(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
電力増幅器(PA)は、通信システムにおいて、特にワイヤレストランスミッタにおいて、広く普及している構成要素である。多くのPAは本質的に非線形であるので、それらの出力はそれらの入力に線形的に関連していない。PAの効率と線形性との間には、ほぼ逆の関係性が存在する。従って、効率の観点から非線形PAが望ましい。しかしながら、非線形性は、隣接チャネル干渉を引き起こすスペクトルリグロース(拡大)を起こし得る。非線形性はまた、ビット誤り率(BER)性能を低下させるバンド内歪を起こし得る。幾つかの送信フォーマットはPA非線形性に対して特に脆弱である。理由は、それらの高いピーク対平均電力比によるものであり、それは、それらの信号エンベロープにおける大きな変動に対応する。規制機関により課せられたスペクトルマスクに適合するため、及びBERを低減するために、PA線形化が必要となり得る。
【0016】
全てのPA線形化技術の中で、デジタルベースバンドプリディストーションが最も費用効果が高い。プリディストーター(predistoter)は、PAの前に位置する機能ブロックである。PAが圧縮特性を有するので、プリディストーターは概して、PA入力信号において拡大非線形性を生成するように働く。理想的な例では、PA出力は、プリディストーター−PAチェーンに対する入力のスカラー乗算であり得る。メモリレスPA(その出力電流がその入力電流にのみ依存するPAを意味する)に対しては、メモリレスプリディストーションで十分である。
【0017】
多くの他の電力増幅器のように、スイッチドモードPAは非線形挙動を示すが、出力電力が高くなり、動作効率が高くなると、スイッチドモードPAの非線形性は通常、悪化する。スイッチドモードPAを駆動する離散時間スイッチング信号の場合、非線形性は、立ち上がり/立ち下り時間不整合等の非理想的スイッチング波形に由来する。典型的なデジタルプリディストーション技術は、このタイプの増幅器の線形化が可能でないことがある。
【0018】
本開示の実施形態は、スイッチドモードPAに対するスイッチング信号の非線形性挙動を捕捉するプリディストーターモデルを提供する。本明細書で開示されるプリディストーターモデルは、他のタイプのPAに対するプリディストーターにはない項を含む。特に、開示される実施形態は、業界標準によって定義される線形性要求に合致するようにスイッチドモードPAを補助する。開示されるプリディストーターモデルがなければPAは著しく後退しなければならなくなり得、それが出力電力及び効率を低下させる。
【0019】
本明細書で開示される実施形態は、電力増幅器の効率及び費用の考察が重要なファクタであるようなシステム等、様々な通信システムに適用可能である。例えば、開示される実施形態は、多くのワイヤレスモバイル通信システム(LTE、LTE−A、又は5G等)でのワイヤレストランスミッタ(ポータブルデバイス又はベースステーション等)における使用に適用可能である。開示される実施形態は、他の通信システムにおいても同様に適用可能であり得る。
【0020】
図1は、スイッチドモードPA等の電力増幅器における非線形性の問題を図示する。
図1において、非線形PAの振幅応答が周波数範囲にわたってプロットされている。参照番号100〜102で示されるように、PAの非線形性は、高い隣接チャネル電力比(ACPR)をもたらし、それは多くのシステムにおいて望ましくない。
【0021】
図2A及び
図2Bは、電力増幅器における非線形性の幾つかの原因と結果を図示する。
図2Aにおいて、プロット201が、理想的な電力増幅器のための方形波形を表す。
図2Aに示されるように、プロット201は歪のない直線の垂直及び水平ラインを示す。これに対し、
図2Bにおいて、プロット203が、スイッチドモードPA等の電力増幅器の代表的な例示の波形を示す。プロット203は、PA非効率性を引き起こし過度の電力使用につながる多くの歪を示す。例えば、PAにおける立ち上がり及び立ち下り時間の不整合によって波形の垂直ラインにおける歪205が引き起こされ得る。同様に、スイッチング状態におけるトランジスタの有限抵抗によって波形の水平ラインにおける歪207が引き起こされ得る。
【0022】
図3は、非線形PA300の例示の信号応答を図示する。
図3において、PA300は、搬送周波数Fcに集中する入力信号301を受信する。入力信号301の狭い帯域幅は最小信号拡散を示す。入力信号301はまた、2Fc及び3Fc等の高調波周波数で、ほとんど又はまったく成分を含まない。
【0023】
