなる群より選ばれる、請求項1に記載の反射材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(A1)が、
テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%とを含むジカルボン酸成分単位(a11)と、
炭素原子数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位および/または脂肪族ジアルコール成分単位を含むジアルコール成分単位(a12)と、
を含む、請求項1または2に記載の反射材用樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂環族ジアルコール成分単位が、シクロヘキサン骨格を有する、請求項3に記載の反射材用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジアルコール成分単位(a12)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位30〜100モル%と、前記脂肪族ジアルコール成分単位0〜70モル%とを含む、請求項3または4に記載の反射材用樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(C)の有機基Xが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−オクチル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、および2,4-ジ-t-ペンチルフェニル基からなる群より選ばれる基である、請求項1〜のいずれか一項に記載の反射材用樹脂組成物。
【請求項7】
ヒンダードアミン系安定剤を含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射材用樹脂組成物
【請求項8】
前記(A)、(B)および(C)の合計100質量%に対して、
強化材(D)を5〜50質量%さらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の反射材用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の反射材用樹脂組成物を成形して得られる、反射板。
【請求項10】
発光ダイオード素子用の反射板である、請求項に記載の反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射材用樹脂組成物およびそれを含む反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)や有機ELなどの光源は、低電力や高寿命などの特長を活かして、照明やディスプレイのバックライトなどに幅広く使用されている。それらの光源からの光を効率的に利用するために、反射板が種々の局面で利用されている。
【0003】
例えば、LEDパッケージは、基板とそれに一体的に成形された反射板とからなるハウジング部と、ハウジング内部に配置されたLEDと、LEDを封止する透明な封止部材とで主に構成されうる。このようなLEDパッケージは、基板上に成形された反射板からなるハウジング部を得る工程;ハウジング部内にLEDを配置し、LEDと基板とを電気的に接続する工程;LEDを封止剤で封止する工程を経て製造されうる。封止工程では、封止剤を熱硬化させるために100〜200℃の温度で加熱することから、そのような加熱下においても反射板は、反射率を維持できることが求められる。さらに、LEDパッケージをプリント基板に実装する際のリフローはんだ工程では、LEDパッケージが250℃以上もの高温に曝されることから、そのような加熱下においても反射板は反射率を維持できることが求められる。さらに、使用環境下において、LEDから発生する熱や光に曝されても、反射率を維持できることが求められる。
【0004】
このような反射板用の材料としては、半芳香族ポリアミドとして、1,9−ノナンジアミンを主成分とするジアミン単位を含むPA9Tや、1,10−デカンジアミンを主成分とするジアミン単位を含むPA10Tなどを用いることが検討されている。例えば、PA9TまたはPA10T、酸化チタン、強化材、光安定剤、酸化防止剤および離型剤を含む樹脂組成物が開示されている(特許文献1および2)。また、LEDなどの反射板として好適に使用できる反射板用樹脂組成物として、特定のポリエステル、光安定剤および/または酸化防止剤を含む反射板用樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−75994号公報
【特許文献2】特開2013−67786号公報
【特許文献3】特開2013−127067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に示されるような半芳香族ポリアミド樹脂や耐熱性ポリエステル樹脂を含む組成物から得られる成形物は、熱や光に曝されたときの変色を十分に抑制できるものではなかった。そのため、LEDパッケージの製造時や実装時に受ける熱や、使用環境下で光源から受ける熱や光に曝されても、変色などが少なく、反射率の低下が少ないことが求められている。
【0007】
さらに、LEDの高輝度化に伴い、LEDなどに用いられる反射板には、さらなる白色度の向上と反射率の向上とが求められている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、反射率が高く、かつLEDパッケージの製造工程や実装時のリフローはんだ工程などの熱や、使用環境下で光源から生じる熱や光に曝されても、反射率の低下が少ない反射板を得ることができる反射材用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上である、ポリエステル樹脂(A1)とポリアミド樹脂(A2)の少なくとも一方からなる熱可塑性樹脂(A)を45〜80質量%と、白色顔料(B)を17〜54.99質量%と、下記一般式(1)で表される化合物(C)の少なくとも一種を0.01〜3質量%とを含む(ただし、(A)、(B)および(C)の合計は100質量%である)、反射材用樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)のXは、有機基を示す)
[2] 前記化合物(C)の有機基Xが、炭素原子数1〜20の置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のシクロヘキシル基、あるいは炭素原子数6〜20の置換または未置換のアリール基であり、前記アルキル基、前記シクロヘキシル基、および前記アリール基が有する置換基は、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基、およびオキサジアゾール基からなる群より選ばれる、[1]に記載の反射材用樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステル樹脂(A1)が、テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%とを含むジカルボン酸成分単位(a11)と、炭素原子数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位および/または脂肪族ジアルコール成分単位を含むジアルコール成分単位(a12)とを含む、[1]または[2]に記載の反射材用樹脂組成物。
