【文献】
Superhydrophobic-Oleophobic Ag Nanowire Platform: An Analyte-Concentrating and Quantitative Aqueous and Organic Toxin Surface-Enhanced Raman Scattering Sensor,Analytical Chemistry,米国,American Chemical Society,2014年 9月17日,Vol.86/Iss.20,PP.10437-10444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一ステップにおいて、各前記帯状突起の幅は20nm〜50nmであり、各前記帯状突起の高さは500nm〜1000nmであり、平行且つ隣接する二つの前記帯状突起の距離は10nm〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の単一分子を検出する方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1における単一分子検出用のキャリアの構造を示す図である。
【
図2】
図1の線II−IIに沿った単一分子検出用のキャリアの断面図である。
【
図3】本発明の実施例1における単一分子検出用のキャリアの基板の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図5】本発明の実施例1における単一分子検出用のキャリアの製造方法のフローチャートである。
【
図6】
図5の線VI−VIに沿ったカーボンナノチューブ複合構造体の断面図である。
【
図7】本発明の実施例1におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図8】本発明の実施例1における非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図9】本発明の実施例1におけるねじれ状カーボンナノチューブワイヤの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図10】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブ複合構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図11】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブ複合構造体がアルミナ層に被覆された単一のカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図12】本発明の実施例1における単一分子検出用のキャリアの上表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図13】本発明の実施例1における単一分子検出用のキャリアの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図14】本発明の実施例1における単一分子検出方法のフローチャートである。
【
図15】本発明の実施例1における単一分子検出方法により得られたローダミン分子のラマン分光である。
【
図16】本発明の実施例2における単一分子検出用のキャリアの構造を示す図である。
【
図17】本発明の実施例2における単一分子検出用のキャリアの製造方法のフローチャートである。
【
図18】本発明の実施例3における単一分子検出用のキャリアの構造を示す図である。
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0009】
図1〜
図4を参照すると、実施例1は単一分子検出用のキャリア10を提供する。キャリア10は、基板12と、基板12に設置される金属層14と、を含む。基板12は、ベース120と、パターン化突起122と、を含む。パターン化突起122はベース120の表面に設置される。パターン化突起122は複数の帯状突起を含む。複数の帯状突起は互いに交差してネット構造体を形成し、複数の穴124を定義する。複数の帯状突起が交差している所は一体構造体である。
【0010】
基板12は絶縁基板或いは半導体基板であってもよい。基板12の材料はシリコン(Si)、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、石英、ガラス、窒化ガリウム(GaN)、ガリウム砒素(GaAs)、サファイア、アルミナまたはマグネシアの中のいずれか一種である。基板12の形状は制限されず、相対する二つの表面を有してもよい。基板12の寸法及び厚さは制限されず、必要に応じて選択できる。本実施例において、基板12はシリコンであり、基板12の形状は平板状である。
【0011】
