(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
従来より吸収性物品は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等、その使用は多岐に亘る。その中でも、吸収性物品を使い捨ておむつの内部に装着した場合の形態を詳説する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一実施形態を示したものにすぎない。
【0023】
図1〜7に示すように、本発明の吸収性物品は、表側シート51と、その裏側に配された裏側シート52とを有し、前記表側シート51と前記裏側シート52とが接合されて多数のセル55が形成され、前記セル55内に高吸収性ポリマー粒子53を含む粉粒体が収められて吸収体50が構成され、前記高吸収性ポリマー粒子53を含む粉粒体の少なくとも一部は前記表側シート51及び前記裏側シート52の少なくともいずれか一方に固着されておらず、前記表側シート及び前記裏側シートのうち、少なくとも一方の、シートどうしが接合された部位以外の部位は、襞型に収縮加工されたものである、ことを特徴とする。また、好ましくは、その襞型が、吸収体50の幅方向WDに収縮加工されたものであるとよい。
【0024】
(襞の形状)
表側シート51、裏側シート52(以下、表側、裏側を特定して説明する必要のない場合は、単に「シート51、52」と記載する。)の襞とは、シート51、52において、突起部とへこみ部が規則的に繰り返して形成された面をいう。シート51、52の素材は、後述するように液透過性素材又は液不透過性素材、不織布等を用いることができる。この不織布を例えば規則的に折り畳み、加圧処理することで、波形状の襞型が形成される。また、凹凸ロールで加圧処理することで、波形状や凹凸形状の襞型が形成される。加工された襞型の不織布は、その形状が維持され、自然に加工前の襞のない状態には戻らない。
襞と襞との間隔(一周期)は3〜25mm、襞の振幅は1〜25mmとするのが好ましい。
襞型に加工されたシート51、52に対し襞を伸ばす方向に力を加えると、襞は容易に伸びる。したがって、高吸収性ポリマー粒子53を内包した襞型に加工されたシート51、52に液体を吸収させると高吸収性ポリマー粒子53の膨張により、このシート51、52の襞も少なくとも収縮率(収縮率の定義は、後述する。)の分だけ伸びることになる。なお、不織布自体もある程度の伸張性を有する。
図7に示すようにシート51、52の襞型の加工は、例えば、波型加工、凹凸加工、凹凸の窪みの底が幅広となった変形型凹凸加工、あるいは、ジグザグ線上に半円弧を連続して並べた軌跡形状とした加工にすることができる。
さらには、襞型の加工は、平面的に行うこともできる。例えば、突起形状が多数の格子点のごとく平面的に広がる加工などがある。
しかしながら、これらの加工に限定されるものではない。シート51、52の襞型は、高吸収性ポリマー粒子53の膨張により襞が広がり、セル55が隆起したときのセル55のシート51、52の面積が、隆起前のセル55そのものの面積より大きくなるように加工されていれば足りる。
なお、吸収性物品は、原則的にはこれらの加工により形成された表側シート51と裏側シート52と高吸収性ポリマー粒子53とで構成されるものであり、別途新たなシート等の介在を要しないため、従来の薄さを保持できる。
【0025】
(襞の方向)
図8に示すように、襞の方向については、シート51、52に波型加工を施した場合を例にすると、シート51、52の表面には、山折り部の直線が平行して多数形成され、裏面には、谷折り部の直線が同様に平行して同数形成される、いわゆる、ストライプ型に形成される。この山折り部の直線方向は、吸収体50の前後方向LDに対して、平行に配してよく、また、垂直に配してもよい。ただし、以下便宜上、特段言及がない場合は、平行に配するものとして説明する。
【0026】
(収縮)
上記加工されたシート51、52は、加工前のシート51、52と比較し、収縮する。ここで、収縮率は次のように定義される。
収縮率(%)=(加工前のシート51、52の面積−加工後のシート51、52の面積)/(加工前のシート51、52の面積)×100
【0027】
上述した伸長率は、シートの両側からそれぞれ反対方向に、シートを引っ張って伸ばした場合の、元のシート長に対する伸び率をいうものであり、ここでいう収縮率とは異なる概念である。
【0028】
ところで、排泄液をより多く吸収できたほうがよいとする観点からは、収縮率を高めて、高吸収性ポリマー粒子53を多く内包するのがよい。しかし、必要以上に高い収縮率にすると、初期状態時、つまり、製品を使用する前段階において襞の折りたたみが密なため、シート51、52が嵩張り、吸収体50が厚手なものとなり、吸収体50の利点である薄さが活かされず不便である。一方で、所定を下回る収縮率とすると、襞型が伸びてシート51、52が隆起するという効果が十分に得られない。したがって、収縮率は、例えば、15〜50%、より好ましくは、35%とする。
【0029】
(セル55の形状)
セル55とは、表側シート51とその表側シート51の裏側に配された裏側シート52を接合して形成される、仕切られた一定容積を有する空間をいう。例えば、正方形状のセル55を形成する場合は、表側シート51とそれに配された裏側シート52について正方形の各辺上を接合すればよい。
高吸収性ポリマー粒子53は、原則的にはセル55に収容される。しかし、表側シート51と裏側シート52の縁部付近に存在する高吸収性ポリマー粒子53が外部へ流出することを防ぐため、表側シート51と裏側シート52の縁部一周に渡り縁部接合部を延在しておくことが好ましい。
【0030】