[4] 前記脂環族ジアルコール成分単位が、シクロヘキサン骨格を有する、[3]に記載の反射材用樹脂組成物。
[5] 前記ジアルコール成分単位(a12)が、シクロヘキサンジメタノール成分単位30〜100モル%と、前記脂肪族ジアルコール成分単位0〜70モル%とを含む、[3]または[4]に記載の反射材用樹脂組成物。
[6] 前記ポリアミド樹脂(A2)が、テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位を40〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜60モル%とを含むジカルボン酸成分単位(a21)と、炭素原子数4〜18の脂肪族ジアミン成分単位50〜100モル%を含むジアミン成分単位(a22)とを含む、[1]または[2]に記載の反射材用樹脂組成物。
[7] 前記脂肪族ジアミン成分単位が、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の少なくとも一方である、[6]に記載の反射材用樹脂組成物。
[8] 前記化合物(C)の有機基Xが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−オクチル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、および2,4-ジ-t-ペンチルフェニル基からなる群より選ばれる基である、[1]〜[7]のいずれかに記載の反射材用樹脂組成物。
[9] 前記(A)、(B)および(C)の合計100質量%に対して、強化材(D)を5〜50質量%さらに含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の反射材用樹脂組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の反射材用樹脂組成物を成形して得られる、反射板。
[11] 発光ダイオード素子用の反射板である、[10]に記載の反射板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の反射材用樹脂組成物は、反射率が高く、かつLEDパッケージの製造工程やLEDパッケージの実装時のリフローはんだ工程などで受ける熱だけでなく、使用環境下でLED素子から発生する熱や光に曝されても、変色が少なく高い白色度を維持でき、反射率の低下が少ない反射板を提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
PCTなどのポリエステル樹脂やPA9TやPA10Tなどの半芳香族ポリアミド樹脂は、高い融点を有し、良好な耐熱性を有する一方で;樹脂組成物(ペレットなど)や成形物を得るための溶融温度を高くする必要がある。そのため、成形機中での滞留時間が長くなりやすく、樹脂が劣化しやすい傾向があった。また、得られる成形物は、熱や光などを長時間受けたときの樹脂の分解反応を十分には抑制できない傾向があった。
【0012】
これに対して本発明者らは、高融点のポリエステル樹脂(A1)やポリアミド樹脂(A2)に所定量の化合物(C)を添加することで、変色が少なく反射率の高い成形物が得られ、かつ成形後の反射率の低下が少ないこと(特に成形後の反射率の低下を少なくしうること)を見出した。
【0013】
この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。即ち、化合物(C)は、樹脂組成物(ペレットなど)や成形物を得るための混練を行う際に発生するラジカルを良好に捕捉し、樹脂の分解反応を抑制しうる。それにより、変色が少なく、反射率の高い成形物が得られると考えられる。さらに、化合物(C)は、成形物中で樹脂が熱や光に長時間曝されたときに生じるラジカルを捕捉し、かつ紫外光を良好に吸収しうる。それにより、光や熱による樹脂の分解反応を抑制でき、成形物の反射率の低下を少なくしうると考えられる。
【0014】
特に、化合物(C)はフェニルエステル構造を有するため、テレフタル酸由来のフェニルエステル構造を有するPCTやPA9Tなどの樹脂と良好に相溶しやすい。従って、高温で溶融混錬すると、当該樹脂中に化合物(C)が均一に分散しやすいので、低分子量であっても揮発しにくく、かつ少ない添加量でも樹脂の分解反応を抑制できる。それにより、成形物の変色を均一に抑制でき、反射率の低下を抑制しうる。また、化合物(C)の添加量を少なくできるので、化合物(C)の添加量を多くしたときに問題となる化合物(C)自体の変色による成形物の変色も抑制でき、それによる反射率の低下も抑制しうる。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0015】
1.反射材用樹脂組成物
本発明の反射材用樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A1)とポリアミド樹脂(A2)の少なくとも一方からなる熱可塑性樹脂(A)と、白色顔料(B)と、化合物(C)とを含む。
【0016】
1−1.熱可塑性樹脂(A)
本発明の反射材用樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A1)とポリアミド樹脂(A2)の少なくとも一方からなる。
【0017】
1−1−1.ポリエステル樹脂(A1)
ポリエステル樹脂(A1)は、少なくとも芳香族ジカルボン酸由来の成分単位を含むジカルボン酸成分単位(a11)と、脂環骨格を有するジアルコール由来の成分単位を含むジアルコール成分単位(a12)とを含むことが好ましい。
【0018】
ポリエステル樹脂(A1)を構成するジカルボン酸成分単位(a11)は、テレフタル酸成分単位30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%とを含むことが好ましい。ジカルボン酸成分単位(a11)中の各ジカルボン酸成分単位の合計量を100モル%とする。
【0019】
ジカルボン酸成分単位(a11)に含まれるテレフタル酸成分単位の割合は、より好ましくは40〜100モル%であり、さらに好ましくは60〜100モル%でありうる。テレフタル酸成分単位の含有割合が一定以上であると、ポリエステル樹脂(A1)の耐熱性を高めやすい。ジカルボン酸成分単位(a11)に含まれるテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の割合は、より好ましくは0〜60モル%であり、さらに好ましくは0〜40モル%でありうる。
【0020】
テレフタル酸成分単位は、テレフタル酸、またはテレフタル酸エステルから誘導される成分単位でありうる。テレフタル酸エステルは、好ましくはテレフタル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルであり、その例にはジメチルテレフタレートなどが含まれる。
【0021】
