特許第6492179号(P6492179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492179
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20190318BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20190318BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20190318BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J153/02
   C09J123/08
   B32B27/00 M
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-532125(P2017-532125)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公表番号】特表2018-500426(P2018-500426A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2015066561
(87)【国際公開番号】WO2016100763
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月12日
(31)【優先権主張番号】62/094,463
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145151
【氏名又は名称】トレデガー フィルム プロダクツ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サントソ リッキー
(72)【発明者】
【氏名】パテル シャイレッシュ チュニラル
(72)【発明者】
【氏名】レイ カール ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】デサイ バンキム ブペンドラ
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−143439(JP,A)
【文献】 特開平5−194923(JP,A)
【文献】 特開2007−161882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一外側フィルム表面を画定する離型層と、
前記第一外側フィルム表面と対向する第二外側フィルム表面を画定する接着層と、を備え、
前記接着層は、スチレン含有量が約30重量%から約40重量%の範囲内の水素化スチレンブロックコポリマーを含み、
前記水素化スチレンブロックコポリマーは、前記接着層の15重量%から80重量%の範囲内であり、前記接着層は、10重量%から50重量%の低密度ポリエチレン、および10重量%から35重量%の高密度ポリエチレンをさらに含む、フィルム。
【請求項2】
前記水素化スチレンブロックコポリマーは、前記接着層の25重量%から50重量%の範囲内であり、前記接着層は、25重量%から40重量%の低密度ポリエチレン、および25重量%から35重量%の高密度ポリエチレンをさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記水素化スチレンブロックコポリマーは、前記接着層の約33重量%であり、前記接着層は、約32重量%の低密度ポリエチレン、および約35重量%の高密度ポリエチレンをさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記離型層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレンからなる群の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記離型層は、低密度ポリエチレン、および高密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記離型層は、40〜60重量%の低密度ポリエチレン、および40〜60重量%の高密度ポリエチレンを含む、請求項に記載のフィルム。
【請求項7】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、23℃で、1インチ当たり100グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、23℃で、1インチ当たり25グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、60℃で、1インチ当たり200グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、60℃で、1インチ当たり50グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、90℃で、1インチ当たり140グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、90℃で、1インチ当たり60グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、60℃で、1インチ当たり5グラム以上、かつ1インチ当たり50グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