セル55のシート51、52は襞型に収縮加工されたものであるため、セル55内の高吸収性ポリマー粒子53が排泄液を吸収すると、襞型が高吸収性ポリマー粒子53の膨張により伸びる。これによって、セル55のシート51、52は、風船状に膨張する。
【0031】
(接合部のパターン)
図9及び
図10に示すように、接合部のパターンとして、次のものとしてもよい。なお、
図9については、表側シート51が膨張する場合を例として示しているが、裏側シート52が膨張する場合や、表側シート51及び裏側シート52の両方が膨張する場合も当然可能な形態である。
【0032】
パターン1に、格子状の接合部を配置することができる。またより好ましくは吸収体50の前後方向LDに沿うようにヨコ長の矩形格子状の接合部54を配置することができる。格子状に仕切られた各セル55の幅方向WDの長さaaは、前後方向LDの長さbbよりも長くする。セル55の大きさは、例えば、タテ8〜30mm、ヨコ10〜50mm程度とすることが好ましい。こうすると、襞型の山折り部の方向が前後方向LDと平行であるのでシート51、52は幅方向WDに伸び、隆起したときの嵩が高くなり、その分排泄液を従来以上に吸収できる。また、嵩高に隆起することにより装着者の肌との接触面積が小さくなり、装着時の違和感が軽減される。さらに、下述の通り、高吸収性ポリマー粒子53の一部は、少なくともシート51、52に対して非固着とすることができる。この場合、高吸収性ポリマー粒子53はセル55内で自由に移動可能であるが、シート51、52を襞型とすることで襞に引っかかり、自由な移動がある程度制限され、高吸収性ポリマー粒子53の偏在を防ぐ効果もある。
【0033】
パターン2に、
図10左上に示すように、まず、上記パターン1と同様に矩形格子状の接合部54を配置したうえで、幅方向WD中央に位置する、隣り合う2つのセル55を特定する。その2つのセル55から前後方向LDに延在するセル55列のうち、千鳥状に位置するセル55群を更に特定する。そのセル55群の各々について、4区画の矩形に等分に仕切るように接合部54を設ける。こうすると、隆起したときに吸収体50の幅方向WDの中央2列において隆起の嵩高さに差ができるため、排泄液の拡散の方向性にバリエーションができる。
【0034】
パターン3に、格子状の接合部54及び襞型の向きを上記パターン1と同様に配置する。ただし、前後方向LDの接合部の接合強度を弱とする。セル55の大きさは、例えば、タテ8〜30mm、ヨコ(弱接合部54b間の距離)10〜50mm程度とすることが好ましい。こうすると、高吸収性ポリマー粒子53の膨張により弱接合部54bが剥離する。シート51、52は、隆起して幅方向WDに延在する略半筒状となる。この略半筒形状の延在物が前後方向LDに並列に複数本形成されるので、さらなる排泄液は前後方向LDに拡散しづらくなる。また、パターン1と比較して弱接合部54bも隆起する余地があるため排泄液の吸収を多く見込める。
【0035】
パターン4に、幅方向WDの端部からもう一方の端部まで、接合部54を波形状に形成し、その波形状を前後方向LDに複数本配置する。複数本の波形状が密に配されることで、ほぼ閉じられた空間(セル55)が波形状間に形成される。波形状の大きさは、例えば、周期長さ20〜100mm、振幅8〜30mm程度とすることが好ましい。こうすると、接合部54が直線でないため排泄液が直線的に拡散せず、吸収体50の端部までの排泄液の拡散が遅くなり、液漏れ防止効果がある。
【0036】
パターン5に、平面に菱形を隙間なく敷き詰めた形状、すなわち、斜方格子状にするとよい。菱形のセル55の対角線の長さは、例えば、タテ8〜30mm、ヨコ10〜50mm程度とすることが好ましい。こうすると、排泄液の拡散が斜め方向に広がり、幅方向WDや前後方向LDに直接的に拡散することを防止できる。
【0037】
(隆起)
次に高吸収性ポリマー粒子53の膨張について説明する。
排泄液がシート51、52を透過しセル55内の高吸収性ポリマー粒子53に吸収されると、その高吸収性ポリマー粒子53は所定の体積に膨張する。隣在する高吸収性ポリマー粒子53も排泄液の吸収により、続いて膨張する。このように隣在する高吸収性ポリマー粒子53は、次々と膨張していき、セル55のシート51、52に形成された襞型を押し広げようとする。その結果、当初排泄液を吸収する前の萎んでいたシート51、52の襞型が、内部の高吸収性ポリマー粒子53の膨張力によって展開して広がり隆起した状態となる。なお、
図12は表側シート51が膨張する場合を例に示しているが、裏側シート52が膨張する場合や、表側シート51及び裏側シート52の両方が膨張する場合も当然可能な形態である。
【0038】
なお、前述した、特許文献1では、高吸収性ポリマー粒子53の吸収によりシートが隆起するとしているが、これは、シート自体の伸長率によるものである。一方、本発明における隆起は、シート自体の伸長率によるものではなく、あらかじめ加工された襞型が展開して広がったことによるものであり、隆起する手段が全く異なるものである。また、本発明では、収縮率を任意に変更することによって、吸収性物品の目的に応じて隆起の嵩高さの程度を調節できるという利点を有する。
【0039】
(収縮率の高低)
シート51、52は、収縮率に高低差をつけたものを使用してもよい。つまり、収縮率が高い範囲と低い範囲が規則的に繰り返して加工されるものを使用できる。例えば、波加工において収縮率が30%(高収縮率)の部分と、15%(低収縮率)の部分を交互に繰り返すように加工することができる。
【0040】
(高低差のある実施例)
図11に示すように、上記パターン1の格子状のセル55について、収縮率に高低差を設けると、高収縮率で形成されたセル55列と、低収縮率で形成されたセル55列が幅方向WDに交互に繰り返す吸収体50を形成することができる。この吸収体50が排泄液を吸収すると、高く隆起するセル55と低く隆起するセル55が幅方向WDに交互に形成されるため、排泄液の幅方向WDへの拡散を防ぐ効果が期待できる。