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の好ましい例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせから誘導される成分単位、ならびに当該芳香族ジカルボン酸のエステル(好ましくは芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜4のアルキルエステル)から誘導される成分単位が含まれる。
【0022】
ジカルボン酸成分単位(a11)は、上記構成単位とともに、少量の脂肪族ジカルボン酸成分単位や多価カルボン酸成分単位をさらに含んでもよい。ジカルボン酸成分単位(a11)に含まれる脂肪族ジカルボン酸成分単位と多価カルボン酸成分単位の合計割合は、例えば10モル%以下としうる。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸成分単位の炭素原子数は、特に制限されないが、4〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分単位の例には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位が挙げられ、好ましくはアジピン酸から誘導される成分単位でありうる。多価カルボン酸成分単位の例には、トリメリット酸およびピロメリット酸等のような三塩基酸および多塩基酸から誘導される成分単位を挙げることができる。
【0024】
ポリエステル樹脂(A1)を構成するジアルコール成分単位(a12)は、脂環族ジアルコール成分単位を含むことが好ましい。脂環族ジアルコールは、炭素数4〜20の脂環式炭化水素骨格を有するジアルコール由来の成分単位を含むことが好ましい。脂環式炭化水素骨格を有するジアルコールとしては、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジメタノールなどの脂環族ジアルコールが含まれる。なかでも、耐熱性や吸水性、入手容易性などの観点から、シクロヘキサン骨格を有するジアルコール由来の成分単位が好ましく、シクロヘキサンジメタノール由来の成分単位がさらに好ましい。
【0025】
脂環族ジアルコールには、シス/トランス構造などの異性体が存在するが、耐熱性の観点ではトランス構造のほうが好ましい。したがって、シス/トランス比は、好ましくは50/50〜0/100であり、さらに好ましくは40/60〜0/100である。
【0026】
ジアルコール成分単位(a12)は、脂環族ジアルコール成分単位のほかに、樹脂の溶融流動性を高めるためなどから、脂肪族ジアルコール成分単位をさらに含んでもよい。脂肪族ジアルコールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどが含まれる。
【0027】
ポリエステル樹脂(A1)を構成するジアルコール成分単位(a12)は、脂環族ジアルコール成分単位(好ましくはシクロヘキサン骨格を有するジアルコール成分単位)を30〜100モル%、脂肪族ジアルコール成分単位を0〜70モル%含むことが好ましい。ジアルコール成分単位(a12)中の各ジアルコール成分単位の合計量を100モル%とする。
【0028】
ジアルコール成分単位(a12)における脂環族ジアルコール成分単位(シクロヘキサン骨格を有するジアルコール成分単位)の割合は、好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは60〜100モル%でありうる。ジアルコール成分単位(a12)における脂肪族ジアルコール成分単位の割合は、好ましくは0〜50モル%であり、より好ましくは0〜40モル%でありうる。
【0029】
ジアルコール成分単位(a12)は、上記構成単位とともに、少量の芳香族ジアルコール成分単位をさらに含んでもよい。芳香族ジアルコールの例には、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールなどが含まれる。
【0030】
1−1−2.ポリアミド樹脂(A2)
ポリアミド樹脂(A2)は、少なくとも芳香族ジカルボン酸由来の成分単位を含むジカルボン酸成分単位(a21)と、脂肪族ジアミン由来の成分単位を含むジアミン成分単位(a22)とを含むことが好ましい。
【0031】
ポリアミド樹脂(A2)を構成するジカルボン酸成分単位(a21)は、テレフタル酸成分単位40〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜60モル%とを含むことが好ましい。ジカルボン酸成分単位(a21)中の各ジカルボン酸成分単位の合計量を100モル%とする。
【0032】
ジカルボン酸成分単位(a21)におけるテレフタル酸成分単位の割合は、より好ましくは60〜100モル%であり、さらに好ましくは75〜100モル%でありうる。テレフタル酸成分単位の含有割合が一定以上であると、ポリアミド樹脂(A2)の耐熱性を高めやすい。ジカルボン酸成分単位(a21)におけるテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の割合は、より好ましくは0〜40モル%であり、さらに好ましくは0〜25モル%でありうる。
【0033】
テレフタル酸成分単位は、前述と同様に、テレフタル酸、またはテレフタル酸エステル(テレフタル酸の炭素数1〜4のアルキルエステル)から誘導される成分単位でありうる。
【0034】
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の好ましい例には、前述と同様に、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせから誘導される成分単位、ならびに当該芳香族ジカルボン酸のエステル(好ましくは芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜4のアルキルエステル)から誘導される成分単位が含まれる。
【0035】
ジカルボン酸成分単位(a21)は、上記構成単位とともに、少量の脂肪族ジカルボン酸成分単位や多価カルボン酸成分単位をさらに含んでもよい。ジカルボン酸成分単位(a21)に含まれる脂肪族ジカルボン酸成分単位と多価カルボン酸成分単位の合計割合は、例えば10モル%以下としうる。脂肪族ジカルボン酸成分単位と多価カルボン酸成分単位の例には、前述と同様のものが挙げられる。
【0036】
ポリアミド樹脂(A2)を構成するジアミン成分単位(a22)は、脂肪族ジアミン成分単位を含むことが好ましい。脂肪族ジアミン成分単位は、炭素原子数4〜18の脂肪族ジアミン由来の成分単位であることが好ましい。炭素原子数4〜18の脂肪族ジアミンの例には、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミン;
2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を含むことができる。これらのなかでも、耐熱性に一層優れる樹脂組成物が得られることから、1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンが好ましい。