基板12の材料はパターン化突起122の材料と同じでもよく、同じでなくてもよい。パターン化突起122及び基板12は一体構造体であってもよい。または、パターン化突起122は基板12の一つの表面或いは対向する二つの表面に設置されてもよい。第一方向に沿って延伸する帯状突起は第一帯状突起を定義する。第二方向に沿って延伸する帯状突起は第二帯状突起を定義する。第一方向と第二方向とがなす角は0°〜90°(0°を含まず)である。好ましくは、第一方向と第二方向とがなす角は30°より大きい。カーボンナノチューブ複合構造体110におけるカーボンナノチューブの延伸方向は基本的に平行であるので、複数の第一帯状突起は基本的に相互に平行であり、複数の第二帯状突起は基本的に相互に平行である。各帯状突起の長さは制限されない。各帯状突起の幅は20nm〜150nmであり、各帯状突起の高さは50nm〜1000nmである。平行且つ隣接する二つの帯状突起の距離は10nm〜300nmである。これにより、穴124の平均直径は10nm〜300nmであり、穴124の深さは50nm〜1000nmである。好ましくは、各帯状突起の幅は20nm〜50nmであり、各帯状突起の高さは500nm〜1000nmである。平行且つ隣接する二つの帯状突起の距離は10nm〜50nmである。本実施例において、複数の第一帯状突起は複数の第二帯状突起と垂直である。帯状突起は基板12の第一端部から第二端部まで延伸する。第一端部及び第二端部は対向する。
【0012】
金属層14は複数の帯状突起の表面及び穴124におけるベース120の表面に設置される。金属層14は連続な層状構造体であってもよく、非連続な層状構造体であってもよい。金属層14は単層層状構造体であってもよく、多層層状構造体であってもよい。金属層14は複数の帯状突起の表面及び穴124におけるベース120の表面に均一に堆積される。穴124は間隙を形成し、穴124に設置された金属層14の表面は、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance,SPR)を発生し、表面増強ラマン散乱(SERS)を強化させる。金属層14の厚さは2nm〜200nmである。好ましくは、金属層14の厚さは均一である。金属層14の材料は制限されず、金、銀、白金、銅、鉄、或いはアルミニウムであってもよく、またはそれらの合金であってもよい。本実施例において、金属層14は金からなり、その厚さは20nmである。
【0013】
図5及び
図6を参照すると、単一分子検出用のキャリア10の製造方法を提供する。単一分子検出用のキャリア10の製造方法は以下のステップを含む。
S10、基板12を提供する。
S20、複数の第一孔116を有するカーボンナノチューブ複合構造体110を提供する。
S30、基板12の第一表面121にカーボンナノチューブ複合構造体110を設置し、基板12の第一表面121の一部を露出させる。
S40、カーボンナノチューブ複合構造体110をマスクとして、第一表面121をドライエッチングして、第一表面121にパターン化突起122を形成し、パターン化突起122は互いに交差している複数の帯状突起を含む。
S50、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去する。
S60、パターン化突起122の表面に金属層14を形成する。
【0014】
S10において、基板12をエッチングできれば、基板12の材料は制限されない。基板12は絶縁基板、金属基板或いは半導体基板であってもよい。絶縁基板の材料は二酸化シリコン(SiO
2)或いは窒化シリコン(Si
3N
4)でもよい。金属基板の材料は金、アルミニウム、ニッケル、クロムまたは銅の中のいずれか一種である。半導体基板の材料はシリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)またはガリウム砒素(GaAs)の中のいずれか一種である。基板12の寸法及び厚さは制限されず、必要に応じて選択できる。本実施例において、基板12は窒化ガリウムからなり、その厚さは300μmである。
【0015】
S20において、カーボンナノチューブ複合構造体110はカーボンナノチューブ構造体112及び保護層114を含む。保護層114はカーボンナノチューブ構造体112の表面を被覆する。カーボンナノチューブ構造体112は分子間力で接続して均一に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは交差して設置され、複数の孔が形成される。複数のカーボンナノチューブが分子間力で端と端とが接続されるので、カーボンナノチューブ構造体112及びカーボンナノチューブ複合構造体110は自立構造体である。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブ構造体112及びカーボンナノチューブ複合構造体110を独立して利用することができる形態のことである。即ち、カーボンナノチューブ構造体112及びカーボンナノチューブ複合構造体110を対向する両側から支持して、カーボンナノチューブ構造体112及びカーボンナノチューブ複合構造体110の構造を変化させずに、カーボンナノチューブ構造体112及びカーボンナノチューブ複合構造体110を懸架させることができることを意味する。カーボンナノチューブ構造体112は、分子間力で接続して均一に配列された複数のカーボンナノチューブからなる。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二重層カーボンナノチューブ、または多層カーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブの長さおよび直径は、必要に応じて選択することができる。 単層カーボンナノチューブの直径は0.5nm〜10nmである。二重壁カーボンナノチューブの直径は1nm〜15nmである。多層カーボンナノチューブの直径は1.5nm〜50nmである。このましくは、カーボンナノチューブの長さは200μm〜900μmである。