また、シート51、52の収縮率を幅方向WDの中央付近のセル55列は高めとし、左右の端部のセル55列は低めとすると、排泄液の吸収により中央付近のセル55列の方が端部のセル55列と比較し、より高く隆起する吸収体50となる。この吸収体50は、特に一回の排泄液の量は少ないが、複数回に亘り排泄するケースに対応できる。
さらに、隆起高さの差を顕著にするため、高吸収性ポリマー粒子53の目付け量に差を設けてもよい。高収縮率で形成されたセル55内の高吸収性ポリマー粒子53の目付け量を200〜350g/m
2、低収縮率で形成されたセル55内の目付量を50〜200g/m
2とするとよい。なお、
図11は表側シート51が膨張する場合を例に示しているが、裏側シート52が膨張する場合や、表側シート51及び裏側シート52の両方が膨張する場合も当然可能な形態である。
【0041】
<吸収性物品の例>
図1〜
図6はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。これらの固定又は接合のための手段としては、ホットメルト接着剤や溶着(加熱溶着、超音波溶着)を適宜選択することができる。
【0042】
このテープタイプ使い捨ておむつは、透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シート11との間に吸収体50が介在された基本構造を有しており、吸収体50の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、かつ吸収体50を有しない部分である腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFを有するとともに、吸収体50の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップ部SFを有している。背側部分Bにおけるサイドフラップ部SFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられており、おむつの装着に際しては、背側部分Bのサイドフラップ部SFを腹側部分Fのサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープ13を腹側部分F外面の適所に係止する。
【0043】
また、このテープタイプ使い捨ておむつでは、吸収性本体部10並びに各サイドフラップ部SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収体50を含む領域においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収体50、中間シート40、及びトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30及び液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収体50よりも前後方向LD及び幅方向WDにおいて若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収体50の側縁よりはみ出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収体50の側縁よりはみ出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより接合されている。また液不透過性シート11は、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0044】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60が設けられており、この側部立体ギャザー60を形成するギャザーシート62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップ部SFの内面までの範囲に固着されている。
【0045】
以下、各部の詳細について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は製品外面を構成するシートである。外装シート12は、両側部における前後方向LDの中央部が括れた形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m
2、特に15〜30g/m
2のものが望ましい。外装シート12は省略することもでき、その場合には液不透過性シート11を外装シート12と同形状として、製品外面を構成することができる。
【0046】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、この他にも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0047】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有する有孔又は無孔の不織布を用いることができる。不織布の構成繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0048】
(中間シート)
中間シート40は、トップシート30を透過した排泄液を吸収体50側へ速やかに移動させるため、及び逆戻りを防ぐために、トップシート30の裏面に接合されているものである。中間シート40及びトップシート30間の接合は、ホットメルト接着剤を用いる他、ヒートエンボスや超音波溶着を用いることもできる。中間シート40としては、不織布を用いる他、多数の透過孔を有する樹脂フィルムを用いることもできる。不織布としては、トップシート30の項で説明したものと同様の素材を用いることができるが、トップシート30より親水性が高いものや、繊維密度が高いものが、トップシート30から中間シート40への液の移動特性に優れるため好ましい。