【0037】
ジアミン成分単位(a22)における炭素原子数4〜18の脂肪族ジアミン由来の成分単位の割合は、50〜100モル%であることが好ましく、60〜100モル%であることがより好ましく、75〜100モル%であることがさらに好ましい。ジアミン成分単位(a22)中の各ジアミン成分単位の合計量を100モル%とする。
【0038】
脂肪族ジアミン成分単位が、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の両方を含む場合は、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位=95/5〜50/50の範囲にあることが好ましく、85/15〜55/45の範囲がより好ましい。
【0039】
ジアミン成分単位(a22)は、脂肪族ジアミン成分単位のほかに、少量の脂環式ジアミン成分単位や芳香族ジアミン成分単位をさらに含んでいてもよい。脂環式ジアミン成分単位の例には、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンから誘導される成分単位が含まれる。芳香族ジアミン成分単位の例には、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどから誘導される成分単位が含まれる。
【0040】
1−1−3.物性
熱可塑性樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)は250℃以上である。融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)の好ましい下限値は、270℃であり、より好ましくは280℃である。一方、融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)の好ましい上限値としては350℃を例示でき、さらに好ましくは335℃である。前記融点やガラス転移温度が250℃以上であると、リフローはんだ工程での反射板(樹脂組成物の成形物)の変色や変形などが抑制される。上限温度は原則的には制限されないが、融点もしくはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形に際して熱可塑性樹脂(A)の分解が抑制されるため好ましい。
【0041】
ポリエステル樹脂(A1)の融点は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS-K7121に準拠して測定されうる。具体的には、測定装置としてX−DSC7000(SII社製)を準備する。この装置に、ポリエステル樹脂(A1)の試料を封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で30℃まで降温する。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とする。
【0042】
ポリアミド樹脂(A2)の融点は、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で350℃まで昇温する以外は、前述と同様の方法で測定されうる。
【0043】
熱可塑性樹脂(A)の極限粘度[η]は0.3〜1.2dl/gであることが好ましい。極限粘度がこのような範囲にある場合、反射材用樹脂組成物の成形時の流動性が優れる。熱可塑性樹脂(A)の極限粘度は、熱可塑性樹脂(A)の分子量を調整するなどして調整されうる。例えば、ポリエステル樹脂(A1)の分子量の調整方法は、重縮合反応の進行度合いの調整や単官能のカルボン酸や単官能のアルコールなどを適量加える等の公知の方法を採用することができる。
【0044】
ポリエステル樹脂(A1)の極限粘度は、以下の手順で測定することができる。
ポリエステル樹脂(A1)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて試料溶液とする。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出する。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
【0045】
ポリエステル樹脂(A1)は、例えば反応系内に分子量調整剤等を配合して、ジカルボン酸成分単位(a11)とジアルコール成分単位(a12)とを反応させて得ることができる。上述のように、反応系内に分子量調整剤を配合することで、ポリエステル樹脂(A1)の極限粘度を調整しうる。
【0046】
分子量調整剤は、モノカルボン酸やモノアルコールでありうる。モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸などが含まれる。また、芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などが含まれ、脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
【0047】
分子量調整剤の添加量は、ジカルボン酸成分単位(a11)とジアルコール成分単位(a12)とを反応させる際のジカルボン酸成分単位(a11)の合計量1モルに対して0〜0.07モル、好ましくは0〜0.05モルとしうる。
【0048】
ポリアミド樹脂(A2)の極限粘度[η]は、前述の混合溶媒を濃硫酸とし、かつ30℃で測定する以外は前述と同様にして測定されうる。
【0049】
本発明の反射材用樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)、白色顔料(B)および化合物(C)の合計に対して45〜80質量%であることが好ましく、45〜70質量%であることがより好ましく、50〜60質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂(A)の含有割合が一定以上であると、成形性を損なうことなく、リフローはんだ工程などに耐えうる耐熱性に優れた反射材用樹脂組成物が得られやすい。熱可塑性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂(A1)とポリアミド樹脂(A2)の両方を含む場合、熱可塑性樹脂(A)の含有割合は、ポリエステル樹脂(A1)とポリアミド樹脂(A2)の含有割合の合計を意味する。
【0050】
1−2.白色顔料(B)
本発明の反射材用樹脂組成物に含まれる白色顔料(B)は、樹脂組成物を白色化し、光反射機能を向上できるものであればよい。具体的には、白色顔料(B)は、屈折率が2.0以上であることが好ましい。白色顔料(B)の屈折率の上限値は、例えば4.0でありうる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの白色顔料(B)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なかでも、成形物の反射率や隠蔽性などが高いなどから、酸化チタンが好ましい。
【0051】
酸化チタンは、ルチル型が好ましい。酸化チタンの平均粒子径は、0.1〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.3μmである。