【0016】
カーボンナノチューブ構造体112は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム及び/或いは少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。カーボンナノチューブフィルムは均一に分布する複数のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って延伸する。カーボンナノチューブの延伸方向はカーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行している。具体的には、カーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルムであってもよい。カーボンナノチューブワイヤは非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ或いはねじれ状カーボンナノチューブワイヤであってもよい。カーボンナノチューブ構造体112が複数のカーボンナノチューブワイヤを含む際、複数のカーボンナノチューブワイヤは相互に間隔をあけて設置され、且つ特定の角で交差され、層状カーボンナノチューブ構造体が形成される。層状カーボンナノチューブ構造体は複数の孔を含む。複数の孔は貫通孔であり、層状カーボンナノチューブ構造体の厚さ方向に沿って、層状カーボンナノチューブ構造体を貫通する。貫通孔の寸法は1nm〜0.5μmである。
【0017】
図7を参照すると、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものである。単一のカーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一のカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で長軸方向に端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。単一のカーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。複数のカーボンナノチューブセグメントは、長軸方向に沿って、分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメントは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブを含む。単一のカーボンナノチューブセグメントにおいて、複数のカーボンナノチューブの長さは同じである。カーボンナノチューブフィルムセグメントの直径は10nm〜200nmである。好ましくは、カーボンナノチューブフィルムセグメントの直径は10nm〜100nmである。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは複数の孔を有する。複数の孔は貫通孔であり、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの厚さ方向に沿って、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを貫通する。貫通孔は孔或いは間隙であってもよい。カーボンナノチューブ構造体112が一つのドローン構造カーボンナノチューブフィルムがからなる際、隣接する二つのカーボンナノチューブセグメントの間に間隙が形成される。間隙の寸法は1nm〜0.5μmである。カーボンナノチューブ構造体112が複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる際、隣接する二つのドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは交差して、ネット構造体が形成される。ネット構造体は複数の孔を有する。複数の孔はカーボンナノチューブ構造体112に均一に分布される。孔の直径は1nm〜0.5μmである。隣接する二つのドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの延伸方向なす角は0°〜90°(0°を含まず)である。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの厚さは0.01μm〜100μmである。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献1に掲載されている。
【0018】