図3に示されるように、出力信号303における信号拡散は、PA300に起因して、搬送周波数Fcで、及び高調波周波数(2Fc及び3Fc等)で発生する。幾つかのトランスミッタ実装において、搬送周波数Fcの周りの非線形性のみが重要であり、高調波周波数の辺りの非線形信号は、PAの出力整合ネットワーク302によって著しく減衰される。その結果、多くの実装において、搬送周波数Fcを線形化することのみが重要であり、高調波周波数(2Fc及び3Fc等)は概して無視され得る。
【0024】
PA信号の線形化は概して、使用されるデジタルプリディストーション(DPD)モデルによって決定される。所与の非線形PAと共に用いるために、最適でないDPDモデルが選択されると、線形化の結果もまた最適より低くなる。
【0025】
本明細書では、PA300は、他の構成要素を含む、トランスミッタ等の一層大きいシステムの一部であり得る。また、入力信号301及び出力信号303は、他の周波数で他の信号成分を含み得る。
【0026】
図4は、本開示に従った電力増幅器と共に用いるための例示のデジタルプリディストーション(DPD)システム400を図示する。
図4に示されるように、DPDシステム400は、DPDブロック405、デジタルアナログコンバータ(DAC)410、アップコンバータ415、電力増幅器420、信号カプラー425、ダウンコンバータ430、アナログデジタルコンバータ(ADC)435、及びトレーニングアルゴリズムブロック440を含む。電力増幅器420は、
図3に示すように、出力整合ネットワークに結合され得る。
【0027】
DPDブロック405は、入力信号のスペクトル拡幅を介してPA420の信号圧縮特性を反転又はキャンセルするように機能する。DPDブロック405によって生成されたスペクトル拡幅は、信号がDAC410及びアップコンバータ415を通過する間、維持される。このように、信号がDPDブロック405及びPA420を通過すると、結果はより一層線形応答になる。
【0028】
DPDシステム400において、DPDブロック405は、PA420の非線形前置逆数(pre−inverse)としてトレーニングされる。非線形前置逆数は、DPDブロック405の出力においてスペクトル拡幅信号(スペクトルリグロース)を生成する。PA非線形性を実質的にキャンセルするために、出力は、PA420に到達する前に、DAC410及びアップコンバータ415を介してアナログチェーンにおいて維持される。アップコンバータ415は、DAC410の出力を、無線周波数(RF)信号等の一層高い周波数信号にアップコンバートし得る。
【0029】
DPDシステム400では(多くのデジタルプリディストーションシステムにおけるように)、PA420の非線形挙動が事前にわからないことがある。従って、DPDブロック405をトレーニングするためにDPD帯域幅と同様の帯域幅を備えるフィードバックパスが用いられる。フィードバックパスは、本明細書では、カプラー425、ダウンコンバータ430、ADC435、及びトレーニングアルゴリズムブロック440を含む。カプラー425は、PA420からの出力信号の一部を受信し、出力信号をダウンコンバータ430に送信し、ダウンコンバータ430は一層低い周波数信号をADC435に提供する。ADC435からの出力及びDPDブロック405への入力は、トレーニングアルゴリズムブロック440において受信され、トレーニングアルゴリズムブロック440は1つ又は複数のトレーニングアルゴリズムを含む。トレーニングアルゴリズムブロック440は、PA420の非線形性をキャンセルするために、DPDブロック405に対する最良のDPDモデルを判定するために、ストアされたパラメータ及びトレーニングアルゴリズムを用い得る。
【0030】
幾つかのシステムでは、PA420がメモリを備える非線形システムであるためにPA420の出力電流がPA420の入力電流にのみ依存するのではないので、困難が生じる。その結果、デジタルプリディストーションのために用いられるべき逆関数をモデル化及び構築することが困難になり得る。
【0032】
物理システムが実信号を処理する。通信システムにおいて、ベースバンド信号は、4相関係を有するRF搬送波に変調された両方の信号を表すために、典型的に
複素形式である。項
及び
は、それぞれ、ベースバンド入力及び出力信号を表すために用いられると仮定する。また、項x(t)及びy(t)は、それぞれ、パスバンド入力及び出力信号を表すために用いられると仮定する。それらの関係は次のように求められ得る。
ここで、ω
0は搬送周波数であり、LPFはローパスフィルタを表す。項x(t)はまた次のように表され得る。
【0033】