平滑なポリカーボネート表面への貼付後に、90℃で、1インチ当たり20グラム以上、かつ1インチ当たり60グラム未満の180度剥離強度を示す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項15】
前記フィルムが示す、前記フィルムの第一部分の前記第一外側フィルム表面と、前記フィルムの第二部分の前記第二外側フィルム表面との間の180度剥離強度が、前記第一部分に対し前記第二部分が2000psiの圧力で1時間押圧された後で、1インチ当たり40グラム未満である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが示す、前記フィルムの第一部分の前記第一外側フィルム表面と、前記フィルムの第二部分の前記第二外側フィルム表面との間の180度剥離強度が、前記第一部分に対し前記第二部分が2000psiの圧力で1時間押圧された後で、1インチ当たり10グラム未満である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項17】
前記接着層と前記離型層の間のコア層をさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項18】
前記コア層が、本質的に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンのブレンドからなる群の1つからなる、請求項17に記載のフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/094,463号の優先権を主張し、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に表面保護フィルムに関し、より詳細には、フィルムが貼付された基材からのフィルムの剥離性が向上し、かつ使用時に表面保護フィルムをロールから剥がす際の巻出し張力が低減された表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、マスキング・フィルムとしても知られる表面保護フィルムは、物理的バリアを付与し、表面保護フィルムが接着される基材の破損、汚染、スクラッチング、スカッフィング、または他の損傷を防ぐために使用される。表面保護フィルムは、基材の使用に先立ち、製造中、輸送中、または保管中に、そのような保護を行うために使用されてもよい。テレビ、コンピュータ・モニター、および他のディスプレイ用の光学部品として使用される基材は、基材表面に接着させ、次いで基材を破損することなく、または残渣、汚れ、もしくは他の不良を基材表面上に残すことなく基材表面から剥がされる表面保護フィルムを必要とする。
【0004】
保護対象基材への表面保護フィルムの貼付は、通常、表面保護フィルムのロールから表面保護フィルムを1層巻き出すことによって行われる。ロールからフィルムが引き出されると、ロール上の表面保護フィルムは、らせん状に方向付けることにより、フィルムのロールからフィルムが剥がされる際に離型層から離脱する接着層を有し得る。離脱により、フィルムが巻き出される間、より大きな巻出し張力または剥離力がもたらされ得る。より大きな巻出し張力または剥離力は、巻き出し中のフィルムの破損および/もしくは変形、フィルムを加工する際の効率の低下、ならびに/またはエンド・ユーザの基材へのフィルムの積層がより困難となること(例えば、フィルムをエンド・ユーザの基材に積層する際の基材の破損が挙げられる)などを含む問題を、フィルムのエンド・ユーザにもたらし得る。したがって、エンド・ユーザのために、フィルムの破損、加工時の効率、および/または損傷を与えることなく基材へフィルムを積層する容易さなどが改善し得るよう、巻出し張力または剥離力が改善された表面保護フィルムを提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の一例は、第一外側フィルム表面を画定する離型層、および第一外側フィルム表面と対向する第二外側フィルム表面を画定する接着層を含むフィルムを提供する。接着層は、スチレン含有量が約30重量%から40重量%の範囲内の水素化スチレンブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、接着層は、低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、接着層は、LDPE、および高密度ポリエチレン(HDPE)をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書に記載されるフィルムのロールを巻き出すための、手順例および手順の構成を説明する図である。
図2図1の手順および手順の構成を用いて巻き出され得るロールの例を説明する図であり、本明細書に記載されているように異なる部分または点で測定が行われ得るよう、異なる部分または点に標識が付けられている。
図3】表面保護フィルム巻出し張力試験結果のグラフ表示である。
図4】スチレンブロックコポリマーを80%、LDPEを20%含む試料の残渣試験の画像結果を示す図である。
図5】スチレンブロックコポリマーを80%、LDPEを20%含む試料の残渣試験の強調画像結果を示す図である。
図6】スチレンブロックコポリマーを100%含む試料の残渣試験の画像結果を示す図である。