図8を参照すると、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々のカーボンナノチューブセグメントには、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列している。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本の非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は0.5nm〜100μmである。有機溶剤でドローン構造カーボンナノチューブフィルムを処理して、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤが形成される。具体的に、有機溶剤でドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面全体を濡らして、有機溶剤を揮発させる際に発生する表面張力によって、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは分子間力で緊密に結合され、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムが収縮され、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤが形成される。有機溶剤で処理されないドローン構造カーボンナノチューブフィルムより、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの比表面積が減少し、その密度及び強さが増加する。有機溶剤は揮発性を有する有機溶剤である。有機溶剤はエタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン(dichloroethane)或いはクロロホルムである。本実施例において、有機溶剤はエタノールである。
【0019】
図9を参照すると、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの長手方向に沿って、対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。この時、複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。好ましくは、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各々のカーボンナノチューブセグメントには、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。また、一本のねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は0.5nm〜100μmである。さらに、揮発性を有する有機溶剤によって、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを処理できる。具体的に、有機溶剤でねじれ状カーボンナノチューブワイヤの表面を濡らして、有機溶剤を揮発させる際に発生する表面張力によって、処理したねじれ状カーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブは分子間力で緊密に結合され、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤが収縮される。有機溶剤で処理されたねじれ状カーボンナノチューブワイヤは有機溶剤で処理されないねじれ状カーボンナノチューブワイヤより、比表面積が減少し、その密度及び強さが増加する。カーボンナノチューブワイヤの製造方法は、特許文献2及び特許文献3に掲載されている。
【0020】
本実施例において、カーボンナノチューブ構造体112は積層された二層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる。二層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは相互に垂直に交差して設置される。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものである。単一のカーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、分子間力で端と端が接続されている。
【0021】
保護層114の材料はカーボンナノチューブ構造体112の表面に物理的に堆積でき、且つ後のステップで保護層114がエッチングされることができない材料でもよい。物理的に堆積とは、保護層114及びカーボンナノチューブ構造体112は化学反応を発生ず、保護層114は分子間力でカーボンナノチューブ構造体112と緊密に結合され、カーボンナノチューブ構造体112におけるカーボンナノチューブの表面に付着されることを指す。保護層114の材料は金属、金属酸化物、金属硫化物、非金属酸化物、非金属炭化物または非金属窒化物の中のいずれか一種である。金属は金、ニッケル、チタン、鉄、アルミニウム、チタンまたはクロムの中のいずれか一種である。金属酸化物はアルミナ、マグネシア、酸化亜鉛または酸化ハフニウムの中のいずれか一種である。非金属酸化物はシリカであってもよい。非金属炭化物はシリコンカーバイドであってもよい。非金属窒化物は窒化ケイ素であってもよい。保護層114の厚さは制限されない。保護層114の厚さは3nm〜50nmである。保護層114の厚さが3nmより小さい場合、保護層114は、その後のエッチング工程でカーボンナノチューブが破壊されるのを防止することができない。 保護層114の厚さが50nmより大きい場合、カーボンナノチューブ構造体112の複数の孔は保護層114によって完全に充填され、複数の第一孔116は得られない。好ましくは、保護層114の厚さは3nm〜20nmである。カーボンナノチューブ複合構造体110の第一孔116の直径はカーボンナノチューブ構造体112の孔の直径より小さい。