実入力信号x(t)の場合、非線形システムを表すために、次のようにボルテラ級数(Volterra Series)が用いられ得る。
ここで、τ
k=[τ
1,...,τ
k]
T,h
k(.)は、k次のボルテラカーネルであり、dτ
k=dτ
1dτ
2...dτ
kである。
【0034】
式(5)を式(6)に代入すると、項はe
±jω0tの周りに位置し、それらは基本周波数ゾーンにおける信号に関連する。幾つかの実装において、項はまた、e
±jnω0tに位置し、それらは高調波周波数ゾーンにおける信号に関連する。多くの実装において、高調波周波数ゾーンにおける信号は、基本周波数における信号と相互作用せず無視され得るか又はアナログフィルタによってフィルタリングされ得るので、基本ゾーンにおける信号のみが重要である。式(5)を式(6)に代入した後、e
±jω0tの周りに位置する項の全てをまとめると、次のように表され得る。
【0035】
式(7)を式(4)に代入すると、ベースバンド表現は次のようになる。
ここで、
である。
【0036】
離散時間ドメインにおいて、式(8)は次のようになる。
ここで、l
1,l
2,...,l
2k+1は遅延項である。
【0037】
式(10)において表されるモデルは最も一般的な表現である。しかしながら、このモデルは、非線形次数及びメモリ深度が増加するに連れてモデルにおける項の数が劇的に増加するため、実装が難しい。実用的なモデルは、良好なモデリング精度を維持しつつ、複雑さを低減するようにモデルを簡略化することが多い。
【0038】
メモリレスPA、及びメモリ効果を備えるPA
【0039】
メモリレスパスバンドPAモデルが、式(10)の全ての遅延項l
iをゼロに設定することによって、次のように求められ得る。
【0040】
メモリ効果を備えるパスバンドPAが、式(10)の全ての遅延項l
iを同じ値に設定することによって、次のようにモデル化され得る。
【0041】
また、モデルは他の手法で簡略化され得る。用いられる簡略化にかかわらず、モデルは、式(10)に示されるように、x
*(n
−l
i)項より1つ多いx(n
−l
i)項を含む。
【0042】
メモリレスPA又はメモリ効果を備えるPAの非線形性を補正するために、DPD(
図4に示されるDPD405等)が、送信ストリームにおいてPAの前に実装され得る。DPDは、上記に示した式に基づいて数学的にモデル化され得る。例えば、メモリレスDPDは、式(12)に示されるメモリレスPAモデルをプリディストーションするために用いられ得る。同様に、メモリDPDは、式(14)に示されるメモリ効果を備えるPAモデルをプリディストーションするために用いられ得る。
【0043】
DPDの物理的実装において、ルックアップテーブル(LUT)を用いて計算の幾つかがモデル化され得る。例えば、式(12)(下記に再度示す)から開始すると、LUTを用いるメモリレスDPDモデルが、次のように求められ得る。
【0044】
このように、式(17)はメモリレスDPD内の1つ又は複数の処理ブロックによって実行され得る。
【0045】
メモリDPDの場合、LUTを用いるモデルが、式(14)(下記に再度示す)から開始して、次のように求められ得る。
【0046】
このように、式(20)はメモリDPD内の1つ又は複数の処理ブロックによって実行され得る。
【0047】
図5は、本開示に従ったDPDシステム内で用いるためのDPD処理ブロック500の例示の実装を図示する。幾つかの実施形態において、DPD処理ブロック500は、
図4のDPDブロック405を表し得るか又はDPDブロック405に関連して用いられ得る。特定の実施形態において、DPD処理ブロック500は、上述のメモリ効果を備えるPAモデルを実装する。
【0048】
図5に示されるように、DPD処理ブロック500は、複数のルックアップテーブル(LUT)501a〜501c、複数の遅延エレメント503、絶対値二乗演算器505、複数の乗算器507、及び加算器509を含む。LUT及び遅延エレメントの数は、DPD処理ブロック500のメモリ次数によって決定され得る。
図5において、メモリ次数は3であるのでDPD処理ブロック500内に3つのLUTが存在する。
【0049】
DPD処理ブロック500は、DPD入力信号
を受信し、DPD入力信号を、上記の式(20)(乗算器507及び加算器509を用いて実装される)に従って、LUT501a〜501c及び数学的演算器を用いて処理する。DPD処理ブロック500は、前置逆数化されたDPD出力信号
を生成し、この信号はメモリレスPAに送信され、そこで、
図4に示されるように線形化される。
【0050】