【0052】
白色顔料(B)は、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などで処理されたものでもありうる。例えば、白色顔料(B)は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
【0053】
白色顔料(B)は、反射率を均一化させるためなどから、アスペクト比の小さい、すなわち球状に近いものが好ましい。
【0054】
反射材用樹脂組成物における白色顔料(B)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)、白色顔料(B)、および化合物(C)の合計に対して17〜54.99質量%、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%である。白色顔料(B)の含有割合が17質量%以上であると、十分な白色度が得られやすく、かつ成形物の反射率を高めやすい。白色顔料(B)の含有割合が54.99質量%以下であると、成形性が損なわれにくい。
【0055】
白色顔料(B)の熱可塑性樹脂(A)に対する含有割合は、例えば30〜90質量%、好ましくは60〜80質量%としうる。
【0056】
1−3.化合物(C)
本発明の反射材用樹脂組成物に含まれる化合物(C)は、分子内に下記式(A)で表される構造を1以上有する化合物でありうる。
【化2】
【0057】
1分子あたりの式(A)で表される構造の数は、例えば1〜4でありうるが、好ましくは1である。即ち、化合物(C)は、一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
【0058】
一般式(1)のXは、有機基を示す。有機基Xは、炭素原子数1〜20の置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のシクロヘキシル基、あるいは炭素原子数6〜20の置換または未置換のアリール基を示し;好ましくは炭素原子数1〜20の置換または未置換のアルキル基、あるいは炭素原子数6〜20の置換または未置換のアリール基を示す。
【0059】
炭素原子数1〜20の置換または未置換のアルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−オクチル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基などが含まれる。炭素原子数6〜20の置換または未置換のアリール基の例には、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ペンチルフェニル基などが含まれる。
【0060】
有機基Xで表されるアルキル基、シクロヘキシル基、およびアリール基が有しうる置換基は、メチル基、エチル基などの炭素原子数1〜12のアルキル基;フェニル基などの炭素原子数6〜12のアリール基;ヒドロキシ基;メトキシ基;およびオキサジアゾール基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【0061】
化合物(C)の分子量は、200〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましい。化合物(C)の分子量が上記範囲にあると、溶融時の揮発が少なく、且つ他の成分と良好に混合しやすく、樹脂組成物の流動性も損なわれにくい。
【0062】
化合物(C)は、ラジカル捕捉作用を有しうる。それにより、樹脂組成物の製造時や成形時、成形物の使用環境下などで受ける熱や光で発生するラジカルを捕捉し、当該製造時や成形時の熱可塑性樹脂(A)の熱分解や、熱や光による成形物中の熱可塑性樹脂(A)の分解を抑制しうる。また、化合物(C)は、紫外線吸収作用を有しうる。それにより、成形物中の熱可塑性樹脂(A)の光による分解を抑制しうる。これらの結果、変色が少なく、反射率の高い成形物が得られ、かつ反射率の低下を少なくしうる。
【0063】
特に化合物(C)は、一般式(1)で示されるようにオキシカルボニル基がベンゼン環に直接結合している。それにより、化合物(C)は良好なラジカル捕捉性を有しうる。
【0064】
反射材用樹脂組成物における化合物(C)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)、白色顔料(B)、および化合物(C)の合計に対して0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜1.5質量%、より好ましくは0.1〜1.1質量%である。化合物(C)の含有割合が0.01質量%以上であると、熱や光による成形物中の樹脂の劣化を抑制して十分な白色度が得られやすく、反射率の低下を低減しやすい。化合物(C)の含有割合が3質量%以下であると、化合物(C)の分解物に起因する着色や色相悪化による成形物の反射率の低下を少なくしうる。
【0065】
化合物(C)の熱可塑性樹脂(A)に対する含有割合は、0.25〜2.0質量%、好ましくは0.27〜1.0質量%でありうる。化合物(C)の含有割合が一定以上であると、熱や光を長時間受けたときの成形物中の熱可塑性樹脂(A)の分解反応を好ましく抑制しうる。化合物(C)の含有割合が一定以下であると、化合物(C)の分解物に起因する着色や色相悪化による成形物の反射率の低下を少なくしうる。
【0066】
1−4.強化材(D)
本発明の反射材用樹脂組成物は、必要に応じて強化材(D)をさらに含んでもよい。強化材(D)の形状は、球状、繊維状、または板状などあり、成形物に良好な強度や靱性を付与しやすいことなどから、好ましくは繊維状である。
【0067】
繊維状強化材の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバー、カットファイバーなどが含まれる。これらのうちの1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、平均繊維径が比較的小さく、成形物の表面平滑性を高めやすいことなどから、ワラストナイト、ガラス繊維およびチタン酸カリウムウィスカーからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ワラストナイトまたはガラス繊維がより好ましい。光遮蔽効果が高い点ではワラストナイトが好ましく、機械強度が高い点ではガラス繊維が好ましい。
【0068】
反射材用樹脂組成物中の繊維状強化材の平均繊維長(l)は、通常5mm以下であり、300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。当該平均繊維長(l)が一定以下であると、繊維状強化材が成形時などに折れにくいだけでなく、繊維状強化材が樹脂中に微分散しやすい。そのため、成形時などに樹脂が受ける余分な応力を少なくし、樹脂の熱分解を抑制しやすい。また、得られる成形物の表面平滑性を高めやすい。当該平均繊維長(l)の下限値は、特に制限はないが、好ましくは2μmであり、より好ましくは8μmでありうる。平均繊維長(l)を2μm以上とすることで、成形物に良好な強度を付与しうる。
【0069】