【0049】
図示の形態の中間シート40は、吸収体50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向LDの長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収体50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0050】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上における排泄物の横方向移動を阻止し、横漏れを防止するために、幅方向WDにおける製品の両側の内面から突出(起立)する側部立体ギャザー60を設けるのは好ましい。
【0051】
この側部立体ギャザー60は、ギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材63は、
図1及び
図3に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0052】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの固着始端を有し、この固着始端から幅方向WDの外側の部分は、液不透過性シート11の側部および当該部分に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0053】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向WDの内側は、製品前後方向LDの両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材63の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0054】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向WDの内側の部分における前後方向LDの両端部を、幅方向WDの外側の部分から内側に延在する基端側部分と、この基端側部分の幅方向WDの中央側の端縁から身体側に折り返され、幅方向WDの外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0055】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFには、
図1〜
図3に示すように、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向WDの外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性伸縮部材64はサイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装シート12との間に配置することもできる。脚周り弾性伸縮部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0056】
(ファスニングテープ)
図1、
図2及び
図6に示されるように、ファスニングテープ13は、おむつの側部に固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材におけるテープ本体部13Bの幅方向WDの中間部に設けられた、腹側に対する係止部13Aとを有し、この係止部13Aより先端側が摘み部とされたものである。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップ部における内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装シート12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤により両シート62,12に接着されている。また、係止部13Aはシート基材に接着剤により剥離不能に接合されている。
【0057】
係止部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)が好適である。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、レ字状、J字状、マッシュルーム状、T字状、ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0058】
また、テープ取付部からテープ本体部までを形成するシート基材としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布等の各種不織布の他、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができる。
【0059】
(ターゲットシート)
腹側部分Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲットを有するターゲットシート12Tを設けるのが好ましい。ターゲットシート12Tは、係止部がフック材13Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側部分Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部がフック材13Aの場合には、ターゲットシート12Tを省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート12Tを外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0060】