図7】スチレンブロックコポリマーを100%含む試料の残渣試験の強調画像結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本出願は、残渣を低減し、かつ使用時にロールから表面保護フィルムが剥がされる際の巻出し音の低減を提供するための、基材からのフィルムの向上した剥離性を備える、改良された表面保護フィルムに関する。表面保護フィルムの接着層は、メルト・フロー・レート(MFR)が増大した、改良されたスチレンブロックコポリマーを含む。接着層は、離型層、および任意選択的にポリオレフィンポリマーを含むコア層と組み合わせる。表面保護フィルムは、表面保護フィルムのロールから表面保護フィルムを巻き出すことにより基材表面に貼付され得る。表面保護フィルムは、次いで基材表面から剥がされ、最小限の残渣を基材表面上に残し得る。さらに表面保護フィルムは、個別の表面に所望の程度の接着性を提供するよう調整されてもよい。
【0008】
表面保護フィルムは、接着層、任意選択的なコア層、および離型層を含み得る。接着層は、基材表面と接触して配置される層である。接着層の組成は、保護対象基材へのフィルムの接着性だけでなく、ロールに巻かれている場合のフィルムの自己への付着、ひいてはロールから提供される1層の表面保護フィルムの巻出し張力(または巻き出し時の剥離力)にも影響を及ぼす。
【0009】
接着層
接着とは、非常に平滑な表面と他の平滑な表面との間に存在する、極性結合、イオン結合、場合により水素結合、および/またはファン・デル・ワールス二次結合を介する自然のブロッキング接着による密着を介した、保護対象基材表面への付着を意味する。本明細書において、低接着性接着は、フィルムおよびフィルムが貼付される基材のいずれもが、変質または破損することがないよう接着が可逆的である、剥離可能な接着を意図する。感圧性接着剤、接着剤の熱接着または架橋機能を用いる、基材表面とフィルムの間の接着力は、そのようなフィルムを剥がすために必要とされる剥離強度がそのようなフィルム自身の引張強度を超える点まで高まり、その結果フィルムが基材から剥離される前に、そのようなフィルムが裂けるか、または破損する原因となるため、接着には、感圧性接着剤として知られる材料、接着剤の熱接着または架橋機能を含めない。
【0010】
本願発明の表面保護フィルムの接着層の厚さは、約1から約20ミクロンの間、例えば約3ミクロンから約15ミクロンの間、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15ミクロンである。
【0011】
水素化スチレンブロックコポリマー − 接着層は、使用時にロールから表面保護フィルムが剥がされる際に所望される巻出し音の低減を達成するために、かつ、表面保護フィルムが貼付され、次いで基材から剥がされた後の、基材上の残渣の低減を達成するために、本質的に水素化スチレンブロックコポリマーを含む。
【0012】
ポリスチレンブロックを有する水素化ブロックコポリマー − 水素化前のポリジエンブロックポリマー構造。水素化ブロックコポリマーは、水素化前、直鎖状であってもよく、または放射状であってもよい。適切なポリジエンとしては、ポリブタジエン(1,3−ブタジエン)、ポリイソプレン、およびそれらの混合物が挙げられる。ポリスチレンブロックの水素化 − ポリジエンブロック構造は、スチレンエチレン−(ブチレン/イソプレン)−スチレン(別名「SEBS」と呼ばれる)高分子構造をもたらす。詳細な記載については、それら、およびそれらの内容の全てが参照により本明細書に組み込まれる、US7439301(例えば、第4列、第8行目から第8列、第4行目参照)、US7348376(例えば、第3列、第9行目から第6列、第19行目参照)、US20130225020(例えば、第[0030]段落から第[0051]段落参照)、WO2014/087814、およびWO30 2014/087815を参照されたい。
【0013】
スチレン含有量 − 水素化スチレンブロックコポリマーのスチレン含有量は、コポリマーの重量の40重量%未満、例えば約30重量%から約40重量%、例えば34重量%などである。ポリスチレンブロック−ポリジエンブロックポリマーの水素化後、ポリスチレンブロック中の0から10パーセントのスチレン二重結合が水素化されている。
【0014】
メルト・フロー・レート(MFR) − 水素化スチレンブロックコポリマーのMFRは、水素化スチレンブロックコポリマーの粘度に対して逆の相関関係がある。大きなメルト・フロー・レートは、スチレンブロックコポリマーの粘度が低いことを意味し、逆もまた同様である。特許請求の範囲を含む本明細書において、別段の記載がない限り、「メルト・フロー」は、ASTM D−1238に従い、230℃、質量2.16kgの下で測定される溶融流動値を意味する。一実施形態において、本発明の水素化スチレンブロックコポリマーのメルト・インデックスは、12以上である。他の実施形態において、水素化スチレンブロックコポリマーのメルト・インデックスは、20以上である。さらに別の実施形態において、水素化スチレンブロックコポリマーのメルト・インデックスは、40以上である。他の実施形態の、メルト・インデックスが約20から約100の水素化スチレンブロックコポリマー。詳細な記載については、US7439301、US7348376、US20130225020、WO2014/087814、およびWO2014/087815を参照されたい(参照により組み込まれる)。
【0015】
適切な水素化スチレンブロックコポリマーとしては、スチレン含有量が約34重量%、かつMFRが48の、Kraton Performance Polymers Inc.製のKraton MD6951が挙げられる。
【0016】