図5は3つのLUT501a〜501cを示すが、メモリ次数に基づいて、必要に応じ、より多い又は少ないLUT及び遅延エレメントが用いられ得る。例えば、より高い次数のモデルにおいて、メモリ次数は4、5、6、又は他の値に等しくなり得る。そのような実装において、LUT及び遅延エレメントの数は相応に調整され得る。
【0051】
デジタルベースバンドプリディストーションは、PAを線形化するために費用効果が高い手法であるが、多くの技術はPAがメモリレス非線形性を有することを想定している。しかしながら、幾つかのタイプの電力増幅器(スイッチドモードPA等)では、PAメモリ効果を無視し得ず、メモリレスDPDの有効性が限定される。
【0052】
図6は、本開示に従ったスイッチドモードPAの例示の信号応答を図示する。
図6に示されるように、PA600は、入力信号601を受信し、出力信号603を生成するように信号を処理する。PA600は、スイッチのように動作するスイッチドモードPAであり、従って、他のタイプのPAとは異なる非線形性特性を示す。多くの点で、スイッチドモードPA600のスイッチング特性は、アナログPAよりデジタルPAに特有である。同様に、PA600を通る信号は、エイリアシング成分を備え、デジタルに類似した信号特性を示す。例えば、
図6に示すように、PA600への入力信号601は、搬送周波数Fcで及び高調波周波数2Fc及び3Fcで振幅が高くなり、デジタル信号に類似している。これは
図3に示されるPA入力信号301と対照的であり、PA入力信号301は、搬送周波数Fcに集中し、高調波周波数2Fc及び3Fcでほとんど又はまったく振幅がない。
【0053】
スイッチドモードPA600のエイリアシング及び非線形性は、高調波成分を帯域内に折り返させ(fold back)得る。従って、非線形歪が発生すると、各高調波ゾーンにおける非線形信号が、エイリアシングにより、基本ゾーンの中に折り返し得る。例えば、
図6において、高調波周波数2Fc及び3Fcにおける入力信号601の非線形バージョンは、搬送周波数Fcで出力信号603の中に折り返し得る。
【0054】
その結果、搬送周波数Fcにおける出力信号603は有意な非線形性を示し得る。搬送周波数Fcにおけるこれらの歪の幾つかは、高調波周波数2Fc及び3Fcにおける入力信号601の結果である。同様の非線形性が、高調波周波数2Fc及び3Fcにおける出力信号603において発生する。そのため、
図6に示されるように、出力信号603は、搬送周波数Fcで、及び高調波周波数2Fc及び3Fcで、有意なスペクトル拡幅を示す。多くのDPDは、高調波折り返しによって引き起こされるこれらの歪を処理することができない場合がある。
【0055】
PA600は、他の構成要素を含むワイヤレストランスミッタ等の、より大きなシステムの一部であり得る。また、入力信号601及び出力信号603は、3Fcより高い高調波周波数(4Fc、5Fc等)で成分を含み得る。
【0056】
高調波折り返しによって引き起こされる歪のため、より高次の高調波ゾーンにおいて信号のベースバンド表現を提供することが有益である。これらの信号(又は非線形歪)は、高調波周波数に位置する。信号のデジタル性が、エイリアシングを介して、こういった歪を基本周波数に折り返させる。
【0057】
これをモデル化するために、m次の高調波ゾーンに位置する信号成分が式(7)に基づいて求められる。m次の高調波ゾーンの周りの項が選択される場合、式(7)におけるlの幾つかが、mによって置き換えられ、式(7)が次のようになる。
【0058】
e
j(m+1)ω0tを用いるエイリアシングによって、式(21)の右側の第1の項が基本周波数にエイリアシングされる。ベースバンド表現は次のように表され得る。
ここで、
である。
【0059】
離散時間モデルは、次式によって求められる。
【0060】
ここで、mは0、1、2、3、....であり得る。非負整数の任意のmの場合、結果の項は、式(10)に示されるモデルにはない。すべての遅延項l
iが等しく設定されると、モデルは次のように単純化される。
【0061】
e
−j(m−1)ω0tを用いるエイリアシングによって、式(21)の右側の第2の項が基本周波数にエイリアシングバックされる。ベースバンド表現は、次のように表され得る。
ここで、
である。
【0062】
離散時間モデルは、次式によって求められる。
【0063】
ここで、mは0、2、3、4、....であり得る。m=1のとき、モデルは式(10)になる。非負整数の任意の他のmの場合、結果の項は式(10)に示されるモデルにはない。全ての遅延項l
iが等しく設定されると、モデルは次のように単純化される。
【0064】