【0022】
カーボンナノチューブ複合構造体110の製造方法は以下のステップを含む。(a)、カーボンナノチューブ構造体112を懸架させる。(b)、カーボンナノチューブ構造体112の表面に保護層114を堆積する。
【0023】
カーボンナノチューブ構造体112は対向する二つの表面を有する。カーボンナノチューブ構造体112はフレームに固定される。これにより、カーボンナノチューブ構造体112の中心部は懸架され、保護層114はカーボンナノチューブ構造体112の対向する二つの表面に堆積できる。フレームは貫通孔を有する。カーボンナノチューブ構造体112の辺縁部はフレームに固定され、フレームの貫通孔と対応するカーボンナノチューブ構造体112の中心部は露出され且つ懸架される。本実施例において、フレームの形状は口字形状である。さらに、金属または金属リングによって、カーボンナノチューブ構造体112を懸架させる。カーボンナノチューブ構造体112の形態及び構造を破壊しない限り、電子ビーム蒸着法、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、原子層堆積法(ALD)、マグネトロンスパッタリング法、または噴霧法によって、カーボンナノチューブ構造体112の表面に保護層114を堆積できる。
【0024】
カーボンナノチューブ構造体112が懸架されるので、保護層114はカーボンナノチューブ構造体112の対向する二つの表面を被覆できる。具体的に、保護層114はカーボンナノチューブ構造体112におけるカーボンナノチューブの少なくとも一部の表面を被覆する。カーボンナノチューブ構造体112は複数の孔構造を有する。保護層114はカーボンナノチューブ構造体112の孔構造中にも分布する。カーボンナノチューブ構造体112におけるカーボンナノチューブは保護層114と緊密に結合し、カーボンナノチューブ複合構造体110を形成する。カーボンナノチューブ構造体112は保護層114を支持する。カーボンナノチューブ複合構造体110は複数の第一孔116を有する。複数の第一孔116はカーボンナノチューブ複合構造体110の厚さ方向にカーボンナノチューブ複合構造体110を貫通する。第一孔116は間隙或いは孔であってもよい。
【0025】
本実施例において、電子ビーム蒸着法によって、カーボンナノチューブ構造体112の表面に保護層114を堆積し、カーボンナノチューブ複合構造体110を形成する。保護層114の材料はアルミナである。カーボンナノチューブ構造体112の厚さは5nmである。保護層114はカーボンナノチューブ構造体112における各カーボンナノチューブを被覆する。
図10を参照すると、電子ビーム蒸着法によって、2枚の積層されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムにアルミナ層が堆積される。アルミナ層の厚さは5nmである。
図11を参照すると、各カーボンナノチューブの全体がアルミナ層に被覆されている。隣接する積層されたカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は垂直である。
【0026】
S30において、カーボンナノチューブ複合構造体110は基板12の第一表面121に直接に設置されることができる。一つの例では、フレーム及びカーボンナノチューブ複合構造体110を基板12の第一表面121に転移した後、フレームを除去する。カーボンナノチューブ複合構造体110は複数の第一孔116を有するので、少なくとも基板12の第一表面121の一部は第一孔116から露出される。カーボンナノチューブ複合構造体110は基板12の第一表面121と完全に緊密に接触せず、カーボンナノチューブ複合構造体110と基板12の第一表面121との間に空気を有することができる。
【0027】
基板12の第一表面121にカーボンナノチューブ複合構造体110を設置した後、溶剤によってカーボンナノチューブ複合構造体110を処理するステップを含むことができる。カーボンナノチューブ複合構造体110の表面に溶剤を滴らし、カーボンナノチューブ複合構造体110を浸漬し且つ軟化する。これにより、カーボンナノチューブ複合構造体110と基板12の第一表面121との間の空気を排気することができる。溶剤を除去した後、カーボンナノチューブ複合構造体110を基板12の第一表面121に緊密に付着させる。溶剤は水或いは有機溶剤であってもよい。有機溶剤は揮発性有機溶剤であり、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、またはクロロホルムの中のいずれの一種である。本実施例において、溶剤はエタノールである。カーボンナノチューブ複合構造体110の表面にエタノールを滴らし、自然乾燥によってエタノールを除去して、カーボンナノチューブ複合構造体110を基板12の第一表面121に緊密に付着させる。
【0028】