接着層は、1つまたは複数の、他のポリマーまたはコポリマーを含んでもよい。例えば、接着層は、低密度ポリエチレン(LPDE)を含んでもよい。1つまたは複数の、他のポリマーまたはコポリマーは、水素化スチレンブロックコポリマーにブレンドされてもよい。例えば、接着層は、水素化スチレンブロックコポリマー、およびLPDEなどの他のポリマーまたはコポリマーを含んでもよい。例示によると、接着層は、10重量%から100重量%の水素化スチレンブロックコポリマーおよび0重量%から50重量%のLPDEを含み得る。特定の例において、接着層は、約60重量%の水素化スチレンブロックコポリマーおよび約40重量%のLPDE、または約80重量%の水素化スチレンブロックコポリマーおよび20重量%のLPDEを含み得る。したがって、接着層は、水素化スチレンブロックコポリマーとLDPEの混合物を、例えば、約80:20、および約60:40の割合が挙げられる、約100:0から51:49の範囲の重量比で含み得る。
【0017】
さまざまな実施形態において、接着層は、10重量%から90重量%の水素化スチレンブロックコポリマーを含み得る。特定の実施形態において、接着層は、70重量%から90重量%の水素化スチレンブロックコポリマーを含み得る。そのような実施形態において、接着層は、10重量%から30重量%のLDPEも含んでもよい。特定の実施形態において、接着層は、本質的に水素化スチレンブロックコポリマーのみからなり得る。
【0018】
代替の実施形態において、接着層は、15重量%から90重量%のスチレンブロックコポリマー、および10重量%から50重量%のLDPE、および任意選択で10重量%から35重量%のHDPEを含み得る。
【0019】
接着層は、約0Raから60Ra、例えば約0Raから約4Ra、例えば約4Raから約30Raの実用範囲内の平滑度を有する外表面(基材表面と接触する表面)を含む。なお、表面保護フィルムが貼付される基材についての粗さの範囲は、通常0Raから150Raの間である。本明細書で説明されるように、平滑さおよび粗さは、プロフィロメータによって測定される、表面の微少凸部および微小凹部の、そのような表面の中心線に対する算術平均高さ(Ra)として定義される。この方法で規定される平滑さおよび粗さは、通常マイクロインチ(10−6インチ)単位で表される。全ての表面性状(相対的な平滑さおよび粗さ)試験は、ANSI/ASME試験法B46.1−1985に従って行われた。
【0020】
使用時にロールから表面保護フィルムが剥がされる際に所望される巻出し音の低減、および表面保護フィルムが貼付され、次いで基材から除去された後の、基材上の残渣の低減に関する、基本特性および新規特性に実質的な影響を与えない限り、さらなる成分が存在してもよい。
【0021】
コア層
表面保護フィルムは、任意選択的にコア層を含んでもよい。コア層が存在する場合、コア層は、接着層と離型層の間に隣接して位置し得る。コア層が存在する場合、コア層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマー、ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、ポリ(エチレン−co−アクリル酸)、ポリ(エチレン−co−アクリル酸メチル)、環状オレフィンポリマー、ポリアミド、またはポリ(エチレンco−n−アクリル酸ブチル)などのポリオレフィンを1つまたは複数含む。適切なポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。適切なポリオレフィン混合物の一つは、60:40から40:60の範囲の重量比の低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物である。
【0022】
コア層が存在する場合、本発明の表面保護フィルムのコア層の厚さは、10から50ミクロンの間、例えば12から40ミクロン、例えば20から40ミクロン、例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、および40ミクロンである。
【0023】
離型層
表面保護フィルムは、離型層を含んでもよい。離型層は、接着層に隣接して、またはコア層が存在する場合はコア層に隣接して位置し得る。離型層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマー、ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、ポリ(エチレン−co−アクリル酸)、ポリ(エチレン−coアクリル酸メチル)、環状オレフィンポリマー、ポリアミド、またはポリ(エチレン−co−n−アクリル酸ブチル)などのポリオレフィンを1つまたは複数含む。適切なポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。適切なポリオレフィン混合物の一つは、60:40から40:60の重量比の、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物である。本発明の表面保護フィルムの離型層の厚さは、約1から約20ミクロンの間、例えば約1から約10ミクロンの間、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10ミクロンである。
【0024】
比較的粗い離型層の表面は、一般的に12Raから600Raの間、より好ましくは30Raから300Raの間の粗度を有する。
【0025】
本明細書において、「フィルム」という語は、キャスト押出または吹込工程によって製造される、薄いシートまたはウェブを意味する。本開示のフィルムは、ポリマー製である。ポリマーは、さらにローラ間で処理し、冷却してウェブを形成してもよい。多層フィルムは、共押出し工程で異なる層を同時に押し出すことによって、または各フィルム層を個別に形成し、次いで個々のフィルムを結合もしくは積層させることによって製造することができる。好ましい実施形態において、マスキング・フィルムの複数の層は、当技術分野で知られる任意の共押出し工程を用いて共押出しされる。共押出しを用いることで、比較的単純で容易な、各層が個別の機能を果たす異なる層で構成される多層マスキング・フィルムの製造が可能となる。