反射材用樹脂組成物中の繊維状強化材の平均繊維径(d)は、成形時などに繊維状強化材を微分散させやすくし、かつ成形物の表面平滑性を高める観点から、一定以下であることが好ましく、具体的には0.05〜30μmであることが好ましく、2〜6μmであることがより好ましい。平均繊維径(d)を一定以上とすることで、成形時などに繊維状強化材が折れるのを抑制しやすい。平均繊維径(d)を一定以上とすることで、成形物に高い表面平滑性を付与し、高い反射率が得られやすい。
【0070】
反射材用樹脂組成物(例えばペレットなどのコンパウンド)中の繊維状強化材の平均繊維長(l)および平均繊維径(d)は、以下の方法で測定されうる。
1)反射材用樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)得られた濾過物のうち任意の100本の繊維状強化材を走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:50倍)で観察し、それぞれの繊維長および繊維径を計測する。繊維長の平均値を平均繊維長(l)とし;繊維径の平均値を平均繊維径(d)としうる。
【0071】
繊維状強化材の平均繊維長(l)を平均繊維径(d)で除して得られるアスペクト比(l/d)は、2〜20であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。アスペクト比が一定以上であると、成形物に一定以上の強度や剛性を付与しやすい。
【0072】
反射材用樹脂組成物における強化材(D)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)、白色顔料(B)、および化合物(C)の合計に対して、5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%でありうる。強化材(D)の含有割合が5質量%以上であると、樹脂組成物の耐熱性を高め、成形物の表面を平滑にしやすい。強化材(D)の含有割合が50質量%以下であると、樹脂組成物の成形性が損なわれにくい。
【0073】
1−5.その他の成分(E)
本発明の反射材用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、任意の成分、例えば、酸化防止剤(アミン類、イオウ類、リン類等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、種々公知の配合剤などを含んでもよい。
【0074】
本発明の反射材用樹脂組成物を他の成分と組み合わせて使用する場合、前記添加剤の選択が重要になる場合がある。例えば、組合せ使用する他の成分が触媒などを含む場合、前記添加剤に触媒毒になる成分や元素が含まれている化合物は避けることが好ましい。避けた方が好ましい添加剤としては、例えば、硫黄などを含む化合物等が挙げられる。
【0075】
1−6.物性
本発明の反射材用樹脂組成物は、良好な成形性を有しうる。具体的には、反射材用樹脂組成物を下記条件で射出成形したときの流動長が、30mm以上であることが好ましく、31mm以上であることがより好ましい。
射出成形装置:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg・cm
シリンダー設定温度:融点+10℃
金型温度:30℃
【0076】
本発明の反射材用樹脂組成物の流動性を高めるためには、例えば白色顔料(B)や強化材(D)の含有割合を一定以下とすることが好ましい。
【0077】
2.反射材用樹脂組成物の製造方法
本発明の反射材用樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することができる。
【0078】
本発明の反射材用樹脂組成物は、好ましくは上記各成分を一軸押出機や多軸押出機などで混合後、溶融混練し、造粒あるいは粉砕して得られるペレットなどのコンパウンドでありうる。コンパウンドは、成形用材料として好ましく用いられる。溶融混練は、ポリエステル樹脂(A1)やポリアミド樹脂(A2)の融点より5〜30℃高い温度で行うことが好ましい。溶融混練温度の好ましい下限値は、255℃、好ましくは275℃、より好ましくは295℃とすることができ、好ましい上限値は、360℃、より好ましくは340℃とすることができる。
【0079】
3.反射板
本発明の反射板は、本発明の反射材用樹脂組成物を成形して得られる成形物でありうる。
【0080】
本発明の反射材用樹脂組成物の成形物は、反射板として良好に機能させる観点から、成形物の、波長450nmの光の反射率が90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。反射率は、コニカミノルタ社製CM3500dを用いて測定することができる。測定時の成形物の厚みは、0.5mmとしうる。
【0081】
本発明の反射材用樹脂組成物の成形物は、熱や光を受けても反射率の低下が少ないことが好ましい。具体的には、当該成形物の、150℃で500時間加熱後に測定される波長450nmの光の反射率は、ポリエステル樹脂(A1)の場合は、例えば90%以上であり、ポリアミド樹脂(A2)の場合は、例えば70%以上でありうる。当該成形物の、紫外線を16mW/cmで500時間照射後に測定される波長450nmの光の反射率は、ポリエステル樹脂(A1)の場合は例えば82%以上であり、ポリアミド樹脂(A2)の場合は例えば70%以上でありうる。測定時の成形物の厚みは、0.5mmとしうる。反射率を維持するためには、前述の化合物(C)を一定量以上含有させることが好ましい。
【0082】
本発明の反射板は、少なくとも光を反射させる面を有するケーシングやハウジングなどでありうる。光を反射させる面は、平面、曲面または球面でありうる。例えば、反射板は、箱状または函状、漏斗状、お椀形状、パラボラ形状、円柱状、円錐状、ハニカム状などの形状の光反射面を有する成形物でありうる。
【0083】
本発明の反射板は、有機ELや発光ダイオード(LED)などの各種光源の反射板として用いられる。なかでも、発光ダイオード(LED)の反射板として用いられることが好ましく、表面実装に対応した発光ダイオード(LED)の反射板として用いられることがより好ましい。
【0084】
本発明の反射板は、本発明の反射材用樹脂組成物を、射出成形、特にフープ成形等の金属のインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形することによって得ることができる。
【0085】
本発明の反射板は、化合物(C)を含む反射材用樹脂組成物を成形して得られる。化合物(C)は、樹脂組成物の製造時や成形時の高温下で発生するラジカルを良好に捕捉しうるため、熱による熱可塑性樹脂(A)の分解反応を抑制しやすい。それにより、変色が少なく、反射率の高い成形物を得ることができる。
【0086】
本発明の反射板を備えたLEDパッケージは、例えば基板上に成形された、LEDを搭載するための空間を有するハウジング部と、当該空間に搭載されたLEDと、LEDを封止する透明な封止部材とを有しうる。このようなLEDパッケージは、1)基板上に反射板を成形してハウジング部を得る工程と;2)ハウジング部内にLEDを配置し、LEDと基板とを電気的に接続する工程と;3)LEDを封止剤で封止する工程とを経て製造されうる。封止工程では、封止剤を熱硬化させるために100〜200℃の温度で加熱する。さらに、LEDパッケージをプリント基板に実装する際のリフローはんだ工程では、LEDパッケージが250℃以上もの高温に曝される。