S40において、ドライエッチングは導結合プラズマエッチング(ICPE)または反応性イオンエッチング(RIE)であってもよい。本実施例において、ドライエッチングは、プラズマ装置を介して第一表面121の全部または第一表面121の一部表面にプラズマエネルギーを印加することによって行われる。プラズマガスは基板12と反応してもよい。プラズマガスは、酸素(O
2)、塩素(Cl
2)、水素(H
2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、フルオロカーボン(CF
4)またはアンモニア(NH
3)の中のいずれの一種である。好ましくは、プラズマガスは塩素とアルゴンとの混合物である。プラズマ装置の出力は20ワット〜70ワットである。塩素のプラズマ流は5sccm〜20sccmである。アルゴンのプラズマ流は15sccm〜40sccmである。プラズマが真空中で生成される場合、プラズマの作動圧力は3Pa〜10Paである。プラズマエッチングの時間は10秒間〜60秒間である。本実施例において、塩素のプラズマ流は10sccmであり、アルゴンのプラズマ流は25sccmであり、プラズマの作動圧力は6Paであり、プラズマエッチングの時間は15秒間である。
【0029】
プラズマエッチングプロセスでは、プラズマガスは基板12の露出部分と反応して保護層114と反応しなくてもよく、またはプラズマガスと保護層114との反応速度はプラズマガスと基板12の露出部分との反応速度よりはるかに遅くてもよい。カーボンナノチューブ複合構造体110はマスクとして用いる。プラズマガス、基板12の材料及び保護層114の材料の選択関係を以下の表1に示す。
【0030】
【0031】
エッチング工程では、エッチングガスは保護層114と反応せず、基板12と反応する。 基板12の露出部分は徐々にエッチングされ、カーボンナノチューブ複合構造110によって被覆された基板12の表面はエッチングされない。カーボンナノチューブ複合構造110は基板12の表面と緊密に結合される。これにより、カーボンナノチューブ複合構造110が被覆された基板12の表面に形成されるパターンは、懸架されたカーボンナノチューブ複合構造体110が基板12に投影されたパターンと一致する。即ち、得られたパターン化突起122の全体パターンはカーボンナノチューブ複合構造体110の全体パターンと一致する。
【0032】
本実施例において、カーボンナノチューブ構造体112は積層された複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる際、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差してなす角を変えることによって、パターン化突起122は異なるパターンを形成できる。隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが垂直する際、パターン化突起122は相互に垂直に交差する複数の帯状突起を含む。
【0033】
帯状突起の幅は20nm〜150nmである。カーボンナノチューブの延伸方向と垂直する方向に、平行且つ隣接する二つの帯状突起の距離は10nm〜300nmである。基板12と垂直する方向における帯状突起の長さは帯状突起の高さを定義する。各帯状突起の高さは制限されず、エッチングする時間によって設けることができる。帯状突起の高さは50nm〜1000nmであってもよい。複数の帯状突起は相互に垂直に交差して、ネット構造体を形成する。本実施例において、帯状突起の幅は20nm〜50nmであり、その高さは50nm〜1000nmであり、平行且つ隣接する二つの帯状突起の距離は10nm〜50nmである。
【0034】
保護層114を形成した後、カーボンナノチューブ複合構造体110におけるカーボンナノチューブの直径は数十ナノメートルであり、隣接する二つのカーボンナノチューブ間の距離は数十ナノメートルである。これにより、複数の帯状突起の幅及び隣接する二つの帯状突起の距離も数十ナノメートルであり、複数の穴124の平均直径も数十ナノメートルである。基板12における帯状突起及び穴124の密度は増加する。これにより、表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子を増加させ、SERSを顕著に強化させることができる。一つの例において、隣接する二つ穴124の距離及び隣接する二つの帯状突起の距離は20nmである場合、1マイクロメートル内における帯状突起及び穴124の数は50個である。従来のフォトリソグラフィー法では、解像限界のために数十ナノスケールの帯状突起及び穴124を形成することができない。
【0035】
S50において、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去する方法は制限されず、超音波法、粘着テープ剥離法、酸化法であってもよい。本実施例において、超音波法によって、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去する。具体的に、カーボンナノチューブ複合構造体110が設置された基板12をN-メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone)溶液に入れ、数分間超音波で処理する。N-メチルピロリドンの極性が大きいので、カーボンナノチューブ複合構造体110を基板12から分離しやすい。