【0026】
基材
本発明のフィルムは、あらゆる基材に貼付され得るが、代表的な基材としては、例を示すことのみを目的として、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、PET、PETG、ガラス、セラミック、および金属が挙げられる。これらの基材の典型的な表面平滑度は、0から150Raの範囲内である。
【0027】
基材への貼付
基材に多層マスキング・フィルムを貼付するため、および貼付されたマスキング・フィルムを基材の平滑表面に押圧するために、あらゆるさまざまな従来の方法を利用することができる。概して、多層フィルムはロールから引き取り、多層フィルムおよび基材が通過するニップ・ロールまたは類似のシステムを用いて基材に直接貼付される。ロールからフィルムが引き出されると、ロール上の表面保護フィルムは、らせん状に方向付けることにより、フィルムのロールからフィルムが剥がされる際に離型層から離脱する接着層を有する。離脱により、フィルムの破損、フィルムを基材に貼付するさらなる工程における効率の低下、および/または基材へ積層する際の困難さの増大(例えば、基材の破損)の原因となり得る、巻出し張力または剥離力がもたらされる。
【0028】
実施例
表1は、本発明の実施形態に係る典型的な保護フィルムに関する構成成分量の一覧である。比較例1および2ならびに実施例1および2の総フィルム厚は、約50ミクロン(47gsm)である。離型層の厚さは、約7.5ミクロン(総フィルム厚の15%)である。接着層の厚さは、約10ミクロン(総フィルム厚の20%)である。コア層の厚さは、約32.5ミクロン(総フィルム厚の65%)である。試験される実施例は、接着層中のスチレンブロックコポリマーの相対的割合が異なる。各変形例に関し、主たる実施例と「比較例」の間の差異は、接着層に使用される水素化スチレンブロックコポリマーのスチレン含有量が異なることである。例えば、比較例1〜2の接着層中における水素化スチレンブロックコポリマーG1657のスチレン含有量は、12.3%から14.3%の間、例えば約13%であり、実施例1〜2の接着層中における水素化スチレンブロックコポリマーMD6951のスチレン含有量は、より多い約34%である。
【0029】
【表1】
【0030】
試験−巻出し張力または剥離力
比較例1〜2、および実施例1〜2のフィルムに関し、各フィルムをロール(すなわちロール1〜4)上に巻き取ることによって、巻出し張力、または剥離力を試験する。比較例1〜2および実施例1〜2に用いるロール1〜4は、それぞれ長さが1200メートル、かつ幅が9インチである。図1は、巻出し張力または剥離力を試験するための、手順例、および手順の構成100または構造を説明する図である。示されるように、表面保護フィルム102の巻取りロール104は、ライダー・ロール106と接触して配置され、図示される巻出し方向でロード・セル・ロール108へ供給される。巻き出す前に、図2に示されるように、外側部112、中心部114、およびコア部116を含むロールの異なる位置または点で、マーカを用いて各ロール1〜4に標識を付けた。外側部112は、(巻出し装置100に通された後)試験されるロール104の外径から1/16インチに位置し、中心部114は、(巻出し装置に通された後)試験されるロールの半径の半分に位置し、かつコア部は、フィルムのロールの中心にある紙製またはボール紙製コア118から1/4インチに位置する。ロール1〜4は、60ft/分の速度で、巻出しロール104から巻き出される。ロール104が巻き出される際、張力計ゲージ(FMS張力計)により、ロード・セル・ロール108における張力測定値が、記録または測定され、ここで張力計は、図2に示されるように、ロール104上の異なる位置または点112、114、116における各マーカに取り付けられる。
【0031】
図3のグラフは、比較例1〜2および実施例1〜2に関する、巻出し張力または剥離力の結果を説明する。
【0032】
図3に示されるように、各マーカ部において、MD−6951を用いる接着層を含むロール2およびロール4に関する実施例1〜2は、G1657を用いる接着層を含む、ロール1およびロール3に関する比較例1〜2の各マーカ部よりも低い、重量ポンド(lb−f)(ここで1 lb−fは、4.448ニュートンに等しい)での巻出し張力または剥離力を有する。図3は、MD6951およびそのブレンドは、接着層として使用される場合、基材へのフィルムの貼付などのさらなる工程でロールを巻き出すことができる容易さを向上させ得、最終的にエンド・ユーザによるフィルムの加工の容易さにつながる(すなわち、フィルムの破損がより少ない、加工中の効率がより高い、および/または破損を伴わない基材へのフィルムの積層がより容易である、などの可能性がある)ことを説明する。
【0033】
接着試験結果を表2に示す。接着は、10ポンドのシリコンゴム・ローラを用いて、3M(登録商標)ODEF(量子ドット・エンハンスメント・フィルム:quantum dot enhancement film)として3Mから入手可能なランダム・テクスチャ処理された市販の光学基材上に積層された、本出願のフィルムをベースとし、フィルムの接着面は、光学基材と接触して積層体を形成する。テクスチャ・アナライザTAXT+で試験する前に、積層体を、室温で1時間、および60cで5分間、それぞれ静置する。次いで、1インチ幅の積層体の切片を切り取る。1インチの積層体の切片は、ASTM規格D3330−90の変法に従って実施される、180°の剥離または接着試験に使用される。インストロン引張試験機を使用し、1インチ幅のフィルム切片を、光学基材から4〜6インチ剥離するために要する力を測定する。試験速度または引張り方向は、5mm/秒を選択する。