【0087】
本発明の反射材用樹脂組成物から得られる反射板は、化合物(C)を含むことから、上記工程で高温の熱に曝されたり、使用環境下でLEDから発生する可視光や紫外光などの光や熱を長時間受けたりしても、化合物(C)が良好にラジカルを捕捉しうる。また、化合物(C)は、紫外光などを吸収しうることから、樹脂が受ける紫外光の量を少なくしうる。これらにより、成形物中の光や熱による熱可塑性樹脂(A)の分解反応を抑制し、変色が少なく、高い反射率を維持しうる。
【0088】
本発明の反射板は、種々の用途に用いることができ、例えば各種電気電子部品、室内照明、屋外照明、自動車照明などの反射板として用いることができる。
【実施例】
【0089】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0090】
1.材料の調製
<ポリエステル樹脂(A1)>
ジメチルテレフタレート06.2質量部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)94.6質量部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.0037質量部を加え、150℃から300℃まで3時間30分かけて昇温し、エステル交換反応をさせた。
【0091】
前記エステル交換反応終了時に、1,4−シクロヘキサンジメタノールに溶解した酢酸マグネシウム・四水塩0.066質量部を加え、引き続きテトラブチルチタネート0.1027質量部を導入して重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度300℃まで昇温した。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させた。その後、得られた重合体を取り出し、260℃、1Torr以下で3時間固相重合させてポリエステル樹脂(A1)を得た。
【0092】
得られたポリエステル樹脂(A1)の極限粘度[η]は0.6dl/gであり、融点は290℃であった。極限粘度[η]と融点は、以下の方法で測定した。
【0093】
(極限粘度)
得られたポリエステル樹脂(A1)を、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解して試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
【0094】
(融点)
ポリエステル樹脂(A1)の融点の測定は、JIS−K7121に準じて行った。測定装置としてX−DSC7000(SII社製)を準備した。これに、ポリエステル樹脂(A1)の試料を封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/分で、320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で30℃まで降温させた。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とした。
【0095】
<ポリアミド樹脂(A2)>
テレフタル酸23.9質量部、1,9−ノナンジアミン20.4質量部、2−メチル−1,8−オクタンジアミン3.6質量部、安息香酸0.3質量部、次亜リン酸ナトリウム−水和物0.3質量部および蒸留水をオートクレーブに入れ、窒素置換した。得られた混合物を加熱して、190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。得られた低縮合物を室温まで冷却した後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。得られた低縮合物の水分量は4100ppm、極限粘度[η]は0.13dl/gであった。
【0096】
次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置に投入し、窒素置換後、約1時間30分かけて180℃まで昇温した。その後、1時間30分間反応させた後、室温まで降温した。得られたポリアミドの極限粘度[η]は0.17dl/gであった。その後、得られたポリアミドを、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機に投入し、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、5Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(A2)を得た。
【0097】
得られたポリアミド樹脂(A2)の極限粘度[η]は0.91dl/gであり、融点は306℃であった。ポリアミド樹脂(A2)の極限粘度[η]は、濃硫酸中、30℃で測定した以外は前述と同様にして測定した。ポリアミド樹脂(A2)の融点は、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で350℃まで昇温した以外は前述と同様の方法で測定した。
【0098】
<白色顔料(B)>
酸化チタン(粉末状、平均粒径*b0.21μm)
*b:酸化チタンの平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに画像解析装置(ルーゼックスIIIU)にて画像解析して求めた。
【0099】
<化合物(C)>
C−1:KEMISORB114(ケミプロ化成(株)、下記式で表される化合物)
【化4】
C−2:KEMISORB113(ケミプロ化成(株)、下記式で表される化合物)
【化5】
<比較用化合物>
R−1:Irganox1010(BASF)ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
【0100】
<強化材(D)>
D−1:ワラストナイト、平均繊維長(l)50μm、平均繊維径(d)4.5μm、アスペクト比(l/d)11(巴工業(株)社製NYGLOS 4W)
D−2:ガラス繊維、平均繊維長(l)3mm、異形比4[7μm×28μm](日東紡績(株)製CSG 3PA−830、シラン化合物処理品)
原料としてのワラストナイト(D−1)およびガラス繊維(D−2)の平均繊維長(l)および平均繊維径(d)は、以下の方法で測定した。即ち、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:50倍)を介して、100本のワラストナイトまたはガラス繊維の繊維長、繊維径を測定した。そして、繊維長の平均値を平均繊維長(l)とし、繊維径の平均値を平均繊維径(d)とした。アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径(l/d)とした。
【0101】
2.反射材用樹脂組成物の作製
[実施例1]