(吸収体)
吸収体50は、排泄物の液分を吸収保持する部分である。吸収体50は、表側シート51と、その裏側に配された裏側シート52と、高吸収性ポリマー粒子53で構成される。高吸収性ポリマー粒子53を、吸収体から脱落しないようにするために、表側シート51と裏側シート52で挟み、その周囲を接合して形成されたセル55の中に収容する。このようにして、吸収体50は多数のセル55を有することができる。また、表側シート51と裏側シート52との間にさらに、図示しない中側シート80を配することができる。
吸収体50は、その表裏少なくとも一方側の部材に対してホットメルト接着剤等の接着剤を介して接着(接合)することができる。セル55の接合部54は、一様なパターンで接合しており、表側シート51、裏側シート52は、上述の襞型加工されたものである。接合部54により囲まれた多数のセル55に高吸収性ポリマー粒子53を分配保持させることにより、吸収体50における高吸収性ポリマー粒子53の偏在を防止できる。
また、吸収体50は、図示しない包装シートにより包装することができる。この場合、一枚の包装シートを吸収体50の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付ける他、2枚の包装シートで表裏両側から挟むようにして包装することができる。包装シートとしては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子53が抜け出ないシートであるのが望ましい。包装シートに不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。包装シートで吸収体50を包装する場合、吸収体50の表裏いずれか一方側にパルプ繊維を積繊させ、これらをひとまとめで包装シートで包装することもできる。
【0061】
表側シート51は、吸収体50の形成素材であり、裏側シート52と一対として用い、高吸収性ポリマー粒子53を吸収体50内に保持するものである。表側シート51は、液透過性素材であっても、液不透過性素材であっても良いが、図示形態のようにトップシート30側に位置する場合には液透過性素材であることが好ましい。表側シート51は、トップシート30と同様に、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートを用いることができる。表側シート51に不織布を用いる場合、その構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができるが、熱加工性に優れる点で熱可塑性樹脂の繊維が好適である。不織布の繊維結合法は特に限定されないが、高吸収性ポリマー粒子53の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニ一ドルパンチ法のように繊維密度が高くなる結合法が好ましい。多孔性プラスチックシートを用いる場合、その開孔径は、高吸収性ポリマー粒子53の脱落を防止するため、高吸収性ポリマー粒子53の外形より小さくするのが好ましい。また、表側シート51の素材が疎水性の場合には、親水剤を含有させることもできる。
【0062】
製造時の高吸収性ポリマー粒子53の配置を容易にするため、及び吸収膨張後の容積確保のために、表側シート51における各セル55を構成する部分には、裏側から表側に窪む窪みが形成されていると好ましいが、形成されていなくてもよい。
【0063】
裏側シート52は、表側シート51と一対として用い、高吸収性ポリマー粒子53を吸収体50内に保持するものである。裏側シート52としては、表側シート51と同様の素材とすることもできるが、表側シート51を液透過性素材により構成する場合には、裏側シート52に液不透過性素材を採用することもできる。裏側シート52に用いうる液不透過性素材としては、液不透過性シート11の項で述べた素材の中から適宜選択して用いることができる。図示しないが、表側シート51及び裏側シート52は、一枚の素材が二つに折り重ねられた一方の層及び他方の層とすることもできる。
また、中側シート80は、表側シート51と同様の素材とすることができ、液透過性素材であっても、液不透過性素材であっても良い。図示しないが、表側シート51、中側シート及び裏側シート52は、一枚の素材を三つに折り重ねた三層で構成することもできる。
【0064】
高吸収性ポリマー粒子53は、原則的にはその全てを表側シート51及び裏側シート52に対して非固定とし、自由に移動可能とする。ただし、必ずしも全ての高吸収性ポリマー粒子53が非固定である必要はなく、粒子53の一部(例えば粒子53全量の0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜10質量%)が表側シート51及び裏側シート52に接着又は粘着されていてもよい。また、高吸収性ポリマー粒子53はある程度塊状化していても良い。
【0065】
高吸収性ポリマー粒子53としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子53の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0066】
高吸収性ポリマー粒子53の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子53としては、でんぷん系、セル55ロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセル55ロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子53の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0067】