【0034】
【表2】
【0035】
ポリカーボネート基材に関する追加の接着試験
10 lbのシリコンゴム・ローラを用いて、ポリカーボネート基材上に1インチのフィルム切片を積層することにより、追加の基材接着試験を行った。積層体は、周囲条件(室温)、60℃、および90℃で、5分間処理される。剥離試験が完了する前に、積層体を、室温で2時間静置する。剥離試験は、テクスチャ・アナライザTAXT型機において、速度12インチ/分、180度の設定で行われる。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
自己接着性試験
特定のフィルムの、期待される巻出し挙動は、自己接着性試験を通して評価することができる。本明細書において、自己接着性は、フィルムの接着層の自由表面と、同フィルムの離型層の自由表面との間の接着を意味する。本発明の特定の実施形態に係る、フィルムの自己接着性は、フィルム積層体のシート2枚を、Carver Press内で、2000psiで1時間押圧することによって試験された。フィルム積層体は、1枚の積層体シートの接着層が、他方の積層体シートの離型層またはスキン層と接触するよう置かれた。次いで、剥離試験を、テクスチャ・アナライザTAXT型機において、速度12インチ/分、180度の設定で行った。
【0038】
表3の、実施例7、9、および10を、Carver Press内に置いた。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
試験−残渣
(60℃まで温めた)傷のないポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)基材へ積層された後の残渣について、暗視野検出および画像分析を用いて、表3の実施例10を試験した。実施例10の材料の9つの試料、および100%のMD6951から形成される接着層を有する比較材料を、(a)室温で18時間の接着、(b)60℃で18時間の接着、および(c)90℃で5分間の接着の、3種の各接着条件において試験した。図4は、接着条件(a)、(b)、および(c)について、実施例10の残渣試験で得られた暗視野画像を示す。図5は、図4の画像から得られる強調画像を示す。各条件における材料について、同様の画像を用いて残渣の割合を測定した。結果を表5に示す。平均で、室温18時間について試験された実施例10の試料が残した残渣は1.8%のみであり、60℃18時間について試験された試料の残渣は0.8%のみであり、かつ90℃5分間について試験された試料の残渣は1.8%のみであった。
【0041】
【表5】
【0042】
図6は、MD6951が100%の接着層を用いる比較材料の、同じ3種の条件における残渣試験で得られた暗視野画像を示す。図7は、図6の画像から得られる強調画像を示す。各条件における材料について、同様の画像を用いて残渣の割合を測定した。結果を表6に示す。平均で、室温18時間について試験された比較試料の残渣は1.7%あり、60℃18時間について試験された試料の残渣は1.5%であり、かつ90℃5分間について試験された試料の残渣は1.7%であった。
【0043】
【表6】
【0044】
図4および図5における残渣画像は、実施例10の60℃18時間に関する結果から得られる残渣平均が、MD6951を100%の割合で含む試料の60℃18時間に関する結果から得られる残渣平均と比較して減少することを示す(図6および図7)。
【0045】
本明細書に開示される寸法および値は、記載される正確な数値に厳密に限定されると理解されるべきではない。代わりに、別段の指定がない限り、そのような寸法は、それぞれ記載される値、およびその値の周囲の機能的に均等な範囲の両方を意味するよう意図される。例えば、「40mm」と開示される寸法は、「約40mm」を意味するよう意図される。相互参照されるか、または関連する、あらゆる特許もしくは出願を含む、本明細書で引用される全ての文献は、明示的に除斥される場合、または別段の限定がある場合を除き、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、その文献が、本明細書に開示されるか、もしくは特許請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、またはその文献が、単独で、もしくは他の1つもしくは複数の任意の引例とのあらゆる組み合わせで、そのような発明のいずれかを、教示、示唆、もしくは開示することを自認するものではない。さらに、本書類中の用語のあらゆる意味または定義が、参照により組み込まれる文献中の同一の用語の意味または定義のいずれかと抵触する場合、本書類中でその用語に与えられる意味または定義が適用される。
【0046】
本発明の特定の実施形態を説明および記載したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな他の変更および修正が可能であることは、当業者に明白であろう。したがって、本発明の範囲内であるそのような変更および修正は、全て添付の特許請求の範囲に包含されるよう意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7