【0036】
S60において、パターン化突起122の表面に金属層14を堆積する方法は制限されず、電子ビーム蒸着法、イオンビームスパッタリング法、原子層蒸着法、マグネトロンスパッタリング法、熱蒸着法、或いは化学気相蒸着法であってもよい。金属層14は各帯状突起の表面及び隣接する二つの帯状突起の間の基板12の表面に堆積する。金属層14の厚さは2nm〜200nmである。金属層14の材料は制限されず、金、銀、銅、鉄、或いはアルミニウムであってもよい。本実施例において、金属層14は20nmの金層である。
図12を参照すると、パターン化突起122の全表面が金層に被覆される。
図13を参照すると、金層は穴の底面に直接接触している。
【0037】
図14を参照すると、キャリア10を利用して単一分子を検出する方法を提供する。キャリア10を利用して単一分子検出方法は以下のステップを含む。
S1、キャリア10を提供し、キャリア10は基板12及び基板12に設置される金属層14を含み、基板12はベース120及びベース120の表面に設置されるパターン化突起122を含み、パターン化突起122は複数の帯状突起を含み、複数の帯状突起は互いに交差してネット構造体を形成し、複数の穴124を定義する。
S2、基板12と離れる金属層14の表面に、単一分子試料16を設置する。
S3、検出器で単一分子試料16を検出する。
【0038】
S2において、基板12と離れる金属層14の表面に単一分子試料16を設置する方法は、以下のステップを含む。
S21、単一分子試料16の溶液を提供する。
S22、金属層14が設置されたキャリア10を単一分子試料16の溶液に浸漬する。
S23、キャリア10を単一分子試料16の溶液から取り出す。
【0039】
S21において、単一分子試料16の溶液の濃度は10
−7mmol/L〜10
−12mmol/Lである。本実施例において、単一分子試料16の溶液の濃度は10
−10mmol/Lである。
【0040】
S22において、単一分子試料16を金属層14の表面に均一に分布するために、浸漬時間は2min〜60minである。好ましくは、浸漬時間は10minである。
【0041】
S23において、キャリア10を単一分子試料16の溶液から取り出して、水またはエタノール中で5回〜15回洗い、水またはエタノールから取り出した後に乾燥させる。
【0042】
ラマン分光システムが用いて、単一分子試料16を検出する。本実施例において、10
−6/100mlのローダミン(Rhodamine 6G)を金属層14の表面に滴らし、ラマン分光システムにおける入射光18によって20秒間照射させる。ラマン分光システムの励起源はHe−Neであり、その励起波長は633nmであり、その励起時間は10秒間であり、デバイスパワーは9.0mWであり、作動パワーは0.05mWである。
図15は、キャリア10を用いてローダミン分子を検出して獲得するラマン分光を示す。
【0043】
本発明の単一分子検出方法は以下の有益な効果を有する。金属層14はパターン化突起122の表面に設置され、パターン化突起122は複数の帯状突起を含み、且つ複数の帯状突起は互いに交差してネット構造体が形成される。入射光がキャリア10を照射する際、金属層14の表面に表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance,SPR)を発生し、交差して設置された帯状突起は表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子を増加させ、表面増強ラマン散乱(SERS)を強化させる。これにより、キャリア10の表面増強ラマン散乱(SERS)を顕著に強化させることができる。表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子は隣接する二つの帯状突起の距離に関係する。隣接する二つの帯状突起の距離は小さいほど、表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子は大きい。表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子は10
5〜10
15に達することができる。これにより、単一分子検出の効果は優れている。本発明において、表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子は10
10より大きい。または、隣接する二つの穴124の距離及び隣接する二つの帯状突起の距離も数十ナノメートルであり、数十ナノメートルである。これにより、基板12における帯状突起及び穴124の密度を増加させ、表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子を増加させ、SERSを顕著に強化させることができる。
【0044】
図16を参照すると、実施例2は単一分子検出用のキャリア10Aを提供する。キャリア10Aは、基板12と、基板12に設置される金属層14と、を含む。基板12は、ベース120と、パターン化突起122と、を含む。パターン化突起122はベース120の表面に設置される。パターン化突起122は複数の帯状突起を含む。複数の帯状突起は互いに交差してネット構造体を形成し、複数の穴124を定義する。複数の帯状突起が交差している所は一体構造体である。