高吸収性ポリマー粒子53としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体50内に供給された液が吸収体50外に戻り出てしまういわゆる逆戻りを発生しやすくなる。
【0068】
また、高吸収性ポリマー粒子53としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体50とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0069】
高吸収性ポリマー粒子53の目付け量は、当該吸収体50の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和する。
【0070】
表側シート51及び裏側シート52を接合する接合部54は、吸収体50の全体にわたり一様な配置で設けられているが、部分的に変更することもできる。接合部54は、超音波溶着やヒートシールのように表側シート51及び裏側シート52の溶着により接合されていることが望ましいが、ホットメルト接着剤を介して接合されていても良い。
【0071】
表側シート51及び裏側シート52の接合部54は、各セル55を取り囲むように配置され、隣接するセル55間の境界となる限り、図示形態のように連続線状に形成する他、点線状(各セル55を取り囲む方向に断続的)に形成することもできる。接合部54を断続的に形成する場合、セル55を取り囲む方向における接合部54の間には、高吸収性ポリマー粒子53が存在しないか又は存在するとしてもセル55内よりも少ないものとされる。
【0072】
接合部54は、原則的には隣接するセル55内の高吸収性ポリマー粒子53の膨張力により剥離しない。しかし、弱接合部54bは同膨張力により剥離可能である。というのも、高吸収性ポリマー粒子53の一部は、少なくとも表側シート51又は裏側シート52に固着されておらず、これらシート51、52に挟まれた範囲で自由に移動可能であり、シート51、52の端から脱落する可能性がある。脱落させないために周囲を接合したセル55を設けて、そのセル55内に高吸収性ポリマー粒子53を留めることとしている。これに対して排泄液を吸収させると、高吸収性ポリマー粒子53は膨張するが、一つのセル55の膨張後の容積には限度があり、ゲルブロッキングを引き起こし、十分な量の排泄液を吸収しきれない場合が生じ得る。そこで、高吸収性ポリマー粒子53の膨張力で接合部が容易に剥離できるようにすることで、隣り合うセル55どうしが合体して、より多くの排泄液を吸収できるようにする。したがって、弱接合部54bを設けておくとよい。
【0073】
一方で、幅方向WDの最も外側に位置する接合部54は、これが剥離すると吸収体50の側方に高吸収性ポリマー粒子53又はそのゲル化物が漏れ出るおそれがあるため接合部54の強度を強くしておくことが望ましい。同様の観点から、表側シート51及び裏側シート52はセル55形成領域よりも幅方向WDの外側にある程度延在させ、この延在部分に補強のために縁部接合部54cを施しておくのは好ましい。
【0074】
接合部54の接合強度(表側シート51及び裏側シート52の剥離に抗する強度)の差異は、接合部54の面積を変化させることにより形成するのが簡単でよいが、これに限定されず、例えば接合部54をホットメルト接着剤により形成する場合にはホットメルト接着剤の種類を部位により異ならしめるといった手法を採用することもできる。特に、表側シート51及び裏側シート52を溶着することにより接合部54を形成する場合、弱接合部54bは、接合部を点状にすることでも形成できる。
【0075】
弱接合部54bを剥離可能とするために、弱接合部54bに隣接するセル55の容積よりも当該セル55内の高吸収性ポリマー粒子53の飽和吸収時の体積が十分に大きくなるように、各セル55内に配置される高吸収性ポリマー粒子53の種類及び量を定めることができる。
【0076】
上記例は、セル55内に高吸収性ポリマー粒子53のみ内包させているが、高吸収性ポリマー粒子53とともに消臭剤粒子等、高吸収性ポリマー粒子53以外の粉粒体を内包させることもできる。
【0077】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載がない限り、以下の意味を有するものである。
・「LD方向」及び「WD方向」とは、製造設備における流れ方向(LD方向)及びこれと直交する横方向(WD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のLD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度40度で使用される。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、10倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載がない限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、表側シート51と、その裏側に配された裏側シート52とを有し、前記表側シートと前記裏側シートとが接合されて多数のセルが形成され、前記セル内に高吸収性ポリマー粒子53を含む粉粒体が収められて吸収体が構成され、前記高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒体の少なくとも一部は前記表側シート及び前記裏側シートの少なくともいずれか一方に固着されておらず、前記表側シート及び前記裏側シートのうち、少なくとも一方の、シートどうしが接合された部位以外の部位は、襞型に収縮加工されたものである、ことを特徴とする。