図7は、本開示に従ったスイッチドモードPAによって引き起こされた歪をサポートするDPDシステム内で用いるためのDPD処理ブロック700の例示の実装を図示する。幾つかの実施形態において、DPD処理ブロック700は、
図4のDPDブロック405を表し得、又はDPDブロック405と関連して用いられ得る。また、DPD処理ブロック700は、他のシステムと共に用いられ得る。
【0065】
図7に示されるように、DPD処理ブロック700は、3個のDPD処理ユニット710、720、730を含む。
図5のDPD処理ブロック500と同様に、各DPD処理ユニット710〜730は、複数のLUT、遅延エレメント、絶対値二乗演算器、複数の乗算器、及び加算器を含む。また、DPD処理ユニット720は指数演算器725を含み、DPD処理ユニット730は、共役指数演算器735を含む。各処理ユニット710〜730におけるLUT及び遅延エレメントの数は、DPD処理ブロック700のメモリ次数によって決定され得る。
図7において、メモリ次数は3であり、そのため、各DPD処理ユニット710〜730に3個のLUTがある。
【0066】
DPD処理ブロック700は、DPD入力信号
を受信し、並列に動作するDPD処理ユニット710〜730を用いてDPD入力信号を処理する。DPD処理ブロック700は、前置逆数化されたDPD出力信号
を生成し、この信号はスイッチドモードPA(PA420又はPA600等)に送信され、そこで
図4に示されるように線形化される。
【0067】
スイッチドモードPAのエイリアシング及び非線形性のため、DPD処理ブロック700は、搬送周波数Fcと、高調波周波数2Fc及び3Fc等の1つ又は複数のより高い次数の高調波ゾーンとの両方において、ベースバンド信号を表し処理するように構成される。
【0068】
幾つかの実施形態において、DPD処理ユニット710は、
図5のDPD処理ブロック500と実質的に同じである。従って、DPD処理ユニット710は、上記の式(20)に従って、搬送周波数FcにおいてDPD入力信号
のベースバンド表現を処理するように構成される。
【0069】
DPD処理ユニット720及び730は、m次の高調波ゾーンにおいてDPD入力信号
のベースバンド表現を処理するように構成される。特に、DPD処理ユニット720は、式(35)を用いて、m次の高調波ゾーンにおいてDPD入力信号
のベースバンド表現を処理する。式(35)にあるように、DPD処理ユニット720におけるmの値は、1以外の非負整数であり得る(即ち、mは、0、2、3、4、....であり得る)。m=1の場合、DPD処理ユニット720はDPD処理ユニット710と同様に動作する。
【0070】
同様に、DPD処理ユニット730は、式(28)を用いて、DPD入力信号
のベースバンド表現の共役を処理する。式(28)にあるように、DPD処理ユニット730におけるmの値は、任意の非負整数であり得る(即ち、mは0、1、2、3、...であり得る)。
【0071】
式(28)と(35)を比較すると、DPD処理ユニット720は、
のm乗を用いるのに対し、DPD処理ユニット730は共役
のm乗を用いる。指数演算は、それぞれ指数演算器725及び共役指数演算器735により、DPD処理ユニット720、730において実施される。従って、DPD処理ユニット720は、DPD入力信号
のベースバンド表現を受信し、指数演算器725を用いて
から
に指数演算を行う。同様に、DPD処理ユニット730は、DPD入力信号
のベースバンド表現を受信し、共役指数演算器735を用いて共役
から
に指数演算を実施する。
【0072】
DPD処理ブロック710〜730の出力は、DPD処理ブロック700のDPD出力信号
を提供するように合計される。出力は、その後、スイッチドモードPAに送信され得る。
【0073】
図7において、DPD処理ユニット710〜730の各々は、任意のハードウェア、又はハードウェアとソフトウェア/ファームウェア命令の組み合わせを表し得る。ハードウェアは、本明細書では、任意の適切なマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、離散回路、又は任意の他の処理又は制御デバイスを含み得る。
【0074】
図7はDPD処理ブロック700の一例を示すが、種々の変更が
図7に対してなされ得る。例えば、
図7に示される機能区分は例示のためのものにすぎない。
図7における種々の構成要素が、組み合わされ、更に細分化され、又は省かれ得、また、特定の必要に応じて、付加的な構成要素が付加され得る。また、より高次の高調波を扱うことで、より多くのDPD処理ユニットの使用が生じ得る。例えば、m次の高調波ゾーンに加えて他の高調波ゾーンを処理するために、DPD処理ユニット710〜730と並列に他のDPD処理ユニットが含まれ得る。