【0045】
実施例2における単一分子検出用のキャリア10Aの構造は実施例1における単一分子検出用のキャリア10の構造と基本的に同じであるが、異なるのは、金属層14は非連続な構造体である。具体的に、金属層14は帯状突起の側壁及び隣接する二つの帯状突起におけるベース120の表面のみに設置される。すなわち、金属層14は穴124の底面及び側壁のみに設置される。または、金属層14は穴124の底面のみに設置されることができる。
【0046】
図17を参照すると、単一分子検出用のキャリア10Aの製造方法を提供する。単一分子検出用のキャリア10Aの製造方法は以下のステップを含む。
S10A、基板12の第一表面121にカーボンナノチューブ複合構造体110を設置し、基板12の第一表面121の一部を露出させる。
S20A、カーボンナノチューブ複合構造体110をマスクとして、第一表面121をエッチングして、第一表面121にパターン化突起122を形成し、パターン化突起122は互いに交差している複数の帯状突起を含む。
S30A、パターン化突起122の表面に金属層14を堆積し、金属層14はパターン化突起122及びカーボンナノチューブ複合構造体110を完全に被覆する。
S40A、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去する。
【0047】
単一分子検出用のキャリア10Aの製造方法は単一分子検出用のキャリア10の製造方法と基本的に同じであるが、異なるのは以下の点である。まず、パターン化突起122の表面に金属層14を堆積する。そして、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去する。S30Aにおいて、金属層14はカーボンナノチューブ複合構造体110の表面、パターン化突起122の側壁及び穴124の底面に堆積する。S40Aにおいて、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去する際、カーボンナノチューブ複合構造体110の表面と接触する金属層14の一部が除去され、基板12の表面に非連続な金属層14を形成する。単一分子検出用のキャリア10Aの製造方法において、カーボンナノチューブ複合構造体110は基板12をエッチングするマスクとして用い、且つ金属層14を堆積するマスクとして用いる。これにより、コストは低く、製造効率を高めることできる。
【0048】
キャリア10Aを利用して単一分子を検出する方法を提供する。キャリア10Aを利用して単一分子を検出する方法はキャリア10を利用して単一分子検出方法と基本的に同じであるが、異なるのは異なるキャリアを採用する点である。
【0049】
図18を参照すると、実施例3は単一分子検出用のキャリア10Bを提供する。キャリア10Bは、基板12と、カーボンナノチューブ複合構造体110と、金属層14と、を含む。カーボンナノチューブ複合構造体110及び金属層14は基板12に設置される。基板12は、ベース120と、パターン化突起122と、を含む。パターン化突起122はベース120の表面に設置される。パターン化突起122は複数の帯状突起を含む。複数の帯状突起は互いに交差してネット構造体を形成し、複数の穴124を定義する。複数の帯状突起が交差している所は一体構造体である。
【0050】
実施例3における単一分子検出用のキャリア10Bの構造は実施例1における単一分子検出用のキャリア10の構造と基本的に同じであるが、異なる点は、カーボンナノチューブ複合構造体110がパターン化突起122の基板12と離れる表面と金属層14との間に設置され、金属層14はパターン化突起122及びカーボンナノチューブ複合構造体110を完全に被覆することである。
【0051】
単一分子検出用のキャリア10Bの製造方法を提供する。単一分子検出用のキャリア10Bの製造方法は単一分子検出用のキャリア10Aの製造方法と基本的に同じであるが、異なる点はカーボンナノチューブ複合構造体110を除去しないことである。
【0052】
キャリア10Bを利用して単一分子を検出する方法を提供する。キャリア10Bを利用して単一分子を検出する方法はキャリア10Aを利用して単一分子検出方法と基本的に同じであるが、異なる点は異なるキャリアを採用することである。
【0053】
本発明のキャリア10Bは以下の有益な効果を有する。第一に、カーボンナノチューブ複合構造体110はパターン化突起122の基板12と離れる表面に設置され、且つカーボンナノチューブ複合構造体110のパターンはパターン化突起122のパターンと同じである。カーボンナノチューブ複合構造体110におけるカーボンナノチューブはパターン化突起122の基板12と離れる表面の粗さを増加する。これにより、キャリア10Bの表面増強ラマン散乱(SERS)の増強因子を増加させ、SERSを顕著に強化させることができる。第二に、カーボンナノチューブ複合構造体110はパターン化突起122の基板12と離れる表面に設置され、これにより、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去するステップを省略でき、カーボンナノチューブ複合構造体110を除去することによって基板12を汚染することを減少させる。または、コストは低くなる。