ポリエステル樹脂(A1)として上記合成したポリエステル樹脂54.85質量部、白色顔料(B)として上記酸化チタン35質量部、化合物(C)として化合物(C−1)0.15質量部、強化材(D)として上記ワラストナイト(D−1)10質量部とをタンブラーブレンダーを用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押出物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状の反射材用樹脂組成物を得た。コンパウンド性は良好であることを確認できた。
【0102】
さらに、得られたペレット状の反射材用樹脂組成物における強化材(D)の平均繊維長・平均繊維径を、以下の方法で測定した。
1)得られた反射材用樹脂組成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させて、濾過物を採取した。
2)得られた濾過物のうち任意の100本の強化材(D)を、走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)にて50倍の倍率で観察し、それぞれの繊維長と繊維径を計測した。そして、計測された繊維長の平均値を「平均繊維長」とし;計測された繊維径の平均値を「平均繊維径」とした。
その結果、実施例1で得られた反射材用樹脂組成物中の平均繊維長は23μmであり、平均繊維径は2.9μmであった。
【0103】
[実施例2、3、5〜9および比較例1〜3]
表1または2に示される組成に変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。
【0104】
[実施例4および比較例4]
シリンダー温度を320℃に変更し、かつ表1または2に示される組成に変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。
【0105】
各実施例および各比較例で得られた樹脂組成物の、各種反射率および流動性を、以下の方法で評価した。
【0106】
<反射率>
(初期反射率)
得られたペレット状の樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形して、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を調製した。得られた試験片を、ミノルタ(株)CM3500dを用いて、波長領域360nm〜740nmの反射率を求めた。450nmの反射率を代表値として初期反射率とした。
成形機: 住友重機械工業(株)社製、SE50DU
シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、
金型温度:150℃
【0107】
(リフロー試験後の反射率)
初期反射率を測定した試料片を、170℃のオーブンに2時間放置した。次いで、この試料片を、エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、試料片の表面温度が260℃となり、かつ20秒保持する温度プロファイルの熱処理(リフローはんだ工程と同様の熱処理)を施した。この試料片を徐冷後、初期反射率と同様の方法で反射率を測定し、リフロー試験後の反射率とした。
【0108】
(加熱後の反射率)
初期反射率を測定した試験片を、150℃のオーブンに500時間放置した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、加熱後の反射率とした。
【0109】
(紫外線照射後の反射率)
初期反射率を測定した試験片を、下記の紫外線照射装置に500時間放置した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、紫外線照射後の反射率とした。
紫外線照射装置:ダイプラ・ウィンテス(株) スーパーウィンミニ
出力:16mW/cm
【0110】
<流動性>
得られた樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を用いて、以下の条件で射出成形し、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm
シリンダー設定温度:融点(Tm)+10℃
金型温度:30℃
【0111】
実施例1〜9の評価結果を表1に示し;比較例1〜4の評価結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0112】
表1および2に示されるように、化合物(C)を含む実施例1〜9の樹脂組成物は、化合物(C)を含まない比較例1および3〜4の樹脂組成物よりも、高い反射率を有し、かつ加熱後または光照射後の反射率の低下が少ないことがわかる。これは、化合物(C)が、該ペレット状の樹脂組成物の製造時または成形時の熱や成形後の熱や光などを受けたときに発生するラジカルを捕捉し、ポリエステル樹脂(A1)やポリアミド樹脂(A2)の分解反応を抑制しうるためであると考えられる。
【0113】
実施例1〜3および比較例2の対比から、化合物(C)の含有割合が一定以下である実施例1〜3の樹脂組成物は、化合物(C)の含有割合が多過ぎる比較例2の樹脂組成物よりも初期、リフロー試験後、加熱後および紫外線照射後の反射率が高いことがわかる。つまり、化合物(C)は、溶融時のポリエステル樹脂(A1)との相溶性が高いため、低分子量であっても揮発が低減され、かつ少ない添加量でも均一に分散するため、ポリエステル樹脂(A1)の変色を抑制できることが示される。変色を抑制できる機構は明らかではないが、化合物(C)が高温混練時に発生するラジカルを捕捉するだけでなく、化合物(C)とポリエステル樹脂(A1)とのエステル交換反応により、ポリエステル樹脂(A1)の分子末端を封止し、樹脂劣化を抑制することにもよると考えられる。
【0114】
実施例4と実施例5の対比から、ポリエステル樹脂(A1)を含む実施例5の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A2)を含む実施例4の樹脂組成物よりも加熱後の反射率が高いことがわかる。実施例4の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A2)のアミド基由来の変色を十分には抑制できなかったためと考えられる。
【0115】
実施例1、7及び8の対比から、強化材(D)を適量含む実施例1の樹脂組成物は、強化材(D)を含まない実施例7の樹脂組成物や強化材(D)を比較的多く含む実施例8の樹脂組成物よりも、加熱後や紫外線照射後の反射率の低下がより少ないことが示される。
【0116】
実施例9と比較例3との対比から、実施例9の樹脂組成物は、比較例3の樹脂組成物よりも、初期の反射率だけでなく、加熱後の反射率の低下も十分に抑制されることが示される。このことから、化合物(C)は、少ない添加量であってもポリエステル樹脂(A1)の変色を高度に抑制できることが示される。

【0117】
本出願は、2014年6月30日出願の特願2014−134749に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の反射材用樹脂組成物は、例えばLEDパッケージの製造工程やLEDパッケージの実装時のリフローはんだ工程などで受ける熱や、使用環境下で光源から受ける熱や光に曝されても、反射率の低下が少ない反射板を提供することができる。