【0075】
図8及び
図9は、本開示に従ったDPDシステム700を用いる非線形性の改善を示す例示の試験結果を図示する。
図8において、プロット曲線801が、様々な周波数範囲にわたってプロットされた、スイッチドモードPA等の非線形PAの振幅応答を示す。プロット曲線802が、DPD処理ブロック700に結合された同じ非線形PAの振幅応答を示す。参照番号803〜804で示されるように、DPDを備えるPAのACPRは、DPDを備えないPAのACPRに比べて実質的に低減されている。
【0076】
同様に、
図9は、DPD処理ブロック700を備える場合と備えない場合の、別の試験の結果を図示する。
図9に示されるように、プロット曲線902が、DPD処理ブロック700に結合されるとき、DPD処理を含まないプロット曲線901に比較して、ACPRにおいて有意な改善を示す。
【0077】
図8及び
図9は、DPDシステム700を用いる非線形性の改善を示す試験結果を図示するが、
図8及び
図9に示される例は例示のためのものにすぎない。DPDシステム700の他の実装及び使用が、異なる試験結果を提供し得る。
【0078】
図10は、本開示に従ったデジタルプリディストーションのための例示の方法1000を図示する。説明を容易にするために、方法1000は、
図7におけるDPD処理ブロック700と共に動作するPA600に関連して説明される。
【0079】
ステップ1001で、デジタルプリディストーションブロックにおいて入力信号が受信される。これは、例えば、DPD処理ブロック700で、搬送周波数において、及び1つ又は複数の高調波周波数において成分を有する入力信号を受信することを含み得る。ステップ1003で、入力信号のベースバンド表現が、搬送周波数においてプリディストーションされる。これは、例えば、デジタルプリディストーションブロック700における第1の処理ユニット710が、1つ又は複数のルックアップテーブルを用いて搬送周波数Fcで入力信号のベースバンド表現をプリディストーションすることを含み得る。
【0080】
ステップ1005で、入力信号のベースバンド表現は、1つ又は複数の高調波周波数でプリディストーションされる。これは、例えば、デジタルプリディストーションブロック700における第2の処理ユニット720が、第2の高調波周波数2Fcで入力信号のベースバンド表現をプリディストーションすることを含み得る。これはまた、第3の処理ユニット730が、第2の高調波周波数2Fcで入力信号のベースバンド表現の共役をプリディストーションすることを含み得る。
【0081】
ステップ1007で、入力信号のプリディストーションされたベースバンド表現に基づいて出力信号が生成される。これは、例えば、第1、第2、及び第3の処理ユニット710、720、730からのプリディストーションされた出力信号の合計から出力信号を生成することを含み得る。ステップ1009で、出力信号は電力増幅器に送信される。
【0082】
幾つかの実施形態において、上述の種々の機能が、コンピュータプログラムによって実装又はサポートされ、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読プログラムから形成され、コンピュータ可読媒体において具現化される。用語「コンピュータ可読プログラムコード」は、ソースコード、オブジェクトコード、及び実行可能コードを含む、任意の種類のコンピュータコードを含む。用語「コンピュータ可読媒体」は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、又は任意の他の種類のメモリ等の、コンピュータによってアクセスされ得る任意の種類の媒体を含む。「非一時的」コンピュータ可読媒体は、一時的な電気的又は他の信号を送信する、有線、ワイヤレス、光学、又は他の通信リンクを含まない。非一時的コンピュータ可読媒体は、データが永久的にストアされ得る媒体、及び、書き換え可能な光学ディスク又は消去可能なメモリデバイス等の、データがストアされ得、その後、上書きされる媒体を含む。
【0083】
用語「アプリケーション」及び「プログラム」は、適切なコンピュータコード(ソースコード、オブジェクトコード、又は実行可能なコードを含む)における実装のために適合された、1つ又は複数のコンピュータプログラム、ソフトウェアコンポーネント、命令のセット、プロシージャ、関数、オブジェクト、クラス、インスタンス、関連データ、又はそれらの一部を指す。
【0084】
本発明の請求の範囲内で、説明された実施形態において変更が可能であり、また、他の実施形態が可能である。